(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022041979
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】紡績機械
(51)【国際特許分類】
H02J 1/14 20060101AFI20220304BHJP
H02J 1/10 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
H02J1/14
H02J1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021140312
(22)【出願日】2021-08-30
(31)【優先権主張番号】20193600
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20209579
(32)【優先日】2020-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】590005597
【氏名又は名称】マシーネンファブリク リーター アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Maschinenfabrik Rieter AG
【住所又は居所原語表記】Klosterstrasse 20,CH-8406 Winterthur,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ベネディクト インゴルド
(72)【発明者】
【氏名】エリア ファベロ
【テーマコード(参考)】
5G165
【Fターム(参考)】
5G165CA04
5G165CA05
5G165DA01
5G165DA02
5G165DA06
5G165EA06
5G165FA01
5G165GA04
5G165HA01
5G165JA04
5G165JA09
5G165LA01
5G165MA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】すべての負荷に均一な電圧を供給する紡績機械を提供する。
【解決手段】紡績機械は、電気的な駆動部、特に直流モータ10、11、19を備える複数の作業ユニットと、電圧U1及びU2の少なくとも2つの直流電圧源2.1、2.2とを有しており、少なくとも2つの直流電圧源は夫々直流電圧ネットワークN1及びN2を構成している。複数の駆動部のうち、特に直流モータ19の電流消費部は、選択的に第1の直流電圧バー3と第3の直流電圧バー7とに、又は第2の直流電圧バー4と第3の直流電圧バー7とに接続されている。2つの直流電圧ネットワークN1及びN2は、2つの直流電圧ネットワークN1及びN2における電圧の差を補償するために、電圧補償装置18に作用接続されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
・電気的な駆動部、特に直流モータ(10,11,19)を備える複数の作業ユニットと、
・電圧U1およびU2の少なくとも2つの直流電圧源(2.1,2.2)と、
を有し、
・少なくとも2つの直流電圧源(2.1,2.2)はそれぞれ直流電圧ネットワークN1およびN2を構成しており、
・少なくとも2つの前記直流電圧源(2.1,2.2)に、複数の前記駆動部、特に前記直流モータ(10,11,19)に給電する、少なくとも3つの直流電圧バー(3,4,7)が、
・第1の前記直流電圧バー(3)が第1の前記直流電圧源(2.1)と作用接続されており、
・第2の前記直流電圧バー(4)が第2の前記直流電圧源(2.2)と作用接続されており、
・第3の前記直流電圧バー(7)が前記第1の直流電圧源(2.1)および前記第2の直流電圧源(2.2)と作用接続されている
ように接続されており、
・複数の前記駆動部、特に前記直流モータ(19)の電流消費部は選択的に、前記第1の直流電圧バー(3)と前記第3の直流電圧バー(7)とに、または前記第2の直流電圧バー(4)と前記第3の直流電圧バー(7)とに接続され、
2つの前記直流電圧ネットワークN1およびN2は、前記2つの直流電圧ネットワークN1およびN2における電圧の差を補償するために、電圧補償装置(18)と作用接続されている、
紡績機械。
【請求項2】
電圧補償装置(18)として、各前記直流電圧ネットワークN1およびN2に周波数変換器(25,26)が割り当てられており、前記周波数変換器(25,26)は出力側で絶縁変圧器(27)と接続されている、請求項1記載の紡績機械。
