(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022041969
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】心拍変動からの炭水化物代謝障害の非侵襲的検出のためのコンピュータ支援方法、およびその実施のためのウェアラブル自律型デバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 5/352 20210101AFI20220304BHJP
A61B 10/00 20060101ALI20220304BHJP
A61B 5/0245 20060101ALI20220304BHJP
A61B 5/353 20210101ALI20220304BHJP
A61B 5/355 20210101ALI20220304BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
A61B5/352 100
A61B10/00 M
A61B5/0245 100B
A61B5/353
A61B5/355
A61B5/02 310F
【審査請求】未請求
【請求項の数】29
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021139851
(22)【出願日】2021-08-30
(31)【優先権主張番号】2020128752
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ANDROID
2.iOS
(71)【出願人】
【識別番号】520066902
【氏名又は名称】ザクリトエ・アクツィオニェルノエ・オブシェスティヴォ・”イーシー-リーシング”
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アレキサンダー・ウィークトロヴィチ・シュミット
(72)【発明者】
【氏名】マキシム・アレクサンドロヴィッチ・ノヴォパシン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレイ・アレクサンドロヴィッチ・ベレジン
(72)【発明者】
【氏名】ローマン・セルゲヴィッチ・ノビコフ
(72)【発明者】
【氏名】アショット・ムサエロヴィッチ・ムクルタミヤン
(72)【発明者】
【氏名】ボリス・アロノヴィッチ・ポジン
【テーマコード(参考)】
4C017
4C127
【Fターム(参考)】
4C017AA10
4C017AC28
4C017BC21
4C017BD04
4C017EE15
4C017FF05
4C127AA02
4C127GG05
4C127GG15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】心拍変動(HRV)から炭水化物代謝障害(CMD)を非侵襲的に検出するコンピュータ支援方法。
【解決手段】ECGおよびPPGからなる群から心臓信号を選択するステップと、ECGにおけるR、P、およびTピーク、PPGにおける収縮期および拡張期とからなる群から選択されるタイムスタンプのシーケンスを決定するステップと、シーケンス内の隣接するタイムスタンプ間の時間間隔を決定し、患者のHRVを特徴付ける心間隔図(CIG)を得るステップと、線形傾向の除去からCIGを変換して心間隔図(TCIG)を得るステップと、TCIGの各々についてHRVの統計的スペクトルパラメータのセットを得るステップと、HRVの統計的スペクトルパラメータのコンピュータ処理を実行するステップであり、健康な患者とCMD患者との比較とCMD患者の値に対する患者の値の近さの程度から、患者のCMDの存在に関する判断を行うステップとを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心拍変動(HRV)からの炭水化物代謝障害(CMD)の非侵襲的検出のためのコンピュータ支援方法であって、
少なくとも1つの心臓信号を取得するステップであり、前記心臓信号が、患者の少なくとも第1のリードの心電図(ECG)およびフォトプレチスモグラム(PPG)からなる群から選択される、ステップと、
受信した前記少なくとも1つの心臓信号において、前記ECGにおけるRピークの出現のタイムスタンプのシーケンス、前記ECGにおけるPピークの出現のタイムスタンプのシーケンス、前記ECGにおけるTピークの出現のタイムスタンプのシーケンス、前記PPGにおける収縮期の出現のタイムスタンプのシーケンス、および前記PPGにおける拡張期の出現のタイムスタンプのシーケンスからなる群から選択されるタイムスタンプの少なくとも1つのシーケンスを決定するステップと、
得られた前記タイムスタンプの少なくとも1つのシーケンス内の隣接するタイムスタンプ間の時間間隔を決定し、前記患者の前記心拍変動(HRV)を特徴付ける少なくとも1つの心間隔図(CIG)を得るステップと、
心拍の非線形変動を特徴付ける少なくとも1つの変換された心間隔図(TCIG)を得るために、値の線形傾向を除去することによって、前記得られた少なくとも1つのCIGの変換を実行するステップと、
HRVの統計的スペクトルパラメータの少なくとも1つのセットを得るために、前記少なくとも1つのTCIGの各々についてHRVの統計的スペクトルパラメータを計算するステップと、
前記得られたHRVの統計的スペクトルパラメータの少なくとも1つのセットのコンピュータ処理を実行するステップであり、その間、前記得られたHRVの統計的スペクトルパラメータが、健康な患者のHRVの参照統計的スペクトルパラメータ、およびCMD患者のHRVの参照統計的スペクトルパラメータと比較される、ステップと、
炭水化物代謝障害(CMD)患者のHRVの前記統計的スペクトルパラメータの参照値に対する患者のHRVの前記統計的スペクトルパラメータの近さの程度に従って、前記患者のCMDの存在に関する判断を行うステップと
を含む、方法。
【請求項2】
ゼロ次の最小二乗法(算術平均の減算)によって前記CIGの値の前記線形傾向を除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも一次の最小二乗法によって前記CIGの値の前記線形傾向を除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
移動平均/中央値エンベロープを表す平滑化されたKIGを減算することによって、前記CIGの値の前記線形傾向を除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
移動平均/中央値法によって前記エンベロープを追加で少なくとも1回平滑化する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
フーリエスペクトルの計算、ウェルチ法、Lomb-Scargleピリオドグラムの計算からなる群から選択される方法によって、HRV心拍変動のスペクトルパラメータを計算する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
HRVの統計的スペクトルパラメータの特徴空間において、CMD患者と健康な患者のトレーニングサンプルでトレーニングを受けた、線形回帰、ロジスティック回帰、弁別的方法、ニューラルネットワークの構築、決定木の構築、クラスタリングの実行、および分類モデルの構築からなる群からの少なくとも1つの方法を適用することによって、前記CMDの前記存在に関する判断を行う、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
心拍変動(HRV)からの炭水化物代謝障害(CMD)の非侵襲的検出のためのコンピュータ支援方法であって、
患者の心拍変動(HRV)の存在を反映する1つの心間隔図(CIG)を取得するステップと、
心拍の非線形変動を特徴付ける少なくとも1つの変換された心間隔図(TCIG)を得るために、値の線形傾向を除去することによって、得られた前記少なくとも1つのCIGの変換を実行するステップと、
HRVの統計的スペクトルパラメータの少なくとも1つのセットを得るために、前記TCIGのHRVの統計的スペクトルパラメータを計算するステップと、
前記得られたHRVの統計的スペクトルパラメータのコンピュータ処理を実行するステップであり、その間、前記得られたHRVの統計的スペクトルパラメータが、健康な患者のHRVの参照統計的スペクトルパラメータ、およびCMD患者のHRVの参照統計的スペクトルパラメータと比較される、ステップと、
炭水化物代謝障害(CMD)患者のHRVの前記統計的スペクトルパラメータの参照値に対する患者のHRVの前記統計的スペクトルパラメータの近さの程度に従って、前記患者のCMDの存在に関する判断を行うステップと
を含む、方法。
【請求項9】
ゼロ次の最小二乗法(算術平均の減算)によって前記CIGの値の前記線形傾向を除去する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも一次の最小二乗法によって前記CIGの値の前記線形傾向を除去する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
