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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042043
(43)【公開日】2022-03-14
(54)【発明の名称】車両用ランプのエイミング装置
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/068 20060101AFI20220307BHJP
【FI】
B60Q1/068
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020147209
(22)【出願日】2020-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081433
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 章夫
(72)【発明者】
【氏名】原 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】内野 光二
【テーマコード(参考)】
3K339
【Fターム(参考)】
3K339AA02
3K339BA01
3K339BA13
3K339BA18
3K339CA01
3K339DA01
3K339GA14
3K339GB01
3K339GC04
3K339GC05
3K339HA09
3K339HA13
3K339HA14
3K339HA15
3K339HA16
3K339LA02
(57)【要約】
【課題】ランプユニットを傾動し、ロック状態になったときにエイミングスクリューの軸転操作に伴うランプの各部の損傷を防止することが可能なエイミング装置を提供する。
【解決手段】ランプHLの固定部(ランプハウジング)1に対して傾動可能に支持されたランプユニット2を備え、駆動ベベルギヤ612が操作されたときに、これに噛合されている従動ベベルギヤ611がランプユニット2を傾動して光照射方向を調整するためのエイミング装置3である。さらに、ランプユニット2が所定角度に傾動されたときに、駆動ベベルギヤ612と従動ベベルギヤ611との噛合状態を離脱させ、駆動ベベルギヤ612から従動ベベルギヤ611への操作力の伝達を遮断するリリース機構8Aを備える。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランプの固定部に対して傾動可能に支持されたランプユニットを備える車両用ランプにおいて、駆動部材が操作されたときに、これに係合されている従動部材が前記ランプユニットを傾動して光照射方向を調整するためのエイミング装置であって、前記ランプユニットが所定角度に傾動されたときに、前記駆動部材と前記従動部材との係合状態を離脱させて駆動部材から従動部材への操作力の伝達を遮断するリリース機構を備えることを特徴とする車両用ランプのエイミング装置。
【請求項2】
前記固定部に軸転可能に支持され、軸転されたときに前記ランプユニットの傾動角度を調整するエイミングスクリューを備えるエイミング装置であって、軸転操作される駆動部材としての駆動ギヤと、前記エイミングスクリューに設けられて前記駆動ギヤに噛合された従動部材としての従動ギヤを備え、前記リリース機構は、前記ランプユニットが所定角度に傾動されたときに前記駆動ギヤと前記従動ギヤとの噛合状態を離脱させる第1のリリース機構として構成される請求項1に記載の車両用ランプのエイミング装置。
【請求項3】
前記第1のリリース機構は、前記駆動ギヤを移動可能に支持した支持ブラケットを備え、前記駆動ギヤと前記従動ギヤの噛合力が所定以上になったときに前記駆動ギヤを前記従動ギヤとの噛合状態から離脱させる方向に前記支持ブラケットを弾性変形させる請求項2に記載の車両用ランプのエイミング装置。
【請求項4】
前記駆動ギヤと前記従動ギヤはベベルギヤ対として構成され、前記第1のリリース機構は駆動ベベルギヤをその軸方向に移動可能に構成される請求項3に記載の車両用ランプのエイミング装置。
【請求項5】
前記従動ベベルギヤの歯の形状が回転方向に非対称であり、前記ランプユニットの傾動角度を増大させる際の回転方向側の歯面に対し、反対側の歯面の傾斜が緩やかである請求項4に記載の車両用ランプのエイミング装置。
【請求項6】
前記従動ベベルギヤは渦巻き形状をした曲がり歯ベベルギヤで構成され、渦巻きの外側の歯面の傾斜が内側の波面よりも緩やかである請求項4又は5に記載の車両用ランプのエイミング装置。
