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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022041954
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】用時混合型化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20220304BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20220304BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20220304BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20220304BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220304BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
A61K8/02
A61K8/31
A61K8/86
A61K8/92
A61Q19/00
A61K8/37
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021138361
(22)【出願日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】P 2020146357
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(72)【発明者】
【氏名】木内 愛海
(72)【発明者】
【氏名】小原 妙
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA121
4C083AA122
4C083AB032
4C083AB282
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC021
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC111
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC342
4C083AC351
4C083AC352
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC441
4C083AC442
4C083AC532
4C083AC581
4C083AC692
4C083AC852
4C083AD021
4C083AD022
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD352
4C083BB04
4C083BB13
4C083CC03
4C083DD06
4C083DD12
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD30
4C083DD47
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE12
4C083FF05
(57)【要約】
【課題】25℃で液状のエステル油及び25℃で液状の植物油からなる群から選択される少なくとも1種と炭化水素油を油剤として多量配合した用時混合型化粧料において、製剤安定性(乳化安定性及び経時安定性)に優れ、さらに浸透感及び閉塞感に優れる用時混合型化粧料の提供を目的とする。
【解決手段】次の成分(a)~(c);
(a)HLB8~12の非イオン性界面活性剤を油性化粧料中に0.1~4質量%、
(b)(b1)25℃で液状のエステル油及び(b2)25℃で液状の植物油からなる群から選択される少なくとも1種、
(c)炭化水素油
を含有する油性化粧料と水性化粧料を、使用時に重量比1:2~1:8の比率にて混合し乳化物を調製する用時混合型化粧料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)~(c);
(a)HLB8~12の非イオン性界面活性剤を油性化粧料中に0.1~4質量%、
(b)(b1)25℃で液状のエステル油及び(b2)25℃で液状の植物油からなる群から選択される少なくとも1種、
(c)炭化水素油
を含有する油性化粧料と水性化粧料を、使用時に重量比1:2~1:8の比率にて混合する用時混合型化粧料。
【請求項2】
前記油性化粧料において、前記成分(b)及び成分(c)の含有質量割合[(b)/((b)+(c))]が、0.5~0.9であり、前記成分(b)及び成分(c)の含有質量割合[(c)/((b)+(c))]が、0.1~0.5である請求項1に記載の用時混合型化粧料。
【請求項3】
前記成分(b)において、成分(b1)25℃で液状のエステル油及び成分(b2)25℃で液状の植物油を併用し、成分(b1)及び成分(b2)の含有質量割合[(b2)/((b1)+(b2))]が0.3~0.6である請求項1又は2に記載の用時混合型化粧料。
【請求項4】
前記成分(a)がポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルからなる群より選ばれる1種又は2種以上である請求項1~3のいずれか一項に記載の用時混合型化粧料。
【請求項5】
前記成分(a)が炭素数12~22の分岐脂肪酸基及び/又は炭素数12~22の不飽和脂肪酸基を含有することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の用時混合型化粧料。
【請求項6】
前記成分(a)がオレイン酸及び/又はイソステアリン酸からなる脂肪酸基を含有することを特徴とする請求項5に記載の用時混合型化粧料。
【請求項7】
前記成分(a)がトリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)、テトラオレイン酸ソルベス-30、イソステアリン酸PEG-8グリセリル及びトリイソステアリン酸PEG-20グリセリルから選ばれる1種又は2種以上である請求項1~6のいずれか一項に記載の用時混合型化粧料。
【請求項8】
前記水性化粧料の25℃における粘度が、3,000mPa・s以下である請求項1~7のいずれか一項に記載の用時混合型化粧料。
【請求項9】
前記水性化粧料は、さらに成分(d)として多価アルコールを含有し、用時混合型化粧料における成分(a)及び成分(d)の含有質量割合[(d)/(a)]が20~1500である請求項1~8のいずれか一項に記載の用時混合型化粧料。
【請求項10】
前記水性化粧料は、さらに成分(e)としてアミノ酸を含有することを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の用時混合型化粧料。
【請求項11】
シート材に塗布又は含浸して使用することを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載のシート状用時混合型化粧料。
【請求項12】
前記シート材が予め袋状容器に充填されていることを特徴とする請求項11に記載のシート状用時混合型化粧料。