【請求項3】
前記紡績機械は両側に作業ユニットを有しており、それぞれ1つの直流電圧ネットワークN1もしくはN2が一方の側(22,23)の前記作業ユニットに割り当てられている、請求項1から2までのいずれか1項または複数項記載の紡績機械。
【請求項4】
前記紡績機械は複数のセクション(24‘~24n)に分けられており、前記セクション(24‘~24n)にはそれぞれ複数の作業ユニットが配置されており、それぞれ1つの直流電圧ネットワークN1もしくはN2が交互に、隣接する前記セクション(24‘~24n)に割り当てられている、請求項1から3までのいずれか1項または複数項記載の紡績機械。
【請求項5】
前記紡績機械は両側に作業ユニットを有しており、かつ前記複数のセクション(24‘~24n)に分けられており、前記セクション(24‘~24n)にはそれぞれ複数の作業ユニットが配置されており、それぞれ1つの直流電圧ネットワークN1もしくはN2が交互に、対向する前記側(22,23)および隣接する前記セクション(24‘~24n)に割り当てられている、請求項1から4までのいずれか1項または複数項記載の紡績機械。
【請求項6】
さらなる駆動部、特に直流モータ(10,11)が、前記第1の直流電圧バー(3)と前記第2の直流電圧バー(4)とに接続されている、請求項1から5までのいずれか1項または複数項記載の紡績機械。
【請求項7】
前記直流電圧バー(3,4,7)のうちの2つの前記直流電圧バーに、少なくとも1つの交流モータを有する少なくとも1つのインバータおよび/または直流電圧変圧器(15)が、さらなる電圧U4用に配置されている、請求項1から6までのいずれか1項または複数項記載の紡績機械。
【請求項8】
前記絶縁変圧器(27)は高周波変圧器である、請求項1から7までのいずれか1項または複数項記載の紡績機械。
【請求項9】
電圧ピークを制限するために、前記周波数変換器(25,26)は制動抵抗器(28,29)を有している、請求項1から8までのいずれか1項または複数項記載の紡績機械。
【請求項10】
前記直流電圧ネットワークN1およびN2の基本レベルを維持するために、前記2つの直流電圧ネットワークN1およびN2が対称抵抗器(8,9)を有している、請求項1から9までのいずれか1項または複数項記載の紡績機械。
【請求項11】
前記2つの直流電圧ネットワークN1およびN2は反対の極性である、請求項1から10までのいずれか1項または複数項記載の紡績機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的な駆動部を有する複数の作業ユニットを備える紡績機械に関する。電気的な駆動部、特に直流モータは、電圧U1およびU2の少なくとも2つの直流電圧源を有しており、これらはそれぞれ直流電圧ネットワークN1およびN2を構成している。ここで、少なくとも2つの直流電圧源に、複数の駆動部、特に直流モータに給電する、少なくとも3つの直流電圧バーが次のように接続されている。すなわち、第1の直流電圧バーが第1の直流電圧源と電気的に作用接続されており、第2の直流電圧バーが第2の直流電圧源と電気的に作用接続されており、第3の直流電圧バーが第1の直流電圧源および第2の直流電圧源と電気的に作用接続されているように接続されている。ここで複数の駆動部、特に直流モータの電流消費部は選択的に、第1の直流電圧バーと第3の直流電圧バーとに、または第2の直流電圧バーと第3の直流電圧バーとに接続されている。
【0002】
背景技術
欧州特許出願公開第1927686号明細書から、直流電圧源および交流電圧源を備える電気モータ用の電気的な駆動部および電流供給装置を備える紡績機械が開示されている。少なくとも1つの変圧器が、交流電圧ネットワークに接続されている。紡績機械内では、多くの、極めて異なる構成の電気モータが使用されているので、電流供給部の構成時には、個々のモータの個別の要求および機械によるエネルギ分配が特に重視されなくてはならない。したがって、ここでは、モータのタイプおよび機械内のモータの位置に応じて、理想的な電圧比率が得られるように、紡績機械内でエネルギ供給が行われるべきであることが提案される。このために、2つの変圧器二次巻線に2つの整流器群が接続されており、これらはそれぞれ2つの直流電圧バーに接続されており、ここで直流電圧バーは2つの整流器群に共通しており、したがって3つの直流電圧バーが設けられている。これらのバーの間には、異なる直流電圧、特に270ボルトのDC(ボルト 直流)と、540ボルトのDCとが存在している。