IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ SMC株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-マグネットチャック 図1
  • 特開-マグネットチャック 図2
  • 特開-マグネットチャック 図3
  • 特開-マグネットチャック 図4
  • 特開-マグネットチャック 図5
  • 特開-マグネットチャック 図6
  • 特開-マグネットチャック 図7
  • 特開-マグネットチャック 図8
  • 特開-マグネットチャック 図9
  • 特開-マグネットチャック 図10
  • 特開-マグネットチャック 図11
  • 特開-マグネットチャック 図12
  • 特開-マグネットチャック 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022041872
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】マグネットチャック
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/06 20060101AFI20220304BHJP
【FI】
B25J15/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093808
(22)【出願日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】P 2020145725
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 太平
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707FS08
3C707HS14
3C707NS09
(57)【要約】
【解決手段】マグネットチャック10は、ワークWが吸着されるワーク吸着面12cを有するシリンダチューブ12と、永久磁石42を含むとともに、シリンダチューブの内部空間25内を移動可能であり、シリンダチューブの内部空間を第1圧力室112と第2圧力室114とに隔てるピストンアセンブリ14と、シリンダチューブに形成され、第1圧力室に連通する第1給排ポート26と、シリンダチューブに形成され、第2圧力室に連通する第2給排ポート76と、第1圧力室と第2圧力室とを連通させる連通路71と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークが吸着されるワーク吸着面を有するシリンダチューブと、
永久磁石を含むとともに、前記シリンダチューブの内部空間内を移動可能であり、前記シリンダチューブの前記内部空間を第1圧力室と第2圧力室とに隔てるピストンアセンブリと、
前記シリンダチューブに形成され、前記第1圧力室に連通する第1給排ポートと、
前記シリンダチューブに形成され、前記第2圧力室に連通する第2給排ポートと、
前記第1圧力室と前記第2圧力室とを連通させる連通路と、
を備える、マグネットチャック。
【請求項2】
請求項1に記載のマグネットチャックにおいて、
前記連通路は、第1連通路を含み、
前記第1連通路の少なくとも一部は、前記シリンダチューブの壁の内部に形成されており、
前記第1連通路は、前記シリンダチューブの前記内部空間とは別個に形成されており、
前記第1連通路は、前記第1圧力室に連通する開口と、前記第2圧力室に連通する開口とを有する、マグネットチャック。
【請求項3】
請求項2に記載のマグネットチャックにおいて、
前記ピストンアセンブリを前記内部空間内で移動させるときに生ずる衝撃を緩和するダンパを更に備え、
前記第1連通路は、前記ダンパに形成された溝を介して前記第1圧力室に連通している、マグネットチャック。
【請求項4】
請求項3に記載のマグネットチャックにおいて、
前記第1給排ポートは、前記ダンパに形成された他の溝を介して前記第1圧力室に連通している、マグネットチャック。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか1項に記載のマグネットチャックにおいて、
前記第1連通路を流れる流体の流量を調整するための流量調整弁を更に備える、マグネットチャック。
【請求項6】
請求項5に記載のマグネットチャックにおいて、
前記シリンダチューブは、前記ワーク吸着面を含む第1端部と、前記第1端部とは反対の第2端部とを含み、
前記流量調整弁は、前記第2端部に備えられている、マグネットチャック。
【請求項7】
請求項6に記載のマグネットチャックにおいて、
前記第1連通路は、前記第2圧力室に連通する前記開口を有する連通孔を含み、
前記連通孔の中心軸線と前記流量調整弁の中心軸線とが一致している、マグネットチャック。
【請求項8】
請求項2~7のいずれか1項に記載のマグネットチャックにおいて、
前記第1連通路には、流体が流れる方向を制御する方向制御弁が更に備えられ、
前記第1圧力室は、前記第2圧力室と前記ワーク吸着面との間に位置し、
前記ピストンアセンブリを駆動させようとする力が前記第2圧力室から前記第1圧力室に向かう方向に働くときには、前記方向制御弁が開き、
前記ピストンアセンブリを駆動させようとする力が前記第1圧力室から前記第2圧力室に向かう方向に働くときには、前記方向制御弁が閉じる、マグネットチャック。
【請求項9】
請求項8に記載のマグネットチャックにおいて、
前記方向制御弁は、チェック弁であり、
前記チェック弁は、前記第2圧力室から前記第1連通路を介して前記第1圧力室に向かう前記流体の流れを許容するとともに、前記第1圧力室から前記第1連通路を介して前記第2圧力室に向かう前記流体の流れを阻止する、マグネットチャック。
【請求項10】
請求項9に記載のマグネットチャックにおいて、
前記シリンダチューブの前記壁に取り付けられる流路ブロックを更に備え、
前記第1連通路は、前記流路ブロックの内部に形成されたブロック内流路を有し、
前記チェック弁は、前記流路ブロックに設けられている、マグネットチャック。
【請求項11】
請求項10に記載のマグネットチャックにおいて、
前記流路ブロックは、中空ボルトを用いて前記シリンダチューブの前記壁に取り付けられ、
前記中空ボルトに備えられた空洞によって前記ブロック内流路の一部が構成される、マグネットチャック。
【請求項12】
請求項8に記載のマグネットチャックにおいて、
前記方向制御弁は、制御装置から供給される信号によって切り換えられる電磁式方向制御弁であり、
前記第2給排ポートを介して前記第2圧力室内に流体が供給されるときには、前記第1連通路における前記流体の流れが許容されるように前記電磁式方向制御弁が切り換えられ、前記第1給排ポートを介して前記第1圧力室内に前記流体が供給されるときには、前記第1連通路における前記流体の流れが阻止されるように前記電磁式方向制御弁が切り換えられる、マグネットチャック。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載のマグネットチャックにおいて、
前記連通路は、前記シリンダチューブの前記内部空間の壁面に形成された溝から成る第2連通路を含む、マグネットチャック。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載のマグネットチャックにおいて、
前記連通路は、前記ピストンアセンブリに形成された第3連通路を含み、
前記第3連通路は、前記第1圧力室に連通する開口と、前記第2圧力室に連通する開口とを有する、マグネットチャック。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載のマグネットチャックにおいて、
前記シリンダチューブは、前記シリンダチューブの中心軸線を基準として互いに反対に位置する第1側部と第2側部とを含み、
前記第1給排ポート及び前記第2給排ポートは、前記第1側部に設けられており、
前記連通路は、前記第2側部又は前記第2側部と前記中心軸線との間に少なくとも設けられている、マグネットチャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネットチャックに関する。
【背景技術】
【0002】
シリンダ内部のピストンに永久磁石を連結し、ピストンとともに永久磁石を変位させるマグネットチャックが知られている(特許文献1参照)。このようなマグネットチャックにおいては、流体圧を受けたピストンの変位に追従して、永久磁石がワークに接近する。永久磁石がワークに近接することに伴い、ワークが吸引保持される。また、ピストンがワークから離間する方向に変位すると、ワークが解放される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭51-102174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高温のワークを吸着保持する場合、マグネットチャック内に備えられた部材がダメージを受けることが考えられる。高温のワークを吸着保持する場合であっても、マグネットチャックに備えられた部材に加わるダメージを抑制することが好ましい。
【0005】
本発明の目的は、耐熱性の良好なマグネットチャックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によるマグネットチャックは、ワークが吸着されるワーク吸着面を有するシリンダチューブと、永久磁石を含むとともに、前記シリンダチューブの内部空間内を移動可能であり、前記シリンダチューブの前記内部空間を第1圧力室と第2圧力室とに隔てるピストンアセンブリと、前記シリンダチューブに形成され、前記第1圧力室に連通する第1給排ポートと、前記シリンダチューブに形成され、前記第2圧力室に連通する第2給排ポートと、前記第1圧力室と前記第2圧力室とを連通させる連通路と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、耐熱性の良好なマグネットチャックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態によるマグネットチャックを示す正面図である。
