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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042252
(43)【公開日】2022-03-14
(54)【発明の名称】山留壁及びその形成方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/04 20060101AFI20220307BHJP
   E02D 7/08 20060101ALI20220307BHJP
   E02D 17/04 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
E02D5/04
E02D7/08
E02D17/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020147590
(22)【出願日】2020-09-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】595133286
【氏名又は名称】小宮 由伍
(74)【代理人】
【識別番号】100153501
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 貴司
(72)【発明者】
【氏名】小宮 由伍
【テーマコード(参考)】
2D049
2D050
【Fターム(参考)】
2D049EA02
2D049FB13
2D049FC02
2D050AA13
2D050CB13
(57)【要約】
【課題】 山中に存在するため池等における止水の目的で、複数のH形鋼杭を組み合わせた山留壁及びその形成方法を提供することを目的としている。
【解決手段】 本発明による山留壁9は、一対のフランジ部と該一対のフランジ部をつなぐウェブ部を有するH形鋼杭2、3を複数用い、一のH形鋼杭2を他のH形鋼杭3に略接する位置に交互に配置することにより連壁を形成した山留壁9であって、一のH形鋼杭2は、フランジ部21、22の長さが他のH形鋼杭3のウェブ部33よりも短く、ウェブ部23の長さが他のH形鋼杭3のフランジ部31、32より長く、一のH形鋼杭2のフランジ部21、22を他のH形鋼杭3のウェブ部33の近傍に配置し、連壁を形成する。
【選択図】図1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のフランジ部と該一対のフランジ部をつなぐウェブ部を有するH形鋼杭を複数用い、一のH形鋼杭を他のH形鋼杭に略接する位置に交互に配置することにより連壁を形成した山留壁であって、
前記一のH形鋼杭は、フランジ部の長さが前記他のH形鋼杭のウェブ部よりも短く、ウェブ部の長さが前記他のH形鋼杭のフランジ部より長く、
前記一のH形鋼杭のフランジ部を前記他のH形鋼杭のウェブ部の近傍に配置し連壁を形成することを特徴とする山留壁。
【請求項2】
前記他のH形鋼杭のフランジ部のウェブ部と接続されていない面の外周面に、山留壁固定用のH形鋼からなる固定鋼杭の一方のフランジ部を配置可能な空間を有し、山留壁形成方向に対して垂直方向に開口部を有する雌形形状の継手部を備え、前記継手部内に山留壁を固定するためのH形鋼からなる固定鋼杭を配置したことを特徴とする請求項1記載の山留壁。
【請求項3】
一対のフランジ部と該一対のフランジ部をつなぐウェブ部を有するH形鋼杭を複数用い、一のH形鋼杭を他のH形鋼杭に略接する位置に交互に配置することにより連壁を形成した山留壁であって、
前記他のH形鋼杭のフランジ部のウェブ部と接続されていない面の外周面に、一のH形鋼杭の一方のフランジ部を配置可能な空間を有し、山留壁形成方向に開口部を有する雌形形状の継手部を備え、前記継手部内に一のH形鋼杭の一方のフランジ部を配置することにより連壁を形成することを特徴とする山留壁。
【請求項4】
前記一のH形鋼杭及び/又は他のH形鋼杭の全部又は一部に、ウェブ部の長さがフランジ部よりも長いH形鋼杭を用いることを特徴とする請求項3記載の山留壁。
【請求項5】
前記山留壁を構成するH形鋼杭のウェブ部近傍に、山留壁を固定するためのH形鋼からなる固定鋼杭の一方のフランジ部を配置したことを特徴とする請求項3又は4記載の山留壁。
【請求項6】
前記固定鋼杭として、ウェブ部の長さがフランジ部よりも長いH形鋼杭を用いることを特徴とする請求項5記載の山留壁。
【請求項7】
フランジ部のウェブ部と接続されていない面の外周面に、固定鋼杭の他方のフランジ部を配置可能な空間を有し、山留壁形成方向に対して垂直方向に開口部を有する雌形形状の継手部を備えるH形鋼からなる補助杭を、前記固定鋼杭の他方のフランジ部が前記継手部内に挿入される位置に配置したことを特徴とする請求項5又は6記載の山留壁。
【請求項8】
重錘を打撃する方法により対象物を打設する機能を有する打設装置を用いて、一対のフランジ部と該一対のフランジ部をつなぐウェブ部を有する一のH形鋼杭と他のH形鋼杭とを、それぞれが略接する位置で交互に打設を繰り返すことにより、地中の所望の位置に山留壁を形成する方法であって、
前記一のH形鋼杭として、フランジ部の長さが前記他のH形鋼杭のウェブ部よりも短く、ウェブ部の長さが前記他のH形鋼杭のフランジ部より長いものを用い、
前記一のH形鋼杭のフランジ部を前記他のH形鋼杭のウェブ部の近傍に配置し、前記打設装置を用いて、前記一のH形鋼杭及び前記他のH形鋼杭を打設して山留壁を形成することを特徴とする山留壁形成方法。
【請求項9】
前記他のH形鋼杭として、フランジ部のウェブ部と接続されていない面の外周面に、山留壁を固定するための固定鋼杭の一方のフランジ部を配置可能な空間を有し、山留壁形成方向に対して垂直方向に開口部を有する雌形形状の継手部を備えたものを使用し、前記継手部内にH形鋼からなる固定鋼杭の一方のフランジ部を配置し打設することにより、前記山留壁を固定することを特徴とする請求項8記載の山留壁形成方法。
【請求項10】
重錘を打撃する方法により対象物を打設する機能を有する打設装置を用いて、一対のフランジ部と該一対のフランジ部をつなぐウェブ部を有する一のH形鋼杭と他のH形鋼杭とを、それぞれが略接する位置で交互に打設を繰り返すことにより、地中の所望の位置に山留壁を形成する方法であって、
前記他のH形鋼杭として、フランジ部のウェブ部と接続されていない面の外周面に、一のH形鋼杭の一方のフランジ部を配置可能な空間を有し、山留壁形成方向に開口部を有する雌形形状の継手部を備えたものを使用し、
前記継手部内に一のH形鋼杭の一方のフランジ部を配置し打設することにより、前記山留壁を形成することを特徴とする山留壁形成方法。
【請求項11】
一のH形鋼杭及び/又は他のH形鋼杭の全部又は一部にウェブ部の長さがフランジ部よりも長いH形鋼杭を用いて、前記山留壁を形成することを特徴とする請求項10記載の山留壁形成方法。
【請求項12】
山留壁を固定するためのH形鋼からなる固定鋼杭を使用し、前記山留壁を構成するH形鋼杭のウェブ部近傍に、前記固定鋼杭の一方のフランジ部を配置し打設することにより、前記山留壁を固定することを特徴とする請求項10又は11記載の山留壁形成方法。
【請求項13】
前記固定鋼として、ウェブ部の長さがフランジ部よりも長いH形鋼杭を用いて、前記山留壁を固定することを特徴とする請求項12記載の山留壁形成方法。
【請求項14】
