(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042334
(43)【公開日】2022-03-14
(54)【発明の名称】研磨ピーニング装置および研磨ピーニング方法
(51)【国際特許分類】
B24C 1/10 20060101AFI20220307BHJP
B24C 5/02 20060101ALI20220307BHJP
B24C 5/04 20060101ALI20220307BHJP
B24C 7/00 20060101ALI20220307BHJP
B24C 9/00 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
B24C1/10 A
B24C5/02 B
B24C5/02 C
B24C5/04 A
B24C7/00 D
B24C9/00 L
B24C9/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020147731
(22)【出願日】2020-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】松井 大貴
(57)【要約】 (修正有)
【課題】金属表面処理方法を効率的に実行できる装置及び方法を提供する。
【解決手段】研磨ピーニング装置10は、研磨粒子5とピーニング液3とを貯留し、ピーニング液3に浸漬される対象物1が底部11fに設置される、処理槽11と、上面に一様に配置された複数の窪み17を有し、底部11fに配置され、前記ピーニング液3を分配する分配室15と、窪み17の中央にそれぞれ鉛直方向上向きに配置され、分配室15と接続し、ピーニング液3を噴出する攪拌ノズル30と、処理槽11内に浸漬され、ピーニング液3を対象物1へ噴出するピーニングノズル55と、ピーニングノズル55を対象物1に対して相対的に移動させる移動装置48と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨粒子とピーニング液とを貯留し、前記ピーニング液に浸漬される対象物が底部に設置される、処理槽と、
上面に配置された複数の窪みを有し、前記底部に配置され、前記ピーニング液を分配する分配室と、
前記窪みの中央にそれぞれ鉛直方向上向きに配置され、前記分配室と接続し、前記ピーニング液を噴出する攪拌ノズルと、
前記処理槽内に浸漬され、前記ピーニング液を前記対象物へ噴出するピーニングノズルと、
前記ピーニングノズルを前記対象物に対して相対的に移動させる移動装置と、
を備える研磨ピーニング装置。
【請求項2】
前記窪みは、上方に向かうにしたがって、その径が大きくなる、
請求項1の研磨ピーニング装置。
【請求項3】
前記窪みは、球面状をなす、
請求項1又は2の研磨ピーニング装置。
【請求項4】
前記窪みは、上方から見て均一に配置された、
請求項1~3のいずれかの研磨ピーニング装置。
【請求項5】
前記攪拌ノズルは、
上方に延びて設置されたボディと、
前記ボディの下端に設置されたピーニング液流入口と、
前記ボディの内部に配置され、ピーニング液流入口と接続する内部噴口と、
前記ボディの上端に設置された噴口と、
前記内部噴口と前記噴口を接続し、前記ボディの内部に、上下に延びて配置された導通路と、
前記ボディの外周で前記窪みの内部に設置され、前記導通路の下端部に接続する研磨粒子吸込口と、を有する、
請求項1~4のいずれかの研磨ピーニング装置。
【請求項6】
前記処理槽の液面と前記対象物の中間の高さに、水平方向に延びて処理槽の内周に配置されたじゃま板を備える、
請求項1~5のいずれかの研磨ピーニング装置。
【請求項7】
前記処理槽の内部に、垂直方向に延びて処理槽の壁面から突出した立じゃま板を備える、
請求項1~6のいずれかの研磨ピーニング装置。
【請求項8】
前記ピーニングノズルは、
平型噴射ノズルと、
前記平型噴射ノズルの下流に、前記平型噴射ノズルの周りを1周り囲む側壁と、を有する、