【請求項13】
仕切り部によって区分された第一室及び第二室を含む袋状容器において、前記第一室には、水性化粧料及びシート材が充填されており、前記第二室には、油性化粧料が充填されており、使用時に第一室と第二室を区分している仕切り部をはがし、水性化粧料及び油性化粧料を混合し、前記シート材に保持させることを特徴とする請求項12に記載のシート状用時混合型化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用時混合型化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
用時混合による乳化化粧料の一つの形態として、使用時に水性化粧料と油性化粧料を混合し、均一な乳化状態とする用時混合型化粧料がある。用時混合型化粧料は、従来の乳化化粧料と比べ経時の安定性を考慮する必要がなく、水性成分及び油性成分の選択の幅が広いという特徴がある。しかし、手攪拌などの弱い力により混合する為、均一な乳化状態の形成が困難であり、結果としてぬるつきやべたつき等の使用性の低下が課題となる。これまでに、乳化状態及び使用性に優れた用時混合型化粧料が検討されており、例えば、ポリサッカライド及び/又はポリペプチド系増粘剤、HLB12以上の非イオン性界面活性剤を含む水性化粧料と、炭素数10~22の脂肪酸基を1以上有する脂肪酸トリグリセリド及び分岐炭化水素含む油性化粧料による用時混合型化粧料において、皮膚への塗布時に乳化系が速やかに崩れ、肌への溶け込むような感触に優れた技術が開示されている(例えば、特許文献1)。さらに、カルボキシビニルポリマー及び長鎖アルキルアクリレートモノマーとオレフィン性不飽和カルボン酸モノマーの共重合ポリマーのうち少なくとも一方の水溶性高分子を含有する第1剤を予めシート材に含浸し、油性成分及び5~15質量%の界面活性剤を含有する第2剤を使用時に添加して乳化物を調製する二剤式のシート状化粧料で、使用時における保湿機能、使用感及び簡便性に優れ、肌の状態を良好にする技術が開示されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-119791号公報
【特許文献2】特開2012-31097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された技術においては、浸透感には優れるものの、乳化安定性をより高めることが望ましい場合があり、さらに使用後の閉塞感を得ることは困難であった。
特許文献2に開示された技術においては、べたつきのなさに優れるものの、製剤安定性(乳化安定性及び経時安定性)をより高めることが望ましい場合があり、さらに浸透感及び使用後の閉塞感が十分でない場合があった。
また、上記2文献の技術の組み合わせにより、乳化安定性、浸透感及びべたつきのなさが良好なシート状用時混合型化粧料となりうるが、これら効果に加え、使用後の閉塞感及びシート材含浸後の経時安定性を実現することは困難であった。
【0005】
本発明は、25℃で液状のエステル油及び25℃で液状の植物油からなる群から選択される少なくとも1種と炭化水素油を油剤として多量配合した用時混合型化粧料において、製剤安定性(乳化安定性及び経時安定性)に優れ、さらに浸透感及び閉塞感に優れる用時混合型化粧料の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、HLB8~12の特定の非イオン性界面活性剤は、油剤を安定に乳化できることを見出し、25℃で液状のエステル油及び25℃で液状の植物油からなる群から選択される少なくとも1種並びに炭化水素油を含有した油性化粧料と水性化粧料を使用時に混合する用時混合型化粧料とすることにより、上記課題を解決しうることを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下を提供する。
[1]
次の成分(a)~(c);
(a)HLB8~12の非イオン性界面活性剤を油性化粧料中に0.1~4質量%、
(b)(b1)25℃で液状のエステル油及び(b2)25℃で液状の植物油からなる群から選択される少なくとも1種、
(c)炭化水素油
を含有する油性化粧料と水性化粧料を、使用時に重量比1:2~1:8の比率にて混合し乳化物を調製する用時混合型化粧料である。
[2]
前記油性化粧料において、前記成分(b)及び成分(c)の含有質量割合[(b)/((b)+(c))]が、0.5~0.9であり、前記成分(b)及び成分(c)の含有質量割合[(c)/((b)+(c))]が、0.1~0.5である前記[1]に記載の用時混合型化粧料である。
[3]
前記成分(b)において、成分(b1)25℃で液状のエステル油及び成分(b2)25℃で液状の植物油を併用し、成分(b1)及び成分(b2)の含有質量割合[(b2)/((b1)+(b2))]が0.3~0.6である前記[1]又は[2]に記載の用時混合型化粧料である。
[4]
前記成分(a)がポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルからなる群より選ばれる1種又は2種以上である前記[1]~[3]のいずれか一つに記載の用時混合型化粧料である。
[5]
前記成分(a)が炭素数12~22の分岐脂肪酸基及び/又は炭素数12~22の不飽和脂肪酸基を含有することを特徴とする前記[1]~[4]のいずれか一つに記載の用時混合型化粧料である。
[6]
前記成分(a)がオレイン酸及び/又はイソステアリン酸からなる脂肪酸基を含有することを特徴とする前記[5]に記載の用時混合型化粧料である。
[7]
前記成分(a)がトリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)、テトラオレイン酸ソルベス-30、イソステアリン酸PEG-8グリセリル及びトリイソステアリン酸PEG-20グリセリルから選ばれる1種又は2種以上である前記[1]~[6]のいずれか一つに記載の用時混合型化粧料である。
[8]
前記水性化粧料の25℃における粘度が、3,000mPa・s以下である前記[1]~[7]のいずれか一つに記載の用時混合型化粧料である。
[9]
前記水性化粧料は、さらに成分(d)として多価アルコールを含有し、用時混合型化粧料における成分(a)及び成分(d)の含有質量割合[(d)/(a)]が20~1500である前記[1]~[8]のいずれか一つに記載の用時混合型化粧料である。
[10]
前記水性化粧料は、さらに成分(e)としてアミノ酸を含有することを特徴とする前記[1]~[9]のいずれか一つに記載の用時混合型化粧料である。
[11]
シート材に塗布又は含浸して使用することを特徴とする前記[1]~[10]のいずれか一つに記載の用時混合型化粧料である。
[12]
前記シート材が予め袋状容器に充填されていることを特徴とする前記[11]に記載のシート状用時混合型化粧料である。
[13]
