(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042337
(43)【公開日】2022-03-14
(54)【発明の名称】接着剤組成物及び接着構造体
(51)【国際特許分類】
C09J 133/06 20060101AFI20220307BHJP
C09J 171/02 20060101ALI20220307BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
C09J133/06
C09J171/02
C09J11/06
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020147734
(22)【出願日】2020-09-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】305032254
【氏名又は名称】サンスター技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【弁理士】
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】坂根 大一郎
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 祥平
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040DF011
4J040DF031
4J040EE021
4J040GA02
4J040GA11
4J040GA13
4J040GA31
4J040HD32
4J040HD35
4J040HD36
4J040JA01
4J040JB04
4J040JB09
4J040KA31
4J040LA06
4J040LA07
4J040MA05
4J040MA10
4J040MB10
4J040NA17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】作業性及び耐冷熱衝撃性を兼ね備えた接着剤組成物を提供する。
【解決手段】反応性シリル基を有するポリ(メタ)アクリル系重合体(A)、末端に反応性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体(B)、及びシランカップリング剤(C)を含む接着剤組成物であって、前記シランカップリング剤(C)は第二級アミノ基含有シランカップリング剤(C-i)を含む、接着剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性シリル基を有するポリ(メタ)アクリル系重合体(A)、
末端に反応性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体(B)、及び
シランカップリング剤(C)
を含む接着剤組成物であって、
前記シランカップリング剤(C)は第二級アミノ基含有シランカップリング剤(C-i)を含む、接着剤組成物。
【請求項2】
前記重合体(A)が
(a1)式:CH2=CX1-C(=O)-O-A1
[式中、X1は、水素原子またはメチル基であり、
A1は、水素原子または炭素数1~9の炭化水素基である。]
で示される(メタ)アクリル単量体から誘導される繰り返し単位、及び
(a2)式:CH2=CX2-C(=O)-O-A2
[式中、X2は、水素原子またはメチル基であり、
A2は、炭素数10~40の炭化水素基である。]
で示される(メタ)アクリル単量体から誘導される繰り返し単位
を有する請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記重合体(B)が、分岐鎖状重合体と直鎖状重合体との組合せであって、
前記直鎖状重合体の数平均分子量が1000~10000であり、
前記直鎖状重合体の量が前記重合体(B)全体において、3~50重量%である、請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記第二級アミノ基含有シランカップリング剤(C-i)がOH基又はNH2基を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記第二級アミノ基含有シランカップリング剤(C-i)が、分子内において第二級アミノ基から原子数6個の距離内にOH基又はNH2基を有する、請求項4に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
前記第二級アミノ基含有シランカップリング剤(C-i)が、少なくとも二種の第二級アミノ基含有シランカップリング剤(C-i)の組み合わせであり、その少なくとも一種がOH基又はNH2基を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
前記第二級アミノ基含有シランカップリング剤(C-i)が分子内にOH基を有するシランカップリング剤と分子内にNH2基を有するシランカップリング剤との両方を含む、請求項6に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
前記第二級アミノ基含有シランカップリング剤(C-i)の少なくとも一種が分子内に2個以上の反応性シリル基を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
シランカップリング剤(C)が、さらにビニル基含有シランカップリング剤及びエポキシ基含有シランカップリング剤からなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項10】
さらに可塑剤(D)を含み、前記可塑剤(D)がトリメリット酸エステル又はアルキルスルホン酸フェニル系エステルである、請求項1~9のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項11】
ガラスと樹脂を接着させるために用いられ、かつ、湿気硬化型である、請求項1~10のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項12】
ガラス、
樹脂、及び
前記ガラスと前記樹脂との間における請求項1~11のいずれか一項に記載の接着剤組成物の硬化物
を含んでなる接着構造体。
【請求項13】
前記樹脂がポリカーボネート含有樹脂である、請求項12に記載の接着構造体。
【請求項14】
前記ガラスが14インチ以上のディスプレイ又は曲面若しくは曲線断面を有するディスプレイのカバーガラスであり、
前記樹脂が樹脂パネルであり、
前記接着構造体がディスプレイである、請求項12又は13に記載の接着構造体。
【請求項15】
