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特開2022-42265液体吐出装置、その制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042265
(43)【公開日】2022-03-14
(54)【発明の名称】液体吐出装置、その制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20220307BHJP
   B41J 2/015 20060101ALI20220307BHJP
   B41J 2/205 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
B41J2/01 201
B41J2/01 103
B41J2/01 451
B41J2/015 101
B41J2/205
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020147613
(22)【出願日】2020-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒金 覚
(72)【発明者】
【氏名】近藤 智哉
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB29
2C056EC07
2C056EC36
2C056EC72
2C056FA04
2C056FA10
2C057AF21
2C057AG12
2C057AG44
2C057AM15
2C057AM21
2C057AN01
2C057AR16
2C057BA04
2C057BA14
2C057CA01
(57)【要約】
【課題】両面記録時の裏抜けと片面記録時の発色の悪化とを共に抑制する。
【解決手段】両面記録で用いられる駆動信号群Bは、片面記録で用いられる駆動信号群Aと比較して、「中」「大」の波形データF2’,F3’の液滴量が少ない。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルと、
前記ノズルから液体を吐出させるための圧力を付与するアクチュエータと、
前記アクチュエータと電気的に接続され、前記アクチュエータに駆動信号を供給する駆動回路と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
第1面及び前記第1面と反対側の第2面を有する記録媒体の、前記第1面及び前記第2面の一方に画像を記録する片面記録と、前記第1面及び前記第2面の両方に画像を記録する両面記録と、のいずれを実行するかを判断する第1判断処理において、前記片面記録を実行すると判断された場合、記録媒体の前記一方の面に向けて前記ノズルから液体を吐出させるときに、画素毎に、前記駆動回路により各階調値に対応する前記駆動信号を前記アクチュエータに供給し、
前記第1判断処理において前記両面記録を実行すると判断された場合、記録媒体の前記第1面に向けて前記ノズルから液体を吐出させるとき、及び、記録媒体の前記第2面に向けて前記ノズルから液体を吐出させるときのそれぞれにおいて、画素毎に、前記駆動回路により各階調値に対応する前記駆動信号を前記アクチュエータに供給し、
前記駆動信号は、第1階調値を含む少なくとも3つの階調値それぞれに対応する少なくとも3つの前記駆動信号からなる複数の駆動信号群を構成し、
前記複数の駆動信号群は、前記片面記録で用いられる第1駆動信号群と、前記両面記録で用いられる第2駆動信号群とを含み、
前記第2駆動信号群を構成する前記駆動信号のうち前記第1階調値に対応する駆動信号は、前記第1駆動信号群を構成する前記駆動信号のうち前記第1階調値に対応する駆動信号よりも少ない液滴量の液体を前記ノズルから吐出させるものであることを特徴とする、液体吐出装置。
【請求項2】
前記階調値は、前記第1階調値と、前記第1階調値よりも少ない液滴量に対応する第2階調値と、を含むことを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記階調値は、さらに、前記第2階調値よりも少ない液滴量に対応する第3階調値を含み、
前記第2駆動信号群を構成する前記複数の駆動信号のうち前記第2階調値に対応する駆動信号は、前記第1駆動信号群を構成する前記駆動信号のうち前記第2階調値に対応する駆動信号よりも少ない液滴量の液体を前記ノズルから吐出させるものであることを特徴とする、請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記制御部は、
吐出モードが、通常吐出モードと、前記通常吐出モードよりも記録媒体に対する液体の吐出量を低減させる低減吐出モードと、のいずれであるかを判断する第2判断処理において、前記吐出モードが前記通常吐出モードであると判断された場合、画素毎に、前記駆動回路により各階調値に対応する前記駆動信号を前記アクチュエータに供給する、通常吐出処理と、
前記第2判断処理において前記吐出モードが前記低減吐出モードであると判断された場合、画素毎に、前記駆動回路により各階調値に対応する前記駆動信号を前記アクチュエータに供給する、低減吐出処理と、を実行し、
前記複数の駆動信号群は、前記通常吐出処理で用いられる第3駆動信号群と、前記低減吐出処理で用いられる第4駆動信号群とを含み、
前記第4駆動信号群を構成する前記駆動信号のうち前記階調値の1つである第4階調値に対応する駆動信号は、前記第3駆動信号群を構成する前記駆動信号のうち前記第4階調値に対応する駆動信号よりも少ない液滴量の液体を前記ノズルから吐出させるものであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記制御部は、
バーコード記録と通常記録とのいずれを実行するかを判断する第3判断処理において、前記通常記録を実行すると判断された場合、画素毎に、前記駆動回路により各階調値に対応する駆動信号を前記アクチュエータに供給し、
前記第3判断処理において前記バーコード記録を実行すると判断された場合、画素毎に、前記駆動回路により各階調値に対応する駆動信号を前記アクチュエータに供給し、
前記複数の駆動信号群は、前記通常記録で用いられる第5駆動信号群と、前記バーコード記録で用いられる第6駆動信号群とを含み、
前記第6駆動信号群を構成する前記駆動信号のうち前記階調値の1つである第5階調値に対応する駆動信号は、前記第5駆動信号群を構成する前記駆動信号のうち前記第5階調値に対応する駆動信号よりも少ない液滴量の液体を前記ノズルから吐出させるものであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記制御部は、