仕切り部によって区分された第一室及び第二室を含む袋状容器において、前記第一室には、水性化粧料及びシート材が充填されており、前記第二室には、油性化粧料が充填されており、使用時に第一室と第二室を区分している仕切り部をはがし、水性化粧料及び油性化粧料を混合し、前記シート材に保持させることを特徴とする前記[12]に記載のシート状用時混合型化粧料である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の用時混合型化粧料によれば、水性化粧料と、25℃で液状のエステル油及び25℃で液状の植物油からなる群から選択される少なくとも1種と炭化水素油を配合した油性化粧料を混合した場合であっても、乳化直後及び経時での乳化安定性が高いものとなり、塗布時の浸透感及び使用後の閉塞感にも優れるものである。また、本発明の用時混合型化粧料は、使用後のべたつきがなく、良好な使用感を得ることができる。さらに、本発明の用時混合型化粧料をシート材に塗布又は含浸して使用した場合には、経時安定性及び均一な含浸性にも優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。本明細書において、範囲を示す「X~Y」は、XおよびYを含み、「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(25℃)/相対湿度50%RHの条件で行う。
【0010】
エステル油や炭化水素油を多量配合した乳化化粧料を調製する場合、乳化化粧料の不安定化が問題となる。そのため、界面活性剤、高級アルコール、及び高分子等を配合し、乳化系の粘性を高めるといった対応が知られているが、界面活性剤や高分子によるべたつき等の使用性の悪化や、乳化系の粘性が高まることによる浸透感の低下等が懸念される。しかしながら、成分(a)を油性化粧料に含む用時混合型化粧料とすることで、混合直後の乳化性及び経時の安定性が向上し、エステル油及び炭化水素油を配合した低粘度の乳化化粧料の提供が可能となる。これは、成分(a)が手攪拌等の弱い力での即座な乳化が可能であると共に、少量の含有量でも多量の油剤を安定に乳化することができるためである。したがって、本発明は多種存在する界面活性剤の中で、成分(a)を選択し、さらに成分(a)をあらかじめ油性化粧料中に配合することが極めて重要であることを見出したものである。
さらに、低粘度の乳化化粧料に多量の油剤が配合可能になったことで、皮膚に塗布した場合に、浸透感と使用後の閉塞感を同時に付与することができる。
【0011】
(油性化粧料)
本発明における油性化粧料は、油を連続相とするものを指すものである。油を連続相としていれば、特に限定されないが、水やエタノール等の水性成分を含んでも良いが、製剤安定性、浸透感及び閉塞感等の観点から10%以下が好ましく、より好ましくは5%以下であり、1%以下であることがさらにより好ましい。
【0012】
(成分(a)HLB8~12の非イオン性界面活性剤)
【0013】
本発明に用いられる成分(a)HLB8~12の非イオン性界面活性剤は、化粧料、医薬部外品、医薬品等に通常用いられるものであれば、特に制限されるものではない。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルなどが挙げられる。本発明においては、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルからなる群より選ばれる非イオン性界面活性剤であることが好ましい。また、成分(a)がエステル構造を有する場合、炭素数12~22の分岐脂酸基及び/又は不飽和脂肪酸基を含有する非イオン性界面活性剤であることが好ましく、オレイン酸及び/又はイソステアリン酸からなる脂肪酸基を含有する非イオン性界面活性剤であることがより好ましい。さらに、本発明においては製剤安定性等の観点から、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)、テトラオレイン酸ソルベス-30、イソステアリン酸PEG-8グリセリル及びトリイソステアリン酸PEG-20グリセリルであることがさらにより好ましく、これらを1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。これらの市販品としては、例えば「レオドールTW-O320V」「レオドール 430V」(花王株式会社)、「EMALEX GWIS-108」「EMALEX GWIS-320」(日本エマルジョン株式会社)等が挙げられる。
【0014】
ここで、本発明におけるHLB(Hydphile-Lipophile Balance)とは、親水性-親油性のバランスを示す指標であり、小田・寺村らによる下記(式1)で計算されるものである。
HLB=「無機性値(IV)/有機性値(OV)」×10・・・(式1)
(甲田善生著、「有機概念図-基礎と応用-」、11~17頁、三共出版、1984年発行参照)
【0015】
本発明の用時混合型化粧料において、成分(a)の含有量は、製剤安定性の観点から、油性化粧料中に0.1質量%(以下、単に「質量%」を「%」と略す)以上であることが好ましく、1%以上であることがより好ましい。また、成分(a)の含有量は、べたつきのなさ等の使用性の観点から、5%未満であることが好ましく、4%以下であることがより好ましく、2%以下であることがさらにより好ましい。5%以上であると、使用後に不快なべたつきが生じる等の使用性が低下する場合がある。
【0016】
(成分(b)25℃で液状のエステル油(b1)及び25℃で液状の植物油(b2)からなる群から選択される少なくとも1種)
【0017】
本発明の成分(b)は、(b1)25℃で液状のエステル油、及び成分(b2)25℃で液状の植物油から群から選ばれる少なくとも1種のエステル油である。
【0018】
(成分(b1)25℃で液状のエステル油)
【0019】
本発明の成分(b1)25℃で液状のエステル油は、直鎖または分岐鎖の脂肪酸と、直鎖または分岐鎖の1価または多価アルコールからなるエステルであり、成分(b2)植物油以外のエステル油である。
【0020】
本発明においては、エステルを構成する脂肪酸が、分岐または二重結合を有していることが好ましく、該脂肪酸が、炭素数8~22であることがより好ましく、炭素数が8~18であることがさらにより好ましい。具体的には、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、2-エチルヘキサン酸セチル、ジイソステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトライソステアリン酸ジグリセリル、デカイソステアリン酸ポリグリセリル、イソノナン酸イソトリデシル、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリトリット、テトライソステアリン酸ペンタエリトリット、オレイン酸オクチルドデシル等が挙げられる。
【0021】
本発明においては、25℃で液状のエステル油の分子量は、600以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましい。分子量が600以下であるエステル油は、皮膚に塗布した場合に、浸透感を一層付与することができるという効果があるが、極性の高いエステル油を多量に配合すると乳化滴の界面の構造が不安定化しやすく、乳化安定性が不安定になりやすい。しかしながら、本実施形態では、成分(a)を選択することで、界面活性剤のべたつきなく、より安定な乳化状態が形成される。さらに、本発明においては、分子量600以下のエステル油を2種併用することが特に好ましい。