記載されたエネルギ供給のコンセプトによって、紡績機械内のモータに異なる電圧を供給し、これを良好な効率で動作させることが可能になる。したがって、紡績機械内の種々の機能キャリア、たとえばドラフト装置シャフトまたはリングフレームリフティング駆動部の駆動のためのモータに、特に540ボルトのDCを供給することが可能になる。たとえば、スピンドルの駆動用に設けられている別のモータを、特に、270ボルトのDCで動作させることができる。他方で、他のモータは、これに対して、たとえば400ボルトのDCで交流電圧ネットワークに接続されている。このようなモータは、たとえばドッファまたは吸引部を動かす。上位の制御部は24ボルトのDCで、電圧変換器を介して、540ボルトの直流電圧ネットワークに接続されている。
【0003】
ネットワークの故障または大幅な電圧降下が発生した場合、相応の回転数の目標値の低減がバスを介して、すべてのドライバに伝達される。ここで、このバスに接続されているモータは発電機モードになり、ここで、回転数低減の結果、回転質量内に蓄積されているエネルギが電気的なエネルギに変換され、共通の中間回路内に存在しているすべての負荷に供給される。
【0004】
荷重が非対称の場合、すなわち、たとえば個々のスピンドルが動作されない場合または電圧降下が存在する場合に問題が生じる。電圧が低くなる場合には、電流が上昇し、電流供給が不十分になる危険が生じる。これは阻止されるべきである。
【0005】
発明の開示
したがって、本発明の課題は、すべての負荷に均一な電圧を供給することである。
【0006】
上述の課題は、請求項1の特徴部分の構成を有する紡績機械によって解決される。
【0007】
本発明では、紡績機械は、電気的な駆動部、特に直流モータを備える複数の作業ユニットを有している。電圧U1およびU2の少なくとも2つの直流電圧源はそれぞれ直流電圧ネットワークN1およびN2を構成している。少なくとも2つの直流電圧源に、複数の駆動部、特に直流モータに給電する、少なくとも3つの直流電圧バーが接続されている。第1の直流電圧バーが第1の直流電圧源と電気的に作用接続されており、第2の直流電圧バーが第2の直流電圧源と電気的に作用接続されており、第3の直流電圧バーが第1の直流電圧源および第2の直流電圧源と電気的に作用接続されている。2つの直流電圧ネットワークN1およびN2は有利には異なる極性を有しており、直流電圧ネットワークN1には、たとえば+270ボルトを有する電圧U1が存在し、直流電圧ネットワークN2には、-270ボルトを有する電圧U2が存在する。複数の駆動部、特に直流モータの電流消費部は選択的に、第1の直流電圧バーと第3の直流電圧バーとに、または第2の直流電圧バーと第3の直流電圧バーとに接続されている。2つの直流電圧ネットワークN1およびN2は、2つの直流電圧ネットワークN1およびN2における電圧の差を補償するために、電圧補償装置と電気的に作用接続されている。電圧補償装置によって、直流電圧ネットワークにおける電圧降下の場合にも、または個々の負荷、たとえばスピンドルが、メンテナンス等で動作されない場合にも、2つの直流電圧ネットワークN1およびN2において、実質的に同じ値の電圧が印加される。電圧補償装置はこれによって、より低い電圧を有する直流電圧ネットワークにおける電圧を高める。これは、より高い電圧を有する別の直流電圧ネットワークからエネルギを取り出すことによって行われる。エネルギのシフトは、2つの電圧レベルの差が約0になるまで行われる。2つの直流電圧ネットワークN1およびN2の電圧の総計は実質的に一定のままである。したがって、直流電圧ネットワークN1およびN2の非対称の荷重は生じない。
【0008】
電圧補償装置として、各直流電圧ネットワークN1およびN2に周波数変換器が割り当てられているのは特に有利であり、この周波数変換器は出力側で絶縁変圧器と接続されている。周波数変換器および絶縁変圧器の両方によって、2つの直流電圧ネットワークN1およびN2における、等しくない電圧U1およびU2が補償される。周波数変換器の各出力側は、出力側で、モータ線路の代わりに絶縁変圧器に接続されている。これによって、2つの電圧U1およびU2を補償することができる。2つの電圧のうちの1つが過度に高くなる場合、電圧補償装置は、エネルギをU1からU2へ、もしくはU2からU1へシフトさせる。これによって、ある意味で、同じ電圧を有する、浮いている中間点が2つの中間回路において生成される。周波数変換器の1つに電圧U1が印加されており、他方で別の周波数変換器に電圧U2が印加されている。電圧補償装置は、差がなくなるように調整を行う。高い方の電圧が下げられ、他方で低い方の電圧が上げられる。高い方の電圧が下げられ、他方で低い方の電圧が同じ値ぶん上げられる。これによって、総計U1、U2が一定に保たれる。
