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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022041936
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】フッ素オイルを含む組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20220304BHJP
   C11D 7/50 20060101ALI20220304BHJP
   C11D 7/30 20060101ALI20220304BHJP
   C11D 7/28 20060101ALI20220304BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20220304BHJP
【FI】
C09D201/00
C11D7/50
C11D7/30
C11D7/28
C09D7/63
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021136153
(22)【出願日】2021-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2020146120
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲上 翼
(72)【発明者】
【氏名】加留部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】吉山 麻子
【テーマコード(参考)】
4H003
4J038
【Fターム(参考)】
4H003DA09
4H003DC01
4H003ED19
4H003ED22
4H003ED26
4H003ED29
4H003FA03
4H003FA04
4J038JA11
4J038NA27
(57)【要約】
【課題】1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz)及び/又は1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(HFE-356mec)、並びに、フッ素オイルを含む新規な組成物を提供する。
【解決手段】(A)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz)及び/又は1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(HFE-356mec)、並びに(B)フッ素オイルを含む、組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz)及び/又は1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(HFE-356mec)、並びに
(B)フッ素オイル
を含む、組成物。
【請求項2】
前記フッ素オイルが、パーフルオロポリエーテル化合物、パーフルオロポリエーテル基及び官能基を含有する化合物並びにクロロトリフルオロエチレンの低重合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記(A)成分及び前記(B)成分の総量に対して、
前記(A)成分の含有割合が1質量%以上99.99質量%以下であり、
前記(B)成分の含有割合が0.01質量%以上99質量%以下である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
コーティング剤用である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz)及び/又は1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(HFE-356mec)を含むことを特徴とする、フッ素オイルを除去するための溶剤用組成物又は洗浄用組成物。
【請求項6】
1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz)及び/又は1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(HFE-356mec)を含む洗浄剤を用いて、フッ素オイルを除去する、洗浄方法。
【請求項7】
1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz)及び/又は1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(HFE-356mec)を含む溶剤を用いて、フッ素オイルを溶解させる、溶解方法。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物を塗布する工程を含む、コーティング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フッ素オイルを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイドロフルオロエーテル(HFE)は、地球温暖化係数(GWP:Global Warming Potential)及びオゾン層破壊係数(ODP:Ozone Depletion Potential)が小さく、毒性が低いことから、クロロフルオロカーボン(CFC)及びハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)の代替品として注目されている。
【0003】
特許文献1には、HFEの一種である1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテルと、ヘキサフルオロイソプロパノールとを含む共沸混合物様組成物を含む洗浄剤が開示されている。
【0004】
特許文献2には、その他のHFEである1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロ-3-メトキシ-プロパンと、1-ブロモプロパンとを含む共沸混合物様組成物を、洗浄プロセスにおいて、冷媒として用いることができることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】日本国特開2015-143359号公報
【特許文献2】日本国特表2011-506681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz)及び/又は1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(HFE-356mec)、並びに、フッ素オイルを含む新規な組成物を提供することを目的とする。また、本開示は、HFE-356mmz及び/又はHFE-356mecを含む、フッ素オイルを除去するための溶剤用組成物又は洗浄用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、以下の項に記載の発明を包含する。
項1.
(A)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz)及び/又は1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(HFE-356mec)、並びに
(B)フッ素オイル
を含む、組成物。
項2.
前記フッ素オイルが、パーフルオロポリエーテル化合物、パーフルオロポリエーテル基及び官能基を含有する化合物並びにクロロトリフルオロエチレンの低重合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物である、項1に記載の組成物。
項3.
前記(A)成分及び前記(B)成分の総量に対して、
前記(A)成分の含有割合が1質量%以上99.99質量%以下であり、
前記(B)成分の含有割合が0.01質量%以上99質量%以下である、項1又は2に記載の組成物。
項4.
コーティング剤用である、項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
項5.
1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz)及び/又は1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(HFE-356mec)を含むことを特徴とする、フッ素オイルを除去するための溶剤用組成物又は洗浄用組成物。
項6.
1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz)及び/又は1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(HFE-356mec)を含む洗浄剤を用いて、フッ素オイルを除去する、洗浄方法。
項7.
1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz)及び/又は1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(HFE-356mec)を含む溶剤を用いて、フッ素オイルを溶解させる、溶解方法。
項8.
