(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042158
(43)【公開日】2022-03-14
(54)【発明の名称】防音室
(51)【国際特許分類】
E04B 1/82 20060101AFI20220307BHJP
E04B 2/74 20060101ALI20220307BHJP
E04H 1/12 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
E04B1/82 A
E04B1/82 J
E04B1/82 U
E04B2/74 501G
E04H1/12 302C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020147426
(22)【出願日】2020-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】511123740
【氏名又は名称】株式会社ブルアンドベア
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】橋本 克美
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DF02
2E001DF04
2E001FA03
2E001FA14
2E001FA16
2E001FA33
2E001FA41
2E001FA52
2E001GA12
2E001GA29
2E001GA65
2E001HA32
2E001HA33
2E001HB03
2E001HB04
2E001HC01
2E001HC09
2E001HD11
2E001HD14
2E001MA02
2E001MA04
(57)【要約】
【課題】個人で施工が可能であって、床面に対する設置箇所の自由度が高い防音室を提供する。
【解決手段】扉付きパネル3と、扉付きパネル3とともに室内空間Sを形成する複数の遮音パネル2と、隣り合う扉付きパネル3と遮音パネル2との間および、隣り合う遮音パネル2の間を連結具7により連結する柱状フレーム4と、扉付きパネル3と複数の遮音パネル2の上端部に載せられ、室内空間Sを塞ぐ天井パネル5と、室内空間Sの下面に載せる床面パネル6を備え、遮音パネル2が室内空間Sで発生した音を吸収する板状の吸音体10を有する防音室1であって、遮音パネル2が矩形をなす第一外枠8と、第一外枠8の厚さ方向外側の内周部に取り付けられる遮音板9と、第一外枠8の内部に配置される吸音体10とを有し、遮音パネル2が第一外枠8および遮音板9により形成される収納凹部14を有し、吸音体10が収納凹部14に対して着脱可能となっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の遮音パネルと、複数の遮音パネルとともに室内空間を形成する扉付きパネルと、隣り合う前記扉付きパネルと前記遮音パネルとの間および、隣り合う前記遮音パネルの間を連結具により連結する柱状フレームと、前記扉付きパネルと複数の前記遮音パネルの上端部に載せられ、前記室内空間を塞ぐ天井パネルとを備え、
前記扉付きパネルは開閉可能に取り付けられる扉を有し、前記遮音パネルが前記室内空間で発生した音を吸収する板状の吸音体を有する防音室であって、
前記遮音パネルが矩形をなす第一外枠と、前記第一外枠の内部に配置される吸音体とを有し、前記扉付きパネルが前記扉を開閉可能に取り付ける矩形の第二外枠を有し、前記遮音パネルの第一外枠、前記扉付きパネルの第二外枠および前記柱状フレームが中空の金属枠から形成されている防音室。
【請求項2】
前記遮音パネルが前記第一外枠の厚さ方向外側に取り付けられる遮音板と、前記第一外枠と前記遮音板とにより形成される収納凹部とを有し、前記吸音体が多孔質構造であり可撓性を有する吸音材と、前記吸音材を包む柔軟性を有する袋体とを有し、前記吸音体が前記遮音パネルの収納凹部に対して着脱可能となっている請求項1に記載の防音室。
【請求項3】
前記遮音パネルが前記第一外枠の厚さ方向外側に取り付けられる遮音板を有し、前記吸音体が前記第一外枠の厚さ方向内側に取り付けられる有孔ボードと、前記有孔ボードと前記遮音板との間に配置される吸音材とを有し、前記有孔ボードがその全面に設けられている多数の貫通孔を有するものであり、前記吸音材が多孔質構造であって可撓性を有しているものである請求項1に記載の防音室。
【請求項4】
前記吸音体が、合成樹脂の発泡体から形成される基板部と、前記基板部の少なくとも前記室内空間側に配置される合成樹脂製の吸音板部とを有し、前記吸音板部が前記室内空間側の表面に上下方向および左右方向に沿って形成される多数の凹部を有している請求項1に記載の防音室。
【請求項5】
前記柱状フレームが、その長さ方向に対して直交方向に突出する第一突出枠部および第二突出枠部を有し、前記第一突出枠部および第二突出枠部が突出方向に開放し、前記突出方向と反対方向に凹む柱側溝部を有し、前記第一外枠および前記第二外枠が左右一対の縦枠を有し、左右一対の前記縦枠が左右方向外向きに開放し、左右方向内向きに凹むパネル側溝部を有し、前記第一突出枠部が、前記第一外枠または前記第二外枠の左右方向一方の縦枠に突き当たる状態となり、前記第二突出枠部が、前記第一外枠または前記第二外枠の左右方向他方の縦枠に突き当たる状態となっており、前記第一突出枠部と前記左右方向一方の縦枠との突き当て部、および前記第二突出枠部と前記左右方向他方の縦枠との突き当て部に、前記柱側溝部と前記パネル側溝部と間に跨って前記連結具が設けられている請求項2から4のいずれかに記載の防音室。
【請求項6】