フランジ部のウェブ部と接続されていない面の外周面に、固定鋼杭の他方のフランジ部を配置可能な空間を有し、山留壁形成方向に対して垂直方向に開口部を有する雌形形状の継手部を備えるH形鋼からなる補助杭を使用し、前記補助杭を前記固定鋼杭の他方のフランジ部が前記継手部内に挿入される位置に配置して打設することにより、前記山留壁を固定することを特徴とする請求項12又は13記載の山留壁形成方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ため池等における止水のために、複数のH形鋼杭を組み合わせた山留壁及びその形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、農業用のため池等においては、豪雨等の災害において、ため池が決壊することを防止するために、鋼矢板等が山留用壁面杭(山留壁)として用いられていた(特許文献1)。鋼矢板を用いた山留壁の形成は、通常、大型モーターによる杭の回転圧入工法、リーダーを使用したオーガーなどの大型の杭打装置を用いて、鋼矢板を圧入する工法等を利用して行われている。さらに、作業場所が広い現場においては、鋼矢板ではなく、H形鋼杭を一定間隔に配置し、親杭とした上で、その間に継手部を介して複数の横長の横矢板を嵌め込み、横矢板によりH形鋼杭間の隙間を埋めて山留壁を形成することも行われている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭64-47841
【特許文献2】特開2016-204834
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この点、平地に存在するため池等における止水対策としては、大型の杭打装置を用いて、大きく幅の厚い鋼矢板等からなる山留壁をため池の周囲に打設することで十分な止水対策を講じることが可能となるため問題となることは少ない。しかしながら、山中の奥深くにある農業用ため池等においては、そもそも現場まで工事用の車両を搬入するための道路がないことが多く、また、工事用の車両を搬入する道路があったとしても道路幅は狭く、さらに現場自体が狭いなど、山中という特殊な現場であることから、大型の杭打装置等の大型車両、工事に必要となる大型機材等が搬入できない等の理由で、山中におけるため池等においては、山留壁の設置を諦めざるを得ない現場が多くみられる。そこで、本発明者は、現場まで工事用の車両を搬入するための道路がない場合、また、道路幅が狭いような場合であっても、杭打装置自体を小型かつ重量の軽いものを用いることにより現場に杭打装置の搬入を可能にし、当該装置を用いて山留壁を設置すればよいのではないかという発想を得た。
【0005】
もっとも、山留壁に用いられる杭材には、従来は鋼矢板が使用されていたが、杭打装置自体を小さく軽い車両にすると、当該車両を用いた鋼矢板の打設では、打設力が小さいため、大きく幅の厚い鋼矢板の打設ができないという問題がある。そのため、山中のため池等においては、トレンチパイル等の小さく薄い鋼矢板を使用することも考えられるが、小型の杭打装置は、その種類によっては打設力が小さく、小さな鋼矢板であっても所望の位置に打設できない場合があった。また、小さな鋼矢板は、厚みが無い薄い鋼板からなるため、外部からの圧力には弱く、強力な山留杭には使用できないという課題もあった。
【0006】
さらに、小さな鋼矢板だけを連結した山留壁に代えて、強度の強いH形鋼杭を一定間隔に配置し、これを親杭として利用し、その間に横長の複数の横矢板を配置し、継手部を介してH形鋼杭と横矢板とを連結して一体とする山留壁を形成することも考えられているが、この場合でも、横矢板自体は木製で薄板であるが故、その強度が弱く、大雨や台風等の地盤変動により、横矢板部分から決壊してしまうという問題もあった。また、そもそもこのような横矢板工法は現場が広くないと実施できないという問題もあった。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、山中に存在するため池等における止水の目的で、複数のH形鋼杭を組み合わせた山留壁及びその形成方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するべく、本発明による山留壁は、一対のフランジ部と該一対のフランジ部をつなぐウェブ部を有するH形鋼杭を複数用い、一のH形鋼杭を他のH形鋼杭に略接する位置に交互に配置することにより連壁を形成した山留壁であって、前記一のH形鋼杭は、フランジ部の長さが前記他のH形鋼杭のウェブ部よりも短く、ウェブ部の長さが前記他のH形鋼杭のフランジ部より長く、前記一のH形鋼杭のフランジ部を前記他のH形鋼杭のウェブ部の近傍に配置し連壁を形成することを特徴とする。
【0009】
本発明による山留壁は、前記他のH形鋼杭のフランジ部のウェブ部と接続されていない面の外周面に、山留壁固定用のH形鋼からなる固定鋼杭の一方のフランジ部を配置可能な空間を有し、山留壁形成方向に対して垂直方向に開口部を有する雌形形状の継手部を備え、前記継手部内に山留壁を固定するためのH形鋼からなる固定鋼杭を配置したことを特徴とする。
【0010】
本発明による山留壁は、一対のフランジ部と該一対のフランジ部をつなぐウェブ部を有するH形鋼杭を複数用い、一のH形鋼杭を他のH形鋼杭に略接する位置に交互に配置することにより連壁を形成した山留壁であって、前記他のH形鋼杭のフランジ部のウェブ部と接続されていない面の外周面に、一のH形鋼杭の一方のフランジ部を配置可能な空間を有し、山留壁形成方向に開口部を有する雌形形状の継手部を備え、前記継手部内に一のH形鋼杭の一方のフランジ部を配置することにより連壁を形成することを特徴とする。
【0011】
本発明による山留壁は、前記一のH形鋼杭及び/又は他のH形鋼杭の全部又は一部に、ウェブ部の長さがフランジ部よりも長いH形鋼杭を用いることを特徴とする。
【0012】
本発明による山留壁は、前記山留壁を構成するH形鋼杭のウェブ部近傍に、山留壁を固定するためのH形鋼からなる固定鋼杭の一方のフランジ部を配置したことを特徴とする。
【0013】
本発明による山留壁は、前記固定鋼杭として、ウェブ部の長さがフランジ部よりも長いH形鋼杭を用いることを特徴とする。
【0014】
本発明による山留壁は、フランジ部のウェブ部と接続されていない面の外周面に、固定鋼杭の他方のフランジ部を配置可能な空間を有し、山留壁形成方向に対して垂直方向に開口部を有する雌形形状の継手部を備えるH形鋼からなる補助杭を、前記固定鋼杭の他方のフランジ部が前記継手部内に挿入される位置に配置したことを特徴とする。
【0015】
本発明による山留壁形成方法は、重錘を打撃する方法により対象物を打設する機能を有する打設装置を用いて、一対のフランジ部と該一対のフランジ部をつなぐウェブ部を有する一のH形鋼杭と他のH形鋼杭とを、それぞれが略接する位置で交互に打設を繰り返すことにより、地中の所望の位置に山留壁を形成する方法であって、前記一のH形鋼杭として、フランジ部の長さが前記他のH形鋼杭のウェブ部よりも短く、ウェブ部の長さが前記他のH形鋼杭のフランジ部より長いものを用い、前記一のH形鋼杭のフランジ部を前記他のH形鋼杭のウェブ部の近傍に配置し、前記打設装置を用いて、前記一のH形鋼杭及び前記他のH形鋼杭を打設して山留壁を形成することを特徴とする。
【0016】
本発明による山留壁形成方法は、前記他のH形鋼杭として、フランジ部のウェブ部と接続されていない面の外周面に、山留壁を固定するための固定鋼杭の一方のフランジ部を配置可能な空間を有し、山留壁形成方向に対して垂直方向に開口部を有する雌形形状の継手部を備えたものを使用し、前記継手部内にH形鋼からなる固定鋼杭の一方のフランジ部を配置し打設することにより、前記山留壁を固定することを特徴とする。
