(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022041970
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】年金管理システム、それに用いられる権利管理システムおよび受託者システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/26 20120101AFI20220304BHJP
【FI】
G06Q50/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021139856
(22)【出願日】2021-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2020145668
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】300010899
【氏名又は名称】NGB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 利昌
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC35
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本来管理対象とすべき年次以前の年次についても管理対象とすることで、より信頼性の年金管理システム、それに用いられる権利管理システム及び受託者システムを提供する。
【解決手段】年金管理システムにおいて、権利者システムが更新された案件の識別情報と更新された年金特定情報を受託者システムに通知するステップ、受託者システムが権利者システムにおける年金特定情報の更新によって案件の年金管理が可能となると判定したときに、案件の管理を開始する開始年次を特定し通知するステップ、受託者システムが開始年次及びそれ以前の年次である過去年次の年金支払い状況の管理を開始するステップ及び権利者システムが過去年次の年金支払い状況に関する情報を受託者システムに通知するステップを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業財産権の維持に必要な年金の支払いを管理する年金管理システムであって、
産業財産権に関する情報を取得して、少なくとも出願から権利化に至るまでの手続きを管理可能な権利管理システムと、
前記権利管理システムとネットワークを介して接続され、前記産業財産権の維持に必要な年金の支払いを管理する受託者システムと、を有し、
前記権利管理システムは、権利の種別、国名、出願日、出願番号、登録日、登録番号、年金支払い状況を含む年金特定情報を収集し、管理データベースに記録可能であり、
前記権利管理システムは、前記管理データベースにおける情報が更新されたときに、更新された案件の識別情報と更新された前記情報を前記受託者システムに通知し、
前記受託者システムは、前記権利管理システムにおける前記情報の更新によって前記案件の年金管理が可能となると判定したときに、前記受託者システムは、国、法域ごとの年金の支払い年次および支払い期限の起算日が記録された法律データベースと、前記案件の前記情報とに基づき、前記案件の管理を開始する開始年次を特定し、
前記受託者システムは、前記開始年次を前記権利管理システムに通知し、
前記受託者システムは、前記開始年次およびそれ以前の年次である過去年次の年金支払い状況の管理を開始し、
前記権利管理システムは、前記過去年次の年金支払い状況に関する情報を前記受託者システムに通知する、年金管理システム。
【請求項2】
前記権利管理システムは、更新された前記情報が年金特定情報であると判定したときに、更新された案件の前記識別情報と更新された前記年金特定情報を前記受託者システムに通知する、請求項1に記載の年金管理システム。
【請求項3】
前記受託者システムは、更新された前記情報が年金特定情報であると判定したときに、前記年金特定情報の更新によって前記案件の年金管理が可能となるかを判定する、請求項1に記載の年金管理システム。
【請求項4】
前記受託者システムは、前記権利管理システムから前記過去年次の年金支払い状況に関する情報を取得し、前記過去年次に支払いが確認できない未確認年次がある場合に、前記未確認年次を通知する、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の年金管理システム。
【請求項5】
前記受託者システムは、現時点から猶予期間後に支払期限日を迎える年次を前記開始年次として特定し、
前記受託者システムは、前記開始年次と前記法律データベースに基づき、前記開始年次の直前の年次である直前年次の支払い期限を算出し、
前記受託者システムは、前記直前年次の支払い期限が現時点より前または後の所定期間内にあり、かつ、前記権利管理システムから取得した前記過去年次の年金支払い状況に関する情報に前記直前年次の支払い完了を示す情報が含まれていないと判定した場合に、前記直前年次の支払い状況に関する情報の入力を要求する、または、前記直前年次の支払いを希望するか否かを前記権利管理システムに問い合わせる、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の年金管理システム。
【請求項6】
前記受託者システムから前記権利管理システムへの前記開始年次の通知後に、前記権利管理システムは、その開始年次に対応する該案件の年金管理を前記受託者システムの受託者に委託するか否かの権利者または出願代理人の判断を取得し、その判断結果を前記受託者システムに通知し、
前記判断結果が年金管理を委託するという場合に、前記受託者システムは、前記開始年次および前記過去年次の年金支払い状況の管理を開始する、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の年金管理システム。
【請求項7】
前記権利管理システムは、前記産業財産権を保有する権利者により運用される権利者システムである、請求項1から請求項6の何れか一項に記載の年金管理システム。
【請求項8】
前記産業財産権に関する情報を取得して、少なくとも出願から権利化に至るまでの手続きを管理可能であり、前記産業財産権を保有する権利者により運用される権利者システムをさらに有しており、
前記権利管理システムは、前記産業財産権を取得するための手続きを代理する出願代理人により運用される出願代理人システムであり、
前記出願代理人システムは、前記管理データベースにおける情報が更新されたときに、更新された案件の前記識別情報と更新された前記情報と共に更新された案件の顧客情報を前記受託者システムに通知し、
前記受託者システムは、前記顧客情報に対応する権利者により運用される前記権利者システムに前記案件の管理の開始と開始年次を通知し、
前記権利者システムは、前記受託者システムから通知された前記案件の開始年次を記憶する、請求項1から請求項6の何れか一項に記載の年金管理システム。
【請求項9】
産業財産権の維持に必要な年金の支払いを管理する年金管理システムに用いられる権利管理システムであって、
前記権利管理システムは、産業財産権に関する情報を取得して、少なくとも出願から権利化に至るまでの手続きを管理可能であり、
前記権利管理システムは、前記産業財産権の維持に必要な年金の支払いを管理する受託者システムとネットワークを介して接続され、
前記権利管理システムは、権利の種別、国名、出願日、出願番号、登録日、登録番号、年金支払い状況を含む年金特定情報を収集し、管理データベースに記録可能であり、
前記権利管理システムは、前記管理データベースにおける情報が更新されたときに、前記受託者システムに更新された案件の識別情報と更新された前記情報を通知し、
前記権利管理システムにおける前記情報の更新によって前記案件の年金管理が可能となると判定したときに、国、法域ごとの年金の支払い年次および支払い期限の起算日が記録された法律データベースと、前記案件の前記情報とに基づき、前記受託者システムによって算出される前記案件の管理を開始する開始年次を前記受託者システムから取得し、
前記権利管理システムは、取得した前記開始年次より以前の年次である過去年次の年金支払い状況に関する情報を前記受託者システムに通知する、権利管理システム。
【請求項10】
産業財産権の維持に必要な年金の支払いを管理する年金管理システムに用いられる受託者システムであって、
前記受託者システムは、前記産業財産権の維持に必要な年金の支払いを管理するものであり、
産業財産権に関する情報を取得して少なくとも出願から権利化に至るまでの手続きを管理可能な権利管理システムとネットワークを介して接続され、
権利の種別、国名、出願日、出願番号、登録日、登録番号、年金支払い状況を含む年金特定情報を収集し、管理データベースに記録可能な前記権利管理システムにおいて、前記管理データベースにおける情報が更新されたときに、更新された案件の識別情報と更新された前記情報を前記権利管理システムから通知し、
前記権利管理システムにおける前記情報の更新によって前記案件の年金管理が可能となると判定したときに、前記受託者システムは、国、法域ごとの年金の支払い年次および支払い期限の起算日が記録された法律データベースと、前記案件の前記情報とに基づき、前記案件の管理を開始する開始年次を特定し、
前記開始年次を前記権利管理システムに通知し、
前記開始年次およびそれ以前の年次である過去年次の年金支払い状況の管理を開始し、
前記過去年次の年金支払い状況に関する情報を前記権利管理システムから取得する、受託者システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、年金管理システム、それに用いられる権利管理システムおよび受託者システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許権、実用新案権、意匠権、商標権を維持するための産業財産権の年金の管理は、国ごとに異なった支払い起算日、支払い年次などが設定されており、その管理は非常に煩雑である一方、その管理には正確さが求められる。このため特許文献1のように、権利者は年金管理のために、年金管理会社など外部の事業者を利用することが一般的である。