前記連結具は、回動可能に取り付けられたフック本体を有するフック部と、前記フック本体が回動によって係合する係合軸部を有する係合部とから構成され、
前記第一突出枠部の柱側溝部に前記フック部が設けられており、前記第二突出枠部の柱側溝部に前記係合部が設けられており、
前記第一外枠または前記第二外枠の左右方向一方の縦枠のパネル側溝部に前記係合部が設けられており、前記第一外枠または前記第二外枠の左右方向他方の縦枠のパネル側溝部に前記フック部が設けられており、
前記フック部のフック本体が前記室内空間から回動操作可能となっている請求項5に記載の防音室。
【請求項7】
前記遮音パネルの第一外枠のうち左側部分および右側部分が、前記室内空間へ向かって突出する係合枠部をそれぞれ有し、それぞれの前記係合枠部に前記吸音体が係合する状態となっている請求項2に記載の防音室。
【請求項8】
前記遮音パネルが、前記吸音体に対して前記室内空間側に着脱可能に取り付けられる可動吸音体をさらに備え、前記可動吸音体が多孔質構造であり可撓性を有する吸音材と、前記吸音材を包む柔軟性を有する袋体とを有し、
前記遮音パネルの第一外枠のうち左側部分および右側部分が、前記室内空間へ向かって突出する係合枠部をそれぞれ有し、それぞれの前記係合枠部が上下方向に沿って間隔をおいて設けられる複数の固定孔を有し、前記固定孔に前記可動吸音体が係合する状態となっている請求項4に記載の防音室。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物内や住宅内に設置され、楽器演奏の練習などに利用される組み立て式の防音室に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物内や住宅内に設置され、楽器演奏の練習などに利用される組み立て式の防音室が知られている。この防音室としては、例えば、床面に対して立ち上がり、相互に接合される複数の壁パネル(遮音パネル)と、これらの遮音パネルの上端に架け渡される天井パネルと、遮音パネルで仕切られた内部空間内の床面に敷かれる床パネルとによって形成されている(特許文献1参照)。
【0003】
この防音室の遮音パネルは、遮音性能の向上を図るために、矩形のフレーム形状に組み合わされた四本の芯材に対して表裏から挟み込むように一対の遮音ボードを貼り付け、四本の芯材の内側領域内に吸音材を充填したものである。遮音パネルの底面には凹溝が設けられ、その凹溝は、防音室の施工の際、床面の所定位置に方形状に敷設したやとい桟に嵌め合わされる。
【0004】
また、隣り合う遮音パネルは、締結手段によって相互に連結されている。締結手段は、遮音パネルの左右方向一端部に回動可能に設けられるフック部材と、遮音パネルの左右方向他端部に設けられ、前記フック部材が係合または離脱する係止部材とからなる。
【0005】
この防音室の施工は、まず、床面に方形状に敷設されたやとい桟に遮音パネルの底面の凹溝を嵌め合わせて、複数の遮音パネルを床面から立ち上がる状態とする。そして、隣り合う遮音パネルの左右方向の端部を突き合わせた状態で、隣り合う遮音パネル相互間に防振材を装着させる。その後、フック部材を所定の工具により回転操作して、フック部材を係止部材に係合させ、隣り合う遮音パネル同士を連結する。
【0006】
続いて、連結された複数の遮音パネルにより形成される室内空間を閉塞するように、上部に天井パネルを貼り付け、室内空間内の床面に床パネルを敷設する。このようにして、特許文献1に記載の防音室は、隣り合う遮音パネルの突き合わせ部分に防振材を装着し、壁一面の振動を防止している。このため、防音室内で発生する音が防音室外に漏れることを有効に抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の防音室の遮音パネルは、上述のように、遮音性能の向上を図るために、四本の芯材の内側領域内に吸音材を充填したものである。また、遮音ボードとして、その面方向に直交する方向への撓みを生じないような十分な板厚および強度を有する材料を使用している。その結果、一対の遮音ボードの重量が大きいものとなる。
【0009】
予め吸音材が充填されており、かつ一対の遮音ボードの重量が大きいと、遮音パネルの重量が大きくなる。この場合、防音室の施工において、遮音パネルを床面から立ち上がる状態で保持しつつ、他の遮音パネルと連結させることは容易ではなく、危険を伴うおそれがある。従って、防音室の施工は業者が必要となり、個人で施工することが難しいという問題があった。
【0010】
また、防音室の施工において、床面への設置箇所に、遮音パネルの位置決めのためのやとい桟を敷設している。このため、床面に対して、やとい桟を敷設可能な位置にのみ防音室を設置することとなり、床面に対する防音室の設置箇所が制限される。
【0011】
そこで、この発明の課題は、個人で施工が可能であって、床面に対する設置箇所の自由度が高い防音室を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、この発明に係る防音室においては、
複数の遮音パネルと、複数の遮音パネルとともに室内空間を形成する扉付きパネルと、隣り合う前記扉付きパネルと前記遮音パネルとの間および、隣り合う前記遮音パネルの間を連結具により連結する柱状フレームと、前記扉付きパネルと複数の前記遮音パネルの上端部に載せられ、前記室内空間を塞ぐ天井パネルとを備え、前記扉付きパネルは開閉可能に取り付けられる扉を有し、前記遮音パネルが前記室内空間で発生した音を吸収する板状の吸音体を有する防音室であって、前記遮音パネルが矩形をなす第一外枠と、前記第一外枠の内部に配置される吸音体とを有し、前記扉付きパネルが前記扉を開閉可能に取り付ける矩形の第二外枠を有し、前記遮音パネルの第一外枠、前記扉付きパネルの第二外枠および前記柱状フレームが中空の金属枠から形成されている構成を採用することができる。