請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物を塗布する工程を含む、コーティング方法。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、HFE-356mmz及び/又はHFE-356mecとフッ素オイルとを含む新規な組成物を提供することができる。また、本開示によれば、HFE-356mmz及び/又はHFE-356mecを含む、フッ素オイルを除去するための溶剤用組成物又は洗浄用組成物提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、以下の実施形態を含む。
【0010】
本開示の組成物は、(A)成分と(B)成分とを含む。本開示において、(A)成分とは、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz)及び/又は1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(HFE-356mec)である。本開示において、(B)成分とは、フッ素オイルである。
【0011】
(B)成分であるフッ素オイルは、パーフルオロポリエーテル化合物、パーフルオロポリエーテル基及び官能基を含有する化合物並びにクロロトリフルオロエチレンの低重合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物であることが好ましい。
【0012】
パーフルオロポリエーテル化合物としては、例えば、次の一般式(1)で表される構成単位を含む化合物が挙げられる。
一般式(1):-(OC2n)-
[当該式中、nは1、2、3又は4を示す。]
【0013】
パーフルオロポリエーテル化合物の市販品としては、製品名「クライトックス(登録商標)GPLオイル、143オイル、真空ポンプオイル」(ケマーズ株式会社製)、製品名「デムナムS-20」、「デムナムS-65」、「デムナムS-200」(ダイキン工業株式会社製)、製品名「フォンブリンM」、「フォンブリンZ」、「フォンブリンY」(ソルベイスペシャルティポリマーズジャパン株式会社製)、製品名「バリエルタ」(NOKクリューバー社製)等が挙げられる。
【0014】
パーフルオロポリエーテル基及び官能基を含有する化合物としては、例えば、次の一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
一般式(2):(Rf-PEPE-Z-A
[当該式中、PFPEは、各出現においてそれぞれ独立して、式:
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF
(式中、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は少なくとも1であり、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。)で表される基であり;
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1~16のアルキル基を表し;
は、単結合又は2価の有機基を表し;
xは1又は2であり;
Aは、各出現においてそれぞれ独立して、-OH、-SH、-NR、-COOR、-SOH、-PO(OR、又は-SO(OR)であり;
Rは、水素原子又は炭化水素基である。]
【0015】
上記一般式(2)で表されるパーフルオロポリエーテル基及び官能基を含有する化合物としては、例えば、パーフルオロポリエーテル基含有カルボン酸化合物(パーフルオロポリエーテル基含有モノカルボン酸化合物又はパーフルオロポリエーテル基含有ジカルボン酸化合物)、パーフルオロポリエーテル基含有エステル化合物、パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物、パーフルオロポリエーテル基含有ヒドロキシル化合物、パーフルオロポリエーテル基含有アミノ化合物、パーフルオロポリエーテル基含有アミド化合物、パーフルオロポリエーテル基含有チール化合物、パーフルオロポリエーテル基含有スルホン酸化合物、パーフルオロポリエーテル基含有ホスホン酸エステル化合物、パーフルオロポリエーテル基含有スルホン酸エステル化合物が挙げられる。これらのパーフルオロポリエーテル基及び官能基を含有する化合物の中でも、パーフルオロポリエーテル基含有モノカルボン酸化合物、パーフルオロポリエーテル基含有ジカルボン酸化合物又はパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物が好ましい。
【0016】
パーフルオロポリエーテル基含有カルボン酸化合物(パーフルオロポリエーテル基含有モノカルボン酸化合物又はパーフルオロポリエーテル基含有ジカルボン酸化合物)、パーフルオロポリエーテル基含有エステル化合物、パーフルオロポリエーテル基含有ヒドロキシル化合物及びパーフルオロポリエーテル基含有エステル化合物は、例えば、次の一般式(3)で表される化合物が挙げられる。
一般式(3):X1-O-Rf-Y
[当該式中、-Rfは、(CO)、(CFO)、(CO)タイプ(ここで、(CO)単位は式-(CFCF(CF)O)または(CF(CF)CFO)-の単位を表し得る);(CF(CF)zCFO)-(ここで、zは1または2の整数である);
-CR4R5CFCFO-(ここで、R4およびR5は、互いに同じかまたは異なって、H、Clまたは例えば1~4の炭素原子を有するパーフルオロアルキルから選択される);の単位を含む、数平均分子量500~10,000を有するパーフルオロポリオキシアルキレン鎖であり、上記の単位は主鎖に沿って統計的に分布している;
-X1およびYは末端基であり、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アミノ基、エステル基、を少なくとも一つ含み、一つの場合の片末端はCF基を有す。]
【0017】
パーフルオロポリエーテル基含有ジカルボン酸化合物の具体例としては、例えば、ダイキン工業社製の「HOOCCF-O-[(CFCFO)28-(CFO)22]-CFCOOH」等が挙げられる。パーフルオロポリエーテル基含有モノカルボン酸化合物の具体例としては、例えば、ダイキン工業社製の「CF-O-[(CFCFO)28-(CFO)22]-CFCOOH」等が挙げられる。パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の市販品としては、例えば、信越化学工業社製のKY-100シリーズ(KY-178、KY-185、KY-195等)、ダイキン工業社製のオプツール(登録商標)DSX、オプツール(登録商標)AES、オプツール(登録商標)UF503、オプツール(登録商標)UD509、旭硝子社製のAfluid(登録商標)S550が挙げられ、パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の具体例としては、例えば、ダイキン工業社製のオプツール(登録商標)UD500等が挙げられる。