【0017】
本発明による山留壁形成方法は、重錘を打撃する方法により対象物を打設する機能を有する打設装置を用いて、一対のフランジ部と該一対のフランジ部をつなぐウェブ部を有する一のH形鋼杭と他のH形鋼杭とを、それぞれが略接する位置で交互に打設を繰り返すことにより、地中の所望の位置に山留壁を形成する方法であって、前記他のH形鋼杭として、フランジ部のウェブ部と接続されていない面の外周面に、一のH形鋼杭の一方のフランジ部を配置可能な空間を有し、山留壁形成方向に開口部を有する雌形形状の継手部を備えたものを使用し、前記継手部内に一のH形鋼杭の一方のフランジ部を配置し打設することにより、前記山留壁を形成することを特徴とする。
【0018】
本発明による山留壁形成方法は、一のH形鋼杭及び/又は他のH形鋼杭の全部又は一部にウェブ部の長さがフランジ部よりも長いH形鋼杭を用いて、前記山留壁を形成することを特徴とする。
【0019】
本発明による山留壁形成方法は、山留壁を固定するためのH形鋼からなる固定鋼杭を使用し、前記山留壁を構成するH形鋼杭のウェブ部近傍に、前記固定鋼杭の一方のフランジ部を配置し打設することにより、前記山留壁を固定することを特徴とする。
【0020】
本発明による山留壁形成方法は、前記固定鋼として、ウェブ部の長さがフランジ部よりも長いH形鋼杭を用いて、前記山留壁を固定することを特徴とする。
【0021】
本発明による山留壁形成方法は、フランジ部のウェブ部と接続されていない面の外周面に、固定鋼杭の他方のフランジ部を配置可能な空間を有し、山留壁形成方向に対して垂直方向に開口部を有する雌形形状の継手部を備えるH形鋼からなる補助杭を使用し、前記補助杭を前記固定鋼杭の他方のフランジ部が前記継手部内に挿入される位置に配置して打設することにより、前記山留壁を固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、山留壁として使用される複数のH形鋼杭は、いずれもトレンチパイル等の小さい鋼矢板と異なり、四方に厚みがあり外部からの圧力に強い構造のものであるから、H形鋼杭を複数用いてそれぞれを略接させて交互に打設することにより、地盤変動や外圧等に対して影響を受けにくい強固な山留壁を形成することが可能となる。その上、連壁を構成する一のH形鋼として、フランジ部の長さが他のH形鋼杭のウェブ部よりも短く、ウェブ部の長さが他のH形鋼杭のフランジ部より長いものを用い、それぞれを近接した位置に配置するだけで、連壁を構成する複数のH形鋼杭について別途連結手段等を用いることなく、強度の十分な連壁を構成することが可能となる。
【0023】
前述のH形鋼杭の連壁からなる山留壁を形成する場合において、他のH形鋼杭に固定用の継手部を設け、継手部を介してH形鋼からなる固定鋼杭で垂直方向から固定することにより、山留壁の地盤への設置状態をさらに補強することができ、地盤変動や外圧等に対して影響を受けにくいより強固な山留壁を形成することが可能となる。
【0024】
他のH形鋼杭のフランジ部に山留壁を構成する一のH形鋼杭接続用の継手部を設け、一のH形鋼杭のフランジ部を同継手部内に挿入し、打設を繰り返して連壁を構成することにより、継手部を介して確実に接続されたH形鋼のみからなる連壁を容易に構成することができ、強度バランスがよい山留壁を構成でき、また、このような構成では、特殊な形状のH形鋼杭を用いる必要もなく、費用節約や工程簡略化も可能となる。
【0025】
山留壁を形成するH形鋼杭の全部又は一部に、ウェブ部の長さがフランジ部よりも長いものを用いることで、山留壁を形成するために使用するH形鋼杭の必要数を減らすことが可能となり、接続箇所が少なくなるなど、より安定した山留壁を形成することができる。また、H形鋼からなる固定鋼杭で垂直方向から山留壁を固定することにより、山留壁の地盤への設置状態をさらに補強することができ、地盤変動や外圧等に対して影響を受けにくいより強固な山留壁を形成することが可能となる。さらに、固定鋼杭としてウェブ部の長さがフランジ部よりも長いH形鋼杭を使用したり、固定用のH形鋼杭をさらに補助する補助杭を導入すれば、山留壁を固定する力がより強化される。
【0026】
本発明の方法によれば、強力な打撃力を有する重錘を打撃する方法により対象物を打設する機能を有する打設装置を使用することにより、打設装置が小さく軽くても性能が低下することなく、かつ、簡易な機構となることから、大型装置では作業できない現場へ容易に搬入でき、山中のため池等においても山留壁を打設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の複数のH形鋼杭からなる山留壁を説明する斜視図
図2】本発明の複数のH形鋼杭からなる山留壁に固定鋼杭を配置して固定した状態を説明する上面図
図3】本発明の複数のH形鋼杭からなる山留壁に固定鋼杭を配置して固定した状態の変形例を説明する上面図
図4】本発明の複数のH形鋼杭からなる山留壁に固定鋼杭を配置して固定した状態の変形例を説明する上面図
図5】本発明の複数のH形鋼杭からなる山留壁の他の例を説明する斜視図
図6】本発明の他の例において、複数のH形鋼杭からなる山留壁に固定鋼杭を配置して固定した状態を説明する上面図
図7】本発明の山留壁を構成するH形鋼杭の打設に用いる杭打車両の一例を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、本発明による山留壁の一実施形態を上面方向からの斜視図によって説明するものであり、本発明による山留壁9は、一対のフランジ部と該一対のフランジ部をつなぐウェブ部を有するH形鋼杭2、3を複数用い、一のH形鋼杭2を他のH形鋼杭3に略接する位置に交互に配置することにより連壁を形成した山留壁9であって、一のH形鋼杭2は、フランジ部21、22の長さが他のH形鋼杭3のウェブ部33よりも短く、ウェブ部23の長さが他のH形鋼杭3のフランジ部31、32より長く、一のH形鋼杭2のフランジ部21、22を他のH形鋼杭3のウェブ部33の近傍に配置し、連壁を形成する。
【0029】
H形鋼杭2、3は、一対のフランジ部(21、22)(31、32)と該一対のフランジ部をつなぐウェブ部(23)(33)を有するもので、市販のものを使用することができる。もっとも、本発明では、複数のH形鋼杭2、3を組み合わせて山留壁9を構成するものであるところ、組み合わされるH形鋼杭は、大きさや形状の異なるもの(たとえば、一のH形鋼杭2としては、フランジ部×ウェブ部が100ミリ×200ミリのもの、他のH形鋼杭3としては、125ミリ×125ミリのもの等)を使用することに特徴がある。
【0030】
具体的には、一のH形鋼杭2としては、フランジ部21、22の長さが他のH形鋼杭3のウェブ部33よりも短く、ウェブ部23の長さが他のH形鋼杭3のフランジ部31、32より長いものを用いる。
【0031】
このように一のH形鋼杭2のフランジ部21、22の長さを他のH形鋼杭のウェブ部33の長さよりも短いものを用いることにより、他のH形鋼杭3のウェブ部33の近傍に、一のH形鋼杭2のフランジ部21、22を配置することが可能となる。すなわち、図1に示されるように、一のH形鋼杭2のフランジ部21、22が他のH形鋼杭3の内部に入り込んだような配置とすることが可能となり、親杭となるH形鋼杭の間を横矢板等で接続して山留壁として従来の構造とは異なり、一のH形鋼杭2のウェブ部23が従来の横矢板の役割を果たすことになり、木製薄型の横矢板と対比して一のH形鋼杭2のウェブ部のほうが、強度が高く、山留壁全体の強度が増す。さらに横矢板に代わり、H形鋼杭を用いたことにより、他のH形鋼杭3のフランジ部31、32間に一のH形鋼杭のフランジ部21が入り込んだ形となっていることから、山留壁面に対する土砂等の圧力に対して、一のH形鋼杭のフランジ部による圧力の抑止の効果だけでなく、他のH形鋼杭3によって一のH形鋼杭2のフランジ部21が固定されることになり、一のH形鋼杭2の固定がさらに強化され、これにより極めて強固な山留壁を構成することが可能となる。
