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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042040
(43)【公開日】2022-03-14
(54)【発明の名称】圧力タンク内蔵型フィルタープレス
(51)【国際特許分類】
   B01D 25/12 20060101AFI20220307BHJP
【FI】
B01D25/12 H
B01D25/12 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020147205
(22)【出願日】2020-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000197746
【氏名又は名称】株式会社石垣
(72)【発明者】
【氏名】山下 伸弘
(72)【発明者】
【氏名】山下 学
【テーマコード(参考)】
4D116
【Fターム(参考)】
4D116AA12
4D116CC02
4D116CC06
4D116CC14
4D116CC17
4D116CC22
4D116CC27
4D116CC44
4D116FF12B
4D116GG12
4D116QC02B
4D116QC04
4D116QC22
4D116RR01
4D116RR27
4D116SS01
4D116SS06
4D116VV08
4D116VV09
4D116VV12
(57)【要約】
【課題】フィルタープレスのろ板内部に形成された空洞部を圧力タンクとして利用することで圧力タンクが不要となるコンパクトな圧力タンク内蔵型フィルタープレスを提供する。
【解決手段】多数並列したろ板4間に形成されたろ過室7に原液を圧入脱水したあと、ダイアフラム30を張設したろ板4内に形成されたダイアフラム室29に圧力流体を供給し、ろ過室7内に生成された脱水ケーキを圧搾脱水するフィルタープレスにおいて、ろ板4内部に形成した圧力流体を貯留可能な空洞部20と、空洞部20に圧力流体を供給する圧力流体供給管と、空洞部20とダイアフラム室29を連通させる連通部と、を有することで、大量の圧縮空気をろ板4内の空洞部20に保持することができ、外部に圧力タンクを設ける必要がない。

【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数並列したろ板(4)間に形成されたろ過室(7)に原液を圧入脱水したあと、ダイアフラム(30)を張設したろ板(4)内に形成されたダイアフラム室(29)に圧力流体を供給し、ろ過室(7)内に生成された脱水ケーキを圧搾脱水するフィルタープレスにおいて、
ろ板(4)内部に形成した圧力流体を貯留可能な空洞部(20)と、
空洞部(20)に圧力流体を供給する圧力流体供給管と、
空洞部(20)とダイアフラム室(29)を連通させる連通部と、
を有する
ことを特徴とする圧力タンク内蔵型フィルタープレス。
【請求項2】
前記連通部を圧力流体供給管とする
ことを特徴とする請求項1に記載の圧力タンク内蔵型フィルタープレス。
【請求項3】
前記連通部をダイアフラム室(29)に対接するろ板(4)のプレート芯金(21)に設けた連通孔とする
ことを特徴とする請求項1に記載の圧力タンク内蔵型フィルタープレス。
【請求項4】
前記空洞部(20)を隣接するすべてのろ板(4)または一部のろ板(4)に形成させる
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の圧力タンク内蔵型フィルタープレス。
【請求項5】
前記空洞部(20)をろ板(4)内に部分的に形成させる
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の圧力タンク内蔵型フィルタープレス。
【請求項6】
前記ろ板(4)をステンレス部材で構成した
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の圧力タンク内蔵型フィルタープレ