バーコード記録と通常記録とのいずれを実行するかを判断する第3判断処理において、前記通常記録を実行すると判断された場合、画素毎に、前記駆動回路により各階調値に対応する駆動信号を前記アクチュエータに供給し、
前記第3判断処理において、前記バーコード記録を実行すると判断された場合、画素毎に、前記駆動回路により各階調値に対応する駆動信号を前記アクチュエータに供給し、
前記複数の駆動信号群は、前記通常記録で用いられる第5駆動信号群と、前記バーコード記録で用いられる前記第4駆動信号群とを含み、
前記第5駆動信号群を構成する前記駆動信号のうち前記第4階調値に対応する駆動信号は、前記第4駆動信号群を構成する前記駆動信号のうち前記第4階調値に対応する駆動信号よりも多い液滴量の液体を前記ノズルから吐出させるものであることを特徴とする、請求項4に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記制御部は、
画質モードが、通常画質モードと、前記通常画質モードよりも記録媒体に記録される画像の質が高い高画質モードと、のいずれであるかを判断する第4判断処理において、前記画質モードが前記高画質モードであると判断され、かつ、前記第1判断処理において前記片面記録を実行すると判断された場合、記録媒体の前記一方の面に向けて前記ノズルから液体を吐出させるときに、画素毎に、前記駆動回路により各階調値に対応する駆動信号を前記アクチュエータに供給し、
前記第4判断処理において前記画質モードが前記通常画質モードであると判断された場合、画素毎に、前記駆動回路により各階調値に対応する駆動信号を前記アクチュエータに供給し、
前記高画質モードかつ前記片面記録の場合と、前記通常画質モードの場合とにおいて、前記第1駆動信号群を用いることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記第1駆動信号群を構成する前記駆動信号のうち、前記階調値のうち液滴量がゼロでなくかつ液滴量が最も少ない最少階調値に対応する駆動信号と、前記第2駆動信号群を構成する前記駆動信号のうち、前記最少階調値に対応する駆動信号とは、互いに同じであることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記第1判断処理と、前記階調値を示す階調データの生成と、前記複数の駆動信号群のいずれを選択するかを示す駆動信号群選択データの生成とが、前記液体吐出装置と通信可能に接続された外部装置により実行され、
前記制御部は、前記外部装置から受信した前記階調データ及び前記駆動信号群選択データに基づいて、前記片面記録及び前記両面記録のいずれかを実行することを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記制御部は、
前記第1判断処理と、前記階調値を示す階調データの生成と、前記複数の駆動信号群のいずれを選択するかを示す駆動信号群選択データの生成とを実行し、
前記階調データ及び前記駆動信号群選択データに基づいて、前記片面記録及び前記両面記録のいずれかを実行することを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記階調データを前記駆動回路に転送し、
前記階調データは2ビットで構成されることを特徴とする、請求項9又は10に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
ノズルと、前記ノズルから液体を吐出させるための圧力を付与するアクチュエータと、前記アクチュエータと電気的に接続され、前記アクチュエータに駆動信号を供給する駆動回路と、を備えた液体吐出装置を制御する制御方法であって、
第1面及び前記第1面と反対側の第2面を有する記録媒体の、前記第1面及び前記第2面の一方に画像を記録する片面記録と、前記第1面及び前記第2面の両方に画像を記録する両面記録と、のいずれを実行するかを判断する第1判断処理において、前記片面記録を実行すると判断された場合、記録媒体の前記一方の面に向けて前記ノズルから液体を吐出させるときに、画素毎に、前記駆動回路により各階調値に対応する前記駆動信号を前記アクチュエータに供給し、
前記第1判断処理において前記両面記録を実行すると判断された場合、記録媒体の前記第1面に向けて前記ノズルから液体を吐出させるとき、及び、記録媒体の前記第2面に向けて前記ノズルから液体を吐出させるときのそれぞれにおいて、画素毎に、前記駆動回路により各階調値に対応する駆動信号を前記アクチュエータに供給し、
前記駆動信号は、第1階調値を含む少なくとも3つの階調値それぞれに対応する少なくとも3つの前記駆動信号からなる複数の駆動信号群を構成し、
前記複数の駆動信号群は、前記片面記録で用いられる第1駆動信号群と、前記両面記録で用いられる第2駆動信号群とを含み、
前記第2駆動信号群を構成する前記駆動信号のうち前記第1階調値に対応する駆動信号は、前記第1駆動信号群を構成する前記駆動信号のうち前記第1階調値に対応する駆動信号よりも少ない液滴量の液体を前記ノズルから吐出させるものであることを特徴とする、制御方法。
【請求項13】
ノズルと、前記ノズルから液体を吐出させるための圧力を付与するアクチュエータと、前記アクチュエータと電気的に接続され、前記アクチュエータに駆動信号を供給する駆動回路と、を備えた液体吐出装置を、
第1面及び前記第1面と反対側の第2面を有する記録媒体の、前記第1面及び前記第2面の一方に画像を記録する片面記録と、前記第1面及び前記第2面の両方に画像を記録する両面記録と、のいずれを実行するかを判断する第1判断処理において、前記片面記録を実行すると判断された場合、記録媒体の前記一方の面に向けて前記ノズルから液体を吐出させるときに、画素毎に、前記駆動回路により各階調値に対応する駆動信号を前記アクチュエータに供給する、片面記録手段、及び、
前記第1判断処理において前記両面記録を実行すると判断された場合、記録媒体の前記第1面に向けて前記ノズルから液体を吐出させるとき、及び、記録媒体の前記第2面に向けて前記ノズルから液体を吐出させるときのそれぞれにおいて、画素毎に、前記駆動回路により各階調値に対応する駆動信号を前記アクチュエータに供給する、両面記録手段、として機能させ、
前記駆動信号は、第1階調値を含む少なくとも3つの階調値それぞれに対応する少なくとも3つの前記駆動信号からなる複数の駆動信号群を構成し、
前記複数の駆動信号群は、前記片面記録で用いられる第1駆動信号群と、前記両面記録で用いられる第2駆動信号群とを含み、