権利者などの委託者は、年金の管理を委託したい権利の番号と管理してもらいたい年次を年金管理会社などの受託会社に連絡し、受託会社は管理してもらいたい年次以降の年金の管理を請け負っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特開2018-10479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、産業財産権の出願から登録までの手続を電子化し、これらの手続で生じる書類やデータを一元管理するシステムが提供されている。このようなシステムを使って、例えば特許公報の発行という手続きが生じた場合など年金特定情報に更新があったときに年金管理の必要が生じたと判定し、該システムから年金管理会社に自動的に年金管理を発注することが考えられている。
年金管理会社は、更新があった年金特定情報と法律に基づいて管理を開始する年度を特定し、以降の年金の管理を開始することができる。しかしながら、過去分の年金が適切に支払われていなければ、管理対象の年次の年金を適切に支払ったとしても権利を存続させることができない。
そこで本発明は、本来管理対象とすべき年次以前の年次についても管理対象とすることで、より信頼性の高い年金管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明によれば、
産業財産権の維持に必要な年金の支払いを管理する年金管理システムであって、
産業財産権に関する情報を取得して、少なくとも出願から権利化に至るまでの手続きを管理可能な権利管理システムと、
前記権利管理システムとネットワークを介して接続され、前記産業財産権の維持に必要な年金の支払いを管理する受託者システムと、を有し、
前記権利管理システムは、権利の種別、国名、出願日、出願番号、登録日、登録番号、年金支払い状況を含む年金特定情報を収集し、管理データベースに記録可能であり、
前記権利管理システムは、前記管理データベースにおける情報が更新されたときに、更新された案件の識別情報と更新された前記情報を前記受託者システムに通知し、
前記受託者システムは、前記権利管理システムにおける前記情報の更新によって前記案件の年金管理が可能となると判定したときに、前記受託者システムは、国、法域ごとの年金の支払い年次および支払い期限の起算日が記録された法律データベースと、前記案件の前記情報とに基づき、前記案件の管理を開始する開始年次を特定し、
前記受託者システムは、前記開始年次を前記権利管理システムに通知し、
前記受託者システムは、前記開始年次およびそれ以前の年次である過去年次の年金支払い状況の管理を開始し、
前記権利管理システムは、前記過去年次の年金支払い状況に関する情報を前記受託者システムに通知する、年金管理システムが提供される。
【0006】
上述した年金管理システムにおいて、
前記権利管理システムは、更新された前記情報が年金特定情報であると判定したときに、更新された案件の前記識別情報と更新された前記年金特定情報を前記受託者システムに通知してもよい。
【0007】
上述した年金管理システムにおいて、
前記受託者システムは、更新された前記情報が年金特定情報であると判定したときに、前記年金特定情報の更新によって前記案件の年金管理が可能となるかを判定してもよい。
【0008】
上述した年金管理システムにおいて、
前記受託者システムは、前記権利管理システムから前記過去年次の年金支払い状況に関する情報を取得し、前記過去年次に支払いが確認できない未確認年次がある場合に、前記未確認年次を通知してもよい。
【0009】
上述した年金管理システムにおいて、
前記受託者システムは、現時点から猶予期間後に支払期限日を迎える年次を前記開始年次として特定し、
前記受託者システムは、前記開始年次と前記法律データベースに基づき、前記開始年次の直前の年次である直前年次の支払い期限を算出し、
前記受託者システムは、前記直前年次の支払い期限が現時点より前または後の所定期間内にあり、かつ、前記権利管理システムから取得した前記過去年次の年金支払い状況に関する情報に前記直前年次の支払い完了を示す情報が含まれていないと判定した場合に、前記直前年次の支払い状況に関する情報の入力を要求する、または、前記直前年次の支払いを希望するか否かを前記権利管理システムに問い合わせてもよい。
【0010】
上述した年金管理システムにおいて、
前記受託者システムから前記権利管理システムへの前記開始年次の通知後に、前記権利管理システムは、その開始年次に対応する該案件の年金管理を前記受託者システムの受託者に委託するか否かの権利者または出願代理人の判断を取得し、その判断結果を前記受託者システムに通知し、
前記判断結果が年金管理を委託するという場合に、前記受託者システムは、前記開始年次および前記過去年次の年金支払い状況の管理を開始してもよい。
【0011】
上述した年金管理システムにおいて、
前記権利管理システムは、前記産業財産権を保有する権利者により運用される権利者システムでもよい。
【0012】
上述した年金管理システムにおいて、
前記産業財産権に関する情報を取得して、少なくとも出願から権利化に至るまでの手続きを管理可能であり、前記産業財産権を保有する権利者により運用される権利者システムをさらに有しており、
前記権利管理システムは、前記産業財産権を取得するための手続きを代理する出願代理人により運用される出願代理人システムであり、
前記出願代理人システムは、前記管理データベースにおける情報が更新されたときに、更新された案件の前記識別情報と更新された前記情報と共に更新された案件の顧客情報とを前記受託者システムに通知し、
前記受託者システムは、前記顧客情報に対応する権利者により運用される前記権利者システムに前記案件の管理の開始と開始年次を通知してもよい。
【0013】
上記目的を達成するために、本発明によれば、
産業財産権の維持に必要な年金の支払いを管理する年金管理システムに用いられる権利管理システムであって、
前記権利管理システムは、産業財産権に関する情報を取得して、少なくとも出願から権利化に至るまでの手続きを管理可能であり、
前記権利管理システムは、前記産業財産権の維持に必要な年金の支払いを管理する受託者システムとネットワークを介して接続され、
前記権利管理システムは、権利の種別、国名、出願日、出願番号、登録日、登録番号、年金支払い状況を含む年金特定情報を収集し、管理データベースに記録可能であり、
前記権利管理システムは、前記管理データベースにおける情報が更新されたときに、前記受託者システムに更新された案件の識別情報と更新された前記情報を通知し、
前記権利管理システムにおける前記情報の更新によって前記案件の年金管理が可能となると判定したときに、国、法域ごとの年金の支払い年次および支払い期限の起算日が記録された法律データベースと、前記案件の前記情報とに基づき、前記受託者システムによって算出される前記案件の管理を開始する開始年次を前記受託者システムから取得し、
前記権利管理システムは、取得した前記開始年次より以前の年次である過去年次の年金支払い状況に関する情報を前記受託者システムに通知する、権利管理システムが提供される。
【0014】
上記目的を達成するために、本発明によれば、
産業財産権の維持に必要な年金の支払いを管理する年金管理システムに用いられる受託者システムであって、
前記受託者システムは、前記産業財産権の維持に必要な年金の支払いを管理するものであり、
産業財産権に関する情報を取得して少なくとも出願から権利化に至るまでの手続きを管理可能な権利管理システムとネットワークを介して接続され、
権利の種別、国名、出願日、出願番号、登録日、登録番号、年金支払い状況を含む年金特定情報を収集し、管理データベースに記録可能な前記権利管理システムにおいて、前記管理データベースにおける情報が更新されたときに、更新された案件の識別情報と更新された前記情報を前記権利管理システムから通知し、
前記権利管理システムにおける前記情報の更新によって前記案件の年金管理が可能となると判定したときに、前記受託者システムは、国、法域ごとの年金の支払い年次および支払い期限の起算日が記録された法律データベースと、前記案件の前記情報とに基づき、前記案件の管理を開始する開始年次を特定し、
前記開始年次を前記権利管理システムに通知し、
前記開始年次およびそれ以前の年次である過去年次の年金支払い状況の管理を開始し、
前記過去年次の年金支払い状況に関する情報を前記権利管理システムから取得する、受託者システムが提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、本来管理対象とすべき年次以前の年次についても管理対象とされ、より信頼性の高い年金管理システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第一実施形態に係る年金管理システムのシステム構成図である。
【
図2】年金管理システムが実行する処理のフローチャートであり、年金管理開始までの処理を示している。
【
図3】管理データベースの権利情報データベースの一例を示している。
【
図4】管理データベースの更新状況データベースの一例を示している。
【
図5】管理データベースのタスクデータベースの一例を示している。
【
図6】2020年4月12日時点の仮受入データベース中の概略情報を示す。
【
図9】運用データベースの更新状況データベースを示す。
【
図10】年金管理システムが実行する処理のフローチャートであり、年金管理開始から年金支払い処理までの処理を示している。
【
図11】第二実施形態に係る年金管理システムのシステム構成図である。
【