移動平均/中央値エンベロープを表す平滑化されたKIGを減算することによって、前記CIGの値の前記線形傾向を除去する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
移動平均/中央値法によって前記エンベロープを追加で少なくとも1回平滑化する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
フーリエスペクトルの計算、ウェルチ法、Lomb-Scargleピリオドグラムの計算からなる群から選択される方法によって、HRV心拍変動のスペクトルパラメータを計算する、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
HRVの統計的スペクトルパラメータの特徴空間において、CMD患者と健康な患者のトレーニングサンプルでトレーニングを受けた、線形回帰、ロジスティック回帰、弁別的方法、ニューラルネットワークの構築、決定木の構築、クラスタリングの実行、および分類モデルの構築からなる群からの少なくとも1つの方法を適用することによって、前記CMDの前記存在に関する判断を行う、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
心拍変動(HRV)からの炭水化物代謝障害(CMD)の非侵襲的検出のためのウェアラブル自律型デバイスであって、
少なくとも1つの心臓信号を取得するためのモジュールであり、前記心臓信号が、患者の少なくとも第1のリードの心電図(ECG)およびフォトプレチスモグラム(PPG)からなる群から選択される、モジュール、ならびに
コンピューティング手段であり、
受信した前記少なくとも1つの信号において、前記ECGにおけるRピークの出現のタイムスタンプのシーケンス、前記ECGにおけるPピークの出現のタイムスタンプのシーケンス、前記ECGにおけるTピークの出現のタイムスタンプのシーケンス、前記PPGにおける収縮期の出現のタイムスタンプのシーケンス、および前記PPGにおける拡張期の出現のタイムスタンプのシーケンスからなる群から選択されるタイムスタンプの少なくとも1つのシーケンスを決定するためのモジュールと、
得られた前記タイムスタンプの少なくとも1つのシーケンス内の隣接するタイムスタンプ間の時間間隔を決定し、前記患者の前記心拍変動(HRV)を特徴付ける少なくとも1つの心間隔図(CIG)を得るためのモジュールと、
心拍の非線形変動を特徴付ける少なくとも1つの変換された心間隔図(TCIG)を得るために、値の線形傾向を除去することによって、前記得られた少なくとも1つのCIGの変換を実行するためのモジュールと、
HRVの統計的スペクトルパラメータの少なくとも1つのセットを得るために、前記少なくとも1つのTCIGの各々についてHRVの統計的スペクトルパラメータを計算するためのモジュールと、
前記得られたHRVの統計的スペクトルパラメータの少なくとも1つのセットのコンピュータ処理を実行するためのモジュールであり、その間、前記得られたHRVの統計的スペクトルパラメータが、健康な患者のHRVの参照統計的スペクトルパラメータ、およびCMD患者のHRVの参照統計的スペクトルパラメータと比較される、モジュールと、
炭水化物代謝障害(CMD)患者のHRVの前記統計的スペクトルパラメータの参照値に対する患者のHRVの前記統計的スペクトルパラメータの近さの程度に従って、前記患者のCMDの存在に関する判断を行うためのモジュールと
を備える、コンピューティング手段
を備える、ウェアラブル自律型デバイス。
【請求項16】
少なくとも1つの変換された心間隔図(TCIG)を得るために、前記得られた少なくとも1つのCIGの前記変換を実行するための前記モジュールが、ゼロ次の最小二乗法によって前記CIGの値の前記線形傾向を除去するように構成される、請求項15に記載のウェアラブル自律型デバイス。
【請求項17】
前記得られた少なくとも1つのCIGの前記変換を実行するための前記モジュールが、少なくとも一次の最小二乗法によって前記CIGの値の前記線形傾向を除去するように構成される、請求項15に記載のウェアラブル自律型デバイス。
【請求項18】
前記得られた少なくとも1つのCIGの前記変換を実行するための前記モジュールが、移動平均/中央値エンベロープを表す平滑化されたKIGを減算することによって、前記CIGの値の前記線形傾向を除去するように構成される、請求項15に記載のウェアラブル自律型デバイス。
【請求項19】
前記得られた少なくとも1つのCIGの前記変換を実行するための前記モジュールが、移動平均/中央値法によってエンベロープを追加で少なくとも1回平滑化するようにさらに構成される、請求項18に記載のウェアラブル自律型デバイス。
【請求項20】
HRVの統計的スペクトルパラメータの少なくとも1つのセットを得るために、前記少なくとも1つのTCIGの各々についてHRVの統計的スペクトルパラメータを計算するための前記モジュールが、フーリエスペクトルの計算、ウェルチ法、Lomb-Scargleピリオドグラムの計算からなる群から選択される方法によって、HRV心拍変動のスペクトルパラメータを計算するように構成される、請求項15に記載のウェアラブル自律型デバイス。
【請求項21】
患者の炭水化物代謝障害(CMD)の前記存在に関する判断を行うための前記モジュールが、HRVの統計的スペクトルパラメータの特徴空間において、CMD患者と健康な患者のトレーニングサンプルでトレーニングを受けた、線形回帰、ロジスティック回帰、弁別的方法、ニューラルネットワークの構築、決定木の構築、クラスタリングの実行、および分類モデルの構築からなる群からの少なくとも1つの方法を適用することによって、炭水化物代謝障害の前記存在に関する判断を行うように構成される、請求項15に記載のウェアラブル自律型デバイス。
【請求項22】
心拍変動(HRV)からの炭水化物代謝障害(CMD)の非侵襲的検出のためのウェアラブル自律型デバイスであって、
心拍間の時間間隔を測定し、患者の心拍変動(HRV)を反映する心間隔図(CIG)を提供するように構成されるセンサ、ならびに
コンピューティング手段であり、
心拍の非線形変動を特徴付ける少なくとも1つの変換された心間隔図(TCIG)を得るために、値の線形傾向を除去することによって、得られた少なくとも1つのCIGの変換を実行するためのモジュールと、
HRVの統計的スペクトルパラメータの少なくとも1つのセットを得るために、前記少なくとも1つのTCIGの各々についてHRVの統計的スペクトルパラメータを計算するためのモジュールと、
前記得られたHRVの統計的スペクトルパラメータの少なくとも1つのセットのコンピュータ処理を実行するためのモジュールであり、その間、前記得られたHRVの統計的スペクトルパラメータが、健康な患者のHRVの参照統計的スペクトルパラメータ、およびCMD患者のHRVの参照統計的スペクトルパラメータと比較される、モジュールと、
炭水化物代謝障害(CMD)患者のHRVの前記統計的スペクトルパラメータの参照値に対する患者のHRVの前記統計的スペクトルパラメータの近さの程度に従って、前記患者のCMDの存在に関する判断を行うためのモジュールと
を備える、コンピューティング手段
を備える、ウェアラブル自律型デバイス。
【請求項23】
少なくとも1つの変換された心間隔図(TCIG)を得るために、前記得られた少なくとも1つのCIGの前記変換を実行するための前記モジュールが、ゼロ次の最小二乗法によって前記CIGの値の前記線形傾向を除去するように構成される、請求項22に記載のウェアラブル自律型デバイス。
【請求項24】
前記得られた少なくとも1つのCIGの前記変換を実行するための前記モジュールが、少なくとも一次の最小二乗法によって前記CIGの値の前記線形傾向を除去するように構成される、請求項22に記載のウェアラブル自律型デバイス。
【請求項25】
前記得られた少なくとも1つのCIGの前記変換を実行するための前記モジュールが、移動平均/中央値エンベロープを表す平滑化されたKIGを減算することによって、前記CIGの値の前記線形傾向を除去するように構成される、請求項22に記載のウェアラブル自律型デバイス。
【請求項26】
前記得られた少なくとも1つのCIGの前記変換を実行するための前記モジュールが、移動平均/中央値法によって前記エンベロープを追加で少なくとも1回平滑化するようにさらに構成される、請求項18に記載のウェアラブル自律型デバイス。
【請求項27】
HRVの統計的スペクトルパラメータの少なくとも1つのセットを得るために、前記少なくとも1つのTCIGの各々についてHRVの統計的スペクトルパラメータを計算するための前記モジュールが、フーリエスペクトルの計算、ウェルチ法、Lomb-Scargleピリオドグラムの計算からなる群から選択される方法によって、HRV心拍変動の前記スペクトルパラメータを計算するように構成される、請求項22に記載のウェアラブル自律型デバイス。
【請求項28】
患者の炭水化物代謝障害(CMD)の前記存在に関する判断を行うための前記モジュールが、HRVの統計的スペクトルパラメータの特徴空間において、CMD患者と健康な患者のトレーニングサンプルでトレーニングを受けた、線形回帰、ロジスティック回帰、弁別的方法、ニューラルネットワークの構築、決定木の構築、クラスタリングの実行、および分類モデルの構築からなる群からの少なくとも1つの方法を適用することによって、炭水化物代謝障害の前記存在に関する判断を行うように構成される、請求項22に記載のウェアラブル自律型デバイス。
