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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042173
(43)【公開日】2022-03-14
(54)【発明の名称】展開装置
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/22 20060101AFI20220307BHJP
   H01Q 1/12 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
B64G1/22
H01Q1/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020147459
(22)【出願日】2020-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】591051874
【氏名又は名称】サカセ・アドテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 秋人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 裕明
【テーマコード(参考)】
5J047
【Fターム(参考)】
5J047AA01
5J047BA10
(57)【要約】
【課題】衛星への取付箇所を自由に選択し得る展開装置を実現する。
【解決手段】収納筐体と、該収納筐体内に収納される膜および一対の伸展ブームと、を有し、展開時には、収納筐体から、一対の伸展ブームがV字状に開きながら伸展し、伸展ブームに支持された膜が逆三角形状に引き出されて展開されるように構成される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納筐体と、該収納筐体内に収納される膜および一対の伸展ブームと、を有し、
展開時には、収納筐体から、一対の伸展ブームがV字状に開きながら伸展し、伸展ブームに支持された膜が逆三角形状に引き出されて展開されるように構成されることを特徴とする展開装置。
【請求項2】
前記伸展ブームは双安定性ブームであり、前記収納筐体内の巻取りドラムに巻き取られ、モータによって伸展駆動される構成となっている請求項1に記載の展開装置。
【請求項3】
前記伸展ブームには、伸展方向に所定間隔で穴が設けられ、穴に係合する突起を備えたスプロケットを、前記モータによって回転駆動させることで、伸展ブームを伸展させる構成となっている請求項2に記載の展開装置。
【請求項4】
前記モータの回転中心線は巻取りドラムと直交配置され、前記モータからスプロケットに至る駆動伝達機構が、巻取りドラムに巻き取られた伸展ブームの伸展方向と直交方向の高さの範囲内に収められている請求項3に記載の展開装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
小型衛星の大電力発電/大容量通信/高分解能観測等に用いられる太陽電池パドル・膜アンテナ等に適用可能な展開装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の展開装置としては、たとえば、特許文献1に示すように、コンベックステープの弾性を利用した4本のブームを伸展させ、ブーム間に折り畳まれた膜を展開させる構成となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2019-536394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、4本のブームが四方に開くために、衛星への取付箇所が制約されてしまう。
本発明の目的は、衛星への取付箇所を自由に選択し得る展開装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、
収納筐体と、該収納筐体内に収納される膜および一対の伸展ブームと、を有し、
展開時には、収納筐体から、一対の伸展ブームがV字状に開きながら伸展し、伸展ブームに支持された膜が逆三角形状に引き出されて展開されるように構成される。
このように展開すれば、衛星の片側に開いた空間があれば、取り付けることができ、衛星への取付箇所を自由に選択することができる。
本発明は、上記構成に加えて、以下のような構成をとることが可能である。