図2】第1実施形態によるマグネットチャックを示す断面図である。
図3】第1実施形態によるマグネットチャックを示す断面図である。
図4】第1実施形態によるマグネットチャックを示す分解斜視図である。
図5】第2実施形態によるマグネットチャックを示す断面図である。
図6】第2実施形態によるマグネットチャックを示す断面図である。
図7】第3実施形態によるマグネットチャックを示す断面図である。
図8】第3実施形態によるマグネットチャックを示す断面図である。
図9】第4実施形態によるマグネットチャックを示す背面図である。
図10】第4実施形態によるマグネットチャックを示す断面図である。
図11】第4実施形態によるマグネットチャックを示す断面図である。
図12】第4実施形態の変形例によるマグネットチャックの一部を示す断面図である。
図13】第4実施形態の変形例によるマグネットチャックを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明によるマグネットチャックについて、好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。
【0010】
[第1実施形態]
第1実施形態によるマグネットチャックについて図1図4を用いて説明する。図1は、本実施形態によるマグネットチャックを示す正面図である。図2及び図3は、本実施形態によるマグネットチャックを示す断面図である。ピストンアセンブリ14が上死点に位置している状態が図2には示されている。ピストンアセンブリ14が下死点に位置している状態が図3には示されている。また、ワークWがマグネットチャック10に吸着されている状態が図3には示されている。図4は、本実施形態によるマグネットチャックを示す分解斜視図である。なお、本願明細書においては、マグネットチャック10のうちの図1における紙面上側の面を上面と称し、マグネットチャック10のうちの図1における紙面下側の面を下面と称する。ワークWは、マグネットチャック10の下面側に吸着される。
【0011】
図2及び図3に示すように、本実施形態によるマグネットチャック10には、シリンダチューブ12と、ピストンアセンブリ14と、ボトムカバー18と、ラッチヨーク20とが備えられている。マグネットチャック10は、例えば、不図示のロボットの先端アーム等に取り付けられる。
【0012】
シリンダチューブ12には、シリンダ孔24が形成されている。シリンダ孔24は、シリンダチューブ12を貫通している。シリンダ孔24の横断面の形状は、例えば円形である。即ち、シリンダチューブ12の中心軸線Cに対して垂直な方向におけるシリンダ孔24の断面の形状は、例えば円形である。シリンダ孔24の中心軸線は、シリンダチューブ12の中心軸線Cに一致している。シリンダチューブ12の材料としては、例えば、アルミニウム合金等の常磁性体金属が用いられるが、これに限定されるものではない。
【0013】
図1に示すように、シリンダチューブ12は、第1端部12dと第2端部12eとを含む。第1端部12dと第2端部12eとは互いに反対に位置する。第1端部12dは、ワークWが吸着されるワーク吸着面12cを含む。図2及び図3に示すように、シリンダチューブ12の第1端部12dには、後述するハウジング86と嵌合する嵌合部22が形成されている。シリンダチューブ12のうちの嵌合部22を除く部分の横断面の外形は、例えば矩形状である。シリンダチューブ12のうちの嵌合部22の横断面の外形は、例えば円形である。
【0014】
シリンダチューブ12のうちの嵌合部22の先端には、後述する第2シール材96が装着される段部23が形成されている。また、シリンダ孔24の上部側には、ラッチヨーク20に形成された後述するフランジ20aが係合する段部32が形成されている。
【0015】
ピストンアセンブリ14には、シールホルダ38と、コアヨーク40と、永久磁石42と、カバーヨーク44と、リングプレート45とが備えられている。
【0016】
シールホルダ38は、円盤状に形成されている。シールホルダ38の材料としては、例えば、アルミニウム合金等の常磁性体金属が用いられるが、これに限定されるものではない。シールホルダ38の外周には、凹溝39が形成されている。凹溝39は、シールホルダ38の周方向の外側に向かって開口している。凹溝39には、ピストンシール46が装着されている。ピストンシール46の材料としては、例えばフッ素ゴム等が用いられるが、これに限定されるものではない。ピストンシール46は、シリンダ孔24の壁面に摺接する。シールホルダ38の中央には、貫通孔48が形成されている。貫通孔48には、当該貫通孔48の中心に向かって突出する内向きフランジ50が形成されている。シールホルダ38の上面には、環状凹部51が形成されている。環状凹部51は、マグネットチャック10の上面側に向かって開口している。貫通孔48と環状凹部51との間に存在している部分が、フランジ41になっている。フランジ41は、マグネットチャック10の上面側に向かって突出している。
【0017】
コアヨーク40は、全体として円柱状に形成されている。コアヨーク40の材料としては、例えば、強磁性体である鉄鋼等が用いられるが、これに限定されるものではない。コアヨーク40の上端部の中央には、筒状突出部52が形成されている。筒状突出部52は、マグネットチャック10の上面側に向かって突出している。コアヨーク40には、有底のねじ孔54が形成されている。ねじ孔54は、筒状突出部52の先端において開口している。コアヨーク40のうちの下部側には、凹部56が形成されている。凹部56は、マグネットチャック10の下面側に向かって開口している。凹部56の横断面の形状は、例えば円形である。
【0018】
シールホルダ38に形成された貫通孔48には、コアヨーク40のうちの筒状突出部52が挿入されている。筒状突出部52は、貫通孔48のうちの下部側の部位に挿入されている。筒状突出部52は、貫通孔48に嵌合している。筒状突出部52は、シールホルダ38のうちの内向きフランジ50に当接している。貫通孔48には、固定ねじ60が挿入されている。固定ねじ60は、貫通孔48のうちの上部側から挿入されている。固定ねじ60は、コアヨーク40に形成されたねじ孔54に更に挿入されている。固定ねじ60は、当該ねじ孔54に螺合している。こうして、シールホルダ38とコアヨーク40とが一体的に連結されている。
【0019】
筒状突出部52の根元には、第1シール材62が装着されている。第1シール材62は、シールホルダ38とコアヨーク40との間をシールしている。第1シール材62の材料としては、例えばフッ素ゴム等が用いられるが、これに限定されるものではない。
【0020】
永久磁石42は、例えば円筒状に形成されている。永久磁石42は、コアヨーク40の外周に位置している。永久磁石42としては、例えば、サマリウムコバルト磁石が用いられるが、これに限定されるものではない。永久磁石42は、シールホルダ38と、コアヨーク40と、カバーヨーク44と、リングプレート45とによって囲まれている。永久磁石42は、例えば径方向に着磁されている。永久磁石42の内周側は例えばN極となっており、永久磁石42の外周側は例えばS極となっている。なお、永久磁石42の内周側がS極となっており、永久磁石42の外周側がN極となっていてもよい。永久磁石42は、例えば、周方向に分割されている。即ち、複数の扇形状の不図示の磁石片を組み合わせることによって、円筒状の永久磁石42が構成されている。なお、単一の部材によって永久磁石42が構成されてもよい。永久磁石42は、円筒状に限定されるものではない。例えば、永久磁石42が角筒状に形成されていてもよい。即ち、複数の平板状の磁石片を組み合わせることによって、角筒状の永久磁石42が構成されていてもよい。
【0021】
カバーヨーク44は、筒状に形成されている。カバーヨーク44は、永久磁石42の外周に位置している。カバーヨーク44の材料としては、例えば、強磁性体である鉄鋼等が用いられるが、これに限定されるものではない。カバーヨーク44の外周は、上部側が大径になっており、下部側が小径になっている。即ち、カバーヨーク44は、大径部64と、小径部66とを含んでいる。大径部64と小径部66との間には、段部65が存在している。大径部64には、2つの環状溝68a、68bが形成されている。環状溝68a、68bは、カバーヨーク44の径方向の外側に向かって開口している。環状溝68a、68bは、シリンダチューブ12の中心軸線Cに沿った方向において互いに離間している。環状溝68a、68bには、それぞれウエアリング70a、70bが装着されている。ピストンアセンブリ14は、ウエアリング70a、70bを介してシリンダ孔24に案内支持される。ウエアリング70a、70bの材料としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE:PolyTetraFluoroEthylene)等が用いられる。なお、ウエアリング70a、70bの材料は、このような材料に限定されるものではない。
【0022】
ボトムカバー18には、ボトムヨーク80と、アウタヨーク82と、ハウジング86とが備えられている。
【0023】
ボトムヨーク80の材料としては、例えば、強磁性体である鉄鋼等が用いられるが、これに限定されるものではない。ボトムヨーク80の形状は、例えば円柱状である。ピストンアセンブリ14が下降したとき、ボトムヨーク80はコアヨーク40の凹部56に入り込む(図3参照)。ボトムヨーク80の下部には、下部フランジ80aが形成されている。下部フランジ80aは、ボトムヨーク80の径方向の外側に突出している。
【0024】