ス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、並列する多数のろ板内部に形成された空洞部を圧力タンクとして利用することを特徴とした圧力タンク内蔵型フィルタープレスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルタープレスでは高圧搾脱水するために原液をろ過室に圧入してろ過脱水後、圧力流体をダイアフラムろ板に圧入して圧搾脱水している。
特に、上水・工水スラッジ処理、及び化学工業、製紙パルプ工業等の各種生産プロセスで用いるダイアフラムろ板を有するフィルタープレスは、中・長時間圧搾脱水処理を必要とするため圧搾時間が長くなる。中・長時間圧搾脱水処理では圧搾圧力を一定に維持するために圧搾中は継続して圧搾水ポンプを作動させるため、圧搾水ポンプの運転時間が長くなる。
【0003】
特許文献1には、クッションタンク内の圧力によって、クッションタンク内に貯留した圧搾液をダイアフラムへ供給するフィルタープレスが開示されており、クッションタンクからダイアフラムへ圧搾液を供給している間、圧搾液ポンプの運転を停止できるため、電力消費量を減らすことができることが記載されている。
【0004】
特許文献2には、ダイアフラム室を圧力タンクとして利用するフィルタープレスが開示されており、ダイアフラム室を圧力タンクとして用いるため、圧力タンクが不要となることが記されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5755666号公報
【特許文献2】特開2020-49453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、圧搾液ポンプを停止してもクッションタンクの内圧によってダイアフラム内へ圧搾液を供給できるが、クッションタンクを別途設ける必要がある。そのため、設備全体の面積が増加するうえ、クッションタンクを製作する手間やコストがかかるという課題を有していた。
【0007】
特許文献2では、並列した多数のろ板とダイアフラムろ板の一端に配置した圧力ろ板内に形成されたダイアフラム室を圧力タンクとして利用しているが、圧力ろ板を配置した分、機長が長くなるという問題があった。
【0008】
本発明は、多数並列するろ板の内部に形成された空洞部を圧力タンクとして利用するコンパクトな圧力タンク内蔵型フィルタープレスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
多数並列したろ板間に形成されたろ過室に原液を圧入脱水したあと、ダイアフラムを張設したろ板内に形成されたダイアフラム室に圧力流体を供給し、ろ過室内に生成された脱水ケーキを圧搾脱水するフィルタープレスにおいて、ろ板内部に形成した圧力流体を貯留可能な空洞部と、空洞部に圧力流体を供給する圧力流体供給管と、空洞部とダイアフラム室を連通させる連通部と、を有することで外部に圧力タンクを設ける必要がない。
【0010】
前記連通部を圧力流体供給管とすることで、空洞部内へ貯留された圧力流体が空洞部から圧力流体供給管を通ってダイアフラム室へ移動できる。
前記連通部を連通孔とすることで、空洞部内へ貯留された圧力流体が空洞部から連通孔を通ってダイアフラム室へ移動できる。
【0011】
前記空洞部を隣接するすべてのろ板に形成させることで、並列するすべてのろ板を圧力タンクとして利用できるため、タンク容量が大きくなる。
前記空洞部を隣接する一部のろ板に形成させることで、任意の容量の圧力タンクを形成できる。
前記空洞部をろ板内に部分的に形成させることで、隣接する一部のろ板に形成させた場合と同等の効果が得られる。
【0012】
前記ろ板をステンレス部材で構成したことで、さびにくい。寿命がきてもリサイクルできるため焼却処分する必要がなく、CO2の排出を抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、ろ板内の空洞部を圧力タンクとして利用するため、フィルタープレスの機長が変わらない。別途、圧力タンクを設ける必要もないため、装置全体がコンパクトになる。圧力タンクの設置が不要となることによって、圧力タンクの製作時に発生する手間やコストを省くこともできる。