【請求項7】
前記固定部に軸転可能に支持された駆動部材としてのエイミングスクリューと、前記ランプユニットに支持されて前記エイミングスクリューに螺合された従動部材としてのエイミングナットを備え、当該エイミングスクリューの軸転により前記エイミングナットが前記エイミングスクリューの軸方向に移動されて前記ランプユニットの傾動角度を調整するエイミング装置であって、前記リリース機構は、前記エイミングナットが前記エイミングスクリューの軸方向の所定位置にまで移動されたときに、これらエイミングスクリューとエイミングナットの螺合状態を離脱させる第2のリリース機構として構成される請求項1に記載の車両用ランプのエイミング装置。
【請求項8】
前記エイミングスクリューの雄ネジ部と前記エイミングナットの雌ネジ部が螺合されており、前記第2のリリース機構は、前記エイミングナットが前記所定位置にまで移動されたときにその雌ネジ部に螺合される前記エイミングスクリューの雄ネジ部の所定領域が、前記エイミングナットが所定位置に移動されるまで前記雌ネジ部に螺合している雄ネジ部の他の領域よりもネジ径が低減されている請求項7に記載の車両用ランプのエイミング装置。
【請求項9】
前記エイミングスクリューの雄ネジ部の前記所定領域は、前記他の領域から離れる方向に向けて徐々にネジ径が低減されている請求項8に記載の車両用ランプのエイミング装置。
【請求項10】
前記第2のリリース機構は、前記雄ネジ部と前記雌ネジ部の螺合状態が離脱された状態のときに、前記エイミングナットに対して前記他の領域に向けて軸方向の移動習性を与える構成を備える請求項8又は9に記載の車両用ランプのエイミング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用ランプに関し、特にランプの光軸方向を調整するためのエイミング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両用のランプには、点灯時における光の出射方向を調整するためのエイミング装置を備えたものがある。例えば、特許文献1のランプは、ランプハウジング内にランプユニットのリフレクタが傾動可能に支持されており、その上でランプハウジングには軸転操作が可能なエイミングスクリューが設けられ、リフレクタにはエイミングスクリューに螺合したエイミングナット(プッシュオンフィックス)が設けられている。このエイミング装置によれば、エイミングスクリューを軸転操作することによりエイミングナットがエイミングスクリューの軸方向に移動され、エイミングナットと共にリフレクタの一部が移動される。これにより、リフレクタは支持されている支点を中心に傾動され、ランプユニットのエイミング調整が可能となる。
【0003】
特許文献1のエイミング装置では、エイミングスクリューを軸転操作する際には、エイミングスクリューの一部に設けられているクラウンギヤに十字ドライバ(ねじ回し)を噛合させる構成がとられている。また、特許文献2には、クラウンギヤに噛合するベベルギヤを付設し、このベベルギヤを操作してエイミングスクリューを軸転する構成がとられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-219781号公報
【特許文献2】特開2013-82430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2の技術において、エイミングスクリューを軸転させてリフレクタを傾動し、リフレクタをその傾動範囲の限界まで傾動させようとしたとき、リフレクタがランプハウジングに当接されて、それ以上の傾動が不能ないわゆるロック状態となることがある。エイミング調整を行なう作業者が、このロック状態になったことに気がつかないでさらにエイミングスクリューを軸転操作すると、リフレクタとランプハウジングとの当接部に過大な力が作用し、リフレクタやランプハウジングが損傷されるおそれがある。また、同時にクラウンギヤと十字ドライバ又はベベルギヤの噛合面に過大な力が作用し、クラウンギヤやベベルギヤが摩耗により損傷されることもある。
【0006】
本発明の目的はロック状態になったときにエイミングスクリューの軸転操作に伴うランプの各部の損傷を防止することが可能なエイミング装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ランプの固定部に対して傾動可能に支持されたランプユニットを備える車両用ランプにおいて、駆動部材が操作されたときに、これに係合されている従動部材がランプユニットを傾動して光照射方向を調整するためのエイミング装置であって、ランプユニットが所定角度に傾動されたときに、駆動部材と従動部材との係合状態を離脱させて駆動部材から従動部材への操作力の伝達を遮断するリリース機構を備えている。
