(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042354
(43)【公開日】2022-03-14
(54)【発明の名称】現場打ちコンクリートの打設管理システム
(51)【国際特許分類】
E04G 21/02 20060101AFI20220307BHJP
【FI】
E04G21/02 ESW
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020147760
(22)【出願日】2020-09-02
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000182030
【氏名又は名称】若築建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】秋山 哲治
(72)【発明者】
【氏名】小山 稔樹
【テーマコード(参考)】
2E172
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172BA27
2E172DE00
2E172FA00
(57)【要約】
【課題】コンクリート打設の管理情報を簡易に集約可能とする。
【解決手段】現場打ちコンクリートの打設管理システム1は、管理サーバ2と、各現場に配置され作業員により操作される複数の端末装置3,4,5と、を備える。複数の端末装置3,4,5のいずれかが、各ミキサー車のコンクリートの可使時間に係る情報、打込み完了時間に係る情報、締固め時間に関する情報を含む打設管理情報を取得して管理サーバ2に送信し、管理サーバ2は、複数の端末装置3,4,5から送信された打設管理情報を紐づけて施工情報データベース21に格納する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
現場打ちコンクリートの打設管理システムであって、
管理サーバと、
各現場に配置され作業員により操作される複数の端末装置と、を備え、
前記複数の端末装置のいずれかが、各ミキサー車のコンクリートの可使時間に係る情報、打込み完了時間に係る情報、締固め時間に関する情報を含む打設管理情報を取得して前記管理サーバに送信し、
前記管理サーバは、前記複数の端末装置から送信された前記打設管理情報を紐づけてデータベースに格納する、
打設管理システム。
【請求項2】
前記管理サーバは、
コンクリート打設の施工対象物を所定高さで区分して多層化し、各層で所定領域に区分して複数の作業単位ブロックを設定し、
前記作業単位ブロックごとに前記複数の端末装置から送信された前記打設管理情報を紐づけてデータベースに格納する、
請求項1に記載の打設管理システム。
【請求項3】
前記管理サーバは、
前記施工対象物を前記作業単位ブロックで区分したモデルを有し、前記モデルを表示装置に表示可能であり、
前記表示装置の画面上で特定の作業単位ブロックが指定されると、前記データベースを参照して前記指定された作業単位ブロックに紐づけられている前記打設管理情報を出力する、
請求項2に記載の打設管理システム。
【請求項4】
前記管理サーバは、
前記施工対象物を前記作業単位ブロックで区分したモデルを有し、前記モデルを表示装置に表示可能であり、
前記モデルに含まれる前記作業単位ブロックごとに、打設作業の進捗状況に応じて表示態様を変更する、
請求項2または3に記載の打設管理システム。
【請求項5】
前記可使時間に係る情報に基づき、前記可使時間の許容範囲内で打設現場へのコンクリートの打ち込みが完了するように打ち込み作業を管理する可使時間管理部を備える、
請求項1~4のいずれか1項に記載の打設管理システム。
【請求項6】
前記締固め時間に関する情報に基づき、打設現場の特定の位置において所定時間を満足する締固めが行われるように締固め作業を管理する締固め管理部を備える、
請求項1~5のいずれか1項に記載の打設管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は現場打ちコンクリートの打設管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート打設では、生コン(生コンクリート)出荷から締固完了までに品質確保の上で様々な管理項目がある。これらの管理項目は、従来、各作業地点で個別に管理・記録されていたため、生コン出荷地点、受入地点、打込み作業地点、作業管理の事務所などを包括する現場全体での情報共有が困難である。
