(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042263
(43)【公開日】2022-03-14
(54)【発明の名称】エアジェット織機の変形筬検査装置
(51)【国際特許分類】
D03D 49/62 20060101AFI20220307BHJP
D03D 47/30 20060101ALI20220307BHJP
D03J 1/00 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
D03D49/62 Z
D03D47/30
D03J1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020147606
(22)【出願日】2020-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100212657
【弁理士】
【氏名又は名称】塚原 一久
(72)【発明者】
【氏名】牧野 洋一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 藤雄
(72)【発明者】
【氏名】山崎 才弘
(72)【発明者】
【氏名】谷内 宏史
【テーマコード(参考)】
4L043
4L050
【Fターム(参考)】
4L043AA05
4L043CA00
4L050AA15
4L050CC17
4L050EA17
4L050EA18
4L050EB14
4L050ED12
(57)【要約】
【課題】精度良く変形筬が良品であるか又は不良品であるかを判定することができるエアジェット織機の変形筬検査装置を提供することを目的とする。
【解決手段】エアジェット織機の変形筬検査装置は、緯入れ方向に延びる緯糸飛走経路41を有する変形筬40により緯入れを行うエアジェット織機1に用いるものであり、緯糸飛走経路41の外側に設けられた外側ピトー管43と、外側ピトー管43により測定されたエアの流速である第1流速と基準値とを比較した結果に基づいて警告を出力する主制御装置50とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
緯入れ方向に延びる緯糸飛走経路を有する変形筬により緯入れを行うエアジェット織機に用いる、エアジェット織機の変形筬検査装置であって、
前記緯糸飛走経路の外側に設けられた外側ピトー管と、
前記外側ピトー管により測定された空気の流速である第1流速と基準値とを比較した結果に基づいて警告を出力する制御部と
を備えるエアジェット織機の変形筬検査装置。
【請求項2】
前記基準値は予め決められた第1閾値を含み、
前記第1流速が前記第1閾値よりも大きい場合に、前記制御部が警告を出力する請求項1に記載のエアジェット織機の変形筬検査装置。
【請求項3】
前記基準値はあらかじめ決められた第2閾値を含み、
前記緯糸飛走経路に設けられた内側ピトー管をさらに備え、
前記内側ピトー管により測定された空気の流速である第2流速と前記第1流速との差が前記第2閾値よりも小さい場合に、前記制御部が警告を出力する請求項1又は2に記載のエアジェット織機の変形筬検査装置。
【請求項4】
前記内側ピトー管は、前記緯糸飛走経路を形成する上壁面及び奥壁面により形成される角部の近傍に設けられている請求項3に記載のエアジェット織機の変形筬検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアジェット織機の変形筬検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
変形筬を有するエアジェット織機では、メインノズル及びサブノズルから噴射するエアによって変形筬に設けられた緯糸飛走経路に緯糸を飛走させることで緯入れを行っている。このようなエアジェット織機における製織方法として、例えば特許文献1に記載されているような製織方法が知られている。特許文献1に記載のエアジェット織機における製織方法では、変形筬の緯糸飛走経路の奥壁面から上あご部の長さの中央部でエアの流速値が最大流速の70%以下となるようにすることで、緯入れ時に緯糸飛走経路からの緯糸の飛び出しが発生することを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のエアジェット織機における製織方法のように、変形筬の緯糸飛走経路の奥壁面から上あご部の長さの中央部でエアの流速値が最大流速の70%以下であるという条件を満たす場合であっても、緯糸飛走経路からの緯糸の飛び出しを防止できない場合があることが実験により明らかとなっている。