IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧 ▶ 株式会社日本自動車部品総合研究所の特許一覧

<>
  • 特開-排ガス浄化装置 図1
  • 特開-排ガス浄化装置 図2
  • 特開-排ガス浄化装置 図3
  • 特開-排ガス浄化装置 図4
  • 特開-排ガス浄化装置 図5
  • 特開-排ガス浄化装置 図6
  • 特開-排ガス浄化装置 図7
  • 特開-排ガス浄化装置 図8
  • 特開-排ガス浄化装置 図9
  • 特開-排ガス浄化装置 図10
  • 特開-排ガス浄化装置 図11
  • 特開-排ガス浄化装置 図12
  • 特開-排ガス浄化装置 図13
  • 特開-排ガス浄化装置 図14
  • 特開-排ガス浄化装置 図15
  • 特開-排ガス浄化装置 図16
  • 特開-排ガス浄化装置 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042157
(43)【公開日】2022-03-14
(54)【発明の名称】排ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/023 20060101AFI20220307BHJP
   B01D 46/42 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
F01N3/023 K ZAB
B01D46/42 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020147423
(22)【出願日】2020-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】児玉 好正
(72)【発明者】
【氏名】山村 周作
【テーマコード(参考)】
3G190
4D058
【Fターム(参考)】
3G190AA13
3G190BA05
3G190CA03
3G190CA13
3G190DA04
3G190DB03
3G190DB04
3G190DB05
3G190DB07
3G190DB12
3G190DB15
3G190DC01
3G190DD08
3G190DD14
3G190EA01
3G190EA02
3G190EA09
3G190EA14
3G190EA26
3G190EA32
3G190EA42
4D058JA38
4D058MA44
4D058MA52
4D058MA54
4D058PA04
4D058SA08
(57)【要約】
【課題】排ガス浄化フィルタに堆積するPM堆積量を精度よく推定し、排ガス浄化フィルタの再生制御を適切に実施することができる排ガス浄化装置を提供する。
【解決手段】排ガス浄化装置1は、排ガス浄化フィルタ2の再生制御を行う再生制御部3に、運転情報取得部30と、排ガス浄化フィルタ2に堆積する粒子状物質による圧力損失情報ΔPを取得する圧損情報取得部40と、排ガス浄化フィルタ2の再生可否を判定する再生可否判定部50を備える。再生可否判定部50は、PM堆積状態推定部51と、PM堆積状態に基づいて、圧力損失情報ΔP又は圧力損失情報に対応する粒子状物質の堆積量情報ΣPMを補正するPM堆積特性補正部52と、を有し、PM堆積特性補正部52は、内燃機関Eが始動時であるときに、冷間始動時と暖機後とで異なるPM堆積状態に基づいて、圧力損失情報ΔP又は堆積量情報ΣPMを補正する始動時補正部53を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(E)の排ガス通路(EX)に配設される排ガス浄化フィルタ(2)と、上記排ガス浄化フィルタの再生制御を行う再生制御部(3)と、を備える排ガス浄化装置(1)であって、
上記排ガス浄化フィルタは、上記排ガス通路に連通する多数のセル(21)と、多数の上記セルを区画すると共に上記排ガス通路に排出される粒子状物質を捕集するための多孔質隔壁(22)と、を有し、
上記再生制御部は、上記内燃機関の運転情報を取得する運転情報取得部(30)と、
上記排ガス浄化フィルタに堆積する粒子状物質による圧力損失情報(ΔP)を取得する圧損情報取得部(40)と、
上記排ガス浄化フィルタの再生可否を判定する再生可否判定部(50)と、を有し
上記再生可否判定部は、
上記運転情報及び上記圧力損失情報のうち少なくとも一方に基づいて、上記多孔質隔壁の内外表面における粒子状物質の堆積状態を推定するPM堆積状態推定部(51)と、
上記堆積状態に基づいて、上記圧力損失情報又は上記圧力損失情報に対応する粒子状物質の堆積量情報(ΣPM)を補正するPM堆積特性補正部(52)と、を有しており、
上記PM堆積特性補正部は、上記内燃機関が始動時であるときに、冷間始動時と暖機後とで異なる上記堆積状態に基づいて、上記圧力損失情報又は上記堆積量情報を補正する始動時補正部(53)を有する、排ガス浄化装置。
【請求項2】
上記PM堆積状態推定部は、上記運転情報として、上記内燃機関の温度情報、空燃比情報、及び、始動後の経過時間から選ばれる1つ以上に基づいて、上記堆積状態が、冷間始動時に排出される粒子状物質の堆積によるコールドPM堆積状態か否かを推定するものであり、
上記始動時補正部は、上記コールドPM堆積状態と推定されるときに、上記内燃機関の温度又は空燃比が低いほど、又は、上記経過時間が短いほど、上記圧力損失情報の補正量(ΔP0)を大きい値に設定し、
上記再生可否判定部は、上記補正量を用いて補正された補正後圧損情報(ΔP1)と、上記堆積量情報との関係に基づいて、上記排ガス浄化フィルタの再生可否を判定する、請求項1に記載の排ガス浄化装置。
【請求項3】
上記PM堆積特性補正部は、上記内燃機関の始動後において、上記排ガス浄化フィルタのアクティブ再生又はパッシブ再生の有無に応じて異なる上記堆積状態に基づいて、上記圧力損失情報と上記堆積量情報との関係を示す特性線を補正する始動後補正部(54)を有する、請求項1又は2に記載の排ガス浄化装置。
【請求項4】
上記PM堆積状態推定部は、上記内燃機関の始動後の上記運転情報と、上記圧力損失情報の推移とに基づいて、上記多孔質隔壁の内部における深層堆積状態及び表層部における表層堆積状態の組み合わせで表される上記堆積状態を推定すると共に、上記アクティブ再生又はパッシブ再生の進行による上記堆積状態の変化を推定するものであり、
上記始動後補正部は、上記堆積状態の変化により、上記深層堆積状態にある粒子状物質の割合が小さくなるほど、上記特性線が低圧損側へシフトするように補正する、請求項3に記載の排ガス浄化装置。
【請求項5】
上記再生制御部は、上記再生可否判定部によって再生可と判定されたときに、上記排ガス浄化フィルタをアクティブ再生するPM燃焼制御部(60)を備え、
上記PM燃焼制御部は、上記堆積状態に基づいて、深層堆積状態にある粒子状物質を燃焼可能な状態となると共に、上記表層堆積状態にある粒子状物質の一部が残留するように、昇温制御する、請求項4に記載の排ガス浄化装置。
【請求項6】
