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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042330
(43)【公開日】2022-03-14
(54)【発明の名称】工具用アダプター及び加工器具
(51)【国際特許分類】
   B25D 17/08 20060101AFI20220307BHJP
   B23B 45/16 20060101ALI20220307BHJP
   B28D 1/14 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
B25D17/08
B23B45/16 Z
B28D1/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020147726
(22)【出願日】2020-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】392002343
【氏名又は名称】ユニカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】特許業務法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】鳴海 昭紀
【テーマコード(参考)】
2D058
3C036
3C069
【Fターム(参考)】
2D058AA14
2D058BB11
2D058CA05
2D058CB06
3C036EE18
3C036EE26
3C069AA04
3C069BA09
3C069BA10
3C069BB03
3C069BC02
3C069CA01
3C069CA07
3C069CA10
3C069EA03
(57)【要約】
【課題】 保管性、経済性に優れており、回転トルク及び軸方向力(打撃力)を伝達しても接合強度を維持・強化することのできる工具用アダプターを提供する。
【解決手段】シャンク11を有する工具10を装着する工具用アダプター1であって、回転トルクと軸方向力を伝達するロッド30と、ロッド30の端部と接合しロッド30から伝達される回転トルクをシャンク11に伝達するソケット20と、ロッド30の端部に設けられ、シャンク11に軸方向力を付与し、軸方向力の反力により端部に膨張力を付与する接合補強体50を有する工具用アダプター1を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャンクを有する工具を装着する工具用アダプターであって、
回転トルクと軸方向力を伝達するロッドと、
前記ロッドの端部と接合し前記ロッドから伝達される前記回転トルクを前記シャンクに伝達するソケットと、
前記ロッドの前記端部に設けられ、前記シャンクに前記軸方向力を付与し、前記軸方向力の反力により前記端部に膨張力を付与する接合補強体を有する、
ことを特徴とする工具用アダプター。
【請求項2】
前記ソケットが、一方の側で前記シャンクを装着し、他方の側で前記ロッドと接合する貫通孔を有し、
前記ロッドが、前記端部に軸方向に設けられた穴を有し、
前記接合補強体が、外周面に前記ロッドの前記穴と接合し、前記軸方向力の前記反力により前記ロッドの前記穴に前記膨張力を付与する外周テーパ面を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の工具用アダプター。
【請求項3】
前記ソケットが、前記貫通孔の前記ロッドと接合する側の内周面にソケット内周テーパ面を有し、
前記ロッドが、前記穴の内周面にロッド内周テーパ面と、前記端部の外周面にロッド外周テーパ面と、を有し、
前記ソケット内周テーパ面と前記ロッド外周テーパ面がテーパ接合し、
前記ロッド内周テーパ面と前記外周テーパ面がテーパ接合する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の工具用アダプター。
【請求項4】
前記シャンクが、キー溝を有し、
前記ソケットが、前記貫通孔の前記シャンクを装着する側の内周面に前記キー溝と嵌合する凸部を有する、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の工具用アダプター。
【請求項5】
前記シャンクが、SDSプラス型シャンク又はSDS-max型シャンクである、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の工具用アダプター。
【請求項6】
前記ロッドが、前記端部と反対側の端部にロッドシャンクを有し、
前記ロッドシャンクが、電動工具に接続される、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の工具用アダプター。
