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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042031
(43)【公開日】2022-03-14
(54)【発明の名称】全方向移動車両
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20220307BHJP
【FI】
G05D1/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020147187
(22)【出願日】2020-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】吉見 成弘
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA01
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG08
5H301LL06
5H301MM05
5H301MM09
5H301QQ08
(57)【要約】
【課題】搭載スペースの制約や大型化を招くことなく、自律的に車体が有するハウジングの内部を冷却することが可能な全方向移動車両の提供にある。
【解決手段】車体11と、車体11に備えられるハウジング25と、自律走行のための走行駆動部と、走行駆動部を制御する制御装置15と、を有する全方向移動車両10において、ハウジング25に設けられ、空気取入のための開口部28Aと、ハウジング25の内部の温度を検出する温度センサ27と、備え、制御装置15は、温度センサ27により検出されるハウジング25の内部の温度が閾値を超えたとき、車体11を一方向へ自転するように走行駆動部を制御し、車体11の一方向への自転により開口部28Aから空気が取り込まれ、取り込まれた空気によりハウジング25の内部を冷却する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングを有する車体と、
自律走行のための走行駆動部と、
前記走行駆動部を制御する制御装置と、を有する全方向移動車両において、
前記ハウジングに設けられ、空気取入のための開口部と、
前記ハウジングの内部の温度を検出する温度センサと、を備え、
前記制御装置は、前記温度センサにより検出される前記ハウジングの内部の温度が閾値を超えたとき、前記車体を一方向へ自転するように前記走行駆動部を制御し、
前記車体の一方向への自転により開口部から空気が取り込まれ、取り込まれた空気により前記ハウジングの内部を冷却することを特徴とする全方向移動車両。
【請求項2】
前記ハウジングは前記開口部への空気の取り込みを助長する空気案内部材を有することを特徴とする請求項1記載の全方向移動車両。
【請求項3】
前記空気案内部材は、自転時に開口部を開き、非自転時に閉じる可動式のガイドプレートであることを特徴とする請求項2記載の全方向移動車両。
【請求項4】
前記ハウジングの内部には、発熱体としての前記走行駆動部および前記制御装置の少なくとも一方が備えられていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載の全方向移動車両。
【請求項5】
前記車体に備えられ、荷の搭載を可能とする荷台と、
前記荷台の荷の有無を検出する在荷センサと、を有し、
前記在荷センサが荷を検出するとき、前記制御装置は、自転時に荷を前記荷台から落下させないように前記走行駆動部を制御することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項記載の全方向移動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、全方向移動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
全方向移動車両の従来技術としては、例えば、特許文献1に開示された全方向移動車両が知られている。特許文献1に開示された全方向移動車両は、機台と4つの車輪を備えており、各車輪はオムニホイールである。そして、全方向移動車両は、車輪を4つ用いて車軸を変動させないで機台を全方向に可動できる。全方向移動車両は、モータ、ドライブ回路、制御部を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-148728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された全方向移動車両では、例えば、自己位置を検出しつつ走行ルートを決定するほか、走行ルートにおける障害物を検出して回避する等、自律的に走行するように構成されている場合がある。全方向移動車両が自律走行する場合、制御部は、自己位置の推定、走行ルートの決定、障害物の検知および障害物の回避等のために、複雑な制御を行うので、制御部の発熱量が大きくなるという問題がある。