(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042300
(43)【公開日】2022-03-14
(54)【発明の名称】エキスの抽出方法
(51)【国際特許分類】
A61K 36/074 20060101AFI20220307BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220307BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20220307BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220307BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220307BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20220307BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20220307BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20220307BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20220307BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20220307BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20220307BHJP
A23L 19/00 20160101ALN20220307BHJP
【FI】
A61K36/074
A61P35/00
A61P37/04
A61P29/00
A61P3/10
A61P9/12
A61P3/06
A61P7/02
A61P31/12
A61P3/04
A61P37/08
A23L19/00 101
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020147667
(22)【出願日】2020-09-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】316018340
【氏名又は名称】TK製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100188857
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 智文
(72)【発明者】
【氏名】瀧沢 努
【テーマコード(参考)】
4B016
4C088
【Fターム(参考)】
4B016LG14
4B016LK04
4B016LP01
4B016LP02
4B016LP05
4C088AA06
4C088BA05
4C088CA02
4C088CA05
4C088NA20
4C088ZA42
4C088ZA54
4C088ZA70
4C088ZB09
4C088ZB11
4C088ZB13
4C088ZB26
4C088ZB33
4C088ZC33
4C088ZC35
(57)【要約】
【課題】菌類を含有する固形物からのエキス抽出効率を向上させる。
【解決手段】
菌類を含有する固形物からのエキス抽出方法。固形物から水でエキスを抽出する第1の抽出工程を行う。第1の抽出工程で得られた残渣から、前記第1の抽出工程で用いた水よりも酸性の水でエキスを抽出する第2の抽出工程を行う。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
菌類を含有する固形物からのエキス抽出方法であって、
前記固形物から水でエキスを抽出する第1の抽出工程と、
前記第1の抽出工程で得られた残渣から、前記第1の抽出工程で用いた水よりも酸性の水でエキスを抽出する第2の抽出工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1の抽出工程は、前記固形物から水でエキスを抽出する第1の処理と、第1の処理で得られた残渣から水でエキスを抽出する第2の処理と、を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の抽出工程で用いる水は、有機酸を含有する水であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の抽出工程では、前記固形物と水との混合物を加熱することでエキスを抽出し、