【0032】
また、一のH形鋼杭2のフランジ部21の長さを他のH形鋼杭のウェブ部33の長さに近づければ近づけるほど、互いに近接する一のH形鋼杭2と他のH形鋼杭3間の隙間がなくなり、一のH形鋼杭2と他のH形鋼杭3とを別の接続手段を用いることなく、それぞれの位置で自然と固定することができる。そのような意味では、一のH形鋼杭2のフランジ部21の長さが他のH形鋼杭3のウェブ部33の長さと略同寸とすることがより好ましい。さらに、一のH形鋼杭2と他のH形鋼杭3を近接する位置に配置した上、それぞれの上部を溶接等で固定すれば、より強固に山留壁が固定される。
【0033】
他方、一のH形鋼杭2のウェブ部23の長さを他のH形鋼杭3のフランジ部31より長いものを用いることにより、他のH形鋼杭3のフランジ部31間が近付き、他のH形鋼杭3間で接触することを防止しながら、ウェブ部23により横矢板に代わる壁を構成することができる。なお、一のH形鋼杭2のウェブ部23の長さについては特に制限はないが、他のH形鋼杭3のフランジ部31の長さの5倍を超えると、配置のバランスが悪くなり、壁としての機能が低下するおそれがあるため、5倍程度までであることがより好ましい。
【0034】
次に、本発明の山留壁9を形成する方法を説明すると、たとえば、図7に示されるような重錘を打撃する方法により対象物を打設する機能を有する打設装置1を用いて、
他のH形鋼杭3を建て込み、地中の所望の位置まで埋設し、他のH形鋼杭3に近接する位置に一のH形鋼杭2を打設し、さらに一のH形鋼杭2に近接する位置で既に打設した他のH形鋼杭3とは反対側の位置に別の他のH形鋼杭3を打設し、他のH形鋼杭3と一のH形鋼杭2との交互の打設を繰り返し、地中の所望の位置に複数のH形鋼杭を打設して山留壁9を形成する。より具体的には、以下の工程で実施する。
【0035】
まず、複数のH形鋼杭2、3からなる山留壁9を埋設しようとする位置の地面上に目印をつけ、その位置決めした場所(埋設予定位置)に、人力又はミニショベル等を用いて溝を掘る。また、山留壁9を埋設しようとする位置の地盤が強固な場合、埋設予定位置の地面に対して先行掘を行う。
【0036】
先行堀とは、山留壁9を形成する場所の地中を、オーガー等を用いて予め掘削した後、オーガーを引き抜くことで地中に穴をあけ、又は土を戻し、場所をずらして同じ作業を繰り返すことによって、地中に多数の穴をあけ山留壁9を埋設する位置全体の地中の土の状態を埋設前に柔らかくしておく工法をいうが、その方法については特に問わない。たとえば、回転駆動機構を有する建設機械のミニショベルの先にオーガーを取り付け、オーガーを回転駆動機構で回転させることで、オーガーを地中に埋設し、埋設後、逆回転させることで引き抜くという作業を繰り返すことで、地中の土を柔らかくすることができる。ここでは一本のオーガーの埋設と引き抜きを繰り返して先行掘する例を説明したが、複数のオーガーを用いて効率的に先行掘を行うこともでき、先行掘に用いるオーガーの形状についても適宜変更することが可能である。この先行掘に用いる装置については、打設装置と兼用してもよく、現場の状態により、先行掘を行うか否かも適宜選択することができる。
【0037】
次に、重錘を打撃する方法により対象物を打設する機能を有する打設装置1を埋設予定位置付近の地上に配置する。山中のため池等の狭い現場においては、山留壁9を設置するために大型の動力装置を用いることができず、他方で、小型の動力装置を用いると十分に打撃力が確保できないため、狭い場所でかつ強固な地盤に対して山留壁9を埋設する場合には、小型であっても打撃力の強い重錘を打撃する方法により対象物を打設する機能を有する打設装置を用いることが必要となる。
【0038】
打設装置1としては、たとえば、図7に示されるとおり、関節または伸縮機構により先端位置を三次元方向に移動可能なブーム11と地盤上に打設装置を固定するためのアウトリガー12を有するミニクレーンからなり、ブーム11の先端位置から垂下された位置にリーダーを有さず、鋼鉄製の重錘107を備えた打設具10を有する装置を用いる。かかる装置であれば、小型かつ軽量であり、大型車両が侵入できない場所であっても移動可能である。なお、打設装置1は山留壁9を構成するH形鋼杭を吊り上げ、所望の位置に設置する際にも用いることができる。
【0039】
図7に示される例では、打設装置1はミニクレーンに重錘107を接続した装置であるが、穴掘建柱車やミニショベル等であってもよいし、建設車両ではなく現場で組立・設置可能なやぐら形状の固定式の打設装置であってもよく、重錘が接続可能な装置であればよい。車両が侵入できない場所や仮設モノレールすら設置できない場所においては、特に現場で組み立てや設置可能な打設装置を用いることがより望ましい。
【0040】
打設具10は、作業現場における作業半径を狭める走行レールのついたアタッチメントであるリーダーを有しておらず、図7で示される例では、直接、ブーム11の先端位置に打設具10が接続される。打設具10は、ブーム11の先端位置に打設具接続装置101が接続され、当該接続装置101内に鉄棒102が挿入され、ワイヤー103が接続装置101に接続され、重錘107を上下方向に昇降させるための昇降装置106、モンケン等の鋼鉄製の重錘107を吊った構成からなり、その下に、緩衝部材17、保護アタッチメント18が順次接続される。打設具10は、上記のような構成に限定されるものではなく、埋設する山留壁9に加重をかけることが可能な重錘を地面に対して上下方向に昇降させ、山留壁9を打撃することで埋設し得る構成であればその構成は問わない。また、重錘107については、鋼鉄製のモンケン等が想定されるがこれに限定されるものではない。昇降装置106には、人力で重錘107をフック104から取り外すためのロープ105がフック104に力が作用するような態様で設けられている。
【0041】
次に埋設予定位置付近において、打設装置1又は打設装置1とは別の装置等を使用し、打設対象物である他のH形鋼杭3を吊り上げ、埋設予定位置に移動させ、地面に建て込む。他のH形鋼杭3の吊り上げは、打設装置1のフック104等を用いて行うことができる。
【0042】
他のH形鋼杭3を埋設予定位置に建て込んだ後、打設装置1のブーム11を操作し、他のH形鋼杭3の上部に接触するように移動させる。緩衝部材17及び保護アタッチメン18が他のH形鋼杭3の上部の中心に位置し、接触していることを確認した後、打設装置1を操作してワイヤー103を巻き上げることにより重錘107を引き上げた後、作業者が人力でロープ105を下方に引っ張ることにより、重錘107が昇降装置106のフック104から外れ、重錘107が下方に落下し、他のH形鋼杭3に衝撃を与えて打設する。この作業を繰り返し、重錘107を上下に何度も昇降させることで他のH形鋼杭3に上方から打撃力を繰り返し与え、他のH形鋼杭3を地中の所望の位置まで埋め込む。
【0043】
他のH形鋼杭3の地中への埋設が完了すれば、再び、図7に示すような重錘を打撃する方法により対象物を打設する機能を有する打設装置1を用いて、図1に示されるように、一のH形鋼杭2を他のH形鋼杭3が近接する位置に建て込み、一のH形鋼杭2を打設する。
【0044】
