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  • 特開-シート状化粧品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042197
(43)【公開日】2022-03-14
(54)【発明の名称】シート状化粧品
(51)【国際特許分類】
   A45D 44/22 20060101AFI20220307BHJP
【FI】
A45D44/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020147505
(22)【出願日】2020-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000176637
【氏名又は名称】日本製紙パピリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098914
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 伸行
(72)【発明者】
【氏名】鹿又 喜輝
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 早紀子
(72)【発明者】
【氏名】長田 和也
(57)【要約】
【課題】 十分な量の化粧料を担持し、使用感においても優れるシート状化粧品を提供する。
【解決手段】 不織布により形成したシート状基材10と、前記シート状基材上に設定された化粧料塗工層11とを少なくとも備えた、シート状化粧品1であって、前記不織布の坪量は20~100g/mであり、厚さは0.1~1.0mmであり、前記化粧料塗工層の化粧料の量は10~40g/mである、シート状化粧品である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布により形成したシート状基材と、前記シート状基材上に設定された化粧料塗工層とを少なくとも備えた、シート状化粧品であって、
前記不織布の坪量は20~100g/mであり、厚さは0.1~1.0mmであり、
前記化粧料塗工層の化粧料の量は10~40g/mである、ことを特徴とするシート状化粧品。
【請求項2】
前記不織布は、パルプ繊維、レーヨン繊維、ポリプロピレン(PP)繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリエチレン繊維(PE)、アクリル繊維、ナイロン繊維、PE/PP複合繊維、PE/PET複合繊維、PP/PET複合繊維、低融点PET/高融点PET複合よりなる、群から少なくとも1つを選択して形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のシート状化粧品。
【請求項3】
前記不織布はスパンレース不織布である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシート状化粧品。
【請求項4】
前記化粧料塗工層は、少なくとも撥水性の成分を含んでいる化粧料とバインダーとを含んでいる、ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のシート状化粧品。
【請求項5】
前記化粧料は、油性の成分を含む白粉、フェイスパウダー、ファンデーション、ルースパウダー、チーク、ベビーパウダーおよびボディパウダーの群から選択されるいずれかである、ことを特徴とする請求項4に記載のシート状化粧品。
【請求項6】
前記化粧料が水に分散容易な成分を更に含んでいる、ことを特徴とする請求項4又は5に記載のシート状化粧品。
【請求項7】
前記バインダーは疎水性である、ことを特徴とする請求項4から6のいずれに記載のシート状化粧品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔などに化粧料(化粧パウダー)を塗布することができる、「シート状化粧品」に関する。
【背景技術】
【0002】
古くから携帯用の化粧アイテムとしてはいわゆる「紙おしろい」があり、また近年では「パウダーペーパー」とも称されるシート状の化粧品も提供されている。出先などで汗ばんしまい、顔の化粧落ちが心配となった時などに、上記シート状化粧品を使用することで簡易に化粧直しの対処を行える。
このようなシート状化粧品については、例えば特許文献1による紙おしろいがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-253229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1による紙おしろいは、紙を基材として、この紙の上に改良を加えた化粧料を担持させたものである。この引用文献1で開示されるように、従来のシート状化粧品は薄葉紙を基材として、その上に所望に設計した化粧料を担持させている構成が一般的であった。
しかしながら、従来のように薄葉紙上に化粧料を担持させた形態では、担持できる化粧料の量に限界がある。そのため、ユーザが十分な量の化粧料を必要とする場合には複数枚のシート状化粧品を消費することになる。
また、紙は柔らかさや、しなやかさが乏しいので、紙を基材とした従来のシート状化粧品はユーザにとって使用感が良いものではなかった。
【0005】
よって、本発明の目的は、従来と比較して、担持させる化粧料の量を増加することができ、しかもユーザにとって使用感に優れた、シート状化粧品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、不織布により形成したシート状基材と、前記シート状基材上に設定された化粧料塗工層とを少なくとも備えた、シート状化粧品であって、前記不織布の坪量は20~100g/mであり、厚さは0.1~1.0mmであり、前記化粧料塗工層の化粧料の量は10~40g/mである、ことを特徴とするシート状化粧品により達成することができる。