前記第2の抽出工程では、前記残渣と、前記第1の抽出工程で用いた水よりも酸性の水と、の混合物を加熱することでエキスを抽出する
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記固形物は霊芝を含有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エキスの抽出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キノコを含む菌類は様々な有効成分を含有している。例えば霊芝は、サルノコシカケ科に属するキノコであり、有効成分としてβ-グルカン、テルペノイド類、ゲルマニウム、キチン質、エリタデニン、レンチシン、ヌクレオチド、ステロイド類、食物繊維等を含んでいることが知られている。また、この種のキノコは一般的な薬用効果として、抗腫瘍活性、免疫増強、抗炎症作用、血糖降下作用、血圧降下作用、コレステロール低下作用、抗血栓作用、抗ウイルス作用、肥満抑制作用、食物繊維効果などが発見されており、花粉症やアトピー性皮膚炎、糖尿病あるいは癌等にも有効であることが知られている。しかしながら、菌類からエキスとして取り出せる有効成分の量はごく僅かである。
【0003】
菌類からのエキスの抽出方法としては、菌類を熱水に浸漬してエキスを煮出す熱水抽出方法と、クロロホルム、エーテル、アルコール、苛性ソーダ、又は塩水等の溶媒に菌類を冷浸又は温浸することによりエキスを抽出する方法と、エキスの揮発油成分を抽出する水蒸気抽出法及び昇華法とがある。例えば、特許文献1は、スライス霊芝と脱イオン水と有機酸(例えば、クエン酸、乳酸、リンゴ酸等)を含む5~10℃の低温水溶液から霊芝エキスを低温抽出する方法を提案している。また、特許文献2は、キノコ子実体混合物(例えば、霊芝、アガリクス・ブラゼイ、舞茸、シイタケ)を培地としてキノコ菌糸が培養されたキノコ菌糸体を98℃の高温水に浸漬してエキスを抽出し、抽出された残渣を高温水に浸漬してさらにエキスを抽出する方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2777073号公報
【特許文献2】特許第3373821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、菌類を含有する固形物からエキスを抽出する際、エキスの抽出量が少ないという問題がある。
【0006】
本発明は、菌類を含有する固形物からのエキス抽出効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的を達成するために、本発明の一実施形態に係るエキス抽出方法は以下の構成を備える。すなわち、菌類を含有する固形物からのエキス抽出方法であって、前記固形物から水でエキスを抽出する第1の抽出工程と、前記第1の抽出工程で得られた残渣から、前記第1の抽出工程で用いた水よりも酸性の水でエキスを抽出する第2の抽出工程と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、菌類を含有する固形物からのエキス抽出効率を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。
【0010】
本発明の一実施形態に係る、菌類を含有する固形物からのエキス抽出方法は、第1の抽出工程と、第2の抽出工程と、を有する。以下、これらの工程について説明する。
【0011】
第1の抽出工程においては、菌類を含有する固形物から水でエキスを抽出する。菌類としては、キノコ、酵母、又はカビ等の真菌でありうる。キノコは、菌類の中でも、胞子形成のために作る構造である、目に見える大きさの子実体を形成することができ、キノコの子実体は一般に傘と柄の構造を有している。エキスが抽出されるキノコの例としては、霊芝、アガリクス・ブラゼイ、舞茸、及び椎茸が挙げられる。
【0012】
菌類を含有する固形物は、菌類の菌糸体又は子実体を含むことができる。例えば、キノコの根元に生えている根のような、菌類が形成する糸状の部分は菌糸体と呼ばれる。一実施形態において、菌類を含有する固形物は、培地と、培地上で培養された菌糸体とを含んでいてもよく、このような固形物は、菌類を構成する菌糸を固体培地に接種又は植付けて培養することにより得ることができる。菌類を含有する固形物は、2種類以上の菌類を含んでいてもよい。なお、固形物が霊芝を含んでいる場合において、霊芝独特の渋味を解消するために、固形物は、マツタケ、かわら茸、又はチョレイマイタケのようなキノコ、又は漢方薬に使用される薬草を更に含んでいてもよい。