ボトムヨーク80の外側には、アウタヨーク82が備えられている。アウタヨーク82の材料としては、例えば、強磁性体である鉄鋼等が用いられるが、これに限定されるものではない。アウタヨーク82は、例えば円筒状に形成されている。アウタヨーク82の上部側には、上部フランジ82aが形成されている。上部フランジ82aは、アウタヨーク82の径方向の外側に突出している。アウタヨーク82の下部側の外周面には、外周凹部82bが形成されている。外周凹部82bは、アウタヨーク82の径方向の内側に凹んでいる。アウタヨーク82の下部側の内周面には、段部82cが形成されている。
【0025】
ボトムヨーク80のうちの下部フランジ80aとアウタヨーク82のうちの段部82cとの間には、環状の連結板84が備えられている。連結板84によって、アウタヨーク82がボトムヨーク80に固定されている。連結板84の材料としては、例えば、アルミニウム合金等の常磁性体金属が用いられるが、これに限定されるものではない。
【0026】
ハウジング86は、例えば筒状に形成されている。ハウジング86の材料としては、例えば、アルミニウム合金等の常磁性体金属等が用いられるが、これに限定されるものではない。ハウジング86には、上下方向に貫通する貫通孔88が形成されている。貫通孔88の横断面は、円形になっている。貫通孔88のうちの下部側には、下部フランジ90が形成されている。下部フランジ90は、貫通孔88の径方向の内側に突出している。ハウジング86の貫通孔88にシリンダチューブ12の嵌合部22が嵌合されている。
【0027】
図4に示すように、4本のタイロッド94が、ハウジング86に形成された挿通孔35に挿通されている。各々のタイロッド94の先端部は、シリンダチューブ12に形成された不図示のねじ孔に螺合されている。こうして、シリンダチューブ12とハウジング86とが相互に連結固定されている。アウタヨーク82の上部フランジ82aは、シリンダチューブ12の嵌合部22の端面とハウジング86の下部フランジ90との間において挟持されている。こうして、アウタヨーク82がシリンダチューブ12等に連結固定されている。
【0028】
上述したように、シリンダチューブ12の嵌合部22の先端には、段部23が形成されている。段部23とアウタヨーク82の上面との隙間には、第2シール材96が装着されている。第2シール材96は、シリンダチューブ12とアウタヨーク82との間をシールする。第2シール材96の材料としては、例えばフッ素ゴム等が用いられるが、これに限定されるものではない。
【0029】
シリンダチューブ12の下端とアウタヨーク82の上面との間には、ダンパ(下部ダンパ98)が装着されている。下部ダンパ98は、環状に形成されている。下部ダンパ98の材料としては、例えばフッ素ゴム等が用いられるが、これに限定されるものではない。下部ダンパ98の上面は、シリンダチューブ12に形成された環状凹部30に対面している。ピストンアセンブリ14が下死点まで下降したとき、図3に示すように、カバーヨーク44の段部65が下部ダンパ98に当接する。下部ダンパ98は、ピストンアセンブリ14を内部空間25内で移動させるときに生ずる衝撃を緩和する役割を果たす。即ち、下部ダンパ98は、ピストンアセンブリ14が下死点まで下降したときの衝撃を緩和する役割を果たす。図4に示すように、下部ダンパ98の上面には、当該下部ダンパ98の内周端から当該下部ダンパ98の外周端に達する複数の溝98a(複数の凹溝)が形成されている。複数の溝98aは、下部ダンパ98の周方向において例えば等間隔に形成されている。溝98aは、後述する第1流体給排孔28をシリンダ孔24に連通させる役割を担う。即ち、溝98aは、後述する第1給排ポート26を後述する第1圧力室112に連通させる役割を担う。ピストンアセンブリ14が下死点に位置している状態においても、第1流体給排孔28は溝98aを介してシリンダ孔24に連通する。溝98aは、後述する第2連通孔74bをシリンダ孔24に連通させる役割をも担う。即ち、溝98aは、後述する第1連通路71Aを第1圧力室112に連通させる役割をも担う。
【0030】
ワークWは、マグネットチャック10の下面に吸着される。ワークWとしては、例えば、鉄製のプレート等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0031】
ラッチヨーク20は、円盤状に形成されている。ラッチヨーク20の材料としては、例えば、強磁性体である鉄鋼等が用いられるが、これに限定されるものではない。ラッチヨーク20の上部側には、フランジ20aが形成されている。フランジ20aは、ラッチヨーク20の径方向の外側に突出している。フランジ20aは、シリンダ孔24の上部側に形成された段部32に係合している。ラッチヨーク20の中央には、凹部102が形成されている。凹部102は、マグネットチャック10の下面側に向かって開口している。凹部102の横断面は、例えば円形である。凹部102は、小径部102aと、大径部102bとを含んでいる。小径部102aは、凹部102のうちの上側に位置している。大径部102bは、凹部102のうちの下側に位置している。ピストンアセンブリ14が上昇した場合、固定ねじ60の頭部60aが小径部102a内に受容される(図2参照)。大径部102bには、上部ダンパ104が装着されている。上部ダンパ104は、環状に形成されている。ピストンアセンブリ14が上昇したときには、図2に示すように、シールホルダ38のうちのフランジ41が上部ダンパ104に当接する。上部ダンパ104は、ピストンアセンブリ14が上昇したときの衝撃を緩和する役割を果たす。上部ダンパ104の材料としては、例えばフッ素ゴム等が用いられるが、これに限定されるものではない。大径部102bの下端には、環状突出部106が形成されている。環状突出部106の内径は、下方に向かってテーパ状に大きくなっている。環状突出部106は、ピストンアセンブリ14が上昇したとき、シールホルダ38に形成された環状凹部51に入り込む。ラッチヨーク20の外周には、凹溝21が形成されている。凹溝21は、ラッチヨーク20の径方向の外側に開口している。凹溝21には、ラッチヨークシール27が装着されている。ラッチヨークシール27の材料としては、例えばフッ素ゴム等が用いられるが、これに限定されるものではない。ラッチヨーク20の下部側には、小径部20bが形成されている。ラッチヨーク20のうちの小径部20bの外周面とシリンダ孔24の壁面との間には、隙間114aが存在している。隙間114aは、後述する第2圧力室114の一部である。
【0032】
シリンダチューブ12の上部側には、凹溝12bが形成されている。凹溝12bは、シリンダチューブ12の中心軸線Cに向かって開口している。凹溝12bには、スナップリング16が嵌合されている。スナップリング16は、ラッチヨーク20がシリンダチューブ12の軸方向に抜けるのを防止するためのリング状の止め輪である。シリンダチューブ12の軸方向は、中心軸線Cに沿った方向である。スナップリング16の材料としては、例えばバネ用鋼が用いられるが、これに限定されるものではない。
【0033】
シリンダチューブ12の内部空間25は、ピストンアセンブリ14によって第1圧力室112と第2圧力室114とに隔てられる。第1圧力室112は、シールホルダ38のピストンシール46よりも下方に位置する圧力室である。第2圧力室114は、シールホルダ38のピストンシール46よりも上方に位置する圧力室である。第1圧力室112は、第2圧力室114とワーク吸着面12cとの間に位置する。
【0034】
シリンダチューブ12には、第1圧力室112に対して流体の給排を行うための第1給排ポート26が形成されている。シリンダチューブ12は、第1側部12fと第2側部12gとを含む。第1側部12fと第2側部12gとは、シリンダチューブ12の中心軸線Cを基準として互いに反対に位置する。第1給排ポート26は、シリンダチューブ12の第1側部12fに設けられている。シリンダチューブ12は、第1側面13Aと第2側面13Bとを有する。第1側面13Aと第2側面13Bとは、互いに反対に位置する。第1給排ポート26は、シリンダチューブ12の第1側面13Aにおいて開口している。流体としては、例えばエア等の気体(ガス)が用いられるが、これに限定されるものではない。水、油等の液体を流体として用いてもよい。流体の温度は、例えば室温(25℃程度)であるが、これに限定されるものではない。但し、マグネットチャック10内を充分に冷却すべく、流体の温度がワークWの温度に対して充分に低いことが好ましい。
【0035】
シリンダチューブ12の壁12aの内部には、第1流体給排孔28が形成されている。第1流体給排孔28の上端には、第1給排ポート26が接続されている。第1流体給排孔28は、シリンダチューブ12の壁12aの内部をシリンダチューブ12の軸方向に沿って延びている。嵌合部22の内周側には、マグネットチャック10の下面側に向かって開口する環状凹部30が形成されている。第1流体給排孔28の下端は、環状凹部30に達している。第1給排ポート26は、第1流体給排孔28を介して第1圧力室112に連通している。第1流体給排孔28は、第1圧力室112に連通する開口81bを有する。第1圧力室112に連通する開口81bは、シリンダチューブ12の第1側部12fに設けられている。
【0036】
シリンダチューブ12には、第2圧力室114に対して流体の給排を行うための第2給排ポート76が備えられている。第2給排ポート76は、第1給排ポート26と同様に、シリンダチューブ12の第1側部12fに設けられている。第2給排ポート76は、シリンダチューブ12の第1側面13Aにおいて開口している。第2給排ポート76とは、第1給排ポート26の上方に位置している。
【0037】