【0018】
本明細書において、クロロトリフルオロエチレンの低重合物とは、数平均分子量が1万以下のクロロトリフルオロエチレンの重合物を意味する。
【0019】
クロロトリフルオロエチレンの低重合物の市販品としては、製品名「ダイフロイル#1」、「ダイフロイル#3」、「ダイフロイル#10」、「ダイフロイル#20」、「ダイフロイル#50」、「ダイフロイル#100」(ダイキン工業株式会社製)等が挙げられる。
【0020】
本開示において、充分な潤滑性及び充分な塗膜の強度を確保するために、(B)成分として、20℃における動粘度が30cst以上2000cst以下のフッ素オイル又は25℃における動粘度が100cst以上2000cst以下のフッ素オイルを使用することが好ましい。本開示において、より充分な潤滑性及びより充分な塗膜の強度を確保するために、(B)成分として、20℃における動粘度が50cst以上1500cst以下のフッ素オイル又は25℃における動粘度が300cst以上1500cst以下のフッ素オイルを使用することがより好ましい。
【0021】
本開示において、(B)成分であるフッ素オイルは、パーフルオロポリエーテル化合物、パーフルオロポリエーテル基含有モノカルボン酸化合物、パーフルオロポリエーテル基含有ジカルボン酸化合物、パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物及びクロロトリフルオロエチレンの低重合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物であることがより好ましい。
【0022】
本開示において、(A)成分及び(B)成分の総量に対して、(A)成分の含有割合が1質量%以上99.99質量%以下であり、且つ、(B)成分の含有割合が0.01質量%以上99質量%以下であることが好ましい。このような範囲内であれば、組成物中の(A)成分及び(B)成分が良好な溶解性を示し、且つ、均一な組成物を得ることができる。なお、本明細書において、(A)成分及び(B)成分の総量とは、組成物中の(A)成分の含有割合及び(B)成分の含有割合の合計が100質量%であることを意味する。
【0023】
本開示において、(A)成分及び(B)成分の総量に対して、(A)成分の含有割合が1質量%以上99.9質量%以下であり、且つ、(B)成分の含有割合が0.1質量%以上99質量%以下であることがより好ましい。
【0024】
本開示において、(A)成分及び(B)成分の総量に対して、(A)成分の含有割合が20質量%以上99.5質量%以下であり、且つ、(B)成分の含有割合が0.5質量%以上80質量%以下であることがより一層好ましい。
【0025】
本開示において、(A)成分及び(B)成分の総量に対して、(A)成分の含有割合が50質量%以上99質量%以下であり、且つ、(B)成分の含有割合が1質量%以上50質量%以下であることが特に好ましい。
【0026】
後述の比較例1に記載の通り、HFE-356mmzをフッ素オイルに溶解させるためには、本開示の組成物はHFIPを含有しないことが好ましい。
【0027】
本開示において、組成物の総量100質量%中、(A)成分及び(B)成分の合計量は好ましくは50質量%超、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、より一層好ましくは99質量%以上、特に好ましくは99.5質量%以上である。
【0028】
本開示の組成物、(A)成分及び(B)成分のみからなることが最も好ましい(但し、(A)成分及び(B)成分以外の不可避的不純物の含有は許容される)。
【0029】
これまで、HFE-356mmz又はHFE-356mecと、フッ素オイルとの相溶性が優れることは知られていなかった。しかしながら、本開示の発明者らは、膨大数のHFEとオイルとの組み合わせを試行錯誤した結果、驚くべきことに、HFE-356mmz又はHFE-356mecと、フッ素オイルとを組み合わせた組成物であれば、フッ素オイルの含有量を上述のように高濃度に設定しても、濁りが生じることなく、HFE-356mmz又はHFE-356mecと、フッ素オイルとの高い相溶性により、透明色の組成物が得られることを見出した。
【0030】
本明細書において、透明色とは、組成物が均一であり、濁りの生じていない状態であることを意味する。
【0031】
本開示の組成物は、HFE-356mmz又はHFE-356mecと、フッ素オイルとの相溶性に優れ、これらの混合液の沸点が適度に高いため、コーティング剤として好適に使用可能である。
【0032】
また、かかる優れた相溶性を得るべく、本開示の組成物の沸点は、好ましくは40℃以上100℃以下であり、より好ましくは50℃90℃以下である。本開示の組成物をコーティング剤として使用する場合、該組成物の沸点がこの温度範囲であれば、溶解性が良く、蒸発がより抑制される。
【0033】
本明細書において、コーティング剤とは、常温下では液体状態で存在し、主に物品の表面の保護、つや出し等を目的としたコーティング膜を形成するために塗布される混合物を意味する。
【0034】
本開示の別の実施形態は、本開示の組成物を塗布する工程を含む、コーティング方法である。
【0035】
本開示の別の実施形態は、HFE-356mmz及び/又はHFE-356mecを含むことを特徴とする、フッ素オイルを除去するための溶剤用組成物又は洗浄用組成物である。
【0036】
除去対象のフッ素オイルは、パーフルオロポリエーテル化合物、パーフルオロポリエーテル基及び官能基を含有する化合物並びにクロロトリフルオロエチレンの低重合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物であることが好ましく、これらの中でもパーフルオロポリエーテル化合物が特に好ましい。なお、上記パーフルオロポリエーテル化合物、上記パーフルオロポリエーテル基及び官能基を含有する化合物並びに上記クロロトリフルオロエチレンの低重合物については、上述したとおりである。
【0037】
(任意の添加物)