【請求項29】
患者の心拍変動(HRV)に基づいて炭水化物代謝障害(CMD)の兆候がある個人を識別するために母集団をスクリーニングするためのコンピュータ化された方法であって、
スクリーニングの感度と特異性の目標を設定する段階と、
スクリーニングの準備を実行する段階であり、このために検査対象の患者の心電図(ECG)とフォトプレチスモグラム(PPG)の最小必要数、およびグループの観察された患者ごとのMCR記号を有する前記ECGとPPGのしきい値が、これを超えると、前記グループの前記患者の前記CMDの存在が認識される、段階と、
炭水化物代謝障害の特徴を有する人を識別するために前記母集団の前記スクリーニングを実行する段階であり、そのために、段落1、8のいずれか1つに記載の方法が実施される、段階と
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医学に関し、より詳細には、心拍変動(HRV)から炭水化物代謝障害を検出するためのコンピュータ支援方法およびその実施のためのウェアラブル自律型デバイスに関する。
【0002】
炭水化物代謝障害(CMD)の患者を識別するために母集団の大規模な2段階のスクリーニングを構築するために、本方法およびデバイスを使用することができる。
【0003】
スクリーニングの第1の段階において、提案された方法およびデバイスを使用して、炭水化物代謝障害の疑いのある患者が識別され、さらなる検査のために医療機関に送られる。
【0004】
第2の段階において、医療専門家(国家勧告に基づく医療機関の専門家)が、スクリーニングの第1の段階を通った患者の炭水化物代謝障害の有無について最終判断を行う。
【背景技術】
【0005】
人間の身体の健康を制御するための体重計、血圧、血糖センサを含む、かなりの数の技術的手段がある。
【0006】
技術的手段および様々なバイオセンサを使用して人間の状態を評価し、続いてコンピューティングデバイスを使用してデータ分析を行うための多くの技術的解決策が知られている。
【0007】
先行技術から知られているのは、機能状態を継続的に監視し、機能診断を与えるための方法である(たとえば、2017年9月21日に公開されたWO2017/160186A1を参照)。本方法は、バイオメトリクスモニタ(腕時計またはブレスレット)からのデータが有線または無線手段でAndroidまたはiOSプラットフォーム上のモバイルアプリケーションに送信されることで構成されている。次いで、測定された脈拍値を使用してプロットされたヒストグラムに基づいてストレスレベルが計算され、次いで、Xミリ秒の所与の範囲内の隣接する心拍間の最大間隔数の集中度から、ヒストグラムデータに基づいてストレスレベルが決定され、ユーザの動きの強さの指標が、バイオメトリクスモニタに組み込まれた電気加速度計を使用して記録される。次いで、得られた指標の経時的な分布に基づいて、個人の日常の運動活動とライフスタイルについて結論が導き出され、収集された情報に基づいて、何が正確にストレスレベルの変化の原因となったかについて結論が導き出され、ユーザは問題の原因を避けるようにアドバイスされる。
【0008】
本発明によって解決される技術的問題は、人の生活の過程にある環境の外的要因の状況を考慮に入れる能力、これらの要因の作用に対する生理学的反応を考慮に入れること、身体活動のレベルと睡眠期間を考慮に入れること、ユーザによる最終情報の認識を簡素化すること、およびオンラインで環境が人に与える影響の結果を得る能力である。
【0009】
人のストレス状態のレベルを継続的に監視する特定の方法は、バイオメトリクス検出器の使用に基づいており、この検出器からのデータは、特定の時間枠内の隣接する心拍間の間隔の値をバッファリングし、これらの間隔の分布のヒストグラムを作成して心拍変動に基づいてストレスレベルを計算するために使用される。
【0010】
ストレスのレベルは、発生したイベントとストレスのレベルの急上昇との間に時間遅延を形成することによって、人の活動ならびに周囲の人および物との相互作用に関連付けられており、それによると、ストレスのレベルの変化の正確な原因は何であったかが結論付けられ、ユーザはこの原因を除外するように求められる。
【0011】
この方法の欠点は、本方法が、患者の心拍変動(HRV)の統計的スペクトルパラメータを、健康な患者および炭水化物代謝障害のある患者からのHRVの参照統計的スペクトルパラメータと比較することによって、HRVパラメータの逸脱によって患者の炭水化物代謝障害の存在を評価することができないという事実を含む。
【0012】
従来技術から知られているのは、脈拍波形分析に基づいて、被験者の心拍、呼吸数、および/または血圧に関するデータを決定するための装置である(たとえば、2017年1月19日に公開されたWO2017009465(A1)を参照)。
【0013】
本デバイスは、脈拍波形の分析に基づいて、たとえば、被験者の心拍、呼吸数、および/または血圧に関連するデータが決定され、処理される、健康状態を決定するための方法の実装形態を提供する。
【0014】
被験者の健康状態を決定するための装置は、被験者の心臓リズムを反映する脈波データを提供するための制御モジュールおよび手段を備える。脈波データが得られる。心周期の複数の期間を特徴付ける脈波データの一部が選択される。脈波データの脈波データに基づいて、脈拍変動、呼吸数変動、心拍変動が決定される。相関値が、血圧変動、呼吸数変動、心拍変動、および対応する参照値に基づいて決定される。被験者の健康状態は、相関値に基づいて決定される。
【0015】
別の実施形態では、心拍変動を特徴付ける第1および第2の指標は、心周期の複数の期間を特徴付ける脈波データの一部の脈波データに基づいて決定される。第2の指標は第1の指標とは異なる。被験者の健康状態は、第1および第2の指標に基づいて決定される。第1の指標を決定することは、脈波データの一部の脈波データに基づいて複数の呼吸数間隔を決定することと、複数の呼吸時間間隔に基づいて第1の指標を決定することとを含む。
【0016】
この方法の欠点は、本方法が、患者の心拍変動(HRV)の統計的スペクトルパラメータを、健康な患者および炭水化物代謝障害のある患者からのHRVの参照統計的スペクトルパラメータと比較することによって、HRVパラメータの逸脱によって患者の炭水化物代謝障害の存在を評価することができないという事実を含む。
【0017】
請求される技術的解決策に最も近い類似物について、申請者は、心臓血管系および神経系の機能診断に使用することができる心拍変動の方法を検討している(2002年7月20日に公開されたRU2185090C1を参照)。心拍変動(HRV)、すなわち、身体の機能の状態に応じた心臓の活動の絶え間ない補正による心電図(ECG)のRR間隔の持続時間の継続的な変動は、心臓への神経の影響の指標とみなされる。
【0018】
本方法は、身長と体重、脈拍動脈血圧を測定する。心電図が記録される。変動解析が実行される。1分あたりの現在の心拍数と適切な心拍数が決定される。発生したストレスレベルは、条件付きの単位で計算される。発生したストレスレベルの検査結果の定性的推定が実行される。心臓リズムの種類は、現在の心拍数と適切な心拍数との間の差から、正常、徐脈性、または頻脈性不整脈として決定される。RR間隔の変動は、その変動係数から決定される。心臓リズムの9つの考えられる変形のうちの1つが決定される(低、正常、または超可変の徐脈性不整脈、正常不整脈、または頻脈性不整脈)。
【0019】
数学的フーリエ変換を使用して、心拍における波状の変化が通常観察される3つの周波数範囲が識別された。第1の範囲(0.4~0.04Hz、または高周波)は呼吸運動と明確に相関しており、この間、副交感神経活動の増加(吸入)または後者の減少(呼気)がある。第2の範囲(0.04~0.015Hz、または低周波数)の性質は不明なままであり、交感神経または副交感神経の影響に関連付けられている。そして最後に、第3の帯域(0.015Hz未満または超低周波数)も、特定の神経効果とはまったく相関しない代謝プロセスに関連付けられていると考えられる。
【0020】
この方法の欠点は、本方法が、患者の心拍変動(HRV)の統計的スペクトルパラメータを、健康な患者および炭水化物代謝障害のある患者からのHRVの参照統計的スペクトルパラメータと比較することによって、HRVパラメータの逸脱によって患者の炭水化物代謝障害の存在を評価することができないという事実を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】WO2017/160186A1
【特許文献2】WO2017009465(A1)
【特許文献3】RU2185090C1
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】R.M. Baevsky、「ANALYSIS OF HEART RATE VARIABILITY WHEN USING DIFFERENT ELECTROCARDIOGRAPHIC SYSTEMS」