【0008】
本発明の好ましい形態は、固定部に軸転可能に支持され、軸転されたときにランプユニットの傾動角度を調整するエイミングスクリューを備えるエイミング装置であって、軸転操作される駆動部材としての駆動ギヤと、エイミングスクリューに設けられて駆動ギヤに噛合された従動部材としての従動ギヤを備えており、リリース機構は、ランプユニットが所定角度に傾動されたときに駆動ギヤと従動ギヤとの噛合状態を離脱させる構成である。例えば、リリース機構は、駆動ギヤを移動可能に支持した支持ブラケットを備え、駆動ギヤと従動ギヤの噛合力が所定以上になったときに駆動ギヤを従動ギヤとの噛合状態から離脱させる方向に支持ブラケットを弾性変形させる構成である。
【0009】
本発明の他の好ましい形態は、固定部に軸転可能に支持された駆動部材としてのエイミングスクリューと、ランプユニットに支持されてエイミングスクリューに螺合される従動部材としてのエイミングナットを備え、当該エイミングスクリューの軸転により前記エイミングナットがエイミングスクリューの軸方向に移動されてランプユニットの傾動角度を調整するエイミング装置であって、リリース機構は、エイミングナットがエイミングスクリューの軸方向の所定位置にまで移動されたときに、これらエイミングスクリューとエイミングナットの螺合状態を離脱させる構成である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エイミング装置を操作してランプユニットが所定角度に傾動されてロック状態になったときに、リリース機構により駆動部材と従動部材との係合状態を離脱させて駆動部材から従動部材への操作力の伝達を遮断することにより、ランプユニットがそれ以上傾動されることを防止し、ランプの各部の損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明を適用した自動車のヘッドランプの縦断面図。
図2】エイミング装置の拡大断面図。
図3】エイミング装置の要部構成要素の外観概略斜視図。
図4】ギヤ部の概略構成の斜視図。
図5】(a)はベベルギヤ対の一部を前方から見た図、(b)は(a)のb-b線に沿う拡大断面図。
図6】ギヤ部におけるリリース動作を説明する図。
図7】エイミングスクリューの雄ネジ部の構成を説明する図。
図8】ネジ部におけるリリース動作を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は本発明のエイミング装置を適用した自動車のヘッドランプの縦断面図である。ヘッドランプHLは自動車の車体の左右前部に配設されており、これら左右の各ヘッドランプHLにそれぞれエイミング装置が設けられている。左右のヘッドランプHLは左右対称な構成とされているが、エイミング装置の構成は同じである。また、図1にはその光照射方向を上下方向に調整するエイミング装置が示されているが、実際の構成よりも拡大した状態で図示している。
【0013】
ヘッドランプHLはランプハウジング1内にランプユニット2が内装されており、このランプユニット2がエイミング装置3によって前後方向に傾動され、その前傾角度、すなわちランプユニット2の光照射方向が変化調整される構成とされている。なお、以降において前後方向はヘッドランプHLの前後方向に沿った方向である。ランプハウジグ1は、前方を開口した容器状のランプボディ11と、この開口を塞ぐように設けられた透光性カバー12とで構成されている。
【0014】
ランプユニット2は光源21と、光源21の光を照射するための照射光学系22を備えて構成されている。ここでは、光源21としてLED(発光ダイオード)が用いられており、図1には表れない給電回路に電気接続された基板23に搭載されて発光が制御されるようになっている。また、照射光学系22は、光源の光を屈折透過して光照射を行なう投影光学系と、光源の光を反射して光照射を行なう反射光学系のいずれかで構成されるが、ここでは樹脂成形により形成され、その内面が光反射処理された反射光学系、すなわちリフレクタ22として構成されている。
【0015】
このランプユニット2は、光源21から出射された光をリフレクタ22において自動車の前方に向けて集光あるいは発散した状態で反射することにより、自動車の前方に所要の配光パターンでの光照射を行なう。そして、このランプユニット2の姿勢、すなわちリフレクタ22の前傾角度をエイミング装置3により調整することにより、当該ランプユニット2から出射される光の照射方向を上下方向に角度調整することが可能とされている。