本開示の組成物は、HFE-356mmz又はHFE-356mecに加えて、HFE-356mmz又はHFE-356mec以外のその他の溶剤、酸化防止剤、安定剤、防腐剤及び界面活性剤からなる群より選択される少なくとも一種上を含んでもよい。
【0038】
その他の溶剤としては、アルカン化合物、アルケン化合物、クロロアルカン化合物、クロロアルケン化合物、ハイドロフルオロアルカン化合物、フルオロアルケン化合物、クロロフルオロアルケン化合物、アルコール化合物等、付加したい特性に合わせて幅広く使用することができる。但し、本開示において、その他の溶剤として、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を使用することは好ましくない。例えば、鉱物油を溶解させる目的で、クロロアルケン化合物である1,2-ジクロロエチレン、クロロフルオロアルケン化合物である1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン等を添加することが挙げられる。また、アルコール化合物であるイソプロピルアルコール(IPA)、1-ブタノール、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロ―1-ヘプタノール等を添加することが挙げられる。本開示において、その他の溶剤としては、アルコール化合物が好ましい。該アルコール化合物としては、イソプロピルアルコール(IPA)、1-ブタノール及び2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロ―1-ヘプタノールからなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、イソプロピルアルコール(IPA)がより好ましい。その他の溶剤を混合する場合、本開示の組成物は、組成物100質量%に対して、その他の溶剤を0.1質量%以上50質量%未満含有することが好ましく、0.5質量%以上20質量%以下含有することがより好ましく、1質量%以上10質量%以下含有することがさらに好ましい。
【0039】
安定剤は、安定化効果を発揮することでいわゆる受酸剤又は酸化防止剤としての機能を発揮するものである。安定化効果としては、系内に発生するラジカルを補足することでHFE-356mmz又はHFE-356mecの分解を防止する効果、系内に発生した酸を捕捉することで、酸によるさらなるHFE-356mmz又はHFE-356mecの分解等を防止する受酸効果などが主要なものとして挙げられる。かかる安定剤としては、公知の安定剤を広く採用することが可能である。中でも、組成物による金属の腐食発生を効果的に抑制できることから、不飽和アルコール系安定剤、ニトロ系安定剤、アミン系安定剤、フェノール系安定剤及びエポキシ系安定剤からなる群より選ばれる1種以上の安定剤を使用することが好ましい。
【0040】
不飽和アルコール系安定剤としては、公知のものを広く採用することが可能である。例えば、3-ブテン-2-オール、2-ブテン-1-オール、4-プロペン-1-オール、1-プロペン-3-オール、2-メチル-3-ブテン-2-オール、3-メチル-3-ブテン-2-オール、3-メチル-2-ブテン-1-オール、2-ヘキセン-1-オール、2,4-ヘキサジエン-1-オール及びオレイルアルコールからなる群より選択される1種以上を使用することができる。
【0041】
ニトロ系安定剤としては、公知のものを広く採用することが可能である。脂肪族ニトロ化合物として、例えば、ニトロメタン、ニトロエタン、1-ニトロプロパン、2-ニトロプロパン等が挙げられる。芳香族ニトロ化合物として、例えば、ニトロベンゼン、o-、m-又はp-ジニトロベンゼン、o-、m-又はp-ニトロトルエン、ジメチルニトロベンゼン、m-ニトロアセトフェノン、o-、m-又はp-ニトロフェノール、o-ニトロアニソール、m-ニトロアニソール及びp-ニトロアニソールからなる群より選択される1種以上を使用することができる。
【0042】
アミン系安定剤としては、公知のものを広く採用することが可能である。例えば、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソブチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジアリルアミン、トリエチルアミン、N-メチルアニリン、ピリジン、モルホリン、N-メチルモルホリン、トリアリルアミン、アリルアミン、α-メチルベンジルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ジベンチルアミン、トリベンチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、アニリン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ベンジルアミン、ジベンジルアミン、ジフェニルアミン及びジエチルヒドロキシルアミンからなる群より選択される1種以上を使用することができる。
【0043】
フェノール系安定剤としては、公知のものを広く採用することが可能である。例えば、2,6-ジターシャリーブチル-4-メチルフェノール、3-クレゾール、フェノール、1,2-ベンゼンジオール、2-イソプロピル-5-メチルフェノール、及び2-メトキシフェノールからなる群より選択される1種以上を使用することができる。
【0044】
エポキシ系安定剤としては、公知のものを広く採用することが可能である。例えば、ブチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、ブチルグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、及び1,2-エポキシ-3-フェノキシプロパンからなる群より選択される1種以上を使用することができる。
【0045】
異なる安定化効果を有する安定剤を組み合わせて用いることで、様々な原因で起こりうるHFE-356mmz又はHFE-356mecの分解をより効果的に防止するという理由から、上記したエポキシ系安定剤、並びに、不飽和アルコール系安定剤、ニトロ系安定剤、及びフェノール系安定剤からなる群より選択される1種以上からなることが好ましい。
【0046】