【0007】
前記不織布は、パルプ繊維、レーヨン繊維、ポリプロピレン(PP)繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリエチレン繊維(PE)、アクリル繊維、ナイロン繊維、PE/PP複合繊維、PE/PET複合繊維、PP/PET複合繊維、低融点PET/高融点PET複合繊維よりなる、群から少なくとも1つを選択して形成されているのが好ましい。
更に、前記不織布はスパンレース不織布であるのが好ましい。
【0008】
そして、前記化粧料塗工層は、少なくとも撥水性の成分を含んでいる化粧料とバインダーとを含んでいるのが望ましい。
ここで、前記化粧料は、油性の成分を含む白粉、フェイスパウダー、ファンデーション、ルースパウダー、チーク、ベビーパウダーおよびボディパウダーの群から選択されるいずれかとすることができる。
また前記化粧料が水に分散容易な成分を更に含んでいるのが好ましい。
そして、前記バインダーは疎水性であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のシート状化粧品では不織布をシート状基材としているので、その上に十分な量の化粧料塗工層を担持できるので、ユーザは従来と比較し、余裕をもって化粧料を使うことができ、不織布は紙に比べてしなやかなので使用感においても優れている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るシート状化粧品について示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係るシート状化粧品について説明する。
本発明に係るシート状化粧品は、シート状基材として所定の不織布を採用することで、従来にあって紙を基材としていた紙おしろい等と比較して、化粧料の担持量を大幅の増加させたものである。これにより、従来のシート状化粧品と比較して、本発明のシート状化粧品は化粧或いは化粧直し用に好適な化粧品となる。
【0012】
以下では、本発明の実施形態として化粧料塗工層に十分な量の化粧料を担持しているシート状化粧品1について説明する。
【0013】
図1は一実施形態に係るシート状化粧品1の構成を拡大し、模式的に示した図である。シート状化粧品1は、シート状基材10と、このシート状基材10上に設けた化粧料塗工層11とを含んでいる。
【0014】
シート状基材10は不織布によって形成されている。不織布は化粧料塗工層を担持するのに適したものであれば特に限定はないが、坪量は20~100g/mであり、厚さは0.1~1.0mmとするのが好ましい。
そして、不織布はパルプ繊維、レーヨン繊維、ポリプロピレン(PP)繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリエチレン繊維(PE)、アクリル繊維、ナイロン繊維、PE/PP複合繊維、PE/PET複合繊維、PP/PET複合繊維、低融点PET/高融点PET複合繊維よりなる、群から少なくとも1つを選択して形成するのが好ましい。
そして、この不織布としてはスパンレース法による交絡処理によって得られるスパンレース不織布を採用するのが好ましい。
このような不織布は、従来において採用されていた紙と比較して、化粧料を担持する能力が高くなる。また、不織布は可撓性があるので厚みが増してもしなやかでありユーザが扱いし易く、使用感に優れたシート状化粧品として提供できる。
【0015】
上記の様に形成したシート状基材10は、化粧料塗工層11を設ける際の加工適性も良好である。また、シート状基材10上に化粧料塗工層11を形成してシート状化粧品1とした後にあっては破れや損傷を生ずることなく、また適度なしなやかさを有している。よって、使用感に優れたシート状化粧品1とすることができる。
【0016】
なお、上記シート状基材10を構成する不織布の坪量が20g/m未満では強度が低過ぎるため、化粧料塗工層11を形成する際の加工適性が劣ることになる。そして、製造されたシート状化粧品1は、使用した時に軟らか過ぎてしまう。一方で、不織布の坪量が100g/mを超えた場合には、シートのしなやかさが失われてしまうので使用感が低下してしまう。
また、不織布の厚さが0.1mm未満である場合は化粧料塗工層11を設ける際の加工において化粧料が不織布の裏面まで抜けてしまうため加工機に汚れが生じ易くなり、またシート状化粧品1を使用する際に化粧料が手に付着し易くなる。一方で、厚さが1.0mmを超える場合はシートのしなやかさが失われてしまい使用感が低下し、また複数枚重ねた際に厚くなり携帯性も低下する。よって、厚さは0.1~1.0mmとするのが好ましい。
【0017】
そして、上記した不織布には従来よりも多い化粧料を担持させることができる。具体的には、前記化粧料塗工層は、化粧料の量を10~40g/mとすることができ、20~30g/mとするのが好ましい。化粧料の量が10g/m未満では肌に塗布する化粧料の量が足りず複数のシート状化粧品を使用する必要があり、化粧料の量が40g/mを超えるとシート状化粧品1の加工工程や携帯時、使用時にシート状基材10から化粧料が脱落し加工機やシート状化粧品1の容器内、手や衣服、周囲を汚してしまう。
【0018】
そして、上記化粧料塗工層11は、少なくとも撥水性の成分を含んでいる化粧料とバインダーとを含む塗工原料となる塗工液を、シート状基材10上に塗布することによって形成されている。