上記PM堆積状態推定部は、上記運転情報に基づいて、上記排ガス浄化フィルタがパッシブ再生可能な状態でないと判定されるときに、上記堆積状態の推定を行う、請求項5に記載の排ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関等に用いられる排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両エンジン等の内燃機関の排ガス通路に、排ガス浄化フィルタを配設して、排ガス中に含まれる粒子状物質(すなわち、パティキュレートマター;以下、適宜、PMという)を捕集することが行われている。粒子状物質は、カーボン(以下、適宜、SOOTという)を主体とし、未燃燃料等に由来する可溶性有機成分(以下、適宜、SOFという)を含む。排ガス浄化フィルタは、多孔質の隔壁にて区画される多数のセルを有し、各セルの上流側又は下流側の端部が閉塞されることにより、流入側が開口する流入セル及び排出側が開口する排出セルが、互い違いに配置されたフィルタ構造を有する。
【0003】
排ガス浄化装置は、排ガス浄化フィルタの再生処理を行う再生制御部を備える。再生制御部は、例えば、排ガス浄化フィルタの上流側及び下流側の圧力差に基づいてPM堆積量を監視し、PM堆積量が所定量を超えないように、所定の再生タイミングにて排ガス浄化フィルタを昇温させて、粒子状物質を燃焼除去する。排ガス浄化フィルタの再生処理を、適切なタイミングで行うためには、検出される圧力差から推定されるPM堆積量が、実際のPM堆積量を正しく反映していることが望まれる。
【0004】
そこで、PM堆積量の推定精度を高めるために、種々の技術が提案されている。例えば、特許文献1には、差圧センサによって計測される差圧と、予めメモリに記憶された特性とから、PM堆積量の推定値を推定する際に、所定の条件において、推定を無効化する手段を備える装置が開示されている。この装置は、冷間始動時において、差圧に基づいた推定精度が低下することに着目したものであり、始動時のPM堆積量の推定値が、エンジン停止時に記憶した推定値から大きく離れている場合に、差圧が低下している可能性があると判断し、差圧式推定を無効化する処理を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-221862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の装置は、推定精度が低下する可能性がある冷間始動時において、差圧式推定を無効とし、その代わりに、運転履歴に基づいた推定を有効とする。運転履歴式推定は、一般に、エンジン回転数と燃料噴射量をパラメータとして、予め運転領域毎に求めておいたPM排出量マップを用いるものである。ただし、冷間始動時には、例えば、ストイキ制御のガソリンエンジンにおいて、エンジンの温度や空燃比等が変化すると、燃焼状態が変動しやすくなる。その場合には、排出されるPM性状やPM量にも影響して、推定されるPM堆積量のばらつきが大きくなることがあり、精度よい推定を行うことは容易ではなかった。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、排ガス浄化フィルタに堆積するPM堆積量を精度よく推定し、排ガス浄化フィルタの再生制御を適切に実施することができる排ガス浄化装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、
内燃機関(E)の排ガス通路(EX)に配設される排ガス浄化フィルタ(2)と、上記排ガス浄化フィルタの再生制御を行う再生制御部(3)と、を備える排ガス浄化装置(1)であって、
上記排ガス浄化フィルタは、上記排ガス通路に連通する多数のセル(21)と、多数の上記セルを区画すると共に上記排ガス通路に排出される粒子状物質を捕集するための多孔質隔壁(22)と、を有し、
上記再生制御部は、上記内燃機関の運転情報を取得する運転情報取得部(30)と、
上記排ガス浄化フィルタに堆積する粒子状物質による圧力損失情報(ΔP)を取得する圧損情報取得部(40)と、
上記排ガス浄化フィルタの再生可否を判定する再生可否判定部(50)と、を有し
上記再生可否判定部は、
上記運転情報及び上記圧力損失情報のうち少なくとも一方に基づいて、上記多孔質隔壁の内外表面における粒子状物質の堆積状態を推定するPM堆積状態推定部(51)と、
上記堆積状態に基づいて、上記圧力損失情報又は上記圧力損失情報に対応する粒子状物質の堆積量情報(ΣPM)を補正するPM堆積特性補正部(52)と、を有しており、
上記PM堆積特性補正部は、上記内燃機関が始動時であるときに、冷間始動時と暖機後とで異なる上記堆積状態に基づいて、上記圧力損失情報又は上記堆積量情報を補正する始動時補正部(53)を有する、排ガス浄化装置にある。
【発明の効果】
【0009】
上記排ガス浄化装置において、再生制御部は、PM堆積状態推定部を有し、排ガス浄化フィルタの圧力損失情報を用いて再生可否の判定を行うに際し、PM堆積状態の推定結果に基づく補正を行う。PM堆積特性補正部は、始動時補正部を有するので、始動時に排出されやすい粒子状物質の性状や組成に応じた堆積状態を考慮した補正を行うことができる。例えば、冷間始動時には、暖機後よりもかさ密度が低い堆積状態となるために、同じPM堆積量であっても圧力損失が低下することが判明した。この知見に基づき、始動時補正部において、冷間始動時に測定される圧力損失又は圧力損失に対応するPM堆積量を補正することにより、推定誤差を小さくすることができる。これにより、再生制御部による再生可否の判定が適正になされ、再生処理が適正なタイミングで実施される。
【0010】
以上のごとく、上記態様によれば、排ガス浄化フィルタに堆積するPM堆積量を精度よく推定し、排ガス浄化フィルタの再生制御を適切に実施することができる排ガス浄化装置を提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1における、内燃機関に適用された排ガス浄化装置の全体構成図。
図2】実施形態1における、排ガス浄化装置の再生制御部の構成を示すブロック図。
図3】実施形態1における、排ガス浄化装置の圧力損失値ΔPとPM堆積量ΣPMとの関係を、冷間始動時と暖機後始動時とで比較して示す図。
図4】実施形態1における、始動時に堆積するPMのかさ密度を、冷間始動時と暖機後始動時とで比較して示す図。
図5】実施形態1における、排ガス浄化フィルタの多孔質隔壁の部分拡大断面図であり、冷間始動時と暖機後始動時のPM堆積状態を比較して示す図。
図6】実施形態1における、内燃機関の温度情報及び空燃比情報と、PM堆積特性補正部による補正量との関係を示す図。
図7】実施形態1における、再生制御部によって実施される始動時制御処理の手順を示すフローチャート図。
図8】実施形態1における、再生制御部によって始動時補正が実施された場合と、実施されない場合について、推定されるPM堆積量の時間推移を比較して示すタイムチャート図。
図9】実施形態1における、再生制御部によって実施される暖機後制御処理の手順を示すフローチャート図。
図10】実施形態1における、暖機後制御処理の実施によるPM堆積状態の変化を示すPM堆積特性図。
図11】実施形態1における、暖機後制御処理後のPM堆積特性を推定する手順を示すPM堆積特性図。
図12】実施形態1における、排ガス浄化フィルタの深層部及び表層部へのPM堆積状態の変化と、圧力損失値ΔP及びPM堆積量ΣPMの関係を示すPM堆積特性図。
図13】実施形態1における、再生制御部によって部分再生処理が実施される場合の圧力損失値ΔPの時間推移を示すタイムチャート図。
図14】実施形態2における、再生制御部によって実施されるPM燃焼時制御処理の手順を示すフローチャート図。
図15】実施形態2における、排ガス浄化フィルタの残存PM堆積量とPM燃焼速度の関係を示す図。
