(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042022
(43)【公開日】2022-03-11
(54)【発明の名称】化粧シート及び化粧板
(51)【国際特許分類】
B32B 27/20 20060101AFI20220304BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220304BHJP
E04F 13/07 20060101ALI20220304BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
B32B27/20 Z
B32B27/00 E
E04F13/07 B
E04F13/08 G
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000417
(22)【出願日】2022-01-05
(62)【分割の表示】P 2016222560の分割
【原出願日】2016-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】大島 野乃花
(72)【発明者】
【氏名】播摩 一
【テーマコード(参考)】
2E110
4F100
【Fターム(参考)】
2E110AA57
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4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】化粧板の滑りを抑制することが可能な化粧シート及び化粧板を提供する。
【解決手段】基材1と、基材1上に形成され、且つ表面の動的摩擦係数が0.11以上0.30以下の範囲内である表面保護層を備える化粧シート20と、基板5上に化粧シート20を積層して形成されている化粧板10であって、表面保護層は、基材1上に形成された第一表面保護層3と、第一表面保護層3上の一部に形成された第二表面保護層4を備え、第一表面保護層3の光沢は、第二表面保護層4の光沢よりも高く、第二表面保護層4は、硬化型樹脂と、樹脂ビーズまたは無機化合物のフィラーを含有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に形成された表面保護層と、を備え、
前記表面保護層は、表面の動的摩擦係数が0.11以上0.30以下の範囲内であり、
前記表面保護層は、前記基材上に形成された第一表面保護層と、前記第一表面保護層上の一部に形成した第二表面保護層と、を備え、
前記第一表面保護層の光沢は、前記第二表面保護層の光沢よりも高く、
前記第二表面保護層は、硬化型樹脂と、樹脂ビーズまたは無機化合物のフィラーと、を含有することを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記第二表面保護層は、シリカ粒子を5質量%以上35質量%以下の範囲内で含有することを特徴とする請求項1に記載した化粧シート。
【請求項3】
前記第二表面保護層の表面は、接触式粗さ計で測定した最大高さが30μm以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載した化粧シート。
【請求項4】
前記第一表面保護層は、ウレタン結合を有する熱硬化型樹脂を含有することを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載した化粧シート。
【請求項5】
前記第二表面保護層は、ウレタン結合を有する熱硬化型樹脂と、シリカ粒子と、を含有することを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載した化粧シート。
【請求項6】
前記第二表面保護層は、バインダー樹脂と、ウレタン樹脂ビーズを含有し、
前記ウレタン樹脂ビーズは、前記バインダー樹脂100質量%に対して10質量%以上35質量%以下の範囲内で含有されていることを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載した化粧シート。
【請求項7】
前記ウレタン樹脂ビーズは、前記バインダー樹脂100質量%に対して20質量%以上25質量%以下の範囲内で含有されていることを特徴とする請求項6に記載した化粧シート。