前記接着構造体が車載ディスプレイである、請求項12~14のいずれか一項に記載の接着構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接着剤組成物及び接着構造体に関する。特に本開示は、車載環境等の優れた耐冷熱衝撃性が求められる環境においても用いることが可能な接着剤組成物及び接着構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディスプレイのカバーガラスと樹脂パネルの貼り合わせには両面テープが用いられていたが、近年、作業性の観点から自動塗布や細幅塗布が可能な接着剤への代替が進んでいる。特許文献1においては(A)架橋性珪素基含有有機重合体、(B)シランカップリング剤B1と有機チタン化合物B2とを反応させてなるチタン触媒、及び(C)ウレイド基を有するシランカップリング剤を含んでなる硬化性組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ディスプレイの大型化や異形化(曲面ディスプレイ等)、狭額縁化等といった近年のトレンドの変化に伴い、ディスプレイのカバーガラスと樹脂パネルの貼り合わせには、微細塗布と高速塗布とに加え、高保形性(塗布後に濡れ広がらない性状)が求められ、良好な作業性が要求される。さらに、車載環境等の過酷な環境下においては、特に優れた耐冷熱衝撃性が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、上記課題を解決しようとするものである。本開示の一態様は次のとおりである:
[項1]
反応性シリル基を有するポリ(メタ)アクリル系重合体(A)、
末端に反応性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体(B)、及び
シランカップリング剤(C)
を含む接着剤組成物であって、
前記シランカップリング剤(C)は第二級アミノ基含有シランカップリング剤(C-i)を含む、接着剤組成物。
[項2]
前記重合体(A)が
(a1)式:CH2=CX1-C(=O)-O-A1
[式中、X1は、水素原子またはメチル基であり、
A1は、水素原子または炭素数1~9の炭化水素基である。]
で示される(メタ)アクリル単量体から誘導される繰り返し単位、及び
(a2)式:CH2=CX2-C(=O)-O-A2
[式中、X2は、水素原子またはメチル基であり、
A2は、炭素数10~40の炭化水素基である。]
で示される(メタ)アクリル単量体から誘導される繰り返し単位
を有する項1に記載の接着剤組成物。
[項3]
前記重合体(B)が、分岐鎖状重合体と直鎖状重合体との組合せであって、
前記直鎖状重合体の数平均分子量が1000~10000であり、
前記直鎖状重合体の量が前記重合体(B)全体において、3~50重量%である、項1又は2に記載の接着剤組成物。
[項4]
前記第二級アミノ基含有シランカップリング剤(C-i)がOH基又はNH2基を有する、項1~3のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
[項5]
前記第二級アミノ基含有シランカップリング剤(C-i)が、分子内において第二級アミノ基から原子数6個の距離内にOH基又はNH2基を有する、項4に記載の接着剤組成物。
[項6]
前記第二級アミノ基含有シランカップリング剤(C-i)が、少なくとも二種の第二級アミノ基含有シランカップリング剤(C-i)の組み合わせであり、その少なくとも一種がOH基又はNH2基を有する、項1~5のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
[項7]
前記第二級アミノ基含有シランカップリング剤(C-i)が分子内にOH基を有するシランカップリング剤と分子内にNH2基を有するシランカップリング剤との両方を含む、項6に記載の接着剤組成物。
[項8]
前記第二級アミノ基含有シランカップリング剤(C-i)の少なくとも一種が分子内に2個以上の反応性シリル基を有する、項1~7のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
[項9]
シランカップリング剤(C)が、さらにビニル基含有シランカップリング剤及びエポキシ基含有シランカップリング剤からなる群から選択される少なくとも一種を含む、項1~8のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
[項10]
さらに可塑剤(D)を含み、前記可塑剤(D)がトリメリット酸エステル又はアルキルスルホン酸フェニル系エステルである、項1~9のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
[項11]
ガラスと樹脂を接着させるために用いられ、かつ、湿気硬化型である、項1~10のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
[項12]
ガラス、
樹脂、及び
前記ガラスと前記樹脂との間における項1~11のいずれか一項に記載の接着剤組成物の硬化物
を含んでなる接着構造体。
[項13]
前記樹脂がポリカーボネート含有樹脂である、項12に記載の接着構造体。
[項14]
前記ガラスが14インチ以上のディスプレイ又は曲面若しくは曲線断面を有するディスプレイのカバーガラスであり、
前記樹脂が樹脂パネルであり、
前記接着構造体がディスプレイである、項12又は13に記載の接着構造体。
[項15]
前記接着構造体が車載ディスプレイである、項12~14のいずれか一項に記載の接着構造体。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば作業性及び耐冷熱衝撃性を兼ね備えた接着剤組成物を提供することができる。本開示における接着剤組成物は変形追従性に優れるため線膨張係数の異なる異種材料の接着に好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<接着剤組成物>
本開示の接着剤組成物は、
反応性シリル基を有するポリ(メタ)アクリル系重合体(A)、
末端に反応性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体(B)、及び
シランカップリング剤(C)
を含む。
【0008】
[反応性シリル基を有するポリ(メタ)アクリル系重合体(A)]
本開示の接着剤組成物は、反応性シリル基を有するポリ(メタ)アクリル系重合体(A)を含む。ポリ(メタ)アクリル系重合体(A)は(メタ)アクリル単量体((メタ)アクリル酸及びその誘導体(例えば、エステル及びアミド等))から誘導される繰り返し単位を有し、少なくとも1つの反応性シリル基を有する。
【0009】
(メタ)アクリル系重合体(A)は、
(a1)式:CH2=CX1-C(=O)-O-A1
[式中、X1は、水素原子またはメチル基であり、
A1は、炭素数1~9の炭化水素基である。]
で示される(メタ)アクリル単量体から誘導される繰り返し単位を有することができる。
【0010】
繰り返し単位(a1)におけるA1は飽和または不飽和の炭化水素基であり、好ましくは脂肪族炭化水素基であり、より好ましくは飽和の脂肪族炭化水素基である。A1は直鎖、分岐または環状の脂肪族炭化水素基であってよく、好ましくは直鎖である。A1の炭素数は、1~9、1~8、1~6、又は1~5であってよい。
【0011】