【請求項7】
前記請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の工具用アダプターを有する加工器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ドリル等の工具に回転トルク及び軸方向の軸方向力(打撃力)を伝達することができる工具用アダプターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドリル等の工具に回転トルク及び軸方向力(打撃力)を伝達することができる工具等の接続構造体として特許文献1に打撃工具用アダプターが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-160418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンクリートや石材への穴あけ加工は、工事の目的により加工する対象が地面や壁面あるいは天井等様々であり、特に天井への加工の場合には、作業姿勢を良好にするために、加工する穴の深さに必要な長さのドリルを別のシャンクアダプターで延長し、長尺のドリルとして扱う場合がある。
しかしながら、上記のような従来技術に係る打撃工具用アダプターは、ドリルを延長する機能を有するものではない。このため、天井を加工する場合には、作業姿勢を良好にするために、加工する深さに応じた長さのドリルを保有する必要があり、相当に長いドリルを含めて多種類のドリルを保有するため、その保管や経済性で大きな負担になっていた。
また、シャンクアダプターで延長する場合には、ドリルのシャンクを装着するソケットは回転トルクを伝えるために、筒状になっている内部にキー状の凸部を必要とするが、この製造性の観点からソケットと延長用のロッドは別体で構成することが望ましい。
しかし、ドリルに回転トルクを伝えるソケットと軸方向力(打撃力)を伝えるロッドは異なる力を受けるため、回転トルクや打撃力、振動がかかるような用途において使用し続けることでソケットとロッドの接合部の強度が低下してしまい、破損することがあった。
例えば、ソケットとロッドをネジ締結すると、ネジ部分が金属疲労により早期に破断することがある。また、ソケットを雌、ロッドを雄とするテーパ接合は、回転トルク、軸方向力ともに接合力を強くするようには影響しない方向であるため、使用時の打撃による振動で接合部が緩むことがある。
【0005】
そこで、本開示は、保管性、経済性に優れており、回転トルク及び軸方向力(打撃力)を伝達しても接合強度を維持・強化することのできる工具用アダプターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために以下によって把握される。
(1)本発明の工具用アダプターは、シャンクを有する工具を装着する工具用アダプターであって、回転トルクと軸方向力を伝達するロッドと、前記ロッドの端部と接合し前記ロッドから伝達される前記回転トルクを前記シャンクに伝達するソケットと、前記ロッドの前記端部に設けられ、前記シャンクに前記軸方向力を付与し、前記軸方向力の反力により前記端部に膨張力を付与する接合補強体を有する。
(2)上記(1)において、前記ソケットが、一方の側で前記シャンクを装着し、他方の側で前記ロッドと接合する貫通孔を有し、前記ロッドが、前記端部に軸方向に設けられた穴を有し、前記接合補強体が、外周面に前記ロッドの前記穴と接合し、前記軸方向力の前記反力により前記ロッドの前記穴に前記膨張力を付与する外周テーパ面を有する。
(3)上記(1)又は(2)において、前記ソケットが、前記貫通孔の前記ロッドと接合する側の内周面にソケット内周テーパ面を有し、前記ロッドが、前記穴の内周面にロッド内周テーパ面と、前記端部の外周面にロッド外周テーパ面と、を有し、前記ソケット内周テーパ面と前記ロッド外周テーパ面がテーパ接合し、前記ロッド内周テーパ面と前記外周テーパ面がテーパ接合する。
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、前記シャンクが、キー溝を有し、前記ソケットが、前記貫通孔の前記シャンクを装着する側の内周面に前記キー溝と嵌合する凸部を有する。
(5)上記(1)から(4)のいずれかにおいて、前記シャンクが、SDSプラス型シャンク又はSDS-max型シャンクである。
(6)上記(1)から(5)のいずれかにおいて、前記ロッドが、前記端部と反対側の端部にロッドシャンクを有し、前記ロッドシャンクが、電動工具に接続される。