【非特許文献2】Peter D. Welch、「The Use of Fast Fourier Transform for the Estimation of Power Spectra: A Method Based on Time Aver-aging Over Short, Modified Periodograms」
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の目的は、心拍変動(HRV)からの炭水化物代謝障害の非侵襲的検出のためのコンピュータ支援方法であって、患者のHRVの統計的スペクトルパラメータを、健康な患者からのHRVの参照統計的スペクトルパラメータ、および炭水化物代謝障害(CMD)のある患者のHRVの参照統計的スペクトルパラメータと比較することによって決定される心拍変動(HRV)パラメータの逸脱によって、患者の炭水化物代謝障害の存在を評価する方法を提供することである。
【0024】
本発明の第2の目的は、患者の心拍変動(HRV)による炭水化物代謝障害の非侵襲的検出のためのウェアラブル自律型デバイスを提供することであり、これは、患者の統計的スペクトルパラメータHRVを、健康な患者からのHRVの参照統計的スペクトルパラメータおよびICD患者のHRVの参照統計的スペクトルパラメータと比較することによって、患者の心拍変動(HRV)パラメータの逸脱によって炭水化物代謝障害の存在を評価するように構成されている。
【0025】
本発明の第3の目的は、心拍変動(HRV)によって、悪化した炭水化物代謝障害の特徴を有する個体を識別するための母集団のためのコンピュータ化されたスクリーニング方法を提供することである。
【0026】
本発明が目指す技術的結果は、血液検査から炭水化物代謝障害(CMD)を検出するための標準とは対照的に、心臓信号からCMDを検出する可能性を提供することであり、これにより、患者?の「選別」の効果に現れる、母集団の大規模スクリーニングの問題の解決が簡素化され、すなわち、CMD病理の患者からの健康な患者のコンピュータ化された(非侵襲的)分離を提供することである。これにより、血液検査の数の65~70%の減少を保証する。
【0027】
この目的は、心拍変動(HRV)からの炭水化物代謝障害(CMD)の非侵襲的検出のためのコンピュータ支援方法を提供することによって達成され、本方法は、
【0028】
少なくとも1つの心臓信号を取得するステップであり、信号が、患者の少なくとも第1のリードの心電図(ECG)およびフォトプレチスモグラム(PPG)からなる群から選択される、ステップと、
【0029】
受信した少なくとも1つの心臓信号において、ECGにおけるRピークの出現のタイムスタンプのシーケンス、ECGにおけるPピークの出現のタイムスタンプのシーケンス、ECGにおけるTピークの出現のタイムスタンプのシーケンス、PPGにおける収縮期の出現のタイムスタンプのシーケンス、およびPPGにおける拡張期の出現のタイムスタンプのシーケンスからなる群から選択されるタイムスタンプの少なくとも1つのシーケンスを決定するステップと、
【0030】
得られたタイムスタンプの少なくとも1つのシーケンス内の隣接するタイムスタンプ間の時間間隔を決定し、患者の心拍変動(HRV)を特徴付ける少なくとも1つの心間隔図(CIG)を得るステップと、
【0031】
心拍の非線形変動を特徴付ける少なくとも1つの変換された心間隔図(TCIG)を得るために、値の線形傾向を除去することによって、得られた少なくとも1つのCIGの変換を実行するステップと、
【0032】
HRVの統計的スペクトルパラメータの少なくとも1つのセットを得るために、少なくとも1つのTCIGの各々についてHRVの統計的スペクトルパラメータを計算するステップと、
【0033】
得られたHRVの統計的スペクトルパラメータの少なくとも1つのセットのコンピュータ処理を実行するステップであり、その間、得られたHRVの統計的スペクトルパラメータが、健康な患者のHRVの参照統計的スペクトルパラメータ、およびCMD患者のHRVの参照統計的スペクトルパラメータと比較される、ステップと、
【0034】
炭水化物代謝障害(CMD)患者のHRVの統計的スペクトルパラメータの参照値に対する患者のHRVの統計的スペクトルパラメータの近さの程度に従って、患者のCMDの存在に関する判断を行うステップとを含む。
【0035】
好ましくは、本方法は、ゼロ次の最小二乗法(算術平均の減算)によってCIGの値の線形傾向を除去するステップをさらに含む。
【0036】
好ましくは、本方法は、少なくとも一次の最小二乗法によってCIGの値の線形傾向を除去するステップをさらに含む。
【0037】
好ましくは、本方法は、移動平均/中央値エンベロープを表す平滑化されたKIGを減算することによって、CIGの値の線形傾向を除去するステップをさらに含む。
【0038】
好ましくは、本方法は、移動平均/中央値法によってエンベロープを追加で少なくとも1回平滑化するステップをさらに含む。
【0039】
好ましくは、本方法は、フーリエスペクトルの計算、ウェルチ法、Lomb-Scargleピリオドグラムの計算からなる群から選択される方法によって、HRV心拍変動のスペクトルパラメータを計算するステップをさらに含む。
【0040】
好ましくは、本方法は、HRVの統計的スペクトルパラメータの特徴空間において、CMD患者と健康な患者のトレーニングサンプルでトレーニングを受けた、線形回帰、ロジスティック回帰、弁別的方法、ニューラルネットワークの構築、決定木の構築、クラスタリングの実行、および分類モデルの構築からなる群からの少なくとも1つの方法を適用することによって、CMDの存在に関する判断を行うステップをさらに含む。
【0041】
請求される発明の第2の態様によれば、目的は、心拍変動(HRV)からの炭水化物代謝障害(CMD)の非侵襲的検出のためのコンピュータ支援方法を提供することによって達成され、本方法は、
【0042】
患者の心拍変動(HRV)の存在を反映する1つの心間隔図(CIG)を取得するステップと、
【0043】
心拍の非線形変動を特徴付ける少なくとも1つの変換された心間隔図(TCIG)を得るために、値の線形傾向を除去することによって、得られた少なくとも1つのCIGの変換を実行するステップと、
【0044】
HRVの統計的スペクトルパラメータの少なくとも1つのセットを得るために、TCIGのHRVの統計的スペクトルパラメータを計算するステップと、
【0045】
得られたHRVの統計的スペクトルパラメータのコンピュータ処理を実行するステップであり、その間、得られたHRVの統計的スペクトルパラメータが、健康な患者のHRVの参照統計的スペクトルパラメータ、およびCMD患者のHRVの参照統計的スペクトルパラメータと比較される、ステップと、
【0046】
炭水化物代謝障害(CMD)患者のHRVの統計的スペクトルパラメータの参照値に対する患者のHRVの統計的スペクトルパラメータの近さの程度に従って、患者のCMDの存在に関する判断を行うステップとを含む。
【0047】
請求される発明の第3の態様によれば、目的は、心拍変動(HRV)からの炭水化物代謝障害(CMD)の非侵襲的検出のためのウェアラブル自律型デバイスを提供することによって達成され、デバイスは、
【0048】
少なくとも1つの心臓信号を取得するためのモジュールであり、信号が、患者の少なくとも第1のリードの心電図(ECG)およびフォトプレチスモグラム(PPG)からなる群から選択される、モジュール、ならびに
【0049】
コンピューティング手段であり、
【0050】
受信した少なくとも1つの心臓信号において、ECGにおけるRピークの出現のタイムスタンプのシーケンス、ECGにおけるPピークの出現のタイムスタンプのシーケンス、ECGにおけるTピークの出現のタイムスタンプのシーケンス、PPGにおける収縮期の出現のタイムスタンプのシーケンス、およびPPGにおける拡張期の出現のタイムスタンプのシーケンスからなる群から選択されるタイムスタンプの少なくとも1つのシーケンスを決定するためのモジュールと、
【0051】
得られたタイムスタンプの少なくとも1つのシーケンス内の隣接するタイムスタンプ間の時間間隔を決定し、患者の心拍変動(HRV)を特徴付ける少なくとも1つの心間隔図(CIG)を得るためのモジュールと、
【0052】
心拍の非線形変動を特徴付ける少なくとも1つの変換された心間隔図(TCIG)を得るために、値の線形傾向を除去することによって、得られた少なくとも1つのCIGの変換を実行するためのモジュールと、
【0053】
HRVの統計的スペクトルパラメータの少なくとも1つのセットを得るために、少なくとも1つのTCIGの各々についてHRVの統計的スペクトルパラメータを計算するためのモジュールと、
【0054】
得られたHRVの統計的スペクトルパラメータの少なくとも1つのセットのコンピュータ処理を実行するためのモジュールであり、その間、得られたHRVの統計的スペクトルパラメータが、健康な患者のHRVの参照統計的スペクトルパラメータ、およびCMD患者のHRVの参照統計的スペクトルパラメータと比較される、モジュールと、
【0055】
炭水化物代謝障害(CMD)患者のHRVの統計的スペクトルパラメータの参照値に対する患者のHRVの統計的スペクトルパラメータの近さの程度に従って、患者のCMDの存在に関する判断を行うためのモジュールとを備える、コンピューティング手段を備える。
【0056】