【0013】
以下に、菌類としてキノコを含有する固形物の調製方法の一例を示す。以下の例では、キノコ子実体混合物を培地としてキノコ菌糸が培養される。まず、キノコ子実体をおがくず状に粉砕し、65~75%(重量)の水分を与えることによって培地を調製する。ここで用いるキノコ子実体は、霊芝と、少なくともアガリクス・ブラゼイ、舞茸、椎茸中の1又は2種以上と、の混合物であってもよい。得られた培地に対しては滅菌処理が行われる。滅菌処理方法としては、常圧蒸気釜にて培地を99℃で7~8時間加熱する、又は高圧蒸気釜にて培地を1.1~2気圧の圧力下で120~150℃で2~3時間加熱する方法が挙げられる。滅菌処理済の培地は、20~26℃の室温に冷却される。
【0014】
こうして得られた培地に対し、無菌室にてキノコ菌糸を接種又は植付けすることができる。1回の接種又は植付けにつき、1種類のキノコ菌糸を培地に接種又は植付けしてもよい。キノコ菌糸の接種又は植付けは複数回行うことができ、各々の接種又は植付けにおいてキノコ菌糸の種類を変更してもよい。最初にキノコ菌糸の接種又は植付けが行われてから次にキノコ菌糸の接種又は植付けを行うまでには、間隔を空けることができる。また、培養後に乾燥させたキノコ菌糸を滅菌することによって培地を調製し、さらに異なる種類のキノコ菌糸を接種又は植付けしてもよい。培養のために、キノコ菌糸には、栄養素として米糠、ふすま、コンブラン等の混合物及び澱粉にブドウ糖を加えたもの等を与えることができる。室温に保たれた培養室で、培地が2~3週間保存されることによって、キノコ菌糸は培養される。
【0015】
こうして得られたキノコ菌糸体、又は菌糸体と培地との混合物は、菌類を含有する固形物として用いることができる。得られたキノコ菌糸体及び培地は、必要に応じて粉砕又は細断(例えば2~3mm程度の幅)してもよい。また、得られたキノコ菌糸体及び培地に対しては、滅菌処理を行ってもよいし、乾燥処理を行ってもよい。滅菌処理は、例えば、キノコ菌糸体を粉砕し、100℃以上で30~60分、1.1~2気圧の圧力下において120~160℃で10~20秒、又は、1.5~2気圧の圧力下において140℃の温度で10~20秒、加熱することによって行うことができる。このように短時間の滅菌処理を行うことにより、キノコのエキス成分の含量低下を抑制することができる。滅菌処理の加熱方法としては、例えばキノコ菌糸体をガス又は電気等で直接的に加熱する方法、及びキノコ菌糸体を高温高圧蒸気又は高圧ガス等の雰囲気により加熱する方法が挙げられる。これらの加熱方法により、キノコに付着する細菌及び雑菌類の滅菌処理を短時間に行うことができる。
【0016】
また、キノコエキスの香り又は風味を向上させるために、キノコ菌糸体に対して焙煎を行ってもよい。例えば、100~250℃で15~30分間、キノコ菌糸体を加熱することによって焙煎を行うことができる。このような焙煎により、キノコ菌糸体の滅菌を行ってもよい。
【0017】
第1の抽出工程における、菌類を含有する固形物からエキスの抽出方法としては、例えば、低温抽出、熱水抽出、蒸気抽出、過熱水抽出、及び過熱蒸気抽出等の方法がある。本実施形態においては、水を用いてエキスの抽出が行われ、例えば、固形物を水に浸漬することによりエキスを抽出する、低温抽出又は熱水抽出が行われる。抽出に用いる水としては、中性(pH5以上9以下)の水を用いることができる。例えば、水道水と同等のpH(pH5.8以上8.6以下)を有する水を用いてもよいし、精製された純水(例えばpH7.0)が用いられてもよい。水は、溶質を実質的に含んでいなくてもよい。
【0018】
熱水抽出を行う場合、エキスの抽出効率を高めるために、抽出温度は、60℃以上、80℃以上、又は90℃以上とすることができ、固形物と水との混合物を沸騰させてもよい。加熱方法は特に限定されないが、ガス又は電気等を用いてもよい。熱水抽出においては、所定の抽出時間の間、抽出温度を保つことができ、抽出時間は、エキスの抽出効率を高めるために、5分以上、10分以上、又は30分以上であってもよく、一方でエキス成分の分解を抑制するために、3時間以下、又は2時間以下であってもよい。
【0019】