前記第2駆動信号群を構成する前記駆動信号のうち前記第1階調値に対応する駆動信号は、前記第1駆動信号群を構成する前記駆動信号のうち前記第1階調値に対応する駆動信号よりも少ない液滴量の液体を前記ノズルから吐出させるものであることを特徴とする、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも3つの階調値に対応して画素毎の液滴量を制御する液体吐出装置、その制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のインクジェット記録装置(液体吐出装置)は、各ノズルから吐出されるインクの液滴量を制御できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-184447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液体吐出装置は、記録媒体の一方の面に画像を記録する片面記録と、記録媒体の両面に画像を記録する両面記録とを、選択的に実行する場合がある。この場合において、両面記録時に、記録媒体の各面に対し、片面記録時と同じ液滴量の液体を階調値に応じて吐出させると、記録媒体に対する液体の総吐出量が多くなり、裏抜け(記録媒体の第1面に着弾した液体が第2面にまで滲む現象)が生じ得る。また、裏抜けを防止するため、両面記録時の各面に対する階調値に応じた液滴量を少なくした場合、片面記録時に、記録媒体の一方の面に対し、両面記録時の各面に対する液滴量と同じ液滴量の液体を階調値に応じて吐出させると、液滴量が少ないことで発色が悪化し得る。
【0005】
本発明の目的は、両面記録時の裏抜けと片面記録時の発色の悪化とを共に抑制することができる液体吐出装置、その制御方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点によれば、ノズルと、前記ノズルから液体を吐出させるための圧力を付与するアクチュエータと、前記アクチュエータと電気的に接続され、前記アクチュエータに駆動信号を供給する駆動回路と、制御部と、を備え、前記制御部は、第1面及び前記第1面と反対側の第2面を有する記録媒体の、前記第1面及び前記第2面の一方に画像を記録する片面記録と、前記第1面及び前記第2面の両方に画像を記録する両面記録と、のいずれを実行するかを判断する第1判断処理において、前記片面記録を実行すると判断された場合、記録媒体の前記一方の面に向けて前記ノズルから液体を吐出させるときに、画素毎に、前記駆動回路により各階調値に対応する前記駆動信号を前記アクチュエータに供給し、前記第1判断処理において前記両面記録を実行すると判断された場合、記録媒体の前記第1面に向けて前記ノズルから液体を吐出させるとき、及び、記録媒体の前記第2面に向けて前記ノズルから液体を吐出させるときのそれぞれにおいて、画素毎に、前記駆動回路により各階調値に対応する前記駆動信号を前記アクチュエータに供給し、前記駆動信号は、第1階調値を含む少なくとも3つの階調値それぞれに対応する少なくとも3つの前記駆動信号からなる複数の駆動信号群を構成し、前記複数の駆動信号群は、前記片面記録で用いられる第1駆動信号群と、前記両面記録で用いられる第2駆動信号群とを含み、前記第2駆動信号群を構成する前記駆動信号のうち前記第1階調値に対応する駆動信号は、前記第1駆動信号群を構成する前記駆動信号のうち前記第1階調値に対応する駆動信号よりも少ない液滴量の液体を前記ノズルから吐出させるものであることを特徴とする、液体吐出装置が提供される。
【0007】
本発明の第2観点によれば、ノズルと、前記ノズルから液体を吐出させるための圧力を付与するアクチュエータと、前記アクチュエータと電気的に接続され、前記アクチュエータに駆動信号を供給する駆動回路と、を備えた液体吐出装置を制御する制御方法であって、第1面及び前記第1面と反対側の第2面を有する記録媒体の、前記第1面及び前記第2面の一方に画像を記録する片面記録と、前記第1面及び前記第2面の両方に画像を記録する両面記録と、のいずれを実行するかを判断する第1判断処理において、前記片面記録を実行すると判断された場合、記録媒体の前記一方の面に向けて前記ノズルから液体を吐出させるときに、画素毎に、前記駆動回路により各階調値に対応する前記駆動信号を前記アクチュエータに供給し、前記第1判断処理において前記両面記録を実行すると判断された場合、記録媒体の前記第1面に向けて前記ノズルから液体を吐出させるとき、及び、記録媒体の前記第2面に向けて前記ノズルから液体を吐出させるときのそれぞれにおいて、画素毎に、前記駆動回路により各階調値に対応する駆動信号を前記アクチュエータに供給し、前記駆動信号は、第1階調値を含む少なくとも3つの階調値それぞれに対応する少なくとも3つの前記駆動信号からなる複数の駆動信号群を構成し、前記複数の駆動信号群は、前記片面記録で用いられる第1駆動信号群と、前記両面記録で用いられる第2駆動信号群とを含み、前記第2駆動信号群を構成する前記駆動信号のうち前記第1階調値に対応する駆動信号は、前記第1駆動信号群を構成する前記駆動信号のうち前記第1階調値に対応する駆動信号よりも少ない液滴量の液体を前記ノズルから吐出させるものであることを特徴とする、制御方法が提供される。
【0008】
本発明の第3観点によれば、ノズルと、前記ノズルから液体を吐出させるための圧力を付与するアクチュエータと、前記アクチュエータと電気的に接続され、前記アクチュエータに駆動信号を供給する駆動回路と、を備えた液体吐出装置を、第1面及び前記第1面と反対側の第2面を有する記録媒体の、前記第1面及び前記第2面の一方に画像を記録する片面記録と、前記第1面及び前記第2面の両方に画像を記録する両面記録と、のいずれを実行するかを判断する第1判断処理において、前記片面記録を実行すると判断された場合、記録媒体の前記一方の面に向けて前記ノズルから液体を吐出させるときに、画素毎に、前記駆動回路により各階調値に対応する駆動信号を前記アクチュエータに供給する、片面記録手段、及び、前記第1判断処理において前記両面記録を実行すると判断された場合、記録媒体の前記第1面に向けて前記ノズルから液体を吐出させるとき、及び、記録媒体の前記第2面に向けて前記ノズルから液体を吐出させるときのそれぞれにおいて、画素毎に、前記駆動回路により各階調値に対応する駆動信号を前記アクチュエータに供給する、両面記録手段、として機能させ、前記駆動信号は、第1階調値を含む少なくとも3つの階調値それぞれに対応する少なくとも3つの前記駆動信号からなる複数の駆動信号群を構成し、前記複数の駆動信号群は、前記片面記録で用いられる第1駆動信号群と、前記両面記録で用いられる第2駆動信号群とを含み、前記第2駆動信号群を構成する前記駆動信号のうち前記第1階調値に対応する駆動信号は、前記第1駆動信号群を構成する前記駆動信号のうち前記第1階調値に対応する駆動信号よりも少ない液滴量の液体を前記ノズルから吐出させるものであることを特徴とする、プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、両面記録時に、記録媒体の第1面及び第2面のそれぞれに対し、片面記録時と同じ液滴量ではなく、片面記録時よりも少ない液滴量の液体を、階調値に応じて吐出させる。これにより、両面記録時の裏抜けを抑制できる。また、片面記録時には、記録媒体の一方の面に対し、両面記録時の各面に対する液滴量と同じ液滴量ではなく、両面記録時の各面に対する液滴量よりも多い液滴量の液体を、階調値に応じて吐出させる。これにより、片面記録時の発色の悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係るプリンタの全体構成を示す平面図である。
