(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022041921
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】パラジウム-銅-銀-ルテニウム合金
(51)【国際特許分類】
C22C 5/04 20060101AFI20220304BHJP
C22F 1/14 20060101ALI20220304BHJP
C22C 30/00 20060101ALI20220304BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20220304BHJP
【FI】
C22C5/04
C22F1/14
C22C30/00
C22F1/00 625
C22F1/00 623
C22F1/00 661A
C22F1/00 685Z
C22F1/00 686A
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 682
C22F1/00 660Z
C22F1/00 630C
C22F1/00 630A
C22F1/00 640B
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021133644
(22)【出願日】2021-08-18
(31)【優先権主張番号】20193903.0
(32)【優先日】2020-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】515131116
【氏名又は名称】ヘレウス ドイチェラント ゲーエムベーハー ウント カンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】フェヒャー ヨナス
(72)【発明者】
【氏名】シュタウト ニコル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高い導電性を有し、高い硬度を有するが、製造が簡単であり、表面にできるだけ高い耐酸化性を有する合金を提供する。
【解決手段】パラジウムを主成分とするパラジウム-銅-銀合金であって、当該パラジウム-銅-銀合金は、少なくとも1.05かつ最大で1.6の銅に対するパラジウムの重量比を有し、少なくとも3かつ最大で6の銀に対するパラジウムの重量比を有し、このパラジウム-銅-銀合金は、1重量%超かつ最大6重量%までのルテニウム、ロジウム又はルテニウム及びロジウムを含有し、残部として、パラジウム、銅及び銀並びに最大で1重量%の不純物を含めた他の金属元素を含有するパラジウム-銅-銀合金に関する。パラジウム-銅-銀合金から作製されるワイヤ、ストリップ又はプローブ針、及び電気接点をテストするための、又は電気接点を生成するための、又は摺動接点を製造するためのこのようなパラジウム-銅-銀合金の使用にも関する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラジウムを主成分とするパラジウム-銅-銀合金であって、前記パラジウム-銅-銀合金は、少なくとも1.05かつ最大で1.6の銅に対するパラジウムの重量比を有し、少なくとも3かつ最大で6の銀に対するパラジウムの重量比を有し、前記パラジウム-銅-銀合金は、1重量%超かつ最大6重量%までのルテニウム、ロジウム又はルテニウム及びロジウムを含有し、残部として、パラジウム、銅及び銀並びに最大で1重量%の不純物を含めた他の金属元素を含有するパラジウム-銅-銀合金。
【請求項2】
前記不純物の合計が、前記パラジウム-銅-銀合金中に最大で0.9重量%、好ましくは最大で0.1重量%の割合を有することを特徴とする請求項1に記載のパラジウム-銅-銀合金。
【請求項3】
前記パラジウム-銅-銀合金が1重量%までのレニウムを含有し、前記パラジウム-銅-銀合金が、好ましくは0.1重量%未満のロジウムを含有し、特に好ましくは前記パラジウム-銅-銀合金が、1重量%超かつ最大で2重量%のルテニウム及び0.1重量%~1重量%のレニウム、なお特に好ましくは少なくとも1.1重量%かつ最大で1.5重量%のルテニウム及び0.2重量%~0.8重量%のレニウム、とりわけ好ましくは1.1重量%のルテニウム及び0.4重量%のレニウムを含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のパラジウム-銅-銀合金。
【請求項4】