【0022】
(成分(b2)25℃で液状の植物油)
【0023】
成分(b2)25℃で液状の植物油は、脂肪酸とグリセリンのエステル(油脂)又は脂肪酸と不飽和アルコールのエステルである。植物油としては、オリーブ油、マカデミアナッツ油、メドウフォーム油、ホホバ油、アボカド油、ヒマシ油、紅花油、ヒマワリ油、キャノーラ油、キョウニン油、米胚芽油、米ぬか油などが挙げられる。
【0024】
植物油としては、植物油を構成する脂肪酸エステルの脂肪酸が、炭素数18の飽和及び不飽和脂肪酸を60重量%以上含む植物油であることが好ましい。当該植物油としては、オリーブ油、マカデミアナッツ油、米ぬか油、大豆油、ホホバ油であることが好ましく、米ぬか油であることがより好ましい。市販品としては、例えば、「コメヌカ油」(オリザ油化株式会社)などが挙げられる。さらに、本発明においては、炭素数18の飽和及び不飽和脂肪酸を60重量%以上含む植物油を2種併用することが特に好ましい。
【0025】
成分(b)は1種単独で用いてもよいが、2種併用することで、さらに優れた製剤安定性及び浸透感が得られるため好ましい。例えば、成分(b1)を1種単独で用いてもよいし、併用してもよいし、成分(b2)を1種単独で用いてもよいし、併用してもよいが、成分(b1)及び成分(b2)を併用することがより好ましい。さらに、本発明においては、成分(b1)を2種以上、及び成分(b2)を2種以上含有することが特に好ましい。
【0026】
本発明の用時混合型化粧料において、成分(b)の含有量は、特に限定されるものではないが、経時安定性及び浸透感等の観点から、油性化粧料中に50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。また、成分(b)の含有量は、油性化粧料中に90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましい。
【0027】
さらに、成分(b1)及び成分(b2)を併用することがより好ましく、成分(b1)及び成分(b2)の含有質量割合[(b2)/((b1)+(b2))]は、0.2以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましい。また、含有質量割合[(b2)/((b1)+(b2))]は、0.6以下であることが好ましく、0.5以下であることがより好ましい。
【0028】
また、成分(a)及び成分(b)の含有質量割合[(b)/(a)]は、10以上であることが好ましく、べたつきのなさ等の使用性の観点から、15以上であることがより好ましい。また、含有質量割合[(b)/(a)]は、製剤安定性の観点から、1,000以下であることが好ましく、700以下であることがより好ましく、200以下であることがさらにより好ましい。
【0029】
(成分(c)炭化水素油)
【0030】
炭化水素油とは、炭素原子と水素原子のみから構成される油剤であり、直鎖状、分岐状、さらに揮発性の炭化水素油等が挙げられる。具体的には、α-オレフィンオリゴマー、流動パラフィン、流動イソパラフィン、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、ドデカン、イソドデカン、テトラデカン、イソテトラデカン、ヘキサデカン、イソヘキサデカン、ポリブテン、水添ポリイソブテン、スクワラン、合成スクワラン、植物性スクワラン、スクワレン、ワセリン等が挙げられる。
【0031】
成分(c)の中でも、閉塞感及びべたつきのなさ等の使用性の観点から、分子量が200~1,000のものが好ましい。分子量が200~1,000のものとしては、例えばイソヘキサデカン、軽質流動イソパラフィン、流動パラフィン、重質流動イソパラフィン、スクワラン、合成スクワラン、植物性スクワラン、α-オレフィンオリゴマー等が挙げられ、なお、流動パラフィン等がより好ましい。なお、分子量の値は上記成分の分子の化学構造式に基づき、分子を構成する原子の原子量の和として求めることができるが、軽質流動イソパラフィンや流動パラフィン、重質流動イソパラフィン、α-オレフィンオリゴマー等、分子量の異なる成分の混合物である場合には、これら成分の炭素数の分布を求め、各成分の分子量に換算した値が200~1,000の範囲内に入る成分が該混合物の90質量%以上であれば、本発明における分子量が200~1,000の炭化水素油であるとする。なお、医薬部外品原料規格に収載される軽質流動イソパラフィン、流動パラフィン、重質流動イソパラフィン、α-オレフィンオリゴマーは、何れも本発明の成分(c)に該当する。これらの市販品としては、例えば、「ハイコールK-500」「ハイコールK-350」「ハイコールK-230」(カネダ株式会社)、「パールリーム4」「パールリーム6」「パールリーム18」「パールリーム24」「パールリーム46」(日油株式会社)、などが挙げられる。これらは1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0032】
本発明の用時混合型化粧料においては、特に限定されるものではないが、成分(c)の含有量は、経時安定性や浸透感及び閉塞感の使用性の観点から、油性化粧料中に10%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。また、成分(c)の含有量は、油性化粧料中に50%以下であることが好ましく、45%以下であることがより好ましい。
【0033】
成分(a)及び成分(c)の含有質量割合[(c)/(a)]は、8以上であることが好ましく、30以上であることがより好ましい。また、含有質量割合[(c)/(a)]は、製剤安定性の観点から、600未満であることが好ましく、300以下であることがより好ましい。
【0034】
成分(b)及び成分(c)の含有質量割合[(b)/((b)+(c))]は、0.5以上であることが好ましく、0.6以上であることがより好ましい。また、含有質量割合[(b)/((b)+(c))]は、0.9以下であることが好ましく、0.8以下であることがより好ましい。さらに、成分(b)及び成分(c)の含有質量割合[(c)/((b)+(c))]は、0.1以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましい。また、含有質量割合[(c)/((b)+(c))]は、0.5以下であることが好ましく、0.45以下であることがより好ましい。含有質量割合[(b)/((b)+(c))]及び含有質量割合[(c)/((b)+(c))]をこの範囲にすることによって、用時混合型化粧料の製剤安定性や浸透感及び閉塞感等の使用性が良好なものとなる。
【0035】
本発明の油性化粧料には、上記(a)~(c)成分の他に、他の添加剤を添加してもよい。他の添加剤としては、例えば、成分(a)以外の界面活性剤、乳化助剤、油剤、粉体、紫外線吸収剤、ゲル化剤、褪色防止剤、酸化防止剤、防腐剤、美容成分、香料、保湿剤等の水性成分、低級アルコール、多価アルコール等を本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有することができる。
【0036】
界面活性剤としては、成分(a)以外のものであり、通常化粧料に用いられる界面活性剤であればいずれのものも使用でき、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