図2図1に示されているヘッドの断面図である。
図3図1のプリンタの電気的構成を示すブロック図である。
図4】駆動信号群Aに対応する波形信号FIREに含まれる4種類の波形データを示す波形図である。
図5】駆動信号群Bに対応する波形信号FIREに含まれる4種類の波形データを示す波形図である。
図6】波形信号FIRE及び選択信号SINの各データを説明するためのテーブルである。
図7図1のプリンタと通信可能に接続されたPCが実行する処理を示すフロー図である。
図8図1のプリンタのCPUが実行する処理を示すフロー図である。
図9】画質モード、片面記録又は両面記録、バーコード記録又は通常記録、及び、吐出モードに応じて選択される、駆動信号群を示すテーブルである。
図10】本発明の第2実施形態に係るプリンタのCPUが実行する処理を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
先ず、図1図3を参照し、本発明の第1実施形態に係るプリンタ100の全体構成、及び、プリンタ100の各部の構成について説明する。
【0012】
プリンタ100は、図1に示すように、下面に複数のノズルNが形成されたヘッド10と、ヘッド10を保持するキャリッジ20と、キャリッジ20及びヘッド10を走査方向(鉛直方向と直交する方向)に移動させる走査機構30と、用紙P(記録媒体)を下方から支持するプラテン40と、用紙Pを搬送方向(走査方向及び鉛直方向と直交する方向)に搬送する搬送機構50と、制御装置90とを備えている。
【0013】
ノズルNは、走査方向に並ぶ4つのノズル列Nc,Nm,Ny,Nkを構成している。各ノズル列Nc,Nm,Ny,Nkは、搬送方向に並ぶ複数のノズルNで構成されている。ノズル列Ncを構成するノズルNはシアンのインク、ノズル列Nmを構成するノズルNはマゼンタのインク、ノズル列Nyを構成するノズルNはイエローのインク、ノズル列Nkを構成するノズルNはブラックのインクを、それぞれ吐出する。
【0014】
走査機構30は、キャリッジ20を支持する一対のガイド31,32と、キャリッジ20に連結されたベルト33とを含む。ガイド31,32及びベルト33は、走査方向に延びている。制御装置90の制御によりキャリッジモータ30m(図3参照)が駆動されると、ベルト33が走行し、ガイド31,32に沿ってキャリッジ20及びヘッド10が走査方向に移動する。
【0015】
プラテン40は、キャリッジ20及びヘッド10の下方に配置されている。プラテン40の上面に、用紙Pが支持される。
【0016】
搬送機構50は、2つのローラ対51,52を有する。搬送方向においてローラ対51とローラ対52との間に、ヘッド10、キャリッジ20及びプラテン40が配置されている。制御装置90の制御により搬送モータ50m(図3参照)が駆動されると、ローラ対51,52が用紙Pを挟持した状態で回転し、用紙Pが搬送方向に搬送される。
【0017】
ヘッド10は、図2に示すように、流路ユニット12と、アクチュエータユニット13とを含む。
【0018】
流路ユニット12の下面に、複数のノズルN(図1参照)が形成されている。流路ユニット12の内部には、インクタンク(図示略)に連通する共通流路12aと、ノズルN毎に個別の個別流路12bとが形成されている。個別流路12bは、共通流路12aの出口から圧力室12pを経てノズルNに至る流路である。流路ユニット12の上面には、複数の圧力室12pが開口している。
【0019】
アクチュエータユニット13は、流路ユニット12の上面に複数の圧力室12pを覆うように配置された金属製の振動板13aと、振動板13aの上面に配置された圧電層13bと、圧電層13bの上面に複数の圧力室12pのそれぞれと対向するように配置された複数の個別電極13cとを含む。
【0020】
振動板13a及び複数の個別電極13cは、ドライバIC14と電気的に接続されている。ドライバIC14は、振動板13aの電位をグランド電位に維持する一方、個別電極13cの電位を変化させる。具体的には、ドライバIC14は、制御装置90からの制御信号(波形信号FIRE及び選択信号SIN)に基づいて駆動信号を生成し、信号線14sを介して駆動信号を個別電極13cに供給する。これにより、個別電極13cの電位が所定の駆動電位(VDD)とグランド電位(0V)との間で変化する(図4及び図5参照)。このとき、振動板13a及び圧電層13bにおいて各個別電極13cと各圧力室12pとで挟まれた部分(アクチュエータ13x)が変形することにより、圧力室12pの容積が変化し、圧力室12p内のインクに圧力が付与され、ノズルNからインクが吐出される。アクチュエータ13xは、個別電極13c毎(即ち、ノズルN毎)に設けられており、当該個別電極13cに供給される電位に応じて独立して変形可能である。
【0021】
制御装置90は、図3に示すように、CPU(Central Processing Unit)91と、ROM(Read Only Memory)92と、RAM(Random Access Memory)93と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)94とを含む。このうち、CPU91及びASIC94が本発明の「制御部」に該当する。
【0022】
ROM92には、CPU91やASIC94が各種制御を行うためのプログラムやデータが格納されている。RAM93は、CPU91やASIC94がプログラムを実行する際に用いるデータを一時的に記憶する。制御装置90は、PC(パーソナルコンピュータ)200と通信可能に接続されており、PC200から受信したデータに基づいて、CPU91やASIC94により記録処理を実行する。PC200は、本発明の「外部装置」に該当する。
【0023】
記録処理において、ASIC94は、CPU91からの指令にしたがい、PC200から受信したデータに基づいて、ドライバIC14、キャリッジモータ30m及び搬送モータ50mを駆動させ、搬送機構50によって用紙Pを搬送方向に所定量搬送する搬送動作と、キャリッジ20及びヘッド10を走査方向に移動させながらノズルNからインクを吐出させる走査動作とを、交互に行わせる。これにより、用紙P上に、インクのドットが形成され、画像が記録される。
【0024】
ASIC94は、図3に示すように、出力回路94a及び転送回路94bを含む。
【0025】