請求項1~7のいずれかのいずれかの研磨ピーニング装置。
【請求項9】
前記底部に配置された排液口と、
前記排液口の外部に配置され、前記排液口を開閉する廃液弁と、
前記廃液弁を囲むように、前記排液口の外部に設置された廃液ダクトと、を備える、
請求項1~8のいずれかの研磨ピーニング装置。
【請求項10】
前記処理槽の上端部に、水平内側に配置された第1折り返しと、
前記第1折り返しの内側に配置され、下方に延びて配置された第2折り返しと、を備える、
請求項1~9のいずれかの研磨ピーニング装置。
【請求項11】
研磨粒子を、ホッパーから処理槽の内部に投入し、
ピーニング液を、処理槽の下方に均等に配置された攪拌ノズルの内部に設置された内部ノズルから噴出して、攪拌ノズルの周囲の窪みの内部に浮遊する前記研磨粒子と前記ピーニング液の懸濁液を、前記攪拌ノズルの内部に吸込み、
吸い込んだ前記懸濁液を、攪拌ノズルの上方に配置された噴口から、前記処理槽の内部に吹き上げて、前記研磨粒子を浮遊させ、
前記ピーニング液を、処理槽に貯留されたピーニング液に浸漬されたピーニングノズルから、前記処理槽の底部に設置された対象物の表面へ向けて噴射し、
前記噴出したピーニング液の流れに乗った前記研磨粒子が前記対象物に衝突して前記対象物の表面を研磨し、
前記噴射されたピーニング液によって発生したキャビティを前記対象物に衝突させて、前記対象物の表面に残留応力を与える、
研磨ピーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨ピーニング装置および研磨ピーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
研磨材と水を入れたタンク内に試料を固定し、タンク内に浸漬させて下方に向けたノズルから、プランジャポンプで加圧した水を試料(付加製造によって製造された金属材料)に噴射して、試料の表面の残留応力を低減し、表面粗さを改善する方法が提案されている(H. Soyama and D. Sanders, Use of an Abrasive Water Cavitating Jet and Peening Process to Improve the Fatigue Strength of Titanium Alloy 6Al-4V Manufactured by the Electron Beam Powder Bed Melting (EBPB) Additive Manufacturing Method, JOM 71(12), 4311-4318 (2019)、以下、非特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
非特許文献1の金属表面処理方法を効率的に実行できる装置及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の側面は、研磨ピーニング装置であって、
研磨粒子とピーニング液とを貯留し、前記ピーニング液に浸漬される対象物が底部に設置される、処理槽と、
上面に一様に配置された複数の窪みを有し、前記底部に配置され、前記ピーニング液を分配する分配室と、
前記窪みの中央にそれぞれ鉛直方向上向きに配置され、前記分配室と接続し、前記ピーニング液を噴出する攪拌ノズルと、
前記処理槽内に浸漬され、前記ピーニング液を前記対象物へ噴出するピーニングノズルと、
前記ピーニングノズルを前記対象物に対して相対的に移動させる移動装置と、を備える。
【0005】
本発明の第2の側面は、研磨ピーニング方法であって、
研磨粒子を、処理槽の内部に投入し、
ピーニング液を、処理槽の下方に均等に配置された攪拌ノズルの内部に設置された内部ノズルから噴出して、攪拌ノズルの周囲の窪みの内部に浮遊する前記研磨粒子と前記ピーニング液の懸濁液を、前記攪拌ノズルの内部に吸込み、
吸い込んだ前記懸濁液を、攪拌ノズルの上方に配置された噴口から、前記処理槽の内部に吹き上げて、前記研磨粒子を浮遊させ、