繰り返し単位(a1)の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、及び(メタ)アクリル酸オクチルから誘導される繰り返し単位等が挙げられる。繰り返し単位(a1)は単独であってもよいし、又は二種類以上の組み合わせであってもよい。繰り返し単位(a1)は、A1の炭素数が1~3(例えば1~2)である繰り返し単位と、A1の炭素数が4~9(例えば4~8)である繰り返し単位との組み合わせであってもよい。A1の炭素数が4~9である繰り返し単位(a1)を含有することによりポリマーの柔軟性を与えることができ、耐久性の優れた硬化物が得られ得る。A1の炭素数が1~3である繰り返し単位(a1)を含有することにより、他成分との相溶性を向上し、接着性の向上効果、及び/又は強度向上効果が発現し得る。
【0012】
(メタ)アクリル系重合体(A)は
(a2)式:CH2=CX2-C(=O)-O-A2
[式中、X2は、水素原子またはメチル基であり、
A2は、炭素数10~40の炭化水素基である。]
で示される(メタ)アクリル単量体から誘導される繰り返し単位を有することができる。
【0013】
繰り返し単位(a2)におけるA2は飽和または不飽和の炭化水素基であり、好ましくは脂肪族炭化水素基であり、より好ましくは飽和の脂肪族炭化水素基である。X2は好ましくは、水素原子である。A2は直鎖、分岐または環状の脂肪族炭化水素基であり、好ましくは直鎖である。A2の炭素数は10以上、12以上、14以上、又は16以上であってよく、好ましくは12以上である。A2の炭素数は40以下、30以下、25以下、又は22以下であってよく、好ましくは30以下である。特定の理論に縛られることを望むものではないが、A2の炭素数が10以上である繰り返し単位(a2)を用いることにより、ポリマー中の非極性部分が局在化し、接着性が向上する効果があると推定される。
【0014】
繰り返し単位(a2)の具体例としては、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ドコシル、(メタ)アクリル酸イコシル、及び(メタ)アクリル酸ラウリルから誘導される繰り返し単位等が挙げられる。繰り返し単位(a2)は単独であってもよいし、又は二種類以上の組み合わせであってもよい。
【0015】
(メタ)アクリル系重合体(A)は、その他単量体(a3)から誘導された繰り返し単位を有していてもよい。その他単量体(a3)の例としては、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等のスチレン系モノマー;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニルモノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等の珪素含有ビニル系モノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。
【0016】
(メタ)アクリル系重合体(A)における繰り返し単位(a1)の量は、(メタ)アクリル系重合体(A)に対して、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、又は90重量%以上であってよく、好ましくは60重量%以上である。(メタ)アクリル系重合体(A)における繰り返し単位(a1)の量は、(メタ)アクリル系重合体(A)に対して、95重量%以下、90重量%以下、80重量%以上、又は70重量%以下であってよく、好ましくは90重量%以下である。
【0017】
(メタ)アクリル系重合体(A)におけるA1の炭素数が1~3(例えば1~2)である繰り返し単位(a1)の量は、(メタ)アクリル系重合体(A)に対して、3重量%以上、4重量%以上、5重量%以上、又は6重量%以上であってよい。(メタ)アクリル系重合体(A)におけるA1の炭素数が1~3(例えば1~2)である繰り返し単位(a1)の量は、(メタ)アクリル系重合体(A)に対して、20重量%以下、18重量%以下、15重量%以上、又は12重量%以下であってよい。A1の炭素数が1~3である繰り返し単位(a1)の量が上記範囲にあることで、接着剤組成物の接着性が向上し得る。
【0018】
(メタ)アクリル系重合体(A)におけるA1の炭素数が4~9(例えば4~8)である繰り返し単位(a1)の量は、(メタ)アクリル系重合体(A)に対して、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、又は60重量%以上であってよい。(メタ)アクリル系重合体(A)におけるA1の炭素数がA1の炭素数が4~9(例えば4~8)である繰り返し単位(a1)の量は、(メタ)アクリル系重合体(A)に対して、90重量%以下、85重量%以下、80重量%以上、又は75重量%以下であってよい。A1の炭素数が4~9である繰り返し単位(a1)の量が上記範囲にあることで、ポリマーの柔軟性が向上し、接着剤組成物の耐久性が向上し得る。
【0019】
(メタ)アクリル系重合体(A)における繰り返し単位(a2)の量は、(メタ)アクリル系重合体(A)に対して、2.5重量%以上、5重量%以上、7.5重量%以上、10重量%以上、12.5重量%以上、又は15重量%以上であってよく、好ましくは5重量%以上である。(メタ)アクリル系重合体(A)における繰り返し単位(a1)の量は、(メタ)アクリル系重合体(A)に対して、50重量%以下、40重量%以下、30重量%以上、25重量%以下、又は20重量%以下であってよく、好ましくは40重量%以下である。繰り返し単位(a2)の量が上記範囲にあることで、接着剤組成物の接着性が向上し得る。
【0020】
(反応性シリル基)
本明細書において、反応性シリル基とは、ケイ素原子およびそれと結合した反応性基を有する基であり、公知の反応性シリル基であってよい。反応性基は水酸基、加水分解性基等であってよい。加水分解性基はアルコキシ基、アミド基またはアミノオキシ基であってよく、アルコキシ基が好ましい。炭素数の少ないアルコキシ基の方が反応性が高く、目的や用途に応じて選択できるが、アルコキシ基の炭素数は1~6であってよく、好ましくは1~3、より好ましくは1または2である。
【0021】
反応性シリル基は
式:-Si(R)3-n(Y)n
[式中、Rは炭素数1から30の炭化水素基または-OSi(R’)3で示されるオルガノシロキシ基であり、R’は炭素数1から30の炭化水素基、Yは水酸基または加水分解性基、nは1~3の整数である。R、R’またはYが複数個存在するときそれらは同一または異なる。]
で表される基であってよい。
【0022】
Rは炭素数1~10のアルキル基であってよく、好ましくは炭素数1~5のアルキル基である。
【0023】
Yは加水分解性基であることが好ましい。
【0024】
nは2または3であることが好ましい。
【0025】
(メタ)アクリル系重合体(A)は、少なくとも一個、好ましくは二個の、反応性シリル基を有し得る。各(メタ)アクリル系重合体(A)における反応性シリル基の平均数は1.0以上、1.2以上、1.4以上、1.6以上であってよい。(メタ)アクリル系重合体(A)における反応性シリル基の平均数は3.5以下、3.0以下、2.5以下、又は2.0以下であってよい。
【0026】