好ましくは、少なくとも1つの変換された心間隔図(TCIG)を得るために、得られた少なくとも1つのCIGの変換を実行するためのモジュールは、ゼロ次の最小二乗法によってCIGの値の線形傾向を除去するように構成される。
【0057】
好ましくは、得られた少なくとも1つのCIGの変換を実行するためのモジュールは、少なくとも一次の最小二乗法によってCIGの値の線形傾向を除去するように構成される。
【0058】
好ましくは、得られた少なくとも1つのCIGの変換を実行するためのモジュールは、移動平均/中央値エンベロープを表す平滑化されたKIGを減算することによって、CIGの値の線形傾向を除去するように構成される。
【0059】
好ましくは、得られた少なくとも1つのCIGの変換を実行するためのモジュールは、移動平均/中央値法によってエンベロープを追加で少なくとも1回平滑化するようにさらに構成される。
【0060】
好ましくは、HRVの統計的スペクトルパラメータの少なくとも1つのセットを得るために、少なくとも1つのTCIGの各々についてHRVの統計的スペクトルパラメータを計算するためのモジュールは、フーリエスペクトルの計算、ウェルチ法、Lomb-Scargleピリオドグラムの計算からなる群から選択される方法によって、HRV心拍変動のスペクトルパラメータを計算するように構成される。
【0061】
好ましくは、患者の炭水化物代謝障害(CMD)の存在に関する判断を行うためのモジュールは、HRVの統計的スペクトルパラメータの特徴空間において、CMD患者と健康な患者のトレーニングサンプルでトレーニングを受けた、線形回帰、ロジスティック回帰、弁別的方法、ニューラルネットワークの構築、決定木の構築、クラスタリングの実行、および分類モデルの構築からなる群からの少なくとも1つの方法を適用することによって、炭水化物代謝障害の存在に関する判断を行うように構成される。
【0062】
請求される発明の第4の態様によれば、目的は、心拍変動(HRV)からの炭水化物代謝障害(CMD)の非侵襲的検出のためのウェアラブル自律型デバイスを提供することによって達成され、デバイスは、
【0063】
心拍間の時間間隔を測定し、患者の心拍変動(HRV)を反映する心間隔図(CIG)を提供するように構成されるセンサ、ならびに
【0064】
コンピューティング手段であり、
【0065】
心拍の非線形変動を特徴付ける少なくとも1つの変換された心間隔図(TCIG)を得るために、値の線形傾向を除去することによって、得られた少なくとも1つのCIGの変換を実行するためのモジュールと、
【0066】
HRVの統計的スペクトルパラメータの少なくとも1つのセットを得るために、少なくとも1つのTCIGの各々についてHRVの統計的スペクトルパラメータを計算するためのモジュールと、
【0067】
得られたHRVの統計的スペクトルパラメータの少なくとも1つのセットのコンピュータ処理を実行するためのモジュールであり、その間、得られたHRVの統計的スペクトルパラメータが、健康な患者のHRVの参照統計的スペクトルパラメータ、およびCMD患者のHRVの参照統計的スペクトルパラメータと比較される、モジュールと、
【0068】
炭水化物代謝障害(CMD)患者のHRVの統計的スペクトルパラメータの参照値に対する患者のHRVの統計的スペクトルパラメータの近さの程度に従って、患者のCMDの存在に関する判断を行うためのモジュールとを備える、コンピューティング手段を備える。
【0069】
請求される発明の第5の態様によれば、目的は、患者の心拍変動(HRV)に基づいて炭水化物代謝障害の兆候がある個人を識別するために母集団をスクリーニングするためのコンピュータ化された方法を提供することによって達成され、本方法は、
【0070】
スクリーニングの感度と特異性の目標を設定するステップと、
【0071】
スクリーニングの準備を実行するステップであり、このために検査対象の患者の心電図(ECG)とフォトプレチスモグラム(PPG)の最小必要数、およびグループの観察された患者ごとのMCR記号を有するECGとPPGのしきい値が、これを超えると、グループの患者のCMDの存在が認識される、ステップと、
【0072】
炭水化物代謝障害の特徴を有する人を識別するために母集団のスクリーニングを実行するステップであり、そのために、段落1、8のいずれか1つによる方法が実施される、ステップとを含む。
【0073】
医療システムを開発するための許容可能なコストで様々な病気の患者の医療の質を改善することは、非常に緊急の課題である。最も重要な方向性は、患者の所在地に関わらない、患者の診断、スクリーニング、監視、およびフォローアップのための遠隔医療の様々な方法の開発である。これらの病気の1つは糖尿病である。
【0074】
本方法およびデバイスは、炭水化物代謝障害(CMD)の患者を識別するために、母集団の2段階のスクリーニングを構築するために効果的に使用することができる。スクリーニングの第1の段階において、医療施設の外で、本方法およびデバイスを使用することによって、CMDの疑いのある患者が識別される。次いで、第1の段階において識別された患者は、さらなる検査のために医療施設に送られる。第2の段階において、第1の段階において識別された患者について、内分泌学の基準に従ってCMDの有無について医療施設において最終判断が行われる。
【0075】
以下で、本発明は、添付の図面を参照して、その好ましい実施形態の説明によって説明される。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【
図1】本発明による、心拍変動(HRV)からの炭水化物代謝障害(CMD)の非侵襲的検出のための方法のステップのシーケンスを示し、心電図(ECG)である心臓信号が取得される図である。
【
図2A】患者から取得された心電図であり、ECGにおけるRピークの出現のタイムスタンプのシーケンスが示されている図である。
【
図2B】患者から撮影された心電図であり、ECGにおけるPピークの出現のタイムスタンプのシーケンスが示されている図である。
【
図2C】患者から撮影された心電図であり、ECGにおけるTピークの出現のタイムスタンプのシーケンスが示されている図である。
【
図3】患者の心拍変動(HRV)を特徴付ける心間隔図(CIG)を示す図である。
【
図4】患者の心拍変動(HRV)を特徴付ける変換された心間隔図(PCIG)を示す図である。
【
図5】本発明による、心拍変動(HRV)からの炭水化物代謝障害(CMD)の非侵襲的検出のための方法のステップのシーケンスを示し、フォトプレチスモグラム(PPG)である心臓信号が取得される図である。
【
図6A】収縮期の出現のタイムスタンプのシーケンスを示す、患者から取得されたフォトプレチスモグラムを示す図である。
【
図6B】拡張期の出現のタイムスタンプのシーケンスを示す、患者から撮影されたフォトプレチスモグラムを示す図である。
【
図7】本発明による、心拍変動(HRV)からの炭水化物代謝障害(CMD)の非侵襲的検出のための方法のステップのシーケンスを示し、心臓信号が、患者の心電図(ECG)およびフォトプレチスモグラム(PPG)である図である。
【
図8】本発明による、心拍変動(HRV)からの炭水化物代謝障害(CMD)の非侵襲的検出のための方法のステップのシーケンスを示し、心間隔図(CIG)である心臓信号が取得される図である。
【
図9】第1の実施形態である、患者の心拍変動(HRV)による炭水化物代謝障害(CMD)の非侵襲的検出のための自律型デバイスのブロック図である。
【
図10】第2の実施形態である、患者の心拍変動(HRV)による炭水化物代謝障害(CMD)の非侵襲的検出のための自律型デバイスのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0077】
健康な人では、ある心拍の周期の始まりから別の心拍の始まりまでの時間間隔は同じではなく、絶えず変化している。この現象は心拍変動(HRV)と呼ばれる。さらに、心臓サイクル間の間隔の不変性は特定の平均値の範囲内であり、これは身体の特定の考慮された機能状態に最適である。
【0078】
現在、HRVの定義は、心拍の自律(栄養)調節を定量的に評価するための最も有益な非侵襲的方法として認識されている。HRVを分析することによって、身体の機能状態を評価するだけでなく、そのダイナミクスを監視することもできる。
【0079】
本発明によれば、患者の心拍変動(HRV)による炭水化物代謝障害の、障害の非侵襲的検出のためのコンピュータ化された方法は、以下のように実行される。
【0080】
患者の少なくとも第1のリードの心電図(ECG)およびフォトプレチスモグラム(PPG)からなる群から選択される少なくとも1つの心臓信号が取得される。
【0081】
心電図およびフォトプレチスモグラムは、個々のECG、PPG、またはCIGを使用して取得される。
【0082】
本発明の第1の実施形態によれば、少なくとも1つの心臓信号が取得され(S1)(
図1)、すなわち、少なくとも第1のリードの心電図(ECG)である。
【0083】
心電図は観察された患者のデータベースに保存され(S2)、患者の心電図が蓄積される。
【0084】
得られた少なくとも1つの心電図において、タイムスタンプの少なくとも1つのシーケンスが決定され(S3)、前記シーケンスは、タイムスタンプA1、A2、A3、Anのシーケンス、ECGにおけるRピークの出現(
