(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042259
(43)【公開日】2022-03-14
(54)【発明の名称】包装袋
(51)【国際特許分類】
B65D 33/00 20060101AFI20220307BHJP
B65D 30/02 20060101ALI20220307BHJP
B65D 33/25 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
B65D33/00 C
B65D30/02
B65D33/25 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020147602
(22)【出願日】2020-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉永 遼
(72)【発明者】
【氏名】大塚 浩之
【テーマコード(参考)】
3E064
【Fターム(参考)】
3E064AA05
3E064BA17
3E064BA26
3E064BB03
3E064BC08
3E064EA30
3E064HM01
3E064HN13
3E064HP01
3E064HP05
(57)【要約】
【課題】引裂き開封可能な包装袋であって、シーラント層と基材フィルムとを分離することなく再生することができる包装袋を提供すること。
【解決手段】
表裏の包装フィルム11,12を互に重ね、周縁でヒートシールして構成され、これら表裏の包装フィルムを引裂くことにより開封する包装袋において、前記表裏の包装フィルムをいずれも基材フィルム1aとシーラント層1bとを積層して構成し、基材フィルムを実質的に一軸延伸ポリエチレンフィルムで構成すると共に、シーラント層をポリオレフィン樹脂で構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏の包装フィルムを互に重ね、周縁でヒートシールして構成され、これら表裏の包装フィルムを引裂くことにより開封する包装袋において、
前記表裏の包装フィルムがいずれも基材フィルムとシーラント層とを積層して構成されており、基材フィルムが実質的に一軸延伸ポリエチレンフィルムから成ると共に、シーラント層がポリオレフィン樹脂から成ることを特徴とする包装袋。
【請求項2】
表側の包装フィルムを構成する前記一軸延伸ポリエチレンフィルムの延伸方向と、裏側の包装フィルムを構成する前記一軸延伸ポリエチレンフィルムの延伸方向とが交差していることを特徴とする請求項1に記載の包装袋。
【請求項3】
前記シーラント層が、エチレン-1-ブテン共重合体と低密度ポリエチレンとの混合物から成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の包装袋。
【請求項4】
前記表裏の包装フィルムの内面に、互に着脱可能なチャックテープが取り付けられており、このチャックテープの端縁が、包装袋を引裂き開封する際の引裂き線を誘導するものであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引裂き開封可能な包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
表裏の包装フィルムを重ね、周縁でヒートシールして構成され、これら表裏のフィルムを引裂くことにより開封する包装袋は周知である。このような包装袋を構成する包装フィルムとしては、基材フィルムとシーラント層とを積層した積層構造のフィルムを使用することが常である。
【0003】
シーラント層は包装袋の内面側に配置され、表側フィルムのシーラント層と裏側フィルムのシーラント層とを互に対面させ、前述のように周縁でヒートシールすることにより、包装袋が製造される。ヒートシールが容易でしかも高いシール強度を得るため、シーラント層としては、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂が使用されることが多い。
【0004】
一方、基材フィルムは包装袋の強度を担保するものである。このため、強度の高い二軸延伸ポリエステル樹脂フィルムやポリアミド樹脂フィルムが使用されることが多い。なお、収容する内容物の性質に応じて、これら二軸延伸ポリエステル樹脂フィルムやポリアミド樹脂フィルムに加えて他の樹脂層を積層したり、金属箔や蒸着膜を積層することもある(特許文献1,2参照)。