【0009】
さらに、紡績機械が両側に、直流モータを有する作業ユニットを有しており、それぞれ1つの直流電圧ネットワークN1もしくはN2が一方の側の作業ユニットもしくは駆動部、特に直流モータに割り当てられている場合に利点が得られる。両方の長手方向側に、駆動部、特に直流モータを備える作業ユニットが配置されている紡績機械は、紡績工場における自身の場所の必要性に関して特に効果を有している。リング紡績機は通常、両側の紡績機械として構成されている。しかし、別の紡績機械、たとえば、片側だけの紡績機械として構成されている空気紡績機も多く存在している。ここで本発明に相応に設けられている、紡績機械の2つの直流電圧ネットワークは、本発明の特に有利な構成において次のように配置されていてよい。すなわち、直流電圧ネットワークN1が一方の機械側での作業ユニットに割り当てられており、他方で直流電圧ネットワークN2が他方の機械側の作業ユニットに割り当てられているように配置されていてよい。これによってすでに電圧補償が2つの機械側の間で行われる。これは、2つの機械側で異なる糸が紡績され、相応に、異なるメンテナンスサイクル、たとえばパッケージ交換が実行される場合に有利であり得る。したがって、2つの機械側の荷重は時間によって異なっている。したがって、2つの直流電圧ネットワークN1およびN2の補償は、2つの直流電圧ネットワークN1およびN2の均等性に関して利点をもたらす。
【0010】
紡績機械が複数のセクションに分けられているのは特に有利である。これらのセクションにはそれぞれ複数の作業ユニットが配置されており、それぞれ1つの直流電圧ネットワークN1もしくはN2が交互に、隣接するセクションに割り当てられている。既知の紡績機械の多くは、複数のセクションに分けられている。ここで複数の作業ユニットは、紡績機械での自身の配置に関しては統合されている。電流供給および制御に関しても、各セクションのこのような作業ユニットは共同で動作され得る。紡績機械はしばしば、多数のセクションを有している。各セクションには、たとえば24個の作業ユニットが、機械の各側で統合されている。本発明の有利な構成に相応に、直流電圧ネットワークN1およびN2が交互に、隣接するセクションに供される場合、紡績機械の長手方向に沿って交互に、正の直流電圧および負の直流電圧U1もしくはU2が各セクションの作業ユニットのモータに印加されている。したがって紡績機械は長手方向において、電圧供給に関して分配されている。したがって、これらのセクションの個々の作業ユニットにおけるモータの不均衡な動作を、電圧供給に関して補償することができる。
【0011】
紡績機械が両側に作業ユニットを有しており、かつ複数のセクションに分けられているのも有利である。これらのセクションにはそれぞれ複数の作業ユニットが配置されており、それぞれ1つの直流電圧ネットワークN1もしくはN2が交互に、対向する側および隣接するセクションに割り当てられている。このような極めて特に有利な構成では、隣接するセクションにおいて交替だけが行われるのではなく、むしろ1つのセクション内で、両方の機械側で、対向する作業ユニットも、異なる直流電圧ネットワークN1およびN2に接続されている。これによって、個々の作業ユニットにおいて発生し得る異なった電圧がより良好に補償される。これによって紡績機械は、自身の電圧供給に関してさらに補償されて、動作することができる。
【0012】
さらなる駆動部、特に直流モータが、第1の直流電圧バーと第2の直流電圧バーとに接続されているのは特に有利である。第1の直流電圧バーおよび第2の直流電圧バーにさらなる駆動部が接続されていることによって、駆動部、特に直流モータは紡績機械で、さらなる電圧U3で動作可能である。これによってモータの最適な電圧供給を、紡績機械における自身のタスクに応じて実現することができる。たとえば、第1および第3の直流電圧バーまたは第2および第3の直流電圧バーをタップする同じモータを270ボルトで動作させることができるが、第1および第2の直流電圧バーに接続されている、これらのさらなる駆動部はU3=540ボルトで動作させられるべきである。比較的高い電圧で動作させられるこれらの駆動部、特に直流モータは、たとえばドラフト装置およびリフティング装置に使用可能であり、他方でモータを、比較的低い電圧で、スピンドル動作のために最適に動作させることができる。