図16】実施形態2における、排ガス浄化フィルタのパッシブ再生を考慮したPM堆積状態の変化と、圧力損失値ΔP及びPM堆積量ΣPMの関係を示すPM堆積特性図。
図17】実施形態2における、排ガス浄化フィルタの再生時のPM堆積量ΣPMとPM燃焼速度の関係と、PM堆積量ΣPMの時間推移を示すタイムチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1)
排ガス浄化装置に係る実施形態について、図1図13を参照して説明する。
図1に示されるように、排ガス浄化装置1は、例えば、内燃機関としての車両用のガソリンエンジン(以下、エンジンと称する)Eに設けられる。排ガス浄化装置1は、エンジンEの排ガス通路としての排気管EXに配設される排ガス浄化フィルタ2と、排ガス浄化フィルタ2の再生制御を行う再生制御部3と、を備える。排ガス浄化フィルタ2は、例えば、公知のウォールフロータイプのフィルタ構造を有するガソリンパティキュレートフィルタ(以下、GPFと称する)として構成される。
【0013】
再生制御部3は、例えば、エンジンEの運転を制御するためのエンジン制御装置(Engine Control Unit;以下、ECUと称する)100と一体的に設けることができる。ECU100は、演算機能、メモリ機能、タイマ機能等を備える公知の構成を有し、再生制御部3における再生制御を実行すると共に、図示しない燃料噴射制御等を実行し、エンジンEの全体を制御する。
【0014】
排ガス浄化フィルタ2は、エンジンEから排出される排ガスG中の粒子状物質(以下、PMと称する)を捕集して、排ガスGの浄化を行うために用いられる。排ガス浄化フィルタ2は、排気管EXに連通する多数のセル21と、多数のセル21を区画する多孔質隔壁22と、を有する。多孔質隔壁22は、排気管EXに排出されるPMを捕集するためのものである。多数のセル21は、それぞれ上流側が開口する入口セル又は下流側が開口する出口セルとして構成されており、排ガス浄化フィルタ2の両端面において、入口セルと出口セルとが互い違いに配置されることにより、隣り合うセル21の間の多孔質隔壁22を介して、排ガスGが流通可能となっている。
【0015】
再生制御部3は、運転情報取得部30と、圧損情報取得部40と、再生可否判定部50と、を有する。運転情報取得部30は、エンジンEの各部に設けられるセンサ等に接続されて、後述する各種運転情報を取得するものである。圧損情報取得部40は、排ガス浄化フィルタ2に堆積するPMによる圧力損失情報(例えば、圧力損失値ΔP)を取得するものである。再生可否判定部50は、排ガス浄化フィルタ2の再生可否を判定するものである。再生制御部3は、さらに、後述するPM燃焼制御部60を有することができる。
【0016】
図2に示されるように、再生可否判定部50は、PM堆積状態推定部51と、PM堆積特性補正部52と、を有している。PM堆積状態推定部51は、取得される運転情報及び圧力損失情報の少なくとも一方に基づいて、多孔質隔壁22の内外表面におけるPMの堆積状態(以下、適宜、PM堆積状態と称する)を推定するものである。PM堆積特性補正部52は、PM堆積状態に基づいて、圧力損失情報又は圧力損失情報に対応する粒子状物質の堆積量情報(例えば、PM堆積量ΣPM)を補正するものである。
【0017】
PM堆積特性補正部52は、具体的には、始動時補正部53を有している。始動時補正部53による処理は、エンジンEが始動時であるときに実行され、冷間始動時と暖機後とで異なるPM堆積状態に基づいて、圧力損失情報又は堆積量情報を補正することができる。ここで、圧力損失情報とは、圧力損失値ΔPとその履歴及びそれらに関連する情報を含む。同様に、堆積量情報は、PM堆積量ΣPMとその履歴及びそれらに関連する情報を含む。
【0018】
図3に示されるように、排ガス浄化フィルタ2におけるPM堆積量ΣPMと圧力損失値ΔPには相関があり、PM堆積量ΣPMが増加するほど、圧力損失値ΔPも増加している。さらに、PMが排出されやすい始動時、特に、堆積初期には、PM堆積量ΣPMの増加に伴い、圧力損失値ΔPが急増する傾向が見られ、その後、PMがある程度堆積すると、圧力損失値ΔPの増加は緩やかとなる。その傾向は、冷間始動時(例えば、図中にCOLDとして示す)と暖機後始動時(例えば、図中にHOTとして示す)とで類似するものの、PM堆積量ΣPMと圧力損失値ΔPとの関係は一致せず、同じPM堆積量(例えば、図3中のPM1)に対する圧力損失値ΔPは、冷間始動時の方が小さくなる。
【0019】
これは、始動時温度等の燃焼条件の違いによって、エンジンEから排出されるPM組成やPM性状が異なることに起因し、そのために、多孔質隔壁22の内外表面にPMが捕集される際の堆積状態にも違いが生じるものと推測される。例えば、一般に、始動時温度が低いほど、PMの排出量が増加しやすくなり、温度や空燃比等の変化により、PMに含まれるSOOTとSOFの割合が変化すると、PM性状が変化して、排出後の凝集状態にも影響する。
【0020】
具体的には、図4に示されるように、冷間始動時に堆積するコールドPM(例えば、図中にCOLD PMとして示す)のかさ密度(すなわち、単位体積当たりの質量)は、暖機後始動時に堆積するホットPM(例えば、図中にHOT PMとして示す)のかさ密度よりも低くなることが判明した。言い換えれば、多孔質隔壁22の内外表面にPMが堆積した状態において、単位体積に含まれるPM質量は、始動時温度が低い方が少なくなり、PMとPMの間の空隙が増えることになる。
【0021】
その場合、図5に示されるように、冷間始動時と暖機後始動時において、多孔質隔壁22におけるPM堆積状態が異なる。図5の上図に示されるように、かさ密度が低い冷間始動時に形成されるPM層は、PM間の空隙が多いコールドPM堆積状態となり、一方、図5の下図に示されるように、かさ密度が高い暖機後始動時に形成されるPM層は、PM間の空隙が少ないホットPM堆積状態となる。そのために、冷間始動時の方が、通気性が高くなり、上記図3に示したようなPM堆積特性を示すものと推測される。
【0022】
そこで、再生可否判定部50に、PM堆積状態推定部51と、始動時補正部53を含むPM堆積特性補正部52とを設けて、上記図3に示される関係に基づく始動時補正を行うことができる。具体的には、PM堆積状態に応じて、実際のPM堆積量との誤差が小さくなるように、圧力損失値ΔPを補正することにより、補正後の圧力損失値ΔPに基づくPM堆積量の推定を、精度よく行うことが可能になる。圧力損失値ΔPに対応するPM堆積量ΣPMを補正することもできる。これにより、PM堆積量に基づく再生可否の判定を、精度よく行うことが可能になる。
【0023】
具体的には、PM堆積状態推定部51は、運転情報として、エンジンEの温度情報、空燃比情報、及び、始動後の経過時間から選ばれる1つ以上に基づいて、PM堆積状態が、冷間始動時に排出される粒子状物質の堆積によるコールドPM堆積状態か否か、を推定することができる。エンジンEの温度情報としては、例えば、冷却水温、潤滑油温、上記排ガス浄化フィルタの上流における排ガス温度が挙げられる。
【0024】
このとき、図6に示されるように、始動時補正部53は、コールドPM堆積状態と推定されるときに、圧力損失情報の補正量(例えば、圧損補正値ΔP0)を、エンジンEの温度又は空燃比が低いほど、又は、経過時間が短いほど、大きい値に設定することができる。その場合に、再生可否判定部50は、補正後圧力損失情報(例えば、補正後圧損値ΔP1)と、PM堆積量ΣPMとの関係に基づいて、排ガス浄化フィルタ2の再生可否を判定する。
