(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042044
(43)【公開日】2022-03-14
(54)【発明の名称】硬化性高分子化合物、及び該化合物を含む樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 212/08 20060101AFI20220307BHJP
C08G 59/62 20060101ALI20220307BHJP
C09J 125/14 20060101ALI20220307BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220307BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20220307BHJP
C09J 133/06 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
C08F212/08
C08G59/62
C09J125/14
C09J11/06
C09J7/35
C09J133/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020147210
(22)【出願日】2020-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 泰昌
(72)【発明者】
【氏名】林本 成生
【テーマコード(参考)】
4J004
4J036
4J040
4J100
【Fターム(参考)】
4J004AA06
4J004AA13
4J004AB05
4J036AA01
4J036AD08
4J036AD21
4J036AF06
4J036AG00
4J036AH00
4J036AK19
4J036DB05
4J036FB03
4J036JA06
4J036JA08
4J036JA11
4J040DB061
4J040KA16
4J040KA17
4J100AB02P
4J100AL08Q
4J100BA03Q
4J100BC43Q
4J100CA04
4J100DA01
4J100DA30
4J100JA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】フィルム状に成型することが可能で、しかも接着性が高く、かつ誘電率及び誘電正接の低い硬化性高分子化合物の提供。
【解決手段】式(1)
(R
1はH又はメチル基を表す。m及びnは夫々独立に1乃至2,000)で表される高分子化合物で、数平均分子量が30,000以上で、かつフェノール性水酸基当量が1,000g/eq.以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】
(式中、R
1は水素原子又はメチル基を表す。m及びnは繰り返し単位数の平均値であってそれぞれ独立に1乃至2,000の範囲にある実数を表す。)
で表される高分子化合物であって、数平均分子量が30,000以上であり、かつフェノール性水酸基当量が1,000g/eq.以上である高分子化合物。
【請求項2】
請求項1記載の高分子化合物及びフェノール性水酸基と反応し得る化合物を含有する樹脂組成物。
【請求項3】
フェノール性水酸基と反応し得る化合物が、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物である請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
更に硬化促進剤を含有する請求項2又は3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか一項に記載の樹脂組成物からなるフィルム状接着剤。
【請求項6】
請求項2乃至4のいずれか一項に記載の樹脂組成物、又は請求項5に記載のフィルム状接着剤の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液を基材中にキャストする方法で容易にフィルム状に成形することができ、フェノール性水酸基と反応し得る置換基を有するエポキシ樹脂等と併用することにより熱硬化反応させることが可能で、その硬化物は誘電特性及び接着性に優れる高分子化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
フェノキシ樹脂は二官能のエポキシ樹脂と二官能のフェノール化合物を重合することにより得られる分子量の非常に大きな高分子化合物である。このフェノキシ樹脂を添加することにより、一般的なエポキシ樹脂組成物やラジカル重合性組成物をフィルム形状にすることができるため、フィルム状接着剤の重要な成分として幅広い分野で使用されており、特に電気・電子分野においてはプリント配線基板の層間絶縁層や樹脂付き銅箔などに用いられている。
【0003】
