(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042004
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】光ファイバ融着接続機及び光ファイバの融着接続方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/255 20060101AFI20220304BHJP
【FI】
G02B6/255
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021141507
(22)【出願日】2021-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2020145838
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】菅原 洋
(72)【発明者】
【氏名】横田 耕一
【テーマコード(参考)】
2H036
【Fターム(参考)】
2H036JA01
2H036LA02
2H036LA03
2H036LA08
2H036MA12
2H036MA18
2H036NA16
2H036NA17
2H036NA18
(57)【要約】
【課題】ファイバピッチに応じた融着条件で光ファイバを融着接続することが可能な光ファイバ融着接続機を提供する。
【解決手段】本発明の光ファイバ融着接続機10は、交換可能な溝形成ユニット13と、照明部16と、レンズ17と、カメラ18と、一対の放電電極15と、高電圧発生回路24と、可動ステージ11と、画像処理部21と、融着条件処理部22と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ融着接続機であって、
第1多心光ファイバを構成するとともに複数の第1ガラス部を有する複数の第1単心光ファイバを等間隔に配置する複数の第1位置決め溝と、第2多心光ファイバを構成するとともに複数の第2ガラス部を有する複数の第2単心光ファイバを等間隔に配置する複数の第2位置決め溝とを有する交換可能な溝形成ユニットと、
前記溝形成ユニットに配置された前記複数の第1単心光ファイバ及び前記複数の第2単心光ファイバに光を照射する照明部と、
前記複数の第1ガラス部と、前記複数の第1ガラス部の周辺の領域と、前記複数の第2ガラス部と、前記複数の第2ガラス部の周辺の領域とを通る前記光を集光するレンズと、
前記レンズによって結ばれた像を捉えるカメラと、
前記溝形成ユニットに配置された前記複数の第1単心光ファイバの前記複数の第1ガラス部及び前記複数の第2単心光ファイバの前記複数の第2ガラス部を放電により加熱溶融する一対の放電電極と、
前記一対の放電電極の間に放電を発生させる高電圧発生回路と、
前記複数の第1単心光ファイバを前記第1多心光ファイバの長手方向に移動させ、前記複数の第2単心光ファイバを前記第2多心光ファイバの長手方向に移動させる可動ステージと、
前記カメラによって撮像された画像に基づいて、前記複数の第1単心光ファイバのファイバピッチ及び前記複数の第2単心光ファイバのファイバピッチのうちの少なくとも一方を求める画像処理部と、
求めた前記ファイバピッチに対応する融着条件を選択又は演算により設定する融着条件処理部と、
を備える光ファイバ融着接続機。
【請求項2】
前記画像処理部は、前記画像に基づいて、前記複数の第1単心光ファイバの本数及び前記複数の第2単心光ファイバの本数を判定し、
前記融着条件処理部は、前記複数の第1単心光ファイバのファイバピッチ、前記複数の第2単心光ファイバのファイバピッチ、前記複数の第1単心光ファイバの本数、及び前記複数の第2単心光ファイバの本数に対応する前記融着条件を選択又は演算により設定する、
請求項1に記載の光ファイバ融着接続機。
【請求項3】
前記画像処理部は、前記画像に基づいて、前記複数の第1単心光ファイバのうちの少なくとも一つの直径、又は、前記複数の第2単心光ファイバのうちの少なくとも一つの直径を求め、
前記融着条件処理部は、前記複数の第1単心光ファイバのファイバピッチ及び前記複数の第1単心光ファイバの直径に対応する前記融着条件を選択又は演算により設定する、又は、前記複数の第2単心光ファイバのファイバピッチ及び前記複数の第2単心光ファイバの直径に対応する前記融着条件を選択又は演算により設定する、
請求項1に記載の光ファイバ融着接続機。
【請求項4】
前記画像処理部は、前記画像に基づいて、前記複数の第1単心光ファイバのうちの少なくとも一つの直径と、前記複数の第2単心光ファイバのうちの少なくとも一つの直径とを求め、
前記融着条件処理部は、前記複数の第1単心光ファイバのファイバピッチ、前記複数の第2単心光ファイバのファイバピッチ、前記複数の第1単心光ファイバの直径、及び前記複数の第2単心光ファイバの直径に対応する前記融着条件を選択又は演算により設定する、
請求項1に記載の光ファイバ融着接続機。
【請求項5】
光ファイバ融着接続機を用いて、第1多心光ファイバと第2多心光ファイバとを融着接続する光ファイバの融着接続方法であって、
前記光ファイバ融着接続機は、
前記第1多心光ファイバを構成するとともに複数の第1ガラス部を有する複数の第1単心光ファイバを等間隔に配置する複数の第1位置決め溝と、前記第2多心光ファイバを構成するとともに複数の第2ガラス部を有する複数の第2単心光ファイバを等間隔に配置する複数の第2位置決め溝とを有する交換可能な溝形成ユニットと、
前記溝形成ユニットに配置された前記複数の第1単心光ファイバ及び前記複数の第2単心光ファイバに光を照射する照明部と、
前記複数の第1ガラス部と、前記複数の第1ガラス部の周辺の領域と、前記複数の第2ガラス部と、前記複数の第2ガラス部の周辺の領域とを通る前記光を集光するレンズと、
前記レンズによって結ばれた像を捉えるカメラと、
前記溝形成ユニットに配置された前記複数の第1単心光ファイバの前記複数の第1ガラス部及び前記複数の第2単心光ファイバの前記複数の第2ガラス部を放電により加熱溶融する一対の放電電極と、
前記一対の放電電極の間に放電を発生させる高電圧発生回路と、
前記複数の第1単心光ファイバを前記第1多心光ファイバの長手方向に移動させ、前記複数の第2単心光ファイバを前記第2多心光ファイバの長手方向に移動させる可動ステージと、
を備え、
前記融着接続方法は、
前記カメラによって撮像された画像に基づいて、前記複数の第1単心光ファイバのファイバピッチ及び前記複数の第2単心光ファイバのファイバピッチを求め、
求めた前記ファイバピッチに対応する融着条件を選択又は演算により設定する、
光ファイバの融着接続方法。
【請求項6】
前記第1多心光ファイバと前記第2多心光ファイバとを融着接続する前に、前記融着条件を設定する、
請求項5に記載の光ファイバの融着接続方法。
【請求項7】
前記画像に基づいて、前記複数の第1単心光ファイバの本数及び前記複数の第2単心光ファイバの本数を判定し、
前記複数の第1単心光ファイバのファイバピッチ、前記複数の第2単心光ファイバのファイバピッチ、前記複数の第1単心光ファイバの本数、及び前記複数の第2単心光ファイバの本数に対応する前記融着条件を選択又は演算により設定する、
請求項5又は請求項6に記載の光ファイバの融着接続方法。
【請求項8】
前記画像に基づいて、前記複数の第1単心光ファイバのうちの少なくとも一つの直径、又は、前記複数の第2単心光ファイバのうちの少なくとも一つの直径を求め、
前記複数の第1単心光ファイバのファイバピッチ及び前記複数の第1単心光ファイバの直径に対応する前記融着条件を選択又は演算により設定する、又は、前記複数の第2単心光ファイバのファイバピッチ及び前記複数の第2単心光ファイバの直径に対応する前記融着条件を選択又は演算により設定する、
請求項5又は請求項6に記載の光ファイバの融着接続方法。
【請求項9】
前記画像に基づいて、前記複数の第1単心光ファイバのうちの少なくとも一つの直径と、前記複数の第2単心光ファイバのうちの少なくとも一つの直径とを求め、
前記複数の第1単心光ファイバのファイバピッチ、前記複数の第2単心光ファイバのファイバピッチ、前記複数の第1単心光ファイバの直径、及び前記複数の第2単心光ファイバの直径に対応する前記融着条件を選択又は演算により設定する、
請求項5又は請求項6に記載の光ファイバの融着接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ融着接続機及び光ファイバの融着接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2には、互いに対向する一対の単心光ファイバの端部が互いに接続するように、一方のファイバ群を構成する複数の単心光ファイバ(多心光ファイバ)の端部と他方のファイバ群を構成する複数の単心光ファイバ(多心光ファイバ)の端部とを放電加熱により融着接続する光ファイバ融着接続機が開示されている。この光ファイバ融着接続機においては、単心光ファイバの本数に応じて融着条件(例えば、電圧や電流の大きさ)を変更する方法が開示されている。また、特許文献3には、単心光ファイバの直径に応じて融着条件を変更する光ファイバの融着接続方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-287139号公報