【0025】
さらに、好適には、PM堆積特性補正部52は、始動後補正部54を有することができる。始動後補正部54は、エンジンEの始動後において、排ガス浄化フィルタ2のアクティブ再生又はパッシブ再生の有無に応じて異なるPM堆積状態に基づいて、圧力損失情報と堆積量情報との関係を示す特性線(以下、PM堆積特性線という)を補正することができる。
【0026】
具体的には、PM堆積状態推定部51は、エンジンEの始動後の運転情報と、圧力損失情報の推移とに基づいて、多孔質隔壁22の内部における深層堆積状態及び表層部における表層堆積状態の組み合わせで表されるPM堆積状態を推定すると共に、アクティブ再生又はパッシブ再生の進行によるPM堆積状態の変化を推定するものである。始動後補正部54は、PM堆積状態の変化により、深層堆積状態にあるPMの割合が小さくなるほど、PM堆積特性線が低圧損側へシフトするように補正する。
【0027】
好適には、再生制御部3は、PM燃焼制御部60を有することができる。PM燃焼制御部60は、再生可否判定部50によって再生可と判定されたときに、排ガス浄化フィルタ2をアクティブ再生する。PM燃焼制御部60は、PM堆積状態に基づいて、深層堆積状態にあるPMが燃焼可能な状態となると共に、表層堆積状態にあるPMの一部が残留するように、昇温制御する。PM堆積状態推定部51は、取得される運転情報に基づいて、排ガス浄化フィルタ2がパッシブ再生可能な状態でないと判定されるときに、PM堆積状態の推定を行うことが好ましい。
【0028】
なお、アクティブ再生は、PM堆積量ΣPMが、例えば、再生判定閾値PMrefに達したときに行われる強制的な再生であり、昇温制御を伴う。パッシブ再生は、エンジンEの運転条件が、排ガス浄化フィルタ2におけるPM燃焼に適した状態となることで生じる受動的な再生であり、自然再生ともいう。再生判定閾値PMrefは、排ガス浄化フィルタ2の仕様に応じて予め定められたPM堆積量限界値SMLないしそれ以下となるように、適宜設定することができる。
再生制御部3により実行される再生処理の詳細は、後述する。
【0029】
次に、排ガス浄化装置1を構成する各部の構成と作動の詳細について、説明する。
図1において、排ガス浄化装置1は、多気筒(例えば、4気筒)のエンジンEの排気管EXの途中に、排ガス浄化フィルタ2を備えている。排ガス浄化フィルタ2は、多孔質隔壁22で区画される多数のセル21がガス流れ方向と平行に並ぶ多孔質セラミックスハニカム構造体を、両端面において互い違いに目封止した構成となっている。多孔質セラミックスハニカム構造体は、具体的には、コーディエライト等の耐熱性セラミックスからなる。
【0030】
エンジンEの始動に伴い、各気筒から排気管EXに排出される排ガスGは、排ガス浄化フィルタ2の多数のセル21のうち、上流側に開口するセル21に流入し、多孔質隔壁22を介して、隣接するセル21との間を流通しながら、下流側へ向かう。排ガスGに含まれるPMは、多孔質隔壁22を通過する間に捕集されて、多孔質隔壁22の内外表面に堆積する。その後、排ガスGは、下流側に開口するセル21から流出し、排気管EXを経て車外へ排出される。
【0031】
再生制御部3は、運転情報取得部30にて取得される運転情報と、圧損情報取得部40にて取得される圧力損失情報とを参照して、再生可否判定部50にて、排ガス浄化フィルタ2のPM堆積状態を推定し、圧力損失情報と堆積量情報との関係に基づいて、排ガス浄化フィルタ2の再生可否を判定する。排ガス浄化フィルタ2の再生可と判定されると、PM燃焼制御部60にて、排ガス浄化フィルタ2の再生処理が実施され、所定のPM堆積状態となるように、PM燃焼制御される。
【0032】
PM燃焼制御部60は、具体的には、排ガス浄化フィルタ2を強制的に再生するアクティブ再生制御部61と、排ガス浄化フィルタ2が自然再生可能な状態であることを検出するパッシブ再生検出部62とを有する。
【0033】
排ガス浄化フィルタ2の上流側において、排気管EXの通路壁には、排ガス温度センサ11や、空燃比センサ12が配設されており、排ガス浄化フィルタ2に流入する排ガスGの温度や空燃比(A/F)を検出するようになっている。また、エンジンEには、図示しないエンジン冷却水の温度を検出する水温センサ、エンジン潤滑油の温度を検出する油温センサ等が設けられている。これらセンサにて検出される温度情報、空燃比情報は、再生制御部3の運転情報取得部30へ入力される。
【0034】
運転情報取得部30には、その他に、エンジンEの運転状態を表す各種情報、例えば、エンジン回転数NEや燃料噴射量Qが入力される。また、エンジンEの吸入空気通路である吸気管INには、アクセル開度に応じて吸入空気量を調整するためのスロットルバルブ13が設けられ、図示しないスロットル開度センサによってスロットル開度TAが検出される。また、図示しないエアフローメータがスロットルバルブ13の上流側に設けられ、吸入空気量Gaが検出される。これら検出値は、運転情報取得部30へ入力される。
【0035】
排気管EXには、排ガス浄化フィルタ2における圧力損失値ΔPを検出するために、差圧センサ4が設けられる。差圧センサ4は、例えば、排ガス浄化フィルタ2の上流側及び下流側における排気管EXの通路壁にそれぞれ設けられる上流側圧力センサ41及び下流側圧力センサ42を備える。差圧センサ4は、これらセンサからの検出結果に基づいて、排ガス浄化フィルタ2の上流側及び下流側における圧力差を、差圧信号として、圧損情報取得部40に出力するようになっている。
【0036】
圧損情報取得部40は、差圧センサ4からの差圧信号に基づいて、排ガス浄化フィルタ2における圧力損失値ΔPを取得する。圧力損失値ΔPは、排ガス浄化フィルタ2に捕集されるPM量やその堆積状態を反映したものであり、圧力損失値ΔP及びその履歴から、PM堆積状態を推定することができる。さらに、運転情報取得部30にて取得される各種情報を組み合わせることにより、PM堆積状態の変化に基づくPM堆積特性を把握することができる。
【0037】
図2において、再生可否判定部50は、圧損情報取得部40にて取得した圧力損失値ΔPと、PM堆積量ΣPMとの関係を、予め取得してマップ等に記憶している。この関係に基づいて、圧力損失値ΔPから算出されるPM堆積量ΣPMを、所定の再生判定閾値PMrefと比較することにより、再生可否の判定を行うことができる。PM堆積量ΣPMを、差圧信号に基づく圧力損失値ΔPから算出する方法の他に、運転情報取得部30にて取得される各種情報に基づく運転履歴から、圧力損失値ΔPに相当するPM堆積量ΣPMを推定することもできる。
【0038】
それに先立ち、PM堆積状態推定部51において、排ガス浄化フィルタ2におけるPM堆積状態を推定し、その推定結果に基づいて、PM堆積特性補正部52において、圧力損失値ΔP又は圧力損失値ΔPに対応するPM堆積量ΣPMを補正することができる。これにより、冷間始動時又は暖機後のPM堆積状態の変化を考慮して、実際のPM堆積量ΣPMを精度よく推定し、再生可否の判定を適正に行うことができる。圧力損失値ΔP又はPM堆積量ΣPMを補正する代わりに、これらと相関を有する指標値、例えば、再生可否の判定に用いられる再生判定閾値PMrefを補正することも可能である。
【0039】