そして、発熱体である制御部の放熱を促進するために、車体に冷却ファンなどの冷却器を搭載することが考えられる。しかしながら、冷却器だけでの冷却は、冷却器に相応を冷却能力が要求され、全方向移動車両における搭載スペースの制約や全方向移動車両の大型化を招く。なお、自律走行を行わない全方向移動車両であっても、制御部に対する負荷が増大して制御部が発熱する場合には、制御部の放熱の促進が求められる。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、搭載スペースの制約や大型化を招くことなく、自律的に車体が有するハウジングの内部を冷却することが可能な全方向移動車両の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、ハウジングを有する車体と、自律走行のための走行駆動部と、前記走行駆動部を制御する制御装置と、を有する全方向移動車両において、前記ハウジングに設けられ、空気取入のための開口部と、前記ハウジングの内部の温度を検出する温度センサと、を備え、前記制御装置は、前記温度センサにより検出される前記ハウジングの内部の温度が閾値を超えたとき、前記車体を一方向へ自転するように前記走行駆動部を制御し、前記車体の一方向への自転により開口部から空気が取り込まれ、取り込まれた空気により前記ハウジングの内部を冷却することを特徴とする。
【0007】
本発明では、温度センサがハウジングの内部の温度を検出するが、温度センサによって検出された温度が閾値を超えたとき、制御装置は、車体を一方向へ自転するように走行駆動部を制御する。車体が自転することでハウジングに設けた開口部から空気が取り込まれ、取り込まれた空気はハウジングの内部に流れ、ハウジングの内部を冷却する。つまり、車体の一方向への自転によりハウジングの内部を冷却することができる。その結果、全方向移動車両において搭載スペースの制約や大型化を招くことなく、自律的に車体が有するハウジングの内部を冷却できる。
【0008】
また、上記の全方向移動車両において、前記ハウジングは前記開口部への空気の取り込みを助長する空気案内部材を有する構成としてもよい。
この場合、車体が自転することにより、空気案内板によって空気が開口部へ導入され易くなり、ハウジングの内部をより冷却することができる。
【0009】
また、上記の全方向移動車両において、自転時に開口部を開き、非自転時に閉じる可動式のガイドプレートである構成としてもよい。
この場合、空気案内板は可動式のガイドプレートであるので、車体の自転時には開口部を開き、車体の非自転時に開口部を閉じる。したがって、車体の自転時には開口部から導入される空気によってハウジングの内部を冷却することができ、非自転時において空気案内板が邪魔になったり、開口部から異物が進入したりすることはない。
【0010】
また、上記の全方向移動車両において、前記ハウジングの内部には、発熱体としての前記走行駆動部および前記制御装置の少なくとも一方が備えられている構成としてもよい。
この場合、ハウジングの内部に備えられる発熱体としての走行駆動部および制御装置の少なくとも一方を車体の自転によって冷却することができる。
【0011】
また、上記の全方向移動車両において、前記車体に備えられ、荷の搭載を可能とする荷台と、前記荷台の荷の有無を検出する在荷センサと、を有し、前記在荷センサが荷を検出するとき、前記制御装置は、自転時に荷を前記荷台から落下させないように前記走行駆動部を制御する構成としてもよい。
この場合、全方向移動車両が荷台を備えるので荷を搬送することができる。在荷センサが荷を検出するとき、制御装置は、自転時に荷を荷台から落下させないように走行駆動部を制御する。このため、荷台に荷が存在しても自転時に荷が荷台から落下することなく、ハウジングの内部を冷却することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、搭載スペースの制約や大型化を招くことなく、自律的に車体が有するハウジングの内部を冷却することが可能な全方向移動車両を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施形態に係る全方向移動車両の斜視図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る全方向移動車両の正面図である。
図3図2におけるA-A線矢視図である。
図4】全方向移動車両の自転の制御を示すフロー図である。
図5】全方向移動車両の自転による制御装置の冷却を説明する要部平面図である。
図6】第2の実施形態に係る全方向移動車両の斜視図である。
図7】(a)は、冷却時に開口部が開かれている状態を示す横断面図であり、(b)は開口部が閉じられている状態を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施形態に係る全方向移動車両について図面を参照して説明する。本実施形態は、作業者を自律走行により追尾して無人であっても荷を搬送することが可能な荷搬送用の全方向移動車両の例である。
