(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042286
(43)【公開日】2022-03-14
(54)【発明の名称】増水避難装置
(51)【国際特許分類】
E04H 9/14 20060101AFI20220307BHJP
B63C 9/06 20060101ALI20220307BHJP
B63B 7/02 20200101ALI20220307BHJP
B63B 45/00 20060101ALI20220307BHJP
B63B 21/20 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
E04H9/14 Z
B63C9/06
B63B7/02
B63B45/00
B63B21/20 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020147643
(22)【出願日】2020-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】520337972
【氏名又は名称】菊地 禮藏
(74)【代理人】
【識別番号】100095359
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 篤
(72)【発明者】
【氏名】菊地 禮藏
【テーマコード(参考)】
2E139
【Fターム(参考)】
2E139AA07
2E139AB16
2E139AB23
2E139AB24
2E139AD01
(57)【要約】
【課題】多数の人数が避難可能で、避難効率の良い増水避難装置を提供する。
【解決手段】柱1と、複数のスライダ2と、複数のロープ3と、複数の避難船4とを有する。柱1は鉛直方向に伸びるよう基部1aが設置箇所に固定されている。各スライダ2は比重が1より小さく、各柱1に対し柱長さ方向にスライド可能に設けられている。各ロープ3は一端が各スライダ2ごとに取り付けられている。各避難船4は折畳み可能であって各ロープ3の他端に取り付けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱と、スライダと、ロープと、避難船とを有し、
前記柱は鉛直方向に伸びるよう基部が設置箇所に固定され、
前記スライダは比重が1より小さく、前記柱に対し柱長さ方向にスライド可能に設けられ、
前記ロープは一端が前記スライダに取り付けられ、
前記避難船は折畳み可能であって前記ロープの他端に取り付けられていることを、
特徴とする増水避難装置。
【請求項2】
前記スライダは複数から成り、各柱に複数設けられ、
前記ロープは複数から成り、各スライダごとに取り付けられ、
前記避難船は複数から成り、各ロープごとに取付けられていることを、
特徴とする請求項1記載の増水避難装置。
【請求項3】
各避難船はそれぞれ連結可能な連結部材を有することを、特徴とする請求項2記載の増水避難装置。
【請求項4】
前記連結部材は互いに結合する第1連結部と第2連結部とから成り、前記第1連結部は前記避難船の後部に設けられ、前記第2連結部は前記避難船の前部に設けられ、各避難船には浮きが取り付けられ、各避難船は水センサと推進手段と舵と発信手段と受信手段と制御手段とを有し、前記水センサは前記避難船の底部に設けられて水を検出するとき検出信号を送信する構成を有し、前記推進手段は前記避難船を水上で走行させるよう前記避難船の底部に設けられ、前記舵は前記避難船の推進方向を制御するよう前記避難船の底部に設けられ、前記発信手段は前記第1連結部に設けられて前記水センサが前記検出信号を送信するとき前記避難船の後方に位置信号を送信し、前記受信手段は前記第2連結部に設けられて前記位置信号を受信するとき前記推進手段を駆動し、前記制御手段は前記受信手段を前記発信手段に接近させて前記第1連結部に前記第2連結部が連結するよう前記舵を制御する構成を有することを、特徴とする請求項3記載の増水避難装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、津波などの増水から避難するための増水避難装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パイルの中に支柱を入れ、支柱の先端と避難用浮台船を接続し、水に浸かると浮上して緊急避難場所となる津波高潮避難用浮台船が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の津波高潮避難用浮台船では、1本のパイルに1つの避難用浮台船しか設けられないため、乗船できる人数が限られ、避難効率が悪いという課題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、多数の人数が避難可能で、避難効率の良い増水避難装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る増水避難装置は、柱と、スライダと、ロープと、避難船とを有し、前記柱は鉛直方向に伸びるよう基部が設置箇所に固定され、前記スライダは比重が1より小さく、前記柱に対し柱長さ方向にスライド可能に設けられ、前記ロープは一端が前記スライダに取り付けられ、前記避難船は折畳み可能であって前記ロープの他端に取り付けられていることを、特徴とする。