【0013】
同様に、これらの直流電圧バーのうちの2つの直流電圧バーに、少なくとも1つの交流モータを有する少なくとも1つのインバータおよび/または直流電圧変圧器が、さらなる電圧U4用に配置されているのは有利である。これによって電圧供給は、直流モータへの供給だけでなく、交流モータへの交流電圧の供給も可能にする。択一的または付加的に、さらなる直流電圧用の直流電圧変圧器が設けられていてよい。これは、2つの直流電圧バーでのインバータおよび/または直流電圧変圧器の有利な配置によって可能である。ここで、インバータは、たとえば、スピンドル交換のためのドッファのため、または紡績機械の吸引部のために使用可能である。直流電圧変圧器のさらなる直流電圧は、たとえば24ボルトであり、機械の制御部の給電に用いられる。
【0014】
絶縁変圧器が高周波変圧器であるのは特に有利である。高周波変圧器は有利には、高い変換効率と小さいサイズとを有している。
【0015】
電圧ピークを制限するために、周波数変換器が制動抵抗器を有しているのも有利である。制動抵抗器を介して、直流電圧ネットワークN1もしくはN2からの過度の電圧が低下する。これによって、システム全体の安全性を保証することができる。
【0016】
さらに、直流電圧ネットワークN1およびN2の基本レベルを維持するために、2つの直流電圧ネットワークN1およびN2が対称抵抗器を有しているのは有利である。たとえば機械のスイッチオンの際に中間回路が流されないように、対称抵抗器は、基本レベルの補償として設けられている。これによって電圧ピークが抑えられる。3つの直流電圧バーのうちのそれぞれ2つの間に、電解コンデンサが直列で配置されており、これによって電圧が分配される。電圧の一様な分配を保証するために、これらの対称抵抗器は電解コンデンサに対して並列接続されており、かつ同様に直列接続されている。
【0017】
同様に、2つの直流電圧ネットワークN1およびN2が反対の極性であるのは有利である。機械の電圧供給のために、正の電圧、たとえばU1=+270ボルトと、負の電圧、たとえばU2=-270ボルトとが相互に交替する。これによって、たとえば1つの機械側の故障の際に、それにもかかわらず、平均電圧が変化せず、浮いている中間点を維持することができる。
【0018】
紡績機械は、上述の記載にしたがって構成されており、ここで、上述の特徴は個々にまたは任意の組み合わせで存在していてよい。
【0019】
上述の直流モータの代わりに、または上述の直流モータに加えて、インバータによって、直流電圧バーに接続されている交流モータも使用可能である。
【0020】
本発明の別の利点は、以降の実施例に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】紡績機械の本発明の電圧供給の概略図を示す図である。
【
図3】紡績機械における択一的な電圧分布の概略図を示す図である。
【
図4】紡績機械における別の択一的な電圧分布の概略図を示す図である。
【0022】
発明の実施方法
示された代替的な実施例の以降の説明では、同じ参照番号が、他の図に示されている実施例と比較して、それらの構成および/または作用様式が同じである特徴に使用される。そうでないことが説明されていない限り、それらの構成および/または作用様式は、他で説明されている特徴の構成および/または作用様式に対応する。見やすくするために、同様の構成要素には部分的に、散発的にしか参照番号が付けられていない。
【0023】
図1には、紡績機械、たとえばリング紡績機、空気紡績機またはロータ紡績機の本発明の電圧供給の概略図が示されている。
【0024】
紡績機械は、それぞれたとえば400ボルトを有する一次三相交流電圧源1に接続されている。蓄積ユニット2によって、540ボルトの直流電圧U3が直流電圧ネットワークN3において生成される。蓄積ユニット2では、出力側で、第1の直流電圧源2.1に、第1の直流電圧バー3が配置されており、第2の直流電圧源2.2に第2の直流電圧バー4が配置されている。2つの直流電圧バー3と4との間に、2つの電解コンデンサ5と6とが直列接続されている。2つの電解コンデンサ5と6との間の第3の直流電圧バー7によって、2つの直流電圧バー3と4との間で電圧U3が分配される。これによって、第1の直流電圧ネットワークN1において、第1の直流電圧バー3と第3の直流電圧バー7との間に、電圧U1=+270ボルトが印加される。第2の直流電圧バー4と第3の直流電圧バー7との間でも、同様に、電圧が、ここでは第2の直流電圧ネットワークN2において、U2=-270ボルトで存在している。これら2つの270ボルトの電圧が、それらの値に関してほぼ同じであり、等しくない荷重が存在している場合でも2つの直流電圧ネットワークN1およびN2において不均一な電圧は存在しておらず、したがって、同じ基本レベルが維持可能であることが保証されるべきである。したがって、2つの電解コンデンサ5と6とに対して並列に、同様に直列接続されている2つの対称抵抗器8および9が配置されている。