前記ピーニング液を、処理槽に貯留されたピーニング液に浸漬されたピーニングノズルから、前記処理槽の底部に設置された対象物の表面へ向けて噴射し、
前記噴出したピーニング液の流れに乗った前記研磨粒子が前記対象物に衝突して前記対象物の表面を研磨し、
前記噴射されたピーニング液によって発生したキャビティを前記対象物に衝突させて、前記対象物の表面に残留応力を与える。
【0006】
ピーニング液は、例えば、水である。ピーニング液は、界面活性剤を含まず、防錆剤を含む水溶液でも良い。防錆剤は、例えば、1級アミン、2級アミン、3級アミンであるアミン化合物である。
【0007】
研磨粒子は、例えば、アルミナ、ガーネットである。
【0008】
上方から見て、窪みは、略一様に配置される。例えば、上方から見て、窪みは、例えば、格子状に配置される。上方から見て、窪みは、一片の長さが等しい正三角形を敷き詰めたときの、三角形の頂点に配置されても良い。
【0009】
好ましくは、処理槽は、処理槽の上方に配置された拡大部を有する。拡大部の水平断面積は、処理槽の底部の水平断面積よりも大きい。
【0010】
処理槽内のピーニング液のまき上がりは、じゃま板によって抑制される。処理槽内のピーニング液の周方向への流れは、立じゃま板によって抑制される。研磨粒子はピーニング液の流れに乗って処理槽内を流動する。キャビティはピーニング液の流れに乗って処理槽内を流動する。結果として、じゃま板や立じゃま板は、研磨粒子やキャビティのまき上がりや周回を抑制する。
【0011】
ピーニング液は、下方から攪拌ノズルを通して供給され、上方のオーバーフロー口から排出される。ピーニング液が上昇するときに、処理槽の上方に設置された拡大部において、空塔速度が減少し、研磨粒子の沈降が促進する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態の研磨ピーニング装置の縦断面図
【
図5】第2実施形態の研磨ピーニング装置の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態の研磨ピーニング装置10は、処理槽11と、分配ブロック13と、窪み17と、攪拌ノズル30と、テーブル21と、移動装置47と、ピーニングノズル55と、廃液弁62と、ダクト63と、ホッパー71と、タンク41と、攪拌ポンプ43と、ピーニングポンプ45と、を有する。
【0014】
処理槽11は、底面11aと、排液口11bと、オーバーフロー口11cと、拡大部11dと、胴部11eと、底部11fと、を有する。処理槽11は、角柱状を成す開放型の槽である。処理槽11は、例えば、底面が1m~1.5m角であり、その高さが1m~2mである。底面11aは、傾斜している。底部11fは、処理槽11の底付近の部分である。排液口11bは、底部11fであって、上方から見て、底面11aが深い位置に配置される。排液口11bは、処理槽11の側壁に配置されて良い。排液口11bは例えば矩形の開口である。拡大部11dは、処理槽11の上方に配置される。拡大部11dの高さは、処理槽11の高さの30%~60%を占めて良い。拡大部11dは、処理槽11の横断面を拡大する。例えば、拡大部11dにおいて、処理槽11の一方の壁面が外方に張り出す。オーバーフロー口11cは、処理槽11の上方に配置される。例えば、オーバーフロー口11cは、拡大部11dに設置される。
【0015】
処理槽11は研磨粒子5とピーニング液3を貯留する。ピーニング液3の液面7は、オーバーフロー口11cの高さである。ピーニング液3は、例えば井戸水、工業用水、水道水、防錆剤入りの水溶液である。工業用水はろ過して使用される。防錆剤は、例えばアミン化合物である。研磨粒子5は、例えば#150のアルミナである。研磨粒子5は、例えば、底部11fの断面積について、単位面積当たりの質量で8(kgm-2)~160(kgm-2)投入される。
【0016】