前記パラジウム-銅-銀合金が、少なくとも45重量%かつ最大で55重量%のパラジウム、少なくとも30重量%かつ最大で45重量%の銅及び少なくとも8重量%かつ最大で15重量%の銀を含有し、好ましくは前記パラジウム-銅-銀合金は、少なくとも50重量%かつ最大で53重量%のパラジウム、少なくとも35重量%かつ最大で38重量%の銅及び少なくとも9重量%かつ最大で12重量%の銀、並びに少なくとも1.1重量%かつ最大3重量%までのルテニウム、ロジウム、又はルテニウム及びロジウムを含有し、特に好ましくは前記パラジウム-銅-銀合金は、少なくとも51重量%かつ最大で52重量%のパラジウム、少なくとも36重量%かつ最大で37重量%の銅及び少なくとも10重量%かつ最大で11重量%の銀を含有し、さらに少なくとも1.1重量%~最大で2重量%のルテニウム、ロジウム又はルテニウム及びロジウムを含有し、最大で0.5重量%の他の金属元素、特に0.3重量%~0.5重量%のレニウムを含有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のパラジウム-銅-銀合金。
【請求項5】
前記パラジウム-銅-銀合金が溶融冶金によって製造され、その後、圧延及び焼き戻しによって硬化され、前記パラジウム-銅-銀合金が好ましくは少なくとも350HV1の硬度を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のパラジウム-銅-銀合金。
【請求項6】
前記パラジウム-銅-銀合金が少なくとも350HV1の硬度を有し、かつ/又は少なくとも19%IACS(11×106S/m)の電気伝導率を有し、かつ/又は少なくとも1300MPaの破壊強度を有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のパラジウム-銅-銀合金。
【請求項7】
前記パラジウム-銅-銀合金が、ルテニウム、ロジウム、若しくはルテニウム及びロジウムの混合物、又はルテニウム及びレニウムの混合物の析出物を含有し、好ましくは前記析出物の少なくとも90体積%が前記パラジウム-銅-銀合金,の粒界に配置され、特に好ましくは前記析出物の少なくとも99体積%が前記パラジウム-銅-銀合金の粒界に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のパラジウム-銅-銀合金。
【請求項8】
前記パラジウム-銅-銀合金が少なくとも1.2かつ最大で1.55の銅に対するパラジウムの重量比を有し、好ましくは少なくとも1.3かつ最大で1.5の銅に対するパラジウムの重量比を有し、特に好ましくは少なくとも1.35かつ最大で1.45の銅に対するパラジウムの重量比を有し、なお特に好ましくは1.41の銅に対するパラジウムの重量比を有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のパラジウム-銅-銀合金。
【請求項9】
前記パラジウム-銅-銀合金が少なくとも3.5かつ最大で5.5の銀に対するパラジウムの重量比を有し、好ましくは少なくとも4かつ最大で5.5の銀に対するパラジウムの重量比を有し、特に好ましくは少なくとも4.6かつ最大で5.2の銀に対するパラジウムの重量比を有し、なお特に好ましくは4.9の銀に対するパラジウムの重量比を有することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のパラジウム-銅-銀合金。
【請求項10】
前記パラジウム-銅-銀合金が、少なくとも1.1重量%のルテニウム、ロジウム、又はルテニウム及びロジウムを含有することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のパラジウム-銅-銀合金。
【請求項11】
前記パラジウム-銅-銀合金が、最大で5重量%のルテニウム、ロジウム、又はルテニウム及びロジウム、好ましくは最大で4重量%のルテニウム、ロジウム、又はルテニウム及びロジウム、特に好ましくは最大で3重量%のルテニウム、ロジウム、又はルテニウム及びロジウム、なお特に好ましくは最大で2重量%のルテニウム、ロジウム、又はルテニウム及びロジウムを含有することを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のパラジウム-銅-銀合金。
【請求項12】
前記パラジウム-銅-銀合金が、1重量%超かつ最大6重量%までのロジウム又はルテニウムを含有し、好ましくは1重量%超かつ最大3重量%までのロジウム又はルテニウムを含有し、特に好ましくは少なくとも1.1重量%かつ最大2重量%までのロジウム又はルテニウムを含有し、なお特に好ましくは1.5重量%のロジウム又は1.5重量%のルテニウムを含有することを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のパラジウム-銅-銀合金。
【請求項13】