なお、(メタ)アクリル系重合体(A)において、1分子中における反応性シリル基の数は、例えば、1H-NMRにより求められる(メタ)アクリル系重合体(A)中の反応性シリル基の濃度、及びGPC法により求められる(メタ)アクリル系重合体(A)の数平均分子量に基づいて算出することができる。
【0027】
((メタ)アクリル系重合体(A)の分子量等)
(メタ)アクリル系重合体(A)の数平均分子量は3000以上、5000以上、又は8000以上であってよい。(メタ)アクリル系重合体(A)の数平均分子量は50000以下、40000以下、又は30000以下であってよい。
【0028】
((メタ)アクリル系重合体(A)の製造方法)
【0029】
アクリル系重合体(A)の製造方法は特に限定されず、公知の方法を参照できる。例えば上記の単量体(a1)~(a3)をラジカル重合により重合し、得られた重合体中に存在する官能基に対して、反応性シリル基を有する化合物を反応させることでアクリル系重合体(A)を得る。アクリル系重合体(A)はリビングラジカル重合により製造されていてもよい。アクリル系重合体(A)はランダム共重合体またはブロック共重合体であってよい。
【0030】
反応性シリル基を重合体へ導入する方法は特に限定されず公知の方法を参照できる。例えば、特定の官能基を有する連鎖移動剤又は開始剤を用いたフリーラジカル重合法又はリビングラジカル重合法が挙げられ、付加-開裂移動反応(Reversible Addition-Fragmentation chain Transfer;RAFT)重合法、原子移動ラジカル重合法(Atom Transfer Radical Polymerization, ATRP)等のリビングラジカル重合法であってよい。重合体の両末端の官能基に対して反応性シリル基を有する化合物を反応させることにより重合体の末端へ導入することができる。反応性シリル基を有する重合性単量体を共重合させることにより、(メタ)アクリル系重合体(A)の内部へ導入することもできる。例えば特許第4829107号に記載の方法等を参照できる。
【0031】
[末端に反応性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体(B)]
本開示における接着剤組成物は、少なくとも1つの末端に反応性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体(B)を含む。
【0032】
オキシアルキレン系重合体(B)は、反応性シリル基を除くと、アルキレンオキシドから誘導される繰り返し単位から実質的になってよい。アルキレンオキシドは例えばプロピレンオキシド、エチレンオキシド、ブチレンオキシド等であり、プロピレンオキシドおよびエチレンオキシドが好ましい。オキシアルキレン系重合体(B)が有するアルキレンオキシドから誘導される繰り返し単位は一種または複数種の組み合わせであってもよい。オキシアルキレン系重合体(B)はアルキレンオキシドから誘導される繰り返し単位以外の構造、例えば、フェニレンオキシドから誘導される繰り返し単位等を有していてもよいが、アルキレンオキシドから誘導される繰り返し単位が、オキシアルキレン系重合体(B)の80重量%以上であることが好ましく、好ましくは90重量%以上である。
【0033】
オキシアルキレン系重合体(B)は、分岐鎖状重合体(グリセリンベース又は糖ベース等)又は直鎖状重合体であってよく、分岐鎖状重合体と直鎖状重合体との組み合せであることが好ましい。分岐鎖状重合体は反応性シリル基末端を3個以上(例えば、3~6個、3~5個、3~4個等)有し得る。直鎖状重合体は反応性シリル基末端を最大で2個有し得る。
【0034】
分岐鎖状重合体の含有量は、重合体(B)全体において、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、又は90重量%以上であってよい。分岐鎖状重合体の含有量は、重合体(B)全体において、99重量%以下、90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、又は60重量%以下であってよい。
【0035】
直鎖状重合体の含有量は、重合体(B)全体において、3重量%以上、5重量%以上、7重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、又は20重量%以上であってよい。直鎖状重合体の含有量は、重合体(B)全体において、60重量%以下、50重量%以下、40重量%以下、又は30重量%以下であってよい。
【0036】
オキシアルキレン系重合体(B)における反応性シリル基の種類は、上述のアクリル系重合体(A)についての説明における反応性シリル基の種類と同様である。
【0037】
オキシアルキレン系重合体(B)は、反応性シリル基末端を少なくとも1つ有する重合体を含み、好ましくは反応性シリル基末端を2~5個、より好ましくは2または3個有する重合体を含む。反応性シリル基末端を3個以上有する重合体(分岐鎖状重合体)を含む場合、反応性シリル基末端を2個有する重合体(直鎖状重合体)のみを含む場合よりも、接着性が向上し得る。反応性シリル基末端を3個以上(例えば3~4個、特に3個)有する重合体と反応性シリル基末端を2個有する重合体の両方を含んでいてよい。
【0038】
シリル基を分子内に導入方法は特に限定されず公知の方法であってよい。例えば重合体の両末端の官能基に対して反応性シリル基を有する化合物を反応させることにより導入することができる。
【0039】
(オキシアルキレン系重合体(B)の分子量等)
オキシアルキレン系重合体(B)全体の数平均分子量は1000以上、2000以上、3000以上、5000以上、8000以上又は10000以上であってよい。オキシアルキレン系重合体(B)全体の数平均分子量は100000以下、50000以下、40000以下、30000以下、20000以下、15000以下、又は10000以下であってよい。オキシアルキレン系重合体(B)の数平均分子量はポリスチレン換算により算出される。
【0040】
分岐鎖状重合体の数平均分子量は、5000以上、7500以上、10000以上、12000以上、140000以上、又は15000以上であってよい。分岐鎖状重合体の数平均分子量は、100000以下、50000以下、40000以下、30000以下、又は20000以下であってよい。
【0041】
直鎖状重合体の数平均分子量は、1000以上、1500以上、2000以上、2500以上、3000以上、3500以上、4000以上、又は4500以上であってよい。分岐鎖状重合体の数平均分子量は、10000以下、9000以下、8000以下、7000以下、6000以下であってよい。
【0042】
分岐鎖状重合体の数平均分子量と直鎖状重合体の数平均分子量との比率(分岐鎖状重合体の数平均分子量/直鎖状重合体の数平均分子量)は、1.2以上、1.5以上、2.0以上、2.5以上、又は3.0以上であってよい。分岐鎖状重合体の数平均分子量と直鎖状重合体の数平均分子量との比率(分岐鎖状重合体の数平均分子量/直鎖状重合体の数平均分子量)は、10以下、7.5以下、5.0以下、4.5以下、4.0以下、3.5以下又は3.0以下であってよい。
【0043】
オキシアルキレン系重合体(B)として、具体的な製品としては、例えばカネカ社製MSポリマーS303、サイリルSAT010等を用いることができる。