図2a)、ECGにおけるPピークの出現のタイムスタンプB1、B2、B3、Bnのシーケンス(
図2b)、ECGにおけるTピークの出現のタイムスタンプC1、C2、C3、Cnのシーケンス(
図2c)からなる群から選択される。
【0085】
得られたタイムスタンプの少なくとも1つのシーケンスにおいて、隣接するタイムスタンプA1、A2、A3、AnまたはB1、B2、B3、BnまたはC1、C2、C3、Cn S4間の時間間隔が決定され(S4)(
図1)、患者の心拍変動(HRV)を特徴付ける少なくとも1つの心間隔図(CIG)(
図3)が得られる。
【0086】
得られた少なくとも1つのCIGの変換は、心拍の非線形変動を特徴付ける少なくとも1つの変換された心間隔図(PCIG)(
図4)を得るために、値の線形傾向を除去すること(S5)(
図1)によって実行される。値の線形傾向は、
図4に太線で示されている。
【0087】
CIGの値の線形傾向は、ゼロ次の最小二乗法(算術平均の減算)によって除去されるか(たとえば、R.M. Baevskyの「ANALYSIS OF HEART RATE VARIABILITY WHEN USING DIFFERENT ELECTROCARDIOGRAPHIC SYSTEMS」を参照されたい、または、CIGの値の線形傾向は、少なくとも一次の最小二乗法によって除去される。平滑化されたKIGを減算することによって、CIGの値の線形傾向を除去することも可能であり、平滑化されたKIGは、移動平均/中央値エンベロープを表す。次いで、エンベロープは、移動平均/中央値法によって、追加で少なくとも1回平滑化されている。前記平滑化は当技術分野においてよく知られている。
【0088】
統計的スペクトルHRVパラメータの少なくとも1つのPKIGの各々について、統計的スペクトルHRVパラメータの少なくとも1つのセットを得る必要がある(
図4)。
【0089】
HRVの統計的スペクトルパラメータは、HRVの統計的スペクトルパラメータの少なくとも1つのセット(
図4)を得るために、少なくとも1つのTCIGの各々について計算される(S6)(
図1)。
【0090】
HRV心拍変動のスペクトルパラメータは、フーリエスペクトルの計算(たとえば、上記のR.M. Baevskyを参照)、ウェルチの方法(Peter D. Welchの「The Use of Fast Fourier Transform for the Estimation of Power Spectra: A Method Based on Time Aver-aging Over Short, Modified Periodograms」を参照)、Lomb-Scargleピリオドグラムの計算(たとえば、R.M. Baevskyを参照)からなる群から選択される方法によって計算される。
【0091】
得られたHRVの統計的スペクトルパラメータのコンピュータ処理(S7)が実行され、その間、得られたHRVの統計的スペクトルパラメータが、健康な患者のHRVの参照統計的スペクトルパラメータ、およびCMD患者のHRVの参照統計的スペクトルパラメータと比較される。
【0092】
HRVの統計的スペクトルパラメータの空間の、CMD有りおよびCMD無しの少なくとも2つの参照領域への少なくとも区分的線形分割が実行される。
【0093】
患者におけるCMDの特徴の有無に関する判断は、患者のHRVの統計的スペクトルパラメータのベクトルがCMD/非CMDの参照領域に分類されるという事実に基づいて行われる。
【0094】
健康な患者からのHRVの参照統計的スペクトルパラメータと、CMD患者のHRVの参照統計的スペクトルパラメータは、事前にコンピュータデータベースに入力される。
【0095】
そして、CMD患者のHRVの統計的スペクトルパラメータの参照値に対する患者のHRVの統計的スペクトルパラメータの近さの程度に従って、患者の炭水化物代謝障害の存在について判断が行われる。
【0096】
上記の判断は、HRVの統計的スペクトルパラメータの特徴空間において、CMD患者と健康な患者のトレーニングサンプルでトレーニングを受けた、線形回帰、ロジスティック回帰、弁別的方法、ニューラルネットワークの構築、決定木の構築、クラスタリングの実行、および分類モデルの構築からなる群からの少なくとも1つの方法を適用することによって行われる。
【0097】
本発明の第2の実施形態によれば、患者の心拍変動(HRV)による炭水化物代謝障害の非侵襲的検出のためのコンピュータ化された方法を実施するために、少なくとも1つの心臓信号が取得され(S8)(
図5)、それは患者のフォトプレチスモグラム(PPG)である。
【0098】
フォトプレチスモグラムは観察された患者のデータベースに保存され(S9)、フォトプレチスモグラムが蓄積される。
【0099】
受信した少なくとも1つの信号において、PPGにおける収縮期の出現のタイムスタンプD1、D2、D3、Dn(
図6a)の少なくとも1つのシーケンスと、PPGにおける拡張期の出現のタイムスタンプE1、E2、E3、Enのシーケンスが決定され(S10)(
図6b)、ここで、Y軸は、センサデータ(IR LEDバックライトからの反射光のパーセンテージ)による信号振幅PPGである。
【0100】
得られた少なくとも1つのタイムスタンプのシーケンスにおいて、隣接するタイムスタンプ間の時間間隔が決定され、患者の心拍変動(HRV)を特徴付ける少なくとも1つの心間隔図(CIG)が得られる(S11)(
図3)。
【0101】
得られた少なくとも1つのCIGの変換は、心拍の非線形変動を特徴付ける少なくとも1つの変換された心間隔図(TCIG)(
図4)を得るために、値の線形傾向(
図5)を除去する(S12)ことによって実行される。
【0102】
CIGの値の線形傾向は、ゼロ次の最小二乗法(算術平均の減算)によって除去されるか(たとえば、R.M. Baevskyの「ANALYSIS OF HEART RATE VARIABILITY WHEN USING DIFFERENT ELECTROCARDIOGRAPHIC SYSTEMS」を参照されたい、または、CIGの値の線形傾向は、少なくとも一次の最小二乗法によって除去される。平滑化されたKIGを減算することによって、CIGの値の線形傾向を除去することも可能であり、平滑化されたKIGは、移動平均/中央値エンベロープを表す。次いで、エンベロープは、移動平均/中央値法によって、追加で少なくとも1回平滑化されている。
【0103】
少なくとも1つのPKIGの各々について、統計的スペクトルHRVパラメータの少なくとも1つのセットを得るために、統計的スペクトルHRVパラメータが計算される(S13)(
図5)。
【0104】
HRV心拍変動のスペクトルパラメータは、フーリエスペクトルの計算、ウェルチ法、Lomb-Scargleピリオドグラムの計算からなる群から選択される方法によって計算される。
【0105】
得られたHRVの統計的スペクトルパラメータの少なくとも1つのセットのコンピュータ処理(S14)が実行され、そこで、得られたHRVの統計的スペクトルパラメータが、健康な患者からのHRVの参照統計的スペクトルパラメータおよびCMD患者のHRVの参照統計的スペクトルパラメータと比較される。健康な患者からのHRVの特定の参照統計的スペクトルパラメータと、CMD患者のHRVの参照統計的スペクトルパラメータは、事前にコンピュータデータベースに入力される。
【0106】
炭水化物代謝障害(CMD)患者のHRVの統計的スペクトルパラメータの参照値に対する患者のHRVの統計的スペクトルパラメータの近さの程度に従って、患者のCMDの存在に関する判断が行われる。
【0107】
HRVの統計的スペクトルパラメータの特徴空間において、CMD患者と健康な患者のトレーニングサンプルでトレーニングを受けた、線形回帰、ロジスティック回帰、弁別的方法、ニューラルネットワークの構築、決定木の構築、クラスタリングの実行、および分類モデルの構築からなる群からの少なくとも1つの方法を適用することによって、ICEの存在に関する判断が行われる。
【0108】
本発明の第3の実施形態(
図7)によれば、患者の心拍変動(HRV)による炭水化物代謝障害の非侵襲的検出のためのコンピュータ化された方法を実施するために、心臓信号が取得され(S15)、これは、患者の少なくとも第1のリードの心電図(ECG)およびフォトプレチスモグラム(PPG)である。
【0109】
心電図は観察された患者のデータベースに保存され(S16)、心電図が蓄積される。
【0110】
フォトプレチスモグラムは観察された患者のデータベースに保存され(S17)、フォトプレチスモグラムが蓄積される。
【0111】
本方法の第1の実施形態と同様に、タイムスタンプの少なくとも1つのシーケンス(
図2)は、受信された心電図信号においてにおいて決定され(S18)、シーケンスは、ECGにおけるRピークの出現のタイムスタンプのシーケンスと、ECGにおけるPピークの出現のタイムスタンプのシーケンスと、ECGにおけるTピークの出現のタイムスタンプのシーケンスとからなる群から選択され(
図3)、患者の心拍変動(HRV)を特徴付ける、少なくとも1つの心間隔図(CIG)(
図3)を獲得する。
【0112】
本方法の第2の実施形態と同様に、得られたフォトプレチスモグラム信号において、PPGにおける収縮期の出現のタイムスタンプのシーケンスおよびPPGにおける拡張期の出現のタイムスタンプのシーケンスが決定される(S19)。