【0007】
本発明に係る増水避難装置は、津波などの増水に遭遇するとき、折り畳んでおいた避難船を組み立て、船内に避難する。増水の際、スライダが水面上に浮き、スライダにロープでつながれた避難船は、柱からロープの長さだけ離れた位置に留まることができる。増水が治まると、スライダは柱の下部に下り、避難船も地面に下りることができる。避難船は、大きく作ったり複数設けたりすることで多数の人数が避難可能で、避難効率を良好にすることができる。
【0008】
本発明に係る増水避難装置において、前記スライダは複数から成り、各柱に複数設けられ、前記ロープは複数から成り、各スライダごとに取り付けられ、前記避難船は複数から成り、各ロープごとに取付けられていることが好ましい。
この場合、複数の避難船がロープでそれぞれ複数のスライダに取り付けられるので、複数の避難船により多数の人数が避難可能で、避難効率を良好にすることができる。
【0009】
本発明に係る増水避難装置において、各避難船はそれぞれ連結可能な連結部材を有することが好ましい。
この場合、連結部材で各避難船を連結することにより、増水した水面が津波や風などで揺れる場合にも、安定性を高めることができる。
【0010】
本発明に係る増水避難装置において、前記連結部材は互いに結合する第1連結部と第2連結部とから成り、前記第1連結部は前記避難船の後部に設けられ、前記第2連結部は前記避難船の前部に設けられ、各避難船には浮きが取り付けられ、各避難船は水センサと推進手段と舵と発信手段と受信手段と制御手段とを有し、前記水センサは前記避難船の底部に設けられて水を検出するとき検出信号を送信する構成を有し、前記推進手段は前記避難船を水上で走行させるよう前記避難船の底部に設けられ、前記舵は前記避難船の推進方向を制御するよう前記避難船の底部に設けられ、前記発信手段は前記第1連結部に設けられて前記水センサが前記検出信号を送信するとき前記避難船の後方に位置信号を送信し、前記受信手段は前記第2連結部に設けられて前記位置信号を受信するとき前記推進手段を駆動し、前記制御手段は前記受信手段を前記発信手段に接近させて前記第1連結部に前記第2連結部が連結するよう前記舵を制御する構成を有していてもよい。
【0011】
この場合、各避難船は波を被ったり穴があいたとしても、浮きにより沈没を免れることができる。また、水センサが避難船の底部で水を検出して検出信号を送信すると、発信手段が避難船の後方に位置信号を送信する。受信手段は位置信号を受信するとき推進手段を駆動し、推進手段は避難船を水上で走行させる。制御手段は舵を制御し、舵は避難船の推進方向を制御して第1連結部に第2連結部を連結させる。こうして、増水したとき、複数の避難船を自動的に連結させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、多数の人数が避難可能で、避難効率の良い増水避難装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態の増水避難装置を示す概略正面図である。
【
図2】
図1に示す増水避難装置の避難船を示す(A)平面図、(B)屋根面図である。
【
図3】
図1に示す増水避難装置の避難船を示す斜視図である。
【
図4】
図1に示す増水避難装置の避難船の配置例(A)~(C)を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
図1~
図4は、本発明の実施の形態の増水避難装置を示している。
図1に示すように、増水避難装置は、柱1と、複数のスライダ2と、複数のロープ3と、複数の避難船4とを有している。柱1は、鉛直方向に伸びるよう基部1aが設置箇所に固定されている。設置箇所は、病院や救命室、老人ホームなどの近くにある公園などの広い場所が望ましい。柱1は上端に4本の転倒防止用の筋交いロープ5のそれぞれ上端が取り付けられ、各筋交いロープ5は柱1を中心としてそれぞれ等角度離れて斜め四方に伸び、張った状態で下端が地面に取り付けられている。柱1の長さは、20メートル以上が好ましい。柱1は、複数本が設置されていてもよい。
【0015】
各スライダ2は、比重が1より小さい金属製またはセラミック製のリングから成り、柱1に対し柱長さ方向にスライド可能に取付けられている。各ロープ3は、一端が各スライダ2に取り付けられている。なお、本明細書において、「ロープ」の範疇にはワイヤ、チェーンが含まれる。各避難船4は、折畳み可能であって、先端が各ロープ3の他端に取り付けられ、各ロープ3で柱1に繋がれている。避難船4は、特許第3023951号公報などに記載の公知の方法により折り畳むことができる。避難船4は、4,5分で組み立て可能であることが好ましい。