【0037】
乳化助剤としては、高級アルコール、モノグリセリルエーテル及びモノグリセリル脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0038】
油剤としては、成分(b)及び成分(c)以外のものであり、通常化粧料に用いられる油であればいずれのものも使用でき、動物油、合成油等の起源や、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず、油脂類、脂肪酸類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類などが挙げられる。具体的には、イソステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸類、低重合度ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、架橋型オルガノポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等のシリコーン油類、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン等のフッ素系油剤類などが挙げられる。
【0039】
粉体成分としては、通常化粧料に用いられる粉体であればいずれのものも使用でき、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、金属粉体類、複合粉体類等が挙げられる。これらはフッ素化合物、シリコ-ン油、粉体、油剤、ゲル化剤、エマルションポリマー、界面活性剤等で表面処理されていてもよい。これらの粉体は、1種又は2種以上を用いることができ、更に複合化したものを用いても良い。
【0040】
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、PABA系、ケイ皮酸系、サリチル酸系等、例えば、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル2,4,6-トリス[4-(2-エチルへキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン等があげられる。
【0041】
酸化防止剤としては、例えばトコフェロール、アスコルビン酸等、美容成分としては例えばビタミン類、消炎剤、生薬等、防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0042】
(水性化粧料)
本発明における水性化粧料は、水又は水溶性溶剤の水溶液を連続相とするものを指すものである。水又は水溶性溶剤の水溶液を連続相としていれば、特に限定されないが、油剤等の油性成分を含んでも良いが、製剤安定性、浸透感及び閉塞感等の観点から5%以下が好ましく、より好ましくは1%以下であり、0.5%以下であることがさらにより好ましい。
【0043】
水性化粧料に含まれる水は、油剤の分散媒体として用いられるものであり、通常化粧料に用いられるものであれば特に限定されないが、例えば精製水、蒸留水、イオン交換水、水道水、温泉水、海洋深層水等があげられる。水の含有量としては、特に限定されるものではないが、水性化粧料中に30~100%が好ましく、40~90%がより好ましい。
【0044】
(成分(d):多価アルコール)
【0045】
本発明において、成分(d)多価アルコールをさらに含有することで、製剤安定性や浸透感及び閉塞感等の使用性を向上させることが可能となる。
【0046】
成分(d)としては、例えば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール及び1,2-ペンタンジオール、グリセリン、ジグリセリン、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール等が挙げられ、必要に応じて1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。この中でも、グリセリン、1,3-ブチレングリコールを含むことが好ましい。
【0047】
成分(d)の含有量は、特に限定されるものではないが、水性化粧料中に、5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましい。また、多価アルコールの含有量は、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。
【0048】
また、用時混合型化粧料において、成分(a)及び成分(d)の含有質量割合[(d)/(a)]は、20以上であることが好ましく、40以上であることがより好ましい。また、含有質量割合[(d)/(a)]は、製剤安定性の観点から、1500以下であることが好ましく、1000以下であることがより好ましく、800以下であることがさらにより好ましい。この範囲にすることによって、用時混合型化粧料の混合直後の乳化安定性や経時安定性、さらにはべたつき等の使用性が良好なものとなる。
【0049】
(成分(e):アミノ酸)
【0050】
本発明においてはさらに成分(e)アミノ酸を含有することができる。本発明の用時混合型化粧料にアミノ酸を含有することで、乳化化粧料としての製剤安定性が向上するだけでなく、皮膚に塗布した際に良好な浸透感が得られる。
【0051】
本発明の成分(e)アミノ酸としては、例えばグリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、トレオニン、ロイシン、ヒスチジン、トリプトファン、セリン、スレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、リジン、ヒドロキシリジン、ヒドロキシプロリン、アルギニン、シスチン、システイン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、プロリン、オルニチン、シトルリン、テアニン等が挙げられる。中でも環状アミノ酸が好ましく、ヒドロキシプロリンがより好ましい。
【0052】
成分(e)の含有量は、特に限定されるものではないが、水性化粧料中に、0.001%以上であることが好ましく、0.01%以上であることがより好ましい。また、成分(e)の含有量は、水性化粧料中に1%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましい。
【0053】
本発明の水性化粧料には、上記した成分の他に、他の添加剤を添加してもよい。他の添加剤としては、例えば、界面活性剤、水溶性高分子、低級アルコール、保湿剤などの水性成分、防腐剤、キレート剤、美容成分、油剤、香料等を本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有することができる。
【0054】