【0044】
(オキシアルキレン系重合体(B)の製造方法)
オキシアルキレン系重合体(B)の製造方法は特に限定されず、公知の方法、例えば特開2005-336401に記載の方法を参照できる。オキシアルキレン系重合体の製造方法は、例えば、アルキレンオキシドを重合する工程および反応性シリル基を分子内に導入する工程を含む。例えば、アルキレンオキシドを重合し、得られた重合体の両末端に存在する水酸基等の官能基に対して、反応性シリル基を含有する化合物を反応させることでオキシアルキレン系重合体(B)を得ることができる。
【0045】
[シランカップリング剤(C)]
シランカップリング剤とは、一分子中に反応性の異なる少なくとも二種類の官能基を有する有機珪素化合物であり、一般に、反応性シリル基と、有機反応性基とを有する。シランカップリング剤は分子内に1個の反応性シリル基を有してもよいし、2個以上(例えば2個)の反応性シリル基を有してもよい。
【0046】
本開示におけるシランカップリング剤(C)は芳香族又は脂肪族であって、式(1)で表されるモノシラン型カップリング剤及び/又は式(2)で表されるビスシラン型カップリング剤であってよい。
【0047】
(モノシラン型カップリング剤)
シランカップリング剤(C)は
式(1):
X-Si-Ra
n(Rb)3-n(1)
[式中、Xは、反応基であり、
Raは、それぞれ独立して、炭化水素基であり、
Rbは、それぞれ独立して、反応基であり、
nは、0、1または2である。」
で表されるモノシラン型カップリング剤であってよい。
【0048】
Xは、有機質材料と化学結合し得る反応基である。Xの例は、ビニル基含有基、エポキシ基含有基、第二級アミノ基含有基、第一級アミノ基含有基、ヒドロキシ基含有基、アルコキシ基含有基、メルカプト基含有基、スルフィド基含有基等、ハロゲン含有基等の反応基含有基が挙げられるが、これらに限定されない。Xは脂肪族基又は芳香族基であってよく、脂肪族基が好ましく、特に反応基含有アルキル基であることが好ましい。Xの炭素数は15以下、12以下、10以下、8以下、6以下、又は4以下であってよく、好ましくは10以下である。Xの炭素数は1以上、2以上、3以上、4以上、又は5以上であってよく、好ましくは2以上である。
【0049】
Raは、炭化水素基であって、例えばアルキル基である。Raの炭素数は1以上、2以上、3以上、4以上、又は5以上であってよい。
Raの炭素数は15以下、12以下、10以下、8以下、又は6以下であってよく、好ましくは10以下である。
【0050】
Rbは、ガラスや金属等の無機質材料と化学結合し得る反応基である。Rbは、アルコキシ基、(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、及びブトキシ基)である。Rbの炭素数は1以上、2以上、3以上、4以上、又は5以上であってよい。Rbの炭素数は15以下、12以下、10以下、8以下、6以下、又は4以下であってよい。
【0051】
nは、0、1又は2であり、0又は1が好ましい。
【0052】
(ビスシラン型カップリング剤)
シランカップリング剤(C)は
式(2):
Ra’
n(Rb’)3-nSi-X’-Si-Ra’
m(Rb’)3-m (2)
「式中、X’は、反応基であり、
Ra’は、それぞれ独立して、炭化水素基であり、
Rb’は、それぞれ独立して、反応基であり、
mは、それぞれ独立して、0、1または2である。]
で表されるビスシラン型カップリング剤であってよい。
【0053】
X’は、有機質材料と化学結合し得る反応基である。X’の例は、ビニル基含有基、エポキシ基含有基、第二級アミノ基含有基、第一級アミノ基含有基、ヒドロキシ基含有基、アルコキシ基含有基、メルカプト基含有基、スルフィド基含有基等、ハロゲン含有基等の反応基含有基が挙げられるが、これらに限定されない。Xは脂肪族基又は芳香族基であってよく、脂肪族基が好ましく、特に反応基含有アルキル基であることが好ましい。X’の炭素数は15以下、12以下、10以下、8以下、6以下、又は4以下であってよく、好ましくは10以下である。X’の炭素数は1以上、2以上、3以上、4以上、又は5以上であってよく、好ましくは2以上である。
【0054】
Ra’は、炭化水素基であって、例えばアルキル基である。Ra’の炭素数は1以上、2以上、3以上、4以上、又は5以上であってよい。Ra’の炭素数は15以下、12以下、10以下、8以下、又は6以下であってよく、好ましくは10以下である。
【0055】
Rb’は、ガラスや金属等の無機質材料と化学結合し得る反応基である。Rb’は、アルコキシ基、(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、及びブトキシ基)である。Rb’の炭素数は1以上、2以上、3以上、4以上、又は5以上であってよい。Rbの炭素数は15以下、12以下、10以下、8以下、6以下、又は4以下であってよい。
【0056】
mは、0、1又は2であり、0又は1が好ましい。
【0057】
(シランカップリング剤(C-i)
本開示におけるシランカップリング剤(C)は、第二級アミノ基含有シランカップリング剤(C-i)を含む。ここで、第二級アミノ基とは、アンモニアの二個の水素が炭化水素基に結合した構造であるR1-NH-R2構造を指す。第二級アミノ基の窒素原子は、一個又は二個、好ましくは二個のアルキレン基に結合している。第二級アミノ基の窒素原子が結合しているそれぞれの炭化水素基(例えばアルキレン基)の炭素数は、8以下、6以下、4以下、又は3以下であってよい。
【0058】
第二級アミノ基含有シランカップリング剤(C-i)は、OH基(水酸基)又はNH2基(アミノ基)を有してよい。なお、OH基とは、アルコキシ基が加水分解して生じるOH基(シラノール性ヒドロキシ)を含まない。
【0059】
OHを有する第二級アミノ基含有シランカップリング剤(C-i)の製造方法としては、公知の方法が使用でき、例えばエポキシシラン化合物とアミノシラン化合物とを反応させることにより製造することができる。前記アミノシラン化合物の1級アミノ基が前記エポキシシラン化合物と反応NH2基を有する第二級アミノ基含有シランカップリング剤(C-i)の製造方法としては、公知の方法が使用できるが、例えば特表2014-501237を参照できる。
【0060】
第二級アミノ基含有シランカップリング剤(C-i)は、少なくとも二種の第二級アミノ基含有シランカップリング剤(C-i)の組み合わせであり、その少なくとも一種がOH基又はNH2基を有することが好ましい。第二級アミノ基含有シランカップリング剤(C-i)が分子内にOH基を有するシランカップリング剤と分子内にNH2基を有するシランカップリング剤との両方を含んでいてもよい。第二級アミノ基含有シランカップリング剤(C-i)は、式(1)におけるX又は式(2)におけるX’においてOH基又はNH2基を有していてよい。
【0061】
第二級アミノ基含有シランカップリング剤(C-i)が、OH基又はNH2基を有するとき、分子内において第二級アミノ基から原子数6個以内、5個以内、4個以内、又は3個以内の距離にOH基又はNH2基を有してよい。ここで、原子数n個以内の距離とは、第二級アミノ基の窒素原子からn個の結合をたどってたどり着ける範囲をいう。