出力回路94aは、波形信号FIRE及び選択信号SINを生成し、これら信号を記録周期T毎に転送回路94bに出力する。1記録周期Tは、用紙P上に形成される画像の解像度に対応する単位距離だけ用紙Pがヘッド10に対して相対移動するのに要する時間であり、1画素に対応する。
【0026】
波形信号FIREは、4つの波形データF0,F1,F2,F3(図4参照)を直列化したシリアル信号、又は、4つの波形データF0,F1,F2’,F3’(図5参照)を直列化したシリアル信号である。波形データF0,F1,F2,F3は駆動信号群Aに対応し、波形データF0,F1,F2’,F3’は駆動信号群Bに対応する。つまり、波形信号FIREは、4つ(少なくとも3つ)の波形データF0,F1,F2,F3からなる駆動信号群Aと、4つ(少なくとも3つ)の波形データF0,F1,F2’,F3’からなる駆動信号群Bとを含む。
【0027】
波形データF0(図4(a)及び図5(a)参照)は、1記録周期T(時点t0から時点t1までの時間)内におけるノズルNから吐出されるインクの液滴量が「ゼロ(吐出なし)」に対応するものであり、個別電極13cの電位をグランド電位(0V)に維持する。波形データF1(図4(b)及び図5(b)参照)は、1記録周期T内におけるノズルNから吐出されるインクの液滴量が「小」に対応するものであり、個別電極13cの電位をグランド電位(0V)と駆動電位(VDD)との間で変化させる1つのパルスを含み、1滴のインクをノズルNから吐出させる。波形データF2,F2’(図4(c)及び図5(c)参照)は、1記録周期T内におけるノズルNから吐出されるインクの液滴量が「中」に対応するものであり、個別電極13cの電位をグランド電位(0V)と駆動電位(VDD)との間で変化させる2つのパルスを含み、2滴のインクをノズルNから吐出させる。波形データF3,F3’(図4(d)及び図5(d)参照)は、1記録周期T内におけるノズルNから吐出されるインクの液滴量が「大」に対応するものであり、個別電極13cの電位をグランド電位(0V)と駆動電位(VDD)との間で変化させる4つのパルスを含み、4滴のインクをノズルNから吐出させる。
【0028】
図4に示す波形データF2,F3と図5に示す波形データF2’,F3’との違いは、最終パルスの幅である。波形データF2’,F3’の最終パルスの幅Wは、波形データF2,F3の最終パルスの幅の略1/2である。最終パルスの幅Wが小さいことで、波形データF2’,F3’は波形データF2,F3よりも少ない液滴量に対応する。
【0029】
具体的には、図6に示すように、波形データF0は液滴量0pl、波形データF1は液滴量5pl、波形データF2は液滴量15pl、波形データF3は液滴量30pl、波形データF2’は液滴量10pl、波形データF3’は液滴量15plに対応する。
【0030】
選択信号SINは、4つの波形データF0,F1,F2,F3(図4参照)又は4つの波形データF0,F1,F2’,F3’(図5参照)の中から1つを選択するための階調データを含むシリアル信号であり、記録指令に含まれる画像データに基づいて、アクチュエータ13x毎、かつ、記録周期T毎に生成される。
【0031】
図6に示すように、波形信号FIREの各波形データF0,F1,F2,F3,F2’,F3’は、3ビット(「000」「001」等)で構成されている。選択信号SINの各階調データは、2ビット(「00」「01」「10」「11」)で構成されている。
【0032】
転送回路94bは、出力回路94aから受信した波形信号FIRE及び選択信号SINをドライバIC14に転送する。転送回路94bは、上記各信号に対応するLVDS(Low Voltage Differential Signaling)ドライバを内蔵しており、各信号をパルス状の差動信号としてドライバIC14に転送する。
【0033】
ASIC94は、記録処理において、ドライバIC14を制御し、画素毎に、波形信号FIRE及び選択信号SINに基づいて駆動信号を生成させ、信号線14sを介して駆動信号を個別電極13cに供給させる。これにより、ASIC94は、画素毎に、複数のノズルNのそれぞれから、4種類の液滴量(ゼロ、小、中、大)の中から選択された液滴量のインクを用紙Pに向けて吐出させる。
【0034】
このように、本実施形態において、階調値の数は「4」(4種類の液滴量:ゼロ、小、中、大)である。選択信号SINの階調データ(図6に示す「00」「01」「10」「11」)が、階調値(ゼロ、小、中、大)を示す。記録処理においては、画素毎に、ドライバIC14により各階調値(ゼロ、小、中、大)に対応する駆動信号が個別電極13cに供給される。
【0035】
駆動信号群A(図4参照)と駆動信号群B(図5参照)とにおいて、「ゼロ」の波形データF0は互いに同じであり、「小」(第3階調値、最少階調値)の波形データF1は互いに同じである。つまり、「小」の波形データF1は、「ゼロ」「小」「中」「大」の4つの階調値のうち、液滴量がゼロでなくかつ液滴量が最も少ない、最少階調値に対応する波形データである。駆動信号群A(図4参照)と駆動信号群B(図5参照)とにおいて、「中」(第2階調値)の波形データF2,F2’は互いに異なり、波形データF2’は波形データF2よりも少ない液滴量に対応する。駆動信号群A(図4参照)と駆動信号群B(図5参照)とにおいて、「大」(第1階調値、第4階調値、第5階調値)の波形データF3,F3’は互いに異なり、波形データF3’は波形データF3よりも少ない液滴量に対応する。
【0036】
次いで、図7及び図8を参照し、記録処理について説明する。
【0037】
本実施形態では、先ず図7に示すようにPC200側で処理が行われ、その後図8に示すようにプリンタ100側で処理が行われる。図8に示す処理は、CPU91が実行する。
【0038】
PC200は、PC200の入力手段(キーボードやマウス)等を介して記録指令を受信すると、先ず、図3に示すように、記録指令が示す画質モードが「高画質モード」であるか否かを判断する(S1)。S1は、本発明の「第4判断処理」に該当する。
【0039】
画質モードには、「通常画質モード」と、通常画質モードよりも画質が高い「高画質」とがある。「通常画質モード」と「高画質モード」とでは、画像の解像度が互いに異なる。例えば、「通常画質モード」は解像度が600dpi×300dpi、「高画質モード」は解像度が600dpi×600dpiである。
【0040】
「高画質モード」であると判断された場合(S1:YES)、PC200は、記録指令が示す記録が「両面記録」であるか否かを判断する(S2)。S2は、本発明の「第1判断処理」に該当する。
【0041】
記録には、用紙Pの表面(第1面)に画像を記録する「片面記録」と、用紙Pの表面(第1面)及び裏面(第2面)の両方に画像を記録する「両面記録」とがある。用紙Pの表面とは、当該用紙Pが最初にヘッド10の下方を通過するときにヘッド10と対向する面である。用紙Pの裏面とは、表面とは反対側の面であり、用紙Pの表面への画像の記録後に当該用紙Pがヘッド10の下方を通過するときにヘッド10と対向する面である。