前記伸展ブームは双安定性ブームであり、収納筐体内の巻取りドラムに巻き取られ、モータによって伸展駆動される構成とする。
このようにモータで駆動することによって、伸展速度が制御可能となり、たとえば、コンベックステープを使用した場合のように、展開時に衝撃が作用しない。
前記伸展ブームには、伸展方向に所定間隔で穴が設けられ、穴に係合する突起を備えたスプロケットを、前記モータによって回転駆動させることで、伸展ブームを伸展させる構成とする。
スプロケット駆動によって、伸展ブームを確実に伸展させることができる。
前記モータの回転中心線は巻取りドラムと直交配置され、前記モータからスプロケットに至る駆動伝達機構が、巻取りドラムに巻き取られた伸展ブームの伸展方向と直交方向の高さの範囲内に収められている。
このようにすれば、収納筐体の小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、衛星への取付箇所を自由に選択し得る展開装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1(A)は収納状態の概略図、(B)は展開動作イメージを示す図。
図2図2(A)は展開装置の収納状態の概略構成図、(B)は(A)のb方向から見た伸展ブームの概略図。
図3図3(A)は巻き取り部の斜視図、(B)は巻取りドラムの斜視図。
図4図4は、展開装置の駆動伝達系を示す斜視図。
図5図5(A)は伸展ブームの概略斜視図、(B)はスプロケットの平面図。
図6図6は、先端ガイドローラの斜視図。
図7図7(A),(B)は、収納筐体の伸展ブーム及び膜が展開する側の側面の開閉状態を示す斜視図。
図8図8は、伸展終了を検知するスイッチ機構の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態は例示的に示すものであり、本発明は、これらの構成に限定されるものではない。
・収納・展開動作イメージ
図1(A)は収納状態の概略図、(B)は展開動作イメージを示す図である。
図1(A)に示される通り、収納状態では、伸展ブーム及び膜は直方体形状の収納筐体
10内に収納されている。展開時には、図1(B)に示す通り、収納筐体10の一側面が開き、一対の伸展ブーム1,1がV字状に開きながら伸展し、伸展ブーム1,1に支持された膜20が、収納筐体10側を頂点とする逆三角形状あるいは逆台形状に展開される。
【0009】
2本の伸展ブーム1,1は一つの平面上に位置し、以下の説明では、適宜、その平面を展開平面S、伸展ブーム1,1のなす角を2等分する二等分線を展開中心線Nとし、展開平面S上で、展開中心線Nと平行方向をX軸方向、展開中心線Nと直交方をY軸方向、展開平面と直交方向をZ軸方向として説明する。
【0010】
直方体形状の収納筐体10は、頂点の角部に集まる3辺が、X軸、Y軸およびZ軸方向に平行となるように設定されている。図1(A)では、収納筐体10の、長方形状の蓋板部10fと、短辺側の一つの側板部10a、長辺側の一つの側板部10bの3面が見えている。蓋板部10fと対向する基板部、側板部10aと対向する短辺側の側板部、側板部10bと対向する長辺側の側板部は、隠れて見えていない。
【0011】
・展開装置の内部構造
図2は、展開装置の収納時の概略構成図である。図は、収納筐体10の蓋板部を外し、Z軸方向から見た図である。
展開装置100は、巻き取られた一対の伸展ブーム1,1と、折り畳まれた膜20と、伸展ブーム1,1を伸展させるスプロケット2,2と、スプロケット2,2を駆動する一つのモータ3と、モータ3の駆動力を各スプロケット2,2に伝達する駆動伝達機構Aと、伸展ブーム1,1の伸展動作を案内する案内機構Bと、を備えており、これらの構成部品が収納筐体10の基板部10eに組付けられている。この基板部10eは、図1の蓋板部10fとZ軸方向に対向する部分である。基板部10eの長辺はX軸方向に延び、短辺はY軸方向に延びており、展開中心線Nは、平面視で(Z軸方向からの視点)、短辺を二等分するように延びている。
【0012】
以下、各部の構成について説明する。
伸展ブーム1は、繊維強化樹脂シートによる単層材または積層材によって構成され、伸展形態と巻き取り形態のいずれの形態でも安定して保持される双安定性のブームである。伸展ブーム1は、伸展形態においては、伸展方向と直交する幅方向の断面形状が円弧状に湾曲している。