【特許文献2】特開平5-119226号公報
【特許文献3】特許第4429540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来から広く用いられている多心光ファイバにおいては、多心光ファイバの種類が少なく、互いに隣り合う単心光ファイバの中心間の距離(以下、ファイバピッチと呼ぶ)の種類も少なかった。
近年では、様々な仕様を有する多心光ファイバが使われるようになり、ファイバピッチの種類も増えている。例えば、ファイバピッチが全て同一ではなく、異なる複数種類のファイバピッチを有する多心光ファイバも使われている。
【0005】
しかしながら、特許文献1~3の光ファイバ融着接続機や融着接続方法では、単心光ファイバの本数、直径のみに応じて融着条件を設定するため、適切な融着条件で一対の多心光ファイバを融着接続することができない場合がある、という問題がある。融着条件が適切でない場合、融着接続した後の多心光ファイバにおける接続損失が大きくなってしまう。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、ファイバピッチに応じた融着条件で光ファイバを融着接続することが可能な光ファイバ融着接続機及び光ファイバの融着接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一態様に係る光ファイバ融着接続機は、第1多心光ファイバを構成するとともに複数の第1ガラス部を有する複数の第1単心光ファイバを等間隔に配置する複数の第1位置決め溝と、第2多心光ファイバを構成するとともに複数の第2ガラス部を有する複数の第2単心光ファイバを等間隔に配置する複数の第2位置決め溝とを有する交換可能な溝形成ユニットと、前記溝形成ユニットに配置された前記複数の第1単心光ファイバ及び前記複数の第2単心光ファイバに光を照射する照明部と、前記複数の第1ガラス部と、前記複数の第1ガラス部の周辺の領域と、前記複数の第2ガラス部と、前記複数の第2ガラス部の周辺の領域とを通る前記光を集光するレンズと、前記レンズによって結ばれた像を捉えるカメラと、前記溝形成ユニットに配置された前記複数の第1単心光ファイバの前記複数の第1ガラス部及び前記複数の第2単心光ファイバの前記複数の第2ガラス部を放電により加熱溶融する一対の放電電極と、前記一対の放電電極の間に放電を発生させる高電圧発生回路と、前記複数の第1単心光ファイバを前記第1多心光ファイバの長手方向に移動させ、前記複数の第2単心光ファイバを前記第2多心光ファイバの長手方向に移動させる可動ステージと、前記カメラによって撮像された画像に基づいて、前記複数の第1単心光ファイバのファイバピッチ及び前記複数の第2単心光ファイバのファイバピッチのうちの少なくとも一方を求める画像処理部と、求めた前記ファイバピッチに対応する融着条件を選択又は演算により設定する融着条件処理部と、を備える。
【0008】
上記の光ファイバ融着接続機では、融着条件処理部が、画像処理部によって求めたファイバピッチに対応する融着条件を設定する。これにより、ファイバピッチに応じた融着条件で、第1多心光ファイバを構成する複数の第1単心光ファイバと、第2多心光ファイバを構成する複数の第2単心光ファイバとを、一対一で対応するように、融着接続することができる。
【0009】
本発明の第一態様に係る光ファイバ融着接続機においては、前記画像処理部は、前記画像に基づいて、前記複数の第1単心光ファイバの本数及び前記複数の第2単心光ファイバの本数を判定し、前記融着条件処理部は、前記複数の第1単心光ファイバのファイバピッチ、前記複数の第2単心光ファイバのファイバピッチ、前記複数の第1単心光ファイバの本数、及び前記複数の第2単心光ファイバの本数に対応する前記融着条件を選択又は演算により設定してもよい。
【0010】
本発明の第一態様に係る光ファイバ融着接続機においては、前記画像処理部は、前記画像に基づいて、前記複数の第1単心光ファイバのうちの少なくとも一つの直径、又は、前記複数の第2単心光ファイバのうちの少なくとも一つの直径を求め、前記融着条件処理部は、前記複数の第1単心光ファイバのファイバピッチ及び前記複数の第1単心光ファイバの直径に対応する前記融着条件を選択又は演算により設定する、又は、前記複数の第2単心光ファイバのファイバピッチ及び前記複数の第2単心光ファイバの直径に対応する前記融着条件を選択又は演算により設定してもよい。
【0011】
本発明の第一態様に係る光ファイバ融着接続機においては、前記画像処理部は、前記画像に基づいて、前記複数の第1単心光ファイバのうちの少なくとも一つの直径と、前記複数の第2単心光ファイバのうちの少なくとも一つの直径とを求め、前記融着条件処理部は、前記複数の第1単心光ファイバのファイバピッチ、前記複数の第2単心光ファイバのファイバピッチ、前記複数の第1単心光ファイバの直径、及び前記複数の第2単心光ファイバの直径に対応する前記融着条件を選択又は演算により設定してもよい。
【0012】
本発明の第二態様に係る光ファイバの融着接続方法は、光ファイバ融着接続機を用いて、第1多心光ファイバと第2多心光ファイバとを融着接続する光ファイバの融着接続方法である。前記光ファイバ融着接続機は、前記第1多心光ファイバを構成するとともに複数の第1ガラス部を有する複数の第1単心光ファイバを等間隔に配置する複数の第1位置決め溝と、前記第2多心光ファイバを構成するとともに複数の第2ガラス部を有する複数の第2単心光ファイバを等間隔に配置する複数の第2位置決め溝とを有する交換可能な溝形成ユニットと、前記溝形成ユニットに配置された前記複数の第1単心光ファイバ及び前記複数の第2単心光ファイバに光を照射する照明部と、前記複数の第1ガラス部と、前記複数の第1ガラス部の周辺の領域と、前記複数の第2ガラス部と、前記複数の第2ガラス部の周辺の領域とを通る前記光を集光するレンズと、前記レンズによって結ばれた像を捉えるカメラと、前記溝形成ユニットに配置された前記複数の第1単心光ファイバの前記複数の第1ガラス部及び前記複数の第2単心光ファイバの前記複数の第2ガラス部を放電により加熱溶融する一対の放電電極と、前記一対の放電電極の間に放電を発生させる高電圧発生回路と、前記複数の第1単心光ファイバを前記第1多心光ファイバの長手方向に移動させ、前記複数の第2単心光ファイバを前記第2多心光ファイバの長手方向に移動させる可動ステージと、を備え、前記融着接続方法は、前記カメラによって撮像された画像に基づいて、前記複数の第1単心光ファイバのファイバピッチ及び前記複数の第2単心光ファイバのファイバピッチを求め、求めた前記ファイバピッチに対応する融着条件を選択又は演算により設定する。
【0013】
上記の光ファイバの融着接続方法では、カメラで撮像された画像に基づいて求めたファイバピッチに対応する融着条件を設定する。これにより、ファイバピッチに応じた融着条件で、第1多心光ファイバを構成する複数の第1単心光ファイバと、第2多心光ファイバを構成する複数の第2単心光ファイバとを、一対一で対応するように、融着接続することができる。
【0014】
本発明の第二態様に係る光ファイバの融着接続方法においては、前記第1多心光ファイバと前記第2多心光ファイバとを融着接続する前に、前記融着条件を設定してもよい。
【0015】
本発明の第二態様に係る光ファイバの融着接続方法においては、前記画像に基づいて、前記複数の第1単心光ファイバの本数及び前記複数の第2単心光ファイバの本数を判定し、前記複数の第1単心光ファイバのファイバピッチ、前記複数の第2単心光ファイバのファイバピッチ、前記複数の第1単心光ファイバの本数、及び前記複数の第2単心光ファイバの本数に対応する前記融着条件を選択又は演算により設定してもよい。
【0016】
本発明の第二態様に係る光ファイバの融着接続方法においては、前記画像に基づいて、前記複数の第1単心光ファイバのうちの少なくとも一つの直径、又は、前記複数の第2単心光ファイバのうちの少なくとも一つの直径を求め、前記複数の第1単心光ファイバのファイバピッチ及び前記複数の第1単心光ファイバの直径に対応する前記融着条件を選択又は演算により設定する、又は、前記複数の第2単心光ファイバのファイバピッチ及び前記複数の第2単心光ファイバの直径に対応する前記融着条件を選択又は演算により設定してもよい。
【0017】
本発明の第二態様に係る光ファイバの融着接続方法においては、前記画像に基づいて、前記複数の第1単心光ファイバのうちの少なくとも一つの直径と、前記複数の第2単心光ファイバのうちの少なくとも一つの直径とを求め、前記複数の第1単心光ファイバのファイバピッチ、前記複数の第2単心光ファイバのファイバピッチ、前記複数の第1単心光ファイバの直径、及び前記複数の第2単心光ファイバの直径に対応する前記融着条件を選択又は演算により設定してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ファイバピッチに応じた融着条件で、第1多心光ファイバを構成する複数の第1単心光ファイバと、第2多心光ファイバを構成する複数の第2単心光ファイバとを、一対一で対応するように、融着接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第一実施形態に係る光ファイバ融着接続機を前後方向から見た図であって、光ファイバ融着接続機を示す概略断面図である。
【