前記パラジウム-銅-銀合金が、1重量%超かつ最大6重量%までのルテニウム及びレニウムを含有し、好ましくは少なくとも1.1重量%かつ最大3重量%までのルテニウム及びレニウムを含有し、特に好ましくは少なくとも1.1重量%かつ最大2重量%までのルテニウム及びレニウムを含有し、なお特に好ましくは1.1重量%のルテニウム及び0.4重量%のレニウムを含有することを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のパラジウム-銅-銀合金。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載のパラジウム-銅-銀合金からなるか、又は請求項1から請求項13のいずれか1項に記載のパラジウム-銅-銀合金を有するワイヤ、ストリップ又はプローブ針であって、好ましくは前記ワイヤ、前記ストリップ又は前記プローブ針の少なくとも1つの内部コアは前記パラジウム-銅-銀合金からなるワイヤ、ストリップ又はプローブ針。
【請求項15】
電気接点をテストするため、又は電気接点を生成するため、又は摺動接点を生成するための、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載のパラジウム-銅-銀合金又は請求項14に記載のワイヤ、ストリップ若しくはプローブ針の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラジウム-銅-銀合金(PdCuAg合金)、及びそのようなパラジウム-銅-銀合金から作製されるワイヤ、ストリップ又はプローブ針、並びに電気接点をテストするための、又は電気接点を生成するための、又は摺動接点を製造するためのそのようなパラジウム-銅-銀合金の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
チップ製造時には、分離前の状態の集積回路(IC)の動作性をテストするために、加工直後にウェハにプローブ針を接触させる。個々のチップを構成した後には、機能性について半導体ウェハを検査するために、プローブ針のアレイが用いられる。プローブ針は、ウェハのデザインに合わせたプローブカードに固定されている。テストプロセスでは、ウェハをプローブ針に押し付け、プローブ針とICのパッドの間に接触が確立され、アルミニウムパッドの場合は、パッシベーション層を介して接触が確立される。その後、接触状態や高電流密度時の電気的特性値、温度変化時の電気的挙動等、様々なパラメータがテストされる。
【0003】
プローブ針は、このように、パワーエレクトロニクスの製造、チップ及び他の電気回路の接触で、電気接点の品質をテストするために使用される(例えば、米国特許出願公開第2014/0266278A1号明細書及び米国特許出願公開第2010/0194415A1号明細書を参照)。
【0004】
優れたプローブ針の重要なパラメータは、高い導電性及び高い硬度であり、高い導電性が重要であるのは大電流を伝達する必要があるためであり、高い硬度が重要であるのはメンテナンス間隔を短くするためである。現在、いわゆるプローブ針には、導電性及び熱伝導性が高く、かつ硬度及び引張強度の高い金属又は合金が使用されている。純銅の電気伝導率(100%IACS=58.1×106S/m)が基準として使用されている。しかしながら、銅(Cu)及び銀(Ag)は延性がありすぎて使用中にプローブ針が変形してしまう可能性が高いため、このような用途には使用できない。
【0005】
しかしながら、プローブ針に加えて、高い導電性と熱伝導性を持ち、同時に高い硬度及び引張強度等の良好な機械的特性も持つ材料の他の用途もメリットをもたらし、特に摺動接点用のワイヤ等の用途でメリットがある。摺動接点の場合、一方では表面による接触抵抗が低いこと、他方では材料の摩耗、すなわち擦り切れや浸食が早すぎないことが重要である。
【0006】
パワーエレクトロニクスにおけるプローブ針又は摺動ワイヤ等の用途では、高い導電性に加えて、高い機械的強度及び硬度も求められる。この場合、耐温度性又は耐熱性も重要である。
【0007】
プローブ針用の代表的な材料は、10%の金及び10%の白金を含むことができ、例えば、Paliney(登録商標)7、Hera6321、及びHera648という製品名で販売されている析出硬化型のパラジウム-銀合金である。これらの合金は、400~500HVの高い硬度を持つ。しかしながら、電気伝導率は9~12%IACSとかなり低い。プローブ針にとって、高い導電性は非常に重要な要素である。アルミパッドのテストには、タングステン、タングステンカーバイド、パラジウム-銅-銀合金、タングステン-レニウム等に材料から作製されたプローブ針が広く使われている。これらは特に硬度が高く、アルミパッドは金パッドよりも堅牢で、硬い針でのテストにも金パッドよりも耐えることができる。これらのプローブ針も、電気伝導率があまり高くはない。CuAg7等の電気伝導率の高い合金は、パラジウム-銀合金又はパラジウム-銅-銀合金よりも硬度が低く(約320HV1)、耐熱性も低い。
【0008】