上記HFE-356mmz又はHFE-356mecからの酸遊離を効果的に抑制し、液状組成物による金属の腐食を抑制するという観点から、組成物100質量%中における安定剤の含有量は、0.0001質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましい。一方、安定剤の過剰な添加による液状組成物の好ましくない物性変化を避けるという点を考慮すれば、組成物100質量%中における安定剤の含有量は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0047】
本開示の別の実施形態は、HFE-356mmz及び/又はHFE-356mecを含有する洗浄剤を用いて、フッ素オイルを除去する、洗浄方法である。
【0048】
除去対象のフッ素オイルは、パーフルオロポリエーテル化合物、パーフルオロポリエーテル基及び官能基を含有する化合物並びにクロロトリフルオロエチレンの低重合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物であることが好ましく、これらの中でもパーフルオロポリエーテル化合物が特に好ましい。なお、上記パーフルオロポリエーテル化合物、上記パーフルオロポリエーテル基及び官能基を含有する化合物並びに上記クロロトリフルオロエチレンの低重合物については、上述したとおりである。
【0049】
本開示の別の実施形態は、HFE-356mmz及び/又はHFE-356mecを含む溶剤を用いてフッ素オイルを溶解させる、溶解方法である。
【0050】
溶解対象のフッ素オイルは、パーフルオロポリエーテル化合物、パーフルオロポリエーテル基及び官能基を含有する化合物並びにクロロトリフルオロエチレンの低重合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物であることが好ましく、これらの中でもパーフルオロポリエーテル化合物が特に好ましい。なお、上記パーフルオロポリエーテル化合物、上記パーフルオロポリエーテル基及び官能基を含有する化合物並びに上記クロロトリフルオロエチレンの低重合物については、上述したとおりである。
【0051】
HFE-356mmz及び/又はHFE-356mecを含む組成物において、該組成物100質量部に対して、フッ素オイルを好ましくは20質量部以下混合する場合にも、該組成物を溶剤又は洗浄剤として使用することができる。また、例えば、該組成物を溶剤又は洗浄剤として使用した後、HFE-356mmz及び/又はHFE-356mecを含む組成物とフッ素オイルとが混合された状態で、該組成物を再度溶剤又は洗浄剤として使用することができる。
【実施例0052】
以下の実施例に基づき、本開示の実施形態をより具体的に説明する。但し、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
実施例及び比較例において、以下のフッ素オイルを使用した。
【0054】
・フッ素オイル(A1):ダイキン工業社製、パーフルオロポリエーテル化合物「デムナムS-20」(20℃における動粘度=53cst)
・フッ素オイル(A2):ダイキン工業社製、パーフルオロポリエーテル化合物「デムナムS-65」(20℃における動粘度=150cst)
・フッ素オイル(A3):ダイキン工業社製、パーフルオロポリエーテル化合物「デムナムS-200」(20℃における動粘度=500cst)
・フッ素オイル(A4):NOKクリュ-バー社製、パーフルオロポリエーテル化合物「バリエルタJ100」(20℃における動粘度=280cst)
・フッ素オイル(A5):ソルベイスペシャルティポリマーズジャパン社製、パーフルオロポリエーテル化合物「フォンブリンM30」(20℃における動粘度=280cst)
・フッ素オイル(A6):ソルベイスペシャルティポリマーズジャパン社製、パーフルオロポリエーテル化合物「フォンブリンY140/13」(20℃における動粘度=1400cst)
・フッ素オイル(A7):ダイキン工業社製、パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物「オプツールUD500」
・フッ素オイル(A8):ダイキン工業社製、クロロトリフルオロエチレンの低重合物「ダイフロイル#20」(25℃における動粘度=350~1500cst)
・フッ素オイル(A9):ダイキン工業社製、パーフルオロポリエーテル基含有ジカルボン酸化合物、HOOCCF-O-[(CFCFO)28-(CFO)22]-CFCOOH
・フッ素オイル(A10):ダイキン工業社製、パーフルオロポリエーテル基含有モノカルボン酸化合物、CF-O-[(CFCFO)28-(CFO)22]-CFCOOH
【0055】
<相溶性試験>
(実施例1)
ガラス試験管に、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz)とフッ素オイル(A1)とを入れ、組成物を調製し、HFE-356mmzとフッ素オイル(A1)とが25℃において相互に溶解しているかを観察した。上記組成物中の各成分の含有量は、HFE-356mmz:50質量%、フッ素オイル(A1):50質量%とした。ガラス試験管を観察したところ、HFE-356mmzとフッ素オイル(A1)との組成物が1つの層であり、透明な液体を維持したことから、HFE-356mmzに対してフッ素オイル(A1)が完全に溶解することが確認できた。
【0056】
(実施例2)
HFE-356mmz:20質量%、フッ素オイル(A1):80質量%とした以外は、実施例1と同一条件にて組成物を調整し、HFE-356mmzとフッ素オイル(A1)とが25℃において相互に溶解しているかを観察した。ガラス試験管を観察したところ、HFE-356mmzとフッ素オイル(A1)との組成物が1つの層であり、透明な液体を維持したことから、HFE-356mmzに対してフッ素オイル(A1)が完全に溶解することが確認できた。
【0057】
(実施例3)
HFE-356mmz:80質量%、フッ素オイル(A1):20質量%とした以外は、実施例1と同一条件にて組成物を調整し、HFE-356mmzとフッ素オイル(A1)とが25℃において相互に溶解しているかを観察した。ガラス試験管を観察したところ、HFE-356mmzとフッ素オイル(A1)との組成物が1つの層であり、透明な液体を維持したことから、HFE-356mmzに対してフッ素オイル(A1)が完全に溶解することが確認できた。
【0058】
(実施例4)
フッ素オイル(A1)の代わりに、フッ素オイル(A2)を使用した以外は、実施例1と同一条件にて組成物を調整し、HFE-356mmzとフッ素オイル(A2)とが25℃において相互に溶解しているかを観察した。ガラス試験管を観察したところ、HFE-356mmzとフッ素オイル(A2)との組成物が1つの層であり、透明な液体を維持したことから、HFE-356mmzに対してフッ素オイル(A2)が完全に溶解することが確認できた。