図12】年金管理システムが実行する処理のフローチャートであり、年金管理開始までの処理を示している。
【
図13】第三実施形態に係る年金管理システムのシステム構成図である。
【
図14】管理データベースの権利情報データベースの一例を示している。
【
図15】年金管理システムが実行する処理のフローチャートであり、年金管理開始までの処理を示している。
【
図16】2020年4月12日時点の仮受入データベース中の概略情報を示す。
【
図17】年金管理システムが実行する処理のフローチャートであり、年金管理開始から年金支払い処理までの処理を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第一実施形態)
第一実施形態に係る年金管理システム1は、年金特定情報の更新があったときに権利者システム10が受託者システム30へ通知し、受託者システム30が該更新に基づき年金管理が可能な場合に自動的に年金管理が仮発注されたものと判断して権利者システム10に通知し、権利者システム10が仮発注を正式発注として承認したら受託者システム30が該年金の管理を開始する。この際に、受託者システム30は、年金管理の開始年次とともにそれ以前の年次についても年金の支払いを管理することとしたものである。権利者システム10は、権利管理システムの一例である。以下、
図1~10を参照して、詳細に説明する。
【0018】
図1は、第一実施形態に係る年金管理システム1のシステム構成図である。年金管理システム1は、日本国やそれ以外の国などの特許権、実用新案権、意匠権、商標権などの産業財産権の維持に必要な年金の支払いを管理する。
図1に示したように、年金管理システム1は、ネットワーク5を介して互いに接続された権利者システム10と受託者システム30とを有している。
【0019】
なお、本来は産業財産権とは登録された権利のことを言うが、ここでは、申請中であって未登録の特許出願、実用新案出願、意匠出願、商標出願もまとめて産業財産権と言うこととする。年金管理は、出願中の案件であっても開始される場合があるからである。例えば日本国の特許で言えば登録査定が通知された場合に1年次~3年次の特許料をまとめて納付することが求められ、登録査定の受領時から年金管理が可能になる場合がある。
【0020】
権利者システム10は、特許庁システム2または出願代理人システム3から産業財産権に関する情報を取得して、少なくとも出願から権利化に至るまでの手続きを管理可能なシステムである。本実施形態においては、権利者システム10は、産業財産権の権利を申請および保有している権利者が運用するシステムである。権利者は、産業財産権を取得および維持するための情報および手続きを管理するために権利者システム10を運用している。権利者システム10は、単一の情報処理装置で構成される場合もあるし、複数の情報処理装置で構成される場合もある。また権利者システム10は、いわゆるクラウド上のサービスとしてサービスプロバイダーから提供される場合もある。
【0021】
権利者システム10は、例えば、特許庁システム2や出願代理人システム3と接続されている。権利者システム10は、特許庁システム2や出願代理人システム3から情報を取得し、産業財産権の管理を行う。例えば、特許出願について特許庁から拒絶理由通知書が発行されると、特許庁システム2または出願代理人システム3から拒絶理由通知書の電子データを取得し、権利者システム10は拒絶理由通知書に関するタスクの管理を行う。具体的には、権利者システム10は、拒絶理由通知書を受領すると、意見書や補正書の提出期限日を設定し、意見書および補正書の提出が期限日までに提出されたか否かを管理する。あるいは、出願番号通知書が発行されると、権利者システム10は該当する案件に出願番号の情報を追加してデータベースに記録する。尚、権利者システム10は、特許庁システム2や出願代理人システム3に接続されていなくてもよい。この場合、権利者システム10を運用する権利者が特許庁や出願代理人から入手した情報をデータベースに入力してもよい。
【0022】
権利者システム10は、権利者制御部11と、管理データベース20と、年金特定データベース12と、権利者法律データベース13と、権利者通信部14を有している。権利者制御部11は、管理データベース20および権利者通信部14を制御する。権利者通信部14は、受託者システム30や、特許庁システム2、出願代理人システム3と通信を行う。本実施形態において管理データベース20は、権利情報データベース21と、更新状況データベース22と、タスクデータベース23を含んでいる。
権利者システム10の権利者制御部11は、例えば、プロセッサと記録部を備えた情報処理装置により構成される。プロセッサは、記憶部に記憶されたコンピュータ可読命令を読み出し、以下に詳述する処理を実行する。
【0023】
権利者システム10は、権利の種別、国名、出願日、出願番号、登録日、登録番号、年金支払い状況を含む年金特定情報を収集し、管理データベース20に記録可能である。年金特定情報とは、受託者システム30が年金の管理を開始できるか否かに影響を及ぼす可能性のある情報である。権利者システム10が収集する情報のうち、どの情報が年金特定情報に該当する項目かが、年金特定データベース12に登録されている。このため、権利者制御部11は、年金特定データベース12に基づき、管理データベース20の更新項目が年金特定情報に該当するか否かを判定することができる。年金特定データベース12とは、管理データベース20に記録される情報の項目のうち、受託者システム30が年金の管理を開始できるか否かに影響を及ぼす可能性のある項目が記録されたデータベースである。
【0024】
年金の管理を開始するに当たっては、管理対象となる案件を特定し、年金支払いが必要か否かを特定し、年金支払いの期限日を特定する。例えば権利の種別、国名、出願番号によって管理対象となる案件を特定可能である。また、出願日や登録日などに基づき年金の各年次の支払い期限を特定可能である。さらに、登録日が登録されたことにより年金の支払いが発生したことを特定可能である。
【0025】
もっとも、権利者システム10は年金の管理だけを目的としていないので、この他の情報を含んでよいことはもちろんである。例えば審査請求をしたか否か、審査請求の期限日、公開日、公開番号、拒絶理由通知書に対する応答期限日、クレーム数、など産業財産権を管理するために必要な情報が管理データベース20に記録されていてもよい。
【0026】
受託者システム30は、産業財産権の年金に関わる業務を代行する年金管理会社などが運用するシステムである。ここでは、年金管理業務を権利者から受託する者として、権利者から年金管理を請け負うものを受託者と呼んでいる。受託者は、産業財産権の維持に必要な年金を期限までに支払うことを管理するために、受託者システム30を運用する。受託者システム30も、単一の情報処理装置で構成される場合もあるし、複数の情報処理装置で構成される場合もある。
受託者システム30は、受託者制御部31と、運用データベース41と仮受入データベース42を含む年金データベース40と、受託者法律データベース32と、受託者通信部33を備えている。
【0027】
受託者制御部31は、例えば、プロセッサと記録部を備えた情報処理装置により構成される。プロセッサは、記憶部に記憶されたコンピュータ可読命令を読み出し、以下に詳述する処理を実行する。また、受託者制御部31は、受託者通信部33を介して権利者システム10に通信を行う。さらに、受託者制御部31は、受託者通信部33を介して、年金支払い代理人システム4に年金の支払いの指示を送信したり、年金支払い代理人システム4から年金支払いの完了報告を取得する。
【0028】
図2は、年金管理システム1が実行する処理のフローチャートであり、年金管理開始までの処理を示している。年金管理システム1は、
図2に示した処理を実行する。以下、図を用いて詳細に説明する。
【0029】
まず権利者システム10の権利者制御部11は、特許庁システム2や出願代理人システム3からある案件について何らかの情報を取得したときに、年金特定データベース12に基づき管理データベース20における年金特定情報のいずれかの情報が更新されたか否かを判定する(ステップS01)。
【0030】
権利者制御部11は、年金特定情報が更新されないと判定したときは(ステップS01:No)、何もせず、再び特許庁システム2や出願代理人システム3からある案件について何らかの情報を取得するまで待機する。
権利者制御部11は、年金特定情報が更新されたと判定したときは(ステップS01:Yes)、更新された案件の識別情報と更新された年金特定情報を受託者システム30に通知する。
【0031】
図3は、管理データベース20の権利情報データベース21の一例を示している。
図3では、権利者の整理番号001についての情報を示している。
図3に示した例では、権利情報データベース21は、出願国、権利の種別、パリ条約の優先権番号、優先日、出願番号、出願日、公開番号、公開日、登録番号、登録日、係属・放棄状況、創作者(発明者)、権利者、出願の有無、審査請求の有無、国内代理人情報、現地代理人情報、更新管理代理人情報、データ更新日、を有している。
【0032】
なお対象案件が外国出願の場合、権利者は、出願国における出願代理人(現地代理人)に直接連絡を取るのではなく、代理人(国内代理人)を通じて連絡を取る場合がある。このため、国内代理人と現地代理人の項目が用意されている。なお国内出願の場合には現地代理人の欄は空欄となる。また、
図1で示した出願代理人システム3とは、国内出願および外国出願ともに国内代理人のシステムである。
データ更新日とは、この整理番号001について権利情報データベース21が更新された最新の日付である。
【0033】
図4は、管理データベース20の更新状況データベース22の一例を示している。
図4では、権利者の整理番号001についての情報を示している。