パラジウム合金(Pd合金)としては、例えば、Deringer Ney(デリンジャー・ネイ)のPaliney(登録商標)H3C又はAdvanced Probing(アドバンスト・プロービング)のNewTec(登録商標)等が金パッドに使用されることが知られている。適切なパラジウム-銅-銀合金は、米国特許第1,913,423A号明細書及び英国特許出願公開第354 216A号明細書からすでに知られている。パラジウム-銅-銀合金は、超格子を有する構造を形成することができ、これにより、合金の導電性及び機械的安定性が向上する。このとき、格子内の原子はもはや統計的にランダムに分布しているのではなく、超格子という周期的な構造で配列されている。その結果、350HV1超の硬さ(9.81N(1キロポンド)の試験力でDIN EN ISO 6507-1:2018~-4:2018に従ったビッカース硬さ試験)、19.5%IACS超の電気伝導率、1500MPaまでの破断強度が可能になる。
【0009】
米国特許出願公開第2014/377129A1号明細書及び米国特許第5,833,774A号明細書は、電気的用途のための硬化したAg-Pd-Cu合金を開示している。そのようなパラジウム-銅-銀合金は、約9%~12%IACSの電気伝導率、及び400~500HV1の硬度を有する。より高い電気伝導率が望まれるであろう。米国特許第10,385,424B2号明細書は、5重量%までのレニウムを追加で含むパラジウム-銅-銀合金を開示している。このパラジウム-銅-銀合金は、Paliney(登録商標)25という製品名で販売されている。このようにして、電気伝導率を大幅に向上させることができ、19.5%IACS超の値を達成することができる。しかしながら、レニウムの融点は3180℃と非常に高く、それゆえ他の金属と複雑な方法で合金化しなければならないということは短所である。レニウムの高い密度(21g/cm3)も、他の元素(パラジウム(Pd)、銅(Cu)、銀(Ag))の密度とは大きく異なり、これも同様に他の元素との合金化を複雑にする。加えて、レニウムは、プローブ針の使用温度に近い400℃超の温度ですでに酸化してしまう。表面の酸化物は、プローブ針や摺動接点の機能を制限する可能性がある。さらには、プローブ針用の材料として使用するための合金の電気伝導率及び/又は硬度をさらに高めることも望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/0266278A1号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/0194415A1号明細書
【特許文献3】米国特許第1,913,423A号明細書
【特許文献4】英国特許出願公開第354 216 A号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2014/377129A1号明細書
【特許文献6】米国特許第5,833,774A号明細書
【特許文献7】米国特許第10,385,424B2号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明は、先行技術の欠点を克服するという課題に対処するものである。特に、高い導電性を有し、同時に高い硬度を有するが、同時に製造が簡単であり、表面にできるだけ高い耐酸化性を有する合金及びワイヤ、ストリップ又はプローブ針が提供される必要がある。これらの成形体は、同等の合金と比較して、可能な限り費用対効果の高い方法で生産可能であるべきである。この合金及び製品は、電気接点をテストするためのプローブ針として使用可能である必要がある。
【0012】
従って、本発明の目的は、公知のパラジウム-銅-銀合金の機械的特性(硬度、降伏強度、弾力性)と、より高い導電性とを組み合わせた、公知のパラジウム-銅-銀合金のような合金を見出すことである。このタイプのパラジウム-銅-銀合金は、特にプローブ針用の材料として使用する場合に、決定的な技術的利点がある。
【0013】
本発明が対処するさらなる課題は、上述の特性を満足するプローブ針を提供することである。このような合金から作製された複数のワイヤを含む摺動接点用のワイヤを開発することも、さらなる課題として考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明が対処する課題は、パラジウムを主成分とするパラジウム-銅-銀合金であって、当該パラジウム-銅-銀合金は、少なくとも1.05かつ最大で1.6の銅に対するパラジウムの重量比を有し、少なくとも3かつ最大で6の銀に対するパラジウムの重量比を有し、当該パラジウム-銅-銀合金は、1重量%超かつ最大6重量%までのルテニウム、ロジウム又はルテニウム及びロジウムを含有し、残部として、パラジウム、銅及び銀並びに最大で1重量%の不純物を含めた他の金属元素を含有するパラジウム-銅-銀合金によって解決される。
【0015】
少なくとも1.05かつ最大で1.6の銅に対するパラジウムの重量比は、パラジウムが、当該パラジウム-銅-銀合金に含有される銅の重量の少なくとも105%かつ最大で160%の重量で当該パラジウム-銅-銀合金に含有されるということを意味する。
【0016】
それゆえ、少なくとも3かつ最大で6の銀に対するパラジウムの重量比は、パラジウムが、当該パラジウム-銅-銀合金に含有される銀の重量少なくとも3倍かつ最大で6倍の重量で当該パラジウム-銅-銀合金に含有されるということを意味する。