【0059】
(実施例5)
フッ素オイル(A1)の代わりに、フッ素オイル(A3)を使用した以外は、実施例1と同一条件にて組成物を調整し、HFE-356mmzとフッ素オイル(A3)とが25℃において相互に溶解しているかを観察した。ガラス試験管を観察したところ、HFE-356mmzとフッ素オイル(A3)との組成物が1つの層であり、透明な液体を維持したことから、HFE-356mmzに対してフッ素オイル(A3)が完全に溶解することが確認できた。
【0060】
(実施例6)
フッ素オイル(A1)の代わりに、フッ素オイル(A4)を使用した以外は、実施例1と同一条件にて組成物を調整し、HFE-356mmzとフッ素オイル(A4)とが25℃において相互に溶解しているかを観察した。ガラス試験管を観察したところ、HFE-356mmzとフッ素オイル(A4)との組成物が1つの層であり、透明な液体を維持したことから、HFE-356mmzに対してフッ素オイル(A4)が完全に溶解することが確認できた。
【0061】
(実施例7)
フッ素オイル(A1)の代わりに、フッ素オイル(A5)を使用した以外は、実施例1と同一条件にて組成物を調整し、HFE-356mmzとフッ素オイル(A5)とが25℃において相互に溶解しているかを観察した。ガラス試験管を観察したところ、HFE-356mmzとフッ素オイル(A5)との組成物が1つの層であり、透明な液体を維持したことから、HFE-356mmzに対してフッ素オイル(A5)が完全に溶解することが確認できた。
【0062】
(実施例8)
フッ素オイル(A1)の代わりに、フッ素オイル(A6)を使用した以外は、実施例1と同一条件にて組成物を調整し、HFE-356mmzとフッ素オイル(A6)とが25℃において相互に溶解しているかを観察した。ガラス試験管を観察したところ、HFE-356mmzとフッ素オイル(A6)との組成物が1つの層であり、透明な液体を維持したことから、HFE-356mmzに対してフッ素オイル(A6)が完全に溶解することが確認できた。
【0063】
(実施例9)
フッ素オイル(A1)の代わりに、フッ素オイル(A7)を使用した以外は、実施例1と同一条件にて組成物を調整し、HFE-356mmzとフッ素オイル(A7)とが25℃において相互に溶解しているかを観察した。ガラス試験管を観察したところ、HFE-356mmzとフッ素オイル(A7)との組成物が1つの層であり、透明な液体を維持したことから、HFE-356mmzに対してフッ素オイル(A7)が完全に溶解することが確認できた。
【0064】
(実施例10)
フッ素オイル(A1)の代わりに、フッ素オイル(A8)を使用した以外は、実施例1と同一条件にて組成物を調整し、HFE-356mmzとフッ素オイル(A8)とが25℃において相互に溶解しているかを観察した。ガラス試験管を観察したところ、HFE-356mmzとフッ素オイル(A8)との組成物が1つの層であり、透明な液体を維持したことから、HFE-356mmzに対してフッ素オイル(A8)が完全に溶解することが確認できた。
【0065】
(実施例11)
フッ素オイル(A1)の代わりに、フッ素オイル(A9)を使用した以外は、実施例1と同一条件にて組成物を調整し、HFE-356mmzとフッ素オイル(A9)とが25℃において相互に溶解しているかを観察した。ガラス試験管を観察したところ、HFE-356mmzとフッ素オイル(A9)との組成物が1つの層であり、透明な液体を維持したことから、HFE-356mmzに対してフッ素オイル(A9)が完全に溶解することが確認できた。
【0066】
(実施例12)
フッ素オイル(A1)の代わりに、フッ素オイル(A10)を使用した以外は、実施例1と同一条件にて組成物を調整し、HFE-356mmzとフッ素オイル(A10)とが25℃において相互に溶解しているかを観察した。ガラス試験管を観察したところ、HFE-356mmzとフッ素オイル(A10)との組成物が1つの層であり、透明な液体を維持したことから、HFE-356mmzに対してフッ素オイル(A10)が完全に溶解することが確認できた。
【0067】
(実施例13)
ガラス試験管に、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(HFE-356mec)とフッ素オイル(A1)とを入れ、組成物を調製し、HFE-356mecとフッ素オイルとが25℃において相互に溶解しているかを観察した。上記組成物中の各成分の含有量は、HFE-356mec:50質量%、フッ素オイル(A1):50質量%とした。ガラス試験管を観察したところ、HFE-356mecとフッ素オイル(A1)との組成物が1つの層であり、透明な液体を維持したことから、HFE-356mecに対してフッ素オイル(A1)が完全に溶解することが確認できた。
【0068】
(実施例14)
フッ素オイル(A1)の代わりに、フッ素オイル(A2)を使用した以外は、実施例13と同一条件にて組成物を調整し、HFE-356mecとフッ素オイル(A2)とが25℃において相互に溶解しているかを観察した。ガラス試験管を観察したところ、HFE-356mecとフッ素オイル(A2)との組成物が1つの層であり、透明な液体を維持したことから、HFE-356mecに対してフッ素オイル(A2)が完全に溶解することが確認できた。
【0069】
(実施例15)
フッ素オイル(A1)の代わりに、フッ素オイル(A4)を使用した以外は、実施例13と同一条件にて組成物を調整し、HFE-356mecとフッ素オイル(A4)とが25℃において相互に溶解しているかを観察した。ガラス試験管を観察したところ、HFE-356mecとフッ素オイル(A4)との組成物が1つの層であり、透明な液体を維持したことから、HFE-356mecに対してフッ素オイル(A4)が完全に溶解することが確認できた。
【0070】
(実施例16)
フッ素オイル(A1)の代わりに、フッ素オイル(A5)を使用した以外は、実施例13と同一条件にて組成物を調整し、HFE-356mecとフッ素オイル(A5)とが25℃において相互に溶解しているかを観察した。ガラス試験管を観察したところ、HFE-356mecとフッ素オイル(A5)との組成物が1つの層であり、透明な液体を維持したことから、HFE-356mecに対してフッ素オイル(A5)が完全に溶解することが確認できた。
【0071】
(実施例17)