(7)本発明の加工器具は、(1)から(6)のいずれかの工具用アダプターを有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、保管性、経済性に優れており、回転トルク及び軸方向力(打撃力)を伝達しても接合強度を維持・強化することのできる工具用アダプターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る工具用アダプターの全体概略図である。
図2】本発明の実施形態に係る工具用アダプターのソケットの断面図、側面図である。
図3】本発明の実施形態に係る工具用アダプターの工具を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る工具用アダプターの工具を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る工具用アダプターのロッドの断面図である。
図6】本発明の実施形態に係る工具用アダプターの接合補強体を示す図である。
図7】本発明の実施形態に係る工具用アダプターの接合状態を示す図である。
図8】本発明の実施形態に係る工具用アダプターの接合状態を示す図である。
図9】本発明の実施形態に係る工具用アダプターの接合状態において各要素に生じる力を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施形態について詳細に説明する。
なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号又は符号を付している。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る工具用アダプター1の全体概略図である。
図1を用いて、本発明の実施形態に係る工具用アダプター1を説明する。
【0011】
図1では、被加工物80がコンクリートからなる天井であり、天井に加工穴85を加工する作業を示すものである。加工穴85は、例えば、アンカーボルト用の下穴である。
このような場合には、作業姿勢を良好にするために、ハンマードリル70に延長用のロッド30を取り付けて、長さを延長している。ロッド30の先端にソケット20を接合している。ロッド30の先端の内側には接合補強体50を備えている。
【0012】
工具用アダプター1ーにおいて、ソケット20のロッド30と接合していない側には工具10が装着されている。被加工物80がコンクリートからなる天井であるため、この場合には工具10には、コンクリートドリルが用いられる。工具10は、作業内容や被加工物80の材質等に応じて適宜選択される。
【0013】
ロッド30は、立ち作業で天井を加工するため、1000mm程度の長さであるが、作業対象の状況に応じて適宜長さが選択され、2000mm程度であってもよく、あるいは、1000mmより短いものでもよい。例えば、床面や壁面を加工する場合には、ロッド30の長さは50mm程度から500m程度になる。
ロッド30には天井等、ロッド30を上向きにして作業する際にこれを支えるためにグリップ40が設けられており、作業時の振動を吸収するためにグリップ40はバネ41などの弾性体で軸方向に押圧されている。
【0014】
図1において使用されているハンマードリル70は、電動工具に含まれるもので、コンクリート、モルタル、ブロック、タイルなどセメント系の材質や、大理石、御影石など石材に効率的に穴あけを行うためものである。
例えば、コンクリートはモルタル(セメント+砂)と砂利(石)を混ぜ合わせた物であり、コンクリート内の砂利(石)は回転のみによる切削が困難なため、鉄鋼ドリルビットのように回転による切削のみによって穴あけをするのではなく、回転に加えて穿孔方向に対し軸方向力を付与し、軸方向力(打撃力)で材料を粉砕して穴をあける機構になっている。このため、ハンマードリル70は、ロッド30に対して回転トルクと軸方向力(打撃力)を付与するものである。
【0015】
ハンマードリル70からロッド30に伝達された回転トルクは、ソケット20に伝達され、ソケット20から更に工具10に伝達される。
ハンマードリル70からロッド30に伝達された軸方向力(打撃力)は、ロッド30の先端の内側に備えられている接合補強体50を介して工具10に伝達される。
このように、回転トルクはソケット20から工具10に伝達され、軸方向力はソケット20を介さずにロッド30から接合補強体50を介して工具10に伝達されており、ソケット20とロッド30は異なる外力を受ける構造になっているため、ソケット20とロッド30の接合は通常であれば、使用を続けるに伴い強度が低下する可能性がある。しかし、本実施形態においては、後述するように、ソケット20とロッド30が、軸方向力により更に強く接合するように構成されている。
【0016】
図2は、本発明の実施形態に係る工具用アダプター1のソケット20の断面図、側面図である。
図2に示すように、ソケット20は貫通孔22を有する筒状体であって、貫通孔22の、一方の側で工具10のシャンク11が挿入されて装着し、他方の側でロッド30と接合している。