分配ブロック13は、内部に分配室15を持つ、直方体の中空容器である。分配室15は、分配ブロック13の断面のほぼすべての領域を占めて、分配ブロック13の下方寄りに配置される。分配ブロック13の天板13a(
図3参照)の厚み24が厚い。なお、分配室15は、縦横に並んで、水平に延びて配置された丸穴が互いに接続して一つの大きな空間を成しても良い。
【0017】
テーブル21は、底部11fの横断面において中央付近に設置される。対象物1はテーブル21に固定される。
【0018】
処理槽11はじゃま板19を有してよい。じゃま板19は、胴部11eや拡大部11dに配置される。じゃま板19は、水平に設置される。じゃま板19は、好ましくは、処理槽11の内周を一周するように配置される。じゃま板19は、例えば平板である。じゃま板19は、貫通穴を有しても良い。例えば、じゃま板19は、網目状でも良い。じゃま板19は、上下方向に複数配置されても良い。じゃま板19は、好ましくは、研磨粒子5の過半が浮遊する高さよりも上方に設置される。じゃま板19は、テーブル21や対象物1よりも上方に設置される。
【0019】
処理槽11は、第1折り返し67と、第2折り返し69を有しても良い。第1折り返し67は、処理槽11の上端の内側に、水平面に沿って配置される。第1折り返し67は平板である。第1折り返し67は、処理槽11の上端の内周に沿って全周に設けられる。第2折り返し69は、第1折り返し67の内方端に、下方に折り曲げて配置される。第2折り返し69は、例えば鉛直面である。第2折り返し69は、第1折り返し67の内側全周に設けられる。
【0020】
廃液弁62は、排液口11bに設置される。例えば廃液弁62は、例えばピン61を中心にシリンダ(不図示)で回動する。廃液弁62は排液口11bを開閉する。
【0021】
ダクト63は、排液口11bの外方に、排液口11bを囲むように設置される。ダクト63は、例えばL字状を成し、排液口11bから水平に延びて、タンク41に研磨粒子5とピーニング液3を流し出す。
【0022】
タンク41は、廃棄タンク41aと、清浄タンク41bと、フィルタ42と、排出装置44と、を有する。ダクト63は、廃棄タンク41aに接続される。排出装置44は、例えばスクリューセパレータであり、廃棄タンク41aに設置される。排出装置44は廃棄タンク41aの内部に溜まった研磨粒子5を排出する。清浄タンク41bは、フィルタ42で廃棄タンク41aと接続される。フィルタ42は、液体ポンプを含み、ピーニング液3を汲み上げてろ過し、清浄タンク41bに供給する。フィルタ42は、例えば、サイクロンフィルタ、カートリッジフィルタ、マグネットフィルタ、ペーパーフィルタである。フィルタ42は、サイクロンフィルタとカートリッジフィルタを直列に接続しても良い。清浄タンク41bのオーバーフローは廃棄タンク41aに戻る。タンク41はピーニング液3を貯留する。
【0023】
ホッパー71は、研磨粒子5を貯留する。ホッパー71は、バルブ73と投入口75を介して、処理槽11に接続される。好ましくは、投入口75は、液面7よりも上方に設置される。
【0024】
攪拌ポンプ43は、例えば遠心ポンプである。攪拌ポンプ43は、清浄タンク41bと、分配室15と、接続する。攪拌ポンプ43は、清浄タンク41bからピーニング液3を汲み上げて分配室15へ送る。
【0025】
図1~
図3に示すように、複数の窪み17は、天板13aに均一に分散して配置される。例えば、上方から見て、窪み17は、間隔22を空けて、格子状に配置される。窪み17は、上方に向かうにしたがって、その径が大きくなる円錐状である。
図3に示すように、窪み17の上端の径25は、窪み17の高さ26よりも大きい。例えば、径25は、高さ26の1.5倍~10倍である。
【0026】