ガラス試験管に、HFE-356mecとフッ素オイル(A6)とを入れ、組成物を調製し、HFE-356mecとフッ素オイルとが25℃において相互に溶解しているかを観察した。上記組成物中の各成分の含有量は、HFE-356mec:0.1質量%、フッ素オイル(A6):99.9質量%とした。ガラス試験管を観察したところ、HFE-356mecとフッ素オイル(A6)との組成物が1つの層であり、透明な液体を維持したことから、HFE-356mecに対してフッ素オイル(A6)が完全に溶解することが確認できた。
【0072】
(実施例18)
フッ素オイル(A1)の代わりに、フッ素オイル(A7)を使用した以外は、実施例13と同一条件にて組成物を調整し、HFE-356mecとフッ素オイル(A7)とが25℃において相互に溶解しているかを観察した。ガラス試験管を観察したところ、HFE-356mecとフッ素オイル(A7)との組成物が1つの層であり、透明な液体を維持したことから、HFE-356mecに対してフッ素オイル(A7)が完全に溶解することが確認できた。
【0073】
(実施例19)
フッ素オイル(A1)の代わりに、フッ素オイル(A8)を使用した以外は、実施例13と同一条件にて組成物を調整し、HFE-356mecとフッ素オイル(A8)とが25℃において相互に溶解しているかを観察した。ガラス試験管を観察したところ、HFE-356mecとフッ素オイル(A8)との組成物が1つの層であり、透明な液体を維持したことから、HFE-356mecに対してフッ素オイル(A8)が完全に溶解することが確認できた。
【0074】
(実施例20)
フッ素オイル(A1)の代わりに、フッ素オイル(A9)を使用した以外は、実施例13と同一条件にて組成物を調整し、HFE-356mecとフッ素オイル(A9)とが25℃において相互に溶解しているかを観察した。ガラス試験管を観察したところ、HFE-356mecとフッ素オイル(A9)との組成物が1つの層であり、透明な液体を維持したことから、HFE-356mecに対してフッ素オイル(A9)が完全に溶解することが確認できた。
【0075】
(実施例21)
フッ素オイル(A1)の代わりに、フッ素オイル(A10)を使用した以外は、実施例13と同一条件にて組成物を調整し、HFE-356mecとフッ素オイル(A10)とが25℃において相互に溶解しているかを観察した。ガラス試験管を観察したところ、HFE-356mecとフッ素オイル(A10)との組成物が1つの層であり、透明な液体を維持したことから、HFE-356mecに対してフッ素オイル(A10)が完全に溶解することが確認できた。
【0076】
(実施例22)
ガラス試験管に、HFE-356mecとイソプロピルアルコール(IPA)とを入れ、混合物を調製した。該混合物中の各成分の含有量は、HFE-356mec:92質量%、IPA:8質量%とした。更に、該ガラス試験管に、フッ素オイル(A1)を、該混合物とフッ素オイル(A1)との組成比がそれぞれ95質量%及び5質量%になるように添加し、該混合物とフッ素オイル(A1)とが25℃において相互に溶解しているかを観察した。ガラス試験管を観察したところ、上記混合物とフッ素オイル(A1)との組成物が1つの層であり、透明な液体を維持したことから、上記混合物に対してフッ素オイル(A1)が完全に溶解することが確認できた。
【0077】
(比較例1)
ガラス試験管に、HFE-356mmzとヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)とを入れ、混合物を調製した。該混合物中の各成分の含有量は、HFE-356mmz:50質量%、HFIP:50質量%とした。更に、該ガラス試験管に、フッ素オイル(A3)を、該混合物とフッ素オイル(A3)との組成比がそれぞれ50質量%及び50質量%になるように添加し、該混合物とフッ素オイル(A3)とが25℃において相互に溶解しているかを観察した。ガラス試験管を観察したところ、上記混合物とフッ素オイル(A3)とは相互に溶解せず、2層に分離することが確認できた。
【0078】
(比較例2)
ガラス試験管に、HFE-356mmzとHFIPとを入れ、混合物を調製した。該混合物中の各成分の含有量は、HFE-356mmz:90質量%、HFIP:10質量%とした。更に、該ガラス試験管に、フッ素オイル(A3)を、該混合物と該フッ素オイル(A3)との組成比がそれぞれ50質量%及び50質量%になるように添加し、該混合物とフッ素オイル(A3)とが25℃において相互に溶解しているかを観察した。ガラス試験管を観察したところ、上記混合物とフッ素オイル(A3)とは相互に溶解せず、2層に分離することが確認できた。
【0079】
比較例1及び比較例2の結果から、HFE-356mmz及びHFIPの混合物は、フッ素オイル(A3)に対して、相溶性を有さないことが確認できた。
【0080】
(比較例3)
本比較例では、HFE化合物として、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル(HFE-356mff2、CFCHOCHCF)を使用した。なお、HFE-356mff2は、本開示におけるHFE-356mmz及びHFE-356mecと同様に、炭素原子4個、フッ素原子6個、水素原子4個及び酸素原子1個で構成されているHFE化合物である。
【0081】
ガラス試験管に、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル(HFE-356mff2、CFCHOCHCF)とフッ素オイル(A2)とを入れて組成物を調製し、HFE-356mff2とフッ素オイル(A2)とが25℃において相互に溶解しているかを観察した。上記組成物中の各成分の含有量は、HFE-356mff2:50質量%、フッ素オイル(A2):50質量%とした。ガラス試験管を観察したところ、HFE-356mff2とフッ素オイル(A2)とは相互に溶解せず、2層に分離することが確認できた。
【0082】
比較例3の結果から、HFE-356mff2は、フッ素オイル(A2)に対して、相溶性を有さないことが確認できた。そして、HFE-356mmz、HFE-356mec及びHFE-356mff2のように、同一の構成元素からなり、それら元素の数も同一である場合(つまり、構造異性体の関係である場合)でも、フッ素オイルに溶解するHFE化合物とフッ素オイルに溶解しないHFE化合物が存在することが確認できた。
【0083】
(比較例4)
本比較例では、HFE化合物として、1,1,2,2-テトラフルオロ-1-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エタン(HFE-347pcf、CFHCFOCHCF)を使用した。
【0084】