具体的には、他のH形鋼杭3の打設と同様に、打設装置1又は打設装置1とは別の装置等を使用し一のH形鋼杭2を吊り上げ、一のH形鋼杭2を埋設予定位置に移動させる。一のH形鋼杭2の埋設位置は、図1に示されるように、既に打設されている他のH形鋼杭3のフランジ部31、32とウェブ部33に囲まれた領域に、一のH形鋼杭2のフランジ部21がすっぽりと収まるような形で配置される位置とし、当該位置に調整した上、一のH形鋼杭2を地面に建て込む。一のH形鋼杭を建て込んだ後、他のH形鋼杭3の打設と同様の方法により、重錘107を上下に何度も昇降させ上方から打撃力を繰り返し与え、一のH形鋼杭2を地中の所望の位置まで埋め込む。その後、一のH形鋼杭2と他のH形鋼杭3の上部を溶接等で固定することもでき、この場合にはより強固な接続となる。
【0045】
一のH形鋼杭2の地中への埋設が完了すれば、打設装置1等を再び用いて、既に打設されている一のH形鋼杭2のフランジ部21側と反対側のフランジ部22に近接する位置に、別の他のH形鋼杭3を配置し、これを建て込み打設する。
【0046】
具体的には、これまでの打設と同様に、打設装置1又は打設装置1とは別の装置等を使用し、別の他のH形鋼杭3を吊り上げ、他のH形鋼杭3を埋設予定位置に移動させる。他のH形鋼杭3の打設位置は、図1に示されるように、既に打設されている一のH形鋼杭2のフランジ部21側と反対側のフランジ部22が、新たに打設する他のH形鋼杭3のウェブ部33とフランジ部31、32で囲まれた領域にすっぽり収まる位置となるように他のH形鋼杭3を配置し、当該位置において、他のH形鋼杭3を地面に建て込む。他のH形鋼杭3を建て込んだ後、これまでと同様の方法により重錘107を上下に何度も昇降させ上方から打撃力を繰り返し与え、他のH形鋼杭3を地中の所望の位置まで埋め込む。その後、一のH形鋼杭2と他のH形鋼杭3の上部を溶接等で固定することもできる。
【0047】
さらに、同様の方法で、直前で打設した他のH形鋼杭3に近接し、他のH形鋼杭3のウェブ部33とフランジ部31、32で囲まれた領域に、さらに別の一のH形鋼杭2のフランジ部21がすっぽりと収まる位置で打設するなどして、他のH形鋼杭3と一のH形鋼杭2との交互の打設を繰り返すことにより、幅の広い山留壁9を形成する。
【0048】
上記の実施形態では、他のH形鋼杭3を打設した後、一のH形鋼杭2を打設し、さらに他のH形鋼杭3を打設する例で説明したが、一のH形鋼杭2を先に打設した上、他のH形鋼杭3を一のH形鋼杭2の近接した位置に打設し、さらに一のH形鋼杭2を打設してもよい。本発明では、大きさや形状の異なる一のH形鋼杭2と他のH形鋼杭3を交互に打設することに意味があるのであり、打設の順番は問わない。
【0049】
前述の実施形態では、打設装置1を用いた複数のH形鋼杭の打設において、打設装置1を操作してワイヤー103を巻き上げることにより重錘107を引き上げた後、作業者が人力でロープ105を下方に引っ張ることにより、重錘107が昇降装置106のフック104から外れ、重錘107が下方に落下し、H形鋼杭や鋼管杭に衝撃を与える方法で打設しているが、昇降装置106に設けられているロープ105を打設装置1のアウトリガー12や打設装置の別の箇所、現場にある他の装置その他地面等の固定可能な位置に、周知な技術を用いて固定することにより、人力でロープ105を引っ張ることなく、自動的に重錘107を上下に何度も昇降させ、H形鋼杭や鋼管杭に上方から打撃力を繰り返し与え、H形鋼杭や鋼管杭を地中の所望の位置まで埋め込むこともできる。
【0050】
打設装置1を使用して複数のH形鋼杭を打設するに際して、H形鋼杭を保護するために、その上端部に金属製の保護アタッチメント18を接続して打設することができるが、保護アタッチメント18の形状は、特に問わず既存のものを用いればよい。また、 H形鋼杭を打設するに際して、重錘107と保護アタッチメント18の間に緩衝部材17を介在させて打設することもできる。保護アタッチメント18の上部に重錘107が衝突する度に保護アタッチメント18の鉄材と重錘107の鉄材とが激しく衝突し、大きな騒音、振動が発生することになるが、緩衝部材17を設けることにより、発生する大きな騒音、振動を小さくし、かつ、保護アタッチメント及び杭材を保護することが可能となる。緩衝部材17は、たとえば、外周にワイヤーロープを巻きつけたドーナツ形状からなり、芯材として太めのワイヤーロープを円形にした上で鉛等の材料で結束し、その外周に板状のゴムを巻き付け、さらに、その外周にワイヤーロープを巻きつけた形状のもの等が考えられるが、この構成に限定されるものではない。
【0051】
山留壁として使用される他のH形鋼杭3については、図1に示される例では、一対のフランジ部31、32と該一対のフランジ部をつなぐウェブ部33とからなるものであるが、山留壁9を上面から見た図2で示されるとおり、他のH形鋼杭3のフランジ部31のウェブ部33と接続されていない面の外周面に、一対のフランジ部41、42と該一対のフランジ部をつなぐウェブ部43とを有するH形鋼からなる固定鋼の一方のフランジ部41を配置可能な空間を有する雌形形状の固定用の継手部34を設けたものを使用すれば、地中の所望の位置に山留壁9を形成した後、H形鋼からなる固定鋼杭4の一方のフランジ部41を既に地中に打設した他のH形鋼杭3の継手部34内に配置し、固定鋼杭4を地中に打設することにより、山留壁9の地中への埋設を補強し、より強固に山留壁9を地中に固定することが可能となる。
【0052】
他のH形鋼杭3として、たとえば、図3に示されるように、固定用の継手部34を両方のフランジ部31、32に設けたものを用い、2つの継手部内のそれぞれに固定鋼杭4のフランジ部41を配置して、2つの固定鋼杭4で固定したり、図4に示されるように、山留壁9を構成する複数の他のH形鋼杭3の全部又は一部のフランジ部に適宜継手部、たとえば、継手部の設ける向きを互い違いにすることにより、さらに山留壁9を強固に固定することが可能となる。
【0053】
他のH形鋼杭3に設けられる継手部34は、図2乃至4に示されるように、他のH形鋼杭3の一方のフランジ部31のウェブ部33と接続されていない面の外周面の長手方向に亘って、山留壁9を固定するためのH形鋼からなる固定鋼杭4の一方のフランジ部41を配置可能な空間342を有し、山留壁形成方向に垂直方向に開口部を有する雌形形状からなる。すなわち、継手部34は、他のH形鋼杭3上面視で、他のH形鋼杭3のフランジ部31の端部311から突出する形でL字型と逆L字型からなる部材が組み合わされ、他のH形鋼杭3の長手方向に亘って設けられており、中央部341及び他のH形鋼杭の長手方向の上面側及び下面側がそれぞれ開口し、L字型と逆L字型から構成される内部には、固定鋼杭4の一方のフランジ部41が全て収まるような空間342が設けられ、かつ、中央部341の開口幅は固定鋼杭4のウェブ部43の幅よりも広い。かかる構成により、山留壁形成方法に対して垂直方向に開口部が構成されることになり、該開口部に対して固定鋼杭4が挿入されることで、山留壁形成方向に対して最大限に固定することが可能となる。
【0054】
固定鋼杭4は、他のH形鋼杭3と同様に、一対のフランジ部41、42と該一対のフランジ部をつなぐウェブ部43とを有するH形鋼の杭からなるものであるが、他のH形鋼杭3に設けられた継手部34内にフランジ部41が挿入されることから、固定鋼抗4のフランジ部41の長さは、山留壁9を形成する他のH形鋼杭3のフランジ部31よりも小さいものが使用される。また、固定鋼杭のウェブ部とフランジ部の長さ割合は適宜変更することもできる。
【0055】