【請求項8】
前記樹脂ビーズは、ウレタン樹脂ビーズであることを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載した化粧シート。
【請求項9】
前記基材は、二枚の紙基材と、前記二枚の紙基材の間に配置された防湿樹脂層と、を備えることを特徴とする請求項1から請求項8のうちいずれか1項に記載した化粧シート。
【請求項10】
前記表面保護層の前記基材と対向する面と反対側の面にエンボス加工が施されていることを特徴とする請求項1から請求項9のうちいずれか1項に記載した化粧シート。
【請求項11】
前記基材と前記表面保護層との間に形成され、且つ絵柄が印刷された絵柄模様層を備えることを特徴とする請求項1から請求項10のうちいずれか1項に記載した化粧シート。
【請求項12】
基板上に請求項1から請求項11のうちいずれか1項に記載した化粧シートを積層して形成されていることを特徴とする化粧板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家具や一般内装材等に用いる、化粧シート及び化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家具や一般内装材等に用いる化粧シートとしては、例えば、特許文献1に記載の技術がある。
特許文献1に記載の技術では、基材上に設けられて化粧シートの最表面を形成する表面保護層が、油性樹脂または電離放射線硬化性モノマーの硬化により形成されたマトリックス樹脂に、シリコーンオイルを含んだ汚染防止剤を含有して形成されている。これにより、化粧シートの最表面に対し、動摩擦係数の下限値を0.1としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、動摩擦係数の下限値が低いため、化粧シートを貼り付けて製造した化粧板を車両等へ積載する際に滑りが発生して、積み上げた化粧板が荷崩れする可能性があるという問題があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、化粧板の滑りを抑制することが可能な化粧シート及び化粧板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、基材と、前記基材上に形成された表面保護層を備える化粧シートである。前記表面保護層は、表面の動的摩擦係数が0.11以上0.30以下の範囲内である。また、前記表面保護層は、前記基材上に形成された第一表面保護層と、前記第一表面保護層上の一部に形成した第二表面保護層とを備える。前記第二表面保護層は、硬化型樹脂と、樹脂ビーズまたは無機化合物のフィラーとを含有する。前記第一表面保護層の光沢は、前記第二表面保護層の光沢よりも高い。
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様は、基板上に化粧シートを積層して形成されている化粧板である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、化粧板の滑りを抑制することが可能な化粧シート及び化粧板を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の第一実施形態の化粧シート及び化粧板の構成を表す断面図である。
【
図2】本発明の第一実施形態の変形例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の詳細な説明では、本発明の実施形態について、完全な理解を提供するように、特定の細部について記載する。しかしながら、かかる特定の細部が無くとも、一つ以上の実施形態が実施可能であることは明確である。また、図面を簡潔なものとするために、周知の構造及び装置を、略図で表す場合がある。
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0009】
(化粧板)
図1を参照して、化粧板10の構成について説明する。
図1中に表すように、化粧板10は、化粧シート20と、基板5を備えており、基板5上に化粧シート20を積層して形成されている。なお、「基板5上」とは、