例えば、始動時には、上記図3図5に示したように、冷間始動時と暖機後始動時のPM性状の違いにより、排ガス浄化フィルタ2のPM堆積状態が異なる。図5に拡大して示すように、多孔質隔壁22は、所定の気孔率となるように構成されたセラミックス焼結体からなり、多数のセラミックス粒子221の間に、多数の気孔222が形成されると共に、互いに連通してガス流路を形成している。好適には、セラミックス粒子221の表面を覆って、酸化触媒等からなる触媒コート層223が形成される。触媒コート層223は、排ガス浄化フィルタ2の再生処理時に、再生温度を低くして、排ガス浄化フィルタ2の過昇温等を抑制する作用を有する。
【0040】
エンジンEから排出されるPMは、排ガスGと共に多孔質隔壁22に流入すると、まず、多孔質隔壁22の内部に堆積し(すなわち、深層堆積状態)、その後、セル21に面する多孔質隔壁22の表層に堆積する(すなわち、表層堆積状態)。そのため、図3に示される堆積初期において、圧力損失値ΔPが急増し、その後、徐々に圧力損失値ΔPの増加が緩やかとなる圧損特性を示す。これは、深層堆積状態では、PMがガス流路となる気孔222内に捕捉されることにより、排ガスの流通が阻害されやすくなるのに対して、表層堆積状態に移行後は、ガス流路への影響がより小さくなるためと推測される。
【0041】
さらに、図4に示されるかさ密度の違いにより、冷間始動時の圧損特性は、全体に、暖機後始動時よりも圧力損失値ΔPが低くなる側へシフトする。このとき、図5の上図に示されるPM堆積状態は、かさ密度の低いコールドPM堆積状態となり、PM間の隙間が形成されやすくなるために、通気性が高くなる。これに対して、図5の下図に示される暖機後始動時は、かさ密度の高いホットPM堆積状態となる。
【0042】
PM堆積状態推定部51は、運転情報取得部30によるエンジンEの運転情報から、冷間始動時に相当するコールドPM堆積状態か、又は、暖機後始動時に相当するホットPM堆積状態か、を推定することができる。また、コールドPM堆積状態におけるかさ密度と始動時温度との関係を、例えば、冷却水温や潤滑油温等の温度情報や空燃比情報について、予め取得しておくことで、圧力損失値ΔPの補正を効果的に行うことが可能になる。なお、冷間始動とは、例えば、常温より低い温度における始動であり、暖機後始動とは、常温以上の所定の暖機温度に達した状態での始動をいう。
【0043】
PM堆積特性補正部52の始動時補正部53は、PM堆積状態推定部51によって、コールドPM堆積状態と推定されたときに、圧損情報に基づく再生可否判定の精度を高めるための補正を行う。具体的には、図3に示されるPM堆積量ΣPMと圧力損失値ΔPの関係において、コールドPM堆積状態のときには、同じPM堆積量ΣPM(例えば、PM1)に対応する圧力損失値ΔPは、ホットPM堆積状態のときよりも低くなることから、その差分値に相当する圧損補正値ΔP0を、補正量として設定する。圧損補正値ΔP0は、例えば、圧力損失値ΔPの増加分として加算される。
【0044】
補正後圧損値ΔP1は、取得された圧力損失値ΔPに、圧損補正値ΔP1を加算して算出される(すなわち、ΔP1=ΔP+ΔP0)。算出された補正後圧損値ΔP1は、ホットPM堆積状態における圧力損失値ΔPと同等となるので、予め記憶しているPM堆積量ΣPMと圧力損失値ΔPの関係を示すマップや算出式等を参照することにより、対応するPM堆積量ΣPMを算出することができる。そして算出されたPM堆積量ΣPMを、再生判定閾値PMrefと比較し、再生判定閾値PMref以上となったときに、再生処理を行うことができる。
【0045】
ここで、図3に示される冷間始動時と暖機後始動時の圧損特性は、代表例であり、例えば、冷間始動時の運転条件によりPM堆積状態が変化すると、これらの関係も変化する。したがって、圧損補正値ΔP0は、測定される圧力損失値ΔP毎に予め定めた所定値とすることもできるが、好適には、運転条件により変化する圧損特性に合わせて、適正な補正量となるように、燃焼状態に影響する複数のパラメータを用いて設定することもできる。具体的には、図6に示されるように、温度情報や空燃比情報の1つ以上を考慮し、それらの大きさに基づいて、圧損補正値ΔP0を設定する。温度情報や空燃比情報等の運転情報は、運転情報取得部30にて取得することができる。エンジンEの温度情報としては、例えば、冷却水温、潤滑油温、上記排ガス浄化フィルタの上流における排ガス温度から選ばれる少なくとも1つを用いることができる。
【0046】
以下に、再生制御部3において、始動時に実施される始動時制御の一例を、図7のフローチャートを用いて説明する。図7のステップS101~S107は、運転情報取得部30、圧損情報取得部40、再生可否判定部50としての処理であり、PM堆積状態推定部51及びPM堆積特性補正部52としての処理を含む。図7のステップS108~S109は、PM燃焼制御部60としての処理である。
【0047】
始動時制御は、例えば、車両のイグニッションスイッチがオンとなることによって開始される。ステップS101は、運転情報取得部30としての処理であり、エンジンEの温度情報として、冷却水温、潤滑油温、排ガス温度等の1つ以上の検出情報を読み込むと共に、空燃比の検出情報を読み込む。これら運転情報は、上記図1に示したエンジンEの各部に設けられる各種センサに基づくものであり、例えば、排ガス温度センサ11から、排ガス温度の検出情報が取得される。また、空燃比センサ12から、空燃比の検出情報が取得される。
【0048】
次に、ステップS102において、ステップS101にて読み込んだ運転情報から、排ガス浄化フィルタ2のPM堆積状態が、冷間始動時に排出されるPMが堆積したコールドPM堆積状態にあるか否かを推定する。ステップS102は、PM堆積状態推定部51としての処理である。具体的には、運転情報のうち少なくとも1つの温度情報から推定されるエンジンEの温度が、所定の温度閾値T0以下であるときに、冷間始動時と判定することができ、その場合に、コールドPM堆積状態にあると推定することができる。
【0049】
温度閾値T0は、例えば、予め定めた暖機完了温度より低い温度であり、ホットPM堆積状態に対する補正が必要となる温度に、適宜設定される。温度閾値T0を、温度情報として選択されるパラメータ毎に設定することもできる。なお、コールドPM堆積状態の推定のために、タイマ機能を用いて始動後の経過時間を計測し、所定時間t以下であるときに、コールドPM堆積状態にあると判定するようにしてもよい。
【0050】
ステップS102が肯定判定されたときには、ステップS103以降へ進み、圧損情報を取得して、その補正を行う。ステップS103は、圧損情報取得部40としての処理であり、ステップS104、ステップS105は、始動時補正部53としての処理である。ステップS102が否定判定されたときには、例えば、暖機が完了したか又は暖機後の再始動によるホットPM堆積状態にあり、始動時補正は必要ないと判断されるので、暖機後制御へ進む。暖機後制御については、後述する。
【0051】
ステップS103では、差圧センサ4からの差圧信号に基づいて、排ガス浄化フィルタ2における圧力損失値ΔPを取得する。次いで、ステップS104に進んで、冷間始動時のPM堆積状態に応じた圧損補正値ΔP0を算出する。ここでは、ステップS101にて読み込んだ運転情報の1つ以上について、予め記憶しているマップ又は算出式を参照して、圧損補正値ΔP0を算出する。具体的には、上記図6に示される運転情報と圧力損失値ΔPの関係に基づいて、取得した温度情報、例えば、冷却水温又は潤滑油温又は排ガス温度が低いほど、圧損補正値ΔP0が大きくなるようにする。また、空燃比が燃料リッチ側であるほど、圧損補正値ΔP0が大きくなるようにする。