【0013】
この構成では、遮音パネル、扉付きパネルおよび柱状フレームの軽量化を図ることが可能となり、遮音パネルと扉付きパネルとの間および隣り合う遮音パネルの相互間を柱状フレームにより容易に連結することができ、個人でも施工が可能となる。また、複数の遮音パネルは、床面に対して固定する必要がない。
【0014】
前記遮音パネルが前記第一外枠の厚さ方向外側に取り付けられる遮音板と、前記第一外枠と前記遮音板とにより形成される収納凹部とを有し、前記吸音体が多孔質構造であり可撓性を有する吸音材と、前記吸音材を包む柔軟性を有する袋体とを有し、前記吸音体が前記遮音パネルの収納凹部に対して着脱可能となっている構成を採用することができる。
【0015】
この構成では、遮音パネルは、収納凹部から吸音体を取り外して、吸音体の重量分だけさらに軽量化を図ることが可能となる。
【0016】
前記遮音パネルの構成としては、前記遮音パネルが前記第一外枠の厚さ方向外側に取り付けられる遮音板を有し、前記吸音体が前記第一外枠の厚さ方向内側に取り付けられる有孔ボードと、前記有孔ボードと前記遮音板との間に配置される吸音材とを有し、前記有孔ボードがその全面に設けられている多数の貫通孔を有するものであり、前記吸音材が多孔質構造であって可撓性を有しているものであるものを採用することができる。
【0017】
この構成では、防音室内で発生する音は、有孔ボードの表面に当たり、多数の貫通孔に入り、貫通孔の内部に通過した後に多孔質構造である吸音材によって減衰する。このようにして、防音室内で発生する音を吸収することができる。
【0018】
吸音体の構成としては、前記吸音体が、合成樹脂の発泡体から形成される基板部と、前記基板部の少なくとも前記室内空間側に配置される合成樹脂製の吸音板部とを有し、前記吸音板部が前記室内空間側の表面に上下方向および左右方向に沿って形成される多数の凹部を有しているものを採用することができる。
【0019】
この構成の吸音体は、基板部が合成樹脂の発泡体から形成されているので、軽量化を図ることができる。また、防音室内で発生する音を、吸音板部の多数の凹部内に入れて減衰させることで、吸収することができる。
【0020】
前記柱状フレームが、その長さ方向に対して直交方向に突出する第一突出枠部および第二突出枠部を有し、前記第一突出枠部および第二突出枠部が突出方向に開放し、前記突出方向と反対方向に凹む柱側溝部を有し、前記第一外枠および前記第二外枠が左右一対の縦枠を有し、左右一対の前記縦枠が左右方向外向きに開放し、左右方向内向きに凹むパネル側溝部を有し、前記第一突出枠部が、前記第一外枠または前記第二外枠の左右方向一方の縦枠に突き当たる状態となり、前記第二突出枠部が、前記第一外枠または前記第二外枠の左右方向他方の縦枠に突き当たる状態となっており、前記第一突出枠部と前記左右方向一方の縦枠との突き当て部、および前記第二突出枠部と前記左右方向他方の縦枠との突き当て部に、前記柱側溝部と前記パネル側溝部と間に跨って前記連結具が設けられている構成を採用することができる。
【0021】
この構成では、柱状フレームの第一突出枠部を、遮音パネルの第一外枠または扉付きパネルの第二外枠の左右方向一方の縦枠に突き当てると、連結具により柱状フレームと、遮音パネルまたは扉付きパネルとを容易に連結することができる。
【0022】
前記連結具は、回動可能に取り付けられたフック本体を有するフック部と、前記フック本体が回動によって係合する係合軸部を有する係合部とから構成され、前記第一突出枠部の柱側溝部に前記フック部が設けられており、前記第二突出枠部の柱側溝部に前記係合部が設けられており、前記第一外枠または前記第二外枠の左右方向一方の縦枠のパネル側溝部に前記係合部が設けられており、前記第一外枠または前記第二外枠の左右方向他方の縦枠のパネル側溝部に前記フック部が設けられており、前記フック部のフック本体が前記室内空間から回動操作可能となっている構成を採用することができる。
【0023】
この構成において、室内空間側からフック部のフック本体を回動操作することで、フック本体が係合部の係合軸部に係合する。この連結具によって、隣り合う遮音パネルおよび隣り合う遮音パネルと扉付きパネルとを柱状フレームを介して容易に連結することができる。
【0024】
また、上述の前記吸音体が前記遮音パネルの収納凹部に対して着脱可能となっている構成において、前記遮音パネルの第一外枠のうち左側部分および右側部分が、前記室内空間へ向かって突出する係合枠部をそれぞれ有し、それぞれの前記係合枠部に前記吸音体が係合する状態となっているものを採用することができる。
【0025】
この構成により、吸音体が遮音パネルの収納凹部に確実に収納され、係合枠部によって、吸音体の脱落を防止することができる。
【0026】
さらに、上述の前記吸音体が、合成樹脂の発泡体から形成される基板部と、前記基板部の少なくとも前記室内空間側に配置される合成樹脂製の吸音板部とを有する構成において、前記遮音パネルが、前記吸音体に対して前記室内空間側に着脱可能に取り付けられる可動吸音体をさらに備え、前記可動吸音体が多孔質構造であり可撓性を有する吸音材と、前記吸音材を包む柔軟性を有する袋体とを有し、前記遮音パネルの第一外枠のうち左側部分および右側部分が、前記室内空間へ向かって突出する係合枠部をそれぞれ有し、それぞれの前記係合枠部が上下方向に沿って間隔をおいて設けられる複数の固定孔を有し、前記固定孔に前記可動吸音体が係合する状態となっているものを採用することができる。
【0027】