【0042】
「両面記録」でない(即ち、「片面記録」である)と判断された場合(S2:NO)、PC200は、記録指令が示す記録がバーコード記録であるか否かを判断する(S3)。S3は、本発明の「第3判断処理」に該当する。
【0043】
記録には、上記「片面記録」及び「両面記録」に加え、バーコードの画像を記録する「バーコード記録」と、バーコード以外の画像を記録する「通常記録」とがある。バーコードは、JIS X 500の定義による、光学的反射率の高い部分と低い部分との組み合わせで情報を表示し、機械読み取り可能とした情報担体の総称であり、一次元シンボルと二次元シンボル(QRコード(登録商標)等)とを含む。
【0044】
「バーコード記録」でない(即ち、「通常記録」である)と判断された場合(S3:NO)、PC200は、記録指令が示す吐出モードが「低減吐出モード」であるか否かを判断する(S4)。S4は、本発明の「第2判断処理」に該当する。
【0045】
吐出モードには、「通常吐出モード」と、通常吐出モードよりも用紙Pに対するインクの吐出量を低減させる「低減吐出モード」とがある。
【0046】
「低減吐出モード」でない(即ち、「通常吐出モード」である)と判断された場合(S4:NO)、PC200は、記録指令に含まれる画像データと、S1~S4で判断された画質モード等とに基づいて、選択信号SIN(図6に示す各階調データ「00」「01」「10」「11」を含む。)を生成する(S5a)。CPU91は、PC200によって「低減吐出モード」でない(即ち、「通常吐出モード」である)と判断された場合(S4:NO)、S5aで生成された選択信号SINに基づいて、画素毎に、ドライバIC14により各階調データに対応する駆動信号をアクチュエータユニット13に供給する。
【0047】
S5aの後、PC200は、駆動信号群Aを示す群選択データを生成する(S6a)。
【0048】
「低減吐出モード」であると判断された場合(S4:YES)、「バーコード記録」であると判断された場合(S3:YES)、又は、「両面記録」であると判断された場合(S2:YES)、PC200は、記録指令に含まれる画像データと、S1~S4で判断された画質モード等とに基づいて、選択信号SIN(図6に示す各階調データ「00」「01」「10」「11」を含む。)を生成する(S5b)。CPU91は、PC200によって「低減吐出モード」であると判断された場合(S4:YES)、「バーコード記録」であると判断された場合(S3:YES)、又は、「両面記録」であると判断された場合(S2:YES)、S5bで生成された選択信号SINに基づいて、画素毎に、ドライバIC14により各階調データに対応する駆動信号(PC200によって「低減吐出モード」でない(即ち、「通常吐出モード」である)と判断された場合(S4:NO)にアクチュエータユニット13に供給する駆動信号とは異なる駆動信号)をアクチュエータユニット13に供給する。
【0049】
S5bの後、PC200は、駆動信号群Bを示す群選択データを生成する(S6b)。
【0050】
「高画質モード」でない(即ち、「通常画質モード」である)と判断された場合(S1:NO)、PC200は、記録指令に含まれる画像データと、S1で判断された画質モードとに基づいて、選択信号SIN(図6に示す各階調データ「00」「01」「10」「11」を含む。)を生成する(S5c)。
【0051】
S5cの後、PC200は、駆動信号群Aを示す群選択データを生成する(S6c)。
【0052】
S6a~S6cで生成される群選択データは、駆動信号群A,Bのいずれを選択するかを示すデータであり、本発明の「駆動信号群選択データ」に該当する。
【0053】
S6a、S6b又はS6cの後、PC200は、選択信号SINと群選択データとをプリンタ100の制御装置90に送信し(S7)、当該ルーチンを終了する。
【0054】
プリンタ100のCPU91は、先ず、図8に示すように、PC200から選択信号SINと群選択データとを受信したか否かを判断する(S21)。当該データをPC200から受信していない場合(S21:NO)、CPU91は、S21の処理を繰り返す。
【0055】
PC200から選択信号SINと群選択データとを受信したと判断された場合(S21:YES)、CPU91は、受信した選択信号SINの階調データ及び群選択データに基づいて記録処理を実行し(S22)、当該ルーチンを終了する。
【0056】
S22では、記録指令が示す画質モード及び吐出モードで、記録指令が示す記録(片面記録及び両面記録のいずれか、かつ、バーコード記録及び通常記録のいずれか)が実行される。S22において、CPU91は、S21で受信した群選択データが示す駆動信号群A又は駆動信号群Bを選択し、画素毎に、当該群において選択信号SINの各階調データに対応する駆動信号を、ドライバIC14により個別電極13cに供給する(図6参照)。このとき、出力回路94a(図3参照)は、CPU91の制御の下、選択された駆動信号群に対応する波形信号FIREを生成して転送回路94bに出力し、かつ、PC200から受信した選択信号SINを転送回路94bに出力する。転送回路94bは、出力回路94aから受信した波形信号FIRE及び選択信号SINをドライバIC14に転送する。つまり、CPU91は、「両面記録」でない(即ち、「片面記録」である)と判断された場合(S2:NO)、用紙Pの表面(第1面)に向けてノズルNからインクを吐出させるときに、画素毎に、ドライバIC14により各階調データに対応する駆動信号を、アクチュエータユニット13供給する。CPU91は、「両面記録」であると判断された場合(S2:YES)、用紙Pの表面(第1面)に向けてノズルNからインクを吐出させるとき、及び、用紙Pの裏面(第2面)に向けてノズルNからインクを吐出させるときのそれぞれにおいて、画素毎に、ドライバIC14により各階調データに対応する駆動信号を、アクチュエータユニット13供給する。より具体的には、出力回路94aは、「両面記録」でない(即ち、「片面記録」である)と判断された場合(S2:NO)、液滴量0plに対応する波形データF0、液滴量5plに対応する波形データF1、液滴量15plに対応する波形データF2、及び、液滴量30plに対応する波形データF3を含む、駆動信号群Aを転送回路94bに出力し、かつ、受信した選択信号SINを転送回路94bに出力する。転送回路94bは、出力回路94aから受信した波形信号FIRE及び選択信号SINをドライバIC14に転送する。