図2A】第一実施形態に係る光ファイバ融着接続機を左右方向から見た図であって、光ファイバ融着接続機を示す概略断面図である。
【
図2B】第一実施形態に係る光ファイバ融着接続機の要部を示す図であって、
図2Aの符号Eで示された部位を拡大して示す概略断面図である。
【
図3】
図1及び
図2Aに示す光ファイバ融着接続機が備える溝形成ユニットを上方から見た図であって、溝形成ユニットを示す平面図である。
【
図4】
図3に示す溝形成ユニットに一対の放電電極及び一対の多心光ファイバのガラス部を配置した状態を示す図である。
【
図5】第一実施形態に係る光ファイバ融着接続機の機能を説明するブロック図である。
【
図6】
図2A及び
図5に示す光ファイバ融着接続機が備えるカメラによって撮像された画像の一例を示す図である。
【
図7】
図6に示す画像の線分L1における輝度の分布を示すグラフである。
【
図8】第一実施形態に係る光ファイバ融着接続機において、ファイバピッチと放電強度との関係を表すテーブルの一例を示す図である。
【
図9】ファイバピッチが大きい場合における複数の単心光ファイバの位置と、一対の放電電極の間で生じた放電による温度領域の分布との関係の第一例を示す図である。
【
図10】第一例よりもファイバピッチを小さくした場合における複数の単心光ファイバの位置と、一対の放電電極の間で生じた放電による温度領域の分布との関係の第二例を示す図である。
【
図11】第二実施形態に係る光ファイバ融着接続機の機能を説明するブロック図である。
【
図12】第二実施形態に係る光ファイバ融着接続機において、ファイバピッチと融着条件との関係を表すテーブルの一例を示す図である。
【
図13】他の実施形態に係る光ファイバ融着接続機において、ファイバピッチ、単心光ファイバの本数、及び放電強度の関係を表すテーブルの一例を示す図である。
【
図14】他の実施形態に係る光ファイバ融着接続機において、ファイバピッチ、単心光ファイバの直径、及び放電強度の関係を表すテーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第一実施形態>
以下、本発明の第一実施形態に係る光ファイバ融着接続機について、
図1~10を参照して説明する。
図1,
図2A,及び
図2Bに示す第一実施形態の光ファイバ融着接続機10は、2つの多心光ファイバ(第1多心光ファイバ及び第2多心光ファイバ)を融着接続する構成を有する。具体的に、光ファイバ融着接続機10は、第1多心光ファイバを構成する複数の第1単心光ファイバにおける1本の第1単心光ファイバと、第2多心光ファイバを構成する複数の第2単心光ファイバにおける1本の第2単心光ファイバとを対応して融着接続する。これにより、光ファイバ融着接続機10は、第1多心光ファイバを構成する複数の第1単心光ファイバと、第2多心光ファイバを構成する複数の第2単心光ファイバとを融着接続させる構成を有する。
【0021】
ここで、「1本の第1単心光ファイバと1本の第2単心光ファイバとが対応して融着接続する」とは、融着接続される前においては、1本の第1単心光ファイバと1本の第2単心光ファイバとが互いに対向しており、この状態で、1本の第1単心光ファイバと1本の第2単心光ファイバとが融着接続されることを意味する。
また、複数の第1単心光ファイバは、第1多心光ファイバであり、第1ファイバ群と称することができる。複数の第2単心光ファイバは、第2多心光ファイバであり、第2ファイバ群と称することができる。
以下の説明において、「1本の第1単心光ファイバと1本の第2単心光ファイバとが対応して融着接続するように複数の第1単心光ファイバと複数の第2単心光ファイバとを融着接続させる」ことを、単に、「複数の第1単心光ファイバと複数の第2単心光ファイバとを融着接続させる」と称することがある。
【0022】
本明細書では、光ファイバF1は、本発明の第1単心光ファイバに相当し、光ファイバF1を「第1単心光ファイバF1」と称する場合がある。複数の単心光ファイバF1は、第1多心光ファイバMF1を構成する。
光ファイバF2は、本発明の第2単心光ファイバに相当し、光ファイバF2を「第2単心光ファイバF2」と称する場合がある。複数の単心光ファイバF2は、第2多心光ファイバMF2を構成する。
光ファイバF1,F2の各々は、ガラス部Gと、ガラス部Gを被覆する被覆部Cとを備える。
すなわち、第1単心光ファイバF1は、第1ガラス部G1と、第1ガラス部G1を被覆する第1被覆部C1とを備える。第2単心光ファイバF2は、第2ガラス部G2と、第2ガラス部G2を被覆する第2被覆部C2とを備える。
【0023】
本実施形態においては、第1多心光ファイバMF1は、8本の光ファイバF1(1番目のファイバF1、2番目のファイバF1、・・・、~8番目のファイバF1)によって構成されている。
同様に、第2多心光ファイバMF2は、8本の光ファイバF2(1番目のファイバF2、2番目のファイバF2、・・・、~8番目のファイバF2)によって構成されている。
本実施形態においては、8本の光ファイバF1と8本の光ファイバF2とが一対一で対応するように融着接続されている。
以下に述べる実施形態では、第1多心光ファイバMF1及び第2多心光ファイバMF2の各々を構成する単心光ファイバの本数が8本である場合を説明する。
【0024】
本発明において、単心光ファイバの本数は、8本に限定されない。単心光ファイバの本数は、8本よりも少なくてもよいし、8本よりも多くてもよい。つまり、単心光ファイバの本数Nは、例えば、2以上の整数であればよい。換言すると、第1多心光ファイバMF1及び第2多心光ファイバMF2の各々は、第1単心光ファイバ~第N単心光ファイバの複数の単心光ファイバで構成されている。
【0025】
光ファイバ融着接続機10では、多心光ファイバMF1,MF2を構成する複数の単心光ファイバF1,F2を一括で融着接続することができる。複数の単心光ファイバF1は、一列に並べた状態で連結されて多心光ファイバを構成してもよいし、複数の単心光ファイバF1は、連結されなくてもよい。複数の単心光ファイバF2についても同様である。
【0026】
光ファイバ融着接続機10は、一対の可動ステージ11(第1可動ステージ11L、第2可動ステージ11R)と、一対のファイバホルダ12(第1ファイバホルダ12L、第2ファイバホルダ12R)と、溝形成ユニット13と、一対のファイバクランプ14(第1ファイバクランプ14L、第2ファイバクランプ14R)と、一対の放電電極15(第1放電電極15A、第2放電電極15B)と、を備える。一対の可動ステージ11(11L,11R)が並ぶ方向(X方向)と、一対の放電電極15(15A,15B)が並ぶ方向(Y方向)とは、互いに直交している。
【0027】
本明細書では、一対の可動ステージ11(11L,11R)が並ぶ方向をX軸によって表し、左右方向Xと称することがある。また、一対の放電電極15(15A,15B)が並ぶ方向をY軸によって表し、前後方向Yと称することがある。さらに、左右方向X及び前後方向Yの両方に直交する方向をZ軸によって表し、上下方向Zと称することがある。
左右方向Xは、光ファイバF1,F2が延びる方向でもある。また、前後方向Yは、複数の単心光ファイバF1,F2が並ぶ方向でもある。
【0028】
一対の可動ステージ11(11L,11R)は、左右方向Xに間隔を空けて配置されている。各可動ステージ11は、アクチュエータなどの駆動源(不図示)によって駆動され、これによって不図示のベース上において左右方向Xに移動可能である。一対の可動ステージ11(11L,11R)は、左右方向Xにおいて互いに近づく方向あるいは遠ざかる方向に移動することができる。
【0029】
一対のファイバホルダ12(12L,12R)のそれぞれは、被覆部C(C1,C2)を含む光ファイバF1,F2を挟んで把持するように構成されている。ファイバホルダ12(12L,12R)は、多心光ファイバMF1,MF2を把持することができる。つまり、
図1において左側に位置する第1ファイバホルダ12Lは、多心光ファイバMF1を把持することができる。
図1において右側に位置する第2ファイバホルダ12Rは、多心光ファイバMF2を把持することができる。一対のファイバホルダ12(12L,12R)は、一対の可動ステージ11(11L,11R)のそれぞれに対して着脱可能に固定される。光ファイバF1,F2を把持したファイバホルダ12(12L,12R)が可動ステージ11(11L,11R)に固定された状態では、光ファイバF1,F2の長手方向が左右方向Xに向く。この状態において、可動ステージ11(11L,11R)は、光ファイバF1,F2を当該光ファイバF1,F2の長手方向に移動させることができる。
上記したファイバホルダ12(12L,12R)は、例えば、可動ステージ11(11L,11R)に対して着脱不能であってもよい。すなわち、ファイバホルダ12は、可動ステージ11に一体に設けられてもよい。
【0030】
溝形成ユニット13は、不図示のベース上に配置され、左右方向Xにおいて一対の可動ステージ11(11L,11R)の間に位置する。
図1~3に示すように、溝形成ユニット13には、上下方向Zに貫通する貫通孔131が形成されている。溝形成ユニット13は、位置決め溝132を有する。具体的に、
図3において、溝形成ユニット13は、左側に位置する第1位置決め溝132Lと、右側に位置する第2位置決め溝132Rとを有する。位置決め溝132(132L,132R)は、溝形成ユニット13の上面のうち左右方向Xにおける貫通孔131の両側の領域に形成されている。位置決め溝132(132L,132R)は、左右方向Xに沿って延びている。