図4に示した例では、対象案件(整理番号:001)が中国特許である。このため、1年次から20年次にかけて一年ごとに年金を支払う必要がある。そこで更新状況データベース22は、これらの年次ごとの支払期限と、支払い状況を記録している。図示した例では、1年次から4年次までの支払いが完了しており、5年次から20年次の支払いが未完了である。
【0034】
図5は、管理データベース20のタスクデータベース23の一例を示している。
図5では、権利者の整理番号001についての情報を示している。本実施形態においては、権利者システム10は、出願から権利維持に至るまでの特許庁に対して行う必要のある手続き(タスク)を
図5に示したタスクデータベース23で管理している。図示した例では、対象案件(整理番号:001)の出願、審査請求、認可通知、1年次から5年次の年金の支払いのタスクを管理している。それぞれのタスクについて、起票日、完了期限日、処理日、完了日を管理している。
【0035】
起票日とは、該タスクが起票された日である。例えば審査請求であれば、審査請求期限が定まり、権利者が権利者システム10に審査請求のタスクを登録させた日である。
【0036】
完了期限日とは、該タスクの期限日である。例えば日本国の特許の審査請求であれば、出願日から3年後の日付である。なお、完了期限日は、権利者システム10が有する権利者法律データベース13に基づき算出されてもよいし、権利者等により計算されてもよい。権利者法律データベース13は、後述する受託者法律データベース32と同様のデータベースである。
【0037】
処理日とは、権利者が出願代理人または年金管理者に該タスクの実行を指示した日付である。また、完了日とは、出願代理人または年金管理者が該タスクの実行の完了を報告した日付である。例えば権利者が権利者システム10を通じて出願代理人に審査請求を実行する指示を通知した日付が処理日である。また、出願代理人が出願代理人システム3を通じて審査請求の実行を報告してきた日付が完了日である。
【0038】
なお、権利者制御部11は、そのタスクを行う必要が生じたときに該タスクを起票する。例えば審査請求が完了した時点では、出願と審査請求のタスクのみがタスクデータベース23に登録されている。
図5に示した例では、中国の特許において、登録査定が発行されると、権利者制御部11は認可通知および4年次年金というタスクを起票し、登録査定の送達日を起票日として登録し、4年次の年金の支払い期限を完了期限日として登録する。
図5においては、4年次の年金の支払いの完了時に5年次の年金の支払いのタスクが起票されている。また、5年次の年金の支払いについては、権利者はまだ支払いを年金管理者に指示していない。
【0039】
さて、現在の日を2020年4月12日とする。
図2に戻り、この日に、案件:001について登録査定の通知を受領し、権利者制御部11は、管理データベース20の権利情報データベース21に登録番号と登録日を入力し、データ更新日を2020年4月12日と書き換えたものとする。
この登録番号および登録日は、受託者システム30が年金の管理を開始できるか否かに影響を及ぼす年金特定情報であり、この項目は年金特定データベース12に登録されている。このため、権利者制御部11は、更新された項目は年金特定情報に該当すると判定し(ステップS01:Yes)、更新された案件の識別情報(対象案件の整理番号001)と更新された項目である登録番号および登録日を受託者システム30に通知する(ステップS02)。
【0040】
本実施形態では、受託者制御部31は、権利者システム10から年金特定情報が通知されてくると、まず、年金特定情報が通知されてきた対象案件が年金データベース40に登録されているか否かを判定する(ステップS03)。
【0041】
ここでは、現時点より一日前の2020年4月11日の年金データベース40には対象案件001に関する年金特定情報が登録されていないものとする(ステップS03:No)。この場合、受託者制御部31は権利者システム10に問い合わせ、対象案件001に関する全ての年金特定情報を取得し、仮受入データベース42に登録する(ステップS04)。
【0042】
なお、年金データベース40に対象案件001に関する情報が登録されている場合には(ステップS03:Yes)、受託者制御部31は権利者システム10から取得した年金特定情報で仮受入データベース42を書き換える(ステップS05)。ここでは仮受入データベース42にも対象案件001に関する情報が登録されておらず、仮受入データベース42に対象案件001に関する情報が新規に登録される。
【0043】
次に受託者制御部31は、対象案件001の仮受入データベース42と運用データベース41の年金特定情報を比較し(ステップS06)、対象案件001について仮受入データベース42と運用データベース41の相違点を特定する。
【0044】
図6は、現時点である2020年4月12日の仮受入データベース42を示し、権利者システム10から取得した対象案件001の概略情報を示す。また
図7は、2020年4月12日時点の仮受入データベース42を示し、権利者システム10から取得した対象案件001の支払い状況を示す。2020年4月12時点において、既に説明したように運用データベース41には対象案件001の年金特定情報が含まれていない。このため、ステップS06において受託者システム30は、仮受入データベース42に含まれる全ての項目が相違点であると特定する。
【0045】
次に受託者制御部31は、権利者システム10における年金特定情報の更新によって対象案件の年金管理が可能となるか否かを判定する(ステップS07)。ここでは、運用データベース41と仮受入データベース42との相違点と、受託者法律データベース32に基づき、年金管理が可能となるか否かを判定する。
【0046】
受託者制御部31は、対象案件の年金管理が可能と判定した場合(ステップS07:Yes)、国、法域ごとの年金の支払い年次および支払い期限の起算日が記録された受託者法律データベース32と、案件の年金特定情報とに基づき、案件の管理を開始する開始年次を特定する(ステップS08)。
【0047】
図8は、受託者法律データベース32を示す。受託者法律データベース32には、年金の支払い年次や支払期限を計算したり、年金管理対象となるか否かを判定したりするための各国の法律情報が記録されている。図示した例では、出願国、種別、年金管理開始時、支払期限の起算日、更新年が記録されている。
【0048】
なお、年金支払いに関する法律や規則には改正や変更がなされることがあり、その度に該改正や変更などを正しく把握する必要がある。多数の国で産業財産権を維持しようとする権利者がこのような法改正等に都度対応するのは大変である。そこで年金管理会社などは、年金の支払いに関する業務に特化し、様々な国の法改正などをタイムリーに正しく把握し、受託者法律データベース32を都度更新し続けている。上述した説明では、権利者法律データベース13と受託者法律データベース32とが同様であるとは説明したが、権利者法律データベース13はこのような年金に関する法改正などに随時対応することが難しいことから、権利者法律データベース13と受託者法律データベース32とは必ずしも一致するとは限らない。
【0049】
本実施形態においては、対象案件001の出願国が中国であり、種別は特許である。そこで受託者制御部31は、受託者法律データベース32において出願国が中国、種別が特許の年金管理開始時、支払期限の起算日、更新年を参照する。
年金管理開始時は登録後である。ここで、運用データベース41と仮受入データベース42との相違点には登録日と登録番号が含まれる。そこで受託者制御部31は、対象案件001は年金管理対象となると判定する。
【0050】
さらに受託者制御部31は、各年次の支払い期限日を算出する。支払期限日は出願日を起算日として特定され、更新年は1年毎である。本実施形態では、受託者制御部31は、
図7に示したように既に権利者システム10から各年次の支払い期限日を取得している。しかし、受託者制御部31は独自に受託者法律データベース32に基づいて支払期限日を算出し、権利者システム10から取得した支払期限日と照合し、両者が異なる場合には受託者法律データベース32に基づいて算出した支払い期限日に修正する。上述したように権利者システム10の権利者法律データベース13は法改正などのアップデートが定義なされていない場合があるからである。
【0051】
対象案件001の年金特定情報が受託者システム30に入力された日は、2020年4月12日(現在の日)である。受託者制御部31は、現在の日から所定の猶予期間(本実施形態では、3カ月)を加えて2020年7月12日以降に到来する支払い期限日の年次を管理を開始する開始年次として特定する。ここでは、開始年次は、2021年5月23日に支払期限日を迎える6年次が開始年次として特定される。
【0052】
なお、猶予期間とは、権利者と受託者との間で契約により定められる期間である。年金の管理業務においては、権利者から年金納付の依頼を受けてから、依頼手続きをとるまでに時間を要する。また、依頼時の年金特定情報が不足していた場合には更なる時間を要する場合がある。さらには、外国での年金の支払いを現地の年金支払代理人に依頼して行うために、権利者から年金の管理業務を依頼されても、すぐには対応できないことが多い。このため、権利者と受託者との間で、依頼時から所定期間の間に支払い期限を年金に関しては受託者が対応できないことを確認している。よって、本実施形態の年金管理システム1においても、3カ月の猶予期間が設定されている。
もっとも、権利者・受託者・年金支払代理人間の連絡および処理が迅速に行えるようなシステムにおいては、猶予期間が設定されなくてもよい。
【0053】
なお、ステップS07において対象案件の年金管理が不可能と判定した場合(ステップS07:No)、受託者制御部31は特に何の処理も行わず、処理を終了する。例えば、出願日と出願番号のみが権利者システム10から通知されてきた場合などは、出願番号通知書が特許庁から発行されただけであり、まだ年金の支払いが不要な段階であるため、年金管理を開始しない。
【0054】