各伸展ブーム1,1は、基板部10eの中央部に、展開中心線Nに対して対称的に配置された一対の巻取りドラム11,11に円筒状に巻き取られ、先端が所定長さだけ伸展方向に直線状に引き出された状態で保持される。巻取りドラム11,11は、図3に示すよ
うに、Z軸方向に延び、ブッシュ12を介してフレームに回転自在に支持される。伸展ブーム1の巻取りドラム11に巻き取られた部分は、円筒状の巻き取り形態を安定して保持しており、コンベックステープのように、巻き取り形態を強制的に保持する保持手段を必要としない。
【0013】
伸展ブーム1の引き出された部分1Lは、幅方向断面(伸展方向Eと直交方向断面)が円弧状に湾曲して直線状態に保持される。幅方向断面の湾曲方向は、図2(B)に示すように、展開中心線Nを通るZ軸と平行のZ軸平面Snに面する側が凸面、Z軸平面Snと反対側が凹面となっており、一対の伸展ブーム1,1は、凸面側が対向するようにZ軸平面Snに対して対称的に配置され、互いに逆回転方向に引き出される。図示例では、図2(A)に示すように、図中、右側の伸展ブーム1は時計回転方向に引き出され、左側の伸展ブーム1は反時計回転方向に引き出される。この伸展ブーム1,1の、展開中心線Nに対する引き出し角度θ,θは同一で、伸展ブーム1,1の伸展方向を決定する。
【0014】
伸展ブーム1の引き出された部分1Lと巻き取り部分1Wの境界部では、伸展ブーム1を巻き取る方向の力よりも幅方向断面を湾曲させる力の方が強く、自己伸展するように設定されているが、この実施形態では、スプロケット2によって伸展させる構成で、スプロケット2によって自己伸展は規制されている。この自己伸展力の大きさは、膜厚、素材、開口角等によって種々の大きさに調整可能である。
【0015】
・スプロケット2の構造
伸展ブーム1には、図5(A)に示されるように、φ4mm、ピッチ17mmの穴1aが設けられている。この穴1aに噛み合うように、スプロケット2の外周には、図5(B)に示されるように、突起2aが等配されている。スプロケット2の回転によって、スプロケット2に設けられた突起2aが、順次、伸展ブーム1の穴1aに噛み合い、伸展ブーム1を伸展方向に送る構成となっている。スプロケット2の突起2aが、伸展ブーム1の穴1aに係合することで、伸展ブーム1の滑りは生じることなく確実に送ることができる。
【0016】
・スプロケット2の駆動伝達機構A
スプロケット2は、モータ3の回転駆動力が駆動伝達機構Aを介してスプロケット2に伝達され、スプロケット2が回転し、各伸展ブーム1,1を伸展させる。
スプロケット2の駆動伝達機構Aは、図4に示されるように、駆動源であるモータ3によって駆動される駆動ギア4、駆動ギア4に噛み合う駆動伝達ギア5、駆動伝達ギア5と同軸的に回転するウォームギア15A、ウォームギア15Aに噛み合うウォームホイール15Bとを備えている。このウォームホイール15Bが駆動することにより、ウォームホイール15Bに同軸に固定されているスプロケット2が回転し、スプロケット2に係合する伸展ブーム1が伸展する。
【0017】
一方、ウォームホイール15Bには、ウォームホイール15Bと同軸的に回転するアイドルギア9Cが設けられ、アイドルギア9Cに噛み合うアイドルギア9A,9B、9Dを介して、他方のスプロケット2に回転駆動力が伝達され、他方の伸展ブーム1が同期して伸展する。
このようにモータ3で駆動することによって、伸展速度を制御可能となり、展開時にゆっくりと伸展させる、あるいは伸展終了手前から伸展速度を落とし、たとえば、コンベックステープを使用した場合のように、伸展時に衝撃力が作用しないように制御することができる。
また、伸展ブーム1,1として双安定ブームを用いることにより、自己伸展力を調整することができ、伸展時にモータ3に加わる負荷を可及的に軽減することができ、小型のモータで駆動可能である。また、一つのモータ3で、2つの伸展ブーム1,1を伸展させる
ことができる。
さらに、モータ3の回転中心線は、巻取りドラム11に対して直交するX軸方向に延び、基板部10e上に寝かせて配置され、駆動伝達機構Aを構成する駆動ギア4、駆動伝達ギア5、ウォームギア15A、ウォームホイール15Bおよびスプロケット2まで、ほぼ巻取り部に巻き取られた伸展ブーム1のZ軸方向の高さの範囲内に収まっている。また、アイドルギア9C,9A,9B、9Dは、基板部10eに形成された凹部に収まっており、収納筐体10のZ軸方向の厚さを薄型化でき、展開装置をよりコンパクトにまとめることができる。