シリンダチューブ12の壁12aの内部には、第2流体給排孔110が形成されている。第2流体給排孔110の一端は、第2給排ポート76に接続されている。第2流体給排孔110は、シリンダチューブ12の壁12aの内部をシリンダ孔24に向かって延びている。第2流体給排孔110の他端は、ラッチヨーク20のうちの小径部20bの外周面とシリンダ孔24の壁面との間に形成される隙間114aに連通している。当該隙間114aは、上述したように、第2圧力室114の一部である。第2給排ポート76は、第2流体給排孔110を介して第2圧力室114に連通している。第2流体給排孔110は、第2圧力室114に連通する開口81aを有する。第2圧力室114に連通する開口81aは、シリンダチューブ12の第1側部12fに設けられている。
【0038】
シリンダチューブ12には、第1圧力室112と第2圧力室114とを連通させる連通路71が形成されている。連通路71は、第1連通路71Aを含む。第1連通路71Aは、シリンダチューブ12の壁12aの内部に形成されている。第1連通路71Aは、シリンダチューブ12の内部空間25とは別個に形成されている。第1連通路71Aは、シリンダチューブ12の第2側部12gに設けられている。第1側部12fと第2側部12gとは、上述したように、シリンダチューブ12の中心軸線Cを基準として互いに反対に位置する。第1給排ポート26及び第2給排ポート76は、シリンダチューブ12の第1側部12fに備えられており、第1連通路71Aは、シリンダチューブ12の第2側部12gに備えられている。第1給排ポート26及び第2給排ポート76をシリンダチューブ12の第1側部12fに配し、連通路71をシリンダチューブ12の第2側部12gに配しているのは、以下のような理由による。即ち、第1圧力室112内及び第2圧力室114内における流体の滞留を抑制し、マグネットチャック10の各部を流体によって効果的に冷却するためである。
【0039】
第1連通路71Aには、当該第1連通路71Aを流れる流体の流量を調整するための流量調整弁72、より具体的には、ニードルバルブが備えられる。上述したように、シリンダチューブ12の第2端部12eは、ワーク吸着面12cを含む第1端部12dの反対に位置する。流量調整弁72は、第2端部12eに備えられている。流量調整弁72は、シリンダチューブ12に形成された凹部73に装着されている。凹部73は、シリンダチューブ12の径方向の外側に向かって開口している。凹部73は、シリンダチューブ12の第2側面13Bにおいて開口している。凹部73の深さ方向は、シリンダチューブ12の径方向である。シリンダチューブ12の軸方向における凹部73の断面は、例えば円形である。凹部73には、後述するシール材75が装着される段部73aが形成されている。段部73aと流量調整弁72との隙間には、シール材75が装着されている。シール材75は、シリンダチューブ12と流量調整弁72との間をシールする。シール材75の材料としては、例えばフッ素ゴム等が用いられるが、これに限定されるものではない。
【0040】
第1連通路71Aは、第1連通孔74aと、第2連通孔74bとを含む。第1連通孔74aの一端は、ラッチヨーク20のうちの小径部20bの外周面とシリンダ孔24の壁面との間に形成される隙間114aに連通している。第1連通孔74a、即ち、連通孔は、第2圧力室114に連通する開口79aを有する。第2圧力室114に連通する開口79aは、シリンダチューブ12の第2側部12gに設けられている。第1連通孔74aの他端は、凹部73の底面において開口している。第1連通孔74aの中心軸線と流量調整弁72の中心軸線とは一致している。第2連通孔74bの上端は、凹部73の側面において開口している。第2連通孔74bは、シリンダチューブ12の壁12aの内部をシリンダチューブ12の下方に向かって延びている。第2連通孔74bの下端は、シリンダチューブ12に形成された環状凹部30に達している。第1連通路71Aは、下部ダンパ98に形成された溝98aを介して第1圧力室112に連通している。即ち、第2連通孔74bは、第1圧力室112に連通する開口79bを有する。第1圧力室112に連通する開口79bは、シリンダチューブ12の第2側部12gに設けられている。
【0041】
流量調整弁72には、ボディ部72aと、芯棒72bとが備えられている。ボディ部72aは、全体として円筒状に形成されている。芯棒72bは、全体として円柱状に形成されている。芯棒72bは、ボディ部72aによって囲われている。芯棒72bには、大径部72b1と小径部72b2とが備えられている。小径部72b2は、芯棒72bの先端に位置している。芯棒72bの小径部72b2、即ち、芯棒72bの先端は、第1連通孔74a内に挿入されている。芯棒72bを回動させると、芯棒72bの長手方向に当該芯棒72bが変位する。芯棒72bの長手方向に当該芯棒72bを変位させると、第1連通路71Aと芯棒72bとの隙間のサイズが変化し、第1連通路71Aにおける流体の流量が調整される。ピストンアセンブリ14を駆動させるときに第1圧力室112と第2圧力室114との間に充分な差圧を生じさせることを可能とすべく、第1連通路71Aと芯棒72bとの隙間のサイズは充分に小さく設定される。芯棒72bには、環状溝72b3が形成されている。環状溝72b3は、芯棒72bの径方向の外側に向かって開口している。環状溝72b3には、シール材77が装着されている。シール材77は、ボディ部72aと芯棒72bとの間をシールする。シール材77の材料としては、例えばフッ素ゴム等が用いられるが、これに限定されるものではない。
【0042】
第1給排ポート26と第1連通路71Aとは、第1圧力室112を介して連通する。ピストンアセンブリ14が下死点に位置している状態においても、図3に示すように、第1給排ポート26と第1連通路71Aとが第1圧力室112を介して連通している状態は維持される。
【0043】
第2給排ポート76と第1連通路71Aとは、第2圧力室114を介して連通する。ピストンアセンブリ14が上死点に位置している状態においても、図2に示すように、第2給排ポート76と第1連通路71Aとが第2圧力室114を介して連通している状態は維持される。
【0044】
こうして、本実施形態によるマグネットチャック10が構成されている。
【0045】
次に、本実施形態によるマグネットチャック10の動作について図2及び図3を用いて説明する。図2に示す状態、即ち、ピストンアセンブリ14が上死点(上昇端)に位置している状態を初期状態とする。
【0046】
ピストンアセンブリ14が上死点に位置している状態においては、永久磁石42を含むピストンアセンブリ14は、所定の磁気吸引力でラッチヨーク20に吸引されている。
【0047】
マグネットチャック10が使用に供される前の段階、例えば、搬送時等においては、マグネットチャック10に流体が供給されなくても、ラッチヨーク20の作用でピストンアセンブリ14が上死点の位置に保持される。これにより、マグネットチャック10が周囲の鉄材等を吸着するという不測の事態が回避され、安全が図られる。
【0048】
次に、マグネットチャック10を初期状態に維持しつつ、例えば、不図示のロボットを駆動して、当該マグネットチャック10をワークWに当接させる。より具体的には、マグネットチャック10の下面側を、ワークWに当接させる。
【0049】
次に、不図示の切換弁を操作することによって、第2圧力室114内への流体の供給を開始するとともに、第1圧力室112からの流体の排出を開始する。第2圧力室114内への流体の供給は、第2給排ポート76を介して行われる。第1圧力室112からの流体の排出は、第1給排ポート26を介して行われる。
【0050】
第2圧力室114内への流体の供給を開始するとともに、第1圧力室112からの流体の排出を開始すると、第1圧力室112と第2圧力室114との間に差圧が生ずる。このため、ピストンアセンブリ14を下方へ駆動させようとする力が、第1圧力室112と第2圧力室114との差圧に応じてピストンアセンブリ14に働く。ピストンアセンブリ14を下方へ駆動させようとする力が、ラッチヨーク20とピストンアセンブリ14との間に働く磁気吸引力を上回っていない段階においては、ピストンアセンブリ14は上死点に保持される。上述したように、流量調整弁72の芯棒72bと第1連通路71Aとの隙間のサイズは充分に小さく設定されるため、第2圧力室114内の圧力が第1圧力室112内の圧力に対して充分に高くなる。ピストンアセンブリ14を下方へ駆動させようとする力が、ラッチヨーク20とピストンアセンブリ14との間に働く磁気吸引力を上回ると、ピストンアセンブリ14は下降し始める。
【0051】
ピストンアセンブリ14が下降することに伴い、ラッチヨーク20とピストンアセンブリ14との間に働く磁気吸引力は次第に小さくなる。一方、ボトムヨーク80とピストンアセンブリ14との間に働く磁気吸引力、及び、アウタヨーク82とピストンアセンブリ14との間に働く磁気吸引力は、次第に大きくなる。
【0052】
ピストンアセンブリ14が更に下降すると、ボトムヨーク80がコアヨーク40の凹部56に入り込む。この後、カバーヨーク44の段部65が下部ダンパ98に当接し、ピストンアセンブリ14は下死点(下降端)に到達する。ピストンアセンブリ14が下死点に位置している状態においては、ワークWを通る磁束密度は最大になり、ワークWは最大の磁気吸引力でマグネットチャック10に吸引保持される。
【0053】
ワークWは、室温程度である場合もあるが、高温の場合もある。ワークWがマグネットチャック10に吸引保持されているときには、ワークWの熱がマグネットチャック10に伝達される。第1シール材62、第2シール材96、ピストンシール46、下部ダンパ98等の材料として用いられている例えばフッ素ゴム等は、著しく高い温度に対しては必ずしも耐え得ない。第1シール材62、第2シール材96、ピストンシール46、下部ダンパ98等が著しく高い温度になった場合には、第1シール材62、第2シール材96、ピストンシール46、下部ダンパ98等にダメージが加わる虞がある。これに対し、本実施形態では、第1圧力室112と第2圧力室114とが連通路71(第1連通路71A)を介して連通しているため、ピストンアセンブリ14が下死点に位置している状態においても、第1圧力室112内を流体が流れ続ける。このため、本実施形態によれば、マグネットチャック10を流体により冷却することができ、第1シール材62、第2シール材96、ピストンシール46、下部ダンパ98等にダメージが加わるのを抑制することができる。