次に受託者制御部31は、特定した開始年次(6年次)を権利者システム10に通知する(ステップS09)。開始年次を通知することにより、受託者はこの年次からの年金管理を受注してよいかを権利者に問い合わせる。なお受託者制御部31は、開始年次とともに開始年次の支払い期限日を権利者システム10に通知してもよい。あるいは受託者制御部31は、開始年次とともに開始年次よりも前の全てあるいは一部の過去年次と、その支払い期限日を権利者システム10に通知してもよい。
【0055】
次に権利者制御部11は、権利者から開始年次を通知してきた受託者に年金管理を委託するか否かの入力を取得する(ステップS10)。例えば権利者制御部11は、権利者システム10のディスプレイに年金管理会社名、対象案件の番号(001)、開始年次を表示させ、年金管理を委託するか否かを表示させ、キーボードやマウスといった入力装置による入力を促す。これにより、受託者システム30が仮受注したものと判定した案件の年金管理について、権利者は正式に受託者に委託するか否かを決定する。
【0056】
ステップS10において権利者制御部11が年金管理を委託しない旨の入力を取得した場合(ステップS10:No)、権利者制御部11は、対象案件001の年金管理を委託しない旨を受託者システム30に通知する(ステップS13)。
ステップS10において権利者制御部11が年金管理を委託する旨の入力を取得した場合(ステップS10:Yes)、権利者制御部11は、対象案件001の年金管理を委託する旨を受託者システム30に通知する。
【0057】
受託者制御部31は、権利者システム10から対象案件001の年金管理を委託する旨の通知を取得したら(ステップS10:Yes)、該案件の年金管理を開始する(ステップS12)。受託者にとっては、権利者システム10から対象案件001の年金管理を委託する旨の通知を取得したことが、正式な受注となる。
【0058】
本実施形態では、受託者システム30は、年金管理を開始すると、該案件の仮受入データベース42中の情報を全て運用データベース41に書き写す。これにより、年金管理開始後は、対象案件に関する仮受入データベース42中の情報と運用データベース41中の情報は同一となる。受託者システム30は、
図9に示した運用データベース41の更新状況データベース411を用いて年金を管理する。
図9は、対象案件001の更新状況データベース411を示している。
【0059】
受託者システム30は、運用データベース41中の更新状況データベース411を用いて年金を管理する。
図9に示したように、更新状況データベース411は、年次と、支払期限日と、支払い指示日、支払完了日、支払報告日を含んでいる。支払い指示日とは、受託者が年金支払代理人へ年金の支払いを指示した日付である。支払い完了日とは、年金支払代理人が現地特許庁へ年金を支払った日付である。支払報告日とは、受託者が権利者に年金支払いの完了を報告した日付である。受託者システム30は、年金の支払いが支払い期限日前までに完了するように管理する。また、受託者システム30は、年金支払の報告が支払い期限日から所定期間内に完了するように管理してもよい。
【0060】
図10は、年金管理システム1が実行する処理のフローチャートであり、年金管理開始から年金支払い処理までの処理を示している。
図10に示したように、受託者制御部31は、対象案件001の年金管理を開始すると、該案件の年金管理を開始したことを権利者システム10に通知する(ステップS21)。
【0061】
権利者制御部11は、該通知を取得すると、更新状況データベース22から開始年次および過去年次の支払い状況を索出する(ステップS22)。権利者制御部11は、索出した開始年次および過去年次の支払い状況を受託者システム30に通知する(ステップS23)。なお、権利者システム10は既にステップS09にて開始年次を受託者システム30から受領しており、権利者システム10には開始年次の情報が記録されており、開始年次が分かれば過去年次についても特定できる。
【0062】
なお、権利者システム10は、開始年次の支払い状況を索出しないように構成してもよい。開始年次の支払い状況を管理することは、本来は受託者側の責務で行う工程だからである。
【0063】
なお、既にステップS02にて権利者システム10から受託者システム30に年金特定情報として開始年度を含む各年度の支払い状況が通知されている場合もある。それにも関わらず、権利者制御部11が、ステップS23にて再び支払い状況を受託者システム30に通知するのは、以下のような事情による。
例えば、日本国で特許証が送付された場合を考える。この場合、既に1年次から3年次の年金が支払われているはずである。しかしながら、出願代理人の事務作業の遅れなどに起因して、特許証の報告が、1年次から3年次の年金支払いの完了報告よりも先に生じてしまうことがなる。この場合、権利者システム10が特許証を受領した時に、登録日および登録番号を管理データベース20に登録し、該年金特定情報を受託者システム30に通知する。しかしながら、この時点では権利者システム10は1年次から3年次の年金支払いの完了報告を受け取っていないのだから、管理データベース20上では1年次から3年次の年金の支払い状況は未完了となっている。そこで本実施形態では、ステップS23など支払い状況を問い合わせる複数の機会を設けることにより、常に最新の支払い状況を把握できるように構成されている。
【0064】
受託者制御部31は、開始年次および過去年次の支払い状況を権利者システム10から受領すると、受託者制御部31は、支払いの未確認年次があるか否かを判定する(ステップS24)。具体的には、受託者制御部31は、
図9に示した更新状況データベース411を参照し、開始年次および開始年次よりも過去の年度である過去年次について支払い完了日が記入されていない年次を特定する。
【0065】
ステップS09にて受託者制御部31は、6年次を開始年次として設定した。過去年次は1~5年次である。受託者制御部31は、これら4~6年次について、支払い完了日が未記入の年次を特定する。受託者制御部31は、過去年次のうち5年次および、開始年次である6年次について、支払いの未確認年次があると特定する。
【0066】
過去年次に支払いの未確認年次があると判定した場合(ステップS24:Yes)、受託者制御部31は、未確認年次を権利者システム10に通知する(ステップS25)。本例では、受託者制御部31は、5年次を権利者システム10に通知する。
【0067】
権利者制御部11は、受託者システム30から未確認年次が通知されると、未確認年次の支払い状況を管理データベース20の更新状況データベース22に基づき確認する(ステップS26)。更新状況データベース22に未確認年次の支払い完了日が登録されていれば、各々の年次についてその支払い完了日を受託者システム30に通知する(ステップS27)。また、未確認年次の支払い完了日が登録されていなければ、その旨を受託者システム30に通知する。
【0068】
受託者システム30は、権利者システム10から未確認年次の確認結果を取得すると、再び過去年次に支払いの未確認年次があるか否かの判定を繰り返す(ステップS24)。
【0069】
過去年次に支払いの未確認年次がないと判定した場合(ステップS24:No)、受託者制御部31は開始年次の年金支払い処理を行う(ステップS28)。
【0070】
このように本実施形態に係る年金管理システム1によれば、権利者システム10と受託者システム30との間で自動的に開始年次に関する年金管理の仮発注・仮受注が行われる。この際に、受託者システム30では、権利者と受託者との間の契約に定められた開始年次のみならずその以前の過去年次についても年金支払い状況の管理を行う。過去年次に年金の不払いがあれば、開始年次の年金を支払ったとしても対象案件を有効に維持することができないからである。本実施形態では、未確認年次が無いことが確認され、対象案件が有効に存続していることを確認する。このため、過去年次に年金が支払われていないのに開始年次の年金を支払ってしまうような事態を避けることができる。
このように、本実施形態の年金管理システム1によれば、本来管理対象とすべき年次以前の年次についても管理対象とすることで、より信頼性が高まっている。
【0071】
また、上記の例では、5年次の支払い期限は2020年5月23日であり、2020年4月12日の現在の日から近い。例えば、権利者に5年次の年金の支払いが完了した旨の書簡が届いているにも関わらず、権利者システム10の管理データベース20に該情報を入力するのに時間を要しており、2020年4月12日までに管理データベース20が登録されていないといった事態が想定される。
この場合、本実施形態とは異なり、年金管理の委託の正式注が行われた後に(ステップS11)、過去年次の支払い状況を通知する(ステップS23)あるいは未確認年次の支払い状況の再確認(ステップS27)といった工程を行わない場合には、権利維持の観点から受託者も5年次の年金を支払ってしまうといった事態も招来する。本実施形態では、ステップS23およびステップS27のように、正式発注の後に未確認年次の支払い状況を確認しているので、かかる事態の招来を防止できる。
【0072】
なお、上述した実施形態では、ステップS02において、権利者システム10は年金特定情報のうち更新された項目のみを受託者システム30に通知する例を説明したが、本発明はこれに限られない。ステップS02において、権利者システム10は更新された項目を含む複数の項目の年金特定情報を受託者システム30に通知してもよいし、権利者システム10は更新された項目を含む全ての項目の年金特定情報を受託者システム30に通知してもよい。なお、このように権利者システム10が更新された項目を含む全ての項目の年金特定情報を受託者システム30に通知する場合には、受託者システム30は、ステップS02で権利者システム10から取得した年金特定情報と運用データベース41に記録された年金特定情報とを比較するようにステップS06を変更できる。また、ステップS02において、権利者システム10は、権利情報データベース21に記録されている情報であって、更新されていない案件の情報を受託者システム30に通知してもよい。この場合、権利情報データベース21に記録されている全ての案件の情報を受託者システム30に通知してもよいし、更新された案件を含む一部の案件の情報を通知するようにしてもよい。