【0017】
複数の元素の混合物は、好ましくは、これらの元素のすべてが少なくとも0.1重量%、当該パラジウム-銅-銀合金に含有されている混合物を意味すると理解される。
【0018】
主成分とは、本願の場合には、主に、すなわち定量的に最大の構成要素である元素(この場合はパラジウム)を意味すると理解され、すなわち、本願の場合には、当該パラジウム-銅-銀合金中に、銅又は銀よりも多くのパラジウムが存在することを意味すると理解される。
【0019】
不純物は、本明細書中では、関係するすべての元素の存在によって引き起こされる不純物を意味すると理解される。
【0020】
当該パラジウム-銅-銀合金は、好ましくは、プローブ針及び/又は摺動接点の製造に適している。
【0021】
当該合金が1重量%超かつ最大6重量%までのルテニウム及びロジウムを含有するということは、ルテニウム及びロジウムの重量比率の合計が、当該合金全体の重量の1重量%超かつ最大6重量%までを構成することを意味する。一般に、当該合金がほぼ又は正確にX重量%のルテニウム及びロジウムを含有するということは、ルテニウム及びロジウムの重量比率の合計が、当該合金全体の重量のX重量%に相当する割合を占めることを意味する。
【0022】
当該合金は、特に好ましくは、ルテニウム及びロジウムの混合物の場合、1.5重量%のロジウム及びルテニウムを有する。
【0023】
不純物の合計が、当該パラジウム-銅-銀合金中に最大で0.9重量%、好ましくは最大で0.1重量%の割合を有するということを提供することができる。
【0024】
これにより、当該パラジウム-銅-銀合金の物理的特性が、不純物の影響を受けない、又は可能な限り少ない影響しか受けないようにすることができる。
【0025】
さらには、当該パラジウム-銅-銀合金が、1重量%までのレニウムを含有し、当該パラジウム-銅-銀合金は、好ましくは0.1重量%未満のロジウムを含有し、特に好ましくは当該パラジウム-銅-銀合金が、1重量%超かつ最大で2重量%のルテニウム及び0.1重量%~1重量%のレニウム、なお特に好ましくは少なくとも1.1重量%かつ最大で1.5重量%のルテニウム及び0.2重量%~0.8重量%のレニウム、特に好ましくは1.1重量%のルテニウム及び0.4重量%のレニウムを含有するということを提供することができる。
【0026】
当該パラジウム-銅-銀合金は、好ましくは1重量%超かつ最大で6重量%のルテニウムを含有する。
【0027】
このパラジウム-銅-銀合金は、驚くべきことに、実験で28%IACS(11×106S/m)という特に高い電気伝導率を示し、同時に365HV1という高い硬度を示した。これは、当該パラジウム-銅-銀合金の粒界に生じたルテニウム-レニウムの析出物が原因であると考えられる。
【0028】
さらには、当該パラジウム-銅-銀合金は、少なくとも45重量%かつ最大で55重量%のパラジウム、少なくとも30重量%かつ最大で45重量%の銅及び少なくとも8重量%かつ最大で15重量%の銀を含有し、好ましくは当該パラジウム-銅-銀合金は、少なくとも50重量%かつ最大で53重量%のパラジウム、少なくとも35重量%かつ最大で38重量%の銅及び少なくとも9重量%かつ最大で12重量%の銀、並びに少なくとも1.1重量%かつ最大3重量%までのルテニウム、ロジウム又はルテニウム及びロジウムを含有し、特に好ましくは当該パラジウム-銅-銀合金は、少なくとも51重量%かつ最大で52重量%のパラジウム、少なくとも36重量%かつ最大で37重量%の銅及び少なくとも10重量%かつ最大で11重量%の銀を含有し、少なくとも1.1重量%~最大で2重量%のルテニウム、ロジウム又はルテニウム及びロジウムを含有し、最大で0.5重量%の他の金属元素、特に0.3重量%~0.5重量%のレニウムを含有するということを提供することができる。
【0029】
これらの組成のパラジウム-銅-銀合金は、結晶格子内のパラジウム原子及び銅原子がランダムに分布するのではなく、結晶格子内のパラジウム原子及び銅原子の均一な秩序によって合金内に形成される超格子のため、特に高い導電性を有する。驚くべきことに、この効果は、当該パラジウム-銅-銀合金に含有されるルテニウム又はロジウムの析出物によって高められるようである。同時に、高い硬度が提供される。
【0030】
当該パラジウム-銅-銀合金が溶融冶金によって製造され、その後、圧延及び焼き戻しによって硬化され、当該パラジウム-銅-銀合金が好ましくは少なくとも350HV1の硬度を有するということも好ましく提供することができる。
【0031】
このようにして、当該パラジウム-銅-銀合金の硬度を向上させることができる。
【0032】
本発明に係るパラジウム-銅-銀合金は、当該パラジウム-銅-銀合金が少なくとも350HV1の硬度を有するということも特徴とすることができる。
【0033】