【0003】
また、これまでの施工管理では紙媒体を用いられる場合が多く、情報伝達も無線等を使う音声で行われる場合が多い。このため、日報管理は上記紙媒体のデータ整理が別途必要であり、管理項目の集約化に煩雑な作業を要する。
【0004】
このため、コンクリート打設の管理情報を簡易に集約して一括管理できるシステムが望まれている。
【0005】
これに関連する技術として、例えば特許文献1には、生コン発注者、生コンプラント、搬送業者、生コン打設現場とで、共通したフォーマットを有することにより、発注時から製造時、製造時から運送時、運送時から納入時、までの各工程時点での正確な確認を可能とする構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし特許文献1に記載の技術は、打設作業全体でみれば、生コン工場と打設現場との間での情報共有にすぎず、生コン出荷から締固完了までのコンクリート打設に係る作業の全体に亘って管理情報を一括管理するものではない。
【0008】
本開示は、コンクリート打設の管理情報を簡易かつ確実に集約できる現場打ちコンクリートの打設管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態の一観点に係る現場打ちコンクリートの打設管理システムは、管理サーバと、各現場に配置され作業員により操作される複数の端末装置と、を備え、前記複数の端末装置のいずれかが、各ミキサー車のコンクリートの可使時間に係る情報、打込み完了時間に係る情報、締固め時間に関する情報を含む打設管理情報を取得して前記管理サーバに送信し、前記管理サーバは、前記複数の端末装置から送信された前記打設管理情報を紐づけてデータベースに格納する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、コンクリート打設の管理情報を簡易かつ確実に集約できる現場打ちコンクリートの打設管理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る現場打ちコンクリートの打設管理システムの全体構成図
【
図2】一般的なコンクリート打設工事の概要について説明する図
【
図4】管理サーバ及び端末装置のハードウェア構成図
【
図6】コンクリートの可使時間管理画面の一例を示す図
【
図7】作業単位ブロックごとのミキサー車IDの紐付け手法を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0013】
図1は、実施形態に係る現場打ちコンクリートの打設管理システム1の全体構成図である。現場打ちコンクリートの打設管理システム1(以降では単に「打設管理システム1」とも表記する)は、コンクリート打設の管理情報を簡易かつ確実に集約して一括管理可能とするシステムである。
【0014】
まず
図2を参照して、一般的なコンクリート打設工事の概要について説明する。一般にコンクリート打設工事では、
図2に示すように、まず生コン工場にて生コンクリート(生コン)が製造されて打設現場に出荷される。生コンが積載されたミキサー車が打設現場まで生コンを運搬する。
【0015】
次に、打設現場では、生コンを積載するミキサー車が到着すると、生コンの品質試験が行われる。品質試験に合格すると、ミキサー車はポンプ車がいる位置まで移動し、ミキサー車に積載されている生コンがポンプ車によって圧送されて型枠内に打ち込まれる。打ち込み作業は、ミキサー車内の生コンの可使時間に収まるように管理される。ここでコンクリートの「可使時間」とは、生コンを製造した後に打設作業が可能な時間であり、例えば生コンの粘度や状態が使用に耐えられなくなるまでの時間という。
図2の例では、生コン工場での練り混ぜ開始時点から打ち込み完了までの区間を、コンクリートの「可使時間」としている。可使時間は、季節などの各種条件によって変動するが、概ね90~120分程度である。
【0016】
次に、打ち込みが完了した型枠内の生コンに締固めが施される。締固めでは、作業者がバイブレータ等を用いて生コン内部に振動を入力する。これによりコンクリート内に巻き込まれた気泡を除去して密度を高めることができる。締固めの効果を出すためには、概ね50cm以下の間隔で締固めを行い、各位置での締固め時間が5~15秒程度であるのが好ましい。
【0017】