【0015】
図1図2に示すように、全方向移動車両10は、複数の車輪12を備える車体下部13および車体下部13に支持される車体上部14を備える車体11を有する。車体下部13に備えられる車輪12は全方向移動車輪である。全方向移動車輪とは、車軸(図示せず)と一体回転するほか、車軸の軸線方向への移動を可能とする車輪である。図3に示すように、本実施形態では、車体11に4つの車輪12が設けられている。
【0016】
全方向移動車両10は、車輪12の回転数および回転方向が制御されることにより、車体11の向きを維持した状態での全方向への移動が可能である。また、全方向移動車両10は、車体11の向きを変更しながらの移動が可能であるほか、移動しない状態での車体11の向きの変更が可能である。なお、ここでいう「全方向」とは、全方向移動車両10が走行する路面上や床面上での移動方向を示す。
【0017】
図2に示すように、車体下部13には、全方向移動車両10の各部を制御する制御装置15が備えられている。また、車体下部13には、車輪12を駆動させる走行用の駆動モータ(図示せず)および走行用の駆動モータを駆動させるモータドライバ34が備えられている。また、車体下部13には障害物検出センサ16が備えられている。障害物検出センサ16としては、制御装置15に障害物を検出させることが可能なものが用いられる。本実施形態の障害物検出センサ16は、レーザーレンジファインダ(LRF)である。
【0018】
レーザーレンジファインダは、レーザーを周辺に照射し、レーザーが当たった部分から反射された反射光を受信することで距離を測定する距離計である。本実施形態では、水平方向への照射角度を変更しながらレーザーを照射する二次元のレーザーレンジファインダが用いられている。なお、車体下部13の詳細は後述する。
【0019】
車体上部14は、車体下部13と連結される基台部17と、基台部17上に設けられた一対の立壁部18と、を備えている。一対の立壁部18には荷台20を支持する支持部材19がそれぞれ備えられている。支持部材19は荷台20を支持するほか、立壁部18に対して昇降可能に備えられている。支持部材19の高さを変更することにより荷台20の高さが変更される。なお、一方の立壁部18には、オペレータが全方向移動車両10の操作を可能とする操作部21が備えられている。
【0020】
荷台20は、一対の支持部材19の上部にて水平に横架された金属板である。本実施形態の荷台20は、軽量化のためにアルミニウムにより形成されている。荷台20は、支持部材19と接続されている一対の接続端部22と、荷Wの出し入れが可能な側となる開放端部23と、を有している。開放端部23は、基台部17の輪郭に沿うように、平面視で円弧の端部を形成している。荷台20は、荷Wの荷台20に対する出入りを容易にするため荷台20上で荷Wのスライドが可能である。本実施形態の荷Wは、例えば、コンテナボックスであるが、荷台20に載置可能であればコンテナボックスに限定されない。
【0021】
荷台20には、荷台20における荷Wの有無を検出する在荷センサ24が備えられている。本実施形態の在荷センサ24は荷Wの荷重を検知することにより荷Wを検知するセンサである。なお、在荷センサ24は、荷Wの荷重を検知するセンサに限らず、在荷センサ24は光学的に荷Wを検知するセンサのように、荷Wを検出することが可能なセンサであれば、センサの方式や種類は特に限定されず、取付位置も荷台20に限定されない。
【0022】
ここで、全方向移動車両10の車体下部13について詳しく説明する。車体下部13は、円筒形のハウジング25と、ハウジング25内の空間を上下に二分する円形の隔壁26と、を有している。ハウジング25の内部空間における隔壁26の下方の空間には、車輪12および走行用の駆動モータ(図示せず)が収容されている。ハウジング25の内部空間における隔壁26の上方の空間には、制御装置15および走行用の駆動モータ(図示せず)が収容されている。制御装置15は隔壁26の上面中心に取り付けられている。
【0023】
制御装置15は、データ処理や各種のプログラムを実行する演算処理部(図示せず)と、各種データおよびプログラムを格納する記憶部(図示せず)と、を備えている。制御装置15は、全方向移動車両10の各部を制御するほか、自己位置の推定、走行ルートの決定、障害物の検知および障害物の回避等のために、膨大なデータを取り扱う上、複雑な制御を行う。したがって、制御装置15では制御による発熱量が大きくなることから、制御装置15は発熱体に相当する。本実施形態では、図3に示すように、制御装置15の温度を検出する温度センサ27が制御装置15に設けられている。温度センサ27により検出された温度は制御装置15に伝達される。なお、図3では制御装置15は平面視で長方形としたが、平面視の形状は長方形に限らず、制御装置15の形状は特に限定されない。