本発明はさらに、少なくとも19%IACSの電気伝導率を有することを特徴とする本発明に係るパラジウム-銅-銀合金に関する。
【0034】
本発明に係るパラジウム-銅-銀合金は、少なくとも1300MPaの破断強度を有することを特徴とすることもできる。
【0035】
これらの物理的特性を有するパラジウム-銅-銀合金は、本発明に係るルテニウム及びロジウムの添加により可能であり、プローブ針の製造に特に適している。
【0036】
当該パラジウム-銅-銀合金が、ルテニウム、ロジウム、若しくはルテニウム及びロジウムの混合物、又はルテニウム及びレニウムの混合物の析出物を含有し、好ましくはこの析出物の少なくとも90体積%が当該パラジウム-銅-銀合金の粒界に配置され、特に好ましくはこの析出物の少なくとも99体積%が当該パラジウム-銅-銀合金の粒界に配置されているということも提供することができる。
【0037】
その結果、例えば、破断強度及び耐変形性等の機械的特性が向上する。その結果、当該パラジウム-銅-銀合金は、プローブ針としての使用性が向上する。
【0038】
さらには、当該パラジウム-銅-銀合金が少なくとも1.2かつ最大で1.55の銅に対するパラジウムの重量比を有し、好ましくは少なくとも1.3かつ最大で1.5の銅に対するパラジウムの重量比を有し、特に好ましくは少なくとも1.35かつ最大で1.45の銅に対するパラジウムの重量比を有し、なお特に好ましくは1.41の銅に対するパラジウムの重量比を有するということを提供することができる。
【0039】
これらの重量比は、特に高い高い導電性を持つパラジウム-銅-銀合金を提供する。
【0040】
当該パラジウム-銅-銀合金が少なくとも3.5かつ最大で5.5の銀に対するパラジウムの重量比を有し、好ましくは少なくとも4かつ最大で5.5の銀に対するパラジウムの重量比を有し、特に好ましくは少なくとも4.6かつ最大で5.2の銀に対するパラジウムの重量比を有し、なお特に好ましくは4.9の銀に対するパラジウムの重量比を有するということも提供することができる。
【0041】
これらの重量比も、特に高い導電性を持つパラジウム-銅-銀合金を提供する。
【0042】
当該パラジウム-銅-銀合金が、少なくとも1.1重量%のルテニウム、ロジウム、又はルテニウム及びロジウムを含有するということも好ましく提供することができる。
【0043】
これにより、当該パラジウム-銅-銀合金の導電性及び機械的特性が向上する。
【0044】
さらには、当該パラジウム-銅-銀合金が、最大で5重量%のルテニウム、ロジウム、又はルテニウム及びロジウム、好ましくは最大で4重量%のルテニウム、ロジウム、又はルテニウム及びロジウム、特に好ましくは最大で3重量%のルテニウム、ロジウム、又はルテニウム及びロジウム、なお特に好ましくは最大で2重量%のルテニウム、ロジウム又はタングステン、ルテニウム及びロジウムを含有するということを提供することができる。
【0045】
これらの措置も、当該パラジウム-銅-銀合金の導電性を高めるのに役立つ。
【0046】
当該パラジウム-銅-銀合金が、1重量%超かつ最大6重量%までのロジウム又はルテニウムを含有し、好ましくは1重量%超かつ最大3重量%までのロジウム又はルテニウムを含有し、特に好ましくは少なくとも1.1重量%かつ最大2重量%までのロジウム又はルテニウムを含有し、なお特に好ましくは1.5重量%のロジウム又は1.5重量%のルテニウムを含有するということも提供することができる。
【0047】
これらのパラジウム-銅-銀合金は、特に高い機械的硬度(HV1)を特徴とする。
【0048】
あるいは、当該パラジウム-銅-銀合金は、1重量%超かつ最大6重量%までのルテニウム及びレニウムを含有し、好ましくは少なくとも1.1重量%かつ最大3重量%までのルテニウム及びレニウムを含有し、特に好ましくは少なくとも1.1重量%かつ最大2重量%までのルテニウム及びレニウムを含有し、なお特に好ましくは1.1重量%のルテニウム及び0.4重量%のレニウムを含有するということを提供することができる。
【0049】
レニウムよりも多くのルテニウムが当該パラジウム-銅-銀合金に含有されるということを提供することができる。
【0050】
このタイプのパラジウム-銅-銀合金は、特に高い導電性を特徴とする。
【0051】
本発明が対処する課題は、本発明に係るパラジウム-銅-銀合金からなるか、又は本発明に係るパラジウム-銅-銀合金を有するワイヤ、ストリップ又はプローブ針であって、好ましくは、このワイヤ、ストリップ又はプローブ針の少なくとも1つの内部コアが当該パラジウム-銅-銀合金からなるワイヤ、ストリップ又はプローブ針によっても解決される。
【0052】
このようなパラジウム-銅-銀合金で作製されたワイヤ、ストリップ及びプローブ針は、その高い硬度、弾性、及び導電性に起因して電気接点測定に特に適している。
【0053】