ガラス試験管に、HFE-347pcfとフッ素オイル(A2)とを入れて組成物を調製し、HFE-347pcfとフッ素オイル(A2)とが25℃において相互に溶解しているかを観察した。上記組成物中の各成分の含有量は、HFE-347pcf:50質量%、フッ素オイル(A2):50質量%とした。ガラス試験管を観察したところ、HFE-347pcfとフッ素オイル(A2)とは相互に溶解せず、2層に分離することが確認できた。
【0085】
<コーティング性試験>
(実施例23)
ガラス試験管で、HFE-356mmzと潤滑剤としてのフッ素オイル(A2)とを混合し、潤滑剤溶液を調製した。該潤滑剤溶液中の各成分の含有量は、HFE-356mmz:97質量%、フッ素オイル(A2):3質量%とした。次に、アルミニウム基板の表面に、上記に潤滑剤溶液を平均厚み0.5mmとなるように塗布し、24~27℃の条件下で風乾することにより、アルミニウム基板表面に潤滑剤塗膜を形成した。該潤滑剤塗膜の状態を目視で確認したところ、均一な塗膜であることが確認できた。
【0086】
<安定性試験>
(実施例24)
ガラス試験管で、HFE-356mmzとフッ素オイル(A2)とを混合し、溶液を調製した。該溶液中の各成分の含有量は、HFE-356mmz:50質量%、フッ素オイル(A2):50質量%とした。得られた溶液を25℃の環境下30日間放置した後、該溶液の状態を目視で確認したところ、色、沈殿生成などの変化が見られないことを確認できた。
【0087】
<洗浄性試験>
(実施例25)
50mm×5mm×2mmのガラス製テストピースをフッ素オイル(A2)中に30秒浸漬した。その後、該ガラス製テストピースを、100mlのHFE-356mmz中に25℃の条件下1分間浸漬し、該ガラス製テストピースを引き上げてから室温で5分程度風乾させた。その結果、該ガラス製テストピース上に残存するフッ素オイル(A2)は除去されたことを確認できた。
【0088】
<コーティング性試験>
(実施例26)
ガラス試験管で、HFE-356mecと潤滑剤としてのフッ素オイル(A2)とを混合し、潤滑剤溶液を調製した。該潤滑剤溶液中の各成分の含有量は、HFE-356mec:97質量%、フッ素オイル(A2):3質量%とした。次に、アルミニウム基板の表面に、上記に潤滑剤溶液を平均厚み0.5mmとなるように塗布し、24~27℃の条件下で風乾することにより、アルミニウム基板表面に潤滑剤塗膜を形成した。該潤滑剤塗膜の状態を目視で確認したところ、均一な塗膜であることが確認できた。
【0089】
<安定性試験>
(実施例27)
ガラス試験管で、HFE-356mecとフッ素オイル(A2)とを混合し、溶液を調製した。該溶液中の各成分の含有量は、HFE-356mmz:50質量%、フッ素オイル(A2):50質量%とした。得られた溶液を25℃の環境下30日間放置した後、該溶液の状態を目視で確認したところ、色、沈殿生成などの変化が見られないことを確認できた。
【0090】
<洗浄性試験>
(実施例28)
50mm×5mm×2mmのガラス製テストピースをフッ素オイル(A2)中に30秒浸漬した。その後、該ガラス製テストピースを、100mlのHFE-356mec中に25℃の条件下1分間浸漬し、該ガラス製テストピースを引き上げてから室温で5分程度風乾させた。その結果、該ガラス製テストピース上に残存するフッ素オイル(A2)は除去されたことを確認できた。
【手続補正書】
【提出日】2022-01-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz)及び/又は1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(HFE-356mec)、並びに
(B)フッ素オイル
を含み、
前記フッ素オイルが、パーフルオロポリエーテル化合物、パーフルオロポリエーテル基及び官能基を含有する化合物並びにクロロトリフルオロエチレンの低重合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物である、組成物。
【請求項2】
前記(A)成分及び前記(B)成分の総量に対して、
前記(A)成分の含有割合が1質量%以上99.99質量%以下であり、
前記(B)成分の含有割合が0.01質量%以上99質量%以下である、請求項に記載の組成物。
【請求項3】
コーティング剤用である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz)及び/又は1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(HFE-356mec)を含むことを特徴とする、フッ素オイルを除去するための溶剤用組成物又は洗浄用組成物であって、
前記フッ素オイルが、パーフルオロポリエーテル化合物、パーフルオロポリエーテル基及び官能基を含有する化合物並びにクロロトリフルオロエチレンの低重合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物である、溶剤用組成物又は洗浄用組成物
【請求項5】
1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz)及び/又は1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(HFE-356mec)を含む洗浄剤を用いて、フッ素オイルを除去する、洗浄方法であって、
前記フッ素オイルが、パーフルオロポリエーテル化合物、パーフルオロポリエーテル基及び官能基を含有する化合物並びにクロロトリフルオロエチレンの低重合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物である、洗浄方法
【請求項6】
1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル(HFE-356mmz)及び/又は1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(HFE-356mec)を含む溶剤を用いて、フッ素オイルを溶解させる、溶解方法であって、
前記フッ素オイルが、パーフルオロポリエーテル化合物、パーフルオロポリエーテル基及び官能基を含有する化合物並びにクロロトリフルオロエチレンの低重合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物である、溶解方法
【請求項7】
請求項1又は2に記載の組成物を塗布する工程を含む、コーティング方法。