【0018】
・伸展ブームの案内機構B
引き出された伸展ブーム1を案内する案内機構Bは、図2に示されるように、スプロケット2に対して巻き取り部側に配置される根元ガイドローラ7A,7Bと、スプロケット2よりも伸展方向前方に配置される、一対の先端ガイドローラ81,82とを備えている。
根元ガイドローラ7Aは、伸展ブーム1が巻き取り部から引き出された直後に配置されている。引き出し直後なので、伸展ブーム1の幅方向断面(Z軸方向の断面、図2では紙面に対して直交方向)の湾曲度合いは小さく、幅が広いので、根元ガイドローラ7Aは、幅方向両側の2か所に配置されている(図4参照)。根元ガイドローラ7Bは、根元ガイドローラ7Aの次に配置され、伸展ブーム1の幅方向断面の凸円弧の外周面に接触し、根元ガイドローラ7Aと共に、伸展ブーム1がスプロケット2に接触するように案内する。
【0019】
先端ガイドローラ82は、図6に示されるように、伸展ブーム1に対して、展開中心線N側に配置され、伸展ブーム1の凸円弧側の側面に倣った鼓型形状で、伸展ブーム1の展開面に対して直交方向の動き(図中、上下方向)、および展開面と平行で展開中心線N側(収納筐体の内側)への動きを規制する。
先端ガイドローラ81は、一対のフランジ部81a,81aを備えた形状で、フランジ部81a,81aが伸展ブーム1の幅方向の両端部に接触して伸展ブーム1の展開面に対して直交方向の動きを規制すると共に、伸展ブーム1の展開面と平行で展開中心線Nと反対側(収納筐体の外側)への動きを規制する。
【0020】
・膜20の折り畳み構造
膜20は、特に図示しないが、収容筐体の、一対の伸展ブーム1,1の間の逆三角形状あるいは逆台形状のスペースに折り畳まれた形態で収納される。折り畳み形態は、三角形状の膜20の底辺側(展開した先端側)から頂点側(収容筐体側)に向けて、Y軸と平行方向の折り目を形成しながら、X軸方向に所定幅でジグザグ状に折り畳み、折り畳まれた部分のY軸方向の両端から、X軸と平行方向の折り目を形成しながら、展開中心線Nに向けて、所定幅でジグザグ状に折り畳み、折り畳まれたY軸方向両端部(元の三角形の底辺
の角部に対応)を、各伸展ブーム1,1の伸展方向先端部に、スプリング等によって連結しておく。
【0021】
伸展ブーム1,1が伸展するにしたがい、折り畳まれたY軸方向両端部がY軸方向に互いに離れる方向に引っ張らてY軸方向の折り畳み部分が拡げられ、同時にX軸方向の折り畳み部分がX軸方向に拡げられ、三角状あるいは逆台形状に展開する。
もっとも、折り畳み構造は、このような折り方に限定されず、種々の折り畳み形態を適用可能である。
【0022】
・収納筐体の開閉機構
図7に示されるように、収納筐体10の短辺側の一つの側板部10aが、ヒンジ部10hを介して、基板部10eに対して開閉可能に支持されている。収納時には側板部10aは閉じており、展開時に、長辺側の側板部10b,10dに配置した保持開放機構(HR
M)30の動作によって開き、伸展ブーム1,1及び膜20が伸展可能となる。保持開放機構30としては、公知の種々の構成を適用可能である。たとえば、ヒンジ部10hは、ばねヒンジとして常時開放状態に付勢しておく。これに対して、側板部10b,10dには、側板部10aに設けた突部31が係合し、側板部10aを閉状態に保持するロック機構32を設け、展開時には、不図示の解放機構によって、ロック機構32を解放し、側板部10aが開くように構成される。このような構成は一例であって、保持開放機構としては、その他、公知の種々の構成を適用することが可能である。
【0023】
・その他の構成
伸展リミットスイッチ
マイクロスイッチ13は、図8に示されるように、伸展ブーム1が完全に伸展したことを検知するためのスイッチで、伸展ブーム1が所定位置まで伸展したときに、リミットレバー14がマイクロスイッチ13を押す機構となっている。
【符号の説明】
【0024】
1 伸展ブーム、1a 穴、
2 スプロケット、2a 突起、
3 モータ、
A 駆動伝達機構、
4 駆動ギア、5 駆動伝達ギア、15A ウォームギア、15B ウォームホイール、6 ウォームギア、9A~9D アイドルギア、
B 案内機構
7A,7B 根元ガイドローラ、81先端ガイドローラ、82先端ガイドローラ、
10 収納筐体,10a 展開側の側板部
11 巻取りドラム、
20 膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8