【0024】
ハウジング25には、全方向移動車両10の自転によって空気を取り入れるための開口部28が設けられている。開口部28は略矩形であり、ハウジング25の内部空間における隔壁26の上方の空間と外部とが連通するように開口されている。開口部28はハウジング25において4箇所に設けられており、周方向において互いに等間隔となるように配置されている。4箇所の開口部28のうち互いに対向する2箇所の開口部28には、空気案内部材としてのガイドプレート29が設けられている。残りの2箇所の開口部28にはガイドプレート29が設けられていない。なお、ガイドプレート29が設けられている開口部28を開口部28Aとし、ガイドプレート29が設けられていない開口部28Bとし、開口部28を区別する場合がある。
【0025】
ガイドプレート29は、全方向移動車両10が自転(超信地旋回)したとき開口部28からハウジング25内へ空気を取り込み易くするための部材である。本実施形態では、図3に示すように、開口部28Aの周方向の両端部30、31のうち、一方の端部30にガイドプレート29の基端部32が取り付けられている。ガイドプレート29は、開口部28Aと対向するように一方の端部30からハウジング25の接線方向に延在する。ガイドプレート29の先端部33は、開口部28Aの他方の端部31と対向している。したがって、ガイドプレート29の先端部33から基端部32へ向かうにつれて、ガイドプレート29と開口部28Aとの間の距離は小さくなっている。
【0026】
全方向移動車両10が一方向への自転をするとき、ガイドプレート29は開口部28Aからハウジング25の内部への空気の取り込みを助長する。なお、一方向への自転とは、ガイドプレート29の基端部32が先端部33側へ向かうような全方向移動車両10の自転(図3において時計回り)である。全方向移動車両10が一方向へ自転し、開口部28Aからハウジング25の内部への空気が取り込まれるとき、ガイドプレート29のない開口部28Bは空気排出口として機能する。
【0027】
一方、他方向への自転(図3において反時計回り)では、ガイドプレート29は一方向への自転と比較して開口部28Aからハウジング25内への空気の取り込みを妨げるため、他方向への自転は行われない。因みに、全方向移動車両10が直進する場合、向きによっては、ガイドプレート29が設けられた開口部28Aから空気が取り込まれるが、主にガイドプレート29が設けられていない一方の開口部28Bからハウジング25の内部に空気が取り込まれ、他方の開口部28Bから空気が排出される。
【0028】
ところで、全方向移動車両10は、制御装置15が高温になると全方向移動車両10が一方向へ自転し、自転によって開口部28Aからハウジング25内に空気を取り込み、制御装置15の周囲に空気の流れを形成することで制御装置15を冷却する。制御装置15は、図4に示す手順によって冷却のための自転を制御する。まず、停止中において温度センサ27が制御装置15の温度Tを検出する(ステップS01を参照)。温度センサ27により検出された制御装置15の温度Tが第1閾値T1以上であるか否かを判別する(ステップS02を参照)。第1閾値T1は、制御装置15の耐熱性能に基づいて予め設定された温度であり、制御装置15に記憶されている。
【0029】
ステップS02において制御装置15の温度Tが第1閾値T1以上であると判別されると、制御装置15は、全方向移動車両10を一方へ向けて自転させるようにモータドライバ34に指令を出し、指令を受けたモータドライバ34は走行用の駆動モータを制御する。これにより全方向移動車両10は一方へ向けて自転する(ステップS03を参照)。全方向移動車両10が一方へ向けて自転することにより、空気がハウジング25内に取り込まれ、制御装置15の温度Tが下降する。ステップS02において制御装置15の温度Tが第1閾値T1未満であると判別されるとステップS01へ戻る。
【0030】
次に、温度センサ27により検出された制御装置15の温度Tが第2閾値T2以下であるか否かを判別する(ステップS04を参照)。第2閾値T2は、第1閾値T1に基づいて予め設定された温度であり、制御装置15に記憶されている。制御装置15の温度Tが第2閾値T2以下であると判別されると、制御装置15は、全方向移動車両10の自転を停止させるようにモータドライバ34に指令を出し、指令を受けたモータドライバ34は走行用の駆動モータを制御する。これにより全方向移動車両10は自転を停止する(ステップS05を参照)。制御装置15の温度が第2閾値T2を超えていると判別されると、ステップS03へ戻り、全方向移動車両10の自転が継続される。ステップS05を終了するとステップS01へ戻り、制御装置15の温度が引き続き監視される。
【0031】