図2Bにおいて、位置決め溝132の形状は、断面V字状の溝(V溝)であるが、例えば、U字状の溝、台形状の溝であってもよい。
図1,
図2A、
図2B、及び
図4に示すように、位置決め溝132(132L,132R)には、ファイバホルダ12(12L,12R)から延びる光ファイバF1,F2の先端部において露出するガラス部Gが配置される。具体的には、
図4において、左側に位置する第1位置決め溝132Lには、光ファイバF1の先端部において露出する第1ガラス部G1が配置される。同様に、右側に位置する第2位置決め溝132Rには、光ファイバF2の先端部において露出する第2ガラス部G2が配置される。これにより、位置決め溝132は、光ファイバF1,F2のガラス部G1,G2を位置決めする(調心する)ことができる。
図1において、溝形成ユニット13は、位置決め溝132の底部(
図2B参照)を通って前後方向Yに直交する断面図により示されている。このため、
図1ではガラス部G(G1,G2)が位置決め溝132から離れているが、実際には、
図2Bに示すように位置決め溝132の内面にガラス部Gが接する。
【0031】
図3に示すように、複数の位置決め溝132(132L,132R)は、貫通孔131の両側において前後方向Yに並んでいる。前後方向Yに並ぶ複数の位置決め溝132(132L,132R)は、等間隔で並んでいる。これにより、
図4に示すように複数の単心光ファイバF1のガラス部G1を複数の位置決め溝132Lにそれぞれ配置することができ、複数の単心光ファイバF2のガラス部G2を複数の位置決め溝132Rにそれぞれ配置することができる。これによって、複数の単心光ファイバF1,F2のガラス部G1,G2を等間隔に整列することができる。
【0032】
溝形成ユニット13は、不図示のベースに対して着脱可能である。すなわち、溝形成ユニット13は、交換可能である。これにより、光ファイバ融着接続機10では、予め用意された複数種類の溝形成ユニット13から選択された溝形成ユニットを使用することができる。複数種類の溝形成ユニット13には、前後方向Yにおいて隣り合う位置決め溝132の中心間の距離(ピッチ)が異なる溝形成ユニット、前後方向Yに並ぶ位置決め溝132の数が異なる溝形成ユニット、前後方向Yにおける位置決め溝132の幅寸法が異なる溝形成ユニット等が含まれる。溝形成ユニット13を交換することで、光ファイバ融着接続機10が扱える複数の単心光ファイバF1,F2のファイバピッチや光ファイバF1,F2の本数、光ファイバF1,F2の直径を変更することができる。「光ファイバF1,F2のファイバピッチ」とは、互いに隣り合う第1単心光ファイバF1の中心間の距離、あるいは、互いに隣り合う第2単心光ファイバF2の中心間の距離である。つまり、「光ファイバF1,F2のファイバピッチ」は、「複数の第1単心光ファイバのファイバピッチ及び複数の第2単心光ファイバのファイバピッチ」を意味する。
【0033】
一対の光ファイバF1,F2のガラス部G(第1ガラス部G1、第2ガラス部G2)を互いに対向するように位置決めする溝形成ユニット13は、例えば、左右方向Xにおいて2つの溝形成部材(第1溝形成部材、第2溝形成部材)に分けて形成されてもよい。この場合、第1溝形成部材及び第2溝形成部材の各々が位置決め溝132L,132Rを有していればよい。
【0034】
一対のファイバクランプ14(14L、14R)は、溝形成ユニット13の上方に位置し、溝形成ユニット13の上面に対して開閉するように構成されている。一対のファイバクランプ14(14L、14R)は、溝形成ユニット13の上面のうち左右方向Xにおける貫通孔131の両側の領域に対して開閉する。ファイバクランプ14を溝形成ユニット13の上面に対して閉じることで、光ファイバF1,F2のガラス部G1,G2を溝形成ユニット13とファイバクランプ14(14L、14R)との間に保持し、当該ガラス部G(G1,G2)が位置決め溝132(132L,132R)から上方に抜け出ることを防ぐことができる。なお、ファイバクランプ14を溝形成ユニット13の上面に対して閉じた状態であっても、光ファイバF1,F2のガラス部G1,G2を位置決め溝132(132L,132R)の長手方向(左右方向X)に移動させることができるように、ファイバクランプ14の閉じ力が設定されている。ファイバクランプ14の閉じ力は、例えば、ファイバクランプ14を溝形成ユニット13に向けて付勢するバネ又は磁石、あるいはファイバクランプ14の自重等により定まる。
【0035】
図2A,
図2B,及び
図4に示すように、一対の放電電極15(15A,15B)は、前後方向Yに間隔をあけて並んでいる。一対の放電電極15(15A,15B)は、溝形成ユニット13にて左右方向Xにおいて互いに対向する第1位置決め溝132Lと第2位置決め溝132Rの間の領域を挟むように、かつ、前後方向Yから位置決め溝132を挟むように位置する。また、一対の放電電極15は、前後方向Yにおける貫通孔131の両側に位置する。一対の放電電極15(15A,15B)は、例えば、
図3及び
図4に示すように溝形成ユニット13の上面に形成された電極用溝133(133A、133B)に配置されることで、溝形成ユニット13に対して位置決めされてよい。
左右方向Xにおいて向かい合う一対の光ファイバF1,F2が溝形成ユニット13に配置された状態で、光ファイバF1,F2のガラス部G1,G2の端部(
図4に示すように貫通孔131に重なる端部)は、上記した一対の放電電極15の間に発生する放電により加熱溶融される。
【0036】
放電電極15(15A,15B)と多心光ファイバMF1、MF2との位置関係について具体的に説明する。
放電電極15Aは、電極先端15AE(第1電極先端)を有する。放電電極15Bは、電極先端15BE(第2電極先端)を有する。前後方向Yにおいて、電極先端15AEは、電極先端15BEに対向している。
【0037】
図4において、符号W1は、前後方向Yにおいて第1多心光ファイバMF1の前後方向Yにおける外側に位置する2つの光ファイバF1の中央部分(ガラス部G1)の間の距離を意味する。具体的に、符号W1は、第1多心光ファイバMF1を構成するとともに前後方向Yに並ぶ8本の光ファイバF1のうちの電極先端15AEに最も近い光ファイバF1(1番目の光ファイバF1のガラス部G1)の中央部分の位置と、電極先端15BEに最も近い光ファイバF1(8番目の光ファイバF1のガラス部G1)の中央部分の位置との間の距離に相当する。この距離W1の中央の位置は、符号CL1で示されている。
【0038】
符号W2は、第2多心光ファイバMF2の前後方向Yにおける外側に位置する2つの光ファイバF2の中央部分(ガラス部G2)の間の距離を意味する。具体的に、符号W2は、第2多心光ファイバMF2を構成するとともに前後方向Yに並ぶ8本の光ファイバF2のうちの電極先端15AEに最も近い光ファイバF2(1番目の光ファイバF2のガラス部G2)の中央部分の位置と、電極先端15BEに最も近い光ファイバF2(8番目の光ファイバF2のガラス部G2)の中央部分の位置との間の距離に相当する。この距離W2の中央の位置は、符号CL2で示されている。
【0039】
図4に示すように、電極先端15AEと電極先端15BEとによって挟まれた領域SRには、第1多心光ファイバMF1を構成する8本の光ファイバF1と、第2多心光ファイバMF2を構成する8本の光ファイバF2とが配置されている。具体的には、電極先端15AEと電極先端15BEとの間の中央領域において、つまり、領域SRの中央において、8本の光ファイバF1と8本の光ファイバF2とが一対一で対応するように配置されている。
【0040】
換言すると、前後方向Yにおいて、第1多心光ファイバMF1の距離W1の中央位置CL1と、第2多心光ファイバMF2の距離W2の中央位置CL2とは、中点Pにおいて、一致している。中点Pは、電極先端15AEと電極先端15BEとを結ぶ仮想線の略中央に位置している。
ここで、文言「略中央に位置する」とは、複数の単心光ファイバF1,F2が放電によって受ける熱量の最適化を図ることができる効果が得られれば、電極先端15AEと電極先端15BEとを結ぶ仮想線の中央の位置からの中点Pが多少ずれてもよいことを意味する。
【0041】
図2Aに示すように、光ファイバ融着接続機10は、照明部16と、レンズ17と、カメラ18と、をさらに備える。照明部16は、溝形成ユニット13に配置された光ファイバF1,F2のガラス部G1,G2に光を照射する。照明部16は、溝形成ユニット13の上方に配置される。照明部16の光は、上下方向Zにおいて溝形成ユニット13の貫通孔131と重なるように位置する光ファイバF1,F2のガラス部G1,G2(
図4参照)を照射し、貫通孔131を通過する。レンズ17は、光ファイバF1,F2のガラス部G1,G2及びガラス部G1,G2の周辺の領域を通る照明部16の光を集光する。カメラ18は、レンズ17によって結ばれた像を捉え、画像を撮像する。
光ファイバ融着接続機10は、照明部16、レンズ17及びカメラ18からなる光学系を、