フェノキシ樹脂を添加した樹脂組成物の硬化物は接着性に優れるものの耐熱性が低く、しかも誘電率及び誘電正接が高いため(周波数1GHzで誘電率3.5、誘電正接0.03程度である。)、近年の信号応答速度が高速化した電子機器用途には使用できないのが実情である。誘電特性に優れた樹脂としてはポリテトラフルオロエタン(PTFE)などの高分子フッ素化合物(特許文献1)や液晶ポリマー(特許文献2)が一般に知られているが、これらの樹脂は他の樹脂との相溶性が極めて低く、接着性も不充分である。特許文献3、4の実施例には、重量平均分子量が5,000乃至10,000でハイドロキノンモノメタクリレートの仕込み比率が60モル%前後であるスチレンとハイドロキノンモノメタクリレートの共重合体を、感光性レジスト材料として使用する方法が開示されているが、これらの文献には、前記の共重合体を低い誘電正接(周波数10GHzにおいて0.005以下)が必要とされる高周波基板に使用することや、前記の共重合体にエポキシ樹脂を併用して硬化反応させることは記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-001274号公報
【特許文献2】特開2014-060449号公報
【特許文献3】特開2007-033517号公報
【特許文献4】特開2011-237477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、特定の高分子化合物を含有する樹脂組成物であって、その硬化物はフィルム化できるだけの十分なフレキシビリティーを有し、低粗度銅箔に対する接着性が高く、かつ誘電率及び誘電正接の低い樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、特定の構造(繰り返し単位)を有する高分子化合物であって、かつ特定の数平均分子量と特定のフェノール性水酸基当量を有する高分子化合物とエポキシ樹脂を含有する組成物が上記の課題を解決するものであることを見出し、本発明を完成させた。
即ち本発明は、
(1)下記式(1)
【0007】
【0008】
(式中、R1は水素原子又はメチル基を表す。m及びnは繰り返し単位数の平均値であってそれぞれ独立に1乃至2,000の範囲にある実数を表す。)
で表される高分子化合物であって、数平均分子量が30,000以上であり、かつフェノール性水酸基当量が1,000g/eq.以上である高分子化合物、
(2)前項(1)に記載の高分子化合物及びフェノール性水酸基と反応し得る化合物を含有する樹脂組成物、
(2)フェノール性水酸基と反応し得る化合物が、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物である前項(2)に記載の樹脂組成物、
(4)更に硬化促進剤を含有する前項(2)又は(3)に記載の樹脂組成物、
(5)前項(2)乃至(4)のいずれか一項に記載の樹脂組成物からなるフィルム状接着剤、及び
(6)前項(2)乃至(4)のいずれか一項に記載の樹脂組成物、又は前項(5)に記載のフィルム状接着剤の硬化物、
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の高分子化合物にフェノール性水酸基と反応し得る化合物を併用した樹脂組成物は、加熱により硬化物とすることが可能であり、該硬化物は誘電特性、接着性、フレキシビリティーに優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態について説明する。
本発明の上記式(1)で表される高分子化合物は、フェノール性水酸基当量を有する(メタ)アクリレートとスチレンとのランダム共重合体であって、特定の数平均分子量と特定のフェノール性水酸基当量を有する高分子化合物である。
【0011】
共重合体の原料であるフェノール性水酸基を有する(メタ)アクリレートは、一分子中にフェノール性水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物でありさえすれば特に限定されず、例えば4-ヒドロキシフェニルメタクリレート、2-ヒドロキシフェニルメタクリレート、3-ヒドロキシフェニルメタクリレート、4-ヒドロキシフェニルアクリレート、2-ヒドロキシフェニルアクリレート、3-ヒドロキシフェニルアクリレートなどが挙げられるが、4-ヒドロキシフェニルメタクリレートが特に好ましい。
尚、本明細書において「(メタ)アクリレート」との記載は「アクリレート及びメタクリレート」の両者を意味する。
【0012】
フェノール性水酸基を有する(メタ)アクリレートとスチレンとの共重合方法は、公知の共重合方法であれば特に限定されず、例えば塊状重合、溶液重合、乳化重合及び懸濁重合などが挙げられる。
溶液重合に使用可能な溶剤としては、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド及びγ-ブチロラクトンなどが挙げられる。乳化重合及び懸濁重合には通常水と界面活性剤が用いられ、水中で原料成分を乳化あるいは懸濁した状態で共重合反応が行われる。
【0013】