図1中において、基板5の上側の面を表す。
なお、化粧板10は、例えば、大面積の引き戸等の内装用途に好適なものである。
【0010】
(化粧シート)
図1を参照して、化粧シート20の構成について説明する。
図1中に表すように、化粧シート20は、基材1と、絵柄印刷層2と、第一表面保護層3と、第二表面保護層4を備えており、基板5に近い側から、基材1、絵柄印刷層2、第一表面保護層3、第二表面保護層4を、この順に積層して形成されている。
【0011】
(基材)
基材1は、防湿性(水蒸気を通し難い性質)を有するシート状の層である。
第一実施形態では、一例として、基材1を、第一紙基材1aと、第二紙基材1bと、防湿樹脂層1cを備える防湿紙で形成した場合について説明する。
第一紙基材1aは、基材1のうち、基板5側に配置される部分を形成している。
したがって、第一紙基材1aの一方の面(
図1中において、第一紙基材1aの下側の面)は、基材1のうち基板5と対向する面である裏面1Tを形成している。
【0012】
また、第一紙基材1aは、例えば、セルロース繊維間に樹脂を含む紙間強化紙を用いて形成されている。
なお、紙間強化紙としては、例えば、セルロース繊維を50質量%以上含むものが好適である。また、紙間強化紙の厚さは、例えば、15[μm]以上60[μm]以下の範囲内とする。
【0013】
第一紙基材1aの坪量は、例えば、23[g/m
2]とする。
第二紙基材1bは、基材1のうち、絵柄印刷層2側に配置される部分を形成している。
したがって、第二紙基材1bの一方の面(
図1中において、第二紙基材1bの上側の面)は、基材1のうち絵柄印刷層2と対向する面である表面1Sを形成している。
また、第二紙基材1bは、第一紙基材1aと同様、例えば、セルロース繊維間に樹脂を含む紙間強化紙を用いて形成されている。
【0014】
第二紙基材1bの坪量は、例えば、30[g/m2]とする。
防湿樹脂層1cは、第一紙基材1aと第二紙基材1bとの間に配置されている。すなわち、基材1は、二枚の紙基材(第一紙基材1a、第二紙基材1b)と、二枚の紙基材の間に配置された防湿樹脂層1cとを備える。
また、防湿樹脂層1cは、水蒸気を通さない防湿樹脂を用いて形成されている。
【0015】
防湿樹脂としては、例えば、融点が100[℃]以上200[℃]以下の範囲内であるオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂が好適である。
防湿樹脂層1cの厚さは、例えば、20[μm]以上70[μm]以下の範囲内とする。
第一実施形態では、上述したように、基材1を、水蒸気を通さない防湿紙で形成する。
【0016】
これにより、化粧シート20の表面側から裏面側、すなわち、第二表面保護層4側から基板5側に水蒸気を通し難くすることが可能となり、水蒸気(湿気)により基板5が変形することを防止することが可能となる。
このため、例えば、化粧板10で大面積の引き戸を形成することで、水蒸気(湿気)により引き戸が変形することを防止でき、変形により引き戸が開閉できなくなることを防止することが可能となる。
【0017】
また、基材1を形成する防湿紙は、第一紙基材1aと、第二紙基材1bと、防湿樹脂層1cを備えるため、基材1に厚みとコシとを持たせることが可能となる。
このため、化粧シート20がシワになり難く、また、化粧シート20のカールの発生を防止することが可能となる。これにより、化粧シート20を、基板5へ比較的容易にラミネートすることが可能となる。
なお、第一実施形態では、基材1を、防湿紙を用いて形成したが、他の構成を採用することも可能であり、例えば、防湿性を有する樹脂のフィルムを用いて、基材1を形成してもよい。
【0018】
(絵柄印刷層)
絵柄印刷層2は、基材1上に積層されている。なお、「基材1上」とは、
図1中において、基材1の上側の面を表す。すなわち、絵柄印刷層2は、第二紙基材1b上に積層されている。
また、絵柄印刷層2は、印刷により形成され、意匠性を付与するための絵柄を付加するための層である。すなわち、絵柄印刷層2は、基材1と表面保護層(第一表面保護層3、第二表面保護層4)との間に形成され、且つ絵柄が印刷された層である。
【0019】