図2Aに例示するように1つだけ備えてもよいが、例えば、2つの光学系を備えてもよい。光ファイバ融着接続機10が2つの光学系を備える場合には、例えば、2つの照明部16が互いに異なる2方向から光ファイバF1,F2のガラス部G1,G2に向けて光を照射してもよい。2つのレンズ17及び2つのカメラ18が配置されている方向(位置)から光ファイバF1,F2のガラス部G1,G2を含む画像を2軸(2方向)で撮像してもよい。この場合には、光ファイバF1,F2のガラス部G1,G2を含む画像をより正確に取得することができる。
【0042】
図5に示すように、光ファイバ融着接続機10は、画像処理部21と、融着条件処理部22と、記憶部23と、高電圧発生回路24と、をさらに備える。画像処理部21及び融着条件処理部22は、例えば、後述する条件設定装置30を構成してもよい。
画像処理部21は、カメラ18によって撮像された画像に基づいて、複数の第1単心光ファイバF1のファイバピッチ及び複数の第2単心光ファイバF2のファイバピッチのうちの少なくとも一方を求める。
融着条件処理部22は、画像処理部21によって求められたファイバピッチに対応する融着条件を選択又は演算により設定する。
【0043】
画像処理部21及び融着条件処理部22の各々は、例えば、電気回路や電子回路等の回路、記憶装置、CPU(Central Processing Unit)等を有するコンピュータである。コンピュータは、カメラ18によって撮像された画像を取得する取得処理を行う。さらに、コンピュータは、取得処理によって得られた画像(画像情報)に基づいて、演算処理、算出処理、判定処理、選択処理、設定処理等の処理を行う。コンピュータは、例えば、このような処理を実行するためのコンピュータプログラムに基づいて動作されてもよい。コンピュータプログラムは、例えば、画像処理部21、融着条件処理部22、及び記憶部23に記憶されてもよい。
記憶部23は、融着条件処理部22に接続されている。記憶部23は、上述したコンピュータの一部を構成してもよい。
【0044】
(画像処理部21によるファイバピッチの算出方法)
画像処理部21によるファイバピッチの算出方法について、
図6及び
図7を参照して具体的に説明する。
画像処理部21は、ファイバピッチを求めるために、
図6に例示するように、前後方向Yに並ぶ複数(図示例では2本)の第1単心光ファイバF1及び複数の第2単心光ファイバF2が写っている画像を取得する。
図6に示す画像には、融着接続する前の2対の光ファイバF1,F2のガラス部G1,G2、及び、一対の放電電極15が写っている。複数の(2つの)光ファイバF1のガラス部G1は、前後方向Yに間隔をあけて並んでおり、複数の(2つの)光ファイバF2のガラス部G2は、前後方向Yに間隔をあけて並んでいる。
図6に示す画像では、各画素における輝度の高さがグレースケールで表されており、輝度が高いほど白く、輝度が低いほど黒くなっている。
図6に示す画像では、前後方向Y(ガラス部Gの径方向)におけるガラス部Gの中央部分の輝度が高く、前後方向Yにおけるガラス部Gの両端部分の輝度が低い。これは、光ファイバF1,F2の長手方向(左右方向X)に直交するガラス部Gの断面が円形であり、照明部16の光がガラス部Gをガラス部Gの径方向に透過する際には、当該光がガラス部Gの中央部分に集光されるためである。
【0045】
次いで、画像処理部21は、取得した画像のうち、
図6に示す線分L1の位置において、複数の第2単心光ファイバF2のガラス部G2が並ぶ方向(前後方向Y)における輝度の分布を導出する。線分L1は、前後方向Yに延びる線である。左右方向Xにおける線分L1の位置は、左右方向Xにおいて光ファイバF1,F2のガラス部G1,G2が存在する位置に設定されればよい。すなわち、線分L1は、左右方向Xに並ぶ一対の光ファイバF1,F2の間(ギャップ)の位置に設定されなければよい。
図6に示すように、複数の(2つの)第2単心光ファイバF2に跨るように線分L1の位置を設定した場合には、第2単心光ファイバF2のファイバピッチを求めることができる。線分L1の位置を、複数の(2つの)第1単心光ファイバF1に跨るように設定した場合には、第1単心光ファイバF1のファイバピッチを求めることができる。画像処理部21は、複数の第1単心光ファイバF1のファイバピッチ、及び、複数の第2単心光ファイバF2のファイバピッチの一方だけを求めてもよい。また、画像処理部21は、複数の第1単心光ファイバF1のファイバピッチ、及び、複数の第2単心光ファイバF2のファイバピッチの両方を求めてもよい。
【0046】
図7は、
図6に示す線分L1における輝度の分布を示す。
図7において、縦軸は、前後方向Y(光ファイバF1,F2の径方向)における位置を示し、横軸は、輝度を示している。また、輝度値B0は、照明部16の光がガラス部Gを透過せずにカメラ18に到達した光の輝度値である。輝度値B1は、照明部16の光が断面円形のガラス部Gを透過することで前後方向Yにおけるガラス部Gの中央部分に集光された光の輝度値であり、輝度値B0よりも高い。
画像処理部21は、導出された輝度の分布に基づいて、前後方向Yにおいて輝度値B1に対応する2つの位置Y1,Y2を特定し、2つの位置Y1,Y2の間の距離D1を求める。画像処理部21は、この距離D1をファイバピッチとして決定する。決定されたファイバピッチは、画像処理部21から融着条件処理部22に出力される。つまり、ファイバピッチは、例えば、前後方向Yで互いに隣り合う第1単心光ファイバF1の間の距離D1、又は、前後方向Yで互いに隣り合う第2単心光ファイバF2の間の距離D1に基づいて求められる。
【0047】
(ファイバピッチの算出方法の変形例)
ファイバピッチの算出方法は、上述した実施形態に限定されない。
次に、ファイバピッチの算出方法の変形例について説明する。
この変形例においては、次の条件が必要である。
・複数の単心光ファイバF1が前後方向Yに等間隔で並ぶ。
・複数の単心光ファイバF2が前後方向Yに等間隔で並ぶ。
・複数の単心光ファイバF1の径K1が互いに同じである。
・複数の単心光ファイバF2の径K2が互いに同じである。
この条件において、ファイバピッチは、例えば、第1多心光ファイバMF1を構成する複数の単心光ファイバF1のうち、前後方向Yにおいて第1多心光ファイバMF1の両端に位置する2つの光ファイバF1(1番目の光ファイバF1と8番目の光ファイバF1)の間の距離W1と、複数の単心光ファイバF1の本数N1とに基づいて求められてもよい。
【0048】
図4、
図6、及び
図7を参照して、この変形例を具体的に説明する。
上述した実施形態と同様に、まず、
図6に示す画像を得る。この画像において、画像処理部21は、複数の単心光ファイバF1に交差するように線分L1の位置を設定する。画像処理部21は、複数の単心光ファイバF1に交差する線分L1において、高い輝度で示された位置の個数を検出する。
図7に示す例では、単心ファイバの本数が2つ(Y1、Y2)であることが検出されるが、
図4に示す第1多心光ファイバMF1の場合では、画像処理部21は、単心光ファイバの本数N1が8本であることを検出する。
【0049】
さらに、画像処理部21は、8本の光ファイバF1のうち、前後方向Yにおいて第1多心光ファイバMF1の両端に位置する2つの単心光ファイバ(1番目の光ファイバF1と8番目の光ファイバF1)の位置を検出する。この検出結果に基づき、画像処理部21は、
図4に示す距離W1を求める。
【0050】
さらに、画像処理部21は、上記のように得られた複数の単心光ファイバF1に関する情報である径K1、距離W1、及び本数N1に基づき、光ファイバF1のファイバピッチを算出する。
【0051】
同様の方法により、光ファイバF2のファイバピッチを算出してもよい。具体的に、画像処理部21は、複数の単心光ファイバF2に交差するように線分L1の位置を設定し、線分L1において、高い輝度で示された位置の個数を検出する。
図4に示す第2多心光ファイバMF2の場合では、画像処理部21は、単心光ファイバの本数N2が8本であることを検出する。画像処理部21は、8本の光ファイバF2のうち、前後方向Yにおいて第2多心光ファイバMF2の両端に位置する2つの単心光ファイバ(1番目の光ファイバF2と8番目の光ファイバF2)の位置を検出する。この検出結果に基づき、画像処理部21は、
図4に示す距離W2を求める。さらに、画像処理部21は、上記のように得られた複数の単心光ファイバF2に関する情報である径K2、距離W2、及び本数N2に基づき、光ファイバF2のファイバピッチを算出する。
【0052】
なお、単心光ファイバの本数N1、N2に関し、画像処理部21による自動検出によって本数N1、N2を求めなくてもよい。例えば、光ファイバ融着接続機10を操作する作業者が、単心光ファイバの本数N1、N2を光ファイバ融着接続機10に直接入力してもよい。
【0053】
(融着条件処理部22による融着条件の設定方法)
融着条件処理部22は、求めたファイバピッチに対応する融着条件を設定する。融着条件の設定は、左右方向Xにおいて互いに対向する一対の光ファイバF1,F2を融着接続する前に行われる。具体的に、融着条件処理部22は、ファイバピッチと融着条件との関係を表す情報(条件データ)から、ファイバピッチに対応する融着条件を選択する。当該情報は、予め記憶部23に記憶されている。第一実施形態において、ファイバピッチと融着条件との関係を表す情報は、
図8に示すように、ファイバピッチと融着条件とを対応付けたテーブルTB1である。このテーブルTB1では、ファイバピッチ毎に異なる放電強度の設定値が対応付けられている。