なお、本実施形態では、「打ち込み」を「コンクリートが型枠内へ流し込まれる時点までの行為」と定義し、「締固め」を「型枠内へ流し込まれた後に、バイブレータで振動を加える行為」と定義して、打ち込み作業と締固め作業とを別の作業として区別する。このため、
図2の例では、図中に「※打ち込み完了」と記載した、打ち込み作業が完了する時刻(以下では「打ち込み完了時刻」とも表記する)と、「締固め開始時刻」とを同時としている。このように打ち込み作業と締固め作業とを区別して管理することによって、打ち込み作業と締固め作業の管理を個別に行うことが可能となり、より高精度な作業管理が可能となる。なお、「打ち込み完了時刻」より「締固め開始時刻」が早く、打ち込み作業と締固め作業とがオーバーラップする構成、つまり打ち込み作業の終了間際に締固め作業を開始するような構成でもよい。
【0018】
所定の層(
図2では「1層目」)の全域で打ち込みと締固めとが完了すると、一段階上の層(
図2では「2層目」)の作業に移行する。次の層でも、同様にこの層の全域で打ち込みと締固めが行われる。所定層の所定位置における締固め完了時間と、一段階上の層の当該所定位置の直上の位置における締固め完了時間との間隔は打ち重ね時間間隔として管理される。打ち重ね時間間隔は、季節などの各種条件によって変動するが、概ね120~150分程度である。このように、打ち込みと締固めが所定高さの複数層ごとに繰り返し行われて、最終的に施工対象物が完成する。
【0019】
図1に戻り、打設管理システム1は、管理サーバ2と、複数の端末装置3,4,5と、無線機器6と、を備える。
【0020】
管理サーバ2は、コンクリート打設の管理情報(打設管理情報)を集約して一元管理する装置である。管理サーバ2は、複数の端末装置3,4,5を含むシステム内の全端末に対して、集約した打設管理情報を提供することができ、これによりシステム内で打設管理情報を共有することができる。
【0021】
複数の端末装置3,4,5は、各現場に配置され作業員P1、P2、P3により操作される。端末装置3,4,5としては、例えばタッチパネルを有するタブレットを適用できる。以降の説明では、端末装置3,4,5を「タブレット3,4,5」とも表記する場合がある。
【0022】
図1の例では、複数の端末装置として3つの端末装置3,4,5を備える構成が例示される。端末装置3は、生コン工場に配置され、生コン工場にいる作業員P1によりコンクリートの出荷管理に用いられる。端末装置4は、打設現場の搬入口近傍に配置され、搬入口近傍にいる作業員P2によりコンクリートの搬入管理や打ち込み管理に用いられる。端末装置5は、打設現場においてコンクリートが流し込まれる型枠の近傍に配置され、型枠近傍にいる作業員P3によりコンクリートの締固め管理に用いられる。
【0023】
無線機器6は、管理サーバ2と端末装置3,4,5との間の無線通信を行うための通信装置である。管理サーバ2と端末装置3,4,5は、無線機器6を介してインターネットやイントラネットなどの通信網を経由して、相互の情報の送受信を行うことができる。
【0024】
打設管理システム1では、複数の端末装置3,4,5のいずれかが、各ミキサー車のコンクリートの可使時間に係る情報、打込み完了時間に係る情報、締固め時間に関する情報を含む打設管理情報を取得して管理サーバ2に送信する。
図1の例では、作業員P1の入力操作により、端末装置3が生コン工場からのコンクリートの出荷時間、積載量、ミキサー車ID、コンクリート配合などの情報(可使時間に係る情報)を取得して管理サーバ2に送信する。また、作業員P2の入力操作により、端末装置4が打ち込み完了時間、ミキサー車IDなどの情報を取得して管理サーバ2に送信する。さらに、作業員P3の入力操作により、端末装置5が締固め開始時間、締固め完了時間、セルIDなどの情報(締固め時間に関する情報)を取得して管理サーバ2に送信する。
【0025】
管理サーバ2は、複数の端末装置3,4,5から送信された打設管理情報を紐づけてデータベースに格納する。データベースに格納された打設管理情報は、端末装置3,4,5などのシステム内の他の端末から閲覧可能であり、これにより打設管理情報をシステム内の各端末で共有することができる。
【0026】
また、打設管理システム1は、打設現場以外の場所(例えばコンクリート打設工事を実施する企業の事務所など)に設置されるPC7(以降では「事務所PC7」とも表記する)も備えることができる。事務所の所員P4は、事務所PC7を利用して管理サーバ2にアクセスして、打設管理情報をリアルタイムで確認することができる。