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、精度良く変形筬が良品であるか又は不良品であるかを判定することができるエアジェット織機の変形筬検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るエアジェット織機の変形筬検査装置は、緯入れ方向に延びる緯糸飛走経路を有する変形筬により緯入れを行うエアジェット織機に用い、前記緯糸飛走経路の外側に設けられた外側ピトー管と、外側ピトー管により測定された空気の流速である第1流速と基準値とを比較した結果に基づいて警告を出力する制御部とを備える。
【0007】
また、基準値は予め決められた第1閾値を含み、第1流速が第1閾値よりも大きい場合に、制御部が警告を出力してもよい。
また、基準値はあらかじめ決められた第2閾値を含み、緯糸飛走経路に設けられた内側ピトー管をさらに備え、内側ピトー管により測定された空気の流速である第2流速と第1流速との差が第2閾値よりも小さい場合に、制御部が警告を出力してもよい。
また、内側ピトー管は、緯糸飛走経路を形成する上壁面及び奥壁面により形成される角部の近傍に設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、エアジェット織機の変形筬検査装置は、緯糸飛走経路の外側に設けられた外側ピトー管と、外側ピトー管により測定された空気の流速である第1流速と基準値とを比較した結果に基づいて警告を出力する制御部とを備えるため、精度良く変形筬が良品であるか又は不良品であるかを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態1に係るエアジェット織機の概略図である。
【
図3】
図2に示す変形筬のA-A’線断面図である。
【
図4】
図1に示す良品である変形筬の検査位置における緯糸飛走経路内のエアの流速を示す図である。
【
図5】
図1に示す不良品である変形筬の検査位置における緯糸飛走経路内のエアの流速を示す図である。
【
図6】緯糸飛走経路の奥壁面の位置からの水平方向の距離と、エアの流速との関係を示すグラフである。
【
図7】
図6に示す緯糸飛走経路の奥壁面の位置からの水平方向の距離と、エアの流速との関係を示すグラフである。
【
図8】
図6に示す緯糸飛走経路の奥壁面の位置から上あご部先端位置までの水平方向の距離と、エアの流速との関係を示すグラフである。
【
図9】
図6に示す緯糸飛走経路の奥壁面の位置から上あご部中央位置までの水平方向の距離と、エアの流速との関係を示すグラフである。
【
図10】本発明の実施の形態2に係るピトー管及びピトー管支持部を示す部分平面図である。
【
図12】本発明の実施の形態2に係る変形筬検査装置の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態1について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、実施の形態1のエアジェット織機の概略図である。エアジェット織機1には、緯糸11を供給する給糸装置10が設けられている。緯糸11は、図示しない巻き付けアームの回転により引き出され、貯留ドラム12に巻き付けられて貯留される。貯留ドラム12の近傍には緯糸11を貯留ドラム12から解除し、又は緯糸11を係止するための緯糸係止ピン13と、緯糸11が貯留ドラム12から解除されたことを検出するためのバルーンセンサ14とが設けられている。給糸装置10と、貯留ドラム12と、緯糸係止ピン13と、バルーンセンサ14とはエアジェット織機1の図示しないフレームに固定されている。また、緯糸係止ピン13とバルーンセンサ14とは、エアジェット織機1の全体の動作を制御する主制御装置50に接続されている。主制御装置50は、緯糸係止ピン13を制御し緯糸11を解除状態とするか又は係止状態とする。また、バルーンセンサ14の検出結果は主制御装置50に入力される。
【0011】