絵柄印刷層2を形成する印刷インキとしては、例えば、イソインドリノンイエロー、ポリアゾレッド、フタロシアニンブルー、カーボンブラック、酸化鉄、酸化チタンのいずれかを単独で、または、これらの混合物を顔料として用いることが可能である。また、絵柄印刷層2を形成する印刷インキには、例えば、酢酸エチル、酢酸nブチル、イソブタノール及びメチルイソブチルケトンを、溶剤として用いることが可能である。
【0020】
絵柄としては、例えば、木目、コルク、石目、タイル、焼き物、抽象柄等、化粧シート20を用いる箇所に適した絵柄を選択することが可能である。
また、絵柄模様層2は、柄インキ層2aと、導管インキ層2bを備えており、柄インキ層2aと、導管インキ層2bとが、この順に積層されて形成されている。
柄インキ層2aは、基材1の表面1Sに形成され、表面1S全体を覆い絵柄の下地色となる層である。
導管インキ層2bは、下地色以外の絵柄を表す層である。
【0021】
(表面保護層)
表面保護層は、表面(
図1中における、化粧板10及び化粧シート20の上側の面)の動的摩擦係数が0.11以上0.30以下の範囲内である。
また、表面保護層は、第一表面保護層3と、第二表面保護層4を備える。
(第一表面保護層)
第一表面保護層3は、絵柄模様層2上に形成され、絵柄模様層2の全体を被覆するシート状の層である。なお、「絵柄模様層2上」とは、
図1中において、絵柄模様層2の上側の面を表す。
また、第一表面保護層3は、第一表面保護層3を通して絵柄模様層2の絵柄を透視可能な程度に透明または半透明な材料(樹脂)で形成されている。
第一表面保護層3の材料としては、例えば、熱硬化性樹脂が好適である。
熱硬化性樹脂としては、例えば、第二表面保護層4との接着性、化粧シート20の変形追従性、耐擦傷性等を考慮すれば、2液硬化型ウレタン樹脂等のウレタン結合を有する熱硬化型樹脂(バインダー樹脂)を用いるのが好適である。
【0022】
第一実施形態では、一例として、第一表面保護層3が、硬化型樹脂(熱硬化型樹脂)を含有する場合ついて説明する。また、第一実施形態では、一例として、第一表面保護層3が、ウレタン結合を有する熱硬化型樹脂を含有する場合ついて説明する。
さらに、第一実施形態では、第一表面保護層3が、表面の動的摩擦係数が0.11以上0.30以下の範囲内である場合について説明する。
【0023】
ここで、熱硬化型樹脂には、シリカ粒子等の艶消剤の添加を行わない。また、熱硬化型樹脂には、溶剤として、酢酸エチル、酢酸nブチルを用いることが可能である。
2液硬化型ウレタン樹脂としては、例えば、ポリオールを主体とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするウレタン樹脂を用いることが可能である。
ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有するものを用いることが可能である。したがって、ポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオールを用いることが可能である。
【0024】
また、イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネートを用いることが可能である。したがって、イソシアネートとしては、例えば、芳香族イソシアネート、または、脂肪族や脂環式イソシアネートを用いることが可能である。
芳香族イソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート等を用いることが可能である。脂肪族や脂環式イソシアネートとしては、例えば、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等を用いることが可能である。
【0025】
また、2液硬化型ウレタン樹脂としては、例えば、各種イソシアネートの付加体、または、多量体を用いることが可能である。例えば、トリレンジイソシアネートの付加体、トリレンジイソシアネート3量体(trimer)等を用いることが可能である。なお、上述したイソシアネートにおいて、脂肪族や脂環式イソシアネートは、耐候性、耐熱黄変性も良好なものとすることが可能となる点で好適であり、例えば、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを用いることが可能である。