連通部を設けて空洞部とダイアフラムを連通させたことでダイアフラムの内圧の低下速度が遅くなるため、圧搾圧力を維持できる。これに伴い、圧搾水ポンプ及び空気圧縮機の稼働時間の短縮が可能となり、電力消費量を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る圧力タンク内蔵型フィルタープレスのフロー図である。
図2】同じく、ろ板の正面図及びA-A縦断面図である。
図3】同じく、ダイアフラムを張設したろ板の正面図及び縦断側面図である。
図4】同じく、他の実施例のダイアフラムを張設したろ板の正面図である。
図5】同じく、並列したろ板の概略断面図である。
図6】同じく、他の実施例の並列したろ板の一部断面図である。
図7】同じく、他の実施例のろ板の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明に係る圧力タンク内蔵型フィルタープレスのフロー図である。
本発明のフィルタープレスは、フロントフレーム1とリアフレーム2に一対のガイドレール3を橋架してあり、ガイドレール3に多数のろ板4と表面にダイアフラム30を張設したろ板4を交互に支架している。なお、すべての「ろ板4」はダイアフラムを張設したろ板を含むものと定義する。
本実施例では、後述するように、両面にダイアフラムを張設したろ板とダイアフラムを張設していないろ板を交互に設けているが、一方にダイアフラムを張設したろ板を並列してもよい。
【0016】
リアフレーム2に配設した締付シリンダー5がムーバブルヘッド6に連結しており、締付シリンダー5で並列する多数のろ板4の開閉を行う。
ムーバブルヘッド6をフロントフレーム5側に移動させてろ板4を閉板することで並列するろ板4上部に原液供給路が形成する。
フィルタープレスには、原液供給管9を接続しており、圧入ポンプ8から原液供給管9を介して原液供給路内に原液を供給する。原液は原液供給路を通過した後、隣接するろ板4間に形成されたろ過室7内に供給される。
【0017】
図2は、ろ板の正面図及びA-A縦断面図である。
ろ板4は、内圧に耐える強度部材を用いて形成された矩形体で構成している。
本実施例のろ板4は、ステンレス製の薄板を用いて形成された矩形体に樹脂製部材を接合して構成している。
具体的には、供給孔23を有する前後一対のプレート芯金21の全周面に複数枚のプレート枠部22を溶接等で製缶して矩形体を形成し、プレート芯金21の外周近傍両面に樹脂製のシール枠24を接合してある。
【0018】
ステンレス製の薄板を製缶加工した矩形体に樹脂製のシール枠24を接合したことで、閉板時に隣接するろ板4間に形成するろ過室7に供給された原液が外部に漏れ出すのを防ぐ。
なお、シール枠の高さによって隣接するろ板同士のろ過室の容積が決まるため、シール枠の高さは適宜変更可能とする。
【0019】
ろ板4を構成している矩形体の内部空間には空洞部20が形成されており、本発明では、空洞部20を、圧力流体を貯留可能な圧力タンクとして用いる。圧力流体は、空気圧縮機15より供給される圧縮空気及び圧搾水ポンプ11より供給される圧搾水である。
空洞部20は、ステンレス製の薄板を全周溶接して形成された密閉空間であるため、シール性が保たれている。
【0020】
ろ板4の外周面には圧力流体供給管を接続している。圧力流体供給管は、圧縮空気を供給する圧縮空気供給管16と圧搾水を供給する圧搾水供給管12であり、各供給管をろ板4に接続したことで圧縮空気及び圧搾水を空洞部20内へ供給できるようにしてある。
なお、本実施例では、各供給管をろ板の側面に接続しているが、圧力流体を空洞部内に供給できる構成であればよいため、これに限定しない。
【0021】