【0025】
第1の直流電圧バー3と第2の直流電圧バー4との間に、540ボルトの第3の直流電圧ネットワークN3が接続されている。このような直流電圧ネットワークN3には、負荷が接続されており、これらの負荷の効率は、電圧が高くなるほど、低くなる。このために、たとえば直流モータ10が、紡績機械のドラフト装置用に、さらにはリングレールまたはスピンドルレールのリフティング装置用に設けられている。さらなる直流モータ11が、たとえば、機械の吸引装置のために使用可能である。これらのモータはそれぞれ、安全装置12および13を介して保護されている。直流電圧ネットワークN3の過負荷に対するさらなる保護はサーモスタット14によって行われ、これは過度の加熱の際に、直流電圧ネットワークN3における2つの直流電圧バー3および4を電圧供給から分離させる。
【0026】
直流電圧ネットワークN3の2つの直流電圧バー3および4のさらなる延在部分に、直流電圧変圧器15が配置されている。直流電圧変圧器15は、540ボルトの直流電圧を24ボルトの直流電圧に変換する。このような、より低い24ボルトの直流電圧は、安全装置16を介して、たとえば、機械制御のために使用される。直流電圧変圧器15の代わりに、または直流電圧変圧器15に対して付加的に、インバータが設けられていてもよく、このインバータには交流モータが接続されている。
【0027】
2つの直流電圧ネットワークN1およびN2は、ここでも、サーモスタット17を介して、熱的な過負荷から保護されている。第1の直流電圧ネットワークN1においては、正の電圧U1=+270ボルトが印加されており、第2の直流電圧ネットワークN2においては、負の電圧U2=-270ボルトが存在している。これらの負荷によって異なる負担が存在する場合でも、2つの直流電圧ネットワークN1およびN2を実質的に同じ電圧レベルに保持するために、電圧補償装置18が3つの直流電圧バー3、4および7に接続されている。電圧補償装置18は、
図2に詳細に記載されている。
【0028】
2つの直流電圧ネットワークN1およびN2に、複数の直流モータ19が、紡績機械のスピンドル駆動のために接続されている。直流モータ19に対して付加的または択一的に、インバータによっても、直流電圧バー3、4、7に接続されている交流モータが使用可能である。
【0029】
電圧供給は、接続要素20および直流電圧バス21を介して行われる。直流電圧バス21を用いて、直流モータ19の電圧供給の分配が紡績機械に沿って行われる。紡績機械は2つの側22および23を有している。各側22および23には、複数のセクション24‘~24nが設けられている。スピンドルもしくは直流モータ19は、個々のセクション24‘~24nにグループ分けされている。したがって、たとえば、10個のスピンドルと直流モータ19とが、セクション24,24‘~24n毎に設けられていてよい。
【0030】
図1の概略図から見て取れるように、自身の電圧U1およびU2を備える直流電圧ネットワークN1およびN2が、セクション24‘~セクション24mの機械側22で、交互に割り当てられている。同様に、別の機械側23では、各セクション24‘‘~24nが、交互に、自身の電圧U1およびU2を備える直流電圧ネットワークN1およびN2によって給電される。さらに、相互に対向しているセクション24‘および24‘‘も、セクション24mおよび24nまで、交互に、自身の電圧U1およびU2を備える直流電圧ネットワークN1およびN2に割り当てられている。これは、直流電圧ネットワークN1およびN2のほぼ均一な荷重が行われるという重要な利点を有している。個々の直流モータ19で発生し、電圧降下を生じさせるイベントは往々にして、個々の機械側22または23に割り当てられるべきである。これに相応して、たとえば一方の機械側22または23が故障しているのにもかかわらず、別の機械側22または23によって、均一な、2つの直流電圧ネットワークN1およびN2の能力活用が実現される。これによって、直流電圧ネットワークN1またはN2のうちの1つの直流電圧ネットワークにおける電圧ピークが、ほぼ阻止される。