【0113】
得られたタイムスタンプのシーケンスにおいて、隣接するタイムスタンプ間の時間間隔が決定され(S20)、患者の心拍変動(HRV)を特徴付ける心間隔図(CIG)が得られる。
【0114】
得られたものから、たとえば、CIGを計算するための5つのオプションから、少なくとも1つのオプションが選択される。1つのシーケンスまたはそれらの組合せの選択は、得られた変形のうちの1つの感度および特異性の実験的評価に基づいて実行される。
【0115】
得られた少なくとも1つのCIGの変換は、心拍の非線形変動を特徴付ける少なくとも1つの変換された心間隔図(PCIG)を得るために、値の線形傾向を除去すること(S21)によって実行される(
図3)。
【0116】
上記と同様に、CIGの線形傾向は、ゼロ次の最小二乗法(算術平均の減算)によって除去される。あるいは、RIGの線形傾向は、少なくとも一次の最小二乗法によって除去される。平滑化されたKIGを減算することによって、線形的なRIGの傾向を除去することも可能であり、平滑化されたKIGは、移動平均/中央値エンベロープを表す。次いで、移動平均/中央値法によって、エンベロープが少なくとも1回さらに平滑化される。
【0117】
統計的スペクトルHRVパラメータのセットを得るために、PKIGごとに統計的スペクトルHRVパラメータが計算される(S22)。HRV心拍変動のスペクトルパラメータは、フーリエスペクトルの計算、ウェルチ法、Lomb-Scargleピリオドグラムの計算からなる群から選択される方法によって計算される。
【0118】
第2の実施形態と同様に、得られたHRVの統計的スペクトルパラメータの少なくとも1つのセットのコンピュータ処理を実行するステップであり、その間、得られたHRVの統計的スペクトルパラメータが、健康な患者のHRVの参照統計的スペクトルパラメータ、およびCMD患者のHRVの参照統計的スペクトルパラメータと比較される。健康な患者からのHRVの前記特定の参照統計的スペクトルパラメータと、CMD患者のHRVの参照統計的スペクトルパラメータは、事前にコンピュータデータベースに入力される。
【0119】
炭水化物代謝障害(CMD)患者のHRVの統計的スペクトルパラメータの参照値に対する患者のHRVの統計的スペクトルパラメータの近さの程度に従って、患者のCMDの存在に関する判断が行われる(S23)。
【0120】
HRVの統計的スペクトルパラメータの特徴空間において、CMD患者と健康な患者のトレーニングサンプルでトレーニングを受けた、線形回帰、ロジスティック回帰、弁別的方法、ニューラルネットワークの構築、決定木の構築、クラスタリングの実行、および分類モデルの構築からなる群からの少なくとも1つの方法を適用することによって、CMDの存在についての上記の判断が行われる。
【0121】
各実装形態において、判断は、証明された感度と特異性について検査者によって行われる。
【0122】
本発明の第4の実施形態によれば(
図8)、患者の心拍変動(HRV)による炭水化物代謝障害の非侵襲的検出の方法を実施するために、患者の心拍変動(HRV)の存在を反映する1つの心間隔図(CIG)が取得される(S24)(
図3)。除去は、ローカルデバイスを使用するか、ECGまたはPPGからクラウドで実行される。
【0123】
CIGの記憶および蓄積のステップが実行される(S25)。
【0124】
上記の方法と同様に、得られたCIGの変換(S26)は、心拍の非線形変動を特徴付ける変換された心間隔図(PCIG)(
図4)を得るために、値の線形傾向を除去することによって実行される。
【0125】
統計的スペクトルHRVパラメータのセットを得るために、PKIGについて統計的スペクトルHRVパラメータが計算される(S27)。
【0126】
さらに、得られたHRVの統計的スペクトルパラメータの少なくとも1つのセットのコンピュータ処理が実行され(S28)、その間、得られたHRVの統計的スペクトルパラメータが、健康な患者のHRVの参照統計的スペクトルパラメータ、およびCMD患者のHRVの参照統計的スペクトルパラメータと比較される。健康な患者からのHRVの前記特定の参照統計的スペクトルパラメータと、CMD患者のHRVの参照統計的スペクトルパラメータは、事前にコンピュータデータベースに入力される。
【0127】
炭水化物代謝障害(CMD)患者のHRVの統計的スペクトルパラメータの参照値に対する患者のHRVの統計的スペクトルパラメータの近さの程度に従って、患者のCMDの存在に関する判断が行われる。
【0128】
上記の方法と同様に、CIGの線形傾向は、最小二乗法ゼロ次または一次の最小二乗法によって除去される。あるいは、線形傾向RAGは、平滑化されたKIGを減算することによって除去され、平滑化されたKIGは、移動平均/中央値エンベロープを表す。移動平均/中央値法によって、エンベロープが少なくとも1回さらに平滑化される。
【0129】
HRV心拍変動のスペクトルパラメータは、フーリエスペクトルの計算、ウェルチ法、Lomb-Scargleピリオドグラムの計算からなる群から選択される方法によって計算される。
【0130】
HRVの統計的スペクトルパラメータの特徴空間において、CMD患者と健康な患者のトレーニングサンプルでトレーニングを受けた、線形回帰、ロジスティック回帰、弁別的方法、ニューラルネットワークの構築、決定木の構築、クラスタリングの実行、および分類モデルの構築からなる群からの少なくとも1つの方法を適用することによって、CMDの存在に関する判断が行われる。
【0131】
本発明によれば、患者の心拍変動(HRV)による炭水化物代謝障害の非侵襲的検出のためのウェアラブル自律型デバイスも提案されている(
図9)。
【0132】
デバイスは、少なくとも1つの心臓信号を取得するためのモジュール29であり、信号が、患者の少なくとも第1のリードの心電図(ECG)およびフォトプレチスモグラム(PPG)からなる群から選択される、モジュール29と、コンピューティング手段30とを備える。
【0133】
コンピューティング手段30は、直列接続された、
【0134】
受信した少なくとも1つの心臓信号において、ECGにおけるRピークの出現のタイムスタンプのシーケンス、ECGにおけるPピークの出現のタイムスタンプのシーケンス、ECGにおけるTピークの出現のタイムスタンプのシーケンス、PPGにおける収縮期の出現のタイムスタンプのシーケンス、およびPPGにおける拡張期の出現のタイムスタンプのシーケンスからなる群から選択されるタイムスタンプの少なくとも1つのシーケンスを決定するためのモジュール31と、
【0135】
得られたタイムスタンプの少なくとも1つのシーケンス内の隣接するタイムスタンプ間の時間間隔を決定し、患者の心拍変動(HRV)を特徴付ける少なくとも1つの心間隔図(CIG)を得るためのモジュール32と、
【0136】
心拍の非線形変動を特徴付ける少なくとも1つの変換された心間隔図(TCIG)を得るために、値の線形傾向を除去することによって、得られた少なくとも1つのCIGの変換を実行するためのモジュール33と、
【0137】
HRVの統計的スペクトルパラメータの少なくとも1つのセットを得るために、少なくとも1つのTCIGの各々についてHRVの統計的スペクトルパラメータを計算するためのモジュール34と、
【0138】
得られたHRVの統計的スペクトルパラメータの少なくとも1つのセットのコンピュータ処理を実行するためのモジュール35であり、その間、得られたHRVの統計的スペクトルパラメータが、健康な患者のHRVの参照統計的スペクトルパラメータ、およびCMD患者のHRVの参照統計的スペクトルパラメータと比較される、モジュール35とを備え、
【0139】
前記モジュール35はまた、炭水化物代謝障害(CMD)患者のHRVの統計的スペクトルパラメータの参照値に対する患者のHRVの統計的スペクトルパラメータの近さの程度に従って、患者のCMDの存在に関する判断を行うように構成される。
【0140】
少なくとも1つの変換された心間隔図(TCIG)を得るために、得られた少なくとも1つのCIGの変換を実行するためのモジュール33は、ゼロ次の最小二乗法によってCIGの値の線形傾向を除去するように構成される。
【0141】
得られた少なくとも1つのCIGの変換を実行するためのモジュール33はまた、少なくとも一次の最小二乗法によってCIGの値の線形傾向を除去するように構成される。
【0142】
得られた少なくとも1つのCIGの変換を実行するためのモジュール33は、移動平均/中央値エンベロープを表す平滑化されたKIGを減算することによって、CIGの値の線形傾向を除去するように構成される。得られた少なくとも1つのCIGの変換を実行するためのモジュール33は、移動平均/中央値法によってエンベロープを追加で少なくとも1回平滑化するようにさらに構成される。
【0143】
HRVの統計的スペクトルパラメータの少なくとも1つのセットを得るために、少なくとも1つのTCIGの各々についてHRVの統計的スペクトルパラメータを計算するためのモジュール34は、フーリエスペクトルの計算、ウェルチ法、Lomb-Scargleピリオドグラムの計算からなる群から選択される方法によって、HRV心拍変動のスペクトルパラメータを計算するように構成される。
【0144】