【0005】
いずれにしても、シーラント層に適用されるポリオレフィン樹脂と基材フィルムに適用されるポリエステル樹脂やポリアミド樹脂とは互いに異なる種類の樹脂であり、しかも、その相溶性も低い。このため、使用の後不要となった包装袋を再生してその樹脂を再利用しようとすると、シーラント層と基材フィルムとを分離して、それぞれの樹脂を別個に回収しなくてはならない。しかし、もちろん、このような分離は事実上、不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-218173号公報
【特許文献2】特開2018-118472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、引裂き開封可能な包装袋であって、シーラント層と基材フィルムとを分離することなく再生することができる包装袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、請求項1に記載の発明は、表裏の包装フィルムを互に重ね、周縁でヒートシールして構成され、これら表裏の包装フィルムを引裂くことにより開封する包装袋において、
前記表裏の包装フィルムがいずれも基材フィルムとシーラント層とを積層して構成されており、基材フィルムが実質的に一軸延伸ポリエチレンフィルムから成ると共に、シーラント層がポリオレフィン樹脂から成ることを特徴とする包装袋である。
【0009】
次に、請求項2に記載の発明は、表側の包装フィルムを構成する前記一軸延伸ポリエチレンフィルムの延伸方向と、裏側の包装フィルムを構成する前記一軸延伸ポリエチレンフ
ィルムの延伸方向とが交差していることを特徴とする請求項1に記載の包装袋である。
【0010】
次に、請求項3に記載の発明は、前記シーラント層が、エチレン-1-ブテン共重合体と低密度ポリエチレンとの混合物から成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の包装袋である。
【0011】
次に、請求項4に記載の発明は、前記表裏の包装フィルムの内面に、互に着脱可能なチャックテープが取り付けられており、このチャックテープの端縁が、包装袋を引裂き開封する際の引裂き線を誘導するものであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の包装袋である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の包装袋においては、表裏の包装フィルムの基材フィルムが実質的に一軸延伸ポリエチレンフィルムから成ると共に、シーラント層がポリオレフィン樹脂から成る。このように表裏の包装フィルムの全体がポリオレフィン樹脂で構成されているため、シーラント層と基材フィルムとを分離することなく再生して、この再生樹脂をポリオレフィン樹脂として再使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は本発明の包装袋の具体例に係り、
図1(a)はその正面図、
図1(b)は要部断面図である。
【
図2】
図2は本発明の包装袋の具体例に係り、その製造方法を説明するための説明図である。
【
図3】
図3は本発明の具体例に係り、その引裂き線を説明するためこれら引裂き線を表示した包装袋の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本開示の具体例を説明する。
図1は本発明の包装袋100の具体例に係り、
図1(a)はその正面図、
図1(b)は要部断面図である。
【0015】
この包装袋100は、表裏の包装フィルム11,12とチャックテープ20とで構成されている。なお、チャックテープ20は、互に着脱可能な凸型嵌合テープと凹型嵌合テープとで構成されている。
【0016】
表裏の包装フィルム11,12は、
図1(a)に示すように、互に重ね合わせ、周縁の三方でヒートシールされている。このヒートシール部は左側シール線a、右側シール線b、上部シール線cである。