また、エアジェット織機1には、緯入れノズル20が設けられている。緯入れノズル20は、空気(エア)を噴射することにより貯留ドラム12の緯糸11を引き出すタンデムノズル21と、エアを噴射することにより緯糸11を後述する緯入れ経路、すなわち緯糸飛走経路41へ送出し飛走させるためのメインノズル22とから構成されている。タンデムノズル21には、緯糸11の飛走を制動するためのブレーキ23が設けられている。ブレーキ23は、機械式ブレーキ又はエア式ブレーキ等の公知のブレーキ装置である。タンデムノズル21と、ブレーキ23とはエアジェット織機1の図示しないフレームに固定されている。また、ブレーキ23は主制御装置50に接続されており、主制御装置50により制御される。
【0012】
タンデムノズル21はホース24を介してタンデムバルブ26に接続されている。メインノズル22はホース25を介してメインバルブ27に接続されている。タンデムバルブ26及びメインバルブ27は、ホース28を介してメインエアタンク29に接続されている。メインエアタンク29には、メインレギュレータ30から供給された圧縮エアが貯留される。また、タンデムバルブ26、メインバルブ27及びメインレギュレータ30は主制御装置50に接続されて制御されている。
【0013】
メインノズル22と、変形筬40と、サブノズル35とは、図示しないスレイ上に設けられており、エアジェット織機1の前後方向に往復揺動される。変形筬40は、緯糸11が飛走する緯糸飛走経路41を有している。緯糸飛走経路41は、変形筬40の長手方向の全体に渡って設けられている。すなわち、緯糸飛走経路41は、
図1における変形筬40の左端の上流側から右端の下流側に渡って設けられている。サブノズル35は緯糸飛走経路41に沿って複数設けられており、エアを噴射することで緯糸11を緯糸飛走経路41に沿ってメインノズル22の側、すなわち左端の上流側から搬送する。緯糸飛走経路41は緯糸11の搬送経路である。また、サブノズル35はホース34を介して、サブバルブ33に接続されている。サブバルブ33はそれぞれサブエアタンク32に接続されている。サブエアタンク32には、サブレギュレータ31から供給された圧縮エアが貯留される。また、サブバルブ33はそれぞれ主制御装置50に接続されており、主制御装置50により開閉制御が行われる。また、変形筬40の検査位置Aは、後で詳しく説明する内側ピトー管42及び外側ピトー管43による緯糸飛走経路41内のエアの検査位置である。
【0014】
変形筬40の右端側には、緯糸の飛走状態を検出するRHフィーラ36が設けられている。RHフィーラ36は、主制御装置50に接続されている。変形筬40の左端側には、内側ピトー管42と、外側ピトー管43とが設けられている。内側ピトー管42及び外側ピトー管43は、主制御装置50に接続されている。主制御装置50は、ファンクションパネル51に接続されている。ファンクションパネル51は、エアジェット織機1の状態を表示し、またユーザがエアジェット織機1を操作するためのタッチパネルである。
【0015】
図2は、変形筬40の部分平面図である。内側ピトー管42は、先端部が緯糸飛走経路41の内側に配置されている。外側ピトー管43は、先端部が緯糸飛走経路41の外側に配置されている。内側ピトー管42及び外側ピトー管43は、ピトー管支持部44に指示されている。ピトー管支持部44は、縦方向支持部45と横方向支持部46とを有している。内側ピトー管42及び外側ピトー管43は、信号線47を介して主制御装置50に接続されている。また、内側ピトー管42、外側ピトー管43及び主制御装置50は、それぞれエアジェット織機の変形筬検査装置の構成要素である。
【0016】
図3は、
図2に示す変形筬40をA-A’線で切断した断面図である。なお、A-A’線の位置は上述した
図1の検査位置Aと同じ位置である。緯糸飛走経路41は変形筬40の手前側、すなわち、
図3における紙面の右側が開放されている。変形筬40の緯糸飛走経路41の上側には、手前側に張り出した上あご部48が形成されている。外側ピトー管43は、上あご部48に対し水平方向外側に設けられている。すなわち、外側ピトー管43は、緯糸飛走経路41の外側に配置されている。また、内側ピトー管42及び外側ピトー管43は、鉛直方向において同じ高さに、すなわち同一の水平面B上に各中心が位置するように設けられている。変形筬40の緯糸飛走経路41の下側には、手前側に張り出した下あご部49が形成されている。