上述したように、第一表面保護層3は、ウレタン結合を有する熱硬化型樹脂、すなわち、硬度が高い樹脂を含む。このため、表面に露出した第一表面保護層3によって、化粧シート20の耐傷性を向上させることが可能となる。
【0026】
(第二表面保護層)
第二表面保護層4は、第一表面保護層3上に部分的に形成され、第一表面保護層3の一部(例えば、第一表面保護層3の厚さ方向で、導管インキ層2bと対向する部分)を被覆する層である。なお、「第一表面保護層3上」とは、
図1中において、第一表面保護層3の上側の面を表す。すなわち、第二表面保護層4は、第一表面保護層3上の一部に形成されている。
【0027】
図1中に表すように、第二表面保護層4は、第一表面保護層3の表面から突出した部分を形成する。このため、第二表面保護層4を、第一表面保護層3の厚さ方向で、導管インキ層2bと対向する部分に形成することにより、木目の導管を、視覚と触感との両方で表現することが可能となる。
また、第二表面保護層4は、例えば、第一表面保護層3上の0.1%以上の面積に形成する。なお、第二表面保護層4の面積の上限は、例えば、第一表面保護層3上の30%以下とする。
【0028】
上述したように、第一実施形態では、第一表面保護層3を、耐傷性及び耐汚染性が高い材料で形成している。このため、第二表面保護層4の面積が小さくとも、化粧シート20の構成を、耐傷性や耐汚染性に優れた構成とすることが可能となる。
また、第二表面保護層4は、第二表面保護層4及び第一表面保護層3を通して、絵柄模様層2の絵柄を透視可能な程度に透明または半透明な材料(樹脂)で形成されている。
【0029】
第二表面保護層4の材料としては、例えば、熱硬化性樹脂を用いることが好適である。
第一表面保護層3との接着性等を考慮すると、熱硬化性樹脂としては、例えば、2液硬化型ウレタン樹脂等のウレタン結合を有する熱硬化型樹脂(バインダー樹脂)に、シリカ粒子等の艶消剤及び合成樹脂ビーズ(樹脂ビーズ)を添加した混合物を用いることが好適である。
【0030】
第一実施形態では、第二表面保護層4の材料として、ウレタン結合を有する熱硬化性樹脂に、艶消剤としてシリカ粒子を添加し、さらに、合成樹脂ビーズを添加したものを用いる。これにより、第一表面保護層3の光沢(艶)を、第二表面保護層4の光沢よりも高くする。すなわち、第一表面保護層3の光沢は、第二表面保護層4の光沢よりも高い。
したがって、第一実施形態では、第二表面保護層4を、ウレタン結合を有する熱硬化型樹脂、すなわち、下層(第一表面保護層3)の光沢の影響を受けない樹脂で形成する。このため、第一表面保護層3と第二表面保護層4とで、視覚的な立体感を適切に表現することが可能となる。また、ウレタン結合を有する熱硬化型樹脂は、硬度が高いため、化粧シート20の耐傷性を向上させることが可能となる。
【0031】
なお、上述したように、第一表面保護層3には艶消剤を添加しない。このため、艶消剤(シリカ粒子)を添加した第二表面保護層4は、第一表面保護層3よりも、光の反射量を小さくし、光沢(艶)を低くすることが可能となる。したがって、第一表面保護層3と第二表面保護層4により、化粧シート20の表面に光沢差を設け、人間の目の錯覚を利用して、視覚的に立体感を感じさせることが可能となる。
【0032】
シリカ粒子は、熱硬化性樹脂の全質量に対し、5質量%以上含むのが好適である。これにより、第二表面保護層4の光沢を、第一表面保護層3に対して十分に低下させることが可能となり、第二表面保護層4と第一表面保護層3との光沢差を増大させることが可能となる。したがって、第一表面保護層3の全面積に対し、第二表面保護層4の面積が小さい構成であっても、視覚的な立体感を適切に感じさせることが可能となる。なお、シリカ粒子の上限は、熱硬化性樹脂の全質量に対し、35質量%以下とする。
【0033】
第一実施形態では、一例として、第二表面保護層4が、シリカ粒子を5質量%以上35質量%以下の範囲内で含有する場合について説明する。
また、第一実施形態では、一例として、第二表面保護層4が、ウレタン結合を有する熱硬化型樹脂と、シリカ粒子を含有する場合について説明する。