図3に示すように、攪拌ノズル30は、ボディ31と、噴口32と、ピーニング液流入口33と、内部噴口39と、導通路34と、研磨粒子吸込口35と、を有する。ボディ31は、鉛直方向に延びる略円筒状である。ボディ31の基端部には、おねじ31aが配置される。おねじ31aは天板13aにねじ込まれる。ボディ31の外周面は、上方に向かうにつれて、径がわずかに小さくなる。流入口33は、ボディ31の基端に、下方向きに配置される。内部噴口39は、流入口33と接続する。内部噴口39は、導通路34よりも小径である。内部噴口39は、吸込口35の近傍の上流側に配置される。噴口32は、ボディ31の上端に上方向きに配置される。噴口径36は例えば、1mm~5mmである。噴口32の高さ37は、例えば噴口径36の4倍~10倍である。導通路34は、内部噴口39と噴口32とを結び、鉛直方向に延びる。導通路34は、略円筒である。導通路34は、ボディ31の殆どの体積を占める。研磨粒子吸込口35は、ボディ31の胴部の下方に配置される。吸込口35は、開口35aと、軸線35bと、を有する。吸込口35は、ボディ31を貫通し、開口35aから導通路34に接続する。吸込口35は、ボディ31の外周面から半径方向内側に延びて、円周方向に均等に複数配置される。吸込口35は、例えば、3~5個(図では4個)配置される。開口35aは、ボディ31の外筒面に配置された吸込口35の開口部である。開口35aは、窪み17の内部に配置される。開口35aの開口径37は、噴口径36と実質的に同一である。好ましくは、開口35aは、窪み17の底部に配置される。軸線35bは、半径方向に沿って内側に向かうにつれて、上方に向かうように傾斜して良い。例えば、軸線35bとボディ31の中心との角38は、100度~120度である。
【0027】
ピーニング液3は、分配室15から、流入口33に流入し、内部噴口39から導通路34の内部に噴出する。このとき、導通路34の底部の外周部が負圧になる。そして、底部11fに浮遊している研磨粒子5が、処理槽11の内部のピーニング液3と一緒に懸濁液として吸込口35から導通路34に流入する。吸込口35から吸い込んだ研磨粒子5やピーニング液3が、流入口33から流入したピーニング液3に混合されて、噴口32から処理槽11内に噴出する。研磨粒子5は底部11fと攪拌ノズル30の間を循環する。
【0028】
空塔速度V(ms-1)は、攪拌ノズル30から噴出するピーニング液3の流量P(m3s-1)を胴部11eの断面積で割った値である。空塔速度Vは、研磨粒子5がピーニング液3から受ける流体抵抗が、研磨粒子5の重力と研磨粒子5の浮力との差と実質的に同一になるように設定される。その結果、底部11fで研磨粒子5が浮遊する。浮遊した研磨粒子5は、攪拌ノズル30によって吸い込まれて、上方に向けて吹き上げられる。研磨粒子5は、処理槽11の下方に偏在する。好ましくは、研磨粒子5は、対象物1のやや上方までに濃厚に存在する。拡大部11dにおいて、空塔速度Vが減少し、研磨粒子5の沈降が促進する。
【0029】
ピーニングポンプ45は、例えばピストンポンプである。例えば、ピーニングポンプの吐出圧力は、15MPa~80MPaである。ピーニングポンプ45は、清浄タンク41bとピーニングノズル55とを接続する。ピーニングポンプ45は、清浄タンク41bからピーニング液3を汲み上げ、ピーニングノズル55へ送る。
【0030】
図1に示すように、移動装置47は、移動コラム48と、送り台49と、ノズルホルダ53と、を有する。移動装置47は回転ヘッド50を有しても良い。移動コラム48は、左右方向Xと前後方向Yに自在に移動する。送り台49は、移動コラム48に上下方向Zに自在に移動できるように設置される。回転ヘッド50は、送り台49の先端部に、鉛直方向に延びるC軸52を中心に回転できるように設置される。ノズルホルダ53は、送り台49の先端部又は回転ヘッド50に設置される。好ましくは、ノズルホルダ53は、水平方向に延びるA軸51の回りに自在に回転できるように設置される。A軸のストロークは符号57で表される。ノズルホルダ53は水平軸から上方に角度56傾斜しても良い。角度56は、例えば0度~20度である。A軸の下方側の端はノズルホルダ53が鉛直下向きになる位置である。