水溶性高分子としては、例えば、カラギーナン、キサンタンガム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール,ポリビニルピロリドン、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)共重合体、(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマーなどが挙げられる。中でも、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、キサンタンガムが好ましく、必要に応じて1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0055】
上記水溶性高分子の含有量は、特に限定されるものではないが、水性化粧料中に、1%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましく、浸透感及びべたつきのなさ等の使用性の観点から、0.3%以下であることがさらにより好ましい。
【0056】
保湿剤としては、例えば、ポリオキシアルキレングリセリルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルグルコシド等が挙げられる。
【0057】
水性化粧料の性状としては、特に限定されるものではないが、液状~ゲル状とすることが本発明の効果を得る上で好ましい。ここで、液状~ゲル状とは、25℃においてブルックフィールド型回転粘度計を用いて測定された粘度が5,000mPa・s以下の粘度を有するものであり、3,000mPa・s以下であることが好ましく、2,000mPa・s以下であることがより好ましい。
【0058】
本発明の用時混合型化粧料において、油性化粧料及び水性化粧料の比率は、重量比1:2~1:8の範囲である。油性化粧料:水性化粧料がこの範囲にあることで、用時混合型化粧料の製剤安定性が担保される。油性化粧料:水性化粧料は、1:2~1:4であることが好ましく、1:4であることがより好ましい。
【0059】
本発明の用時混合型化粧料は、O/W型、W/O型、O/W/O型、W/O/W型等の乳化化粧料にて実施可能であるが、O/W型の乳化化粧料であることが本発明の効果を得るためには好ましい。
【0060】
本発明の用時混合型化粧料の分散滴の粒子径は、経時安定性及び浸透感に優れたものが得られるという観点から、粒子径が10μm以上である分散滴の割合が5~30%であることが好ましく、10~20%であることがより好ましい。なお、ここでの分散滴の粒子径は、後述する評価方法1の条件で調製した直後の用時混合型化粧料を、光学顕微鏡(200倍率)にて観察し、一視野につき任意の100個の分散滴の粒子径を測定した値である。この値を用いて、分散滴の粒子径が10μm以上である割合を算出することができる。
【0061】
本発明の用時混合型化粧料の性状としては、液状、ゲル状、乳液状、クリーム状等の種々の形態にて実施することが可能であり、中でも、25℃で液状であることが好ましい。ここで、本明細書において、25℃で液状とは、25℃で十分に流動性を有する状態であることを意味する。具体的には、25℃において、ブルックフィールド型回転粘度計を用いて測定された粘度が、5,000mPa・s以下であることを指す。
【0062】
本発明の用時混合型化粧料は、特に容器等により影響されるものではないが、用時混合を効果的に実施するにあたり、例えば下記態様が挙げられる。
水性化粧料及び油性化粧料をそれぞれ別の容器に充填し、特定の重量比で混合した後、蓋をして振とうすることで調製することができる。一方で、適した分量をあらかじめ密閉した袋状のものも使用することが可能であり、混合する仕組みが備わっていれば、移し替える必要がないため好ましい。
【0063】
本発明の用時混合型化粧料は、皮膚外用剤の用途としても利用可能である。例えば、外用液剤、ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、リニメント剤等が挙げられる。また、その使用方法は、前記した化粧料と同様に挙げることができる。
【0064】
本発明の用時混合型化粧料は、種々の用途の化粧料として利用できる。例えば、乳液、クリーム、美容液、マッサージ化粧料、パック化粧料、ハンドクリーム、ボディローション、ボディクリーム、メイクアップ化粧料、化粧用下地化粧料、目元用クリーム、日焼け止め、ヘアクリーム、ヘアワックス等の化粧料を例示することができる。中でも、乳液、クリーム、美容液、マッサージ化粧料、パック化粧料、ハンドクリーム、ボディローション、ボディクリーム等のスキンケア化粧料が好ましい。その使用方法は、手や指、コットンで使用する方法、シート材等に含浸させて使用する方法等が挙げられ、本発明においては、シート材に塗布又は含浸させて使用するシート状化粧料とすることがより好ましい。シート状化粧料とすることで肌に十分な水分や有効成分を与え、保湿やエモリエント効果、さらには、使用後の閉塞感がより優れるという点で好ましい。
【0065】
本発明の用時混合型化粧料を含浸させるシート材としては、天然繊維、合成繊維等の繊維を織らずに、絡み合わせたシートであり、湿式製造法、乾式製造法等の何れの製造方法により得られたシート材でもよい。シート材に用いられる繊維としては、コットン、羊毛、麻、パルプ、絹、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、アクリル繊維、ビニロン、アラミド繊維等が挙げられ、これらを必要に応じて一種又は二種以上を適宜選択して用いることができる。これら中でも、安定性や肌への密着性の点でコットンおよび/またはレーヨンが好ましい。
【0066】
本発明の用時混合型化粧料を含浸させるシート材は、使用時の密着感やはがしやすさといった簡便性の点で、シート材1枚あたりの厚みが0.5~10mm、かつ含浸後のシート材1枚あたりの質量が15g以下であることが好ましく、より好ましくは、厚みが0.7~5mm、質量が10g以下である。本発明に用いられるシート材の目付としては、使用時の密着感やはがれ落ち抑制の点で、15~300g/mが好ましく、さらに好ましくは、30~120g/mである。さらに、使用部位に貼付する際の、貼り付けやすさやはがしやすさの点で、シート材1枚の面積は、1~400cmが好ましい。本発明の水中油型化粧料用化粧料のシート材への含浸量は、含浸させるシート材質量の2~15倍であることが好ましく、より好ましくは、3~10倍である。
【0067】
本発明の用時混合型化粧料をシート材へ含浸させる方法は、特に制限されるものではなく、公知の手段により実施することができる。
【0068】
本発明においては、シート材を予め袋状容器に充填させた態様とすることが好ましく、含浸ムラのない均一な含浸が可能となり、本発明の効果をより高めることができるという観点から、下記態様とすることがより好ましい。
【0069】
仕切り部によって区分された第一室及び第二室を含む袋状容器において、前記第一室には、水性化粧料及びシート材が充填されており、前記第二室には、油性化粧料が充填されており、使用時に第一室と第二室を区分している仕切り部をはがし、水性化粧料及び油性化粧料を混合し、前記シート材に保持させる。ここで、第一室と第二室の仕切り部は、外力の作用により変形・破壊可能な脆弱化帯を有しており、外周縁の接合部よりも弱い接合部から形成されている。使用時に、外力の作用により仕切り部がはがれ、第一室と第二室を連通させることで、前記第二室の油性化粧料を前記第一室に導入し、混合乳化することが可能となる。なお、外力の作用としては、圧力、せん断力、熱等が挙げられる。