患者の炭水化物代謝障害(CMD)の存在に関する判断を行うためのモジュール35は、HRVの統計的スペクトルパラメータの特徴空間において、CMD患者と健康な患者のトレーニングサンプルでトレーニングを受けた、線形回帰、ロジスティック回帰、弁別的方法、ニューラルネットワークの構築、決定木の構築、クラスタリングの実行、および分類モデルの構築からなる群からの少なくとも1つの方法を適用することによって、炭水化物代謝障害の存在に関する判断を行うように構成される。
【0145】
第2の実施形態によれば、心拍変動(HRV)からの炭水化物代謝障害(CMD)の非侵襲的検出のためのウェアラブル自律型デバイスは、心拍間の時間間隔を測定し、患者の心拍変動(HRV)を反映する心間隔図(CIG)を提供するように構成されるセンサ36を備える。心拍モニタは、特定のセンサ36として使用することができる。
【0146】
デバイスはまた、直列接続された、
【0147】
心拍の非線形変動を特徴付ける少なくとも1つの変換された心間隔図(TCIG)を得るために、値の線形傾向を除去することによって、得られた少なくとも1つのCIGの変換を実行するためのモジュール38と、
【0148】
HRVの統計的スペクトルパラメータの少なくとも1つのセットを得るために、少なくとも1つのTCIGの各々についてHRVの統計的スペクトルパラメータを計算するためのモジュール39と、
【0149】
得られたHRVの統計的スペクトルパラメータの少なくとも1つのセットのコンピュータ処理を実行するためのモジュール40であり、その間、得られたHRVの統計的スペクトルパラメータが、健康な患者のHRVの参照統計的スペクトルパラメータ、およびCMD患者のHRVの参照統計的スペクトルパラメータと比較される、モジュール40とを備えるコンピューティング手段37を備え、
【0150】
前記モジュール40はまた、炭水化物代謝障害(CMD)患者のHRVの統計的スペクトルパラメータの参照値に対する患者のHRVの統計的スペクトルパラメータの近さの程度に従って、患者のCMDの存在に関する判断を行うように構成される。
【0151】
患者の心拍変動(HRV)に基づいて炭水化物代謝障害の特徴を有する個人を識別するために母集団をスクリーニングするためのコンピュータ化された方法は、以下の方法で実行される。
【0152】
スクリーニングの感度と特異性の目標が設定される。
【0153】
スクリーニングの準備が実行され、このために検査対象の患者の心電図(ECG)とフォトプレチスモグラム(PPG)の最小必要数、およびグループの観察された患者ごとのMCR記号を有するECGとPPGのしきい値が、これを超えると、グループの患者のCMDの存在が認識される。
【0154】
炭水化物代謝障害の特徴を有する人を識別するために母集団のスクリーニングが実行され、そのために、上記の方法のいずれか1つによる方法が実施される。
【0155】
スクリーニングの第1の段階において、本方法を使用して、炭水化物代謝障害の疑いのある患者が識別され、さらなる検査のために医療機関に送られる。
【0156】
第2の段階において、国家勧告に基づく医療機関が、スクリーニングの第1の段階を受けた患者の炭水化物代謝障害の有無について最終判断を行う。
【産業上の利用可能性】
【0157】
炭水化物代謝障害(HRV)の患者を識別するために母集団の大規模な2段階のスクリーニングを構築するために、患者の心拍変動(HRV)によって炭水化物代謝障害を検出するためのコンピュータ化された方法およびウェアラブル自律型デバイスを使用することができる。スクリーニングの第1の段階において、本方法を使用して、炭水化物代謝障害の疑いのある患者が識別され、前記患者がさらなる検査のために医療機関に送られる。第2の段階において、医療専門家(国家勧告に基づく医療機関の専門家)が、スクリーニングの第1の段階を受けた患者の炭水化物代謝障害の有無について最終判断を行う。
【0158】
[実施例1]
(ECGの取得)
患者A、63歳。診断:25年間の第2型糖尿病。関連付けられる慢性疾患無し。検査結果による全身状態は良好。
【0159】
炭水化物代謝障害の非侵襲的検出のために、ウェアラブル自律型デバイスが患者の手首に取り付けられた。
【0160】
少なくとも第1のECGリードの心臓信号(ECG)が、週に5~20回取得された。
【0161】
データベース内の患者識別子でマークされた少なくとも第1のリードの複数の心電図(ECG)のシーケンスの蓄積が実行された。
【0162】
タイムスタンプの少なくとも1つのシーケンスが受信信号において決定され、ECGにおけるRピークの出現のタイムスタンプのシーケンスと、ECGにおけるPピークの出現のタイムスタンプのシーケンスと、ECGにおけるTピークの出現のタイムスタンプのシーケンスとからなる群から選択される。
【0163】
得られたタイムスタンプのシーケンスにおいて、隣接するタイムスタンプ間の時間間隔が決定され、患者の心拍変動(HRV)を特徴付ける少なくとも1つの心間隔図(CIG)が得られた。
【0164】
得られた少なくとも1つのCIGの変換が、心拍における非線形変動を特徴付ける少なくとも1つの変換された心間隔図(TCIG)を得るために、値の線形傾向を除去することによって実行された。そして、HRVの統計的スペクトルパラメータの少なくとも1つのセットを得るために、HRVのTCIG統計的スペクトルパラメータの各々について計算が実行された。
【0165】
次いで、得られたHRVの統計的スペクトルパラメータのセットのコンピュータ処理が実行され、その間、得られたHRVの統計的スペクトルパラメータが、健康な患者からのHRVの参照統計的スペクトルパラメータおよびCMD患者のHRVの参照統計的スペクトルパラメータと比較された。
【0166】
その結果、すべてのECGは、CMD特徴を含むクラスとCMD特徴を含まないクラスの2つのクラスに細分された。
【0167】
そして、CMD患者のHRVの統計的スペクトルパラメータの参照値に対する患者のHRVの統計的スペクトルパラメータの近さの程度に従って、患者の炭水化物代謝障害の存在に関する判断が行われた。
【0168】
[実施例2]
(PPGの取得)
患者B、63歳。診断:糖尿病は診断されていない。関連付けられる慢性疾患無し。検査結果による全身状態は良好。
【0169】
炭水化物代謝障害の非侵襲的検出のために、ウェアラブル自律型デバイスが患者の手首に取り付けられた。
【0170】
患者のフォトプレチスモグラム(PPG)である少なくとも1つの心臓信号が取得され、PPGにおける収縮期の出現のタイムスタンプのシーケンスとPPGにおける拡張期の出現のタイムスタンプのシーケンスからなる群から選択された受信された少なくとも1つの信号において少なくとも1つのタイムスタンプのシーケンスが決定された。
【0171】
得られたタイムスタンプの少なくとも1つのシーケンスにおいて、隣接するタイムスタンプ間の時間間隔が決定され、患者の心拍変動(HRV)を特徴付ける心間隔図(CIG)が得られた。得られたCIGは、非線形心拍変動を特徴付ける変換された心間隔図(TCIG)を得るために、値の線形傾向を除去することによって変換された。
【0172】
HRVの統計的スペクトルパラメータのセットを得るために、HRVの統計的スペクトルパラメータのTCIGの計算が行われた。得られたHRVの統計的スペクトルパラメータのセットのコンピュータ処理が実行され、得られたHRVの統計的スペクトルパラメータが、健康な患者からのHRVの参照統計的スペクトルパラメータおよびCMD患者のHRVの参照統計的スペクトルパラメータと比較された。
【0173】
ICR患者のHRVの統計的スペクトルパラメータの参照値に対する患者のHRVの統計的スペクトルパラメータの近さの程度に従って、患者の炭水化物代謝障害の存在に関する判断が行われた。
【0174】
[実施例3]
(CIGの取得)
患者B、50歳。診断:糖尿病は診断されていない。関連付けられる慢性疾患無し。検査結果による全身状態は良好。
【0175】
炭水化物代謝障害の非侵襲的検出のために、ウェアラブル自律型デバイスが患者の手首に取り付けられた。
【0176】
心拍モニタを使用して患者の心拍変動(HRV)の存在を反映する、1つの心間隔図(CIG)が取得された。得られたCIGは、非線形心拍変動を特徴付ける変換された心間隔図(TCIG)を得るために、値の線形傾向を除去することによって変換された。HRVの統計的スペクトルパラメータのセットを得るために、HRVの統計的スペクトルパラメータのTCIGの計算が行われた。
【0177】
次いで、得られたHRVの統計的スペクトルパラメータのセットが処理され、得られたHRVの統計的スペクトルパラメータが、健康な患者からのHRVの参照統計的スペクトルパラメータおよびCMD患者のHRVの参照統計的スペクトルパラメータと比較された。
【0178】
CMD患者のHRVの統計的スペクトルパラメータの参照値に対する患者のHRVの統計的スペクトルパラメータの近さの程度に従って、患者の炭水化物代謝障害の存在に関する判断が行われた。
【符号の説明】
【0179】
29 モジュール
30 コンピューティング手段
31 モジュール
32 モジュール
33 モジュール
34 モジュール
35 モジュール
36 センサ
37 コンピューティング手段
38 モジュール
39 モジュール
40 モジュール
【外国語明細書】