ろ板4の上部には原液の供給孔23を設けており、供給孔23にはOリング等のシール部材を設けてある。ろ板4の下部には複数のろ液排出孔25を設けており、ろ液排出孔25より排出されたろ液は、ろ液排出路を通過した後、排出管18を通って外部へ排出される。
【0022】
ろ過床28には排液性を高めるために樹脂製のろ過ネット26を張設してある。原液の性状に応じてろ過ネット26の厚みを変えることでろ過室7の深さを調整できる。
ろ過床28の中央には、ろ板4の破損や変形を防ぐためにステイボス27を設けている。ステイボス27は樹脂製のシール枠24と同じ高さになるように立設させてある。ろ過ネット26の形状やステイボス27の数量、設置位置等は設計条件に応じて設定する。
【0023】
本実施例では、強度部材としてステンレス製の薄板を用いて製缶加工により矩形体を形成したが、内部に空洞部20を有する構成であればよいため、鋼材の中抜加工や鋳造などで形成してもよい。また、高強度の合成樹脂や炭素繊維などの部材を用いてもよい。
なお、図示しないが、ろ過床にはろ布を張設しており、ろ過室内に供給された原液をろ布で脱水する。
【0024】
図3は、ダイアフラムを張設したろ板の正面図及び縦断側面図である。
ろ板4のろ過床28には膨張収縮可能なダイアフラム30を張設してあり、ろ板4とダイアフラム30の間にダイアフラム室29を形成する。ダイアフラム室29内に圧力流体を供給することでダイアフラム30が膨張する。
【0025】
ろ板4の周面には給気孔a,bを設けている。各給気孔a,bには分岐させた圧縮空気供給管16をそれぞれ接続してあり、給気孔a,bで共通の圧縮空気供給管16を用いる構造としている。
給気孔aは、ろ板4の周面からろ板4内に形成した空洞部20に圧縮空気を供給するために設けており、給気孔bは、ろ板4の周面からダイアフラム室29内に圧縮空気を供給するために設けている。
圧縮空気供給管16より供給された圧縮空気は、給気孔aを介して空洞部20内に供給されるとともに、給気孔bを介してダイアフラム室29内に供給される。
【0026】
このような構成とし、圧縮空気供給管16を、空洞部20とダイアフラム室29を連通させる連通部としたことで、空洞部20内に貯留された圧縮空気が連通部を介してダイアフラム室29内へ移動できるようになる。
給気孔bは、両端をダイアフラム室29へ開口させた連通路に設けているが、ダイアフラム室29へ供給可能な構成であればよいため、この構成に限定しない。各給気孔の位置についても限定せず、図3に示すようにろ板4の側面に設けてもよいが、ろ板4の底面やろ過面に設ける構成としてもよい。
なお、図3に示すように圧搾水を空洞部20へ供給するための給水孔aと圧搾水をダイアフラム室29へ供給するための給水孔bをそれぞれ設けているが、供給方法は、圧縮空気と同様であり、圧搾水供給管12を圧搾水の連通部とする。
【0027】
図4は、他の実施例のダイアフラムを張設したろ板の正面図である。
ろ板4の周面には、図3と同様に圧縮空気を空洞部20内へ供給するための給気孔a、圧搾水を空洞部20内へ供給するための給水孔aを設けており、給気孔a、給水孔aにそれぞれ接続した圧力流体供給管より圧力流体が空洞部20内へ供給される。
図3とは、空洞部20とダイアフラム室29の連通部の構成が相違しており、図4では、
空洞部20とダイアフラム室29の連通部として、ダイアフラム室29に対接するろ板4のプレート芯金21に設けた複数の連通孔を連通部としている。
【0028】
連通孔は、圧縮空気が通過する連気孔31と圧搾水が通過する連水孔32であり、連気孔31を設けたことで、空洞部20内に貯留された圧縮空気が連気孔31を通ってダイアフラム室29へ移動可能となる。連水孔31を設けたことで空洞部20内に貯留された圧搾水が連水孔32を通ってダイアフラム室29へ移動可能となる。
連通孔を設けることで、圧力流体を空洞部20に供給するための圧力流体供給管を分岐させて接続する必要がなくなるため、部品点数が削減できる。
なお、連通孔の形状や大きさ、位置等は設計条件に応じて適宜設定する。
【0029】
図5は、並列したろ板の概略断面図である。