【0070】
前記袋状容器において、水性化粧料及びシート材が充填された第一室と油性化粧料が充填された第二室の容積比は、特に制限されるものではないが、シート材の含浸均一性の観点から、第一室:第二室の容積比が1:2であることがより好ましい。
【0071】
さらに、本発明においては、混合時の様子が観察しやすいように、前記袋状容器の一部が透明フィルムであることが好ましく、袋状容器の片方の面(半面)が透明フィルムで形成されることがより好ましい。前記透明なフィルムは、PET(ポリエチレンテレフタレート)及びPE(ポリエチレン)等を使用することができるが、本発明においては、複数種の層を有する多層構造フィルムであることが好ましく、中でも最内装フィルムがPEであることがより好ましく、PET/PE(最外装フィルム/最内装フィルム)の2層構造のフィルムであることがより好ましい。さらに、前記袋状容器において、透明フィルムではない部分が、PET/AL(アルミニウム)/PE(最外装フィルム/中間フィルム/最内装フィルム)の3層構造のアルミラミネートフィルムであることが好ましく、前記透明フィルムの外周縁が、アルミラミネートフィルムに接着される。上記材質のフィルムを使用することで、製剤安定性及び含浸均一性が良好なものとなる。
【0072】
前記袋状容器の形状は、特に制限されるものではないが、例えば、楕円形状、円形状、半円形状、ハート形状、半楕円形状、正方形状、長方形状等が挙げられる。本発明においては、正方形状及び長方形状であることが好ましく、その外形寸法が10~15cm×10~15cmであることが好ましく、16cm×14cmであることがより好ましい。
【0073】
(製造方法)
本発明の用時混合型化粧料の製造方法は、公知の方法であれば特に限定されることなく製造可能である。例えば、成分(a)~(c)を均一に混合した油性化粧料と水性化粧料を特定の重量比で均一に混合することにより製造することができる。
【実施例0074】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0075】
実施例1~19、及び比較例1~11:用時混合型化粧料(乳液)
表1及び表2に示す組成の水性化粧料及び油性化粧料を調製後、表3及び4に示す割合で混合した用時混合型化粧料を調製し、製剤安定性(乳化安定性及び経時安定性)、浸透感、閉塞感、べたつきのなさについて、下記の方法により評価した。その結果も併せて表3及び4に示す。
【0076】
表1
【0077】
表2-1
表2-2
【0078】
表3-1



表3-2
【0079】
表4
【0080】
<水性化粧料>
25℃で均一に混合して、水性化粧料を得た。
<油性化粧料>
成分(a)~(c)を25℃で均一に混合して、油性化粧料を得た。
<用時混合型化粧料>
上記で作製した水性化粧料および油性化粧料を所定の重量比で均一に混合した。
【0081】
(評価方法1:乳化安定性)
乳化安定性については、水性化粧料及び油性化粧料の合計量が30mLとなるよう、水性化粧料を含むガラス瓶(規格瓶No.5、容量50mL、胴径38mm、高さ68.5mm、口内径24.7mm)に、油性化粧料を添加した後、蓋をしたガラス瓶の上下反転を続けることで混合し、その際に均一な乳化状態(白濁状態)になるまでの上下反転の回数により、下記4段階判定基準により判定した。なお、ガラス瓶中の水性化粧料及び油性化粧料の量は、表3、4に記載の重量比に合わせて調製した。
4段階判定基準
(判定):(判定基準)
◎ :3回以下
○ :5回以下
△ :10回以下
× :11回以上
【0082】
(評価方法2:経時安定性)
経時安定性については、各化粧料を調製後、25℃で静置し、その外観を確認した。排液又は分離までに要する時間により、下記4段階判定基準により判定した。
4段階判定基準
(判定):(判定基準)
◎ :1時間以上
○ :30分以上
△ :10分以上
× :10分未満
【0083】
(評価方法3:浸透感)
浸透感については、化粧品評価専門パネル20名による使用テストを行い、各化粧料を顔全体に使用した後、パネル各人が使用時の浸透感に関して下記絶対評価にて5段階に評価し評点をつけ、各化粧料のパネル全員の評点合計からその平均値を算出し、下記3段階判定基準により判定した。
絶対評価基準
(評点):(評価)
5:非常に感じる
4:やや感じる
3:普通
2:あまり感じない
1:感じない
3段階判定基準
(判定):(評点の平均点)
◎ :4点以上 :非常に良好
○ :3点以上4点未満:良好
× :1点以上3点未満:不良
【0084】
(評価方法4:閉塞感)
閉塞感については、化粧品評価専門パネル20名による使用テストを行い、各化粧料を顔全体に使用した後、パネル各人が使用後の閉塞感に関して下記絶対評価にて5段階に評価し評点をつけ、各化粧料のパネル全員の評点合計からその平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。
絶対評価基準
(評点):(評価)
5:非常に感じる
4:やや感じる
3:普通
2:あまり感じない
1:感じない
4段階判定基準
(判定):(評点の平均点)
◎ :4.5点以上 :著しく良好
○ :4点以上4.5点未満:非常に良好
△ :3点以上4点未満 :良好
× :1点以上3点未満 :不良
【0085】
(評価方法5:べたつきのなさ)
べたつきのなさについては、化粧品評価専門パネル20名による使用テストを行い、各化粧料を顔全体に使用した後、パネル各人が使用時のべたつきに関して下記絶対評価にて5段階に評価し評点をつけ、各化粧料のパネル全員の評点合計からその平均値を算出し、下記3段階判定基準により判定した。
絶対評価基準
(評点):(評価)
5:感じない
4:あまり感じない
3:普通
2:やや感じる
1:非常に感じる
3段階判定基準
(判定):(評点の平均点)
◎ :4点以上 :非常に良好
○ :3点以上4点未満:良好
× :1点以上3点未満:不良
【実施例0086】
実施例1、6、12、13及び比較例1、6:用時混合型化粧料(乳液)
表1及び表2に示す組成の水性化粧料及び油性化粧料を調製後、表5に示す割合で混合した用時混合型化粧料を調製し、製剤安定性(乳化安定性及び経時安定性)、浸透感、閉塞感、べたつきのなさ、分散滴の粒子径(粒子径10μm以上の割合)について、下記の方法により評価した。その結果も併せて表5に示す。
【0087】
表5
【0088】
(評価方法6):分散滴の粒子径(粒子径10μm以上の割合)
分散滴の粒子径については、評価方法1の条件のもと調製した混合直後の各化粧料を光学顕微鏡(200倍率)にて観察し、一視野につき任意の100個の分散滴の粒子径を測定した。この値を用いて、分散滴の粒子径が10μm以上の割合を算出した。
【実施例0089】
実施例1、5、6及び比較例1、5:シート状用時混合型化粧料
下記表1および表2に示す組成の水性化粧料及び油性化粧料を調製後、表6に示す割合でシート状用時混合型化粧料を調製し、製剤安定性(乳化安定性及び経時安定性)、浸透感、閉塞感、べたつきのなさ、含浸均一性について下記の方法により評価した。その結果も併せて表6に示す。
【0090】
表6
【0091】