【0073】
また本実施形態では、ステップS23において、過去年次と開始年次の支払い状況が権利者システム10から受託者システム30に通知される。これとは異なり、開始年次の支払い状況が受託者システム30に通知されない場合であって、猶予期間がないあるいは短い場合、受託者制御部31が開始年次を特定した時点で開始年次の支払い期限がすぐに到来してしまうことがある。この場合、権利維持を優先するあまり、権利者でも開始年次の年金を支払い、受託者でも開始年次の年金を支払ってしまう二重払いの事態が生じうる。このため、上述した実施形態のように、過去年次とともに開始年次についても支払い状況が権利者システム10から受託者システム30に通知されると、権利者での支払い状況を確認した上で受託者が開始年次の年金の支払い処理を進めることができ、二重払いの事態が生じにくい。
【0074】
また本実施形態では、受託者システム30は、現時点から猶予期間後に支払期限日を迎える年次を開始年次として特定している。
受託者システム30は、開始年次と法律データベースに基づき、開始年次の直前の年次である直前年次の支払い期限を算出し、
受託者システム30は、直前年次の支払い期限が現時点より前または後の所定期間内にあり、かつ、権利者システム10から取得した過去年次の年金支払い状況に関する情報に直前年次の支払い完了を示す情報が含まれていないと判定した場合に、直前年次の支払い状況に関する情報の入力を要求する、または、直前年次の支払いを希望するか否かを権利者システム10に問い合わせるように構成してもよい。
このような構成によって、権利者の積極的な対応を促すことができ、至急対応が求められる直前年次の年金の支払いを迅速に確認できたり、あるいは、支払いの要否を迅速に確認できる。
【0075】
また本実施形態では、
受託者システム30から権利者システム10への開始年次の通知後に、権利者システム10は、その開始年次に対応する該案件の年金管理を受託者に委託するか否かの権利者の判断を取得し(ステップS10)、その判断結果を受託者システム30に通知し(ステップS11,S13)、
判断結果が年金管理を委託するという場合に(ステップS10:Yes)、受託者システム30は、開始年次および過去年次の年金支払い状況の管理を開始する(ステップS12)。
【0076】
このような構成によれば、受託者システム30が更新された年金特定情報に基づき年金管理可能な案件を特定し、これを仮発注したものとして、権利者に仮発注を正式発注として受託してよいかを問い合わせることができる。
権利者にとっては、本実施形態とは異なり年金特定情報の更新に基づき権利者自身が判断して年金管理の発注を行うことは、負担が大きい。
一方で、本実施形態とは異なり権利者が委託するか否かを判断するステップS10の工程がない場合には、権利の維持を放棄したかった案件であるのに勝手に受託者システム30によって年金管理が開始されてしまうといった事態が生じうる。
本実施形態によれば、年金管理に精通した受託者システム30によって年金管理可能となるか否かを判断し、自動的に仮発注が行われるので、権利者側の負担が軽減されている。また、仮発注のみで年金管理を開始するのではなく、権利者による正式発注を得た後に年金管理を開始するので、権利者の意思に基づき年金管理を行うことができる。
【0077】
また上述した実施形態では、ステップS09にて受託者システム30が開始年次を権利者システム10に通知した後に、ステップS10,11,13にて権利者システム10から正式受注を受けるか否かの判断を待ってから、ステップS12にて年金管理を開始する構成を説明した。
本発明はこれに限らず、ステップS09にて受託者システム30が開始年次を権利者システム10に通知した後に、権利者からの回答を待たずにステップS12の年金管理を開始するように構成してもよい。このような構成により、例えば権利者の正式発注のタイミングが遅れることに起因して至急対応が求められる年金支払いが遅れてしまうといった事態を防止できる。また、この場合は、年金管理を開始したのちに権利者からの正式発注に関する指示(ステップS10,11,13)を受領し、権利者システム10から年金管理を委託しない旨の通知を受託者システム30が取得した際には、該当案件の年金管理を中止するように構成してもよい。
【0078】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態に係る年金管理システム100の構成について、
図11と
図12を参照して説明する。上述した第一実施形態では、権利者システム10は、年金特定情報が更新されたと判定したときのみ(
図2のステップS01:Yes)、更新された案件の識別情報と更新された年金特定情報を受託者システム30に通知している(ステップS02)。すなわち、年金特定情報の更新の判定は権利者システム10により行われている。これに対して、第二実施形態では、年金特定情報の更新の判定は、受託者システム30で行われる。なお、以下の説明では、第一実施形態の年金管理システム1と相違する部分について主に説明し、共通する部分については同じ符号を付し、その説明は適宜省略する。
【0079】
図11は、第二実施形態に係る年金管理システム100のシステム構成図である。年金管理システム100は、ネットワーク5を介して互いに接続された権利者システム110と受託者システム130とを有している。権利者システム110は、権利者制御部11と、管理データベース20と、権利者法律データベース13と、権利者通信部14を備えている。受託者システム130は、受託者制御部31と、年金データベース40と、受託者法律データベース32と、受託者通信部33と、年金特定データベース34を備えている。年金特定データベース34とは、年金データベース40に記録される情報の項目のうち、受託者システム30が年金の管理を開始できるか否かに影響を及ぼす可能性のある項目が記録されたデータベースである。
【0080】
図12は、年金管理システム100が実行する年金管理開始までの処理のフローチャートである。なお、年金管理システム100が実行する年金管理開始から年金支払い処理までの処理は第一実施形態の年金管理システム1(
図10)と同じであるため説明は省略する。
【0081】
まず権利者システム10の権利者制御部11は、特許庁システム2や出願代理人システム3からある案件について何らかの情報を取得した場合、更新された案件の識別情報と更新された項目を受託者システム30に通知する(ステップS31)。
【0082】
例えば、案件:001について登録査定の通知を受領し、権利者制御部11は、管理データベース20の権利情報データベース21に登録番号と登録日を入力し、データ更新日を2020年4月12日と書き換えたものとする。権利者制御部11は、更新された案件の識別情報(対象案件の整理番号001)と更新された項目である登録番号および登録日を受託者システム30に通知する(ステップS31)。
【0083】
受託者制御部31は、権利者システム10から更新された項目が通知されてくると、年金特定データベース34を参照し、更新された項目が年金特定情報に該当するかを判定する(ステップS32)。例えば、更新された項目が登録番号および登録日である場合には、受託者制御部31は、更新された項目が年金特定情報であると判定する。
【0084】
受託者制御部31は、更新された項目が年金特定情報に該当しないと判定したときは(ステップS32:No)、特に何の処理も行わず、処理を終了する。受託者制御部31は、更新された項目が年金特定情報に該当すると判定したときは(ステップS32:Yes)、更新された年金特定情報の対象案件が年金データベース40に登録されているか否かを判定する(ステップS03)。ステップS03以降については、年金管理システム100は、第一実施形態の年金管理システム1(
図2)と同じ処理を実行する。
【0085】
このような構成によれば、更新された項目が年金特定情報に該当するか否かの判定が受託者システム30で行われているので、権利者システム10の処理負担が軽減される。また、更新された項目が年金特定情報に該当するにもかかわらず権利者システム10から受託者システム30へ通知がなされないような事態を避けることができる。
【0086】
(第三実施形態)
次に、第三実施形態に係る年金管理システム200の構成について、
図13~
図17を参照して説明する。上述した第一実施形態では、産業財産権の権利者が権利者システム10を使用して、受託者システム30との間で自動的に開始年次に関する年金管理の仮発注・仮受注および年金支払い状況の確認・管理を行っている。これに対して、第三実施形態では、産業財産権の権利者の代わりに出願代理人が出願代理人システム210を使用して、受託者システム230との間で自動的に開始年次に関する年金管理の仮発注・仮受注および年金支払い状況の確認・管理を行う。
【0087】
すなわち、第三実施形態に係る年金管理システム200は、年金特定情報の更新があったときに更新された情報を出願代理人システム210が受託者システム230へ通知し、受託者システム230が該更新に基づき年金管理が可能な場合に自動的に年金管理が仮発注されたものと判断して出願代理人システム210に通知し、出願代理人システム210が仮発注を正式発注として承認したら受託者システム230が該年金の管理を開始する。この際に、受託者システム230は、年金管理の開始年次とともにそれ以前の年次についても年金の支払いを管理することとしたものである。出願代理人システム210は、権利管理システムの一例である。なお、以下の説明では、第一実施形態の年金管理システム1と相違する部分について主に説明し、共通する部分については同じ符号を付し、その説明は適宜省略する。