【0031】
図4に示すように、ピーニングノズル55は、ノズルチップ55aと側壁55bを持つ。ピーニングノズル55は、ノズルホルダ53の先端に設置される。ノズルチップ55aは、噴口55cを持つ。ピーニングノズル55の噴口径58は、例えば、1mm~2mmである。ピーニングノズル55の噴射軸線55dは、ノズルホルダ53の長手方向に延びる。ノズルチップ55aは、噴口55cから噴射軸線55dとA軸51を通る噴射平面55eに沿って広がるように、ピーニング液3を噴射する。側壁55bは、例えば、噴射軸線55dを中心とする円筒壁面である。側壁55bの内径59は、例えば噴口径58の15倍~20倍である。側壁55bの高さ54は例えば、噴口径58の5~10倍である。
【0032】
側壁55bによって、噴口55cの周囲からのピーニング液3の流入が制限される。噴口55cからピーニング液が側壁55bの内部に噴射されて、側壁55bの内部に溜められたピーニング液3と、噴流との間に渦が発生し、キャビティの発生が促進する。
【0033】
ピーニングノズル55から噴射されたキャビティを多く含むキャビテーション噴流は、対象物1の表面にピーニング効果を与える。また、底部11fに浮遊する研磨粒子5は、キャビテーション噴流に巻き込まれて、対象物1の表面に衝突する。研磨粒子5は、対象物1の表面に沿って流れ、対象物1の表面を研磨する。
【0034】
キャビテーション噴流は、対象物1の表面に衝突し、対象物1の表面に沿って流れを変える。一部の噴流は、水平方向又は上方向きに流れる。研磨粒子5は、対象物1の表面と衝突して向きが変わった噴流に沿ってまき上がる。じゃま板19は、上方に向かう流れを阻害して、処理槽11の内部の流れを安定する。また、処理槽11内に発生したキャビティは、ピーニング液3の流れに乗って移動する。結果として、じゃま板19は、研磨粒子5の舞い上がりを抑制する。また、じゃま板19は、キャビティの舞い上がりを抑制する。
【0035】
液面7が揺れて、処理槽11の壁面を上るときがある。また、キャビテーション噴流が対象物1や壁面に衝突して、処理槽11の上方から飛び出るときがある。第1折り返し67、第2折り返し69は、処理槽11の上方から飛び出ようとするピーニング液3の流れの向きを変更して、処理槽11の内部に戻す。
【0036】
(第2実施形態)
図5に示すように、本実施形態の研磨ピーニング装置100は、処理槽111と、分配槽113と、立じゃま板119と、を有する。
【0037】
処理槽111は、薄板で構成された段付き円筒型であり、上下に開口している。処理槽111は、拡大部111dと、排液口11bと、を有する。拡大部111dは、円筒状であり、処理槽111の上方に配置される。排液口11bは、処理槽111の下方の側壁に設置される。
【0038】
図5及び
図6に示すように、立じゃま板119は、処理槽111の鉛直方向に延びて設置される。複数(図では4枚)の立じゃま板119は、処理槽111の内壁から半径方向に向けて突出して、円周方向に均等に設置される。立じゃま板119は、平板である。立じゃま板119は、貫通穴を有しても良い。立じゃま板119は、網目状でも良い。立じゃま板119は、円周方向へのピーニング液3の流動を阻害する。
【0039】
分配槽113は、天板113a(
図7参照)を持つ。分配槽113は、薄板で構成された中空円筒状である。天板113aは、処理槽111と分配槽113とを分離する。分配槽113の内部空間が分配室115である。
【0040】
図6に示すように、複数の窪み117は、天板113aには、均等に配置される。窪み117は、球面を成す。上方から見て、複数の窪み117は、一辺が長さ122である正三角形を敷き詰めたときの頂点の位置に配置される。窪み117は、最密に充填されても良い。
図7に示すように、窪み117においても、天板113aの厚みは等しい。例えば、天板113aはプレスによって製作される。
【0041】