ここで、化粧料については、従来のシート状化粧品には採用することが難しかった水に分散し難い、撥水性の原料を含むことが必須であるが、これに限らず更に従来一般のシート状化粧品と同様に水に容易に分散可能な原料も含めることができる。
【0019】
水に分散し難い、撥水性の成分を含む化粧料としては、例えば油性の成分を含む白粉、フェイスパウダー、ファンデーション、ルースパウダー、チーク、ベビーパウダー、ボディパウダーなどであり、従来のシート状化粧品では採用されていない化粧料である。より詳細に、撥水性の成分を含み水に分散し難い化粧料に含まれる原料としては、炭化水素、天然ロウ、油脂類、シリコーンオイルなどを挙げることができる。更に、フッ素やシリコーン、高級脂肪酸などにより表面を撥水処理した体質顔料(タルク、マイカ、チタン、マイクロビーズなど)や香料、紫外線吸収剤、油脂性高分子などを挙げることができる。
【0020】
そして化粧料塗工層11を構成する化粧料として、水に分散し易い、従来からの化粧料を更に含めてもよい。従来から使用されている水に分散し易い化粧料としては、表面処理していない上記タルクなどの体質顔料、着色顔料(酸化鉄、有機顔料など)、水溶性高分子などを挙げることができる。
【0021】
上記化粧料塗工層11は、上述した化粧料とバインダーとを所定の溶液内で混ぜた塗工液を準備し、その塗工液をシート状基材10上に塗工し、その後に乾燥するという簡単な工程で、形成することができる。
【0022】
上記バインダーは、疎水性であることが好ましい。バインダーはシート状化粧品1を使用する前には化粧料をシート状基材10上に安定に保持し、またシート状化粧品1を使用する際には化粧料を肌に適度に転移する機能を果たすものであれば特に定めはないが、疎水性とするのが好ましい。バインダーを疎水性とすることで、バインダーが肌表面の汗に溶解して化粧料がべたつくことを抑制できるからである。このようなバインダーとしては、例えば、エチルセルロースを用いることが好ましい。
【0023】
上記化粧料塗工層11は、ユーザがシート状化粧品1を使用したときに、化粧料がユーザの皮膚側(顔など)へ、安定的、確実に転移するように設計されているのが好ましい。そのために、本発明のシート状化粧品1では、化粧料塗工層11における化粧料に対するバインダーの質量比率(B(バインダー)/P(化粧料)×100)を0.01~5%に設定してある。バインダーが0.01%未満では、化粧料を基材である不織布に安定して固定することができないため、好ましくない。また、バインダーが5%を超えると、化粧料と不織布との接着が強く、化粧料を肌に適度に転移することができないため、好ましくない。
【0024】
前述したように、上記化粧料とバインダーとを所定割合として、溶液中に分散させた塗工液を準備して、シート状基材10上に塗工する。例えばイソプロピルアルコール(IPA)と水とによる溶液中に化粧料とバインダーとを分散させたものを塗工液として、シート状基材10上に塗工し、乾燥させると図1に示すシート状化粧品1を簡単に製造することができる。
【0025】
図1に示したシート状化粧品1は、上記のように溶剤塗工の技術を用いて簡単に製造するこができ、シート状基材10を不織布によるとすることで、化粧料塗工層11に十分な量の化粧料を担持することができ、ユーザの肌に十分な化粧料を転移させることができる。
【0026】
以下では、上述したシート状化粧品1の実施例および比較例について更に説明する。なお、以下で示す原材料についての配合は全て質量部で示している。
【0027】
(実施例)
1)シート状基材10
ポリエステル繊維およびレーヨン繊維からなる坪量50g/m、厚さ0.4mmの湿式スパンレース不織布をシート状基材10として用いた。
2)化粧料塗工層11の塗布
更に、バインダーとしてエチルセルロース(米国 ダウケミカル社製 エトセル20プレミアム)0.45部をイソプロピルアルコール56部と水14部の混合液に溶解した後、下記表1に示した化粧料を30部加えて分散させて塗工液を調製した。この塗工液を、シート状基材10にグラビア塗工機を用いて塗工及び乾燥をして、化粧料の量が25g/mである化粧料塗工層11を有する実施例のシート状化粧品1を得た。
3)ユーザの評価
化粧に十分な量である。シート状化粧品1はしなやかで使用感がよい。
【0028】
(比較例1)
NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)からなる坪量20g/m、厚さ0.03mmの紙をシート状基材として用いた以外は実施例と同様にして化粧料の量が25g/mである化粧料塗工層11を有する比較例1のシート状化粧品を得た。
(比較例2)
化粧料の量を5g/mにした化粧料塗工層11を形成した以外は比較例1と同様にして比較例2のシート状化粧品を得た。
【0029】
比較例1のシート状化粧品は、化粧料塗工層11が塗工、乾燥後の工程でシート状基材10の表面で皮膜化して割れや脱落を生じ、商品としての形態を保つことができなかった。
比較例2のシート状化粧品は、化粧料塗工層11に不具合は生じず商品の形態を保つことはできたが、使用の際に化粧料の量が足りず複数枚使用する必要があった。
【0030】
【表1】
【0031】
以上で説明したように、本発明の実施例のシート状化粧品1は、十分な化粧料を含む化粧料塗工層11を有する化粧品が提供されるので、従来よりも化粧や化粧直しが楽で、ユーザの使用感に優れる製品として提供することができる。
【0032】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0033】
1 シート状化粧品
10 シート状基材
11 化粧料塗工層
図1