図1(a)では、この周縁シール線a,b,cに多数のドットを付与して示している。また、底部は折り曲げ線dで構成されている。すなわち、この包装袋100は、1枚の包装フィルム10を折り曲げ線dで二つ折りしたもので、この折り曲げ線dの両側が、それぞれ、表側の包装フィルム(表側フィルム)11及び裏側の包装フィルム(裏側フィルム)12を構成している。そして、このように二つ折りした包装フィルムの三方に周縁シール線a,b,cを設けることによって包装袋100内部を密封している。
【0017】
この包装フィルム10は、基材フィルム1aとシーラント層1bとを積層した積層フィルムで、これら基材フィルム1aとシーラント層1bとは、いずれも、実質的にポリオレフィン樹脂で構成されており、この結果、包装フィルム10の全体が実質的にポリオレフィン樹脂で構成されている。
【0018】
前述のように基材フィルム1aは実質的にポリオレフィン樹脂で構成されており、しか
も、包装袋の強度を担保するものである必要がある。また、後述するように、包装袋100を引裂き開封したときにその引裂き線を誘導する役割も有している。このため、基材フィルム1aは実質的に一軸延伸ポリエチレンフィルムで構成されている必要がある。この一軸延伸ポリエチレンフィルムとしては、そのフィルム10の流れ方向に垂直に延伸したフィルムを好適に使用できる。このように包装フィルム10の流れ方向に垂直に延伸したフィルムを基材フィルム1aとして包装フィルム10を構成し、この包装フィルム10を折り曲げ線dで二つ折りして、この折り曲げ線dの両側を表側フィルム11及び裏側フィルム12とする。
【0019】
上述した一軸延伸ポリエチレンフィルムは、流れ方向に垂直に延伸されているが、実際の延伸(配向)方向はフィルム10の流れ方向に若干傾斜している。これは延伸フィルムの製造工程で生じるボウイング現象によるものである。
【0020】
このため、
図1(a)に示すように、この表側フィルム11を構成する基材フィルム1aの延伸(配向)方向と裏側フィルム12を構成する基材フィルム1aの延伸(配向)方向とが互に交差する。
図1(a)において、α1は表側フィルム11を構成する基材フィルム1aの延伸方向を示し、α2は裏側フィルム12を構成する基材フィルム1aの延伸方向を示している。
【0021】
なお、基材フィルム1aは、単層の一軸延伸ポリエチレンフィルムで構成してもよいが、基材フィルム1a全体をポリオレフィン樹脂として再生できる程度に微量の他の層を積層した積層フィルムで構成してもよい。例えば、一軸延伸ポリエチレンフィルムに厚み1μm以下の蒸着膜を形成した蒸着フィルムを基材フィルム1aとしてもよい。蒸着膜としては、アルミニウム蒸着膜のような金属蒸着膜、あるいは酸化ケイ素蒸着膜や酸化アルミニウム蒸着膜等の無機蒸着膜を例示できる。このような蒸着膜を有する場合であっても、この蒸着膜は極めて薄く、したがって微量であるため、この蒸着膜ごと再生して、ポリオレフィン樹脂として再利用できる。
【0022】
次に、シーラント層1bは、包装袋100の内面側に配置され、表裏の包装フィルム11,12のシーラント層1b同士を対面させて、互にヒートシールする層である。このため、シーラント層1bはポリオレフィン樹脂で構成する必要がある。
【0023】
また、包装袋100の引裂き開封を容易とするため、シーラント層1bはエチレン-1-ブテン共重合体と低密度ポリエチレンとの混合物で構成することが望ましい。中でも、メタロセン触媒の存在下に、エチレン80~99.9モル%及び1-ブテン0.1~20モル%を共重合させて得られるエチレン-1-ブテン共重合体60~95重量%と、管状反応容器を用いた高圧ラジカル法で製造された低密度ポリエチレン5~40重量%との混合物を好適に使用できる。例えば、宇部丸善ポリエチレン(株)製071EBである。
【0024】
これらシーラント層1bは、これらを構成するポリオレフィン樹脂を基材フィルム11,21上に溶融押出しコーティングすることによって形成することができる。
【0025】
次に、これら表裏の包装フィルム11,12の内面にはチャックテープ20が取り付けられている。