さらに、第一表面保護層3の光沢(艶)を第二表面保護層4の光沢(艶)よりも大きくしたため、第一表面保護層3の表面の平滑度を向上させることが可能となり、指紋(手垢)汚れが付き難くなり、化粧シート20の耐汚染性を向上させることが可能となる。耐汚染性の向上効果は、第一表面保護層3の塗布量が低塗布量であっても得られる。また、アメリカ等で人気な塗装調の絵柄表現(木目表現等)を行うことが可能となる。また、第一表面保護層3の白濁が低減されるため、より繊細で透明感のある絵柄の意匠表現が可能となる。
【0034】
合成樹脂ビーズとしては、例えば、透明度の高いウレタン樹脂ビーズを用いることが可能である。これにより、第二表面保護層4の透明度を向上させることが可能となり、意匠を付与するための絵柄模様層2の絵柄を、より明瞭に透視することが可能となる。合成樹脂ビーズの平均粒径は、30[μm]以上とする。また、合成樹脂ビーズには、溶剤として、酢酸エチル、酢酸nブチルを用いることが可能である。
【0035】
第一実施形態では、一例として、第二表面保護層4が、樹脂ビーズとして、ウレタン樹脂ビーズを含有する場合について説明する。
第一実施形態では、一例として、第二表面保護層4に、ウレタン樹脂ビーズが、熱硬化型樹脂(バインダー樹脂)100質量%に対して、20質量%以上25質量%以下の範囲内で含有されている場合について説明する。
また、第二表面保護層4の表面は、接触式粗さ計で測定した最大高さRmax値を、30[μm]以上として形成する。すなわち、第二表面保護層4の表面は、接触式粗さ計で測定した最大高さが30[μm]以上である。これにより、触感による立体感を、より適切に感じさせることが可能となる。
【0036】
なお、第一実施形態では、バインダー樹脂として熱硬化型樹脂を用いたが、バインダー樹脂としては、他の構成を用いることも可能である。すなわち、例えば、バインダー樹脂として、電離放射線硬化型樹脂を用いる構成としてもよい。この場合、電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、紫外線硬化型樹脂が好適である。また、紫外線硬化型樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂を用いることが可能である。これにより、第二表面保護層4、すなわち、化粧シート20の最表面層の硬度を向上させることが可能となり、化粧シート20の耐摩耗性や、耐擦傷性、耐溶剤性等の表面物性を向上させることが可能となる。また、例えば、バインダー樹脂として、熱硬化型樹脂と電離放射線硬化型樹脂との混合物を用いる構成としてもよい。
【0037】
また、第一実施形態では、熱硬化型樹脂に、合成樹脂ビーズを添加する例を示したが、他の構成を採用してもよい。すなわち、熱硬化型樹脂に、例えば、無機化合物のフィラーを添加する構成としてもよい。
また、第二表面保護層4の形状は、特に限定されず、丸、四角形、六角形等の規則的に並んだ定形の形状としてもよく、不定型な絵柄形状としてもよい。また、第二表面保護層4の形状は、絵柄模様層2の絵柄と同調させた形状としてもよく、この場合、絵柄をよりリアルに見せることが可能となる。
以上説明したように、表面保護層は、表面の動的摩擦係数が0.11以上0.30以下の範囲内である。さらに、第二表面保護層4は、硬化型樹脂と、樹脂ビーズを含有する。
【0038】
(基板)
基板5は、金属系の材料、または、木質系の材料を用いて形成された板状の部材である。
金属系の材料としては、例えば、アルミ、鋼、ステンレス、複合パネルを用いることが可能である。複合パネルとしては、例えば、芯材となる樹脂層と、樹脂層の両面に貼り付けられた金属板(アルミニウム、ガルバリウム、ステンレス等)とを備えたものを用いることが可能である。
【0039】
木質系の材料としては、例えば、MDF(Medium Density Fiberboard)、合板、パーティクルボード(Particle board)等を用いることが可能である。
なお、上述した第一実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第一実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0040】
(第一実施形態の効果)
以上説明したように、第一実施形態の化粧シート20は、以下の効果を奏することが可能となる。