ドライバIC14は、「00」の階調データに対応する波形データF0に基づき液滴量0plとなるようにアクチュエータ13xを駆動させ、「01」の階調データに対応する波形データF1に基づき液滴量5plとなるようにアクチュエータ13xを駆動させ、「10」の階調データに対応する波形データF2に基づき液滴量15plとなるようにアクチュエータ13xを駆動させ、「11」の階調データに対応する波形データF3に基づき液滴量30plとなるようにアクチュエータ13xを駆動させる。一方、出力回路94aは、「両面記録」であると判断された場合(S2:YES)、液滴量0plに対応する波形データF0、液滴量5plに対応する波形データF1、液滴量10plに対応する波形データF2’、及び、液滴量15plに対応する波形データF3’を含む、駆動信号群Bを転送回路94bに出力し、かつ、受信した選択信号SINを転送回路94bに出力する。転送回路94bは、出力回路94aから受信した波形信号FIRE及び選択信号SINをドライバIC14に転送する。ドライバIC14は、「00」の階調データに対応する波形データF0に基づき液滴量0plとなるようにアクチュエータ13xを駆動させ、「01」の階調データに対応する波形データF1に基づき液滴量5plとなるようにアクチュエータ13xを駆動させ、「10」の階調データに対応する波形データF2’に基づき液滴量10plとなるようにアクチュエータ13xを駆動させ、「11」の階調データに対応する波形データF3’に基づき液滴量15plとなるようにアクチュエータ13xを駆動させる。
【0057】
図9に示すように、「通常画質モード」では、「片面記録」及び「両面記録」のいずれにおいても、「バーコード記録」及び「通常記録」のいずれにおいても、また、「通常吐出モード」及び「低減吐出モード」のいずれにおいても、駆動信号群Aが選択される。「高画質モード」では、「片面記録」、「通常記録」かつ「通常吐出モード」の場合は駆動信号群Aが選択され、「片面記録」、「通常記録」かつ「低減吐出モード」の場合は駆動信号群Bが選択され、「片面記録」かつ「バーコード記録」の場合は駆動信号群Bが選択され、「両面記録」の場合は駆動信号群Bが選択される。
【0058】
「両面記録」では、用紙Pの表面へのインク吐出時、及び、用紙Pの裏面へのインク吐出時のそれぞれにおいて、選択された駆動信号群A又は駆動信号群Bが用いられる。
【0059】
駆動信号群Aは、本発明の「第1駆動信号群」「第3駆動信号群」「第5駆動信号群」に該当する。駆動信号群Bは、本発明の「第2駆動信号群」「第4駆動信号群」「第6駆動信号群」に該当する。
【0060】
以上に述べたように、本実施形態によれば、「両面記録」(高画質モード)で用いられる駆動信号群Bは、「片面記録」(高画質モード、通常記録、通常吐出モード)で用いられる駆動信号群Aと比較して、「中」「大」の波形データF2’,F3’の液滴量が少ない(図4図6図9参照)。即ち、両面記録時に、用紙Pの表面及び裏面のそれぞれに対し、片面記録時と同じ液滴量ではなく、片面記録時よりも少ない液滴量のインクを、階調値に応じて吐出させる。これにより、両面記録時の裏抜けを抑制できる。また、片面記録時には、用紙Pの表面に対し、両面記録時の各面に対する液滴量と同じ液滴量ではなく、両面記録時の各面に対する液滴量よりも多い液滴量のインクを、階調値に応じて吐出させる。これにより、片面記録時の発色の悪化を抑制することができる。
【0061】
駆動信号群Aと駆動信号群Bとにおいて、「小」の波形データではなく、「中」「大」の波形データを互いに異ならせている。このように、液滴量が比較的多い「中」「大」について、片面記録時と両面記録時とで液滴量を異ならせることで、上記効果(両面記録時の裏抜けと片面記録時の発色の悪化とを共に抑制するという効果)をより確実に得ることができる。
【0062】
駆動信号群Aと駆動信号群Bとにおいて、「大」の波形データのみではなく、「中」の波形データについても、互いに異ならせている。これにより、各駆動信号群A,Bにおける液滴量の変化を段階的にすることができ、画像の粒状性を良好にする(画像のざらつきを抑制する)ことができる。
【0063】
「低減吐出モード」で用いられる駆動信号群Bは、「通常吐出モード」で用いられる駆動信号群Aと比較して、「中」「大」の波形データF2’,F3’の液滴量が少ない(図4図6図9参照)。即ち、低減吐出モードにおいて、通常吐出モードよりも少ない液滴量のインクを、階調値に応じて吐出させる。これにより、用紙Pの膨潤(ひいては、膨潤によって湾曲した用紙Pがヘッド10の下面に接触することで、用紙Pにインクが付着する問題や、用紙Pのジャムが生じる問題)を抑制できる。
【0064】
「バーコード記録」で用いられる駆動信号群Bは、「通常記録」(通常吐出モード)で用いられる駆動信号群Aと比較して、「中」「大」の波形データF2’,F3’の液滴量が少ない(図4図6図9参照)。即ち、バーコード記録時に、通常記録時よりも少ない液滴量のインクを、階調値に応じて吐出させる。これにより、バーコードの縁の滲みを抑制することができる。また、仮にバーコードの縁の滲みが生じたとしても、滲みの程度が抑えられ、バーコードの読取エラーを抑制できる。
【0065】
「バーコード記録」及び「低減吐出モード」において、駆動信号群Bが用いられる(図9参照)。このように同じ駆動信号群を用いることで、駆動信号群に係るデータ量を抑え、メモリ容量を抑えることができる。
【0066】
「高画質モード」かつ「片面記録」の場合(通常記録、通常吐出モード)と、「通常画質モード」の場合とにおいて、駆動信号群Aが用いられる(図9参照)。このように同じ駆動信号群を用いることで、駆動信号群に係るデータ量を抑え、メモリ容量を抑えることができる。
【0067】
駆動信号群Aと駆動信号群Bとにおいて、「小」の波形データF1は互いに同じである(図6参照)。「小」について液滴量をさらに少なくすると、発色が悪化してしまう。また、駆動信号群Aと駆動信号群Bとにおいて、「中」「大」の波形データに加え、「小」の波形データも異ならせると、駆動信号群に係るデータ量が大きくなり、メモリ容量を抑え難い。しかも、「小」については、そもそも裏抜けの問題が生じ難い。これらの観点から、本実施形態では、「小」の波形データを、駆動信号群Aと駆動信号群Bとで同じにしている。これにより、裏抜け及び発色悪化の抑制と、データ量の抑制とを、共に実現することができる。
【0068】
PC200が、両面記録の判断(S2)、階調データの生成(S5a~S5c)、及び、群選択データの生成(S6a~S6c)を行う。この場合、プリンタ100側で判断やデータ生成を行う必要がないため、プリンタ100の電気的構成を簡素化できる。
【0069】