固定鋼杭4の地中への打設については、これまでの打設と同様に、重錘を打撃する方法により対象物を打設する機能を有する打設装置1を埋設予定位置付近の地上に配置し、打設装置1又は打設装置1とは別の装置等を使用し、固定鋼杭4を吊り上げ、この固定鋼杭4の一方のフランジ部41が、既に打設されている他のH形鋼杭3の継手部34内の空間342に配置できるように移動し、位置決めした上、固定鋼杭4を地面に建て込んだ後、打設具10の重錘107を上下に何度も昇降させ、上方から打撃力を繰り返し与え、固定鋼杭4のフランジ部41を他のH形鋼杭3の継手部34の下方に埋設していき、固定鋼杭4を地中の所望の位置まで埋め込む。その後、他のH形鋼杭3の継手部34又は他のH形鋼杭3と固定鋼杭4とを溶接等の方法によりさらに固定する。なお、固定鋼杭を地中のどこまで埋設するかは任意である。
【0056】
以上のとおり、山留壁9の一部を構成する他のH形鋼杭3に、継手部34を介してH形鋼からなる固定鋼杭4を配置することにより、強固な山留壁を形成することができる。
【0057】
ついで本発明の他の実施形態について説明する。
【0058】
図5は、本発明による他の山留壁の一実施形態を斜視図によって説明するものであり、本発明による他の山留壁は、一対のフランジ部と該一対のフランジ部をつなぐウェブ部を有するH形鋼杭5、6を複数用い、他のH形鋼杭5を一のH形鋼杭6に略接する位置に交互に配置することにより連壁を形成した山留壁であって、他のH形鋼杭5のフランジ部51、52のウェブ部53と接続されていない面の外周面に、一のH形鋼杭6のフランジ部61、62を配置可能な空間542を有し、山留壁9形成方向に開口部を有する雌形形状の継手部54を備え、一のH形鋼杭6の一方のフランジ部61、62を他のH形鋼杭5の継手部54内に配置し、連壁を形成する。
【0059】
H形鋼杭5、6は、一対のフランジ部(51、52)(61、62)と該一対のフランジ部をつなぐウェブ部(53)(63)を有するもので、市販のものを使用することができる。もっとも、本実施の形態では、複数のH形鋼杭5、6を組み合わせて山留壁9を構成するものであるところ、組み合わされるH形鋼杭は、大きさの異なるものを使用することに特徴がある。たとえば、他のH形鋼杭5としては、フランジ部×ウェブ部が125ミリ×125ミリのもの、一のH形鋼杭6としては、100ミリ×100ミリのもの等)を使用したり、他のH形鋼杭5としては、フランジ部×ウェブ部が125ミリ×250ミリのもの、一のH形鋼杭6としては、100ミリ×200ミリのもの等、図5に示されるように、ウェブ部の長さがフランジ部よりも長い非対称型のH形鋼を使用することもできる。
【0060】
山留壁を構成するH形鋼杭、すなわち、一のH形鋼杭や他のH形鋼杭の全部又は一部に、前述のようなウェブ部の長さがフランジ部よりも長いH形鋼杭を用いれば、フランジ部でしっかり固定しつつ、ウェブ部の長さが長くなればなるほど、山留壁の壁形成方向に使用するH形鋼杭の数を減らすことも可能となり、より安定した山留壁を形成することができる。このようなH形鋼としては、たとえば、フランジ部×ウェブ部が100ミリ×200ミリ、125ミリ×250ミリ、150ミリ×300ミリ等のサイズのもの等を使用することができる。
【0061】
具体的には、他のH形鋼杭5のフランジ部51のウェブ部53と接続されていない面の外周面には、一のH形鋼杭6のフランジ部61、62を配置可能な空間542を有し、山留壁9の形成方向に開口部を有する雌形形状の継手部54を備える。他方、一のH形鋼杭6としては、他のH形鋼杭5と同様に、フランジ部61、62と該一対のフランジ部をつなぐウェブ部63とを有するH形鋼の杭からなるものであるが、他のH形鋼杭5に設けられた継手部54内にフランジ部61が挿入されることから、一のH形鋼抗6のフランジ部61の長さは、山留壁9を形成する他のH形鋼杭5のフランジ部51の長さよりも小さいものを用いる。
【0062】
他のH形鋼杭5に設けられる継手部54は、図5に示されるように、一方のフランジ部51のウェブ部53と接続されていない面の外周面の長手方向に亘って、山留壁9を形成する一のH形鋼杭6の一方のフランジ部を配置可能な空間542を有し、山留壁形成方向に開口部を有する雌形形状からなる。すなわち、継手部54は、他のH形鋼杭5上面視で、フランジ部51の端部511から突出する形でL字型と逆L字型からなる部材が組み合わされ、他のH形鋼杭5の長手方向に亘って設けられており、中央部541及び他のH形鋼杭の長手方向の上面側及び下面側がそれぞれ開口し、L字型と逆L字型から構成される内部には、一のH形鋼杭6の一方のフランジ部が全て収まるような空間542が設けられ、かつ、中央部541の開口幅は一のH形鋼杭6のウェブ部63の幅よりも広い。かかる構成により、山留壁形成方法に対して開口部が構成されることになり、該開口部に対して一のH形鋼杭6が挿入されることで、他のH形鋼杭5と一のH形鋼杭6が継手部54を介して連結された強固に接続された山留壁9を構成することが可能となる。
【0063】
次に、本発明の他の実施形態の山留壁を構成する方法を説明すると、たとえば、図7に示されるような重錘を打撃する方法により対象物を打設する機能を有する打設装置1を用いて、前述の形状の他のH形鋼杭5を建て込み、地中の所望の位置まで埋設し、他のH形鋼杭5に略接する位置に前述の形状の一のH形鋼杭6を打設し、さらに一のH形鋼杭6に略接する位置で他のH形鋼杭5とは反対側の位置に別の他のH形鋼杭5を打設し、この他のH形鋼杭5と一のH形鋼杭6との交互の打設を繰り返し、地中の所望の位置に複数のH形鋼杭を組み合わせて山留壁9を形成する。
【0064】
具体的には、まず、H形鋼杭5、6からなる山留壁9を埋設しようとする位置の地面上に目印をつけ、その位置決めした場所(埋設予定位置)に、人力又はミニショベル等を用いて溝を掘る。また、山留壁9を埋設しようとする位置の地盤が強固な場合、埋設予定位置の地面に対して、前述のような方法で先行掘を行う。
【0065】
次に、重錘を打撃する方法により対象物を打設する機能を有する図7に示されるような打設装置1を埋設予定位置付近の地上に配置し、打設装置1又は打設装置1とは別の装置等を使用し、図5に示されるような継手部54を2か所に有する他のH形鋼杭5を吊り上げ、他のH形鋼杭5を埋設予定位置に移動させ、地面に建て込む。他のH形鋼杭5を埋設予定位置に建て込んだ後、打設装置1のブーム11を操作し、他のH形鋼杭5の上部に接触するように移動させる。緩衝部材17及び保護アタッチメン18が他のH形鋼杭5の上部の中心に位置し、接触していることを確認した後、打設装置1を操作してワイヤー103を巻き上げることにより重錘107を引き上げた後、作業者が人力でロープ105を下方に引っ張ることにより、重錘107が昇降装置106のフック104から外れ、重錘107が下方に落下し、他のH形鋼杭5に衝撃を与え打設する。この作業を繰り返し、重錘107を上下に何度も昇降させることで他のH形鋼杭5に上方から打撃力を繰り返し与え、他のH形鋼杭5を地中の所望の位置まで埋め込む。なお、前述のとおりロープ105を固定する方法で打設してもよい。
【0066】
継手部54を有する他のH形鋼杭5の埋設が完了すれば、打設装置1等で一のH形鋼杭6を吊り上げ、この一のH形鋼杭6の一方のフランジ部61が、既に打設されている他のH形鋼杭5の外周面に設けられた継手部54内の空間に上方から挿入することで配置できるように移動し、位置決めした上、重錘を打撃する方法により対象物を打設する機能を有する打設装置1を用いて、一のH形鋼杭6を地面に建て込み、重錘107を上下に何度も昇降させ、上方から打撃力を繰り返し与え、一のH形鋼杭6のフランジ部61を継手部54の下方に埋設していき、一のH形鋼杭6を地中の所望の位置まで埋め込む。その後、他のH形鋼杭5の外周面又は継手部54と一のH形鋼杭6を溶接等の方法で固定する。