【0054】
ピストンアセンブリ14が下死点に位置している状態で、ワークWが所定位置まで搬送される。即ち、マグネットチャック10がワークWを吸引保持している状態で、ワークWが所定位置まで搬送される。この後、ワークWをマグネットチャック10から解放するための操作が行われる。ワークWをマグネットチャック10から解放するための操作は、不図示の切換弁を操作することによって行われる。具体的には、第1圧力室112内への流体の供給が開始されるとともに、第2圧力室114からの流体の排出が開始される。第1圧力室112内への流体の供給を行うとともに、第2圧力室114からの流体の排出を行っている状態においても、第1圧力室112内には流体が流れ続ける。このため、第1圧力室112内への流体の供給を行うとともに、第2圧力室114からの流体の排出を行っている状態においても、マグネットチャック10が流体により冷却される。
【0055】
第1圧力室112内への流体の供給が開始されるとともに、第2圧力室114からの流体の排出が開始されると、ピストンアセンブリ14を上方へ駆動させようとする力が、第1圧力室112と第2圧力室114との差圧によって、ピストンアセンブリ14に働く。ピストンアセンブリ14を上方へ駆動させようとする力が、ボトムヨーク80とピストンアセンブリ14との間、及び、アウタヨーク82とピストンアセンブリ14との間に働く磁気吸引力を上回るまでは、ピストンアセンブリ14は下死点に位置する。ピストンアセンブリ14を上方へ駆動させようとする力が、ボトムヨーク80とピストンアセンブリ14との間、及び、アウタヨーク82とピストンアセンブリ14との間に働く磁気吸引力を上回ると、ピストンアセンブリ14は上昇し始める。
【0056】
ワークWに作用する磁気吸引力は、ピストンアセンブリ14の上昇に伴って次第に小さくなり、ワークWはマグネットチャック10による吸着から解放される。シールホルダ38のフランジ41が上部ダンパ104に当接すると、ピストンアセンブリ14の上昇が終了する。即ち、ピストンアセンブリ14が上死点に到達する。ピストンアセンブリ14には、ラッチヨーク20とピストンアセンブリ14との間に働く磁気吸引力に加えて、第1圧力室112と第2圧力室114との差圧が継続してピストンアセンブリ14に加わるため、ピストンアセンブリ14は上死点に確実に保持される。このため、ピストンアセンブリ14が不意に下降してワークWが吸着されることはない。ピストンアセンブリ14が上死点に保持されている状態においても、第1圧力室112内には流体が流れ続ける。このため、ピストンアセンブリ14が上死点に保持されている状態においても、マグネットチャック10が流体により冷却される。
【0057】
このように、本実施形態によれば、第1圧力室112と第2圧力室114とが連通路71(第1連通路71A)を介して連通している。このため、本実施形態によれば、シリンダチューブ12の内部空間25を流れ続ける流体によって、マグネットチャック10の各部が冷却される。ピストンアセンブリ14が下死点に位置している状態においても、第1圧力室112内及び第2圧力室114内に流体が流れ続ける。このため、本実施形態によれば、高温のワークWがマグネットチャック10によって吸着される場合であっても、第1シール材62、第2シール材96、ピストンシール46、下部ダンパ98等にダメージが加わるのを抑制することができる。従って、本実施形態によれば、耐熱性の良好なマグネットチャック10を提供することができる。
【0058】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態によるマグネットチャックについて図5及び図6を用いて説明する。図1図4に示す第1実施形態によるマグネットチャックと同一の構成要素には、同一の符号を付して説明を省略又は簡潔にする。図5及び図6は、本実施形態によるマグネットチャックを示す断面図である。ピストンアセンブリ14が上死点に位置している状態が図5には示されている。ピストンアセンブリ14が下死点に位置している状態が図6には示されている。
【0059】
図5及び図6に示すように、シリンダチューブ12の内部空間25の壁面には、溝116が形成されている。本実施形態では、第1圧力室112と第2圧力室114とを連通する連通路71(第2連通路71B)が、溝116によって構成されている。ピストンアセンブリ14を駆動させるときに第1圧力室112と第2圧力室114との間に充分な差圧を生じさせることを可能とすべく、第2連通路71Bを構成する溝116の深さ及び幅は充分に小さく設定される。第2連通路71Bは、第1実施形態における第1連通路71Aと同様に、シリンダチューブ12の第2側部12gに形成されている。上述したように、第1側部12fと第2側部12gとは、シリンダチューブ12の中心軸線Cを基準として互いに反対に位置する。第1給排ポート26及び第2給排ポート76は、シリンダチューブ12の第1側部12fに備えられており、第2連通路71Bは、シリンダチューブ12の第2側部12gに備えられている。
【0060】
第2連通路71Bを構成する溝116の下端は、溝98aが形成された下部ダンパ98に達している。第1給排ポート26と第2連通路71Bとは、第1圧力室112を介して連通している。ピストンアセンブリ14が下死点に位置している状態においても、図6に示すように、第1給排ポート26と第2連通路71Bとが第1圧力室112を介して連通している状態は維持される。
【0061】
溝116の上端は、ラッチヨーク20のうちの小径部20bの外周面に対面している。小径部20bの外周面とシリンダ孔24の壁面との間には、上述したように、隙間114aが形成される。隙間114aは、上述したように、第2圧力室114の一部である。第2給排ポート76と第2連通路71Bとは、第2圧力室114を介して連通している。ピストンアセンブリ14が上死点に位置している状態においても、図5に示すように、第2給排ポート76と第2連通路71Bとが第2圧力室114を介して連通している状態は維持される。
【0062】
なお、上記においては、1つの溝116によって第2連通路71Bが構成されている場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。複数の溝116によって第2連通路71Bが構成されてもよい。例えば、シリンダ孔24の周方向に複数の溝116が所定間隔で配されてもよい。
【0063】
このように、シリンダチューブ12の内部空間25の壁面に形成された溝116によって、連通路71(第2連通路71B)が構成されていてもよい。本実施形態においても、シリンダチューブ12の内部空間25を流れ続ける流体によって、マグネットチャック10の各部が冷却される。即ち、ピストンアセンブリ14が下死点に位置している状態においても、第1圧力室112内及び第2圧力室114内に流体が流れ続ける。このため、高温のワークWがマグネットチャック10によって吸着される場合であっても、第1シール材62、第2シール材96、ピストンシール46、下部ダンパ98等にダメージが加わるのを抑制することができる。従って、本実施形態においても、耐熱性の良好なマグネットチャック10を提供することができる。
【0064】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態によるマグネットチャックについて図7及び図8を用いて説明する。図1図6に示す第1又は第2実施形態によるマグネットチャックと同一の構成要素には、同一の符号を付して説明を省略又は簡潔にする。図7及び図8は、本実施形態によるマグネットチャックを示す断面図である。ピストンアセンブリ14が上死点に位置している状態が図7には示されている。ピストンアセンブリ14が下死点に位置している状態が図8には示されている。
【0065】
図7及び図8に示すように、シールホルダ38には、マグネットチャック10の上面側に向かって開口する円孔状凹部85が形成されている。円孔状凹部85は、環状凹部51の底面において開口している。円孔状凹部85の中心軸線は、後述する貫通孔87aの中心軸線と一致している。複数の円孔状凹部85がピストンアセンブリ14の周方向に沿って複数形成されている場合の例が図7及び図8には示されている。
【0066】
ピストンアセンブリ14には、第1圧力室112と第2圧力室114とを連通する連通路71(第3連通路71C)が更に形成されている。第3連通路71Cは、シールホルダ38を貫く貫通孔87aと、永久磁石42を貫く貫通孔87bと、リングプレート45を貫く貫通孔87cとが互いに接続されることによって構成されるが、これに限定されるものではない。第3連通路71Cは、第2圧力室114に連通する開口83aと、第1圧力室112に連通する開口83bとを有する。ピストンアセンブリ14を駆動させるときに第1圧力室112と第2圧力室114との間に充分な差圧を生じさせることを可能とすべく、第3連通路71Cの径は充分に小さく設定される。ここでは、ピストンアセンブリ14を駆動させるときに第1圧力室112と第2圧力室114との間に充分な差圧を生じさせることを可能とすべく、貫通孔87aの径が充分に小さく設定される。第3連通路71Cは、シリンダチューブ12の中心軸線Cと第2側部12gとの間に少なくとも形成されている。上述したように、第1側部12fと第2側部12gとは、シリンダチューブ12の中心軸線Cを基準として互いに反対に位置する。第1給排ポート26及び第2給排ポート76は、シリンダチューブ12の第1側部12fに備えられており、第3連通路71Cは、シリンダチューブ12の中心軸線Cと第2側部12gとの間に少なくとも備えられている。なお、複数の第3連通路71Cがピストンアセンブリ14の周方向に沿って複数形成されている場合の例が図7及び図8には示されている。
【0067】