【0016】
エイミング装置3は、支点部4を備えている。支点部4は前記ランプユニット2の一部、すなわちリフレクタ22の後面側の上部に配設されており、リフレクタ22が傾動する際の支点として構成されている。この支点部4は基端部が前記ランプボディ11に固定支持された支持ロッド41を有しており、この支持ロッド41は先端部のボールジョイント42により、リフレクタ22の後面から突出された支点ステム24に連結されている。これにより、リフレクタ22はボールジョイント42を支点にして少なくとも前後方向に傾動できるようにランプボディ11、すなわちランプハウジング1に支持されている。
【0017】
また、エイミング装置3は前記ランプボディ11に固定支持された支持ブラケット5を備えており、この支持ブラッケット5にエイミングスクリュー6とエイミングナット7が組み付けられている。支持ブラケット5は前記ランプボディ11の後面の一部に設けられた開口を塞ぐようにランプボディ11に固定されている。この支持ブラケット5は本発明における固定部として構成される。そして、後述するように、この支持ブラケット5にエイミングスクリュー6が軸転可能に支持され、またエイミングナット7が前後方向にスライド移動できるように支持されている。
【0018】
前記エイミングスクリュー6は前記支持ブラケット5を前後方向に貫通した状態で支持されており、ランプハウジング1の外部に露呈されている後端部位には軸転操作を行なうためのギヤ部61が配設され、ランプハウジング1の内部に位置されている前側部位には前記エイミングナット7に螺合される雄ネジ部62が形成されている。
【0019】
前記支持ブラケット5にはランプハウジング1内において前後方向に延びるガイドレール部51が形成されており、前記エイミングナット7はこのガイドレール部51に支持された状態で前後方向にスライド移動可能とされている。エイミングナット7はエイミングスクリュー6の雄ネジ部62に螺合される螺合部71と、前記ガイドレール部51に係合されて当該ガイドレール部51に沿って移動が案内されるガイド部72を備えている。また、螺合部71には先端部が四角筒状をしたコネクタ70が外側から嵌合されており、このコネクタ70はリフレクタ22の後面から突出形成されている駆動ステム25に、例えばプッシュオンフィックス構造により緩く連結されている。この構成により、エイミングスクリュー6が軸転されてエイミングナット7が前後方向にスライド移動されたときに、螺合部71とコネクタ70が前後方向に移動され、リフレクタ22を傾動させるようになっている。すなわち、エイミングナット7が図1のF・R方向に移動されることにより、リフレクタ22をU・D方向に傾動させる構成とされている。
【0020】
前記エイミング装置3の詳細を説明する。図2はエイミング装置3の拡大断面図であり、図3は要部の構成要素を分解した外観斜視図である。前記エイミングスクリュー6は、前記したギヤ部61と雄ネジ部62との間に軸部63を有している。この軸部63は支持ブラケット5の軸穴52に外部から内挿され、当該軸穴52において軸転可能に支持されている。この軸部63の周面一部には環状のシールリング631が取り付けられており、軸穴52の内面との間の防水性が確保されている。また、軸部63の前端側には後方に向けて拡径した羽根状の一対の係止片632が設けられ、エイミングスクリュー6を後方から軸穴52に内挿したときに、各係止片632の後端部が軸穴52の前端部に弾接係合して軸部63を軸穴52内に係止する。さらに、軸部63の前端部には径寸法が増大された円形のフランジ633が形成されている。
【0021】
前記雄ネジ部62は前記エイミングナット7の螺合部71に螺合される。この雄ネジ部62は、詳細については後述するが、長さ方向の中央領域62cは均一な規格の雄ネジとして構成されている。また、この中央領域62cを挟む前端領域62fと後端領域62rの各領域では中央領域62cから離れる方向に向けて雄ネジのネジ高さ及びネジ幅が漸減するように構成されている。すなわち、中央領域62cの雄ネジはエイミングナット7の螺合部71に対して好適に螺合する構成であるが、前端領域62fと後端領域62rの雄ネジは後述するように螺合部71に螺合したときに十分な螺合が行なわれない構成とされている。
【0022】