図2および
図3に示すように、避難船4は、組み立てたとき直方体状であって、四方の壁に網入りガラスのサッシ窓41を有している。避難船4は、数十トンの負荷にも耐えられる強度を有している。避難船4は、波の高さ70メートルの津波にも耐えられるものが好ましい。避難船4は、定員50名の大型のものであっても、2,3名用の小型のものであってもよい。
図3に示すように、避難船4は、屋根から障害物防止用の網42が掛けられている。網42は、網目が約5cm角で、太さ約1cmの麻糸から成っている。各避難船4の内部には、ベッド、トイレ、プロパンガスボンベ、貯水タンク、自家発電機、炊飯器、雨漏り防止用袋などを設置しておく。
【0016】
各避難船4には、四方の壁面下部に転覆防止用の複数の浮き43が取り付けられている。浮き43は、空気入り袋から成る。各避難船4は、それぞれ連結可能な連結部材を有する。連結部材は、例えば、列車の連結器のような公知の構造から成る。連結部材は、互いに結合する第1連結部44と第2連結部45とから成る。第1連結部44は避難船4の後部に設けられ、第2連結部45は避難船4の前部に設けられている。避難船4の連結方法としては、
図4(A)~(C)に示すように、種々の方法が考えられる。
【0017】
各避難船4は、水センサと推進手段と舵と発信手段と受信手段と制御手段とを有している。水センサは、避難船4の底部に設けられて水を検出するとき検出信号を送信する構成を有している。水センサは、例えば、浮玉が水に浮いたとき、スイッチをオンにする機構から成る。推進手段は、プロペラを備えたモータから成り、避難船4を水上で走行させるよう避難船4の底部に設けられている。舵は、避難船4の推進方向を制御するよう避難船4の底部に設けられている。発信手段は、第1連結部44に設けられて水センサが検出信号を送信するとき避難船4の後方に位置信号を送信する構成を有している。受信手段は、第2連結部45に設けられて位置信号を受信するとき推進手段を駆動する構成を有している。制御手段は、受信手段を発信手段に接近させて第1連結部44に第2連結部45が連結するよう舵を制御する構成を有している。
【0018】
増水避難装置は、津波や河川などの増水に遭遇するとき、折り畳んでおいた避難船4を組み立て、船内に避難する。増水の際、スライダ2が水面上に浮き、スライダ2にロープ3でつながれた避難船4は、柱1からロープ3の長さだけ離れた位置に留まることができる。各避難船4は波を被ったり船体に穴があいたとしても、浮き43により沈没を免れることができる。また、壁面に設けた浮き43により、壁面を漂流物から守ることができる。
【0019】
増水避難装置では、複数の避難船4がロープ3でそれぞれ複数のスライダ2に取り付けられるので、複数の避難船4により多数の人数が避難可能で、避難効率を良好にすることができる。また、連結部材で各避難船4を連結することにより、増水した水面が津波や風などで揺れる場合にも、安定性を高めることができる。
【0020】
増水避難装置では、水センサが避難船4の底部で水を検出して検出信号を送信すると、発信手段が避難船4の後方に位置信号を送信する。受信手段は位置信号を受信するとき推進手段を駆動し、推進手段は避難船4を水上で走行させる。制御手段は舵を制御し、舵は避難船4の推進方向を制御して第1連結部44に第2連結部45を連結させる。こうして、増水したとき、複数の避難船4を自動的に連結させることができる。
【0021】
増水が治まると、スライダ2は柱1の下部に下り、避難船4も地面に下りることができる。避難船4は、大きく作ったり複数設けたりすることで多数の人数が避難可能で、避難効率を良好にすることができる。
【0022】
なお、避難船4の底部には、走行用の車輪が取り付けられていてもよい。また、避難船4に室内から伸びるよう引綱用ロープを取り付けてもよい。避難船4には、排水用の自動ポンプを準備しておいてもよい。また、避難船4には、テレビやラジオ、2日分くらいの食料、折畳みベッド、使い捨て袋を装着可能なトイレ、漂流物を押し離すための2mの長さの棒を備えておくことが好ましい。
避難船4の保管場所には、海側または河川側に、浮流障害物の防止用網の網収納箱を地面と平らにした地下に設置しておいてもよい。網収納箱は、細長い箱から成り、ごみなどの漂流物を止めるための網を内部に収納している。網は、増水の際に水面まで網を浮き上がらせるための浮きを上部に有している。網は、柱1に取り付けられた網昇降用のロープにより柱1に沿って昇降可能となっており、柱1に沿って始めにモータにより押しボタンスイッチ操作で10mの高さまで上昇し、その後、なお水位が上がるときは浮きの浮力で水位とともに上昇していくことが可能である。網は水面下10mまで広がり、下部が連結ロープで柱1に取り付けられていることが好ましい。
【符号の説明】
【0023】
1 柱
2 スライダ
3 ロープ
4 避難船
5 筋交いロープ
41 サッシ窓
42 網
43 浮き
44 第1連結部
45 第2連結部