【0017】
図4は、
図3に示す緯糸飛走経路41の拡大断面図である。変形筬40の、上あご部48の最も水平方向外側である上あご部先端部48aと、下あご部49の最も水平方向外側である下あご部先端部49aとを結ぶ仮想的な面を面Wとして示す。緯糸飛走経路41は、上壁面41aと、奥壁面41bと、下壁面41cと、面Wとによって囲まれる空間である。また、上あご部48の下面は緯糸飛走経路41を形成する上壁面41aを有している。すなわち上あご部48は上壁面形成部を構成している。内側ピトー管42は、上壁面41aと奥壁面41bとが形成する角部41dの近傍部である領域Xに設けられている。外側ピトー管43は、変形筬40の上壁面形成部を構成している上あご部48よりも手前側に設けられている。ここで、「上あご部48よりも手前側」とは、緯糸飛走経路41の開放側において、上あご部48の緯糸飛走経路41に対する水平方向外側の位置よりも、外側をいう。
【0018】
次に、この実施の形態に係るエアジェット織機の変形筬検査装置の動作を説明する。
図1に示すように変形筬40が良品であるか、不良品であるかを検査するためには、製織開始前に機台を停止した状態で、メインノズル22及びサブノズル35からエアを噴射することによって緯糸飛走経路41内に流れるエアの流速を内側ピトー管42及び外側ピトー管43を用いて測定する。
【0019】
図4は、良品である変形筬40の変形筬検査時の、
図1に示す検査位置Aにおける緯糸飛走経路41内のエアの流速を示している。V1,V2,V3,V4,V5は、それぞれエアの流速が等しい位置を接続して示す線であり、V1が最も流速が大きく、以下V2,V3,V4の順に流速が小さくなり、V5が最も流速が小さい。また、緯糸飛走経路41を形成する奥壁面41bの位置をCとして示す。さらに、上あご部48の水平方向外側の先端位置をDとして示している。さらにまた、水平方向の基準位置を内側から順にE,F,Gとして示しており、Gは水平面Bにおける流速V5の位置を示す。また、位置Cから先端位置Dまでの水平方向の距離をL1、位置Cから位置Eまでの水平方向の距離をL2、位置Cから位置Fまでの水平方向の距離をL3、位置Cから位置Gまでの水平方向の距離をYaとする。
【0020】
内側ピトー管42が設けられている領域Xにおいては、エアの流速は流速V1より大きい。外側ピトー管43が設けられている位置においては、エアの流速は流速V5より小さい。すなわち、位置Gは、外側ピトー管43の位置よりも内側に位置している。また、位置Eにおいてはエアの流速は流速V3未満且つ流速V4以上であり、流速V4に近い速度である。さらに、位置Fにおいては、エアの流速は流速V4以下流速V5以上である。
【0021】
図5は、不良品である変形筬40の変形筬検査時の、
図1に示す検査位置Aにおける緯糸飛走経路41内のエアの流速を示している。この
図5においては、位置Cから位置Gまでの水平方向の距離をYbとして示す。それ以外は、各符号は
図4の場合と同じものを示している。内側ピトー管42が設けられている位置においては、エアの流速は流速V1より大きい。一方、外側ピトー管43が設けられている位置においては、エアの流速は流速V4未満且つ流速V5以上である。すなわち位置Gは、外側ピトー管43の位置よりも外側に位置している。また、位置Eにおいてはエアの流速は流速V3未満且つ流速V4以上であり、流速V3に近い速度である。さらに、位置Fにおいてはエアの流速は流速V5である。
【0022】
図4及び
図5を参照すると、
図4に示す良品である変形筬40の位置Cから位置Gまでの水平方向の距離Yaに対して、
図5に示す不良品である変形筬40の位置Cから位置Gまでの水平方向の距離Ybの方が長い。そして、
図5に示す不良品である変形筬40は、全体としてエアの流速の高い領域が緯糸飛走経路41の外側に位置しており、メインノズル22及びサブノズル35から噴射したエアが緯糸飛走経路41の外側へ拡散している。そのため、もし不良品である変形筬40を用いて緯入れを行うと、緯糸飛走経路41における緯糸の飛走が不安定になる。
【0023】
図6は、
図4に示す良品である変形筬40及び