【0017】
工具10のシャンク11を装着する側の工具側端面23から見て、途中から凸部27が貫通孔22の内側に突出するように設けられている。図2に示す凸部27は、一般的にSDSプラス型シャンクと呼ばれるシャンクに適合する場合を示したものであり、使用するシャンクに応じて適宜形状が変更される。
【0018】
また、凸部27は対向する位置に2つ設けられているが、これに限定されるものではなく、1つであっても複数であってもよい。また、凸部27は工具側端面23から見て途中から設けられているが、これに限定されるものではなく、工具側端面23の位置から設けてもよい。凸部27の配置や長さは使用するシャンクに応じて適宜変更される。
【0019】
ソケット20は、貫通孔22の工具10のシャンク11を装着しない側においてロッド30と接合している。貫通孔22のロッド30と接合する部分はストレートの孔であってもよいが、図2においてはロッド側端面24の側の内周面にソケット内周テーパ面25を有している。
また、SDSプラス型シャンク等のシャンクに適合するように、ソケット20に、装着される工具の抜け防止用のボールを内蔵するようにしてもよい。
【0020】
なお、貫通孔22の内側に突出するように設けられている凸部27を有するソケット20を、例えば、1000mm程度から2000mm程度もの長尺のロッド30と一体製造する場合には、ソケット20がロッド30の側が閉じた袋状になることを考慮すると技術的に困難である。
また、一体製造することができたとしても、径の差の大きい長尺品となるため、切削加工で製造しても、鍛造加工で製造しても非常に不経済になってしまう。
したがって、本実施形態においては、貫通孔22を有するソケット20と長尺のロッド30を別の要素として、これらを接合する構造にしている。
【0021】
図3図4は、本発明の実施形態に係る工具用アダプター1の工具10を示す図である。
図3に示すとおり、工具10は、電動ドリル等に取付けるためのシャンク11を有している。図3に示す工具10は、一般的にSDSプラス型シャンクと呼ばれるシャンクを有しており、断面A-Aに示す断面形状となっている。回転トルクを伝達するために、ソケット20の凸部27とスライド係合するキー溝13が180°をなす位置に対向して2つ設けられている。キー溝13は、シャンク端面12まで連続して設けられており、これにより、キー溝13が嵌合する凸部27やキー等が設置された状態でもシャンク11をソケット20の貫通孔22に挿入することができる。
【0022】
また、抜け止め用のボールが係合する抜け防止溝18が、キー溝13と90°をなす位置に2つ対向して、シャンク端面12に繋がらないように途中まで設けられている。
【0023】
工具10は、中央付近から先端付近まで設けられた螺旋状の溝(スパイラル)を有するリード部14が設けられている。更に、先端部15には、被加工物80を切削するための刃先16が設けられている。
図3に示す工具10は、コンクリート等を加工するためのコンクリートドリルを示したものであり、刃先16は超硬合金、タングステン等で構成されている。
【0024】
図4は、工具10のシャンク11の別の例を示したものである。一般的にSDS-max型シャンクと呼ばれるシャンクであり、断面B-Bに示す断面形状となっている。図3に示すSDSプラス型シャンクに対して、図4に示すSDS-max型シャンクは、径の太いドリルに用いられることが多く、より強い回転トルクや軸方向力(打撃力)で加工する場合に用いられる。
シャンク11は、SDSプラス型シャンクやSDS-max型シャンクに限定されるものではなく、例えば、断面形状が六角形等の多角形であってもよい。
【0025】
図5は、本発明の実施形態に係る工具用アダプター1のロッド30のソケット20と接合する側先端の断面図である。
ロッド30のソケット側端部31には軸方向に設けられた穴35を有しており、ストレートの穴であってもよいが、図5においては穴35の内周面にロッド内周テーパ面37を有している。すなわち、図5において穴35はソケット側端部31から軸方向に進むに伴い徐々に径が小さくなっている。
また、ロッド30のソケット側端部31の外周面はストレートであってもよいが、図5においてはロッド外周テーパ面33を有している。すなわち、図5においてロッド30はソケット側端部31から軸方向に進むに伴い徐々に径が大きくなっている。
【0026】
図6は、本発明の実施形態に係る工具用アダプター1の接合補強体50を示す図である。
接合補強体50は、工具10のシャンクに軸方向力を付与するシャンク側端部51とその反対側の端部であるロッド側端部53を有している。シャンク側端部51とロッド側端部53を繋ぐ側面の外周面は、ストレートな形状であってもよいが、図6においては、シャンク側端部51とロッド側端部53をテーパ面である外周テーパ面55で繋ぐ構造になっている。