本発明が対処する課題は、電気接点をテストするための、又は電気接点を生成するための、又は摺動接点を生成するための、本発明に係るパラジウム-銅-銀合金の使用、又は本発明に係るワイヤ若しくはストリップの使用、又は本発明に係るプローブ針の使用によっても解決される。
【0054】
当該パラジウム-銅-銀合金並びにそれから製造されるワイヤ、ストリップ及びプローブ針は、これらの用途に特に適している。
【0055】
本発明は、本発明に係るパラジウム-銅-銀合金が、高い導電性と高い硬度及び破断強度を兼ね備え、同時に製造が容易であり、かつ/又は特に硬度が高いという驚くべき発見に基づく。ルテニウムの密度(12.4g/cm3)及びロジウムの密度(12g/cm3)、並びにこれらの金属の融点(ルテニウムは2334℃、ロジウムは1964℃)は、パラジウム、銅、銀の密度及び融点にかなり近く、それゆえ、例えばレニウムのように密度及び融点がより大きく異なる金属よりも、これらの金属と容易に合金化できる。加えて、当該パラジウム-銅-銀合金の表面は、400℃前後の高温でも酸化されにくい。ルテニウム及びロジウムは約700℃からしか酸化物を形成しない。本発明に係る合金から製造されたワイヤ、ストリップ及びプローブ針は、対応する有利な特性を有する。ルテニウム又はルテニウム及びレニウムを含むパラジウム-銅-銀合金を測定すれば、27%及び28%のIACSの電気伝導率さえも達成することができる。ロジウムを含有するパラジウム-銅-銀合金では、驚くほどの高硬度が得られた。
【0056】
本発明では、23%IACS以上の電気伝導率が可能である。100%IACSは58m/(Ω・mm2)に相当する。
【0057】
パラジウム-銅-銀合金の合金成分としてのルテニウム又はロジウムの使用は、これらの元素の化学的特性が異なるため、レニウムの使用と比較して驚くべきことである。レニウムと比較して、ロジウム及びルテニウムは、ともに周期表の異なる主族及び周期に属しており、このことは、第一近似として、非常に異なる特性と異なる合金の挙動を示唆している。ロジウム及びルテニウムは白金族金属であるのに対し、レニウムはマンガンと同じ族に属するため、特性の類似性は期待できない。レニウムは六方晶系結晶構造を有するのに対し、ロジウムは面心立方構造を有する。
【0058】
ルテニウムは、レニウムよりも低い銀への溶解度を有する(レニウムについての1.44×10-3と比較してルテニウムについては2.65×10-4)。このことは、本発明に係るパラジウム-銅-銀合金の導電性にプラスの影響を与えるはずである。加えて、電子顕微鏡による研究では、1.1重量%~1.5重量%のルテニウムを含有するパラジウム-銅-銀合金の粒界にルテニウムの析出物が見られた。これらは、析出硬化によって当該パラジウム-銅-銀合金の硬度を高めることにつながりうる。
【0059】
本発明に係るパラジウム-銅-銀合金は、高い硬度、良好な弾力性、及び同時に良好な導電性を特徴とする。それゆえ、本発明に係るパラジウム-銅-銀合金は、プローブ針を製造するための材料として使用するのに理想的である。
【0060】
パラジウムと銅との重量比(1.05~1.6)については、適切な熱処理によって結晶格子における秩序ある超構造(超格子とも呼ばれる)を設定することができる。パラジウム及び銅の原子が規則正しく並んでいることで、当該パラジウム-銅-銀合金の硬度及び導電性がともに向上するのである。銀に対するパラジウムの比が3~6で銀を合金化することで、析出硬化による強度のさらなる向上が可能になる。1重量%~6重量%の範囲でルテニウム、ロジウム、又はルテニウム及びロジウムを合金化することは、驚くべきことに、微細な結晶粒の形成に寄与し、このことは、当該パラジウム-銅-銀合金の硬度及び成形性にプラスの影響を与える。加えて、好ましくは粒界に配置されていると推定されるルテニウム、ロジウム又はそれらの混合物は、動作温度での結晶粒の成長とクリープとを防止する。その結果、当該合金から製造されるプローブ針の耐久性が向上する。1重量%までのレニウムをルテニウムとともに合金化することができる。27%~30%のIACSで達成される電気伝導率と400HV超の硬度は、プローブ針としての使用に特に適している。このように、ルテニウムを添加した本発明に係るパラジウム-銅-銀合金の導電性及び硬度に関する物理的特性は、Paliney(登録商標)25の物理的特性よりも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】
図1は、検討したHera-6321合金の微細構造画像を示す。
【
図2】
図2は、検討したPdCuAgRu合金の微細構造画像を示す。
【
図3】
図3は、検討したPdCuAgRuRe合金の微細構造画像を示す。
【
図4】
図4は、検討したPdCuAgRh合金の微細構造画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
本発明の例示的な実施形態を、しかしながら本発明を限定することなく、以下に説明する。
【0063】