前記ギヤ部61はベベルギヤ対で構成されている。すなわち、前記エイミングスクリュー6の軸部63に一体成形された従動ベベルギヤ611と、この従動ベベルギヤ611とは別体に構成された駆動ベベルギヤ612とを備えている。従動ベベルギヤ611は前記支持ブラケット5の外部に露呈されている軸部63の後端部に一体形成されている。この従動ベベルギヤ611はエイミングスクリュー6の軸線を中心にして複数の歯が放射状にかつ傘状に配列形成された構成とされている。さらに、従動ベベルギヤ611は、後述するように、前方から見たときに各歯tが右回りの渦巻き状をし、かつ歯面が非対称をした曲がり歯ベベルギヤとして形成されている。
【0023】
前記駆動ベベルギヤ612は従動ベベルギヤ611よりも小径に構成されており、前記支持ブラケット5の後面の一部、ここではエイミングスクリュー6が貫通されている軸穴52の上側位置に配設されている。この記駆動ベベルギヤ612は従動ベベルギヤ611に噛合される曲がり歯ベベルギヤで構成され、その軸線が従動ベベルギヤ611の軸線に対して垂直な上下方向に向けられた状態で従動ベベルギヤ611に噛合されている。
【0024】
図4はギヤ部61の概略構成の斜視図であり、支持ブラケット5の後面には、軸穴52の上側位置に後方に向けて下支持片53と上支持片54が突出形成されており、これら下支持片53と上支持片54の間隙内に駆動ベベルギヤ612の鍔部612aが内挿されている。これにより、駆動ベベルギヤ612は水平方向に軸転可能に支持されている。上支持片54には駆動ベベルギヤ612を両側から挟む位置に一対のスリット55が切り込まれており、上支持片54はこのスリット55で挟まれた部位、すなわち駆動ベベルギヤ612を支持している部位は上下方向、すなわち駆動ベベルギヤ612の軸方向に弾性変形されるようになっている。
【0025】
図4に併せて示すように、駆動ベベルギヤ612の軸部の上端部には、駆動ベベルギヤ612を軸転駆動させるための六角形のレンチ穴612bが開口されている。このレンチ穴612bには六角レンチ棒が嵌合でき、駆動ベベルギヤ612を軸転操作することが可能とされている。また、このレンチ穴612bの内底面には、十字ドライバが嵌合可能な十字溝612cが形成されており、十字ドライバによっても駆動ベベルギヤ612を軸転操作することが可能とされている。
【0026】
さらに、この実施形態では、図5(a)に示すように、前記従動ベベルギヤ611の複数の歯tは、前方から見たときに右回りの渦巻き状をした曲がり歯ベベルギヤとして形成されている。さらに、図5(b)に示すように、各歯tの歯面が非対称な角度に形成されている。すなわち、右回りの渦巻き状をした曲がり歯の外側の歯面角度(歯の開き角度)θoは、内側の歯面角度θiよりも大きくされている。換言すれば、従動ベベルギヤ611を前面側から見たときに、1つの歯tの時計回り方向の面の歯面角度は、反時計回り方向の面の歯面角度よりも大きい角度にされている。例えば、対称な角度の場合には各歯面の歯面角度は20度/20度であるが、ここでは30度/17度に構成されている。詳細な説明は省略するが、駆動ベベルギヤ612の複数の歯についても、この従動ベベルギヤと適切に噛合されるように非対称の曲がり歯形状とされている。
【0027】
以上のエイミングスクリュー6に対しエイミングナット7は、図2図3に示したように、前記螺合部71は概略形状が前後方向に筒軸が向けられた円筒状に形成されている。そして、詳細については後述するが、このエイミングナット7の螺合部71の筒軸方向のほぼ中間領域の内面に螺旋状の雌ネジ部73が形成されている。また、螺合部71の筒軸方向の後端領域は内径寸法が幾分拡大された拡径部74が設けられ、この拡径部74内にはエイミングスクリュー6の前記したフランジ633が進入可能とされている。
【0028】
以上の構成のエイミング装置3では、駆動ベベルギヤ612のレンチ穴612bに六角棒レンチ又は十字ドライバを嵌合し、駆動ベベルギヤ612を水平方向に軸転操作すると、これに噛合されている従動ベベルギヤ611が回転される。この回転によりエイミングスクリュー6は軸部63が軸穴52に軸支された状態で軸転される。エイミングスクリュー6の軸転により雄ネジ部62が一体に軸転され、これに螺合されているエイミングナット7はガイド部72がガイドレール部51に案内されながらエイミングスクリュー6の軸方向に沿って前後方向にスライド移動される。これにより、エイミングナット7に係合されているリフレクタ22の駆動ステム25が前後方向に移動され、リフレクタ22は支点部4を支点にして前後方向に傾動され、ランプユニット2の光照射方向が上下方向に調整される。したがって、このギヤ部61においては、駆動ベベルギヤ612が本発明における駆動部材となり、従動ベベルギヤ611が本発明に従動部材となる。