【0031】
図2は、電圧補償装置18がより詳細に記載された概略図を示している。電圧補償装置18は、2つの直流電圧ネットワークN1およびN2に接続されている。
図1から見て取れるように、正の電圧U1=+270ボルトを備える直流電圧ネットワークN1が、第1の供給電圧バー3と第3の供給電圧バー7との間に存在している。負の電圧U2=-270ボルトを備える第2の直流電圧ネットワークN2が、第2の直流電圧バー4と第3の直流電圧バー7との間に存在している。直流電圧バー3と第2の直流電圧バー4との間に印加される、540ボルトの電圧は、2つのコンデンサ5および6によって相応に分配される。分配された電圧の対称性については、対称抵抗器8および9が考慮する。
【0032】
電圧補償装置18は、2つの周波数変換器25および26を有している。出力側で、2つの周波数変換器25および26は、高周波絶縁変圧器27と接続されている。2つの周波数変換器の過負荷を回避するために、それらにそれぞれ、制動抵抗器28および29が割り当てられている。2つの直流電圧ネットワークN1およびN2の2つの電圧U1およびU2は、これによって補償可能である。2つの電圧U1またはU2のうちの一方の電圧が他方の電圧U2またはU1よりも高い場合、この電圧が下げられ、他方の電圧が上げられる。したがって、2つの電圧の差異がなくなり、これによって紡績機械の極めて安定した動作が可能になる。
【0033】
図3には、紡績機械における択一的な電圧分布の概略図が示されている。
図1による電圧分布では、個々のセクション24‘~24nにおける電圧分布は、直流電圧ネットワークN1およびN2もしくは電圧U1もしくはU2に関して交互であったが、
図3の構成では、電圧分布は、交互に、紡績機械の2つの側22および23の作業ユニットもしくはセクション24‘~24nに割り当てられている。したがって、セクション24‘~24mは、電圧U2=-270ボルトを備える直流電圧ネットワークN2に接続されている。セクション24‘‘~24nは、直流電圧ネットワークN1から、電圧U1=+270ボルトで給電されている。電圧分布のこのような割り当ては、電圧変化を生じさせるであろう、2つの側22および23での異なる負担が予期されることが想定され得る場合に有利であり得る。このような電圧変化は、2つの直流電圧ネットワークN1およびN2に異なって負荷をかけ、電圧補償装置18によって補償されなければならない。
【0034】
図4には、紡績機械における別の択一的な電圧分布の概略図が示されている。ここでは、対向しているセクション24‘~24nは同じ電圧U1もしくはU2を有している。これに相応して、セクション24‘および24‘‘は、電圧U1=+270ボルトを備える直流電圧ネットワークN1に接続されている。隣接するセクション24mおよび24nは、電圧U2=-270ボルトの直流電圧ネットワークN2に接続されている。
図1の電圧分布と同様に、ここでは、個々のセクション24‘~24nにおける交互の電圧分布が生じている。しかし、相互に対向するセクション24‘~24nは同じ直流電圧ネットワークN1もしくはN2に接続されている。これは、
図1の電圧分布と類似の利点を有しているが、紡績機械の配線時の付加的な利点を有し得る。
【0035】
本発明は、図示および記載された実施例に制限されていない。特許請求の範囲における変更は、特徴の組み合わせと同様に可能である。これは、これらの特徴が異なる実施例において図示および記載されている場合でも可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 交流電圧源
2 蓄積ユニット
2.1 第1の直流電圧源
2.2 第2の直流電圧源
3 第1の直流電圧バー
4 第2の直流電圧バー
5 電解コンデンサ
6 電解コンデンサ
7 第3の直流電圧バー
8 対称抵抗器
9 対称抵抗器
10 直流モータ
11 直流モータ
12 安全装置
13 安全装置
14 サーモスタット
15 直流電圧変圧器
16 安全装置
17 サーモスタット
18 電圧補償装置
19 直流モータ
20 接続要素
21 直流電圧バス
22 機械側
23 機械側
24 セクション
25 周波数変換器
26 周波数変換器
27 高周波絶縁変圧器
28 制動抵抗器
29 制動抵抗器
U1 電圧
U2 電圧
U3 電圧
U4 電圧
N1 直流電圧ネットワーク
N2 直流電圧ネットワーク
N3 直流電圧ネットワーク
【外国語明細書】