第1給排ポート26と第3連通路71Cとは、第1圧力室112を介して連通している。ピストンアセンブリ14が下死点に位置している状態においても、図8に示すように、第1給排ポート26と第3連通路71Cとが第1圧力室112を介して連通している状態は維持される。
【0068】
第2給排ポート76と第3連通路71Cとは、第2圧力室114を介して連通している。ピストンアセンブリ14が上死点に位置している状態においても、図7に示すように、第2給排ポート76と第3連通路71Cとが第2圧力室114を介して連通している状態は維持される。
【0069】
このように、第1圧力室112と第2圧力室114とを連通する連通路71(第3連通路71C)がピストンアセンブリ14に形成されていてもよい。本実施形態においても、シリンダチューブ12の内部空間25を流れ続ける流体によって、マグネットチャック10の各部が冷却される。即ち、ピストンアセンブリ14が下死点に位置している状態においても、第1圧力室112内及び第2圧力室114内に流体が流れ続ける。このため、高温のワークWがマグネットチャック10によって吸着される場合であっても、第1シール材62、第2シール材96、ピストンシール46、下部ダンパ98等にダメージが加わるのを抑制することができる。従って、本実施形態においても、耐熱性の良好なマグネットチャック10を提供することができる。
【0070】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態によるマグネットチャックについて図9図11を用いて説明する。図9は、本実施形態によるマグネットチャックを示す背面図である。図10及び図11は、本実施形態によるマグネットチャックを示す断面図である。ピストンアセンブリ14が上死点に位置している状態が図10には示されている。ピストンアセンブリ14が下死点に位置している状態が図11には示されている。図1図8に示す第1~第3実施形態によるマグネットチャックと同一の構成要素には、同一の符号を付して説明を省略又は簡潔にする。
【0071】
本実施形態によるマグネットチャック10では、方向制御弁134が第1連通路71Aaに備えられている。
【0072】
シリンダチューブ12には、第1~第3実施形態において上述したシリンダチューブ12と同様に、第1圧力室112と第2圧力室114とを連通させる連通路71が形成されている。連通路71は、第1連通路71Aaを含む。第1連通路71Aaの一部は、シリンダチューブ12の壁12aの内部に形成されている。第1連通路71Aaは、シリンダチューブ12の内部空間25とは別個に形成されている。第1連通路71Aaは、第1実施形態において上述した第1連通路71Aと同様に、シリンダチューブ12の第2側部12gに設けられている。
【0073】
第1連通路71Aaは、第1連通孔74aを含む。本実施形態における第1連通孔74aは、第1実施形態において上述した第1連通孔74aと同様である。
【0074】
第1連通路71Aaは、第3連通孔74cを更に含む。シリンダチューブ12の壁12aの内部には、穴118が形成されている。穴118は、シリンダチューブ12の壁12aの内部をシリンダチューブ12の下方に向かって延びている。穴118は、凹部73を貫いている。穴118のうちの凹部73の下方に位置する部分が、第3連通孔74cを構成している。穴118のうちの上部は、封止部材120によって封止されている。第3連通孔74cの上端は、凹部73の側面において開口している。第3連通孔74cは、シリンダチューブ12の壁12aの内部をシリンダチューブ12の下方に向かって延びている。
【0075】
第1連通路71Aaは、第4連通孔74dを更に含む。第3連通孔74cの下端は、第4連通孔74dの一端に接続されている。第4連通孔74dの他端は、シリンダチューブ12の第2側面13Bにおいて開口している。
【0076】
第1連通路71Aaは、第5連通孔74eを更に含む。第5連通孔74eの上端は、後述するねじ穴130に連通している。第5連通孔74eの下端は、シリンダチューブ12に形成された環状凹部30に達している。第1連通路71Aaは、第1実施形態において上述した第1連通路71Aと同様に、下部ダンパ98に形成された溝98aを介して第1圧力室112に連通している。即ち、第5連通孔74eは、第1圧力室112に連通する開口79bを有する。第1圧力室112に連通する開口79bは、シリンダチューブ12の第2側部12gに設けられている。
【0077】
シリンダチューブ12の壁12aには、流路ブロック122が取り付けられている。流路ブロック122は、シリンダチューブ12の第2側部12gに取り付けられている。換言すれば、流路ブロック122は、マグネットチャック10の背面に取り付けられている。流路ブロック122は、側面123Aと、側面123Bとを有する。側面123Aと側面123Bとは、互いに反対に位置する。流路ブロック122の側面123Aは、シリンダチューブ12の第2側面13Bに接する。
【0078】
流路ブロック122の内部には、ブロック内流路124が形成されている。第1連通路71Aaは、ブロック内流路124を更に含む。ブロック内流路124は、第6連通孔74fを含む。流路ブロック122の側面123Aには、シール材142が装着される段部144が形成されている。第6連通孔74fの一端は、段部144において開口している。第6連通孔74fの中心軸線は、第4連通孔74dの中心軸線と一致している。第6連通孔74fの一端は、第4連通孔74dに連通している。第6連通孔74fの他端は、後述する凹部132の底面において開口している。段部144には、シール材142が装着されている。シール材142は、シリンダチューブ12の第2側面13Bと流路ブロック122の側面123Aとの間をシールする。シール材142の材料としては、例えばフッ素ゴム等が用いられるが、これに限定されるものではない。
【0079】
ブロック内流路124は、第7連通孔74gを更に含む。流路ブロック122の内部には、穴126が形成されている。穴126は、流路ブロック122の内部を上方に向かって延びている。穴126は、後述する貫通孔146を貫いている。穴126は、凹部132の側面に達している。穴126のうちの貫通孔146と凹部132との間に位置する部分が、第7連通孔74gを構成している。穴126のうちの下部は、封止部材128によって封止されている。第7連通孔74gの上端は、凹部132の側面において開口している。第7連通孔74gの下端は、貫通孔146の側面において開口している。
【0080】
シリンダチューブ12の壁12aの内部には、ねじ穴130が形成されている。ねじ穴130には、後述する中空ボルト154の先端部がねじ込まれる。ねじ穴130の一端は、第5連通孔74eに連通している。ねじ穴130の他端は、シリンダチューブ12の第2側面13Bにおいて開口している。ねじ穴130によって第1連通路71Aaの一部が構成される。
【0081】
流路ブロック122には、凹部132が形成されている。凹部132は、流路ブロック122の側面123Bにおいて開口している。凹部132の深さ方向は、側面123Bから側面123Aに向かう方向である。凹部132の底面は、後述する弁体134cが当接する弁座132aを構成する。
【0082】
凹部132には、流体が流れる方向を制御する方向制御弁134が装着されている。方向制御弁134としては、チェック弁134Aが用いられている。チェック弁134Aは、支持部134aと、バネ134bと、弁体134cとを有する。弁体134cは、支持部134aに対して動くことが可能である。弁体134cが動く方向は、支持部134aの中心軸線に沿った方向である。即ち、弁体134cが動く方向は、凹部132の深さ方向である。バネ134bは、弁座132aに向かって弁体134cを弾性的に付勢する。第6連通孔74f内の圧力が第7連通孔74g内の圧力よりも高い場合、弁体134cには、以下のような第1の力と第2の力とが加わる。第1の力は、第7連通孔74gと第6連通孔74fとの差圧に応じて弁体134cに加わる力である。第2の力は、バネ134bが弁体134cに加える力である。第1の力の方向と第2の力の方向とは、互いに反対の方向である。第1の力が第2の力より大きい場合、チェック弁134Aは開く。即ち、第7連通孔74g内の圧力に対して第6連通孔74f内の圧力が充分に高くなった場合、チェック弁134Aは開く。第1の力が第2の力より小さい場合、チェック弁134Aは閉じている。また、第6連通孔74f内の圧力が第7連通孔74g内の圧力よりも低い場合、チェック弁134Aは閉じている。チェック弁134Aは、第2圧力室114から第1連通路71Aaを介して第1圧力室112に向かう流体の流れを許容する。チェック弁134Aは、第1圧力室112から第1連通路71Aaを介して第2圧力室114に向かう流体の流れを阻止する。
【0083】
凹部132には、スナップリング(C形止め輪)138が装着される段部136が形成されている。段部136には、スナップリング138が装着されている。スナップリング138によって方向制御弁134が凹部132内に固定されている。
【0084】
方向制御弁134には、シール材140が装着されている。シール材140は、方向制御弁134と凹部132との間をシールする。シール材140の材料としては、例えばフッ素ゴム等が用いられるが、これに限定されるものではない。
【0085】
流路ブロック122には、貫通孔146が形成されている。貫通孔146の中心軸線は、ねじ穴130の中心軸線と一致している。流路ブロック122の側面123Aには、シール材150が装着される段部148が形成されている。貫通孔146の一端は、段部148において開口している。貫通孔146の一端は、ねじ穴130に連通している。流路ブロック122の側面123Bには、中空ボルト154の頭部154aが収容される凹部152が形成されている。貫通孔146の他端は、凹部152の底面において開口している。
【0086】