図5に示す不良品である変形筬40について変形筬検査の前に予め測定した、緯糸飛走経路41を形成する奥壁面41bの位置Cからの水平方向の距離Lとエアの流速Vとの関係を示すグラフである。P1は、
図4に示す良品である変形筬40について予め測定した距離Lに対するエアの流速Vを示し、P2は、
図5に示す不良品である変形筬40について予め測定した距離Lに対するエアの流速Vを示す。P1で示す良品である変形筬40の、内側ピトー管42の設けられている位置のエアの流速V
aと、外側ピトー管43の設けられている位置のエアの流速V0との差をV
Aとして示す。また、P2で示す不良品である変形筬40の、内側ピトー管42の設けられている位置のエアの流速V
bと、外側ピトー管43の設けられている位置のエアの流速V
cとの差をV
Bとして示す。外側ピトー管43が設けられた位置のエアの流速は、良品である変形筬40のエアの流速V0が、不良品である変形筬40のエアの流速V
cよりも小さい。また、内側ピトー管42の設けられている位置のエアの流速と、外側ピトー管43とが設けられている位置のエアの流速との流速差は、良品である変形筬40のV
Aよりも不良品である変形筬40のV
Bの方が小さい。さらに、良品である変形筬40に対して不良品である変形筬40は、最大流速が小さい。
【0024】
すなわち、外側ピトー管43の設けられている位置で測定されるエアの流速は、良品である変形筬40のV0よりも不良品である変形筬40の流速Vcの方が大きく、また、内側ピトー管42の設けられている位置で測定されるエアの流速と外側ピトー管43の設けられている位置で測定されるエアの流速との流速差は、良品である変形筬40のVAよりも不良品である変形筬40のVBの方が小さい。
【0025】
再度変形筬40の変形筬検査について説明すると、主制御装置50(
図1参照)には、外側ピトー管43により測定されるエアの流速の第1閾値VL1と、内側ピトー管42により測定されるエアの流速と外側ピトー管43により測定されるエアの流速との流速差の第2閾値VL2とが記録されている。主制御装置50は、緯糸飛走経路41にエアが流通しているときに外側ピトー管43により測定された第1流速と、第1閾値VL1とを比較する。また、主制御装置50は、内側ピトー管42により測定された第2流速と外側ピトー管43により測定された第1流速との流速差と、第2閾値VL2とを比較する。次に、外側ピトー管43により測定された第1流速が第1閾値VL1を超えている場合、及び内側ピトー管42により測定された第2流速と外側ピトー管43により測定された第1流速との流速差が第2閾値VL2を超えている場合の少なくともいずれか一方の場合には、変形筬40は不良品であると判定する。一方、そのいずれにも該当しない場合には、変形筬40は良品であると判定する。
【0026】
次に、主制御装置50は、変形筬40が良品である場合には変形筬40が良品であるという結果をファンクションパネル51に出力し、変形筬40が不良品である場合には、ファンクションパネル51に変形筬40が不良品であるという結果及び不良品であるという警告を出力する。また、主制御装置50は、内側ピトー管42と外側ピトー管43とのエアの流速測定値をファンクションパネル51に出力する。ファンクションパネル51は、入力された変形筬40が良品であるという結果、又は変形筬40が不良品であるという結果と不良品であるという警告とを表示する。またこれと同時に、ファンクションパネル51は、内側ピトー管42と外側ピトー管43とのエアの流速測定値を表示する。これにより、ユーザが変形筬40の検査結果を得ることが可能であり、また、変形筬40が不良品である場合にはその警告を受けることができる。
【0027】
図7は、
図6に示す良品である変形筬40のP1及び不良品である変形筬40のP2の線形近似を示すグラフである。なお、Hは
図4に示す上あご部48の水平方向における中央位置であり、Dは上あご部48の水平方向における先端位置である。良品である変形筬40のP1の線形近似K1の傾きよりも、不良品である変形筬40のP2の線形近似K2の傾きの方が小さい。すなわち、良品である変形筬40と不良品である変形筬40との緯糸飛走経路41のエアの流速を比較すると、良品である変形筬40に対して不良品である変形筬40は、奥壁面41bからの距離に対して全体的に流速の変化が緩やかであり、広い範囲にエアが拡散している。