【0088】
図13は、第三実施形態に係る年金管理システム200のシステム構成図である。年金管理システム200は、ネットワーク5を介して互いに接続された出願代理人システム210と受託者システム230とを有している。出願代理人システム210は、産業財産権の権利者すなわち出願人の代わりに国内および/または外国の産業財産権を取得するための手続きを代理する出願代理人が運用するシステムである。出願代理人システム210は、単一の情報処理装置で構成される場合もあるし、複数の情報処理装置で構成される場合もある。また出願代理人システム210は、いわゆるクラウド上のサービスとしてサービスプロバイダーから提供される場合もある。
【0089】
出願代理人システム210は、例えば、特許庁システム2または現地代理人システム6と接続され、国内または外国の産業財産権に関する情報を取得し、少なくとも出願から権利化に至るまでの手続きを管理する。現地代理人システム6とは、外国出願の手続きを代理する現地代理人のシステムである。なお、出願代理人システム210は、特許庁システム2または現地代理人システム6に接続されていなくてもよい。この場合、出願代理人システム210を運用する出願代理人が、特許庁や現地代理人から入手した情報をデータベースに入力してもよい。また、出願代理人システム210は、権利者システム10と接続され、取得した産業財産権に関する情報を権利者システム10へ送信する。権利者システム10は、第一実施形態の権利者システム10と同様の構造を有している。
【0090】
出願代理人システム210は、代理人制御部211と、管理データベース220と、年金特定データベース212と、代理人法律データベース213と、代理人通信部214を備えている。代理人制御部211は、管理データベース220および代理人通信部214を制御する。代理人通信部214は、受託者システム230や、特許庁システム2、権利者システム10、現地代理人システム6と通信を行う。本実施形態において管理データベース220は、権利情報データベース221と、更新状況データベース222と、タスクデータベース223を含んでいる。
出願代理人システム210の代理人制御部211は、例えば、プロセッサと記録部を備えた情報処理装置により構成される。プロセッサは、記憶部に記憶されたコンピュータ可読命令を読み出し、以下に詳述する処理を実行する。
【0091】
出願代理人システム210は、権利の種別、国名、出願日、出願番号、登録日、登録番号、年金支払い状況を含む年金特定情報を収集し、顧客情報に関連付けて、管理データベース220に記録可能である。
図14は、管理データベース220の権利情報データベース221の一例を示している。
図14では、整理番号001についての情報を示している。
図14に示した例では、権利情報データベース221は、出願国、権利の種別、パリ条約の優先権番号、優先日、出願番号、出願日、公開番号、公開日、登録番号、登録日、係属・放棄状況、創作者(発明者)、権利者、出願の有無、審査請求の有無、現地代理人情報、更新管理代理人情報、データ更新日、を有している。権利情報データベース221はさらに、顧客名、顧客整理番号を有している。なお、対象案件が共同出願である場合、複数の権利者のうち代表者から産業財産権の取得の依頼を受ける場合がある。あるいは、権利者が在外者である場合、権利者が居住する国における代理人を通じて産業財産権の取得の依頼を受ける場合がある。この場合、権利者の代表者または代理人が顧客となる。このため、権利者と顧客の項目が用意されている。
【0092】
管理データベース220の更新状況データベース222は、
図4に示した更新状況データベース22と同様に、対象案件の年次ごとの年金の支払期限と、支払い状況を記録している。管理データベース220のタスクデータベース223は、
図5に示したタスクデータベース23と同様に、出願から権利維持に至るまでの特許庁に対して行う必要のある手続き(タスク)を記録している。なお、本例では、タスクデータベース223における処理日とは、出願代理人が該タスクを実行した日付あるいは現地代理人または年金管理者に該タスクの実行を指示した日付である。また、完了日とは、顧客へ当該タスクの実行の完了を報告した日付である。
【0093】
年金特定データベース212は、
図1で示した年金特定データベース12と同様に、管理データベース220に記録される情報の項目のうち、受託者システム230が年金の管理を開始できるか否かに影響を及ぼす可能性のある項目が記録されたデータベースである。代理人法律データベース213は、
図1で示した権利者法律データベース13と同様に、年金の支払い年次や支払期限を計算したり、年金管理対象となるか否かを判定したりするための各国の法律情報が記録されたデータベースである。
【0094】
受託者システム230は、受託者制御部31と、年金データベース40と、受託者法律データベース32と、受託者通信部33を備えている。受託者制御部31は、受託者通信部33を介して出願代理人システム210に通信を行う。また、受託者制御部31は、受託者通信部33を介して権利者システム10に通信を行う。
【0095】
図15は、年金管理システム200が実行する処理のフローチャートであり、年金管理開始までの処理を示している。
【0096】
まず出願代理人システム210の代理人制御部211は、特許庁システム2や現地代理人システム6からある案件について何らかの情報を取得したときに、年金特定データベース212に基づき管理データベース220における年金特定情報のいずれかの情報が更新されたか否かを判定する(ステップS41)。
【0097】
代理人制御部211は、年金特定情報が更新されないと判定したときは(ステップS41:No)、再び特許庁システム2や現地代理人システム6からある案件について何らかの情報を取得するまで待機する。代理人制御部211は、年金特定情報が更新されたと判定したときは(ステップS41:Yes)、更新された案件の識別情報と更新された年金特定情報と更新された案件の顧客情報を受託者システム130に通知する(ステップS42)。
【0098】
受託者制御部31は、出願代理人システム210から年金特定情報が通知されてくると、まず、年金特定情報が通知されてきた対象案件が年金データベース40に登録されているか否かを判定する(ステップS43)。年金特定情報が通知されてきた対象案件が年金データベース40に登録されていない場合には(ステップS43:No)、受託者制御部31は出願代理人システム210に問い合わせ、対象案件に関する全ての年金特定情報を取得し、顧客情報と共に仮受入データベース42に登録する(ステップS44)。年金データベース40に対象案件に関する情報が登録されている場合には(ステップS43:Yes)、受託者制御部31は出願代理人システム210から取得した年金特定情報で仮受入データベース42を書き換える(ステップS45)。
【0099】
次に受託者制御部31は、対象案件の仮受入データベース42と運用データベース41の年金特定情報を比較し(ステップS46)、対象案件について仮受入データベース42と運用データベース41の相違点を特定する。
【0100】
図16は、現時点である2020年4月12日の仮受入データベース42を示し、出願代理人システム210から取得した対象案件001の概略情報を示す。仮受入データベース42は、
図6の仮受入データベース42に含まれる情報に加えて、顧客名、顧客整理番号を含んでいる。なお、仮受入データベース42にはさらに第一実施形態(
図7)と同様に出願代理人システム210から取得した対象案件001の支払い状況が含まれている。
【0101】
次に受託者制御部31は、出願代理人システム210における年金特定情報の更新によって対象案件の年金管理が可能となるか否かを判定する(ステップS47)。ここでは、運用データベース41と仮受入データベース42との相違点と、受託者法律データベース32に基づき、年金管理が可能となるか否かを判定する。
【0102】
受託者制御部31は、対象案件の年金管理が可能と判定した場合(ステップS47:Yes)、国、法域ごとの年金の支払い年次および支払い期限の起算日が記録された受託者法律データベース32と、案件の年金特定情報とに基づき、案件の管理を開始する開始年次を特定する(ステップS48)。なお、対象案件の年金管理が不可能と判定した場合(ステップS47:No)、受託者制御部31は特に何の処理も行わず、処理を終了する。
【0103】
次に受託者制御部31は、特定した開始年次を出願代理人システム210に通知する(ステップS49)。
【0104】
次に代理人制御部211は、開始年次を通知してきた受託者に年金管理を委託するか否かの入力を取得する(ステップS50)。代理人制御部211が年金管理を委託しない旨の入力を取得した場合(ステップS50:No)、代理人制御部211は、対象案件001の年金管理を委託しない旨を受託者システム230に通知する(ステップS53)。代理人制御部211が年金管理を委託する旨の入力を取得した場合(ステップS50:Yes)、代理人制御部211は、対象案件001の年金管理を委託する旨を受託者システム230に通知する(ステップS51)。
【0105】
受託者制御部31は、出願代理人システム210から対象案件001の年金管理を委託する旨の通知を取得したら(ステップS50:Yes)、該案件の年金管理を開始する(ステップS52)。
【0106】
受託者システム230は、年金管理を開始すると、該案件の仮受入データベース42中の情報を全て運用データベース41に書き写す。これにより、年金管理開始後は、対象案件に関する仮受入データベース42中の情報と運用データベース41中の情報は同一となる。受託者システム230は、
図9に示す運用データベース41の更新状況データベース411を用いて年金を管理する。
【0107】
図17は、年金管理システム200が実行する処理のフローチャートであり、年金管理開始から年金支払い処理までの処理を示している。