このように、一連のステップS01~S05によって、温度センサ27により検出される制御装置15の温度が第1閾値T1を超えたとき、制御装置15は、車体11を一方向へ自転するようにモータドライバ34を制御する。そして、車体11の一方向への自転により開口部28Aから空気が取り込まれ、取り込まれた空気により制御装置15を冷却する。
【0032】
なお、荷台20に荷Wが存在する場合、荷Wが荷台20から落下しないように、荷台20に荷Wが存在しない場合と比較して、自転速度は低速に制御される。したがって、荷台20に荷Wが存在すると、荷台20に荷Wが存在しない場合と比較すると、第2閾値T2以下になるまでに要する時間は長くなる。
【0033】
次に、本実施形態の全方向移動車両10による作用について説明する。全方向車両は作業者を自律走行により追尾し、荷Wを無人で搬送する。全方向車両は作業者に追随しつつ、発停を繰り返す。全方向移動車両10に搭載されている制御装置15は、全方向移動車両10の各部を制御するほか、自己位置の推定、走行ルートの決定、障害物の検知および障害物の回避等のために、膨大なデータを取り扱う上、複雑な制御を行う。したがって、制御装置15の発熱量が大きくなる。
【0034】
制御装置15の発熱量が大きくなって制御装置15の温度が過度に上昇すると、制御装置15が故障するので、制御装置15を冷却する必要がある。全方向移動車両10の停車中に制御装置15の温度が第1閾値T1以上になると、図5に示すように、全方向移動車両10は一方向へ自転する。図5における矢印Rは自転の方向を示す。空気が自転により開口部28Aからハウジング25内に取り込まれ、取り込まれた空気は制御装置15の周囲で流れて開口部28Bから排出される。図5における白抜き矢印は空気の流れを示す。このため、制御装置15の放熱が促進され、制御装置15は冷却される。制御装置15が冷却されて、制御装置15の温度が第2閾値T2以下になると、全方向移動車両10は一方向へ自転を停止する。
【0035】
全方向移動車両10の走行中では、主に一方の開口部28Bから取り込まれた空気が制御装置15の周囲を通り、他方の開口部28Bから排出される。このため、制御装置15は、走行時において一方の開口部28Bから他方の開口部28Bへ流れる空気によって冷却される。なお、走行時において、車体11の向きによってはいずれかの開口部28Aから空気が取り込まれる場合もある。
【0036】
本実施形態に係る全方向移動車両10は以下の効果を奏する。
(1)温度センサ27が制御装置15の温度を検出するが、温度センサ27によって検出された温度Tが第1閾値T1以上のとき、制御装置15は、車体11を一方向へ自転するようにモータドライバ34を制御する。車体11が自転することでハウジング25に設けた開口部28Aから空気が取り込まれ、取り込まれた空気はハウジング25の内部に流れ、ハウジング25の内部を冷却する。つまり、車体11の一方向への自転によりハウジング25の内部を冷却することができる。その結果、全方向移動車両10において搭載スペースの制約や大型化を招くことなく、自律的に車体11が有するハウジング25の内部を冷却できる。
【0037】
(2)ハウジング25は開口部28Aへの空気の取り込みを助長する空気案内部材としてのガイドプレート29を有する。このため、車体11が自転することにより、ガイドプレート29によって空気が開口部28Aへ導入され易くなり、ハウジング25の内部をより冷却することができる。
【0038】
(3)ハウジング25の内部に備えられる発熱体としての制御装置15およびモータドライバ34を自転によって冷却することができる。また、モータドライバ34が発熱する場合でも自転によってモータドライバ34を冷却することができる。
【0039】
(4)全方向移動車両10は、車体11に備えられ、荷Wの搭載を可能とする荷台20と、荷台20の荷Wの有無を検出する在荷センサ24と、を有する。このため、全方向移動車両10は荷Wを搬送することができる。そして、在荷センサ24が荷Wを検出するとき、制御装置15は、自転時に荷Wを荷台20から落下させないようにモータドライバ34を制御する。このため、荷台20に荷Wが存在しても自転時に荷Wが落下することなく、ハウジング25の内部を冷却することができる。
【0040】
(5)車体11は、ガイドプレート29を有する開口部28Aとガイドプレート29を備えない開口部28Bを備えている。このため、自転時において開口部28Aからハウジング25内に取り込まれた空気は制御装置15の周りを通り、開口部28Bから排出され、制御装置15の周りに空気の流れを確実に作り出すことができる。その結果、制御装置15は確実に冷却される。
【0041】
(6)全方向移動車両10が一方向へ自転しているとき、温度センサ27によって検出された温度Tが第2閾値T2以下のとき、制御装置15は、一方向への自転を停止するようにモータドライバ34を制御する。温度Tが第2閾値T2以下のとき、制御装置15は冷却されており、車体11の自転を停止することで自転による動力消費を抑制できる。また、第2閾値T2と第1閾値T1との差を十分に確保することで自転の頻度を低減できる。