【0054】
図8に示すテーブルTB1では、融着条件として一対の放電電極15の間に流す電流値(放電電流値)が採用されている。当該電流値は、放電強度を調整するパラメータの一種である。なお、
図8に示すテーブルTB1では、例えば、電流値の代わりに、放電強度を調整する別のパラメータとして、一対の放電電極15間に印加する電圧値や、一対の放電電極15に供給される電力値などが採用されてもよい。
【0055】
図8に示すテーブルTB1は、例えば、実際に使用されると想定される複数種類のファイバピッチについて、予め実験などにより最適な放電強度の設定値を調べた結果に基づいて作成することができる。
図8に例示されているファイバピッチの種類は、3つであるが、本発明のファイバピッチの種類は、3つに限定されない。
融着条件処理部22は、画像処理部21において求めたファイバピッチに対応する放電強度の設定値(
図8では電流値)をテーブルTB1から読み出すことで、融着条件を設定する。例えば、画像処理部21において求めたファイバピッチが「165μm」であった場合に、融着条件処理部22は、テーブルTB1から放電強度の設定値「24.0mA」を読み出す。融着条件処理部22は、設定された融着条件(放電強度の設定値)を高電圧発生回路24に出力する。
【0056】
以上に述べた実施形態では、融着条件処理部22がテーブルTB1を参照することで適切な融着条件を選択し設定する場合を説明したが、融着条件処理部22は、演算によって融着条件を求めることで最適な融着条件を設定してもよい。例えば、ファイバピッチの他、気温、気圧、湿度等の環境要因をパラメータにした計算式を予め実験などにより求めておき、実際に融着接続する際には当該計算式を用いて最適な融着条件を算出して設定してもよい。
【0057】
図5に示す高電圧発生回路24は、融着条件処理部22から出力された放電強度の設定値に応じて、一対の放電電極15の間に放電を発生させる。
【0058】
次に、光ファイバ融着接続機10を用いて複数の単心光ファイバF1と複数の単心光ファイバF2とを融着接続する光ファイバの融着接続方法(光ファイバの融着接続方法)の一例について説明する。
【0059】
光ファイバ融着接続機10を用いて複数の単心光ファイバF1と複数の単心光ファイバF2とを融着接続する際には、はじめに、
図1及び
図2に示すように、複数の単心光ファイバF1を把持した第1ファイバホルダ12Lを第1可動ステージ11L上に固定する。同様に、複数の単心光ファイバF2を把持した第2ファイバホルダ12Rを第2可動ステージ11R上に固定する。また、ファイバホルダ12Lから延びる複数の単心光ファイバF1の先端部において被覆部C1から露出した複数のガラス部G1を、溝形成ユニット13の複数の位置決め溝132Lに配置する(
図4参照)。ファイバホルダ12Rから延びる複数の単心光ファイバF2の先端部において被覆部C2から露出した複数のガラス部G2を、溝形成ユニット13の複数の位置決め溝132Rに配置する(
図4参照)。次いで、一対のファイバクランプ14(14L、14R)を閉じて、複数の単心光ファイバF1のうちの1つの単心光ファイバのガラス部G1と複数の単心光ファイバF2のうちの1つの単心光ファイバのガラス部G2とが対向して対を形成するように、複数の単心光ファイバF1及び複数の単心光ファイバF2のガラス部G1,G2を溝形成ユニット13に把持する。
【0060】
その後、複数の単心光ファイバF1及び複数の単心光ファイバF2のガラス部G1,G2の先端部分が上下方向Zにおいて溝形成ユニット13の貫通孔131と重なるように、一対の可動ステージ11(11L,11R)を左右方向Xに移動させる。これにより、左右方向における複数の単心光ファイバF1及び複数の単心光ファイバF2のガラス部G1,G2の先端部分の位置を調整する。また、一対の可動ステージ11(11L,11R)を左右方向Xに移動させることで、複数の単心光ファイバF1及び複数の単心光ファイバF2のガラス部G1,G2の互いに対向する先端部分の間のギャップを調整する。左右方向Xにおけるガラス部G1,G2の先端部分の位置の調整は、カメラ18によって撮像された画像(例えば、
図6に示すような画像)を参照して行われてよい。
【0061】
その後、画像処理部21が、カメラ18から取得した画像に基づいて複数の単心光ファイバF1,F2のファイバピッチを求める。画像処理部21は、複数の第1単心光ファイバF1のファイバピッチ及び複数の第2単心光ファイバF2のファイバピッチのうちの少なくとも一方を求めればよい。画像処理部21は、求めたファイバピッチを融着条件処理部22に出力する。
そして、融着条件処理部22が、求めたファイバピッチに対応する融着条件としての放電強度の設定値を、記憶部23に記憶されたテーブルTB1から読み出し、高電圧発生回路24に出力する。
【0062】
最後に、融着条件処理部22から出力された放電強度の設定値に基づいて、一対をなす1本の第1単心光ファイバと1本の第2単心光ファイバとが融着接続するように、複数の単心光ファイバF1と複数の単心光ファイバF2とを融着接続する。この際には、一対の可動ステージ11(11L,11R)を互いに近づける方向に移動させて、1つの第1ガラス部G1と1つの第2ガラス部G2とが対応するように複数の第1ガラス部Gと複数の第2ガラス部Gとを突き合わせる。この状態において、高電圧発生回路24が、融着条件処理部22から出力された放電強度の設定値に応じて一対の放電電極15の間に放電を発生させることで、複数のガラス部G1,G2を加熱溶融する。これにより、複数の第1ガラス部G1と複数の第2ガラス部G2とが一体化し、融着接続される。なお、融着接続の際には、例えば、複数の第1ガラス部G1と複数の第2ガラス部G2とを突き合わせる前に一対の放電電極15の間に放電を発生させ、所定時間経過した後に複数の第1ガラス部G1と複数の第2ガラス部G2とを突き合わせてもよい。
【0063】
以上説明したように、第一実施形態の光ファイバ融着接続機10、及び、光ファイバ融着接続機10を用いた光ファイバの融着接続方法によれば、カメラ18から取得した画像に基づいてファイバピッチに対応する放電強度の設定値(融着条件)を設定する。これにより、複数の単心光ファイバF1のファイバピッチ及び複数の単心光ファイバF2のファイバピッチに応じた最適な融着条件で複数の単心光ファイバF1と複数の単心光ファイバF2とを融着接続することができる。この点について、
図9及び
図10を参照して説明する。
【0064】
図9及び
図10は、一対の放電電極15の間で生じた放電(気中放電)による温度領域の分布を模式的に示している。
図9及び
図10に示す温度領域には、放電している領域における相対的な温度分類として、高温領域TH、中温領域TM及び低温領域TLがある。高温領域THは、各放電電極15の先端部及びその周辺に位置し、放電している領域の中で温度が最も高い領域である。中温領域TMは、高温領域THの外側に位置し、高温領域THよりも温度が低い領域である。低温領域TLは、中温領域TMのさらに外側に位置し、中温領域TMよりも温度が低い領域である。
放電強度などの融着条件は、
図9及び
図10の両方で同じであるため、温度領域の分布も
図9及び
図10の両方で同じとなっている。
【0065】
図9及び
図10は、複数の単心光ファイバF1,F2のファイバピッチの点で、互いに異なる。
図9に示す例ではファイバピッチが大きく、
図10に示す例ではファイバピッチが小さい。
図9に示す例では、ファイバピッチが大きいことで、全ての光ファイバF1,F2が概ね中温領域TMに位置している。これに対し、
図10に示す例では、ファイバピッチが小さいため、一部の光ファイバF1,F2が低温領域TLに位置する。このため、
図10に示す例では、複数の単心光ファイバF1,F2が放電によって受ける熱量が
図9に示す例よりも小さくなる。このため、
図9に示す例において複数の単心光ファイバF1,F2が放電によって受ける熱量の大きさが融着接続に最適であると仮定すると、
図10に示す例では複数の単心光ファイバF1,F2が放電によって受ける熱量の大きさが不足してしまう。また、図示しないが、ファイバピッチが
図9に示す例よりも大きくなった場合には、複数の単心光ファイバF1,F2が放電によって受ける熱量の大きさが過剰となってしまう。光ファイバF1,F2が受ける熱量の大きさが適切でない場合には、融着接続後における光ファイバF1,F2の接続損失が大きくなってしまう。
【0066】
これに対し、第一実施形態では、ファイバピッチに応じて放電強度の設定値を変えるため、一対の放電電極15の間で生じた放電による温度領域の分布をファイバピッチに応じて変化させることができる。これにより、ファイバピッチが変わっても、複数の単心光ファイバF1,F2が放電によって受ける熱量の最適化を図ることができる。すなわち、複数の単心光ファイバF1,F2のファイバピッチに応じた最適な融着条件で、複数の単心光ファイバF1と複数の単心光ファイバF2とを融着接続することが可能となる。これにより、融着接続後における光ファイバF1,F2の接続損失を小さく抑えることができる。
【0067】
また、第一実施形態によれば、融着接続する複数の単心光ファイバF1,F2のファイバピッチが変わっても、融着接続する作業時間のロスを小さく抑えることができる。