流路ブロック122は、中空ボルト154を用いてシリンダチューブ12の壁12aに取り付けられている。中空ボルト154には、空洞154bが備えられている。空洞154bの中心軸線は、中空ボルト154の中心軸線と一致している。中空ボルト154には、空洞154bに達する穴154cが形成されている。穴154cの中心軸線は、空洞154bの中心軸線に対して交差している。空洞154bの一端は、穴154c及び貫通孔146を介して、第7連通孔74gに連通している。空洞154bの他端は、ねじ穴130に連通している。空洞154bによってブロック内流路124の一部が構成されている。
【0087】
凹部152には、ガスケット156が装着されている。ガスケット156は、中空ボルト154と流路ブロック122との間をシールする。
【0088】
流路ブロック122の上部122aの厚さは、当該流路ブロック122の上部122a以外の部分の厚さと比較して薄い。流路ブロック122の上部122aには、貫通孔158が形成されている。貫通孔158の中心軸線は、凹部73の中心軸線と一致している。凹部73は、ねじ穴である。凹部73には、流量調整弁72の先端部がねじ込まれる。流路ブロック122の上部122aは、流量調整弁72を用いてシリンダチューブ12の壁12aに取り付けられている。
【0089】
第2圧力室114内への流体の供給を開始するとともに、第1圧力室112からの流体の排出を開始すると、第1圧力室112と第2圧力室114との間に差圧が生ずる。即ち、第2圧力室114から第1圧力室112に向かう方向にピストンアセンブリ14を駆動させようとする力が、第1圧力室112と第2圧力室114との間の差圧に応じて当該ピストンアセンブリ14に働く。第1圧力室112は第7連通孔74gに連通しており、第2圧力室114は第6連通孔74fに連通している。このため、ピストンアセンブリ14を駆動させようとする力が第2圧力室114から第1圧力室112に向かう方向に働くときには、チェック弁134Aを開こうとする力がチェック弁134Aに働く。即ち、チェック弁134Aを開こうとする力が、第1圧力室112と第2圧力室114との差圧に応じて、チェック弁134Aに働く。第2圧力室114内の圧力が第1圧力室112内の圧力に対して充分に高くなった場合、チェック弁134Aは開く。即ち、第7連通孔74g内の圧力に対して第6連通孔74f内の圧力が充分に高くなった場合、チェック弁134Aは開く。
【0090】
第1圧力室112内への流体の供給を開始するとともに、第2圧力室114からの流体の排出を開始すると、第1圧力室112と第2圧力室114との間に差圧が生ずる。即ち、第1圧力室112から第2圧力室114に向かう方向にピストンアセンブリ14を駆動させようとする力が、第1圧力室112と第2圧力室114との間の差圧に応じて当該ピストンアセンブリ14に働く。上述したように、第1圧力室112は第7連通孔74gに連通しており、第2圧力室114は第6連通孔74fに連通している。このため、第6連通孔74f内の圧力は、第7連通孔74g内の圧力より低くなる。従って、ピストンアセンブリ14を駆動させようとする力が第1圧力室112から第2圧力室114に向かう方向に働くときには、チェック弁134Aが閉じる。なお、方向制御弁134が閉じると、ピストンアセンブリ14が上死点に達した後においては(図10参照)、第1圧力室112内に流体が流入しなくなる。この段階においては、ワークWがマグネットチャック10から解放されているため、マグネットチャック10がワークWによって加熱されることはない。即ち、この段階においては、マグネットチャック10を流体によって冷却することを要しない。従って、第1圧力室112内に流体が流入しなくなっても、特段の問題はない。
【0091】
このように、本実施形態では、ピストンアセンブリ14を駆動させようとする力が第1圧力室112から第2圧力室114に向かう方向に働くとき、方向制御弁134が閉じる。本実施形態によれば、方向制御弁134が閉じるため、流体の浪費を防止することができる。
【0092】
(変形例)
次に、本実施形態の変形例によるマグネットチャックについて図12及び図13を用いて説明する。図12は、本実施形態によるマグネットチャックの一部を示す断面図である。ピストンアセンブリ14が上死点に位置している状態が図12には示されている。図13は、本実施形態によるマグネットチャックを示すブロック図である。
【0093】
本変形例によるマグネットチャック10では、方向制御弁134として電磁式方向制御弁134Bが用いられている。
【0094】
シリンダチューブ12には、第1~第3実施形態において上述したシリンダチューブ12と同様に、第1圧力室112と第2圧力室114とを連通させる連通路71が形成されている。連通路71は、第1連通路71Abを含む。第1連通路71Abの一部は、シリンダチューブ12の壁12aの内部に形成されている。第1連通路71Abは、シリンダチューブ12の内部空間25とは別個に形成されている。第1連通路71Abは、第1実施形態において上述した第1連通路71Aと同様に、シリンダチューブ12の第2側部12gに設けられている。
【0095】
第1連通路71Abは、第1連通孔74aを含む。本実施形態における第1連通孔74aは、第1実施形態において上述した第1連通孔74aと同様である。
【0096】
第1連通路71Abは、第3連通孔74cを更に含む。シリンダチューブ12の壁12aの内部には、穴118が形成されている。穴118は、シリンダチューブ12の壁12aの内部をシリンダチューブ12の下方に向かって延びている。穴118は、凹部73を貫いている。穴118のうちの凹部73の下方に位置する部分が、第3連通孔74cを構成している。穴118のうちの上部は、封止部材120によって封止されている。第3連通孔74cの上端は、凹部73の側面において開口している。第3連通孔74cは、シリンダチューブ12の壁12aの内部をシリンダチューブ12の下方に向かって延びている。第3連通孔74cの下端は、後述するポート160Aの側面において開口している。
【0097】
シリンダチューブ12の壁12aには、ポート160Aが形成されている。ポート160Aは、シリンダチューブ12の第2側面13Bにおいて開口している。ポート160Aは、第3連通孔74cに連通している。
【0098】
シリンダチューブ12の壁12aには、ポート160Bが形成されている。ポート160Bは、ポート160Aの下方に位置している。ポート160Bは、シリンダチューブ12の第2側面13Bにおいて開口している。ポート160Bは、第5連通孔74eに連通している。
【0099】
図13に示すように、電磁式方向制御弁134Bには、ポート164A、164Bが備えられている。ポート164Aは、流路166Aを介してポート160Aに連通している。ポート164Bは、流路166Bを介してポート160Bに連通している。
【0100】
電磁式方向制御弁168には、ポート170A、170B、170Cが備えられている。ポート170Aには、流路172を介して流体が供給される。ポート170Bは、流路174Aを介して第2給排ポート76に連通している。ポート170Cは、流路174Bを介して第1給排ポート26に連通している。
【0101】
制御装置176は、マグネットチャック10を制御する。制御装置176には、例えば、不図示の演算部(処理部)と、不図示の記憶部とが備えられている。演算部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ(processor)によって構成される。即ち、演算部は、処理回路(processing circuitry)によって構成される。記憶部に記憶されているプログラムが演算部によって実行されることで、マグネットチャック10に対する制御が行われる。
【0102】
電磁式方向制御弁134B、168は、制御装置176から供給される信号によって切り換えられる。制御装置176は、電磁式方向制御弁168を切り換え、第2給排ポート76を介して第2圧力室114内に流体を供給させる。第2給排ポート76を介して第2圧力室114内に流体を供給させる場合、制御装置176は、電磁式方向制御弁134Bを切り換え、第1連通路71Abにおける流体の流れを許容する。即ち、かかる場合、制御装置176は、電磁式方向制御弁134Bを開き、第1連通路71Abにおける流体の流れを許容する。これにより、流体は、第1連通路71Abを介して、第1圧力室112に導入される。
【0103】
また、制御装置176は、電磁式方向制御弁168を切り換え、第1給排ポート26を介して第1圧力室112内に流体を供給させる。第1給排ポート26を介して第1圧力室112内に流体を供給させる場合、制御装置176は、電磁式方向制御弁134Bを切り換え、第1連通路71Abにおける流体の流れを阻止する。即ち、かかる場合、制御装置176は、電磁式方向制御弁134Bを閉じ、第1連通路71Abにおける流体の流れを阻止する。これにより、第1連通路71Abを介して流体が第1圧力室112から第2圧力室114へと流れることが阻止される。
【0104】
本変形例においても、ピストンアセンブリ14を駆動させようとする力が第1圧力室112から第2圧力室114に向かう方向に働くとき、方向制御弁134が閉じられる。従って、本変形例においても、流体の浪費を防止することができる。
【0105】
[変形実施形態]
本発明についての好適な実施形態を上述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。
【0106】
例えば、第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせてもよい。即ち、第1連通路71Aと第2連通路71Bとがマグネットチャック10に備えられていてもよい。
【0107】
また、第1実施形態と第3実施形態とを組み合わせてもよい。即ち、第1連通路71Aと第3連通路71Cとがマグネットチャック10に備えられていてもよい。
【0108】