【0042】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る全方向移動車両について説明する。本実施形態では空気案内部材が開口部を開閉可能とする点で第1の実施形態と相違する。本実施形態では、第1の実施形態と同じ構成については第1の実施形態の説明を援用し、共通の符号を用いる。
【0043】
図6に示すように、本実施形態の全方向移動車両40は、開口部28Aを開閉する可動式のガイドプレート41を備えている。図7(a)に示すように、ガイドプレート41の基端部42は、開口部28Aの一方の端部31とはヒンジ44を介して連結されている。したがって、ガイドプレート41はヒンジ44を支点にして回動可能であり、図7(b)に示すように、ガイドプレート41が開口部28Aを閉じる状態では、ガイドプレート41の先端部43は、開口部28Aの他方の端部31と対向する。なお、ガイドプレート41はハウジング25の形状に倣うように湾曲している。
【0044】
ガイドプレート41は、車体下部13に設けられたアクチュエータ45と接続されている。アクチュエータ45が作動することによりガイドプレート41は開口部28Aを開口する。アクチュエータ45は制御装置15によって制御される。制御装置15の温度Tが第1閾値T1以上のとき、制御装置15は一方向へ自転するようにモータドライバ34を制御するとともに、ガイドプレート41が開口部28Aを開くようにアクチュエータ45を制御する。また、制御装置15の温度Tが第2閾値T2以下のとき、制御装置15は一方向への自転を停止するようにモータドライバ34を制御するとともに、ガイドプレート41が開口部28Aを閉じるようにアクチュエータ45を制御する。なお、アクチュエータ45は電動モータや電磁弁等を用いることができる。
【0045】
本実施形態では、全方向移動車両40が制御装置15の冷却のために自転するとき、ガイドプレート41は開口部28Aを開き、ハウジング25内に空気を取り込む。図7(b)に示すように、走行時や制御装置15の冷却を必要としない停車時には全方向車両は自転しない。自転しにときには、ガイドプレート41は開口部28Aを閉じるので、ガイドプレート41がハウジング25からはみ出さない。
【0046】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同等の作用効果を奏する。また、可動式のガイドプレート41であるので、車体11の自転時には開口部28Aを開き、車体11の非自転時に開口部28Aを閉じる。したがって、車体11の自転時には開口部28Aから導入される空気によってハウジング25の内部の制御装置15を冷却することができ、非自転時においてガイドプレート41が邪魔になることはなく、また、開口部28Aから異物が進入することはない。
【0047】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
【0048】
○ 上記の実施形態では、温度センサは制御装置の温度を検出するとしたが、この限りではない。温度センサは制御装置の周囲の温度を検出してもよい。この場合、制御装置の周囲の温度の閾値(第1閾値)を予め設定すればよい。また、制御装置の温度が閾値(第2閾値)以下になると冷却のための自転を終了するとしたが、この限りではない。例えば、予め設定した一定の時間について自転する制御としてもよい。
○ 上記の実施形態では、空気案内部材を備える開口部と、空気案内部材を備えない開口部と、を備えたが、これに限定されない。例えば、全ての開口部に空気案内部材を備えるようにしてもよい。この場合、発熱体の周りに空気の流れを作るため、開口部のほかに空気を排出する排気口を別に設けることが好ましい。また、全ての開口部が空気案内部材を備えないように構成してもよい。
○ 上記の実施形態では、発熱体として制御装置を例示したが、これに限らない。例えば、モータドライバ等の走行駆動部を発熱体とし、走行駆動部を冷却するようにしてもよい。
○ 上記の実施形態では、空気案内部材としてガイドプレートを例示したが、空気案内部材はガイドプレートに限定されない。空気案内部材の形状や大きさは自由であり、開口部の数や大きさ形状も特に制限されない。
○ 上記の実施形態では、全方向移動車両として荷台を備え、荷を搬送することが可能な全方向移動車両としたが、これに限らない。例えば、全方向移動車両は、荷台を備えない全方向移動車両でもよい。
【符号の説明】
【0049】
10、40 全方向移動車両
11 車体
12 車輪
15 制御装置
20 荷台
24 在荷センサ
25 ハウジング
27 温度センサ
28(28A、28B) 開口部
29、41 ガイドプレート(空気案内部材)
34 モータドライバ
44 ヒンジ
45 アクチュエータ
W 荷
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7