図1(b)から分かるように、この例では、表側フィルム11の内面に凹型嵌合テープが取り付けられ、裏側フィルム12の内面に凸型嵌合テープが取り付けられており、これら凹型嵌合テープと凸型嵌合テープとは互いに嵌合している。なお、この両者が着脱自在であることはもちろんである。なお、包装袋100の上部シール線cとチャックテープ20との間の距離xは1~50mmの範囲内にあることが望ましい。距離xがこれより小さいと、製造上のばらつきにより加工が困難である。また、これより大きいと、包装袋を引裂いた後表側フィルム11と裏側フィルム12とを開くことが困難となること
がある。
【0026】
このチャックテープ20は、ポリオレフィン樹脂で構成されていることが望ましい。例えば、低密度ポリエチレン樹脂、あるいはエチレン-1-ブテン共重合体である。市販のチャックテープとしては、出光ユニテック(株)製MFL-807Z1を例示できる。
【0027】
次に、包装袋100には、この包装袋100を引裂き開封する際の便宜のため、その引裂き開始位置、引裂き方向、あるいは引裂き予定線等を示す引裂き案内表示が施されていることが望ましい。引裂き案内表示は印刷によって設けることもできるが、その他の手段によって設けてもよい。この例では、包装袋100の側縁にV型ノッチeを設けて、このV型ノッチeを引裂き案内表示としている。すなわち、包装袋100の引裂き開始位置はV型ノッチeの先端であり、引裂き方向はV型ノッチeが示す方向である。
【0028】
次に、
図2を参照して包装袋100を製造する方法を説明する。
【0029】
まず、包装フィルム10のロールを準備し、
図2(a)に示すように、包装フィルム10を巻き出す。
図2(a)において、符号dは、この包装フィルム10を二つ折りする折り曲げ線を示しており、包装フィルム10の中央に位置してその流れ方向に延びている。この折り曲げ線dの両側がそれぞれ表側フィルム11及び裏側フィルム12である。また、
図2(a)において、α1は表側フィルム11を構成する基材フィルム1aの延伸方向を示し、α2は裏側フィルム12を構成する基材フィルム1aの延伸方向を示しているが、これらα1,α2は、もちろん、同じ方向である。
【0030】
次に、折り曲げ線dで二つ折りすることにより、
図2(b)に示すように、表側フィルム11を構成する基材フィルム1aの延伸方向α1と、裏側フィルム12を構成する基材フィルム1aの延伸方向α2とが交差することとなる。
【0031】
そして、こうして二つ折りした包装フィルム10にチャック20を取り付け、内容物を収容しながら三方にシール線a,b,cを設けると共に、V型ノッチeを設けることにより、包装袋100を製造することができる。これらチャック20を取り付ける方法、シール線a,b,cを設ける方法、内容物を充填する方法及びV型ノッチeを設ける方法は、いずれも周知である。
【0032】
次に、
図3を参照して、この包装袋100を引裂き開封する方法を説明する。
図3は引裂き開封の際の引裂き線を説明するためこれら引裂き線を表示した包装袋の正面図である。
【0033】
前述のように、包装袋100の引裂き開始位置はV型ノッチeの先端であり、引裂き方向はV型ノッチeが示す方向である。そして、V型ノッチeの先端からV型ノッチeが示す方向に引裂きを開始すると、その引裂き線は、包装フィルム10を構成する基材フィルム1aの延伸方向に誘導される。包装フィルム10のうち表側フィルム11を構成する基材フィルム1aの延伸方向α1と裏側フィルム12を構成する基材フィルム1aの延伸方向α2とは交差しているから、表側フィルム11の引裂き線β1と裏側フィルム12の引裂き線β2は、互に交差する方向である。この例では、図示のように、表側フィルム11の引裂き線β1はV型ノッチeの先端から斜め下方に向かい、チャックテープ20に到達すると、チャックテープ20の上側端縁に沿って進む。一方、裏側フィルム12の引裂き線β2は斜め上方に向かい、上部シール線cに到達すると、上部シール線cの内側端縁に沿って進む。このように両引裂き線β1,β2の間に段差を発生する。このため、この段差の間のフィルムを摘んで容易に包装袋を開くことができる。
【符号の説明】
【0034】
100:包装袋
10:包装フィルム 1a:基材フィルム 1b:シーラント層
11:表側フィルム α1:表側フィルムを構成する基材フィルムの延伸方向 β1:表側フィルムの引裂き線
12:裏側フィルム α2:裏側フィルムを構成する基材フィルムの延伸方向 β2:裏側フィルムの引裂き線
20:チャックテープ
a:左側シール線 b:右側シール線 c:上部シール線
d:底部折り曲げ線
e:ノッチ