この構成では、遮音パネルに対して、上下方向の任意の位置に、可動吸音体を取り付けて、その位置での吸音効果をより高めることができる。
【発明の効果】
【0028】
この発明に係る防音室は、遮音パネル、扉付きパネルおよび柱状フレームの軽量化を図ることが可能となり、個人でも施工が可能となる。また、複数の遮音パネルは、床面に対して固定する必要がなく、床面に対する防音室の設置場所の自由度が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】この発明の第一実施形態に係る防音室を示す斜視図
【
図10】同上の防音室の柱状フレームと遮音パネルとの連結具を示す斜視図
【
図14】この発明の第二実施形態に係る防音室を示す分解斜視図
【
図17】この発明の第三実施形態に係る防音室を示す分解斜視図
【
図18】(a)同上の吸音体の第二吸音板部を示す斜視図、(b)同上の吸音体の第二吸音板部を示す斜視図
【
図19】(a)同上の吸音体の第二吸音板部を示す一部拡大斜視図、(b)同上の吸音体の第一吸音板部を示す一部拡大斜視図
【
図22】同上の防音室の遮音パネルの可動吸音体の取り付け状態を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、この発明の第一実施形態を図面に基づいて説明する。この発明の第一実施形態に係る防音室1を
図1~
図13に示す。
図1~
図3に示すように、防音室1は、複数の遮音パネル2と、複数の遮音パネル2とともに室内空間Sを形成する扉付きパネル3と、複数の遮音パネル2同士または遮音パネル2と扉付きパネル3とを連結する柱状フレーム4と、複数の遮音パネル2と扉付きパネル3との上端部に載せる天井パネル5と、室内空間Sの下面に置かれる床パネル6とを備えている。また、防音室1は、遮音パネル2と柱状フレーム4との間および扉付きパネル3と柱状フレーム4との間に、これらの部材を連結する連結具7を備えている。
【0031】
ここで、「右」、「左」および「左右」とは、特に言及しない限り、遮音パネル2または扉付きパネル3を防音室1の外部から見た場合での「右」、「左」および「左右」のことをいう。「厚さ方向」とは、特に言及しない限り、遮音パネル2または扉付きパネル3の厚さ方向のことをいう。
【0032】
図4~
図6に示すように、遮音パネル2は、矩形の第一外枠8と、第一外枠8の厚さ方向外側に位置する矩形の遮音板9と、第一外枠8の厚さ方向内側に配置される板状の吸音体10とを有する。第一外枠8は、上下一対の横枠11と左右一対の縦枠12とを矩形に組み合わせたものである。第一外枠8の四隅に配された樹脂製のコーナーブロックを介して、上下一対の横枠11と左右一対の縦枠12とは一体化されている。
【0033】
横枠11および縦枠12は、押し出し成形品であって、中空の金属枠から構成されている。横枠11および縦枠12は、その長さ方向に対する直交方向での断面が、矩形かつ同じ形状となっている。横枠11および縦枠12の材質としては、アルミニウム合金やステンレスが適用でき、特に、比較的密度の小さいアルミニウム合金が好ましい。
【0034】
図5に示すように、横枠11は、厚さ方向外側に位置する断面矩形の筒部11aと、筒部11aに対して厚さ方向内側に形成されるパネル側溝部11bとを有する。筒部11aの上下方向外端面には、シール溝が左右方向の全長にわたって形成されている。そのシール溝内の全長にわたって弾性を有する長尺のシール部材31が装着されている。
【0035】
筒部11aの厚さ方向内側を向く壁面部分が、パネル側溝部11bの厚さ方向外側の壁面部分を形成している。パネル側溝部11bは、左右方向両端縁および上下方向外端縁が開放し、上下方向内向きに凹んで形成されている。パネル側溝部11bの底面部と、筒部11aの上下方向内側を向く壁面部分とは、同一平面上に配置されている。横枠11の上下方向内端面に、その内端面から上下方向内向きに延びる一対のフランジ部11cが形成される。一対のフランジ部11cは、横枠11の厚さ方向両縁部に位置しており、横枠11の全長にわたって形成されている。
【0036】
図6に示すように、縦枠12は、横枠11と同様に、厚さ方向外側に位置する断面矩形の筒部12aと、筒部12aに対して厚さ方向内側に形成されるパネル側溝部12bとを有している。筒部12aの左右方向外端面に形成されたシール溝に、弾性を有する長尺のシール部材31が装着されている。
【0037】
筒部12aの厚さ方向内側を向く壁面部分が、パネル側溝部12bの厚さ方向外側の壁面部分を形成している。パネル側溝部12bは、上下方向両端縁および左右方向外端縁が開放し、左右方向内向きに凹んで形成されている。パネル側溝部12bの底面部と、筒部12aの左右方向内側を向く壁面部分とは、同一平面上に配置されている。縦枠12の左右方向内端面に、その内端面から左右方向内向きに延びる一対のフランジ部12cが形成される。一対のフランジ部12cは、縦枠12の厚さ方向両縁部に位置しており、縦枠12の全長にわたって形成されている。
【0038】
また、左右一対の縦枠12の左右方向内側に係合枠部13がそれぞれ取り付けられている。係合枠部13は、縦枠12に固定される基部13aと、基部13aから延び出し、縦枠12よりも厚み方向内側に、かつ左右方向内側に位置する帯状の係合部13bとを有する。基部13aは、断面コの字状をなしており、縦枠12の上下方向の全長にわたって形成されている。基部13aは、縦枠12の一対のフランジ部12cの間に遮音板9を介して嵌め合わされている。
【0039】
係合部13bは、遮音板9に対向する状態で上下一対の横枠11間にわたって配置されている。係合部13bと遮音板9との間隔は、吸音体10の厚さ寸法と同じかわずかに小さい。