(1)基材1上に形成された表面保護層の、表面の動的摩擦係数が0.11以上0.30以下の範囲内である。また、第一表面保護層3の光沢が、第二表面保護層4の光沢よりも高く、第二表面保護層4が、硬化型樹脂と、樹脂ビーズまたは無機化合物のフィラーを含有する。
このため、化粧シート20の動的摩擦係数を、滑りの発生を抑制することが可能な値とすることが可能となり、化粧板10の滑りを抑制することが可能な化粧シート20を提供することが可能となる。
また、第一表面保護層3と第二表面保護層4により、化粧シート20の表面に光沢差を設け、人間の目の錯覚を利用して、視覚的に立体感を感じさせることが可能となる。
【0041】
(2)第二表面保護層4が、シリカ粒子を5質量%以上35質量%以下の範囲内で含有する。
このため、第二表面保護層4が含有するシリカ粒子を5質量%以上とし、比較的多くすることで、第二表面保護層4の光沢を十分に低下させることが可能となり、第二表面保護層4と第一表面保護層3との光沢差を増大させることが可能となる。これにより、第二表面保護層4の面積が小さい場合であっても、視覚的な立体感を適切に感じさせることが可能となる。
【0042】
(3)第二表面保護層4の表面が、接触式粗さ計で測定した最大高さが30[μm]以上である。
このため、触感による立体感を、より適切に感じさせることが可能となる。
(4)第一表面保護層3が、ウレタン結合を有する熱硬化型樹脂を含有する。
このため、絵柄模様層2や第二表面保護層4等、第一表面保護層3と他の層との接着性、化粧シート20の変形追従性、耐傷性を向上させることが可能となる。
【0043】
(5)第二表面保護層4が、ウレタン結合を有する熱硬化型樹脂と、シリカ粒子を含有する。
このため、第一表面保護層3等、第二表面保護層4と隣接する層との接着性、化粧シート20の変形追従性、耐傷性を向上させることが可能となる。
(6)ウレタン樹脂ビーズが、バインダー樹脂100質量%に対して20質量%以上25質量%以下の範囲内で、第二表面保護層4に含有されている。
このため、第二表面保護層4の表面の動的摩擦係数を、化粧シート20を貼り付けて製造した化粧板10を積み上げた状態で、化粧板10の荷崩れを起こしにくい動的摩擦係数とすることが可能となる。
【0044】
(7)表面保護層が含有する樹脂ビーズが、ウレタン樹脂ビーズである。
このため、第二表面保護層4の透明度を向上させることが可能となり、第二表面保護層4を通して、意匠を付与するための絵柄模様層2の絵柄をより明瞭に透視させることが可能となる。
(8)基材1が、(第一紙基材1a、第二紙基材1b)と、二枚の紙基材の間に配置された防湿樹脂層1cとを備える。
このため、基材1に厚みとコシとを持たせることが可能となり、化粧シート20がシワになり難く、また、化粧シート20のカールの発生を防止することが可能となる。これにより、化粧シート20を基板5へ容易にラミネートすることが可能となる。
【0045】
(9)基材1と表面保護層との間に形成され、且つ絵柄が印刷された絵柄模様層2を備える。
このため、化粧シート20に絵柄を付加することが可能となる。
また、以上説明したように、第一実施形態の化粧板10は、以下の効果を奏することが可能となる。
(10)化粧板10が、基板5上に化粧シート20を積層して形成されている。
このため、化粧シート20を備えて形成した化粧板10の動的摩擦係数を、滑りの発生を抑制することが可能な値とすることが可能となり、化粧板10の滑りを抑制することが可能な化粧板10を提供することが可能となる。
【0046】
(変形例)
(1)第一実施形態では、第一表面保護層3と第二表面保護層4との光沢差、及び第一表面保護層3と第二表面保護層4との高低差により、視覚的な立体感と触感による立体感とを感じさせる例を示したが、他の構成を採用することも可能である。
すなわち、例えば、
図2中に表すように、化粧シート20に、エンボス加工によるエンボス30が施され、エンボス30により、触感による立体感をより感じさせる構成としてもよい。したがって、変形例の化粧シート20は、表面保護層(第一表面保護層3、第二表面保護層4)の基材1と対向する面と反対側の面(表面1S)に、エンボス加工が施されている。
【0047】