図17に示したように、受託者制御部31は、対象案件001の年金管理を開始すると、該案件の年金管理を開始したことを出願代理人システム210に通知する(ステップS61)。
【0108】
代理人制御部211は、該通知を取得すると、更新状況データベース222から開始年次および過去年次の支払い状況を索出する(ステップS62)。代理人制御部211は、索出した開始年次および過去年次の支払い状況を受託者システム230に通知する(ステップS63)。なお、出願代理人システム210は既にステップS49にて開始年次を受託者システム30から受領しており、出願代理人システム210には開始年次の情報が記録されており、開始年次が分かれば過去年次についても特定できる。なお、出願代理人システム210は、開始年次の支払い状況を索出しないように構成してもよい。
【0109】
受託者制御部31は、開始年次および過去年次の支払い状況を出願代理人システム210から受領すると、受託者制御部31は、支払いの未確認年次があるか否かを判定する(ステップS64)。具体的には、受託者制御部31は、運用データベース41中の更新状況データベース411を参照し、開始年次および開始年次よりも過去の年度である過去年次について支払い完了日が記入されていない年次を特定する。
【0110】
過去年次に支払いの未確認年次があると判定した場合(ステップS64:Yes)、受託者制御部31は、未確認年次を出願代理人システム210に通知する(ステップS65)。
【0111】
代理人制御部211は、受託者システム230から未確認年次が通知されると、未確認年次の支払い状況を管理データベース220の更新状況データベース222に基づき確認する(ステップS66)。更新状況データベース222に未確認年次の支払い完了日が登録されていれば、各々の年次についてその支払い完了日を受託者システム230に通知する(ステップS67)。また、未確認年次の支払い完了日が登録されていなければ、その旨を受託者システム230に通知する。
【0112】
受託者システム230は、出願代理人システム210から未確認年次の確認結果を取得すると、再び過去年次に支払いの未確認年次があるか否かの判定を繰り返す(ステップS64)。
【0113】
過去年次に支払いの未確認年次がないと判定した場合(ステップS64:No)、受託者システム230は、運用データベース41に記録された顧客情報に対応する権利者により運用される権利者システム10に年金管理を開始した旨および開始年次を通知する(ステップS68)。本例においては、対象案件001の顧客と権利者は同一であり、受託者システム230は、運用データベース41に記録された顧客情報に基づいて顧客である権利者により運用される権利者システム10に年金管理開始を通知する。なお、権利者が在外者であり顧客と権利者が同一でない場合は、顧客(代理人)を通じて権利者により運用される権利者システム10に年金管理開始が通知されてもよい。権利者システム10は、受託者システム230から年金管理開始の通知を取得すると、開始年次を管理データベースに記録する。
【0114】
また、受託者制御部31は開始年次の年金支払い処理を行う(ステップS69)。なお、権利者システム10への年金開始通知(ステップS68)前に、開始年次の年金支払い処理が行われてもよい。
【0115】
このような構成によれば、出願代理人システム210と受託者システム230との間で自動的に開始年次に関する年金管理の仮発注・仮受注および年金支払い状況の確認・管理まで行われる。すなわち、権利者システム10を介すことなく出願代理人システム210と受託者システム230の間で年金管理の仮発注から年金支払いまでが完結する。これにより、年金管理の発注や年金支払い状況の確認などの権利者の処理負担が軽減される。他方、権利者システム10には年金管理開始と開始年次が通知されるので、権利者システム10を運用する権利者は、年金管理状況を把握できる。
【0116】
また、開始年次の年金支払い処理前に権利者システム10へ年金管理開始の通知が通知される場合には、権利者が権利の維持を放棄したかった案件の年金管理が開始されてしまうといった事態を回避できる。例えば権利者システム10は、ステップS68において年金管理開始通知を取得した場合に、年金管理の委託の中止などを受託者システム230に通知してもよい。
【0117】
なお、上述した実施形態においては、更新された情報が年金特定情報であるか否かの判定が出願代理人システム210において行われているが、第二実施形態のように、更新された情報が年金特定情報であるか否かの判定は受託者システム230において行われてもよい。この場合、受託者システム230は、
図11の受託者システム130と同様に、年金特定データベース34を有する。
【0118】
また、上述した実施形態においては、出願代理人は、年金管理はすべて受託者に委託しているが、一部の年次(例えば6年次)の年金管理を出願代理人で行ってもよい。例えば、出願代理人は、
図15のステップS51において、対象案件の所定の年次(例えば7年次以降)の年金管理を委託する旨を受託者システム30に通知してもよい。この場合、出願代理人システム210は、一部の年次(例えば6年次)の年金管理開始を権利者システム10に通知する。また、出願代理人システム210は、年金の支払いが完了した場合はその旨を権利者システム10と受託者システム230に通知する。
【0119】
また本発明は、上述した年金管理システム1,100,200を構成する権利管理システム(権利者システム10,110または出願代理人システム210)として、以下のように構成することができる。
産業財産権の維持に必要な年金の支払いを管理する年金管理システム1,100,200に用いられる権利管理システムであって、
前記権利管理システムは、産業財産権に関する情報を取得して、少なくとも出願から権利化に至るまでの手続きを管理可能であり、
前記権利管理システムは、前記産業財産権の維持に必要な年金の支払いを管理する受託者システム30,130,230とネットワーク5を介して接続され、
前記権利管理システムは、権利の種別、国名、出願日、出願番号、登録日、登録番号、年金支払い状況を含む年金特定情報を収集し、管理データベース20,220に記録可能であり、
前記権利管理システムは、前記管理データベース20,220における情報が更新されたときに、前記受託者システム30,130,230に更新された案件の識別情報と更新された前記情報を通知し、
前記権利管理システムにおける前記情報の更新によって前記案件の年金管理が可能となると判定したときに、国、法域ごとの年金の支払い年次および支払い期限の起算日が記録された法律データベースと、前記案件の前記情報とに基づき、前記受託者システム30,130,230によって算出される前記案件の管理を開始する開始年次を前記受託者システム30,130,230から取得し、
前記権利管理システムは、取得した前記開始年次より以前の年次である過去年次の年金支払い状況に関する情報を前記受託者システム30,130,230に通知する、権利管理システム。
【0120】
また本発明は、上述した年金管理システム1,100,200を構成する受託者システム30,130,230として、以下のように構成することができる。
産業財産権の維持に必要な年金の支払いを管理する年金管理システム1,100,200に用いられる受託者システム30,130,230であって、
前記受託者システム30,130,230は、前記産業財産権の維持に必要な年金の支払いを管理するものであり、
産業財産権に関する情報を取得して少なくとも出願から権利化に至るまでの手続きを管理可能な権利管理システム(権利者システム10、110または出願代理人システム210)とネットワーク5を介して接続され、
権利の種別、国名、出願日、出願番号、登録日、登録番号、年金支払い状況を含む年金特定情報を収集し、管理データベース20,220に記録可能な前記権利管理システムにおいて、前記管理データベース20,220における情報が更新されたときに、更新された案件の識別情報と更新された前記情報を前記権利管理システムから通知し、
前記権利管理システムにおける前記情報の更新によって前記案件の年金管理が可能となると判定したときに、前記受託者システム30,130,230は、国、法域ごとの年金の支払い年次および支払い期限の起算日が記録された法律データベースと、前記案件の前記情報とに基づき、前記案件の管理を開始する開始年次を特定し、
前記開始年次を前記権利管理システムに通知し、
前記開始年次およびそれ以前の年次である過去年次の年金支払い状況の管理を開始し、
前記過去年次の年金支払い状況に関する情報を前記権利管理システムから取得する、受託者システム30,130,230。
【0121】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【0122】
上述した第一実施形態の変形例は、第二実施形態および第三実施形態にも適用されうる。
【符号の説明】
【0123】
1,100,200 年金管理システム
2 特許庁システム
3,210 出願代理人システム
4 代理人システム
5 ネットワーク
6 現地代理人システム
10,110 権利者システム
11 権利者制御部
12 年金特定データベース
13 権利者法律データベース
14 権利者通信部
20 管理データベース
21 権利情報データベース
22 更新状況データベース
23 タスクデータベース
30,130,230 受託者システム
31 受託者制御部
32 受託者法律データベース
33 受託者通信部
34 年金特定データベース
40 年金データベース
41 運用データベース
42 仮受入データベース
411 更新状況データベース
211 代理人制御部
212 年金特定データベース
213 代理人法律データベース
214 代理人通信部
220 管理データベース
221 権利情報データベース
222 更新状況データベース
223 タスクデータベース