【0027】
なお、複数の端末装置3,4,5の配置は
図1の例に限られない。例えば生コン工場には作業員P1や端末装置3が配置されない構成でもよい。この場合、コンクリートの可使時間に係る情報は、例えば打設現場への搬入時に、作業員P2により端末装置4を利用して入力することができる。
【0028】
図3は、管理サーバ2の機能ブロック図である。管理サーバ2は、上述の機能に関して、
図3に示すように施工情報データベース21と、施工情報処理部22と、可使時間管理部23と、締固め管理部24と、モデル表示部25と、を備える。
【0029】
施工情報データベース21は、各タブレット3,4,5(端末装置3,4,5)から送信され、施工情報処理部22により関連付けて纏められた打設管理情報を記憶する。
【0030】
施工情報処理部22は、各タブレット3,4,5から送信された打設管理情報に係る各種情報を関連付けて一組の情報セットとする。施工情報処理部22は、例えば、施工対象物の作業単位ブロックごとに打設管理情報の組を作成する。施工情報処理部22は、作成した打設管理情報の組を施工情報データベース21に送信する。
【0031】
可使時間管理部23は、各タブレット3,4,5から送信された打設管理情報に係る各種情報に基づき、コンクリートの可使時間を管理する。可使時間管理部23は、打設管理情報のうち可使時間に係る情報に基づき、可使時間の許容範囲内で打設現場へのコンクリートの打ち込みが完了するように打ち込み作業を管理する。
【0032】
締固め管理部24は、各タブレット3,4,5から送信された打設管理情報に係る各種情報に基づき、打設現場の締固めを管理する。締固め管理部24は、打設管理情報のうち締固め時間に関する情報に基づき、打設現場の特定の位置において所定時間を満足する締固めが行われるように締固め作業を管理する。
【0033】
モデル表示部25は、各タブレット3,4,5から送信された打設管理情報に係る各種情報に基づき、施工対象物のモデルに施工状況を付加して表示する。
【0034】
本実施形態の打設管理システム1が、コンクリート打設施工中に行う処理の流れは例えば以下のとおりである。
【0035】
工程1:生コン工場からミキサー車が出発。タブレット3から管理サーバ2へ「ミキサー車ID(ミキサー車の識別情報)」「出荷時間」「積載量」「コンクリート配合」などの情報を送信(生コン工場に作業員P1やタブレット3が配置されない場合もあり)。
【0036】
工程2:ミキサー車が打設現場に到着。(タブレット3が無い場合は、ここでタブレット4から管理サーバ2へ「ミキサー車ID」「出荷時間」「積載量」「コンクリート配合」などの情報を送信。例えば作業員P2がミキサー車の運転手から伝票を受け取り、伝票に記載の情報をタブレット4に入力する)
【0037】
工程3:管理サーバ2の可使時間管理部23が、工程1または工程2で受信した「ミキサー車ID」「出荷時間」から「可使時間」を算出。管理サーバ2の可使時間管理部23からタブレット4へ「可使時間」の情報を送信。
【0038】
工程4:打ち込み作業を実施。タブレット4には、受信した「可使時間」に基づき、可使時間の許容時刻に近づくと警告を表示する。個々のミキサー車のコンクリートの打ち込みが完了するごとに、タブレット4から管理サーバ2へ「ミキサー車ID」「打ち込み完了時刻」の情報を送信。
【0039】
工程5:管理サーバ2の施工情報処理部22が、工程4で受信した「ミキサー車ID」「打ち込み完了時刻」と、工程1または工程2で受信した「積載量」に基づき、コンクリートの打ち込みが行われたセル(作業単位ブロック)を特定。施工情報処理部22が、「セルID(特定した作業単位ブロックの識別情報)」と「ミキサー車ID」「出荷時間」「打ち込み完了時刻」とを紐づけて施工情報データベース21に記憶。
【0040】
工程6:締固め作業を実施。各セルの締固めが完了するごとに、タブレット5から管理サーバ2へ「セルID」「締固め開始時刻」「締固め完了時刻」を送信。
【0041】
工程7:管理サーバ2の締固め管理部24が、工程6で受信した「セルID」「締固め開始時刻」「締固め完了時刻」に基づき、各セルの「締固め時間」を算出。
【0042】
工程8:管理サーバ2の施工情報処理部22が、工程7で算出した「締固め時間」を、工程5のデータセットにさらに紐づけて施工情報データベース21に記憶。
【0043】