【0029】
駆動ベベルギヤ612を操作して軸転する方向を変えることにより従動ベベルギヤ611、すなわちエイミングスクリュー6の軸転方向が変化され、これに伴ってリフレクタ22は前後方向の角度が変化される。この実施形態では、駆動ベベルギヤ612を右回り方向(時計方向)に軸転操作すると、従動ベベルギヤ611は前方から見て右回り方向(時計方向)に軸転され、リフレクタは前傾角度が小さくなり、光照射方向は上方に変化される。また、駆動ベベルギヤ612を左回り方向に軸転操作すると、従動ベベルギヤ611は前方から見て左回り方向(反時計方向)に軸転され、リフレクタ22は前傾角度が大きくなり、光照射方向は下方に変化される。以降では、前者のリフレクタ22の前傾角度が小さくなる方向を押し込み方向と称し、後者のリフレクタ22の前傾角度が大きくなる方向を引き込み方向と称する。
【0030】
図1に示したように、リフレクタ22は支点ステム24に設けられた支点部4を中心にして傾動される。そのため、駆動ベベルギヤ612を左回り方向に操作してリフレクタ22を引き込み方向に傾動させて行くと、図1に鎖線で示すように、リフレクタ22のある前傾角度の位置においてリフレクタ22の後面の一部がランプハウジング1の一部に当接される状態になる。ここでは、リフレクタ22の下側の前端部がランプボディ11に当接される状態になる。この当接状態になると、以降は駆動ベベルギヤ612を軸転操作してもリフレクタ22はその傾動が阻止され、いわゆるロック状態となる。このロック状態になると、リフレクタ22とランプハウジング1の当接部位に応力が発生し、同時に駆動ベベルギヤ612と従動ベベルギヤ611の噛合部位にも応力が発生する。そして、この応力が過大になると、リフレクタ22やランプハウジング1が損傷され、あるいは駆動ベベルギヤ612と従動ベベルギヤ611の噛合している歯が損傷されることになる。
【0031】
この実施形態では、引き込み方向に駆動ベベルギヤ612を軸転操作してロック状態になったとき、駆動ベベルギヤ612と従動ベベルギヤ611の噛合面に生じる応力を利用して両ベベルギヤの噛合状態をリリース(離脱)させる。すなわち、図6(a)に模式的に示すように、駆動ベベルギヤと従動ベベルギヤの噛合面に過大な応力Fが生じると、この応力Fにより歯面に沿った方向の分力Fsと垂直方向の分力Fvが生じる。この歯面に沿った分力Fsは駆動ベベルギヤ612の軸方向上方への成分を有しているため、この上方成分により図6(b)のように、駆動ベベルギヤ612は従動ベベルギヤ611から離れる方向に移動される。
【0032】
具体的には、図6(c)のように、この分力Fsの上方成分により、駆動ベベルギヤ612は、支持ブラット5の上支持片54を上方に弾性変形させながら上方に移動され、従動ベベルギヤ611に対する噛合状態が浅くなる。これにより、駆動ベベルギヤ612から従動ベベルギヤ611へ伝達される回転力は低減される。最終的には駆動ベベルギヤ612と従動ベベルギヤ611の噛合が解除され、駆動ベベルギヤ612は空転状態となり、回転力は全く伝達されなくなる。したがって、この実施形態のギヤ部61は、本発明において駆動部材と従動部材との係合状態を離脱させて駆動部材から従動部材への操作力の伝達を遮断する機能を発揮する第1のリリース機構8Aとして構成される。
【0033】
このように、リフレクタ22がロック状態になった以降は、駆動ベベルギヤ612を軸転操作しても従動ベベルギヤ611、すなわちエイミングスクリュー6が軸転されることが抑制され、ないしは防止される。したがって、リフレクタ22のさらなる引き込み方向への傾動が防止され、リフレクタ22やランプハウジング1における損傷が防止され、同時に駆動ベベルギヤ612と従動ベベルギヤ611の噛合面における損傷が防止される。
【0034】
また、この実施形態では、従動ベベルギヤ611の歯tは、リフレクタ22を引き込み方向に傾動する際に駆動ベベルギヤ612の回転力を受ける側の歯面角度θoは反対側の歯面角度θiよりも大きくされているので、両ベベルギヤの噛合面において生じる歯面方向の分力Fsは、歯面角度θoがこれより小さい場合よりも大きくなる。これにより、駆動ベベルギヤ612を上方に移動させるのに寄与する上方成分も増大され、従動ベベルギヤ611との噛合がより離脱され易くなる。したがって、実施形態のようにベベルギヤ611,612の歯の形状を非対称にすることにより、本発明にけるリリース機構の機能が助長される。