【0062】
第二級アミノ基含有シランカップリング剤(C-i)の具体例としては、N-(n-ブチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(n-ブチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-エチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-エチル-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-エチル-アミノイソブチルトリメトキシシラン、N-メチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-メチル-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、N-フェニル-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ナフチル-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のようなシランカップリング剤が挙げられる。
【0063】
(その他シランカップリング剤)
シランカップリング剤(C)は、上記第二級アミノ基含有シランカップリング剤(C-i)に加えて、ビニル基含有シランカップリング剤、エポキシ基含有シランカップリング剤、第一級アミノ基含有シランカップリング剤、メルカプト基含有シランカップリング剤、ハロゲン化アルキル基含有シランカップリング剤、又はポリスルフィド基含有シランカップリング剤を含んでもよい。これらは単独で用いてもよいし、又は二種類以上を併用して用いてもよいが、二種類以上を併用して用いることが好ましく、特に第二級アミノ基含有シランカップリング剤(C-i)に加えて一種、又は二種以上のシランカップリング剤を組み合わせて用いられることが好ましい。特にビニル基含有シランカップリング剤及びエポキシ基含有シランカップリング剤からなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。ビニル基含有シランカップリング剤から選択される少なくとも一種及びエポキシ基含有シランカップリング剤から選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。シランカップリング剤を組み合わせて用いることにより、接着性が向上し得る。
【0064】
ビニル基含有シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、トリクロロビニルシラン、トリエトキシビニルシラン等の非(メタ)アクリル系シランカップリング剤;アクリル系シランカップリング剤としては、(メタ)アクリロキシメチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン等の(メタ)アクリル系シランカップリング剤が例示される。
【0065】
エポキシ基含有シランカップリング剤としては、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が例示される。
【0066】
第一級アミノ基含有シランカップリング剤としては、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン等が例示される。
【0067】
メルカプト基含有シランカップリング剤としては、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が例示される。
【0068】
ハロゲン化アルキル基含有シランカップリング剤としては、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン等が例示される。
【0069】
[可塑剤(D)]
本開示における硬化性組成物は可塑剤を含むことが好ましい。可塑剤の例としては、トリメリット酸エステル、アルキルスルホン酸フェニル系エステル、ポリアルキレンエーテル類、フタル酸ジエステル類、エポキシ化ヘキサヒドロフタル酸ジエステル類、アルキレンジカルボン酸ジエステル類、アルキルベンゼン類、ひまし油類、リン酸エステル類、エポキシ化大豆油類等が挙げられる。中でも、トリメリット酸エステル、又はアルキルスルホン酸フェニル系エステルを用いることで、良好な作業性と良好な接着性とを両立し得る。
【0070】
[充填剤(E)]
本開示における硬化性組成物は充填剤を含んでいてよい。充填剤は常温で固体の粒子であり、公知の充填剤であってよい。充填剤の例としては、表面未処理炭酸カルシウム、表面処理炭酸カルシウム、例えば脂肪酸処理炭酸カルシウム等、ヒュームシリカ、沈降性シリカ、カーボンブラック、タルク、マイカ、クレーや、ガラスビーズ、マイクロバルーン、シラスバルーン、ガラスバルーン、シリカバルーン、プラスチックバルーン、有機粉体コーティングプラスチックバルーン等のバルーン類、プラスチック粒子、ガラス繊維、金属繊維等の無機繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等の有機繊維、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、チタン酸カリウム、グラファイト、針状結晶性炭酸カルシウム、ホウ酸マグネシウム、二ホウ化チタン、クリソタイル、ワラストナイト等の針状結晶性フィラー、アルミフレーク、アルミ粉、鉄粉等が挙げられる。
【0071】
炭酸カルシウムは、脂肪酸、脂肪酸石鹸、脂肪酸エステル等の有機物や各種界面活性剤、および、シランカップリング剤やチタネートカップリング剤等の各種カップリング剤等の表面処理剤により表面処理されてある表面処理炭酸カルシウムであってよく、表面未処理の重質炭酸カルシウムまたは軽質炭酸カルシウムと組み合わせて用いてもよい。
【0072】
[その他成分(F)]
その他の成分の例としては、硬化触媒(例えば、錫触媒等のシラノール縮合触媒)有機溶剤(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、リグロイン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、n-ヘキサン、ヘプタンや、イソパラフィン系高沸点溶剤等)、安定剤(アルコキシシリル基含有重合体を主成分とする硬化性組成物においては、メタノール、エタノール等)、エポキシ化合物、アクリルオリゴマー等)、老化防止剤(ヒンダードフェノール類、メルカプタン類、スルフィド類、ジチオカルボン酸塩類、チオウレア類、チオホスフェイト類、チオアルデヒド類等)、水分保給剤(水、無機塩類の水和物等)、紫外線吸収剤又は光安定剤(ベンゾトリアゾール類、ヒンダードアミン類等)、酸化防止剤(ヒンダードフェノール類等)、揺変剤(コロイダルシリカ、有機ベントナイト、脂肪酸アマイド、水添ひまし油等)等が挙げられる。
【0073】
[接着剤組成物の組成]