具体的に説明すれば、ファイバピッチに応じて最適な放電強度を設定する機能を有しない光ファイバ融着接続機では、ファイバピッチが変わる毎に、複数の単心光ファイバF1,F2が放電によって受ける熱量が適正となるように放電強度を校正する必要がある。このため、融着接続する作業時間が無駄に長くなってしまう。
これに対し、第一実施形態では、ファイバピッチに応じて最適な放電強度が設定される。このため、ファイバピッチが変わる毎に、最適な融着条件を設定するために放電強度を校正する追加作業が不要となり、作業時間のロスを小さく抑えることができる。
【0068】
また、第一実施形態によれば、画像処理部21が複数の単心光ファイバF1,F2のファイバピッチを自動で求め、融着条件処理部22がファイバピッチに応じた融着条件を自動で設定する。これにより、複数の単心光ファイバF1,F2を光ファイバ融着接続機10に取り付けるだけで、ファイバピッチに応じた最適な融着条件が自動で設定される。これにより、光ファイバ融着接続機10を扱う作業者が融着条件を手動で設定する必要がなくなり、作業者による設定ミスを防ぐことができる。
【0069】
また、第一実施形態の光ファイバの融着接続方法では、複数の単心光ファイバF1と複数の単心光ファイバF2とを融着接続する前(光ファイバF1,F2が互いに接触して融合する前)に、融着条件を設定する。このため、複数の単心光ファイバF1と複数の単心光ファイバF2とを短時間で融着接続することが可能となる。また、複数の単心光ファイバF1と複数の単心光ファイバF2とを高い品質で接続することができる。以下、この点について説明する。
【0070】
例えば、複数の単心光ファイバF1と複数の単心光ファイバF2との融着接続を行う際に、光ファイバF1,F2が互いに接触し融合する前にファイバピッチを考慮しない条件で放電を開始すると、光ファイバF1,F2が放電によって受ける熱量が適切とならない。そのため、融着直前における光ファイバF1の端部と光ファイバF2の端部の溶融状態が過剰又は不十分となり、接続品質が低くなってしまう。
【0071】
これに対し、複数の単心光ファイバF1と複数の単心光ファイバF2とを融着接続する前に予め融着条件を設定する場合には、光ファイバF1,F2が互いに接触し融合する前に放電によって受ける熱量が適切になる。これにより、融着直前における光ファイバF1の端部と光ファイバF2の端部の溶融状態が適切となる。そのため、高い品質で複数の単心光ファイバF1と複数の単心光ファイバF2とを接続することができる。
【0072】
第一実施形態の光ファイバ融着接続機10において、記憶部23に記憶されるファイバピッチと融着条件との関係を表す情報は、例えば、ファイバピッチと放電強度(電流値、電圧、電力値など)との関係を表す近似式であってもよい。この場合、融着条件処理部22は、画像処理部21において求めたファイバピッチを入力パラメータとして、近似式により放電強度の設定値を求めることで、融着条件を設定することができる。近似式を用いて放電強度の設定値を求める場合には、テーブルを用いて放電強度の設定値を決める場合と比較して、より高い精度で融着条件を設定することができる。すなわち、より適切な融着条件で光ファイバF1,F2の融着接続を行うことができる。
【0073】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態に係る光ファイバ融着接続機について、主に
図11及び
図12を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0074】
図11に示す第二実施形態の光ファイバ融着接続機10Aは、第一実施形態と同様の構成(可動ステージ11L,11R、ファイバホルダ12L,12R、溝形成ユニット13、ファイバクランプ14L,14R、放電電極15A,15B、照明部16、レンズ17、カメラ18、画像処理部21、融着条件処理部22、記憶部23、高電圧発生回路24)に加え、ステージ駆動回路25をさらに備える。
ステージ駆動回路25は、可動ステージ11L,11Rを駆動する回路である。ステージ駆動回路25は、融着条件処理部22から出力された融着条件に基づいて可動ステージ11L,11Rの移動を制御する。
【0075】
第二実施形態の光ファイバ融着接続機10Aにおいては、第一実施形態と同様に、ファイバピッチと融着条件との関係を表す情報が、記憶部23に記憶されている。第二実施形態において、ファイバピッチと融着条件との関係を表す情報は、
図12に示すように、ファイバピッチと融着条件とを対応付けたテーブルTB2である。このテーブルTB2では、ファイバピッチ毎に異なる融着条件が対応付けられている。
【0076】
図12に示すテーブルTB2において、融着条件には、放電強度、放電時間、前放電時間、切断角許容値などの複数の要素(融着接続に関与する要素)が含まれている。放電強度は、第一実施形態で説明した電流値、電圧値、電力値などである。放電時間は、複数の単心光ファイバF1と複数の単心光ファイバF2とを融着接続する際に一対の放電電極15の間で放電する時間である。前放電時間は、複数の単心光ファイバF1と複数の単心光ファイバF2とを融着接続するために放電を開始してから、複数の単心光ファイバF1と複数の単心光ファイバF2とを互いに突き合わせるまでの時間である。切断角許容値は、融着接続の際に突き合わせる光ファイバF1,F2のガラス部G1,G2の端面における切断角度の許容範囲である。ガラス部G1,G2の端面の切断角度が許容範囲の外側にある場合、光ファイバF1,F2の接続不良が生じる可能性が高いため、融着接続を実施することは好ましくない。
なお、融着条件には、例えば、ファイバギャップの設定値が含まれてもよい。ファイバギャップの設定値は、融着接続(放電)を開始する直前における複数の単心光ファイバF1と複数の単心光ファイバF2との間の間隔(ギャップ)の設定値である。
【0077】
さらに、
図12に示すテーブルTB2における融着条件には、光ファイバF1,F2の融着接続に関与しない要素が含まれてもよい。融着条件に含まれる「融着接続に関与しない要素」は、例えば、ファイバピッチやファイバピッチに対応する光ファイバF1,F2の種類であってもよいし、光ファイバF1,F2を融着接続した後の接続損失の許容値や、融着接続した複数の単心光ファイバF1,F2の軸ずれ量の許容値であってもよい。
【0078】
図12に示すテーブルTB2は、第一実施形態のテーブルTB1と同様に、実際に使用されると想定される複数種類のファイバピッチについて、予め実験などにより最適な融着条件(特に「融着接続に関与する要素」)を調べた結果に基づいて作成することができる。
【0079】
融着条件処理部22は、画像処理部21において求めたファイバピッチに対応する融着条件を
図12に示すテーブルTB2から読み出すことで、融着条件を設定する。例えば、画像処理部21において求めたファイバピッチが「ファイバピッチA」であった場合に、融着条件処理部22は、
図12に示すテーブルTB2から「融着条件1」を読み出す。融着条件処理部22が
図12に示すテーブルTB2から読み出す融着条件の要素は、融着条件に含まれる全ての要素であってもよいし、融着条件に含まれる複数の要素のうち一部の要素だけであってもよい。
【0080】
融着条件処理部22は、演算によって融着条件を求めることで最適な融着条件を設定してもよい。例えば、ファイバピッチの他、気温、気圧、湿度等の環境要因をパラメータにした計算式を予め実験などにより求めておき、実際に融着接続する際には当該計算式を用いて最適な融着条件を算出して設定してもよい。
【0081】
融着条件処理部22は、読み出された融着条件の要素を、高電圧発生回路24やステージ駆動回路25に適宜出力する。
具体的に、融着条件の要素のうち放電強度や放電時間は、高電圧発生回路24に出力される。高電圧発生回路24は、融着条件処理部22から出力された放電強度や放電時間に応じて、一対の放電電極15の間に放電を発生させる。
また、融着条件の要素のうち前放電時間やファイバギャップの設定値は、ステージ駆動回路25に出力される。ステージ駆動回路25は、融着条件処理部22から出力された前放電時間やファイバギャップの設定値に応じて、可動ステージ11L,11Rを移動させる。
【0082】
融着条件処理部22が読み出す融着条件に切断角許容値が含まれる場合には、予め画像処理部21が、カメラ18から取得した画像に基づいて光ファイバF1,F2のガラス部G1,G2の端面の切断角度を求めるとよい。これにより、融着条件処理部22は、求めた切断角度が切断角許容値の範囲内にあるか否かを判定することができる。
求めた切断角度が切断角許容値の範囲内にあると融着条件処理部22が判定した場合、融着条件処理部22は、光ファイバF1,F2の融着接続の作業を開始あるいは続行する信号や、光ファイバF1,F2の融着接続の作業を許可する情報を、光ファイバ融着接続機10Aを扱う作業者に報知する信号を出力する。一方、求めた切断角度が切断角許容値の範囲内に無いと融着条件処理部22が判定した場合、融着条件処理部22は、光ファイバF1,F2の融着接続の作業を停止する信号や、光ファイバF1,F2の融着接続の作業の停止すべき情報を作業者に報知する信号を出力する。
【0083】