【0035】
さらに、従動ベベルギヤ611は渦巻き状の曲がり歯ベベルギヤとして構成されており、その外側の歯面において駆動ベベルギヤ612の回転力を受けるので、図示は省略するが、従動ベベルギヤ611の歯面に生じる応力Fから径方向の分力が生じる。この径方向の分力の発生により、従動ベベルギヤ612の歯面に対する円周方向の応力、すなわち従動ベベルギヤ612を損傷する際の影響が大きい応力が低減される。したがって、ベベルギヤを曲がり歯ベベルギヤで構成することによっても、本発明におけるリリース機構の機能が助長されることになり、さらに改善されたリリース機構が構成される。
【0036】
本発明においては、実施形態に記載のように、ギヤ対を構成するギヤの歯の形状、すなわち前記した歯面角度θi,θoを構成する歯tの形状は必ずしも非対称にしなくてもよい。例えば、ギヤ対の回転方向に関わらず、所定の応力が生じたときに駆動ギヤと従動ギヤとの噛合状態を離脱させることが要求される場合であればギヤの歯の形状は対称形状であってもよい。また、ギヤ部を構成する駆動ベベルギヤと従動ベベルギヤは、実施形態に記載の曲がり歯ベベルギヤに限られるものではなく、各歯が径方向に形成されているすぐ歯ベベルギヤで構成されてもよい。さらに、本発明のギヤ部を構成するギヤ対はベベルギヤに限定されるものではなく、ギヤ対の噛合面に生じる応力によってギヤ対の噛合状態が離脱される構成であれば、他のギヤ対で構成されてもよい。
【0037】
なお、駆動ベベルギヤ612を軸方向に弾性支持する構成として、実施形態に記載した支持ブラケット5の弾性変形を利用する代わりに、図示は省略するが、駆動ベベルギヤ612の軸部にコイルバネや捩じりバネ等の線バネ、あるいは板バネを嵌装させ、これらのバネの弾性力を利用して駆動ベベルギヤ612を従動ベベルギヤ611に噛合させるようにしてもよい。ロック状態のときには、これらのバネを撓ませることにより駆動ベベルギヤ612を従動ベベルギヤ611から離脱させることができる。
【0038】
さらに、この実施形態ではエイミングスクリュー6とエイミングナット7とで第2のリリース機構が構成されている。図1を参照すると、前記したようにエイミングスクリュー6の雄ネジ部62は長さ方向に、中央領域62c、前端領域62f、後端領域62rとして構成されている。そして、中央領域62cは均一な規格の雄ネジとして構成されているが、前端領域62fと後端領域62rでは雄ネジのネジ高さ及びネジ幅が漸減するように構成されている。
【0039】
これらの領域のうち、リリース機構を構成する後端領域62rについて具体的に説明すると、図7に示すように、後端領域62rの軸方向の長さ寸法Lr1は、前記エイミングナット7の雌ネジ部73の軸方向の長さ寸法Ln1にほぼ等しい長さ、あるいは若干短い長さ寸法に設定されている。また、この後端領域62rの前端位置からフランジ633までの長さ寸法Lr2の長さ寸法は、エイミングナット7の雌ネジ部73の前端位置から拡径部74との境界段部74aまでの長さ寸法Ln2にほぼ等しい長さ寸法に設定されている。特に、この長さ寸法Lr2は、後述するように、エイミングナット7がエイミングスクリュー6の後方に移動されてエイミングスクリュー6のフランジ633が境界段部74aに当接されたときに、エイミングナット7の雌ネジ部73の前端が後端領域62rの前端にほぼ一致される長さ寸法である。
【0040】
さらに、後端領域62rは中央領域62cとは異なるネジ形状に形成されている。ここでは、後端領域62rの雄ネジのピッチ寸法は中央領域62cと同じであるが、ネジ高さ寸法(ネジ外径寸法)は前端位置から後方に向けて徐々に低減されている。この後端領域62rにおけるネジ高さ寸法(ネジ外径寸法)は、最後端位置において雌ネジ部73のネジ高さ寸法(ネジ内径寸法)に等しく、ないしはこれよりも小さくされている。
【0041】
なお、前記エイミングスクリュー6の雄ネジ部62の前端領域62fにおいても、中央領域62cとはピッチ寸法は同じであるが、ネジ形状が異なっており、特にネジ高さ寸法は後端位置から前方に向けて徐々に低減されている。この前端領域62fの軸方向の長さは特に所定の寸法に特定されるものではない。
【0042】