また、第2実施形態と第3実施形態とを組み合わせてもよい。即ち、第2連通路71Bと第3連通路71Cとがマグネットチャック10に備えられていてもよい。
【0109】
また、第1実施形態と第2実施形態と第3実施形態とを組み合わせてもよい。即ち、第1連通路71Aと第2連通路71Bと第3連通路71Cとがマグネットチャック10に備えられていてもよい。
【0110】
また、第4実施形態と第2実施形態とを組み合わせてもよい。即ち、第1連通路71Aaと第2連通路71Bとがマグネットチャック10に備えられていてもよい。また、第4実施形態の変形例と第2実施形態とを組み合わせてもよい。即ち、第1連通路71Abと第2連通路71Bとがマグネットチャック10に備えられていてもよい。
【0111】
また、第4実施形態と第3実施形態とを組み合わせてもよい。即ち、第1連通路71Aaと第3連通路71Cとがマグネットチャック10に備えられていてもよい。また、第4実施形態の変形例と第3実施形態とを組み合わせてもよい。即ち、第1連通路71Abと第3連通路71Cとがマグネットチャック10に備えられていてもよい。
【0112】
また、第4実施形態と第2実施形態と第3実施形態とを組み合わせてもよい。即ち、第1連通路71Aaと第2連通路71Bと第3連通路71Cとがマグネットチャック10に備えられていてもよい。また、第4実施形態の変形例と第2実施形態と第3実施形態とを組み合わせてもよい。即ち、第1連通路71Abと第2連通路71Bと第3連通路71Cとがマグネットチャック10に備えられていてもよい。
【0113】
上記実施形態をまとめると以下のようになる。
【0114】
マグネットチャック(10)は、ワーク(W)が吸着されるワーク吸着面(12c)を有するシリンダチューブ(12)と、永久磁石(42)を含むとともに、前記シリンダチューブの内部空間(25)内を移動可能であり、前記シリンダチューブの前記内部空間を第1圧力室(112)と第2圧力室(114)とに隔てるピストンアセンブリ(14)と、前記シリンダチューブに形成され、前記第1圧力室に連通する第1給排ポート(26)と、前記シリンダチューブに形成され、前記第2圧力室に連通する第2給排ポート(76)と、前記第1圧力室と前記第2圧力室とを連通させる連通路(71)と、を備える。このような構成によれば、第1圧力室と第2圧力室とを連通させる連通路が形成されているため、第1圧力室内及び第2圧力室内に流体が流れ続ける。ピストンアセンブリが下死点に位置している状態においても、第1圧力室内及び第2圧力室内に流体が流れ続ける。このため、高温のワークがマグネットチャックによって吸着される場合であっても、マグネットチャックの構成要素にダメージが加わるのを抑制することができる。従って、このような構成によれば、耐熱性の良好なマグネットチャックを提供することができる。
【0115】
前記連通路は、第1連通路(71A、71Aa、71Ab)を含み、前記第1連通路の少なくとも一部は、前記シリンダチューブの壁(12a)の内部に形成されており、前記第1連通路は、前記シリンダチューブの前記内部空間とは別個に形成されており、前記第1連通路は、前記第1圧力室に連通する開口(79b)と、前記第2圧力室に連通する開口(79a)とを有してもよい。
【0116】
前記ピストンアセンブリを前記内部空間内で移動させるときに生ずる衝撃を緩和するダンパ(98)を更に備え、前記第1連通路は、前記ダンパに形成された溝(98a)を介して前記第1圧力室に連通してもよい。
【0117】
前記第1給排ポートは、前記ダンパに形成された他の溝(98a)を介して前記第1圧力室に連通してもよい。
【0118】
前記第1連通路を流れる流体の流量を調整するための流量調整弁(72)を更に備えてもよい。このような構成によれば、第1連通路を流れる流体の流量を適宜調整することができる。
【0119】
前記シリンダチューブは、前記ワーク吸着面を含む第1端部(12d)と、前記第1端部とは反対の第2端部(12e)とを含み、前記流量調整弁は、前記第2端部に備えられていてもよい。このような構成によれば、ワークと流量調整弁との間の距離を充分に確保することができるため、流量調整弁に備えられたシール材等にダメージが加わるのを充分に抑制することができる。
【0120】
前記第1連通路は、前記第2圧力室に連通する前記開口を有する連通孔(74a)を含み、前記連通孔の中心軸線と前記流量調整弁の中心軸線とが一致してもよい。
【0121】
前記第1連通路(71Aa、71Ab)には、流体が流れる方向を制御する方向制御弁(134)が更に備えられ、前記第1圧力室は、前記第2圧力室と前記ワーク吸着面との間に位置し、前記ピストンアセンブリを駆動させようとする力が前記第2圧力室から前記第1圧力室に向かう方向に働くときには、前記方向制御弁が開き、前記ピストンアセンブリを駆動させようとする力が前記第1圧力室から前記第2圧力室に向かう方向に働くときには、前記方向制御弁が閉じてもよい。このような構成によれば、流体の浪費を防止することができる。
【0122】
前記方向制御弁は、チェック弁(134A)であり、前記チェック弁は、前記第2圧力室から前記第1連通路を介して前記第1圧力室に向かう前記流体の流れを許容するとともに、前記第1圧力室から前記第1連通路を介して前記第2圧力室に向かう前記流体の流れを阻止してもよい。
【0123】
前記シリンダチューブの前記壁に取り付けられる流路ブロック(122)を更に備え、前記第1連通路は、前記流路ブロックの内部に形成されたブロック内流路(124)を有し、前記チェック弁は、前記流路ブロックに設けられていてもよい。
【0124】
前記流路ブロックは、中空ボルト(154)を用いて前記シリンダチューブの前記壁に取り付けられ、前記中空ボルトに備えられた空洞(154b)によって前記ブロック内流路の一部が構成されてもよい。このような構成によれば、マグネットチャックの小型化等に寄与することができる。
【0125】
前記方向制御弁は、制御装置から供給される信号によって切り換えられる電磁式方向制御弁(134B)であり、前記第2給排ポートを介して前記第2圧力室内に流体が供給されるときには、前記第1連通路における前記流体の流れが許容されるように前記電磁式方向制御弁が切り換えられ、前記第1給排ポートを介して前記第1圧力室内に前記流体が供給されるときには、前記第1連通路における前記流体の流れが阻止されるように前記電磁式方向制御弁が切り換えられてもよい。
【0126】
前記連通路は、前記シリンダチューブの前記内部空間の壁面に形成された溝(116)から成る第2連通路(71B)を含んでもよい。
【0127】
前記連通路は、前記ピストンアセンブリに形成された第3連通路(71C)を含み、前記第3連通路は、前記第1圧力室に連通する開口(83b)と、前記第2圧力室に連通する開口(83a)とを有してもよい。
【0128】
前記シリンダチューブは、前記シリンダチューブの中心軸線(C)を基準として互いに反対に位置する第1側部(12f)と第2側部(12g)とを含み、前記第1給排ポート及び前記第2給排ポートは、前記第1側部に設けられており、前記連通路は、前記第2側部又は前記第2側部と前記中心軸線との間に少なくとも設けられていてもよい。このような構成によれば、より効果的にマグネットチャックの構成要素を冷却することができるため、より耐熱性の良好なマグネットチャックを提供することができる。
【符号の説明】
【0129】
10:マグネットチャック 12:シリンダチューブ
12a:壁 12b、21、39:凹溝
12c:ワーク吸着面 12d:第1端部
12e:第2端部 12f:第1側部
12g:第2側部 13A:第1側面
13B:第2側面 14:ピストンアセンブリ
16、138:スナップリング 18:ボトムカバー
20:ラッチヨーク 20a、41:フランジ
20b、66、72b2、102a:小径部
22:嵌合部
23、32、65、73a、82c、136、144、148:段部
24:シリンダ孔 25:内部空間
26:第1給排ポート 27:ラッチヨークシール
28:第1流体給排孔 30、51:環状凹部
35:挿通孔 38:シールホルダ
40:コアヨーク 42:永久磁石
44:カバーヨーク 45:リングプレート
46:ピストンシール
48、87a~87c、88、146、158:貫通孔
50:内向きフランジ 52:筒状突出部
54:ねじ孔
56、73、102、132、152:凹部
60:固定ねじ
60a、154a:頭部 62:第1シール材
64、72b1、102b:大径部 68a、68b、72b3:環状溝
70a、70b:ウエアリング 71:連通路
71A、71Aa、71Ab:第1連通路 71B:第2連通路
71C:第3連通路 72:流量調整弁
72a:ボディ部 72b:芯棒
74a:第1連通孔 74b:第2連通孔
74c:第3連通孔 74d:第4連通孔
74e:第5連通孔 74f:第6連通孔
74g:第7連通孔
75、77、140、142、150:シール材
76:第2給排ポート
79a、79b、81a、81b、83a、83b:開口
80:ボトムヨーク 80a、90:下部フランジ
82:アウタヨーク 82a:上部フランジ
82b:外周凹部 84:連結板
85:円孔状凹部 86:ハウジング
94:タイロッド 96:第2シール材
98:下部ダンパ 98a、116:溝
104:上部ダンパ 106:環状突出部
110:第2流体給排孔 112:第1圧力室
114:第2圧力室 114a:隙間
118、126、154c:穴 120、128:封止部材
122:流路ブロック 122a:上部
123A、123B:側面 124:ブロック内流路
130:ねじ穴 134:方向制御弁
134A:チェック弁
134B、168:電磁式方向制御弁 154:中空ボルト
154b:空洞 156:ガスケット
160A、160B、164A、164B、170A~170C:ポート
166A、166B、172、174A、174B:流路
176:制御装置 C:中心軸線
W:ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13