融着条件処理部22が読み出した融着条件の要素(特に「融着接続に関与しない要素」)は、例えば、画像などの情報を表示する表示部(不図示)に出力されてもよい。この場合、融着接続する光ファイバF1,F2の各種情報(例えば、光ファイバF1,F2の種類、接続損失の許容値、軸ずれ量の許容値など)が表示部に表示されることで、光ファイバ融着接続機10Aを扱う作業者が当該情報を容易に確認することができる。これにより、光ファイバF1,F2の融着接続の作業を効率よく行うことが可能となる。
【0084】
第二実施形態の光ファイバ融着接続機10Aを用いた光ファイバの融着接続方法は、概ね第一実施形態と同様である。
ただし、第二実施形態の融着接続方法において、融着条件処理部22は、求めたファイバピッチに対応する融着条件を記憶部23に記憶されたテーブルTB2から読み出した後に、読み出された融着条件の各種要素を、高電圧発生回路24、ステージ駆動回路25、表示部などに適宜出力する。
【0085】
例えば、融着条件処理部22から出力された融着条件に放電強度や放電時間が含まれる場合には、高電圧発生回路24が、放電強度や放電時間に応じて一対の放電電極15の間に所定の放電強度で所定の時間だけ放電を発生させる。
融着条件処理部22から出力された融着条件に前放電時間が含まれる場合には、ステージ駆動回路25が、当該前放電時間に応じて可動ステージ11L,11Rを所定のタイミングで移動させて複数の単心光ファイバF1のガラス部G1と複数の単心光ファイバF2のガラス部G2とを突き合わせる。
【0086】
融着条件処理部22から出力された融着条件に切断角許容値が含まれる場合には、融着条件処理部22が、画像処理部21において求めたガラス部G1,G2の端面の切断角度と切断角許容値とを比較して、光ファイバF1,F2の融着接続作業の開始又は停止を判定する。
融着条件処理部22から出力された融着条件にファイバギャップの設定値が含まれる場合には、ステージ駆動回路25が、放電の開始前に、当該ファイバギャップの設定値に応じて可動ステージ11L,11Rを移動させて、複数の単心光ファイバF1のガラス部G1と複数の単心光ファイバF2のガラス部G2との間の間隔を調整する。
【0087】
第二実施形態の光ファイバ融着接続機10A、及び、光ファイバ融着接続機10Aを用いた光ファイバの融着接続方法によれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
また、第二実施形態によれば、ファイバピッチに対応する融着条件に、放電強度、放電時間、前放電時間、切断角許容値などの複数の要素が含まれている。このため、より適切な融着条件で複数の単心光ファイバF1と複数の単心光ファイバF2とを融着接続することができる。これにより、融着接続後における光ファイバF1,F2の接続損失をさらに小さく抑えることが可能となる。
【0088】
以上、本発明の詳細について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
【0089】
本発明の光ファイバ融着接続機及び融着接続方法において、画像処理部21は、ファイバピッチの算出に加え、画像に基づいて前後方向Yに並ぶ光ファイバF1,F2(ガラス部G1,G2)の本数を判定してもよい。また、融着条件処理部22は、求めたファイバピッチ及び判定された光ファイバF1,F2の本数に対応する融着条件を設定してよい。具体的に、融着条件処理部22は、ファイバピッチ及び光ファイバF1,F2の本数と融着条件との関係を表す情報に基づいて、融着条件を導出すればよい。
【0090】
ファイバピッチ及び光ファイバF1,F2の本数と融着条件との関係を表す情報は、例えば、
図13に示すテーブルTB3であってよい。
図13に示すテーブルTB3は、
図8及び
図12に例示したテーブルTB1,TB2と同様に、記憶部23に記憶されてよい。
図13に示すテーブルTB3では、ファイバピッチ及び光ファイバF1,F2の本数の両方を考慮した融着条件が対応している。すなわち、光ファイバF1,F2の各本数と、複数種類のファイバピッチとの組み合わせに応じた個別の融着条件が定められている。ただし、光ファイバF1,F2の本数が1本の場合には、ファイバピッチが存在しないため、対応する融着条件は1つだけとなる。
図13に例示するテーブルTB3では、融着条件として、第一実施形態と同様の電流値(放電強度)が採用されているが、テーブルTB3に示される融着条件は、電流値に限定されない。例えば、第二実施形態のように複数の要素を含む融着条件が採用されてもよい。
【0091】
図13に例示したようにファイバピッチ及び光ファイバF1,F2の本数の両方を考慮して融着条件を設定する場合には、ファイバピッチだけではなく光ファイバF1,F2の本数が変わっても、最適な融着条件で複数の単心光ファイバF1と複数の単心光ファイバF2とを融着接続することができる。
【0092】
本発明の光ファイバ融着接続機及び融着接続方法において、画像処理部21は、ファイバピッチの算出に加え、画像に基づいて光ファイバF1,F2(ガラス部G1,G2)の直径を求めてもよい。
また、融着条件処理部22は、求めたファイバピッチ及び光ファイバF1,F2の直径に対応する融着条件を設定してよい。具体的に、融着条件処理部22は、ファイバピッチ及び光ファイバF1,F2の直径と融着条件との関係を表す情報に基づいて、融着条件を導出すればよい。
【0093】
つまり、画像処理部21は、画像に基づいて、複数の単心光ファイバF1のうちの少なくとも一つの直径と、複数の単心光ファイバF2のうちの少なくとも一つの直径とを求める。換言すると、画像処理部21は、光ファイバF1,F2の両方の直径を求める。融着条件処理部22は、複数の単心光ファイバF1のファイバピッチ、複数の単心光ファイバF2のファイバピッチ、複数の単心光ファイバF1の直径、及び複数の単心光ファイバF2の直径に対応する融着条件を選択又は演算により設定する。
【0094】
また、変形例1として、画像処理部21は、画像に基づいて、複数の単心光ファイバF1のうちの少なくとも一つの直径を求めてもよい。この場合、融着条件処理部22は、複数の単心光ファイバF1のファイバピッチ及び複数の単心光ファイバF1の直径に対応する融着条件を選択又は演算により設定する。
【0095】
また、変形例2として、画像処理部21は、画像に基づいて、複数の単心光ファイバF2のうちの少なくとも一つの直径を求めてもよい。この場合、融着条件処理部22は、複数の単心光ファイバF2のファイバピッチ及び複数の単心光ファイバF2の直径に対応する融着条件を選択又は演算により設定する。
【0096】
ファイバピッチ及び光ファイバF1,F2の直径と融着条件との関係を表す情報は、例えば、
図14に示すテーブルTB4であってよい。
図14のテーブルTB4は、記憶部23に記憶されてよい。
図14に示すテーブルTB4では、ファイバピッチ及び光ファイバF1,F2の直径の両方を考慮した融着条件が対応している。すなわち、光ファイバF1,F2の各直径と、複数種類のファイバピッチとの組み合わせに応じた個別の融着条件が定められている。
図14に示すテーブルTB4では、融着条件として、第一実施形態と同様の電流値が採用されているが、本発明の融着条件は、電流値に限定されない。例えば、第二実施形態のように複数の要素を含む融着条件が採用されてもよい。
【0097】
図14に例示したようにファイバピッチ及び光ファイバF1,F2の直径の両方を考慮して融着条件を設定する場合には、ファイバピッチだけではなく光ファイバF1,F2の直径が変わっても、最適な融着条件で複数の単心光ファイバF1と複数の単心光ファイバF2とを融着接続することができる。
【0098】
本発明の光ファイバ融着接続機及び融着接続方法においては、例えば、ファイバピッチ、光ファイバF1,F2の本数、及び、光ファイバF1,F2の直径の3つを考慮して融着条件を設定してもよい。
【0099】
本発明の光ファイバの融着接続方法において、画像に基づいてファイバピッチ、光ファイバF1,F2の直径を求めたり、光ファイバF1,F2の本数を判定したりする構成や、求めたファイバピッチや直径、判定された本数に対応する融着条件を設定する構成は、画像処理部21や融着条件処理部22に限らず、任意に選択されてよい。
【0100】
本発明の光ファイバ融着接続機の一部の機能は、例えば、条件設定装置によって実現されてもよい。条件設定装置は、複数の単心光ファイバF1,F2を含む画像を取得する取得部と、この画像に基づいてファイバピッチを求める演算部と、演算結果に応じた融着条件を得る処理部と、を備える。取得部及び演算部は、例えば、
図5及び
図11に示す画像処理部21によって実現されてよい。また、処理部は、例えば、
図5及び
図11に示す融着条件処理部22によって実現されてよい。そして、
図5及び
図11に例示するように、画像処理部21及び融着条件処理部22の機能を含むようにして条件設定装置30が構成されてよい。条件設定装置30は、例えば、電気回路や電子回路を備えるコンピュータである。
【符号の説明】
【0101】
10,10A…光ファイバ融着接続機、11、11L、11R…可動ステージ、13…溝形成ユニット、15、15A、15B…放電電極、15AE、15BE…電極先端、16…照明部、17…レンズ、18…カメラ、21…画像処理部、22…融着条件処理部、24…高電圧発生回路、30…条件設定装置、F1,F2…光ファイバ(単心光ファイバ)、G1、G2…ガラス部、MF1…第1多心光ファイバ、MF2…第2多心光ファイバ