【0067】
一のH形鋼杭6の埋設が完了すれば、さらに打設装置1を再び用いて、別の他のH形鋼杭5の継手部54を、一のH形鋼杭6の既に打設した他のH形鋼杭5の継手部54内の空間に挿入されていないもう一方のフランジ部62に対して上方から挿入することができるように移動し、位置決めした上、他のH形鋼杭5を地面に建て込み、重錘107を上下に何度も昇降させ、上方から打撃力を繰り返し与え、他のH形鋼杭5の継手部54の空間を一のH形鋼杭6のフランジ部62の下方に埋設していき、他のH形鋼杭5を地中の所望の位置まで埋め込む。その後、前述したとおり溶接等により固定する。
【0068】
この一のH形鋼杭6と他のH形鋼杭5との交互の打設を同様の方法によって繰り返すことにより、幅の広い山留壁9を形成する。前述の例では他のH形鋼杭5を打設した後、一のH形鋼杭6、さらに別の他のH形鋼杭5を打設したが、一のH形鋼杭6を先に打設した上、他のH形鋼杭5を一のH形鋼杭6の近接した位置に打設し、その後、打設された他のH形鋼杭5の一のH形鋼杭6と反対側で近接する位置に一のH形鋼杭6を打設してもよい。また、それぞれの打設方法はこれまでと同様の方法で行う。
【0069】
さらに、山留壁を形成するに際して、山留壁を固定するためのH形鋼からなる固定鋼杭を用い、山留壁として使用されるH形鋼杭のウェブ部近傍にH形鋼からなる固定鋼杭の一方のフランジ部を配置することで、山留壁9の地中への埋設を補強し、より強固に山留壁9を地中に固定することが可能となる。
【0070】
たとえば、図6に示されるように、H形鋼杭5のウェブ部53近傍に、H形鋼からなる固定鋼杭7が配置される。固定鋼杭7については、ウェブ部の長さがフランジ部よりも長いH形鋼杭を用いるとより固定が強力になるため好ましい。
【0071】
固定鋼杭7は、H形鋼杭5、6と同様に、一対のフランジ部71、72と該一対のフランジ部をつなぐウェブ部73とを有するH形鋼の杭からなるものであるが、他のH形鋼杭5の近傍に固定鋼杭7を配置する場合には、ウェブ部51、52とフランジ部53に囲まれた領域内にフランジ部71が挿入されることから、固定鋼抗7のフランジ部71の長さは、山留壁9を形成するH形鋼杭5のウェブ部53よりも小さいものが使用される。また、H形鋼杭6の近傍に固定鋼杭7を配置する場合には、H形鋼杭6のフランジ部を収納している継手部54の間に配置されることになるため、その幅以下のものが使用される。
【0072】
さらに、特に図示しないが図3図4と同様に、山留壁9を形成するH形鋼杭のウェブ部の両側に固定鋼杭7を設けたり、山留壁9を構成する複数のH形鋼杭のウェブ部の全部又は一部に、互い違いの向きで固定鋼杭7を複数設ければ、さらに山留壁9を強固に固定することが可能となる。
【0073】
固定鋼杭7の地中への打設については、これまでの打設と同様に、たとえば、重錘を打撃する方法により対象物を打設する機能を有する打設装置1を埋設予定位置付近の地上に配置し、打設装置1又は打設装置1とは別の装置等を使用し、H形鋼からなる固定鋼杭7を吊り上げ、この固定鋼杭7の一方のフランジ部71を、既に打設されている他のH形鋼杭5のウェブ部53とフランジ部51、52で囲まれた領域内に配置できるように移動し、位置決めした上、固定鋼杭7を地面に建て込んだ後、打設具10の重錘107を上下に何度も昇降させ、上方から打撃力を繰り返し与え、固定鋼杭7を地中の所望の位置まで埋め込む。その後、一のH形鋼杭5のウェブ部53と固定鋼杭7とを溶接等の方法によりさらに固定することもできる。上記は、固定鋼杭7を他のH形鋼杭5のウェブ部の近傍に配置する例で説明したが、一のH形鋼杭6の近傍にも配置することができる。
【0074】
さらに、フランジ部のウェブ部と接続されていない面の外周面に、固定鋼杭のフランジ部を配置可能な空間を有し、山留壁形成方向に対して垂直方向に開口部を有する雌形形状の継手部84を備えるH形鋼からなる補助杭8を用いて、継手部84内に固定鋼杭7を配置することもできる。
【0075】
この補助杭8に設けられる継手部84は、図5に示される他のH形鋼杭5と同様の構造からなり、一方のフランジ部81のウェブ部83と接続されていない面の外周面の長手方向に亘って、山留壁9を固定するための固定鋼杭7の一方のフランジ部を配置可能な空間を有し、山留壁形成方向に垂直方向に開口部を有する雌形形状からなる。すなわち、継手部84は、上面視で、補助杭8のフランジ部81の端部から突出する形でL字型と逆L字型からなる部材が組み合わされ、補助杭8の長手方向に亘って設けられており、中央部及び長手方向の上面側及び下面側がそれぞれ開口し、L字型と逆L字型から構成される内部には、固定鋼杭7の一方のフランジ部が全て収まるような空間が設けられ、かつ、中央部の開口幅は固定鋼杭7のウェブ部73の幅よりも広い。かかる構成により、山留壁形成方向に対して垂直方向に開口部が構成されることになり、該開口部に対して固定鋼杭7が挿入されることで、山留壁形成方向に対して最大限に固定することが可能となる。
【0076】
補助杭8の地中への打設については、山留壁9を形成し、他のH形鋼杭5のウェブ部53、フランジ部51、52に囲まれた領域内に固定鋼杭7のフランジ部71が配置された後、補助杭8を、継手部84内に固定鋼杭7のフランジ部72が挿入される位置に配置できるように移動し、位置決めした上、地面に建て込んだ後、打設具10の重錘107を上下に何度も昇降させ、上方から打撃力を繰り返し与え、補助杭8を地中の所望の位置まで埋め込む。
【0077】
以上のとおり、山留壁9に固定鋼杭7や補助杭8を配置することにより、より強固な山留壁を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の技術的範囲には、発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々、設計変更した形態が含まれる。
【符号の説明】
【0079】
1 打設装置
2 一のH形鋼杭
3 他のH形鋼杭
4 固定鋼杭
5 他のH形鋼杭
6 一のH形鋼杭
7 固定鋼杭
8 補助杭
9 山留壁
10 打設具
11 ブーム
12 アウトリガー
17 緩衝部材
18 保護アタッチメント
21、61 一のH形鋼杭のフランジ部
22、62 一のH形鋼杭のフランジ部
23、63 一のH形鋼杭のウェブ部
31、51 他のH形鋼杭のフランジ部
32、52 他のH形鋼杭のフランジ部
33、53 他のH形鋼杭のウェブ部
34、54 他のH形鋼杭の継手部
41、71 固定鋼杭のフランジ部
42、72 固定鋼杭のフランジ部
43、73 固定鋼杭のウェブ部
81 補助杭のフランジ部
82 補助杭のフランジ部
83、補助杭のウェブ部
84 補助杭の継手部
101 打設具接続装置
102 鉄棒
103 ワイヤー
104 フック
105 ロープ
106 昇降装置
107 重錘
108 引っ掛け金具
311、511 他のH形鋼杭のフランジ部の端部
341、541 他のH形鋼杭の継手部の中央部
342 542 他のH形鋼杭の継手部の空間



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2020-12-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のフランジ部と該一対のフランジ部をつなぐウェブ部を有するH形鋼杭を複数用い、一のH形鋼杭を他のH形鋼杭に略接する位置に交互に配置することにより連壁を形成した山留壁であって、