以下に説明するパラジウム-銅-銀合金は、まず誘導溶解によって母合金を製造することによって製造した。母合金として、パラジウム-ルテニウム、パラジウム-レニウム、及びパラジウム-ロジウムの母合金を製造した。元素パラジウム、ルテニウム及びロジウムの融点及び密度は互いにあまり変わらないため、母合金の製造は大きな労力を必要とせず、簡単で費用対効果の高いものである。
【0064】
次いで、これらの母合金を、アーク溶解によって銅及び銀と合金化した。このようにして溶融した成形体を、次いで、熱処理及び圧延によって成形し硬化する。この目的のために、成形体を900℃で120分間焼き戻し、急冷した。この成形体を、900℃で120分の中間焼鈍を数回行いながら、室温で0.4mmに圧延し、その後380℃で1.5時間保持し、この結果、硬化効果が得られた。
【0065】
その後、四点測定法で電気伝導率を測定した。四点測定法は、四端子測定法、四線測定法、ケルビン測定法とも呼ばれ、シート抵抗、すなわち表面又は薄層の電気抵抗を測定する方法である。この方法では、フィルムの表面に4つの測定点を一列に配置し、2つの外側の測定点を介して既知の電流を流し、2つの内側の測定点を用いて電位差、すなわちこれら2つの内側の測定点間の電圧を測定する。この方法は、四線式測定の原理に基づいているため、測定点と表面との間の接触抵抗にはほとんど依存しない(トムソンブリッジの原理)。隣接する測定点はそれぞれ同じ間隔を有する。シート抵抗Rは、測定された電圧U及び電流Iから、次の式によって算出される。
【数1】
【0066】
シート抵抗Rから層材料の比抵抗ρを算出するには、シート抵抗Rにフィルムの厚さd(層の厚さ)を乗じる。
ρ=dR
【0067】
電気伝導率は、比抵抗の逆数から導かれる。
【0068】
硬度を調べ(HV1 - 9.81N(1キロポンド)の試験力でDIN EN ISO 6507-1:2018~-4:2018に従ったビッカース硬さ試験)、強度を引張試験によって調べ、微細構造を金属組織切片によって調べた。
【0069】
以下のパラジウム-銅-銀合金を製造し、検討した。
1. 51.5Pd、36.5Cu、10.5Ag、1.5Ru(PdCuAgRu)
2. 51.5Pd、36.5Cu、10.5Ag、1.1Ru、0.4Re(PdCuAgRuRe)
3. 51.5Pd、36.5Cu、10.5Ag、1.5Rh(PdCuAgRh)
【0070】
データは常に合金中の重量パーセント(重量%)を示す。加えて、これらの合金は、0.1重量%未満の濃度で従来の不純物を含有する。
【0071】
比較のために、Pd39重量%、Cu31重量%、Ag29重量%、Zn0.9重量%、及びB0.1重量%の組成を有する商品名:Hera 6321によるパラジウム-銅-銀合金も検討した。
【0072】
【0073】
PdCuAgRu合金、PdCuAgRuRe合金及びPdCuAgRh合金の測定は、厚さ0.4mmを有する金属板で行った。Hera-6321合金は、厚さ54μmの金属板で測定した。
【0074】
検討した合金の微細構造画像を、4つの図を参照して以下に説明する。
図1:検討したHera-6321合金の微細構造画像を示す。
図2:検討したPdCuAgRu合金の微細構造画像を示す。
図3:検討したPdCuAgRuRe合金の微細構造画像を示す。
図4:検討したPdCuAgRh合金の微細構造画像を示す。
【0075】
すべての微細構造画像(
図1~
図4)は、析出硬化状態の合金を示している。これらの画像は、光学顕微鏡(反射型光学顕微鏡、明視野)を用いて合金の断面を撮影して得た。析出物をより見やすくするために、微細構造のエッチングで表面を整えた。
図2~
図4では、貴金属合金の明るいマトリクスの中の暗いコントラストとして析出物が合金の中に示されている。
図1では、合金中の銀の析出物は、暗いマトリクス中の明るいコントラストとして見ることができる。
【0076】
析出物はPdCuAgRuRe合金の方がPdCuAgRu合金よりも小さく、より分散している。PdCuAgRh合金は最も小さい析出物を持つ。しかしながら、析出物の大きさは、合金の品質の指標ではない。
【0077】
測定の結果、Hera 6321と比較して、1重量%超のルテニウム、ロジウム、又はルテニウム及びロジウムを含有する本発明に係るパラジウム-銅-銀合金の高い電気伝導率が示された(2.3倍~3倍高い)。同時に、ルテニウム又はロジウムを含む当該パラジウム-銅-銀合金の硬度は、Hera 6321の硬度よりもわずかに(約10%)低いにすぎない。ルテニウムを含有する当該パラジウム-銅-銀合金は、米国特許第10,385,424B1号明細書に係るパラジウム-銅-銀合金よりも幾分高い電気伝導率を有してさえいる。ロジウムを含有する当該パラジウム-銅-銀合金は、より高い硬度を特徴とする。
【0078】
上記の説明並びに特許請求の範囲、図及び例示的な実施形態に開示された本発明の特徴は、その様々な実施形態において本発明を実現するために、個別にも任意の組み合わせでも本質的でありうる。
【外国語明細書】