図4に示すように、係合部13bには上下方向に等間隔で固定孔13cが複数設けられている。固定孔13cには棚板32を支持する板状のブラケット33が着脱可能に取り付け可能となっている。それぞれの係合枠部13に取り付けられるブラケット33に棚板32が架け渡されている。
【0040】
図5に示すように、遮音パネル2は第一外枠8の厚さ方向外側に矩形の遮音板9が固定されている。遮音板9の左右方向両端縁が、上下一対の横枠11の厚さ方向外側のフランジ部11cに対して厚さ方向内側に位置している。遮音板9の上下方向両端縁が、左右一対の縦枠12の厚さ方向外側のフランジ部12cに対して厚さ方向内側に位置している。遮音パネル2は、第一外枠8と遮音板9とにより形成される収納凹部14を有する。
【0041】
遮音パネル2は、左右一対の縦枠12の間に架け渡される複数(
図5中において三本)の横桟15を有する。横桟15のうち、最も下位にある横桟15が左右一対の縦枠12の下端部に配置されており、残りの横桟15により収納凹部14は上下方向複数(
図5中において三つ)に分割されている。
【0042】
上下方向に複数に分割されたそれぞれの収納凹部14には、吸音体10が着脱可能に収納される。
図7に示すように、吸音体10は、矩形の板状に成形された吸音材10aと、吸音材10aの左右方向両側に配置される補強枠10bと、吸音材10aおよび補強枠10bを包む袋体10cとから形成されている。
【0043】
吸音材10aは、例えば、グラスウール、ロックウール、金属繊維などを板状に成型した多孔質構造であって、可撓性を有するもの適用することができる。加工のし易さ、体積当たりの重量の観点からグラスウールを板状に成型したものが好ましい。補強枠10bは、合成樹脂製である中空の押し出し成形品である。袋体10cは、吸音材10aおよび補強枠10bをすき間なく包む大きさを有する。
図4、6に示すように、吸音体10は、上下方向に分割されたそれぞれの収納凹部14に着脱可能に収納される。吸音体10のそれぞれの補強枠10bは、遮音板9と係合枠部13の係合部13bとの間に挟み込まれている状態となっている。
【0044】
図1、2に示すように、扉付きパネル3は、矩形をなす第二外枠16と、第二外枠16の内部を左右方向に二分割する仕切桟17と、第二外枠16内の右側部分を開閉する扉18と、第二外枠16内の左側部分に配置される窓部19とを有する。第二外枠16は、上下一対の横枠20および左右一対の縦枠21を矩形に組み合わせたものである。
【0045】
上下一対の横枠20は、押し出し成形品であって、中空の金属枠から形成されている。上下一対の横枠20は、遮音パネル2の第一外枠8を構成する横枠11と同じ構造となっている。第二外枠16の四隅に配された樹脂製のコーナーブロックを介して、上下一対の横枠20と左右一対の縦枠21とが一体化されている。横枠20および縦枠21の材質としては、横枠11および縦枠12と同様に、アルミニウム合金やステンレスが適用でき、特に、比較的密度の小さいアルミニウム合金が好ましい。
【0046】
図8、
図9に示すように、左右一対の縦枠21は、押し出し成形品であって、中空の金属枠から形成されている。左右一対の縦枠21は、遮音パネル2の第一外枠8を構成する縦枠12と同じ構造となっている。縦枠21は、厚さ方向外側に位置する断面矩形の筒部21aと、厚さ方向内側に形成されるパネル側溝部21bとを有する。縦枠21の左右方向内端面に、その内端面から左右方向内向きに延びる一対のフランジ部21cが形成されている。筒部21aの上下方向外端面に形成されたシール溝内にシール部材31が装着されている。仕切桟17は、押し出し成形品からなる中空の金属枠である。仕切桟17は、上下一対の横枠20の間に架け渡された状態で固定されている。
【0047】
左右一対の縦枠21のうち、右側に位置する縦枠21には、扉18がヒンジ22を介して開閉可能に取り付けられている。扉18は、矩形をなす扉板18aと、扉板18aの右側縁を除く外周縁に設けられるフランジ部18bとを有する。フランジ部18bは、扉板18aに対して、上下方向および左右方向の外向き、かつ厚さ方向の外向きに延び出している。フランジ部18bの厚さ方向内側部には、全周にわたってシール部材31が装着されている。
【0048】
フランジ部18bのシール部材31は、扉18を閉じたとき、上下一対の横枠20および仕切桟17の厚さ方向外面に線接触する状態となる。扉18の左側寄りの上下方向中央部分には、扉18の開閉操作用のハンドル23が取り付けられている。扉板18aは、透明または半透明の板部材からなる。扉板18aの素材としては、例えば、アクリル、ポリカーボネートなどを使用可能である。特に、曲げ強度が大きく、高い光透過性を有するポリカーボネートが好ましい。
【0049】
窓部19は、扉18の扉板18aと同じ素材の板部材から形成されている。
図9に示すように、窓部19は、上下一対の横枠20、仕切桟17および左側に位置する縦枠21で囲まれた領域内を塞ぐ状態で、これらの部材の厚み方向外側に固定されている。
【0050】
図10に示すように、柱状フレーム4は、押し出し成形品の中空の金属枠から形成されている。柱状フレーム4は、円弧状の湾曲面部24と、湾曲面部24の左右方向の両縁部沿って突出する第一突出枠部25と第二突出枠部26とを有する。湾曲面部24の断面形状が、90度の円弧となっている。第一突出枠部25は、柱状フレーム4に対して長さ方向に直交する方向に突出するものである。第一突出枠部25は、遮音パネル2の第一外枠8の左右一対の縦枠12から一対のフランジ部12cを除いたものと同じ断面構造を有している。すなわち、第一突出枠部25は、断面矩形をなし、厚さ方向外側に位置する断面矩形の筒部25aと、筒部25aに対して厚さ方向内側に形成される柱側溝部25bとを有している。筒部25aの突出方向の外端面に形成されたシール溝に、弾性を有する長尺のシール部材31が装着されている。