前記一のH形鋼杭は、フランジ部の長さが前記他のH形鋼杭のウェブ部よりも短く、ウェブ部の長さが前記他のH形鋼杭のフランジ部より長く、
前記一のH形鋼杭のフランジ部を前記他のH形鋼杭のフランジ部とウェブ部に囲まれた領域内に前記他のH形鋼杭のウェブ部に略平行となるように配置し連壁を形成することを特徴とする山留壁。
【請求項2】
前記他のH形鋼杭のフランジ部のウェブ部と接続されていない面の外周面に、山留壁固定用のH形鋼からなる固定鋼杭の一方のフランジ部を配置可能な空間を有し、山留壁形成方向に対して垂直方向に開口部を有する雌形形状の継手部を備え、前記継手部内に山留壁を固定するためのH形鋼からなる固定鋼杭を配置したことを特徴とする請求項1記載の山留壁。
【請求項3】
前記他のH形鋼杭のフランジ部と前記一のH形鋼杭のフランジ部とウェブ部とに囲まれた領域内に山留壁を固定するためのH形鋼からなる固定鋼杭を配置したことを特徴とする請求項1又は2記載の山留壁。
【請求項4】
一対のフランジ部と該一対のフランジ部をつなぐウェブ部を有するH形鋼杭を複数用い、一のH形鋼杭を他のH形鋼杭に略接する位置に交互に配置することにより連壁を形成した山留壁であって、
前記他のH形鋼杭のフランジ部のウェブ部と接続されていない面の外周面に、一のH形鋼杭の一方のフランジ部を配置可能な空間を有し、山留壁形成方向に開口部を有する雌形形状の継手部を備え、前記継手部内に一のH形鋼杭の一方のフランジ部を配置し、前記他のH形鋼杭のフランジ部とウェブ部に囲まれた領域内、及び/又は、前記一のH形鋼杭のフランジ部と前記継手部に囲まれた領域内に、山留壁を固定するためのH形鋼からなる固定鋼杭の一方のフランジ部を配置することにより連壁を形成することを特徴とする山留壁。
【請求項5】
前記一のH形鋼杭及び/又は他のH形鋼杭の全部又は一部に、ウェブ部の長さがフランジ部よりも長いH形鋼杭を用いることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の山留壁。
【請求項6】
前記固定鋼杭として、ウェブ部の長さがフランジ部よりも長いH形鋼杭を用いることを特徴とする請求項4又は5記載の山留壁。
【請求項7】
フランジ部のウェブ部と接続されていない面の外周面に、固定鋼杭の他方のフランジ部を配置可能な空間を有し、山留壁形成方向に対して垂直方向に開口部を有する雌形形状の継手部を備えるH形鋼からなる補助杭を、前記固定鋼杭の他方のフランジ部が前記補助杭に設けられた継手部内に挿入される位置に配置したことを特徴とする請求項4から6のいずれかに記載の山留壁。
【請求項8】
重錘を打撃する方法により対象物を打設する機能を有する打設装置を用いて、一対のフランジ部と該一対のフランジ部をつなぐウェブ部を有する一のH形鋼杭と他のH形鋼杭とを、それぞれが略接する位置で交互に打設を繰り返すことにより、地中の所望の位置に山留壁を形成する方法であって、
前記一のH形鋼杭として、フランジ部の長さが前記他のH形鋼杭のウェブ部よりも短く、ウェブ部の長さが前記他のH形鋼杭のフランジ部より長いものを用い、
前記一のH形鋼杭のフランジ部を前記他のH形鋼杭のフランジ部とウェブ部に囲まれた領域内に前記他のH形鋼杭のウェブ部に略平行となるように配置し、前記打設装置を用いて、前記一のH形鋼杭及び前記他のH形鋼杭を打設して山留壁を形成することを特徴とする山留壁形成方法。
【請求項9】
前記他のH形鋼杭として、フランジ部のウェブ部と接続されていない面の外周面に、山留壁を固定するための固定鋼杭の一方のフランジ部を配置可能な空間を有し、山留壁形成方向に対して垂直方向に開口部を有する雌形形状の継手部を備えたものを使用し、前記継手部内にH形鋼からなる固定鋼杭の一方のフランジ部を配置し打設することにより、前記山留壁を固定することを特徴とする請求項8記載の山留壁形成方法。
【請求項10】
前記他のH形鋼杭のフランジ部と前記一のH形鋼杭のフランジ部とウェブ部とに囲まれた領域内に山留壁を固定するためのH形鋼からなる固定鋼杭を配置することにより、前記山留壁を固定することを特徴とする請求項8又は9記載の山留壁形成方法。
【請求項11】
重錘を打撃する方法により対象物を打設する機能を有する打設装置を用いて、一対のフランジ部と該一対のフランジ部をつなぐウェブ部を有する一のH形鋼杭と他のH形鋼杭とを、それぞれが略接する位置で交互に打設を繰り返すことにより、地中の所望の位置に山留壁を形成する方法であって、
前記他のH形鋼杭として、フランジ部のウェブ部と接続されていない面の外周面に、一のH形鋼杭の一方のフランジ部を配置可能な空間を有し、山留壁形成方向に開口部を有する雌形形状の継手部を備えたものを使用し、
前記継手部内に一のH形鋼杭の一方のフランジ部を配置し前記他のH形鋼杭のフランジ部とウェブ部に囲まれた領域内、及び/又は、前記一のH形鋼杭のフランジ部と前記継手部に囲まれた領域内に、山留壁を固定するためのH形鋼からなる固定鋼杭の一方のフランジ部を配置して打設することにより、前記山留壁を形成することを特徴とする山留壁形成方法。
【請求項12】
一のH形鋼杭及び/又は他のH形鋼杭の全部又は一部にウェブ部の長さがフランジ部よりも長いH形鋼杭を用いて、前記山留壁を形成することを特徴とする請求項7から11のいずれかに記載の山留壁形成方法。
【請求項13】
前記固定鋼として、ウェブ部の長さがフランジ部よりも長いH形鋼杭を用いて、前記山留壁を固定することを特徴とする請求項11又は12記載の山留壁形成方法。
【請求項14】
フランジ部のウェブ部と接続されていない面の外周面に、固定鋼杭の他方のフランジ部を配置可能な空間を有し、山留壁形成方向に対して垂直方向に開口部を有する雌形形状の継手部を備えるH形鋼からなる補助杭を使用し、前記補助杭を前記固定鋼杭の他方のフランジ部が前記補助杭に設けられた継手部内に挿入される位置に配置して打設することにより、前記山留壁を固定することを特徴とする請求項11から13のいずれかに記載の山留壁形成方法。

【手続補正書】
【提出日】2021-02-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項6
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項6】
前記固定鋼杭として、ウェブ部の長さがフランジ部よりも長いH形鋼杭を用いることを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の山留壁。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項12
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項12】
一のH形鋼杭及び/又は他のH形鋼杭の全部又は一部にウェブ部の長さがフランジ部よりも長いH形鋼杭を用いて、前記山留壁を形成することを特徴とする請求項から11のいずれかに記載の山留壁形成方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項13
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項13】
前記固定鋼杭として、ウェブ部の長さがフランジ部よりも長いH形鋼杭を用いて、前記山留壁を固定することを特徴とする請求項9から11のいずれかに記載の山留壁形成方法。