本開示の接着剤組成物において、(メタ)アクリル系重合体(A)の量は重合体(A)及び(B)の合計に対して、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、又は60重量%以上であってよい。(メタ)アクリル系重合体(A)の量は重合体(A)及び(B)の合計に対して、90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、又は50重量%以下であってよい。
【0074】
本開示の接着剤組成物において、オキシアルキレン系重合体(B)の量は重合体(A)及び(B)の合計に対して、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、又は60重量%以上であってよい。オキシアルキレン系重合体(B)の量は重合体(A)及び(B)の合計に対して、90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、又は50重量%以下であってよい。
【0075】
本開示の接着剤組成物において、(メタ)アクリル系重合体(A)の量は重合体(B)100重量部に対して、50重量部以上、75重量部以上、100重量部以上、又は125重量部以上であってよい。(メタ)アクリル系重合体(A)の量は重合体(B)100重量部に対して、200重量部以下、150重量部以下、100重量部以下、又は75重量部以下であってよい。
【0076】
重合体(A)及び(B)の合計量は接着剤組成物において、10重量部以上、15重量部以上、20重量部以上、又は25重量部以上であってよい。重合体(A)及び(B)の合計量は接着剤組成物において、60重量部以下、50重量部以下、40重量部以下、又は30重量部以下であってよい。
【0077】
重合体(A)の量は接着剤組成物において、10重量部以上、15重量部以上、又は20重量部以上であってよい。重合体(A)の量は接着剤組成物において、50重量部以下、40重量部以下、30重量部以下、25重量部以下、20重量部以下、又は15重量部以下であってよい。
【0078】
重合体(B)の量は接着剤組成物において、10重量部以上、15重量部以上、又は20重量部以上であってよい。重合体(B)の量は接着剤組成物において、50重量部以下、40重量部以下、30重量部以下、又は25重量部以下、20重量部以下、又は15重量部以下であってよい。
【0079】
接着剤組成物において、重合体(A)及び(B)が上記範囲の量で存在することにより、優れた作業性及び優れた接着性が発現し得る。
【0080】
本開示の接着剤組成物において、シランカップリング剤(C)の量は用途に応じて適宜設定されてよいが、接着剤組成物において、0.1重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、1.5重量%以上、2.0重量%以上、又は2.5重量%以上であってよい。また、シランカップリング剤(C)の量は、接着剤組成物において、10重量%以下、7.5重量%以下、5重量%以下、又は3重量%以下であってよい。
【0081】
本開示の接着剤組成物において、第二級アミノ基含有シランカップリング剤(C-i)の量は、接着剤組成物において、0.05重量%以上、0.25重量%以上、0.5重量%以上、0.75重量%以上、1.0重量%以上、又は1.25重量%以上であってよい。また、第二級アミノ基含有シランカップリング剤(C-i)の量は、接着剤組成物において、5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、又は2重量%以下であってよい。
【0082】
本開示の接着剤組成物において、第二級アミノ基含有シランカップリング剤(C-i)以外のシランカップリング剤(C)の量は用途に応じて適宜設定されてよいが、接着剤組成物において、0.05重量%以上、0.25重量%以上、0.5重量%以上、0.75重量%以上、1.0重量%以上、又は1.25重量%以上であってよい。また、第二級アミノ基含有シランカップリング剤(C-i)以外のシランカップリング剤(C)の量の量は、接着剤組成物において、5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、又は2重量%以下であってよい。
【0083】
本開示の接着剤組成物において、可塑剤(D)の量は用途に応じて適宜設定されてよいが、接着剤組成物において、1重量%以上、3重量%以上、又は5重量%以上であってよい。可塑剤(D)の量は、接着剤組成物において、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、又は15重量%以下であってよい。
【0084】
本開示の接着剤組成物において、充填剤(E)の量は用途に応じて適宜設定されてよいが、接着剤組成物において、20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、又は60重量%以上であってよい。充填剤(E)の量は、接着剤組成物において、80重量%以下、75重量%以下、70重量%以下、又は65重量%以下であってよい。
【0085】
本開示の接着剤組成物において、硬化触媒等のその他の成分の量は用途目的に応じてそれぞれ適宜設定されてよいが、例えば、0.01~10重量%、又は0.01~5重量%の範囲で適宜設定される。
【0086】
本開示における硬化性組成物は、上記配合成分を一括混合した一液型、あるいは重合体含有組成物と硬化触媒含有硬化剤との二液型、またはさらに着色剤と可塑剤等からなるトナー成分を別の一成分とした三液型として使用できるが、作業性の観点から、一液型が好ましい。
【0087】
<接着構造体>
基材表面に本開示の接着剤組成物を塗布し、基材同士を合わせ、接着剤組成物を硬化させることにより、接着構造体を得ることができる。本開示における接着剤組成物の硬化は公知の方法により行われる。例えば、湿気硬化型の一液型の接着剤組成物とすれば空気中の水分により硬化が進行する。
【0088】
基材の種類は限定されないが、樹脂基材又はガラス基材に好適に用いられる。樹脂基材同士の接着であってもよいし、ガラス基材同士の接着であってもい。好ましくは樹脂基材とガラス基材との接着である。樹脂基材は、飽和または不飽和であってよく、芳香族または脂肪族であってよい。例えば、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、スチレン樹脂(例えば、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS(アクリロニトリル-スチレン)樹脂、ASA(アクリロニトリル-スチレン-アクリレート)樹脂等)およびこれらの混合物(例えばアロイ樹脂)が挙げられる。なかでも、接着性の観点から、好ましくはPC樹脂、ABS樹脂およびこれらの混合物から選択される樹脂であり、より好ましくはABS樹脂およびPC/ABSアロイ樹脂である。PC/ABSアロイ樹脂におけるPC/ABSの重量比率は10/90~90/10であってよく、例えば20/80~80/20であり、好ましくは30/70~70/30である。
【0089】
<用途>