【0052】
続くステップS105では、ステップS103にて取得した圧力損失値ΔPに、ステップS104にて算出した圧損補正値ΔP0を加算して、補正後の圧力損失値としての補正後圧損値ΔP1を算出する。その後、ステップS106、ステップS107において、再生可否の判定を行う。ステップS106では、補正後圧損値ΔP1に基づいて、予め記憶しているマップ等を参照して、PM堆積量ΣPMを算出する。なお、PM堆積量ΣPMの算出に際しては、圧力損失値ΔPに影響する排ガス流量等を考慮することが望ましい。排ガス流量は、例えば、運転情報取得部30により取得される吸入空気量Gaと排ガス温度とを用いて算出することができる。
【0053】
ステップS107では、算出されたPM堆積量ΣPMを再生判定閾値PMrefと比較し、再生判定閾値PMref以上であるか否かを判定する(すなわち、ΣPM≧PMref?)。ステップS107が肯定判定されたときには、ステップS108へ進む。ステップS108は、アクティブ再生制御部61としての処理であり、排ガス浄化フィルタ2のアクティブ再生処理(以下、GPF再生処理という)を行う。また、タイマ機能を用いて、GPF再生処理の開始後の経過時間を計測する。ステップS107が否定判定されたときには、ステップS102へ戻り、以降のステップを繰り返す。
【0054】
ステップS108において、GPF再生処理には、任意の昇温制御手段が採用される。昇温制御手段は、例えば、ポスト噴射等を行って排ガス温度を上昇させ、排ガス浄化フィルタ2の温度(以下、GPF温度Tfという)をPM燃焼可能な温度まで強制的に上昇させる。GPF再生処理が開始されると、次いで、ステップS109へ進んで、GPF再生処理から所定時間t1が経過したか否かを判定する。ステップS109が否定判定されたときには、ステップS108へ戻り、GPF再生処理を継続する。
【0055】
ステップS109が肯定判定されると、ステップS110へ進んで、GPF再生処理を終了し、本処理を、一旦終了する。
【0056】
このとき、多孔質隔壁22の内部に堆積するPMの燃焼が可能な所定の温度となるように、GPF温度Tfが維持される。PMの燃焼が可能な温度以上であるときに、燃料カット等により空燃比がリーン側に制御されることによってもPM燃焼可能である。所定時間t1は、例えば、GPF再生処理後に、排ガス浄化フィルタ2の圧力損失値ΔP(すなわち、PM堆積量ΣPM)が所定値以下となるように、予め試験等を行って、適宜設定することができる。
【0057】
なお、ステップS109は、GPF再生処理を終了するタイミングを判定するためのものであり、経過時間を計測する以外の方法、例えば、圧力損失値ΔP等に基づいて判定してもよい。また、その際に、例えば、排ガス温度が比較的高い条件下では、燃料カット等により排ガスに含まれる空気量を増加させて、PM燃焼を促進させる制御を行ってもよい。
【0058】
図8に示すように、このような始動時制御を行うことにより、冷間始動時におけるPM堆積量ΣPMの推定精度を向上させることができる。図中に補正なしとして示すように、コールドPM堆積状態では、上述したかさ密度の低下によって、相対的に圧力損失値ΔPが低くなる圧損特性を示すために、通常時のマップに基づくPM堆積量ΣPMの推定量は、実際のPM量(すなわち、補正ありの場合に相当)よりも減少する。そのために、例えば、図中に示す時刻tAにおいて、実際には、PM堆積量限界値SMLに達していても、再生可否の判定が否定され、PM堆積が進むことになる。
【0059】
その場合に、例えば、図中に示す時刻tBにおいて、PM堆積量限界値SMLを超えた状態でパッシブ再生が開始されると、GPF温度Tfが上昇しやすくなり、過昇温となるおそれがある。これに対して、PM堆積状態に応じた始動時補正がなされることによって、適正なタイミングで、アクティブ再生を実行することができるので、温度制御が良好になされる。
【0060】
再生制御部3において、上述したステップS102が否定判定され、コールドPM堆積状態にないと判断されるとき、例えば、冷間始動後の暖機の進行により、始動時補正が不要となった場合や、運転停止から短時間で再始動し暖機状態にある場合には、暖機後制御が実施される。暖機後制御は、例えば、上述したステップS104~ステップS105の補正量の算出と加算処理が省略される以外は、同様の手順で行うことができ、補正前の圧力損失値ΔP0に基づいて、PM堆積量ΣPMを推定し、再生可否の判定を行うことができる。
【0061】
また、再生可否判定部50は、暖機後制御におけるPM堆積量ΣPMの推定に先立ち、PM堆積特性補正部52の始動後補正部54による処理を行うこともできる。その場合には、始動後補正部54は、アクティブ再生の実施により変化するPM堆積特性線を補正する。この補正は、PM堆積状態推定部51において推定されるPM堆積状態の変化に基づいてなされ、再生可否判定部50は、補正したPM堆積特性線に基づいて、GPF再生処理の可否を判定する。また、PM堆積状態推定部51における推定は、パッシブ再生時を除いたタイミングでなされることが望ましい。
【0062】
その場合の一例について、図9のフローチャートにより、図10図11に示されるPM堆積特性線を参照しながら説明する。図9のステップS201は、運転情報取得部30としての処理であり、ステップS203~S212は、圧損情報取得部40、再生可否判定部50としての処理であり、ステップS202、ステップS213~S215は、PM燃焼制御部60としての処理である。
【0063】
図10において、PM堆積特性線は、初期状態(1)から、深層堆積状態に対応する増加特性線を経て、表層堆積状態に対応する増加特性線を辿りながら、PM堆積量ΣPMが徐々に増加する増加特性を示す。このとき、表層堆積状態における特性線の傾きkは、深層堆積状態における特性線の傾きよりも小さくなる。表層堆積状態におけるPM堆積量ΣPM(ΣPM≦SML)が、所定の再生判定閾値PMrefに対応する堆積状態(2)に達すると、アクティブ再生がなされ、その後は、増加特性線が低圧損側へシフトする特性を示す。このとき、PM燃焼制御部60において、表層PM堆積状態を維持する部分再生となるように、GPF再生処理が制御されることにより、再生後のPM堆積量ΣPMは、所定の表層PM堆積状態(3)となる。すなわち、初期状態(1)には戻らず、初期の増加特性線と同じ傾きkの堆積特性線に沿って、所定の再生判定閾値PMrefに対応する堆積状態(4)へ向かう。
【0064】
図11に示すように、このようなPM堆積状態の変化により、PM堆積量限界値SMLにおいて、深層堆積PMと表層堆積PMとの質量比率である堆積比率R(すなわち、R=深層堆積PM/表層堆積PM)が変化する。具体的には、PM燃焼制御部60によるGPF再生処理が進むほど、深層堆積PMが減少し、堆積比率Rが小さくなると共に、PM堆積特性線が低圧損側へシフトする。PM燃焼制御部60は、再生前の堆積比率Rに基づいて、再生後に所定の堆積比率Rとなるように、再生条件等を設定し、燃焼状態を制御することができる。
【0065】
なお、このとき、シフト後のPM堆積特性線を内挿した線(図中に点線で示す)が、シフト前のPM堆積特性線と交わる点に基づいて、再生後の深層堆積状態及び表層堆積状態にあるPM堆積量ΣPMと、これらに対応する圧損値ΔPa及び圧損値ΔPbを知ることができる。したがって、例えば、再生処理後の圧力損失値ΔPが深層堆積状態に対応する圧損値ΔPaより大きければ、表層堆積PMが残存する状態であることが確認できる。ここで、再生処理後の圧損値ΔPaは、再生時に燃焼しないアッシュ成分等を含むPMによるものであり、深層堆積状態のPMがほぼ燃焼して、シフト後のPM堆積特性線に移行した後、シフト後のPM堆積特性線を辿って、所定のPM堆積量ΣPMまで減少することになる。