窪みの中央に、攪拌ノズル30が配置される。吸込口35は、窪み117の底面付近に配置される。
【0042】
本発明は前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
3 ピーニング液
5 研磨粒子
10,100 研磨ピーニング装置
11、111 処理槽
15、115 分配室
17、117 窪み
30 攪拌ノズル
48 移動装置
55 ピーニングノズル
【手続補正書】
【提出日】2021-10-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨粒子とピーニング液とを貯留し、前記ピーニング液に浸漬される対象物が底部に設置される処理槽と、
上面に複数の窪みを有し、前記底部に配置され、前記ピーニング液を分配する分配室と、
前記窪みの中央にそれぞれ鉛直方向上向きに配置され、前記分配室と接続し、前記ピーニング液を噴出する攪拌ノズルと、
前記処理槽内に浸漬され、前記ピーニング液を前記対象物へ噴出するピーニングノズルと、
前記ピーニングノズルを前記対象物に対して相対的に移動させる移動装置と、
を備える研磨ピーニング装置。
【請求項2】
前記窪みは、上方に向かうにしたがって、その径が大きくなる、
請求項1の研磨ピーニング装置。
【請求項3】
前記窪みは、球面状をなす、
請求項1又は2の研磨ピーニング装置。
【請求項4】
前記窪みは、上方から見て均一に配置される、
請求項1~3のいずれかの研磨ピーニング装置。
【請求項5】
前記攪拌ノズルは、
上方に延びるボディと、
前記ボディの下端に設置されたピーニング液流入口と、
前記ボディの内部に配置され、前記ピーニング液流入口と接続する内部噴口と、
前記ボディの上端に設置された噴口と、
前記内部噴口と前記噴口を接続し、前記ボディの内部で上下に延びる導通路と、
前記ボディの外周で前記窪みの内部に設置され、前記導通路の下端部に接続する研磨粒子吸込口と、を有する、
請求項1~4のいずれかの研磨ピーニング装置。
【請求項6】
前記処理槽の内周に水平方向に延びるじゃま板であって、前記処理槽の液面と前記対象物の間の高さに配置されるじゃま板を更に備える、
請求項1~5のいずれかの研磨ピーニング装置。
【請求項7】
前記処理槽の内部で、前記処理槽の内周に水平方向に突出する立じゃま板を更に備える、
請求項1~6のいずれかの研磨ピーニング装置。
【請求項8】
前記ピーニングノズルは、
平型噴射ノズルと、
前記平型噴射ノズルの下流で前記平型噴射ノズルの周りを囲む側壁と、を有する、
請求項1~7のいずれかのいずれかの研磨ピーニング装置。
【請求項9】
前記底部に配置された排液口と、
前記排液口の外部に配置され、前記排液口を開閉する排液弁と、
前記排液口の外部に設置され、前記排液弁を囲むダクトと、を更に備える、
請求項1~8のいずれかの研磨ピーニング装置。
【請求項10】
前記処理槽の上端部で、水平内側に延びる第1折り返しと、
前記第1折り返しの内側で、下方に延びる第2折り返しと、を更に備える、
請求項1~9のいずれかの研磨ピーニング装置。
【請求項11】
研磨粒子を処理槽の内部に投入し、
前記処理槽の下方に均等に配置された攪拌ノズルの内部に設置された内部噴口からピーニング液を噴出し、
前記攪拌ノズルの周囲の窪みの内部に浮遊する前記研磨粒子と前記ピーニング液の懸濁液を、前記攪拌ノズルの内部に吸込み、
吸い込んだ前記懸濁液を、前記攪拌ノズルの上方に配置された噴口から、前記処理槽の内部に吹き上げて、前記研磨粒子を浮遊させ、
前記処理槽に貯留された前記ピーニング液に浸漬されたピーニングノズルから、前記処理槽の底部に設置された対象物の表面へ向けて前記ピーニング液を噴射し、
噴射された前記ピーニング液の流れに乗った前記研磨粒子が、前記対象物に衝突して前記対象物の表面を研磨し、
噴射された前記ピーニング液によって発生したキャビティを前記対象物に衝突させて、前記対象物の表面に残留応力を与える、
研磨ピーニング方法。