第1の抽出工程は、前記固形物から水でエキスを抽出する第1の処理と、第1の処理で得られた残渣から水でエキスを抽出する第2の処理と、を含んでいてもよい。このように、第1の抽出工程において、2回又はそれ以上の回数の抽出を行うことができる。このような構成により、固形物に含まれるエキスをより効率的に抽出することができる。第1の処理と第2の処理では同じ抽出方法が用いられてもよい。例えば、第1の処理で用いる水は、第2の処理で用いる水と、pHの性質が同じであってもよい。また、第1の処理と第2の処理とでは、共に熱水抽出が行われてもよい。この場合、抽出温度及び抽出時間は、同じであっても良いし、異なっていてもよい。
【0020】
第2の抽出工程では、第1の抽出工程で得られた残渣から、第1の抽出工程で用いた水よりも酸性の水でエキスを抽出する。一実施形態においては第1の抽出工程で中性の水が用いられ、第2の抽出工程では酸性の水(pHが0以上5未満)が用いられる。効率よくエキスを抽出するために、第2の抽出工程で用いる水は、添加剤として酸を含有していてもよい。酸としては、例えば有機酸を用いることができ、有機酸の例としては、乳酸、酢酸、クエン酸、又はリンゴ酸のようなカルボン酸が挙げられる。一実施形態においては、酸として、クエン酸又はリンゴ酸のようなヒドロキシ酸が用いられる。
【0021】
一実施形態において、エキスの抽出効率を向上させるために、酸の添加量は、0.01g以上、0.05g以上、又は0.1g以上であってもよい。酸の添加量は、固形物の量に応じて増減させてもよく、例えば、一実施形態においては、固形物16.4gに対して、0.01g以上、0.05g以上、又は0.1g以上の割合で、酸が添加されてもよい。また、酸の添加量は、抽出に用いる水の量に応じて増減させてもよく、例えば、一実施形態においては、水66.7mlに対して、0.01g以上、0.05g以上、又は0.1g以上の濃度となるように、酸が添加されてもよい。
【0022】
第1の抽出工程で用いた水よりも酸性の水を用いることを除き、第2の抽出工程では、第1の抽出工程と同様の手法を用いてエキスの抽出を行うことができる。例えば、第2の抽出工程では、第1の抽出工程で得られた残渣を水に浸漬することによりエキスを抽出する、低温抽出又は熱水抽出を行うことができる。熱水抽出を行う場合、第2の抽出工程における抽出温度及び抽出時間は、第1の抽出工程と同じであってもよいし、異なっていてもよい。第2の抽出工程における混合物の抽出温度及び抽出時間は、第1の抽出工程で説明したように適宜選択することができるため、説明を省略する。
【0023】
本実施形態においては、水でエキスを抽出する第1の抽出工程と、第1の抽出工程で用いた水よりも酸性の水でエキスを抽出する第2の抽出工程と、が組み合わせて用いられる。このような組み合わせにより、単に水でエキスを複数回抽出する処理、及び単に酸性の水でエキスを抽出する処理と比較して、エキス、とりわけβグルカンのような有用成分の、顕著な抽出効率の向上がみられる。とりわけ、中性の水を用いた第1の抽出工程と、酸性の水を用いた第2の抽出工程と、を組み合わせることにより、βグルカンのような有用成分の抽出効率を顕著に向上させることができる。その理由は明確ではないが、第1の抽出工程で様々な成分が抽出された後の固形物に対しては、βグルカンのような有用成分を抽出する酸性成分の効果が向上することが考えられる。
【実施例0024】
[分析方法]
各実施形態のキノコエキスを評価するための方法を以下で説明する。まず、得られたキノコエキスに水を加え一定の容積に調整した後、キノコエキス溶液の糖度を測定するために、キノコエキス溶液のBrix測定を行う。キノコエキス溶液250mlを蒸発乾固したものに対し重量測定及び酵素法によるβグルカンの含量測定を行う。βグルカンの含量測定結果に基づいて、菌糸体重量に対するβグルカンの含量の割合を算出する。
【0025】
[実施例1]
霊芝、アガリクス・ブラゼイ、舞茸、及び椎茸を混合して粉砕し、水を加えて滅菌することにより培地を形成した。この培地に霊芝菌糸を接種して培養することによりキノコ菌糸体を形成した。
【0026】