すなわち、図6において接合補強体50は、シャンク側端部51の側からロッド側端部53の側に進むに伴い徐々に径が小さくなっている。
接合補強体50の軸垂直断面の形状は図6においては丸形状であるが、これに限定されるものではなく、例えば、断面形状が六角形等の多角形であってもよい。
【0027】
図7は、本発明の実施形態に係る工具用アダプター1の接合状態を示す図である。
図7は、ソケット20、ロッド30及び接合補強体50の接合状態を示している。これらの接合は、テーパ面を有さない各要素を圧入構造で形成してもよいが、図7においては、ソケット20のソケット内周テーパ面25とロッド外周テーパ面33がテーパ接合し、ロッド内周テーパ面37と外周テーパ面55がテーパ接合しているものである。
【0028】
テーパ形状の雄雌を接続するテーパ接合にすることで、後述するように接合の強度の維持、強化する効果を奏することができる。また、テーパ接合にすることで、高い精度で接合することができる。
【0029】
図7において、ロッド30の穴35に接合補強体50を挿入してロッド内周テーパ面37に外周テーパ面55が接する状態にし、この状態でソケット20にロッド30を挿入してソケット内周テーパ面25にロッド外周テーパ面33が接する状態にする。この状態で、更にそれぞれ挿入が深くなる方向に軸方向の力を加えると、接合補強体50から押圧を受けてロッド30のロッド外周テーパ面33が外側に膨らむように力が生じ、これによりソケット内周テーパ面25とロッド外周テーパ面33のテーパ接合が強くなる。テーパ面を有さない圧入構造で形成しても基本的な接合の原理は同様である。
【0030】
図8は、本発明の実施形態に係る工具用アダプター1の接合状態を示す図である。
図8では、図7で示す接合状態に更に工具10のシャンク11が挿入された状態を示している。すなわち、工具10によって被加工物80を加工している場合の接合状態を示す図である。
図9は、本発明の実施形態に係る工具用アダプター1の接合状態において各要素に生じる力を示す図である。
図8図9を用いて、工具用アダプター1の接合の構造について説明する。
【0031】
工具10によって被加工物80を加工する場合には、工具10の回転による切削だけでなく軸方向力(打撃力)によって被加工物80を破砕して加工する。
ハンマードリル70から伝達された軸方向力をロッド30からその先端に設けられた接合補強体50のシャンク側端部51を介して工具10のシャンク端面12に付与することで、工具10の刃先16が被加工物80に軸方向力(打撃力)を作用させて破砕するとともに、ハンマードリル70から伝達された回転トルクをロッド30からロッド30と接合されているソケット20の貫通孔22の中に設けられた凸部27と工具10のシャンク11に設けられたキー溝13とが嵌合して伝達することで工具10が回転し、回転した刃先16による切削によって加工穴85をあけていく。
【0032】
破砕、切削した加工屑は、工具10の先端部15からリード部14にかけて設けられた螺旋状の溝(スパイラル)の作用によってシャンク11の方向に運ばれて、加工穴85の外に排出される。
【0033】
図8図9において、接合補強体50のシャンク側端部51を介してシャンク端面12に軸方向力Fを付与することで、工具10の刃先16は被加工物80から軸方向の反力Rを受け、接合補強体50のシャンク側端部51はシャンク端面12からこの軸方向の反力Rを受ける。この軸方向の反力Rにより、接合補強体50の外周テーパ面55からロッド30のロッド内周テーパ面37に膨張力Tが作用し、これによってロッド外周テーパ面33も膨張力Tを受け、更にこの膨張力Tがソケット内周テーパ面25に作用する。この結果、ソケット内周テーパ面25とロッド外周テーパ面33のテーパ接合が強化される。すなわち、ロッド外周テーパ面33が、軸方向力Fにより生じる反力Rによって膨張力Tを受けることでソケット内周テーパ面25とロッド外周テーパ面33の接合面に生じる圧力が強くなるため、ソケット20とロッド30の接合が更に強くなる。
【0034】
この観点から、圧入構造に対して、接合補強体50の外周がテーパとなっており外周テーパ面55有することが好ましく、接合補強体50とロッド30の接合がテーパ接合であることがより好ましく、これらに加えてソケット20とロッド30の接合がテーパ接合であることが更に好ましい。
【0035】
膨張力Tは、作用する接合面に対して垂直方向の力であり、テーパ接合が軸方向に近い場合には半径方向の力が主となる。すなわち、膨張力Tは外周テーパ面55から付与してロッド内周テーパ面37、ロッド外周テーパ面33を半径方向に膨張するようにも作用する。