【0066】
再生制御部3は、ステップS201において、上記ステップS101と同様に、エンジンEの温度情報、空燃比情報その他、各種センサからの運転情報を読み込む。続くステップS202では、これら運転情報から推定されるGPF温度Tfが、PM燃焼開始温度Tcより低い温度か否か(すなわち、Tf<Tc?)を判定する。GPF温度Tfは、例えば、排ガス温度センサ11にて検出される排ガス温度とすることができる。PM燃焼開始温度Tcは、例えば、500℃以上の任意の温度とすることができる。
【0067】
ステップS202が肯定判定されたときは、ステップS203へ進み、否定判定されたときには、本処理をいったん終了する。ステップS202は、パッシブ再生検出部62としての処理であり、以降のPM堆積状態推定部51による推定を、排ガス浄化フィルタ2に堆積されたPMが燃焼していない条件で、精度よく行うためのものである。
【0068】
ステップS203においては、上記ステップS103と同様に、圧損情報を取得する。ステップS203では、差圧センサ4の差圧信号から圧力損失値ΔPを取得し、さらに、ステップS204へ進んで、これまでのGPF再生処理の有無から、PM堆積特性線の補正の要否を判定する。ステップS204では、再生フラグの値を読み込み、再生フラグが0にセットされているか否かを判定する。再生フラグは、初期状態では0にセットされており、GPF再生処理が実施されると、後述するステップS215において、1にセットされる。
【0069】
ステップS204が肯定判定されたときは、ステップS205以降へ進んで、現在のPM堆積特性線に基づいてPM堆積量ΣPMの推定を行う。ステップS204が否定判定されたときは、ステップS209以降へ進み、圧損情報等の履歴から、PM堆積量ΣPMの推定の基準として用いられるPM堆積特性線を補正してから、PM堆積量ΣPMを推定する。
【0070】
ステップS204において、再生フラグの値が0であるときは、ステップS205において、上記ステップS106と同様に、予め記憶しているPM堆積特性線に基づいて、ステップS203で取得した圧力損失値ΔPに対応するPM堆積量ΣPMを算出する。次いで、ステップS206において、圧力損失値ΔP及びPM堆積量ΣPMの今回値と、前回値とから、PM堆積特性線の傾きkを算出する。さらに、ステップS207において、予め記憶しているPM堆積特性線の傾きkを補正する。
【0071】
ステップS206、S207は、PM堆積状態推定部51、始動後補正部54としての処理である。このようにして、継続的に取得される圧力損失値ΔP及びPM堆積量ΣPMと、これらに基づいて算出される傾きkとを記憶することにより、初期状態からのPM堆積特性を推定することができる。また、例えば、表層PM堆積状態における傾きkを、予め記憶しているPM堆積特性線の傾きkと比較して、それらのずれを補正することができる。これにより、より実際に近い堆積特性に基づく推定が可能になる。
【0072】
その後、ステップS208において、上記ステップS107と同様にして、算出されたPM堆積量ΣPMを再生判定閾値PMrefと比較し(すなわち、ΣPM≧PMref?)、再生可否の判定を行う。ステップS208が肯定判定されたときは、ステップS212へ進み、否定判定されたときは、ステップS201へ戻って、以降のステップを繰り返す。
【0073】
ステップS209では、記憶されているPM堆積特性線の傾きkを読み込み、ステップS210に進んで、現在のPM堆積特性を推定する。GPF再生処理の前後において、特性線がシフトしても傾きkは変化せず、また再生直後は、圧損情報等に基づく傾きkの算出に適していないので、上記ステップS206において算出され、予め記憶した傾きkを用いることができる。また、ステップS203で取得される圧力損失値ΔPとその前回値から、図10における圧損変化量が知られ、前回のGPF再生処理におけるPM燃焼量とから、GPF再生処理後の表層PM堆積状態(3)の位置が特定される。
【0074】
したがって、ステップS210にて、これら情報に基づいて、PM堆積特性線の補正を行うことができる。補正後のPM堆積特性線において、再生判定閾値PMrefに対応する圧力損失値ΔPは、補正前の圧損値Prに対して、補正後の圧損値Prが特性線のシフト分低下した、傾きkの直線状となる。その後、ステップS211にて、再生フラグを0にセットして、本処理をいったん終了する。GPF再生処理の直後は、所定のPM燃焼量に相当する圧損変化量分、排ガス浄化フィルタ2の圧力損失値ΔPが低減しているので、再生可否の判定は行わない。
【0075】
ステップS212は、アクティブ再生制御部61としての処理であり、排ガス浄化フィルタ2の部分再生処理を行う。また、タイマ機能を用いて、GPF再生処理の開始後の経過時間を計測する。GPF再生処理には、上記ステップS108と同様の昇温制御手段が採用され、上記図10図11に示される関係に基づいて、再生時の排ガス浄化フィルタ2の温度や処理時間等の条件を調整することによって、再生後に所定の圧力損失値ΔPとなるように、PM燃焼量を制御することができる。
【0076】
図12に示されるように、PM堆積状態は、深層PM堆積状態から表層PM堆積状態へ移行した後、表層に形成されるケーキ層が徐々に厚くなることにより、圧力損失値ΔPが緩やかに上昇する。この状態から、GPF再生処理が行われると、まず、燃焼しやすい多孔質隔壁22内の深層に存在するPMが燃焼し、ケーキ層が維持された状態で、圧力損失値ΔPが大きく低下する。このような部分再生された状態から、再びPMが堆積する場合には、多孔質隔壁22の表層への堆積となり、低圧損側へシフトしたPM堆積特性線に沿ったものとなる。この傾向は、図13に示される試験結果によって確認されている。
【0077】
したがって、ステップS212の昇温操作を行った後、ステップS213へ進んで、所定時間t1と比較することで、部分再生処理の終了を判定することができる。ステップS213が肯定判定されたときには、ステップS214へ進んで、再生フラグを1にセットし、本処理を一旦終了する。ステップS213が否定判定されたときには、ステップS212へ戻り、所定時間t1が経過するまで、GPF再生処理を継続する。
【0078】
なお、図12中に点線で示されるように、GPF再生処理時には所定の減少特性線を辿って、PM堆積量ΣPMが変化すると推定されるので、この減少特性を予め把握しておくことで、部分再生処理の終了後のPM堆積状態や堆積比率R等を推定することもできる。
【0079】
このように、再生制御部3によって、排ガス浄化フィルタ2の圧損情報とエンジンEの運転情報に基づいて、PM堆積状態を推定し。再生可否を判定することにより、部分再生処理及び部分再生後のPM堆積特性を良好に制御することができる。
【0080】
(実施形態2)
次に、排ガス浄化装置に係る実施形態2について、図14図17を参照して説明する。本形態において、排ガス浄化装置1の基本構成と基本制御は、上記実施形態1と同様であり、説明を省略する。本形態では、再生制御部3において実施されるPM堆積量ΣPMの推定を、パッシブ再生を考慮して行うPM燃焼時制御の一例を示している。
なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0081】
図14のフローチャートにおいて、ステップS301は、運転情報取得部30としての処理であり、ステップS302は、圧損情報取得部40としての処理であり、ステップS303~S310は、再生可否判定部50としての処理であり、ステップS311~S312は、PM燃焼制御部60としての処理である。
【0082】
PM燃焼時制御が開始されると、ステップS301において、エンジンEの運転情報が取得され、各種センサからの検出情報が読み込まれる。続くステップS302では、これら運転情報から、エンジンEからのPM排出量ΔPM1が算出される。上記実施形態1では、差圧センサ4に基づく圧力損失値ΔPからPM堆積量ΣPMを推定したが、圧損情報として、エンジンEの運転履歴から、排ガス浄化フィルタ2に流入して堆積するPM排出量ΔPM1を推定することもできる。具体的には、エンジンEの回転数NEと燃料噴射量Qに基づいて、予め試験等を行って得られたマップ等を参照して、PM排出量ΔPM1とすることができる。
【0083】
さらに、ステップS303において、排ガス温度センサ11の検出情報に基づいて、GPF温度Tfが計測され、ステップS304において、GPF温度TfとPM燃焼開始温度Tcとが比較される(すなわち、Tf<Tc?)。ステップS304は、パッシブ再生検出部62としての処理であり、ステップS303が肯定判定されたときは、ステップS305へ進み、否定判定されたときは、ステップS309へ進む。
【0084】
ステップS304が否定判定されたときは、ステップS309において、現在の残存PM量ΣPM0を読み込み、ステップS310へ進む。残存PM量ΣPM0は、例えば、記憶されているPM堆積量ΣPMの前回値とすることができる。ステップS310では、残存PM量ΣPM0に、ステップS302で得られたPM排出量ΔPM1を加算して、PM堆積量ΣPMの今回値を算出する(すなわち、ΣPM=ΣPM0+ΔPM1)。その後、ステップS301へ戻り、以降のステップを繰り返す。
【0085】
ステップS304が肯定判定されるときは、パッシブ再生による燃焼量分を補正する。ステップS305~S307は、PM堆積状態推定部51、始動後補正部54としての処理であり、まず、ステップS305において、現在の残存PM量ΣPM0を読み込む。次いで、ステップS306において、残存PM量ΣPM0とPM燃焼速度との関係に基づいて、PM燃焼量PMcを算出する。
【0086】
図15に示されるように、排ガス浄化フィルタ2において、残存PM量ΣPM0が多いほど、PM燃焼速度が上昇する。その際、PM燃焼速度は、2段階で変化しており、ある一定の残存PM量ΣPM0(例えば、図中に示すPM2)を変化点として、それ以上では、PM燃焼速度の増加率が大きく、それ以下では、PM燃焼速度の増加率は小さくなることが判明している。
【0087】
これは、図16に示されるように、PM堆積状態が、深層堆積PMと表層体積PMの組み合わせであり、残存PM量ΣPM0が多い状態では、燃焼しやすい深層堆積PMが多く存在することによるものと推測される。そのため、図17に示されるように、燃焼開始時のPM堆積量ΣPMが多い方が、PM燃焼速度が大きくなっており、上図に示す領域Aにおいて、下図に示すPM堆積量ΣPMの減少と共に、PM燃焼速度が急減する一方、領域Bに移行すると、PM燃焼速度の低下は緩やかとなる。
【0088】
このようなPM燃焼速度の変化は、燃焼開始時のPM堆積量ΣPM(例えば、図17に点線で示す特性線では、0.36g/L)に依存し、より多いPM堆積量ΣPMで燃焼開始された場合(例えば、図17に実線で示す特性線)、燃焼途中で同じPM堆積量ΣPMとなったときのPM燃焼速度は異なる。また、PM燃焼速度には、GPF温度Tfも影響し、高温であるほど、PM燃焼が促進されやすくなる。
【0089】
そこで、ステップS306においては、これらの関係に基づいて、残存PM量ΣPM0とGPF温度Tfの関数として表される燃焼速度と、燃焼時間とから、下記式1に基づいて、PM燃焼量ΔPMcを算出することができる。
式1:ΔPMc = f(Tf , ΣPM0)×燃焼時間
式1は、PM燃焼量ΔPMcの算出の一例であり、燃焼速度を、残存PM量ΣPM0に応じて段階的に変更するようにしてもよい。
【0090】
次いで、ステップS307において、得られたPM燃焼量ΔPMcを、PM堆積量ΣPMの前回値ΣPM0にPM排出量ΔPM1を加算した値から減算する。すなわち、下記式2からPM堆積量ΣPMの今回値を算出する。
式2:ΣPM=ΣPM0+ΔPM1-ΔPMc
【0091】
その後、ステップS308において、得られたPM堆積量ΣPMを再生判定閾値PMrefと比較し(すなわち、ΣPM≧PMref?)、再生可否の判定を行うことができる。ステップS308が肯定判定されたら、ステップS311へ進んで、排ガス浄化フィルタ2の部分再生処理を行い、否定判定されたら、ステップS301へ戻る。
【0092】
ステップS312では、ステップS311の部分再生処理後に、差圧センサ4の差圧信号から圧力損失値ΔPを読み込み、所定の終了判定閾値Pref以下となったか否か(すなわち、ΔP≦Pref?)を判定する。ステップS311、S312は、アクティブ再生制御部61としての処理であり、上記ステップS108、S109と同様に、所定の経過時間t1に基づいて終了を判定してもよいが、このように、圧損情報に基づいて終了判定を行ってもよい。
【0093】
ステップS312が肯定判定されたときは、GPF再生処理の終了と判断して、本処理を一旦終了する。ステップS312が否定判定されたときは、ステップS311に戻って、以降のステップを繰り返す。
【0094】
このように、再生制御部3の再生可否の判定に際して、PM堆積状態推定部51において、残存PM量ΣPM0に対応するPM堆積状態を適切に推定し、PM堆積特性補正部52において、パッシブ再生によるPM燃焼量ΔPMcを精度よく算出して、PM堆積量ΣPMを補正することができる。これにより、実際のPM堆積量ΣPMを精度よく推定し、再生可否を判定することにより、GPF再生処理を良好に制御することができる。
【0095】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。例えば、上記図7図9図14に示したフローチャートは一例であって、PM堆積特性推定部により推定される堆積状態に基づいて、PM堆積特性補正部により、圧力損失情報やPM堆積特性等を補正するようになっていればよい。また、これらフローチャートに示されるPM堆積特性推定部及びPM堆積特性補正部の手順を組み合わせたり、手順の一部を変更したりしてもよい。
【0096】
また、例えば、排ガス浄化装置1の各部構成は、図1に示したものに限らず、適宜変更することができる。内燃機関は、ガソリンエンジンとして説明したが、ディーゼルエンジンであってもよく、排ガス浄化フィルタ2の構造も両栓構造でなく片栓構造であってもよい。
【符号の説明】
【0097】
E ガソリンエンジン(内燃機関)
1 排ガス浄化装置
2 排ガス浄化フィルタ
3 再生制御部
30 運転情報取得部
40 圧損情報取得部
50 再生可否判定部
51 PM堆積状態推定部
52 PM堆積特性補正部
53 始動時補正部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17