【0028】
図8は、奥壁面41bの位置Cから上あご部48の先端位置Dまでの、
図6に示す良品である変形筬40のP1及び不良品である変形筬40のP2の線形近似を示すグラフである。位置Cから先端位置Dまでにおいても、良品である変形筬40のP1の線形近似K1の傾きに対する不良品である変形筬40のP2の線形近似K2の傾きとの差が明らかである。そのため、位置Cと先端位置Dとにおけるエアの流速を測定することでも、変形筬40が良品であるか不良品であるかを判定することができる。
【0029】
図9は、奥壁面41bの位置Cから上あご部48の中央位置Hまでの、
図6に示す良品である変形筬40のP1及び不良品である変形筬40のP2の線形近似を示すグラフである。位置Cから中央位置Hにおいては良品である変形筬40のP1の線形近似K1の傾きと、不良品である変形筬40のP2の線形近似K2の傾きとの差がほぼない。また、良品である変形筬40のP1の最大値とP1の中央位置Hでの値との差と、不良品である変形筬40のP2の最大値とP2の中央位置Hでの値との差とはほぼ同じである。したがって、従来のエアジェット織機における製織方法のように、緯糸飛走経路41の奥壁面41bから上あご部の長さの中央位置Hでのエアの流速値が最高流速の70%以下となるようにする方法では、良品である変形筬40と不良品である変形筬40との区別がつかない。そのため、変形筬40が良品であるか不良品であるかを誤判定する可能性がある。
【0030】
このように、この実施の形態1に係るエアジェット織機の変形筬検査装置は、緯入れ方向に延びる緯糸飛走経路41を有する変形筬40により緯入れを行うエアジェット織機1に用いる。そして、このエアジェット織機の変形筬検査装置は、緯糸飛走経路41の外側に設けられた外側ピトー管43と、外側ピトー管43により測定されたエアの流速である第1流速と基準値とを比較した結果に基づいて警告を出力する主制御装置50とを備えるため、精度良く変形筬40が良品であるか又は不良品であるかを判定することができる。
【0031】
また、基準値は予め決められた第1閾値VL1を含み、第1流速が第1閾値VL1よりも大きい場合に、主制御装置50が警告を出力するため、全体としてエアの流速の高い領域が緯糸飛走経路41の外側に位置しており、メインノズル22及びサブノズル35から噴射したエアが緯糸飛走経路41の外側へ拡散しているという特徴を有する、不良品である変形筬40を判定することができる。
【0032】
また、予め決められた第2閾値VL2を含み、緯糸飛走経路41に設けられた内側ピトー管42をさらに備え、内側ピトー管42により測定された空気の流速である第2流速と第1流速との差が第2閾値VL2よりも小さい場合に、主制御装置50が警告を出力するため、内側ピトー管42により測定される第2流速と外側ピトー管43により測定される第1流速との流速差が小さいという特徴を有する、不良品である変形筬40を判定することができる。
【0033】
また、内側ピトー管42は、緯糸飛走経路41を形成する上壁面41a及び奥壁面41bにより形成される角部41dの近傍である領域Xに設けられているため、緯糸飛走経路41内のエアの流速が最も速い領域を内側ピトー管42により測定することができる。
【0034】
なお、本実施の形態1では内側ピトー管42と外側ピトー管43とを設け、第2流速及び第1流速に基づいて変形筬40が良品であるか不良品であるかを判定していたが、さらにピトー管を設け合計3個以上のピトー管による流速の測定結果に基づいて、変形筬40が良品であるか不良品であるかを判定してもよい。
【0035】
また、本実施の形態1では内側ピトー管42は緯糸飛走経路41の角部41dの近傍である領域Xに設けられていたが、これに限定されるものではない。内側ピトー管42は、少なくとも緯糸飛走経路41の内部に設けられていればよい。
【0036】
また、本実施の形態1に係る変形筬検査装置は、ファンクションパネル51に変形筬40が不良品であるという警告が入力されたときに、ファンクションパネル51に警告を表示してユーザに警告していたがこれに限定されるものではなく、これ以外の適当な通知方法を用いてユーザに警告してもよい。例えば、ファンクションパネル51に警告を表示すると同時に図示しないスピーカにより警告音を発してユーザに警告してもよいし、また、ファンクションパネル51に警告を表示せず図示しないスピーカにより警告音を発するのみでユーザに警告してもよいし、さらに、図示しない振動装置の振動によりユーザに警告してもよい。さらにまた、ファンクションパネル51に表示される変形筬検査結果及び警告の表示項目は、ユーザの希望に応じて適当に変更されてもよい。