(評価方法7:含浸均一性)
含浸均一性については、表6のシート状用時混合型化粧料を調製した後、シート材を広げ目視にて含浸均一性を確認し、下記2段階判定基準により判定した。
2段階判定基準
(判定):(判定基準)
○ :含浸ムラがなく、シート材に均一に乳化物が含浸されている
× :含浸ムラ又は不均一な部分が存在する
【0092】
表3、4の結果から明らかな如く、本発明の実施例1~19の用時混合型化粧料は、比較例1~10の用時混合型化粧料に比べ、浸透感と使用後の閉塞感、べたつきのなさに優れ、製剤安定性にも優れたものであった。
【0093】
また、分散滴の粒子径(粒子径10μm以上の割合)を評価した表5の結果から、粒子径が10μm以上である分散滴の割合が5~30%である結果において、浸透感と使用後の閉塞感、べたつきのなさ、さらには製剤安定性に優れることがわかった。
【0094】
さらに、含浸均一性を評価した表6の結果から明らかな如く、本発明の実施例1、5、6のシート状用時混合型化粧料は、比較例1、5のシート状用時混合型化粧料に比べ、使用後の閉塞感に優れ、均一含浸性にも優れたものであった。
【0095】
これに対して、成分(a)HLB8~12の非イオン性界面活性剤の含有量が0.05%もしくは5%である比較例1及び2では、製剤安定性又はべたつきのなさの点で満足のいくものが得られなかった。そして、成分(a)のHLBが異なる非イオン性界面活性剤を用いた比較例3及び4においても、製剤安定性の点で満足のいくものが得られなかった。また、成分(c)炭化水素油を含まない比較例5では、閉塞感の点で満足のいくものが得られなかった。油性化粧料:水性化粧料の割合が1:8より小さい(1:9)もしくは1:2より大きい(1:1)の比較例6及び7では、製剤安定性、閉塞感及びべたつきのなさの点で満足のいくものが得られなかった。さらに、成分(a)を油性化粧料の代わりに水性化粧料に含有した比較例8~10の場合には、製剤安定性の点で満足のいくものが得られなかった。また、水性化粧料と油性化粧料を用時混合ではなく、通常の乳化化粧料の製造方法にて調製した比較例11の場合には、経時安定性には優れるものの浸透感や閉塞感等の使用性の点で満足いくものが得られなかった。
【0096】
実施例20:水中油型乳液
水性化粧料(成分) (質量%)
(1)グリセリン(成分(d)) 5
(2)ジプロピレングリコール(成分(d)) 5
(3)1,3-ブチレングリコール(成分(d)) 5
(4)キサンタンガム 0.5
(5)精製水 残量
(6)エデト二酸ナトリウム 0.02
(7)エタノール 3
(8)プロリン(成分(e) 0.1
(9)フェノキシエタノール 0.2
(10)イソステアリン酸PEG-50水添ヒマシ油(成分(a)) 0.1

油性化粧料(成分) (質量%)
(11)イソステアリン酸PEG-8グリセリル(成分(a)) 3
(12)ホホバ種子油(成分(b2)) 20
(13)オリーブ果実油(成分(b2)) 20
(14)トリイソステアリン酸グリセリル(成分(b1)) 10
(15)スクワラン(成分(c)) 20
(16)流動パラフィン(成分(c)) 残量
(17)フェノキシエタノール 1
(18)香料 0.5
【0097】
水性化粧料(製法)
A.成分(1)~(8)を25℃で均一に混合溶解した。
B.成分(9)、(10)を50℃で均一に混合溶解した。
C.AにBを添加し、可溶化したすることで水性化粧料を得た。当該水性化粧料は、25℃で約2,000mPa・sであった。
油性化粧料(製法)
成分(11)~(18)を25℃で均一に混合し、油性化粧料を得た。
用時混合型化粧料(製法)
上記で作製した油性化粧料及び水性化粧料を重量比1:5の比率で均一に混合し、水中油型乳液を得た。
以上のようにして得られた水中油型乳液は、製剤安定性、浸透感、閉塞感、べたつきのなさに優れるものであった。
【0098】
実施例21:ヘアミルク
水性化粧料(成分) (質量%)
(1)グリセリン(成分(d)) 5
(2)プロピレングリコール(成分(d)) 20
(3)キサンタンガム 0.2
(4)カラギーナン 0.1
(5)精製水 残量
(6)リン酸一水素ナトリウム 0.1
(7)リン酸二水素ナトリウム 0.1
(8)エデト二酸ナトリウム 0.02

油性化粧料(成分) (質量%)
(9)トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)(成分(a))

(10)エチルヘキサン酸セチル(成分(b1)) 残量
(11)ミリスチン酸イソプロピル(成分(b1)) 20
(12)パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル 1
(13)水添ポリイソブテン (成分(c)) 10
(14)スクワラン(成分(c)) 20
(15)ジメチコン 5
(16)ステアリルアルコール 0.1
(17)ステアルトリモニウムクロリド 0.5
(18)フェノキシエタノール 1
(19)香料 0.5
【0099】
水性化粧料(製法)
成分(1)~(8)を25℃で均一に混合溶解し、水性化粧料を得た。当該水性化粧料は、25℃で約3,000mPa・sであった。
油性化粧料(製法)
成分(9)~(18)を75℃で均一に混合溶解し、冷却した後、成分(19)を添加し、油性化粧料を得た。
用時混合型化粧料(製法)
上記で作製した油性化粧料及び水性化粧料を重量比1:4の比率で均一に混合し、ヘアミルクを得た。
以上のようにして得られたヘアミルクは、製剤安定性、浸透感、閉塞感、べたつきのなさに優れるものであった。
【0100】
実施例22:ボディローション
水性化粧料(成分) (質量%)
(1)グリセリン(成分(d)) 10
(2)ジグリセリン(成分(d)) 5
(3)アルキル変性カルボキシビニルポリマー 0.1
(4)カルボマー 0.1
(5)水酸化ナトリウム 0.06
(6)精製水 残量
(7)エデト二酸ナトリウム 0.02

油性化粧料(成分) (質量%)
(8)テトラオレイン酸ソルベス-30(成分(a)) 0.5
(9)トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル(成分(a)) 0.5
(10)トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル(成分(b1)) 40
(11)マカデミアナッツ油(成分(b2)) 10
(12)コメヌカ油(成分(b2)) 10
(13)α-オレフィンオリゴマー(成分(c)) 残量
(14)ワセリン(成分(c)) 5
(15)ステアリルアルコール 0.1
(16)ステアリン酸グリセリル 0.1
(17)フェノキシエタノール 1
(18)香料 0.5
【0101】
水性化粧料(製法)
成分(1)~(7)を25℃で均一に混合溶解し、水性化粧料を得た。当該水性化粧料は、25℃で約2,000mPa・sであった。
油性化粧料(製法)
成分(8)~(17)を75℃で均一に混合溶解し、冷却した後、成分(18)を添加し、油性化粧料を得た。
用時混合型化粧料(製法)
上記で作製した油性化粧料及び水性化粧料を重量比1:2の比率で均一に混合し、ボディローションを得た。
以上のようにして得られたボディローションは、製剤安定性、浸透感、閉塞感、べたつきのなさに優れるものであった。