上記のキノコ菌糸体16.4gに水100mlが混合された混合物を沸騰するまで加熱した。混合物は、90℃以上を保持した状態で1時間静置された。混合物を常温に冷却した後、混合物を濾過することによって、キノコエキス及びキノコ菌糸体の残渣が得られた(1回目の抽出)。上記の残渣に水66.7mlを加えた混合物は、沸騰するまで加熱され、90℃以上を保持した状態で1時間静置された。混合物を常温に冷却した後、混合物を濾過することによって、キノコエキス及びキノコ菌糸体の残渣が得られた(2回目の抽出)。上記残渣に水66.7ml及びクエン酸0.2gを加えて混合物を得た。以降は、1回目及び2回目の抽出と同様の工程であるため、説明を省略する(3回目の抽出)。1回目から3回目の抽出でそれぞれ得られたキノコエキスを全て混合し、全てのキノコエキスに水を加え、キノコエキス溶液250mlを得た。
【0027】
上記の分析方法に基づき、キノコエキス溶液の分析をした。Brixは1.3%、キノコエキス含量は2.946g(250mlあたり)、キノコエキス中のβグルカン含量は0.48g(250mlあたり)であった。このように、菌糸体重量の2.93%に相当する量のβグルカンが抽出できた。
【0028】
[比較例1]
実施例1と同様に形成したキノコ菌糸体16.4gに水100mlを加えた混合物を沸騰するまで加熱した。混合物は、90℃以上を保持した状態で1時間静置された。混合物を常温まで冷却した後、混合物を濾過することによって、キノコエキスとキノコ菌糸体の残渣が得られた。抽出したキノコエキスにクエン酸0.2gと水を加え、キノコエキス溶液250mlを得た。
上記の分析方法に基づき、キノコエキス溶液の分析をした。Brixは1.2%、キノコエキス含量は2.479g(250mlあたり)、βグルカン含量は0.41g(250mlあたり)であった。このように、菌糸体重量の2.50%に相当する量のβグルカンが抽出された。
【0029】
[比較例2]
実施例1と同様に形成したキノコ菌糸体16.4gに水100ml及びクエン酸0.2gを加えた混合物を沸騰するまで加熱した。混合物は、90℃以上を保持した状態で1時間静置された。混合物を常温まで冷却した後、混合物を濾過することによって、キノコエキスとキノコ菌糸体の残渣が得られた。抽出したキノコエキスに水を加え、キノコエキス溶液250mlを得た。
上記の分析方法に基づき、キノコエキス溶液の分析をした。Brixは1.2%、キノコエキス含量は2.602g(250mlあたり)、βグルカン含量は0.42g(250mlあたり)であった。このように、菌糸体重量の2.56%に相当する量のβグルカンが抽出された。
【0030】
[比較例3]
実施例1と同様に形成したキノコ菌糸体16.4gに水100mlが混合された混合物を沸騰するまで加熱した。混合物は、90℃以上を保持した状態で1時間静置された。混合物を常温に冷却した後、混合物を濾過することによって、キノコエキス及びキノコ菌糸体の残渣が得られた(1回目の抽出)。上記の残渣に水66.7mlを加えた混合物は、沸騰するまで加熱され、90℃以上を保持した状態で1時間静置された。混合物を常温に冷却した後、混合物を濾過することによって、キノコエキス及びキノコ菌糸体の残渣が得られた(2回目の抽出)。3回目の抽出は、2回目の抽出と同様の工程であるため、説明を省略する。1回目から3回目の抽出でそれぞれ得られたキノコエキスを全て混合し、全てのキノコエキスにクエン酸0.2gと水を混合し、キノコエキス溶液250mlを得た。
上記の分析方法に基づき、キノコエキス溶液の分析をした。Brixは1.3%、キノコエキス含量は2.705g(250mlあたり)、キノコエキス中のβグルカン含量は0.41g(250mlあたり)であった。このように、菌糸体重量の2.50%に相当する量のβグルカンが抽出された。
【0031】
上記のように、酸性の水を用いてエキスを抽出した比較例2では、中性の水を用いてエキスを抽出した比較例1と比較して、得られたエキス量及びβグルカン量は微増したにすぎなかった。また、中性の水を用いて3回の抽出を行った比較例3も、中性の水を用いて1回の抽出を行った比較例2と比較して、得られたエキス量及びβグルカン量はほとんど変化しなかった。それにもかかわらず、最初の抽出を行った後に、より酸性の水を用いた抽出を行った実施例1によれば、比較例1~3と比べて、格段に高いエキス量及びβグルカン量を得ることができた。これらの結果は、最初の抽出を行った後に、残渣に対してより酸性の水を用いた抽出を行うことが、エキス及びβグルカンの抽出量の増加に寄与しているものと考えられる。このように、上記の実施形態に係る方法は、単に酸性の水を用いてエキスを抽出する技術、及び単に複数回繰り返してエキスを抽出する技術と比較して、顕著な効果を有しているということができる。
【0032】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。