【0051】
第二突出枠部26は、柱状フレーム4に対して、長さ方向に直交する方向に突出するものである。第二突出枠部26は、遮音パネル2の第一外枠8の左右一対の縦枠12から一対のフランジ部12cを除いたものと同じ断面構造を有している。すなわち、第二突出枠部26は、断面矩形をなし、厚さ方向外側に位置する断面矩形の筒部26aと、筒部26aに対して厚さ方向内側に形成される柱側溝部26bとを有している。筒部26aの突出方向の外端面に形成されたシール溝に弾性を有する長尺のシール部材31が装着されている。
【0052】
第一突出枠部25と第二突出枠部26とは相互に直角に配置されており、柱側溝部25bおよび柱側溝部26bの底部分の厚さ方向内側縁が固定されている。
【0053】
図3に示すように、柱状フレーム4は、隣り合う遮音パネル2の間、または隣り合う遮音パネル2と扉付きパネル3との間にそれぞれ配置されている。それぞれの柱状フレーム4の第一突出枠部25は、遮音パネル2の第一外枠8の左側の縦枠12または扉付きパネル3の第二外枠16の左側の縦枠21に突き当たる状態となっている。また、それぞれの柱状フレーム4の第二突出枠部26は、遮音パネル2の第一外枠8の右側の縦枠12または扉付きパネル3の第二外枠16の右側の縦枠21に突き当たる状態となっている。
【0054】
図6に示すように、柱状フレーム4の第一突出枠部25と、遮音パネル2の第一外枠8の左側の縦枠12との突き当て部において、柱側溝部25bとパネル側溝部12bとの間に跨って連結具7が設けられている。柱状フレーム4の第二突出枠部26と、遮音パネル2の第一外枠の右側の縦枠12との突き当て部において、柱側溝部26bとパネル側溝部12bとの間に跨って連結具7が設けられている。
【0055】
また、
図9に示すように、柱状フレーム4の第一突出枠部25と、扉付きパネル3の第二外枠16の左側の縦枠21との突き当て部において、柱側溝部25bとパネル側溝部21bとの間に跨って連結具7が設けられている。
図8に示すように、柱状フレーム4の第二突出枠部26と、扉付きパネル3の第二外枠16の右側の縦枠21との突き当て部において、柱側溝部26bとパネル側溝部21bとの間に跨って連結具7が設けられている。
【0056】
図11に示すように、連結具7は、フック部27と係合部28とから構成されている。フック部27および係合部28は、左右方向一方側が開口し、直方体状をなす箱状部材である。フック部27は、鉤状部材であるフック本体27aと、フック本体27aを回転操作する回転筒27bとが一体に回転可能に設けられている。回転筒27bの内周部に六角レンチWが挿入可能な挿入孔27cが設けられている。
【0057】
フック部27は、柱状フレーム4の第一突出枠部25の柱側溝部25b、遮音パネル2の第一外枠8の右側の縦枠12のパネル側溝部12b、および扉付きパネル3の第二外枠16の右側の縦枠21のパネル側溝部21bに、上下方向二箇所に設けられている。
【0058】
係合部28は、箱状部材の厚さ方向に両壁面間に架け渡された係合軸部28aを有している。フック部27および係合部28は開口部分を対向する状態で配置されている。フック部27の回転筒27bに六角レンチWを挿入して回転することにより、フック本体27aが回動し係合軸部28aに係合するようになっている。
【0059】
係合部28は、柱状フレーム4の第二突出枠部26の柱側溝部26b、遮音パネル2の第一外枠8の左側の縦枠12のパネル側溝部12b、および扉付きパネル3の第二外枠16の左側の縦枠21のパネル側溝部21bの内部に、上下方向二箇所に設けられている。
【0060】
図5に示すように、天井パネル5は、板状の吸音材10aを上下一対の金属製の補強板5aで挟み込んだ矩形の板状部材である。天井パネル5の外周縁に外向きに延びるフランジ部5bが設けられている。天井パネル5は、室内空間S内に嵌め合わされ、フランジ部5bにより遮音パネル2の第一外枠8および扉付きパネル3の第二外枠16の上端部分に支持されている。天井パネル5は二分割されており、分割された一方の天井パネル5の下面には、室内空間S内を照らす照明機器(図示省略)が着脱可能に設けられる。
【0061】
床パネル6は、矩形をなす基板6aと、基板6aの上面の中央に設けられる矩形の床材6bと、床材6b上に敷かれるクッションマット6cとを有する。基板6aの外周部に複数の遮音パネル2の第一外枠8および扉付きパネル3の第二外枠16の下端部分が載せられている。床材6bは、ダンボール製の板状部材であって、基板6aよりも十分大きい厚さを有している。
【0062】
以上のように、この発明の第一実施形態に係る防音室1が構成される。次に、この実施形態に係る防音室1の施工方法を
図13に基づいて説明する。
まず、
図13(a)に示すように、建物内や住宅内において、防音室1の設置予定箇所に床パネル6の基板6aと床材6bを置く。基板6aの一つのコーナー部分に柱状フレーム4を立てる。このとき、柱状フレーム4は、湾曲面部24が外側に位置する状態となっている。次に、柱状フレーム4の右側に、吸音体10を取り外した状態の遮音パネル2を配置する。このとき、柱状フレーム4の第一突出枠部25と遮音パネル2の第一外枠8の左側の縦枠12を突き合わせる。そして、連結具7のフック部27の挿入孔27cに六角レンチWを室内空間S側から挿入する。
【0063】
六角レンチWを回転させて、フック部27のフック本体27aを回動させて係合部28の係合軸部28aに係合する。これにより、柱状フレーム4と遮音パネル2とを連結する。