階調値の数が「4」(4種類の液滴量:ゼロ、小、中、大)であり、階調データが2ビット(「00」「01」「10」「11」)で構成されている(図6参照)。階調値の数が「5」(5種類の液滴量:ゼロ、小、中、大、特大)の場合、特大に対応する階調データが3ビット(「100」)で構成され、データ量が多くなることで、ドライバIC14へのデータ転送速度が低下してしまう。この点、本実施形態では、階調データが2ビットで構成されているため、データ転送速度の低下を抑制できる。なお、4種類の液滴量でインクを吐出可能なプリンタ100において、階調データが2ビットで構成されていても、駆動信号群Aと駆動信号群Bとを使い分けることにより、片面記録と両面記録とで液滴量を変更できる。上述のように、片面記録の場合、液滴量0plに対応する波形データF0、液滴量5plに対応する波形データF1、液滴量15plに対応する波形データF2、及び、液滴量30plに対応する波形データF3を含む、駆動信号群Aを用いる。一方、両面記録の場合、液滴量0plに対応する波形データF0、液滴量5plに対応する波形データF1、液滴量10plに対応する波形データF2’、及び、液滴量15plに対応する波形データF3’を含む、駆動信号群Bを用いる。このように駆動信号群Aと駆動信号群Bとを使い分けることにより、同じ「10」の階調データであっても、駆動信号群Aを用いると、液滴量が15plとなり、駆動信号群Bを用いると、液滴量が10plとなる。裏抜けを防止したいときには、「10」の階調データの場合、画素毎に液滴量を5pl減らせるので、裏抜けを防止し易くなる。また、駆動信号群Aと駆動信号群Bとを使い分けることにより、同じ「11」の階調データであっても、駆動信号群Aを用いると、液滴量が30plとなり、駆動信号群Bを用いると、液滴量が15plとなる。裏抜けを防止したいときには、「11」の階調データの場合、画素毎に液滴量を15pl減らせるので、「10」の階調データの場合よりも、より裏抜けを防止し易くなる。このように、本実施形態によれば、裏抜けを防止しつつデータ転送速度の低下を抑制できる。
【0070】
<第2実施形態>
続いて、図10を参照し、本発明の第2実施形態について説明する。
【0071】
本実施形態は、両面記録等の判断(S1~S4)、階調データの生成(S5a~S5c)、及び、群選択データの生成(S6a~S6c)を、PC200ではなくプリンタ100が実行する点が第1実施形態と異なり、それ以外は第1実施形態と同じである。
【0072】
プリンタ100のCPU91は、外部装置(PC200や、プリンタ100に接続された外部メモリ)から記録指令を受信すると、図10に示すように、第1実施形態と同様のS1~S6cの処理を実行する。S6a、S6b又はS6cの後、CPU91は、S5a、S5b又はS5cで生成された選択信号SINの階調データとS6a、S6b又はS6cで生成された群選択データとに基づいて記録処理を実行し(S32)、当該ルーチンを終了する。
【0073】
本実施形態は、PC200を介さずに外部メモリをプリンタ100に接続して画像記録を実行するメディアプリントに対応可能である。
【0074】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0075】
例えば、上述の実施形態(図7参照)では、通常画質モードの場合(S1:NO)、両面記録、バーコード記録及び低減吐出モードの判断が行われないが、通常画質モードの場合にも両面記録等の判断を行い、判断結果に応じて駆動信号群を選択してよい。同様に、上述の実施形態では、両面記録の場合(S2:YES)、バーコード記録や低減吐出モードの判断が行われないが、両面記録の場合にもバーコード記録等の判断を行い、判断結果に応じて駆動信号群を選択してもよい。この場合、例えば、両面記録でバーコード記録及び/又は低減吐出モードの場合は、片面記録でバーコード記録及び/又は低減吐出モードの場合に比べ、液滴量が少ない駆動信号群を選択してよい。
【0076】
上述の実施形態(図5(c),(d)参照)では、最終パルスの幅Wを小さくすることで液滴量を小さくしているが、これに限定されない。例えば、複数のパルスそれぞれの幅を小さくすることや、パルス数を少なくすることで、液滴量を少なくしてもよい。
【0077】
上述の実施形態では、記録処理において、4種類の液滴量(ゼロ、小、中、大)の中から選択された液滴量の液体を記録媒体に向けて吐出させるが、これに限定されない。例えば、記録処理において、3種類の液滴量(ゼロ、小、大)の中から選択された液滴量の液体を記録媒体に向けて吐出させてもよいし、或いは、5種類以上の液滴量(ゼロ、小、中、大、特大)の中から選択された液滴量の液体を記録媒体に向けて吐出させてもよい。つまり、階調値の数は、上述の実施形態では「4」であるが、「3」又は「5以上」であってもよい。
【0078】
上述の実施形態では、駆動信号群A(図4参照)と駆動信号群B(図5参照)とで、「中」「大」の波形データを互いに異ならせているが、これに限定されない。例えば、「中」及び「大」の一方の波形データを互いに異ならせ、駆動信号群Bの上記一方の波形データが、駆動信号群Aの上記一方の波形データよりも少ない液滴量に対応するものとしてよい。或いは、「小」の波形データを互いに異ならせ、駆動信号群Bの「小」の波形データが、駆動信号群Aの「小」の波形データよりも少ない液滴量に対応するものとしてもよい。
【0079】
上述の実施形態では、片面記録及び両面記録のみでなく、画質モード、吐出モード、バーコード記録の有無等に応じて駆動信号群を異ならせているが、これに限定されない。例えば、画質モード、吐出モード、バーコード記録の有無等に応じて駆動信号群を異ならせず、片面記録及び両面記録に応じて駆動信号群を異ならせてもよい。
【0080】
アクチュエータは、圧電方式に限定されず、その他の方式(例えば、発熱素子を用いたサーマル方式、静電力を用いた静電方式等)であってもよい。
【0081】
ヘッドは、上述の実施形態ではシリアル式であるが、ライン式であってもよい。
【0082】
ノズルから吐出される液体は、インクに限定されず、インク以外の液体(例えば、インク中の成分を凝集又は析出させる処理液等)であってもよい。
【0083】
記録媒体は、用紙に限定されず、例えば、布、樹脂部材等であってもよい。
【0084】
本発明は、プリンタに限定されず、ファクシミリ、コピー機、複合機等にも適用可能である。また、本発明は、画像の記録以外の用途で使用される液体吐出装置(例えば、基板に導電性の液体を吐出して導電パターンを形成する液体吐出装置)にも適用可能である。
【0085】
本発明に係るプログラムは、フレキシブルディスク等のリムーバブル型記録媒体やハードディスク等の固定型記録媒体に記録して配布可能である他、通信回線を介して配布可能である。
【符号の説明】
【0086】
10 ヘッド
13x アクチュエータ
14 ドライバIC(駆動回路)
91 CPU(制御部)
94 ASIC(制御部)
100 プリンタ(液体吐出装置)
200 PC(外部装置)
N ノズル
P 用紙(記録媒体)
図1
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図10