【0037】
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2に係る変形筬検査装置について説明する。なお、実施の形態2において、実施の形態1の
図1~
図9の参照符号と同一の符号は、同一または同様な構成要素であるのでその詳細な説明は省略する。この実施の形態2に係る変形筬検査装置は、実施の形態1に対してピトー管を1個のみ設けた変形筬検査装置である。
【0038】
図10は、この実施の形態2のピトー管42a及びピトー管支持部44を示す部分平面図である。また、
図11は
図10に示すピトー管42a及びピトー管支持部44を
図10に示すA-A’線で切断した断面図である。
図10と
図11を参照すると、ピトー管支持部44には、ピトー管42aのみが設けられている。ピトー管支持部44の縦方向支持部45の底部には、ピトー管支持部44の位置を調整する位置調整部60が設けられている。位置調整部60は、ねじ部61と、つまみ部62と、ピトー管42aが接続された移動部63とを有している。つまみ部62が周方向に回転することで、ねじ部61が軸方向に移動し、これにより移動部63は緯糸飛走経路41を形成する奥壁面41bに対して近接する方向及び離隔する方向へ移動自在に設けられている。その他の構成は、実施の形態1と同じである。
【0039】
次に、この実施の形態2に係る変形筬検査装置の動作を説明する。製織開始前に変形筬40の検査を行うときには、機台が停止し且つ
図11に示すように上あご部48の外側にピトー管42aが位置している状態でメインノズル22及びサブノズル35(
図1参照)からエアを噴射し、ピトー管42aによりエアの第1流速を測定する。このときのピトー管42aの位置は、実施の形態1の外側ピトー管43の位置に相当する。次に、
図12に示すように、ユーザが位置調整部60のつまみ部62を回転させ、緯糸飛走経路41の内側の角部41dの近傍にピトー管42aが移動した状態で、エアの第2流速を測定する。この時のピトー管42aの位置は、実施の形態1の内側ピトー管42の位置に相当する。
【0040】
これにより、実施の形態1と同じように上あご部外側におけるエアの第1流速を及び緯糸飛走経路41の角部41dの近傍におけるエアの第2流速を測定し、変形筬40が良品であるか不良品であるかを検査して判定することができる。また、実施の形態1は内側ピトー管42のエアの第2流速測定結果と外側ピトー管43のエアの第1流速測定結果に基づいて判定していたのに対し、この実施の形態2は同じピトー管42aを上あご部48の外側及び角部41dの近傍に位置させて測定したエアの流速測定結果に基づいて判定するため、ピトー管のばらつきに起因する、変形筬40の良品であるか又は不良品であるかの判定誤差を防止することができる。
【0041】
なお、この実施の形態2では、上あご部48の外側及び角部41dの近傍の2箇所においてエアの流速を測定していたが、測定位置はこの2箇所に限定されるものではない。ユーザがピトー管42aの位置を適当に調節して、適当な2箇所以上の場所でエアの流速を測定することで変形筬40が良品であるか不良品であるかを検査して判定してもよい。
【0042】
また、この実施の形態2では始めにピトー管42aが上あご部48の外側に位置している状態でエアの流速を測定し、次にピトー管42aを緯糸飛走経路41内に移動させてエアの流速を測定していたが、始めにピトー管42aが緯糸飛走経路41内に位置している状態でエアの流速を測定し、次にピトー管42a上あご部48の外側に移動させてエアの流速を測定してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 エアジェット織機、40 変形筬、41 緯糸飛走経路、41a 上壁面、41b 奥壁面、41c 下壁面、41d 角部、42 内側ピトー管、42a ピトー管、43 外側ピトー管、48 上あご部(上壁面形成部)、50 主制御装置(制御部)、VL1 第1閾値、VL2 第2閾値、X 領域。