図13(b)、
図13(c)に示すように、柱状フレーム4と遮音パネル2をと連結具7を介して順次連結する。
【0064】
図13(d)に示すように、三枚の遮音パネル2を柱状フレーム4を介して連結し、対向する遮音パネル2の開放側に扉付きパネル3を配置する。扉付きパネル3の左右方向両側に柱状フレーム4を配置し、室内空間S側から連結具7のフック部27を回動操作して、柱状フレーム4と扉付きパネル3とを連結する(
図13(e)参照)。続いて、
図13(f)に示すように、床パネル6の床材6b上にクッションマット6cを敷いて、天井パネル5を複数の遮音パネル2と扉付きパネル3の上端に載せる。最後に、それぞれの遮音パネル2の上下方向に分割された収納凹部14に対して、吸音体10をそれぞれ取り付けていく。
【0065】
以上のようにして防音室1が床面に設置される。この実施形態に係る防音室1は、予め、遮音パネル2が収納凹部14から吸音体10を取り外した状態とすることができるものである。このため、吸音体10の重量分だけ、遮音パネル2を軽量化することができる。また、遮音パネル2の第一外枠8および扉付きパネル3の第二外枠16は、これを構成する上下一対の横枠11(横枠20)と左右一対の縦枠12(縦枠21)が押し出し成形品の中空の金属枠からなるものである。このため、遮音パネル2の軽量化のみならず、扉付きパネル3の軽量化を図ることができる。
【0066】
また、柱状フレーム4も、押し出し成形品の中空の金属枠からなるものであり、柱状フレーム4の軽量化を図ることが可能となる。以上のように、防音室1を構成する遮音パネル2、扉付きパネル3および柱状フレーム4を軽量化することにより、個人でも施工か可能となる。
【0067】
さらに、
図13(a)に示すように、防音室1の施工の際、床パネル6を建物内または住宅内の床面の任意の箇所に置くことができるので、複数の遮音パネル2、扉付きパネル3は、床面に対して固定する必要がなく、床面に対する防音室1の設置箇所の自由度が高くなる。
【0068】
また、遮音パネル2は、第一外枠8の左右一対の縦枠12にそれぞれ係合枠部13を有している。この左右の係合枠部13によって、収納凹部14に収納された吸音体10を確実に保持することができる。遮音パネル2の収納凹部14は、横桟15によって上下方向に複数に分割されている。分割された収納凹部14に収納する吸音体10は、より小さいものでよく、吸音体10の重量を小さくすることができる。
【0069】
複数の遮音パネル2および扉付きパネル3を柱状フレーム4を介して連結する連結具7は、フック部27と係合部28とから構成されている。フック部27のフック本体27aを室内空間S側から六角レンチWにより回動操作することができる。このため、例えば、建物内や住宅内の壁面に接近させた状態で、防音室1を設置することができる。
【0070】
次にこの発明の第二実施形態の防音室を
図14~16に示す。この第二実施形態の防音室において、遮音パネル2は、遮音板9と吸音体40とを有するものであって、吸音体40が、第一外枠8の厚さ方向内側に固定される有孔ボード41と、有孔ボード41と遮音板9との間に配置されている吸音材10aとで構成されている点で上述の第一実施形態と相違し、第一実施形態と同じ構成は、同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0071】
図15、16に示すように、第二実施形態の防音室1において、遮音パネル2の吸音体40は、矩形の有孔ボード41と、有孔ボード41と遮音板9との間に配置されている吸音材10aを有している。有孔ボード41は、その全面に貫通孔41aが多数設けられている。貫通孔41aは、縦方向および横方向にマトリクス状に配置されている。
【0072】
図15に示すように、有孔ボード41の上端部および下端部は、第一外枠8の横枠11の一対のフランジ部11cの間に位置している。
図16に示すように、有孔ボード41の左右方向の両端部は、第一外枠8の縦枠12の左右の係合枠部13、13により支持されている。有孔ボード41は、木質繊維を原料とする成型板や、合板などの木製の板部材、コルク板、ペグボード、パンチングボードなどから形成される。
【0073】
吸音材10aは、上述した第一実施形態における吸音材10aと同じものであり、例えば、グラスウール、ロックウール、金属繊維などを板状に成型した多孔質構造であり可撓性を有するものである。
【0074】
第二実施形態の防音室1は、第一実施形態の場合と同様に、床パネル6を建物内または住宅内の床面の任意の箇所に置くことができるので、複数の遮音パネル2、扉付きパネル3は、床面に対して固定する必要がなく、床面に対する防音室1の設置箇所の自由度が高くなる。また、防音室1内で発生する音は、吸音体40の有孔ボード41に当たり、多数の貫通孔41aに入り、貫通孔41aの内部を通過した後、多孔質構造である吸音材10aによって減衰する。このようにして、防音室1内で発生する音を効果的に吸収することができる。
【0075】
この発明の第三実施形態の防音室を
図17~22に示す。この第三実施形態の防音室1において、遮音パネル2は、第一外枠8の内部に二枚の合成樹脂製の吸音体50のみが配置されている点で、上述の第一実施形態の遮音パネル2と相違する。その他の構成において、第一実施形態と同じ構成は、同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0076】