共重合反応はラジカル重合、カチオン重合及びアニオン重合のいずれであっても構わない。ラジカル重合の場合は、ラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。ラジカル重合開始剤の具体例としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、過酸化水素、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド及びベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。
ラジカル重合開始剤の配合量は、共重合体の原料成分100質量部に対して通常0.001乃至5質量部である。重合温度は通常50乃至250℃、好ましくは60乃至200℃であり、重合時間は通常0.5乃至30時間、好ましくは1乃至20時間である。ラジカル重合反応は空気中の酸素に重合阻害を防ぐために、窒素ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0014】
カチオン重合開始剤の具体例としては、硫酸及び塩酸等の無機酸、CF3COOH及びCCl3COOH等の有機酸、CF3SO3H及びHClO4等の超強酸挙げられる。またアニオン重合開始剤の具体例としては、ブチルリチウム、Na-ナフタレン錯体、アルカリ金属、アルキルリチウム化合物、ナトリウムアミド、グリニャール試薬及びリチウムアルコキシド等が挙げられる。しかしながら、カチオン重合やアニオン重合に使用されるイオン性の開始剤は、重合反応後も共重合体中に残存して誘電特性や絶縁性に悪影響を及ぼす懸念があるため、本発明の高分子化合物の中間原料となる共重合体の合成は、ラジカル重合で行うことが好ましい。
カチオン重合開始剤又はアニオン重合開始剤の配合量は、共重合体の原料成分100質量部に対して通常0.01乃至5質量部である。重合温度は通常40乃至150℃、好ましくは50乃至120℃であり、重合時間は通常0.5乃至20時間、好ましくは1乃至15時間である。
【0015】
本発明の高分子化合物の数平均分子量は通常30,000乃至300,000であり、好ましくは40,000乃至200,000であり、フェノール性水酸基当量は通常1,000乃至10,000g/eq.好ましくは1,500乃至9,000g/eq.である。
数平均分子量を前記の範囲とすることにより、低粗度銅箔等の難接着物に対する優れた接着性が発現すると共に、溶剤に溶解した樹脂組成物の粘度が適正な範囲となり塗工等が容易になる。また、フェノール性水酸基当量を前記の範囲とすることにより、フェノール性水酸基と反応し得る化合物との硬化物の架橋密度等が適正な範囲となり優れた誘電特性(低誘電率及び低誘電正接)と接着性が発現する。
尚、本明細書における数平均分子量はGPCの測定結果に基づいてポリスチレン換算で算出した値を、フェノール性水酸基当量は高分子化合物の合成に用いた原料化合物の使用量から算出した値をそれぞれ意味する。
【0016】
数平均分子量が前記の範囲内の共重合体を得るためには、共重合体を合成する際の開始剤の使用量を適切な量に調整することが好ましい。数平均分子量が前記の範囲内の共重合体を得るために必要な開始剤の量は、フェノール性水酸基を有する(メタ)アクリレートの種類や共重合反応に用いる水酸基を有する(メタ)アクリレートとスチレンの量にもよるので一概には言えないが、開始剤の量を減ずると分子量の大きな共重合体が得られることが一般に知られており、上記した配合量の範囲内で所望の分子量の共重合体が得られる開始剤の配合量を選択すればよい。
【0017】
反応終了後、系中に未反応のスチレンが若干残存するが、これは溶剤と同時に留去するか、貧溶媒中に沈殿させることにより除去することができる。
【0018】
本発明の高分子化合物を合成する際のフェノール性水酸基を有する(メタ)アクリレートとスチレンの使用割合は、スチレンの使用量(質量)が水酸基を有する(メタ)アクリレートの質量の通常4乃至500倍、好ましくは4.5乃至300倍である。共重合体の原料となる水酸基を有する(メタ)アクリレートとスチレンの使用割合を前記の範囲とすることにより、上記の範囲のフェノール性水酸基当量を有する本発明の高分子化合物が得られる。
【0019】
本発明の樹脂組成物は、本発明の高分子化合物及びフェノール性水酸基と反応し得る化合物を含有する。
フェノール性水酸基と反応し得る化合物としては、例えばエポキシを有する化合物やイソシアネート化合物等が挙げられるが、フェノール性水酸基と反応し得る官能基を複数有する化合物が好ましい。また、樹脂組成物の硬化物が諸物性に優れることから、エポキシ基を有する化合物(エポキシ樹脂)が好ましい。
【0020】