ろ板4と両面にダイアフラム30を張設したろ板4を交互に配設しており、隣接するろ
板4間にろ過室7を形成している。ろ過室7には一対のろ布を吊設しており、原液供給路を通ってろ過室7内に供給された原液はろ布によって固液分離される。
ダイアフラム30を張設したろ板4とダイアフラム30の間にはダイアフラム室29が形成されており、ダイアフラム室29内に圧力流体を供給することでダイアフラム30が膨張してろ過室7に供給された原液が圧搾脱水される。
【0030】
ダイアフラム室29と、ろ板4内部に形成された空洞部20には圧縮空気供給管16と圧搾水供給管12がそれぞれ接続されており、空洞部20及びダイアフラム室29は連通している。ろ板4の内部に形成された空洞部20全てをダイアフラム室29と連通しているため、圧力流体を貯留するタンク容量が大きくなる。
【0031】
本実施例では、並列するすべてのろ板4内に空洞部20を形成し、形成した空洞部20全てを圧力タンクとしており、圧力流体を供給できるようにしているが、図6(a)に示すようにダイアフラム30を付設していないろ板4にのみ空洞部20を設け、その他のろ板4には空洞部20を設けないようにした構成や、図6(b)に示すようにダイアフラム30を張設したろ板4にのみ空洞部20を設ける構成としてもよい。このように任意のろ板4にのみ空洞部を設けてもよい。
図7に示すように空洞部20をろ板4の内部空間に部分的に設ける構成としてもよい。
また、図示しないが、空洞部20の強度を高めるために、空洞部20内を完全に区画しないような厚み、長さに加工したリブを配置してもよい。
【0032】
図1に示すように圧縮空気は、空気圧縮機14を駆動することで空気槽15を介して圧縮空気供給管16より空洞部20とダイアフラム室29に供給される。同様に、圧搾水は、圧搾水ポンプ11を駆動することで圧搾水供給管12を介して空洞部20とダイアフラム室29に供給される。
ダイアフラム室29に圧搾水または圧搾空気を供給することでダイアフラム30が膨張する。ダイアフラム30の膨張に伴い、ろ過室7内の脱水ケーキの圧搾が進行してケーキ中よりろ液が排出され、排出されたろ液は排出管18を介して外部に排出される。
【実施例0033】
本発明で使用する圧力タンク内蔵型フィルタープレスは上記のように構成してあり、その圧搾ろ過方法を以下に示す。
予めろ過室7の厚み、原液の固形分濃度を計測しておく。
予め締付シリンダー5を駆動させ、並列するろ板4を閉板し、ろ過室7を形成する。
【0034】
圧入工程(S1)
原液圧入ポンプ8から原液供給管9を介して、フィルタープレスのろ過室7に原液を圧入してろ過を行う。
この時、ダイアフラム室29には流体を供給しておらず、ろ過室7に原液が充満する。
ろ過室7に張設したろ布により原液から液体が分離されて脱水ケーキを生成する。分離されたろ液はろ液排出路を通過した後、排出管18を介してろ過室7の外へ排出される。
【0035】
空気圧搾工程(S2)
原液の圧入を停止した後、空気圧縮機14を駆動して、圧縮空気弁17を操作し、ダイアフラム30とろ板4の間に形成されたダイアフラム室29と、ろ板4の内部に形成された空洞部20に圧縮空気を供給し、0.85MPaまで昇圧する。昇圧後、空気圧縮機14を停止する。
圧縮空気によりダイアフラム室29が膨張すると共に、ろ過室7に形成した脱水ケーキが圧縮され、脱水ケーキからはさらに液分が排出される。ろ液の排出に伴い、ダイアフラム室29の内圧が低下するため、0.7MPaまで低下すると再び空気圧縮機14を駆動する。空気圧縮機14により、ダイアフラム室29と、ろ板4内の空洞部20に圧縮空気を供給し、内圧を0.85MPaまで昇圧する。
【0036】
ろ液は排出管18から排出され、排出管18の流量計19によりろ液の流量を検知する。
検知したろ液の流量、原液の固形分濃度、原液の供給量を基に、ろ過室7に形成された脱水ケーキの厚み(体積)を継続的に算出する。
空気圧搾を継続することによってろ液が排出されると共に、脱水ケーキの厚みが減少する。脱水ケーキの厚みがろ過室7の厚みの1/3になるのを算出すると、圧縮空気弁17を閉じて空気圧縮機15を停止する。