この実施形態の構成では、図1に示したように駆動ベベルギヤ612を軸転操作して従動ベベルギヤ611が軸転され、さらにエイミングスクリュー6が軸転されると、エイミングスクリュー6に螺合されているエイミングナット7は前後方向にスライド移動される。これにより、リフレクタ22は支点部4を支点にして前後方向に傾動され、ランプユニット2の光照射方向が上下方向に調整される。この場合においても、エイミングスクリュー6の軸転に伴ってエイミングナット7が後方に向けてスライド移動され、リフレクタ22が引き込み方向に傾動されて行くと、リフレクタの前傾角度が大きくなり、リフレクタ22が所定の角度まで傾動されるとロック状態が生じる。
【0043】
この実施形態では、エイミングスクリュー6の雄ネジ部62に後端領域62rが構成されている。そのため、図8に示すように、エイミングナット7の境界段部74aがフランジ633に当接したときには、エイミングナット7の雌ネジ部73は後端領域62rに螺合された状態となる。この後端領域62rはネジ径がエイミングナット7の雌ネジ部73のネジ径よりも小さくされているので、この螺合された状態は実質的には雄ネジ部62と雌ネジ部73の螺合が離脱された状態とされる。したがって、エイミングスクリュー6が軸転されても、エイミングナット7は軸方向にスライド移動されなくなる。すなわち、エイミングスクリュー6の雄ネジ部62の後端領域62rは、駆動部材としてのエイミングスクリュー6の軸転力が従動部材としてのエイミングナット7の軸方向の移動力として伝達することが離脱される第2のリリース機構8Bとして構成される。
【0044】
これにより、リフレクタ22の傾動によりロック状態が生じた以降は、ギヤ部61を操作してエイミングスクリュー6を軸転操作しても、エイミングナット7が軸方向に移動されることが抑制され、ないしは防止される。したがって、リフレクタ22のさらなる引き込み方向への傾動が防止され、リフレクタ22やランプハウジング1の当接部位における損傷が防止され、同時にエイミングスクリュー6とエイミングナット7の当接部位における損傷が防止される。
【0045】
この第2のリリース機構8Bでは、エイミングスクリュー6の軸転によりエイミングナット7の軸方向の移動が抑制、防止されている間には、エイミングナット7とフランジ633との当接力の反力により、あるいはエイミングナット7やフランジ633を構成している樹脂自身の弾性力によりエイミングナット7には引き込み方向と反対方向に向けての移動習性が生じている。したがって、エイミングスクリュー6が反対方向に向けて軸転されると、エイミングナット7の雌ネジ部73は直ちに前方に移動され、雄ネジ部62の中央領域62cに螺合される状態となる。これにより、以降はエイミングスクリュー6の軸転に伴ってエイミングナット7は前方向に移動されるようになりリフレクタ22が傾動される。
【0046】
この実施形態では、エイミングスクリュー6の前端領域62fにおいても雄ネジ部62のネジ径を低減させている。そのため、エイミングナット7がエイミングスクリュー6の前端領域62fにまで移動された後はエイミングスクリュー6との螺合状態が離脱され、以降のエイミングナット7の前方への移動が防止される。これにより、エイミングナット7がエイミングスクリュー6の前端よりも前方に移動されて両者の螺合状態が外れてしまい、エイミング装置として機能しなくなることが未然に防止される。
【0047】
なお、この第2のリリース機構8Bは、エイミングスクリュー6の雄ネジ部62とエイミングナット7の雌ネジ部73の螺合状態を離脱させる構成であればよいので、特に後端領域62rにおける雄ネジの形状、ネジ高さ等については実施形態に記載の構成に限られるものではない。
【0048】
以上説明した実施形態では、エイミングスクリューにおけるギヤ部にギヤ対の噛合を離脱させるための第1のリリース機構が構成され、エイミングスクリューのネジ部に雄雌のネジ部の螺合を離脱させるための第2のリリース機構が構成されている。本発明においては、第1のリリース機構と第2のリリース機構の少なくとも一方を備えることにより課題を解決することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 ランプハウジング
2 ランプユニット
3 エイミング装置
4 支点部
5 支持ブラケット
6 エイミングスクリュー(駆動部材)
7 エイミングナット(従動部材)
8A,8B リリース機構
21 光源
22 リフレクタ
51 ガイドレール部
61 ギヤ部
62 雄ネジ部
62c 中央領域
62f 前端領域
62r 後端領域
63 軸部
71 螺合部
72 ガイド部
73 雌ネジ部
611 駆動ベベルギヤ(駆動部材)
612 従動ベベルギヤ(従動部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8