エポキシ樹脂の具体例としては、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂などが挙げられる。具体的にはビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’-ビフェノール、2,2’-ビフェノール、3,3’,5,5’-テトラメチル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス-(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p-ヒドロキシベンズアルデヒド、o-ヒドロキシベンズアルデヒド、p-ヒドロキシアセトフェノン、o-ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’-ビス(クロロメチル)-1,1’-ビフェニル、4,4’-ビス(メトキシメチル)-1,1’-ビフェニル、1,4’-ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4’-ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類、アルコール類から誘導されるグリシジルエーテル化物、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂等の固形または液状エポキシ樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0021】
本発明の樹脂組成物には、フェノール性水酸基を1分子中に2個以上有する化合物を併用することもできる。具体的にはフェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p-ヒドロキシベンズアルデヒド、o-ヒドロキシベンズアルデヒド、p-ヒドロキシアセトフェノン、o-ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’-ビス(クロロメチル)-1,1’-ビフェニル、4,4’-ビス(メトキシメチル)-1,1’-ビフェニル、1,4’-ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4’-ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物や、フェノール性水酸基を分子量末端に有するポリフェニレンエーテルなどが挙げられる。
【0022】
本発明の樹脂組成物には、エポキシ樹脂と本発明の共重合体中の水酸基との反応を速やかに進行させるために硬化触媒を用いてもよい。用い得る硬化触媒の具体例としてはトリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等のアミン化合物、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6(2’-メチルイミダゾール(1’))エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6(2’-ウンデシルイミダゾール(1’))エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6(2’-エチル,4-メチルイミダゾール(1’))エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6(2’-メチルイミダゾール(1’))エチル-s-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-3,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-ヒドロキシメチル-5-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニル-3,5-ジシアノエトキシメチルイミダゾールの各種等の複素環式化合物類、及び、それら複素環式化合物類とフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、マレイン酸、蓚酸等の多価カルボン酸との塩類、ジシアンジアミド等のアミド類、1,8-ジアザ-ビシクロ(5.4.0)ウンデセン-7等のジアザ化合物及びそれらのテトラフェニルボレート、フェノールノボラック等の塩類、前記多価カルボン酸類、又はホスフィン酸類との塩類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルプロピルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルセチルアンモニウムヒドロキシド、トリオクチルメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムヨージド、テトラメチルアンモニウムアセテート、トリオクチルメチルアンモニウムアセテート等のアンモニュウム塩、トリフェニルホスフィン、トリ(トルイル)ホスフィン、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等のホスフィン類やホスホニウム化合物、2,4,6-トリスアミノメチルフェノール等のフェノール類、アミンアダクト、カルボン酸金属塩(2-エチルヘキサン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ミスチリン酸などの亜鉛塩、スズ塩、ジルコニウム塩)やリン酸エステル金属(オクチルリン酸、ステアリルリン酸等の亜鉛塩)、アルコキシ金属塩(トリブチルアルミニウム、テトラプロピルジルコニウム等)、アセチルアセトン塩(アセチルアセトンジルコニウムキレート、アセチルアセトンチタンキレート等)等の金属化合物等、が挙げられる。本発明においては特にホスホニウム塩やアンモニウム塩、金属化合物類が硬化時の着色やその変化の面において好ましい。また4級塩を使用する場合、ハロゲンとの塩はその硬化物にハロゲンを残すことになり、電気信頼性および県境問題の視点から好ましくない。