【0037】
なお、予め定めた時間内に脱水ケーキの厚みがろ過室7の厚みの1/3にならない場合、空気圧搾工程S2を終了し、次の工程へ移行する。
【0038】
水圧搾工程(S3)
圧縮空気弁17を閉じた後、圧搾水ポンプ11を駆動する。圧搾水弁13を開放して圧搾水をダイアフラム室29と、ろ板4内の空洞部20に圧入する。ダイアフラム室29の内圧を1.5MPaまで昇圧し、圧搾水弁13を閉じ、圧搾水ポンプ11を停止する。
【0039】
圧搾水によりダイアフラム室29はさらに高圧となり、ろ過室7内の脱水ケーキからさらに水分がろ布により分離される。分離された水分は排出管18を通ったあと、外へ排出される。
ダイアフラム室29には圧縮空気が供給されているため、水分がろ過室7から排出されることでダイアフラム室29の内圧が徐々に低下していく。
【0040】
ダイアフラム室29の内圧が圧搾の進行に伴い、1.4MPaに低下した時に、再び圧搾水ポンプ11を駆動させ、圧搾水弁13を開き、ダイアフラム室29と、ろ板4内の空洞部20に圧搾水を供給して内圧を1.5MPaまで昇圧する。この動作を複数回繰り返すことで水圧搾を行う。
【0041】
ダイアフラム室29の内圧の変化に応じて圧搾水ポンプ11のON/OFF操作を繰り返した後、圧搾水弁13を閉じ、圧搾水ポンプ11を停止することで、ダイアフラム室29の内圧を一定幅以内になるように調整し、圧搾脱水時の圧搾水ポンプ11の運転時間を短縮する。
所定のろ液排出量を検知すると水圧搾工程S3を終了する。
【0042】
圧搾水排水工程(S4)
圧搾水による水圧搾終了後、圧搾水弁13を開放することで、ダイアフラム室29の圧縮空気を利用して空洞部20と、ダイアフラム室29内に残っている圧搾水を排出する。
圧搾水は圧搾水供給管16を通って給水槽10へ排出される。その後、圧縮空気弁17を開放してダイアフラム室29を常圧にする。
【0043】
脱水ケーキ排出工程(S5)
締付シリンダー5を収縮してろ板4を開板し、ろ過室7に形成された脱水ケーキを機外に排出する。続けてフィルタープレスを運転する場合は、ろ板4を閉板して再びろ過室7を形成し、圧入工程S1へ戻る。
【0044】
本発明は空気圧搾工程S2において、多量の圧縮空気をダイアフラム室29と、ろ板4内に形成された空洞部20に供給することで、ろ板4内の空洞部20を圧力タンクとして利用している。
空気圧搾工程S2では、脱水ケーキの厚みが、例えば、ろ過室7の1/3幅となるまで空気圧搾を継続し、ろ過室7の2/3幅の容量の圧縮空気をダイアフラム室29に供給している。
従って、別途圧力タンクを備えなくとも、圧縮空気を保持できる。
【0045】
よって、水圧搾工程S3では、ろ液の排出に応じてダイアフラム室29の内圧の低下が緩やかとなり、ダイアフラム室29の内圧を一定に維持するために圧搾水ポンプ11の起動頻度、起動時間を大幅に減少することができる。
電力消費量の大きな圧搾水ポンプ11の起動時間を減らすことで、電力量をCO2に換算した場合に算出されるCO2排出量も大幅に削減できるため、省エネにも繋がる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、ろ板内部に形成された空洞部を圧力タンクとして利用することで、圧搾時に使用する機器類の稼働時間を短縮できる。
特に、長時間圧搾脱水を実施する浄水場では圧搾時間が長くなるため、機器類の稼働時間短縮は電力消費量及びCO2排出量の削減につながり、非常に有益なものとなる。
また、ろ板をリサイクル可能なステンレス部材で形成した場合、処分する際にリサイクルすることで焼却が必要な部材の量が減少するため、CO2排出量を大幅に削減できる。
【符号の説明】
【0047】
4 ろ板
7 ろ過室
20 空洞部
21 プレート芯金
29 ダイアフラム室
30 ダイアフラム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7