図17に示すように、第三実施形態の防音室1の遮音パネル2は、第一外枠8の内部に二枚の吸音体50が上下二段に積み重ねた状態で配置されたものである。それぞれの吸音体50は、矩形の板部材から形成されている。吸音体50は、矩形の基板部51と、その基板部51の両側から、その基板部51を挟む状態に設けられる第一吸音板部52と、第二吸音板部53とを有する。
【0077】
基板部51は、矩形をなし、合成樹脂の発泡体から形成されている、合成樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂が好適である。基板部51の室内空間S側に第一吸音板部52が配置されている。
図18に示すように、第一吸音板部52は、上下方向に等間隔をおいて複数設けられ、左右方向に延びる横目地52aと、上下方向に隣り合う横目地52aの間にランダムに架け渡される縦目地52bとを有する。
図19に示すように、第一吸音板部52は、横目地52aと縦目地52bにより多数の凹部が形成され、レンガを多段に積み上げた形態を模したものとなる。
【0078】
基板部51の室内空間S側と反対側に第二吸音板部53が配置されている。
図18に示すように、第二吸音板部53は、上下方向および左右方向に沿って多数配列された吸音ブロック部53aを有する。それぞれの吸音ブロック部53aは、矩形をなしており、基板部51と反対側の表面53bが、断面円弧となっている(
図19の(a)参照)。表面53bは、基板部51と反対側に向かって外向きに膨らむ状態となっている。左右方向および上下方向に隣り合う吸音ブロック部53aは、湾曲する対向一対の辺部を90度回転した状態で配列されている。
【0079】
第二吸音板部53は、左右方向および上下方向に隣り合う吸音ブロック部53aの湾曲する対向一対の辺部により、上下方向および左右方向に多数の凹部が形成されるものとなる。このように左右方向および上下方向に吸音ブロック部53aが配列されている第二吸音板部53は、表面に幾何学的模様が施されたものとなる。第一吸音板部52および第二吸音板部53は、合成樹脂の一体成型により形成されており、合成樹脂としては、ABS樹脂が好適である。
【0080】
図20に示すように、上下方向二段に積み重ねた吸音体50のうち、下側の吸音体50の上面部に左右方向に延びる突条50aが形成され、上側の吸音体50の下面部に、突条50aが嵌る溝部50bが形成されている。下側の吸音体50の下部が、第一外枠8の下側の横枠11の一対のフランジ部11cの間に支持されている。上側の吸音体50の上部が、第一外枠8の上側の横枠11の一対のフランジ部11cの間に支持されている。
図21に示すように、上下方向二段に積み重ねたそれぞれの吸音体50は、その左右方向両端部が第一外枠8の係合枠部13により支持されている。
【0081】
図22に示すように、この第三実施形態の遮音パネル2は、吸音体50に対して室内空間S側に着脱可能に取り付けられる可動吸音体60をさらに備えている。可動吸音体60は、矩形の板状に成形された吸音材10aと、吸音材10aの左右方向両側に配置される補強枠10bと、吸音材10aおよび補強枠10bを包む袋体10cと、それぞれの補強枠10bに固定される係合ブラケット61とを有する。すなわち、可動吸音体60は、第一実施形態における吸音体10に対して、その補強枠10bに係合ブラケット61を固定したものである。
【0082】
係合ブラケット61は、遮音パネル2の係合枠部13の固定孔13cに係合するフック部61aを有する。フック部61aは、係合ブラケット61の上下方向に間隔をおいて二箇所に設けられている。係合ブラケット61のフック部61aを遮音パネル2の係合枠部13の固定孔13cに係合することで、可動吸音体60を遮音パネル2の内面側に着脱可能に取り付けることができる。係合ブラケット61のフック部61aの固定孔13cへの係合位置を変更することで、遮音パネル2の吸音体50の第一吸音板部52に対して、使用者の所望の位置に可動吸音体60を取り付けることができる。
【0083】
この第三実施形態では、遮音パネル2の吸音体50の基板部51が合成樹脂の発泡体から形成されているので、遮音パネル2の軽量化を図ることができる。また、第一吸音板部52または第二吸音板部53には、上下方向および左右方向に沿って形成される多数の凹部が形成されている。この多数の凹部により、防音室1内で発生した音を吸収することができる。
【0084】
さらに、可動吸音体60をさらに備えていることから、遮音パネル2に対して、上下方向の任意の位置に、可動吸音体60を取り付けて、その位置での吸音効果をより高めることができる。
【0085】
なお、この第三実施形態では、吸音体50は、基板部51に対して第二吸音板部53を室内空間S側に配置することもできる。また、吸音体50は、基板部51の少なくとも前記室内空間S側に、第一吸音板部52または第二吸音板部53を配置していればよい。
【符号の説明】
【0086】
1 防音室
2 遮音パネル
3 扉付きパネル
4 柱状フレーム
5 天井パネル
6 床パネル
7 連結具
8 第一外枠
9 遮音板
10 吸音体
10a 吸音材
10b 補強枠
10c 袋体
11、20 横枠
11a、12a、21a 筒部
11b、12b、21b パネル側溝部
12、21 縦枠
13 係合枠部
13c 固定孔
14 収納凹部
16 第二外枠
18 扉
19 窓部
23 ハンドル
24 湾曲面部
25 第一突出枠部
26 第二突出枠部
25a、26a 筒部
25b、26b 柱側溝部
27 フック部
27a フック本体
27b 回転筒
27c 挿入孔
28 係合部
28a 係合軸部
33 ブラケット
40、50 吸音体
41 有孔ボード
51 基板部
52 第一吸音板部
53 第二吸音板部
60 可動吸音体
S 室内空間
W 六角レンチ