硬化触媒は、本発明の高分子化合物100質量部に対して0.01乃至5.0質量部が必要に応じて用いられる。
【0023】
本発明の樹脂組成物には、有機溶剤を併用してもよい。有機溶剤の具体例としては、トルエン及びキシレン等の芳香族系溶剤、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート及びプロピレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン及びシクロヘキサノン等のケトン系溶剤、γ-ブチロラクトン及びγ-バレロラクトン等のラクトン類、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド及びN,N-ジメチルイミダゾリジノン等のアミド系溶剤、テトラメチレンスルフォン等のスルフォン類、等が挙げられる。本発明の樹脂組成物における有機溶剤の含有量は、樹脂組成物中に通常90質量%以下、好ましくは30乃至80質量%である。
【0024】
本発明の樹脂組成物は、その用途に応じて所望の性能を付与させる目的で本来の性能を損なわない範囲の量の充填剤や添加剤を配合して用いることができる。充填剤は繊維状であっても粉末状であってもよく、シリカ、カーボンブラック、アルミナ、タルク、雲母、ガラスビーズ、ガラス中空球等を挙げることができる。
【0025】
本発明の樹脂組成物には、難燃性化合物、添加剤などの併用も可能である。これらは一般に使用されているものであれば、特に限定されるものではない。例えば、難燃性の化合物では、4,4-ジブロモビフェニルなどの臭素化合物、リン酸エステル、リン酸メラミン、リン含有エポキシ樹脂、メラミンやベンゾグアナミンなどの窒素化合物、オキサジン環含有化合物、シリコン系化合物等が挙げられる。添加剤としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤、光増感剤、染料、顔料、増粘剤、滑剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、光沢剤等、所望に応じて適宜組み合わせて使用することも可能である。
【0026】
本発明の樹脂組成物は、さまざまな基材上に塗布あるいは含浸して使用することができる。例えば、PETフィルム上に塗布することにより多層プリント基板の層間絶縁層として、ポリイミドフィルム上に塗布することによりカバーレイとして、また銅箔上に塗布乾燥することにより樹脂付き銅箔として、使用することができる。またガラスクロスやガラスペーパー、カーボンファイバー、各種不織布などに含浸させることにより、プリント配線基板やCFRPのプリプレグとして使用することができる。
【0027】
本発明の層間絶縁層やカバーレイ、樹脂付き銅箔、プリプレグなどはホットプレス機などで加温加圧成形することにより、硬化物とすることができる。
【実施例0028】
以下、本発明を実施例、比較例により更に詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0029】
実施例1(本発明の高分子化合物の合成)
(工程1)下記式(3)で表される高分子化合物1の合成
温度計、冷却管、窒素ガス導入管、撹拌器を取り付けたフラスコに、スチレン39部、ハイドロキノンモノメタクリレート1部、過酸化ベンゾイル0.025部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)10部を加え、窒素雰囲気下130乃至140℃で5時間反応させることにより、下記式(3)で表される高分子化合物1のPGMEA溶液を得た。前記PEGMEA溶液の一部を減圧下で加温して溶剤と未反応スチレンを除去した乾燥質量を固形分量として算出した高分子化合物1の得量は36.0部であり、未反応スチレンが4.0部だったことを考慮すると、得られた高分子化合物1はスチレン35.0部とハイドロキノンモノメタクリレート1部の共重合物であった。また、前記乾燥質量の測定に供したサンプルの数平均分子量は69,000、重量平均分子量は205,000であった。スチレンとハイドロキノンモノメタクリレートの共重合比と数平均分子量から式(3)におけるmの値は645、nの値は11と算出される。またフェノール性水酸基当量は2180g/eq.と算出される。PGMEA量を調節することにより、高分子化合物1の25%PGMEA溶液を得た。