この場合、エンボス加工では、化粧シート20を、深度15[μm]以上の凹部を有するエンボスロールと、硬度が50度以上90度未満のゴム製のバックロールとの間を通過させて、化粧シート20に凹凸形状を施すようにしてもよい。硬度の計測方法としては、例えば、JIS K 6301 A型を用いることが可能である。そして、エンボス30を施した化粧シート20に基板5を貼り合わせて、化粧板10を形成する。
【0048】
(2)第一実施形態では、第二表面保護層4に、ウレタン樹脂ビーズが、熱硬化型樹脂(バインダー樹脂)100質量%に対して、20質量%以上25質量%以下の範囲内で含有されている構成としたが、これに限定するものではない。
すなわち、第二表面保護層4に、ウレタン樹脂ビーズが、熱硬化型樹脂(バインダー樹脂)100質量%に対して、10質量%以上35質量%以下の範囲内で含有されている構成としてもよい。
【実施例0049】
第一実施形態の
図1を参照しつつ、以下に記載する実施例により、実施例1及び2の化粧シートと、比較例1及び2の化粧シートについて説明する。
(実施例1)
実施例1の化粧シートは、以下の構成を有する。
基材1は、坪量が29[g/m
2]の薄葉紙を用いて形成した。
表面保護層(第一表面保護層3、第二表面保護層4)は、ウレタン樹脂ビーズを含有させて形成した。
【0050】
(実施例2)
実施例2の化粧シートは、基材1を、坪量が50[g/m2]の薄葉紙を用いて形成した構成を除き、実施例1の化粧シートと同様の構成である。
(比較例1)
比較例1の化粧シートは、表面保護層を、アクリル樹脂ビーズを含有させて形成した構成を除き、実施例1の化粧シートと同様の構成である。
【0051】
(比較例2)
比較例2の化粧シートは、基材1を、坪量が50[g/m2]の薄葉紙を用いて形成した構成を除き、比較例1の化粧シートと同様の構成である。
(性能評価)
実施例1及び2の化粧シート20と、比較例1及び2の化粧シート20に対し、それぞれ、以下の方法に従い性能評価(耐摩耗性、耐傷性、耐溶剤性、動的摩擦係数、耐剥離性、耐水性、耐汚染性、外観)を行った。評価結果は、表1中に表す。
【0052】
【0053】
(耐摩耗性)
耐摩耗性は、摩耗C試験で評価した。
摩耗C試験は、荷重500gの250回転で行った。
(耐傷性)
耐傷性は、ホフマンスクラッチハードネステスター(BYK―Gardner社製)を用いて評価した。
【0054】
(耐溶剤性)
耐溶剤性は、MEK(メチルエチルケトン)往復ラビング試験を行い、50往復させて評価した。
(動的摩擦係数)
動的摩擦係数(COF:kinetic coefficient of friction)は、滑り試験で評価した。
滑り試験は、以下の条件で行った。
板:厚さ12mmのパーティクルボード
紙(単体):化粧紙
速度:20[mm/s](JIS P8147:2010に準拠)
【0055】
(耐剥離性)
耐剥離性は、セロファンテープを貼り付けて常温の環境下で10日間放置した後に剥離させた結果と、セロファンテープを貼り付けて60[℃]の環境下で2日間放置した後に剥離させた結果で評価した。
(耐水性)
耐水性は、沸騰水を用いた1時間の試験と、蒸留水を用いた4時間の試験で評価した。
【0056】
(耐汚染性)
耐汚染性は、JIS K 6902_2008の熱硬化性樹脂に対する高圧化粧板試験方法に準拠して評価した。
また、高圧化粧板試験は、サラダ油(J-オイルミルズ株式会社製)、コーヒー(2gのインスタントコーヒーを180mlの水道水に溶かしたもの)、紅茶(120mlの沸騰水道水にティーバッグを2分間入れたもの)、トマトケチャップ(カゴメ株式会社製)、マスタード(SB食品株式会社販売)を用い、それぞれ、4時間かけて行った。
【0057】
(外観)
外観は、外観の意匠を官能評価して行った。
(総合評価)
表1中に表されるように、実施例1及び実施例2の化粧シート20は、比較例1及び比較例2の化粧シート20よりも、動的摩擦係数が0.125以上増加していることが確認された。
したがって、実施例1及び実施例2の化粧シート20は、比較例1及び比較例2の化粧シート20と比較して、化粧シートを貼り付けて製造した化粧板の滑りを抑制することが可能である。
1…基材、1a…第一紙基材、1b…第二紙基材、1c…防湿樹脂層、2…絵柄模様層、2a…柄インキ層、2b…導管インキ層、3…第一表面保護層、4…第二表面保護層、5…基板、10…化粧板、20…化粧シート、30…エンボス