本開示の接着剤組成物は、好ましくは樹脂基材とガラスとの接着に用いられる。例えば、電子機器における樹脂基材(樹脂パネル)とディスプレイのカバーガラスとの接着に好適に用いられる。大型ディスプレイや、曲面又は曲線断面を有するようなディスプレイの場合、塗布に時間がかかってしまうことによる接着性の不均化等の問題があるが、本開示の接着剤組成物は、塗布作業性と接着性との両方に優れるため、大型ディスプレイ(例えば14インチ以上)や、曲面又は曲線断面を有するディスプレイ等のように作業性と良好な接着性が特に求められるディスプレイの製造に好適である。さらに、本開示は、優れた耐冷熱衝撃性を有しているため、車載ディスプレイ等の過酷な環境下に置かれるようなディスプレイに特に好適である。
【実施例0090】
以下、実施例及び比較例を示して本開示をさらに具体的に説明するが、本開示はこれらの例によって限定されるものではない。
【0091】
[試験方法]
(粘度)
接着剤の粘度特性は、回転粘度計及びレオメーターを使用して測定した。
回転粘度はスピンドルNo.7を取り付けたBS型回転粘度計を用い、20℃におけるスピンドル回転速度10rpmの粘度を測定した。回転粘度は500~700Pa・sであってよい。粘度が500Pa・s未満であると、塗布した接着剤の液ダレや広がりが起こり得、700Pa・sを超えると塗布形状バラつきやノズル詰まりが発生し得る。
レオメーター粘度は回転レオメーター(AR-G2、TA instruments製)を用い、25℃におけるせん断速度200(1/s)、ギャップ間距離200μmの粘度を測定した。レオメーター粘度は、20~40Pa・sであってよい。
【0092】
(塗布作業性)
塗布作業性は、兵神装備株式会社製のディスペンサー(2HD035G30)を使用して微細塗布性と高速塗布性について評価した。
微細塗布性は内径が1.5mm以下のノズルを用いて吐出することで評価した。内径:1.5mmのノズルで詰まりなく吐出可能であればよく、好ましくは内径:1.25mmで詰まりなく吐出可能なことである。
高速塗布性は内径:1.25mmのノズルを用いて塗布装置移動速度:150mm/sで吐出し、吐出されたビード形状を以下の基準で評価した。
〇:ビード形状が安定しており、途切れ、高さ不足及び広がりがない。
△:ビード形状が安定していないが、明らかな途切れ、高さ不足及び広がりがなく、実用上問題ない。
×:途切れ、高さ不足及び広がりがある。
【0093】
(冷熱衝撃性)
プラズマ処理機で表面処理したPC・ABS樹脂(200mm×300mm)の外周部分に接着剤を塗布し、同サイズのガラス板を重ね合わせ23℃50%RHの環境で3日間養生することで試験片とした。接着剤厚みは厚さ:0.4~0.8mmのスペーサーをPC・ABS樹脂とガラスの間に入れることで調整した。プラズマ処理は富士機械製の超高密度大気圧プラズマ発生装置 Tough Plasma FPF-20を使用し、PC・ABS樹脂表面の濡れ指数(ダイン数)が濡れ指数試薬で50mN/m以上になるように調整した。
冷熱衝撃性は冷熱衝撃試験機(TSA-203ES、エスペック製)に試験片を投入して、低温側-30℃[保持時間30分]と高温側85℃[保持時間30分]で1サイクル、または低温側-40℃[保持時間30分]と高温側95℃[保持時間30分]で1サイクルとする冷熱衝撃を100サイクル繰り返すことで評価した。
〇:100サイクル後に接着剤とPC・ABS樹脂またはガラスの剥離なし
△:50サイクル後に接着剤とPC・ABS樹脂またはガラスの剥離なし
×:50サイクル後に接着剤とPC・ABS樹脂またはガラスの剥離あり
【0094】
[原材料]
試験に用いた原材料の化学構造等を表1に示す。(メタ)アクリル系重合体A2及びA3、及びシランカップリング剤C4については下記の方法により製造した。
【0095】
[合成例1:(メタ)アクリル系重合体A2の製造]
105℃に加熱したトルエン42g中に、メタクリル酸メチル14.5g、アクリル酸ブチル68.5g、メタクリル酸ステアリル15g、3-メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン2gおよび重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.48gをトルエン18.7gに溶かした溶液を5時間かけて滴下した後、2時間撹拌した。さらに、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.02gをトルエン6.3gに溶かした溶液を追加して1時間撹拌することにより、固形分濃度60重量%、数平均分子量が19,000(GPCより求めたポリスチレン換算値)のジメトキシメチルシリル基含有(メタ)アクリル系重合体を得た。得られた重合体をエバポレーターで揮発分を脱揮(110℃、減圧)することにより、固形分濃度99%以上の透明で粘稠な液体(A2)を得た。
[合成例2:(メタ)アクリル系重合体A3の製造]
105℃に加熱したイソブタノ-ル33g中に、アクリル酸ブチル98g、3-メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン2gおよびイソブタノ-ル17gからなる混合物に重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.6gを溶かした溶液を4時間かけて滴下した後、2時間後重合を行ない、固形分濃度60重量%、数平均分子量11,700(GPCより求めたポリスチレン換算値)のジメトキシメチルシリル基含有(メタ)アクリル系重合体を得た。得られた重合体をエバポレーターで揮発分を脱揮(110℃、減圧)することにより、固形分濃度99%以上の透明で粘稠な液体(A3)を得た。
[合成例3:シランカップリング剤C4の製造]
3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン50gとN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン100gを50℃で72時間、加熱混合することにより合成した。
【0096】
[実施例1~15及び比較例1~5]
表2に示す組成(重量部)で原料をプラネタリーミキサーで混合し、硬化性組成物を調製した。得られた硬化性組成物に対して上記試験を行い、得られた評価結果を表3に示す。
【0097】
前記第二級アミノ基含有シランカップリング剤(C-i)が、少なくとも二種の第二級アミノ基含有シランカップリング剤(C-i)の組み合わせであり、その少なくとも一種がOH基又はNH2基を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
前記第二級アミノ基含有シランカップリング剤(C-i)の少なくとも一種が分子内に2個以上の反応性シリル基を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
シランカップリング剤(C)が、さらにビニル基含有シランカップリング剤及びエポキシ基含有シランカップリング剤からなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
さらに可塑剤(D)を含み、前記可塑剤(D)がトリメリット酸エステル又はアルキルスルホン酸フェニル系エステルである、請求項1~9のいずれか一項に記載の接着剤組成物。