【0030】
【0031】
比較例1(比較用の高分子化合物の合成)
(工程2)比較用高分子化合物2の合成
スチレンの量を39部から37.5部に、ハイドロキノンモノメタクリレートの量を1部から2.5部に変更した以外は工程1に準じて、前記式(3)で表される高分子化合物2のPGMEA溶液を得た。前記PEGMEA溶液の一部を減圧下で加温して溶剤と未反応スチレンを除去した乾燥質量を固形分量として算出した高分子化合物2の得量は35.6部であり、未反応スチレンが4.0部だったことを考慮すると、得られた高分子化合物2はスチレン33.5部とハイドロキノンモノメタクリレート2.5部の共重合物であった。また、前記乾燥質量の測定に供したサンプルの数平均分子量は73,000、重量平均分子量は212,000であった。スチレンとハイドロキノンモノメタクリレートの共重合比と数平均分子量から式(3)におけるmの値は653、nの値は29と算出される。またフェノール性水酸基当量は857g/eqと算出される。PGMEA量を調節することにより、高分子化合物2の25%PGMEA溶液を得た。
【0032】
比較例2(比較用の高分子化合物の合成)
(工程3)比較用高分子化合物3の合成
過酸化ベンゾイルの量を0.025部から0.25部に変更した以外は工程1に準じて、前記式(3)で表される高分子化合物3のPGMEA溶液を得た。前記PEGMEA溶液の一部を減圧下で加温して溶剤と未反応スチレンを除去した乾燥質量を固形分量として算出した高分子化合物3の得量は37.5部であり、未反応スチレンが2.5部だったことを考慮すると、得られた高分子化合物3はスチレン36.5部とハイドロキノンモノメタクリレート1部の共重合物であった。また、前記乾燥質量の測定に供したサンプルの数平均分子量は22,000、重量平均分子量は65,000であった。スチレンとハイドロキノンモノメタクリレートの共重合比と数平均分子量から式(3)におけるmの値は206、nの値は3と算出される。またフェノール性水酸基当量は2367g/eqと算出される。PGMEA量を調節することにより、高分子化合物3の25%PGMEA溶液を得た。
【0033】
実施例2(本発明の樹脂組成物の調製)
実施例1で得られた本発明の高分子化合物1のPGMEA溶液10部に、エポキシ樹脂としてNC-3000(日本化薬株式会社製)0.31部、硬化触媒としてトリフェニルホスフィン0.025部を加えて均一に混合することにより本発明の樹脂組成物1を得た。
【0034】
比較例3(比較用の樹脂組成物の調製)
比較例1で得られた高分子化合物2のPGMEA溶液10部に、エポキシ樹脂としてNC-3000(日本化薬株式会社製)0.79部、硬化触媒としてトリフェニルホスフィン0.025部を加えて均一に混合することにより比較用樹脂組成物2を得た。
【0035】
比較例4(比較用の樹脂組成物の調製)
比較例2で得られた高分子化合物3のPGMEA溶液10部に、エポキシ樹脂としてNC-3000(日本化薬株式会社製)0.29部、硬化触媒としてトリフェニルホスフィン0.025部を加えて均一に混合することにより比較用樹脂組成物3を得た。
【0036】
(樹脂組成物の硬化物の誘電特性評価)
実施例2及び比較例3、4で得られた本発明の樹脂組成物1及び比較例樹脂組成物2、3を、アプリケーターを用いて厚さ18μmの銅箔の鏡面上に厚さ280μmでそれぞれ塗布し、90℃で10分間加熱して溶剤を乾燥させた。前記で得られた銅箔上のフィルム状接着剤を、真空オーブンを用いて180℃で1時間加熱硬化させた後、エッチング液に浸して銅箔を除去した。本発明の樹脂組成物1及び比較例樹脂組成物2からなるフィルム状接着剤からは、フィルムとして取り扱い可能な厚さ70μmの硬化物が得られたため、前記で得られた硬化物を用いて誘電特性を評価した。誘電特性は、ネットワークアナライザー8719ET(アジレントテクノロジー製)を用いて、10GHzにおける誘電率と誘電正接を空洞共振法で測定した結果により評価した。結果を表1に示した。比較樹脂組成物3を硬化させた場合は、硬化物が非常に脆く、フィルムとして取り扱うことができなかったため、誘電特性の評価に供することが出来なかった。
【0037】
(樹脂組成物の硬化物の接着強度評価)
実施例2及び比較例3、4で得られた本発明の樹脂組成物1、及び比較例樹脂組成物2、3を、アプリケーターを用いて厚さ12μmの高周波用低粗度銅箔(CF-T4X-SV:福田金属箔粉株式会社製)のマット面上に厚さ50μmで塗布し、90℃で10分間加熱して溶剤を乾燥させることにより本発明の樹脂組成物からなるフィルム状接着剤を有する銅箔を得た。前記で得られた銅箔の接着剤面上に、前記と同じ銅箔のマット面を重ねあわせて真空プレス中で3MPaの圧力で1時間加熱硬化させた後、銅箔間の90℃引きはがし強さ(接着強度)をオートグラフAGX-50(株式会社島津製作所製)を用いて測定した。結果を表1に示した。
【0038】
【0039】
以上のように、本発明の高分子化合物は、エポキシ樹脂および硬化促進剤と硬化させた場合、フレキシブルなフィルムを形成し、更に優れた誘電特性及び接着性を示した。