そして、更に強い膨張力Tを受けることで、ソケット内周テーパ面25とロッド外周テーパ面33が変形(塑性変形)して膨張し、これによって更に強い接合になることもある。
【0036】
このように、工具用アダプター1は、ロッド30がハンマードリル70から強い軸方向力Fを受けるに伴い、ソケット20とロッド30の接合が更に強くなるように構成されており、工具用アダプター1をこのように構成することで、長い期間に亘って継続的に加工に使用してもソケット20とロッド30の接合が緩んでしまうという不具合が生じるのを防止することができる。
【0037】
なお、テーパ面を有さない圧入構造で形成しても基本的な接合の原理は同様である。しかし、テーパ接合の場合には、外周テーパ面55のより外径の大きな部分がロッド内周テーパ面37に食い込んでいくことが続くため、繰り返し使用しても、軸方向力Fによる反力Rによって膨張力Tが生じ続けるようになっている。
一方、ストレート形状による圧入構造の場合には食い込んでいく部分の外径が同じため、膨張力Tが増大しなくなることが考えられる。したがって、テーパ接合の方がより好ましい構造である。
【0038】
このように、本実施形態においては、ハンマードリル70から伝達される軸方向力(打撃力)によって被加工物80を加工するに伴い、工具用アダプター1の接合を更に強化することができる。
【0039】
すなわち、本実施形態によれば、ロッド30で延長することで標準的な工具を使用することを可能とし、保有する工具の種類を少なくすることができるため、これによって保管性、経済性に優れており、回転トルク及び軸方向力(打撃力)を伝達しても接合強度を維持・強化することができる工具用アダプター1を提供することができる。
【0040】
ロッド30はハンマードリル70から回転トルク及び軸方向力を伝達されるため、回転トルクを受けつつ軸方向の揺動が可能な接続構造になっていてもよい。この場合、ロッド30は、ソケット側端部31と反対側の端部に、このような回転トルク及び軸方向力を伝達可能に接続する図示しないロッドシャンクを備えている。例えば図3図4で示すSDSプラス型シャンク又はSDS-max型シャンクであってもよく、断面形状が六角形等の多角形であってもよい。ロッド30は、このロッドシャンクによって電動工具、ハンマードリル70に接続される。
【0041】
また、回転及び軸方向力(打撃力)を伝達するハンマードリル70を用いる内容で説明したが、これに限定されるものではない。回転と振動を伝達する振動ドリルや回転だけを伝達する通常の電動ドリル、その他の電動工具であっても、作業者によって被加工物に軸方向力を付与しながら加工が行われるため、工具用アダプター1に軸方向の反力が作用するため同様の作用効果が得られる。
【0042】
以上の説明において、天井に加工穴85を加工する作業を対象としたが、これに限定されるものではなく、床面や壁面を加工する場合にも同様の作用効果を奏するものである。また、穴あけ作業だけでなく、はつり作業等、他の作業にも適用可能である。
【0043】
また、以上の説明において、ハンマードリル70に工具用アダプター1を取り付け、工具用アダプター1のソケット20に工具10を装着して使用する内容としたが、これに限定されるものではなく、工具用アダプター1を図示しない加工器具に組み込んで使用することもできる。加工器具としては、例えば、コンクリート用穿孔機のような加工器具がある。ロッド30の長さは、組み込まれる加工器具の大きさに適合した長さが選択される。
【0044】
以上、具体的な実施形態に基づいて本発明を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形や改良を実施してもよい。
【0045】
このように、本発明は、具体的な実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形や改良を施したものも本発明の技術的範囲に含まれるものであり、そのことは、当業者にとって特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0046】
1 工具用アダプター
10 工具
11 シャンク
12 シャンク端面
13 キー溝
14 リード部
15 先端部
16 刃先
18 抜け防止溝
20 ソケット
22 貫通孔
23 工具側端面
24 ロッド側端面
25 ソケット内周テーパ面
27 凸部
30 ロッド
31 ソケット側端部
33 ロッド外周テーパ面
35 穴
37 ロッド内周テーパ面
40 グリップ
41 バネ
50 接合補強体
51 シャンク側端部
53 ロッド側端部
55 外周テーパ面
70 ハンマードリル
80 被加工物
85 加工穴
F 軸方向力
R 反力
T 膨張力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9