工程9:管理サーバ2は、自機または他の端末から特定のセルの指定情報が入力されると、このセルの「セルID」に基づき、施工情報データベース21から当該セルの「ミキサー車ID」「出荷時間」「打ち込み完了時刻」「締固め時間」「打重ね時間間隔」「コンクリート配合」などの打設管理情報を出力して要求先に提供する。(表示態様は、例えば施工対象物の三次元モデルをメッシュ表示し、表示画面上で特定のセルがクリックされるのに応じて、当該セルに紐付けられている打設管理情報を施工情報データベース21から取得して表示)
【0044】
図4は、管理サーバ2及び端末装置3,4,5のハードウェア構成図である。
図4に示すように、管理サーバ2及び端末装置3は、物理的には、CPU(Central Processing Unit)101、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)102およびROM(Read Only Memory)103、入力デバイスであるキーボード及びマウス等の入力装置104、ディスプレイ等の出力装置105、ネットワークカード等のデータ送受信デバイスである通信モジュール106、補助記憶装置107、などを含むコンピュータシステムとして構成することができる。
【0045】
図3に示す管理サーバ2の各機能や、上述の端末装置3,4,5の機能は、CPU101、RAM102等のハードウェア上に所定のコンピュータソフトウェア(打設管理プログラム)を読み込ませることにより、CPU101の制御のもとで通信モジュール106、入力装置104、出力装置105を動作させるとともに、RAM102や補助記憶装置107におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。すなわち、本実施形態に係る打設管理プログラムをコンピュータ上で実行させることで、管理サーバ2は、
図3の施工情報データベース21、施工情報処理部22、可使時間管理部23、締固め管理部24、モデル表示部25として機能する。
【0046】
本実施形態の打設管理プログラムは、例えばコンピュータが備える記憶装置内に格納される。なお、打設管理プログラムは、その一部又は全部が、通信回線等の伝送媒体を介して伝送され、コンピュータが備える通信モジュール等により受信されて記録(インストールを含む)される構成としてもよい。また、打設管理プログラムは、その一部又は全部が、CD-ROM、DVD-ROM、フラッシュメモリなどの持ち運び可能な記憶媒体に格納された状態から、コンピュータ内に記録(インストールを含む)される構成としてもよい。
【0047】
管理サーバ2及び端末装置3,4,5は、アナログ回路、デジタル回路又はアナログ・デジタル混合回路で構成された回路であってもよい。また、管理サーバ2及び端末装置3,4,5の各機能の制御を行う制御回路を備えていてもよい。各回路の実装は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等によるものであってもよい。
【0048】
図5~
図10を参照して、打設管理システム1において打設作業の管理に用いられる管理画面例を説明する。
図5は、管理サーバ2の進捗状況画面11の一例を示す図である。
図5に示す進捗状況画面11は、例えば施工情報処理部22により集約された打設管理情報に基づき、モデル表示部25により作成される。この進捗状況画面11は、例えば管理サーバ2の表示装置に表示されたり、事務所PC7のディスプレイに表示されるなどして、各所に提供される。
【0049】
図5に示すように、進捗状況画面11では、施工対象物(本実施形態では橋脚)の三次元モデル12が表示される。この三次元モデル12は、打設管理情報が関連付けられて記憶される作業単位ブロック(「セル」とも表記する場合がある)ごとに区分される。作業単位ブロックは打設作業の一単位として取り扱われる。
【0050】
なお、作業単位ブロックは、例えば、締固め作業の際にバイブレータなどの振動発生装置がコンクリート内の任意の一箇所に入れられたときに、この箇所からの振動が伝達できる範囲(締固めの影響範囲)で区分されるのが好ましい。例えば、三次元モデル12は、所定高さ(例えば締固めに適した50cm)ごとに複数の層に区分され、さらに各層ごとに50cm四方の作業単位ブロックに区分される。
【0051】
そして、進捗状況画面11では、この三次元モデル12の作業単位ブロックごとに、打設作業の進捗状況に応じて表示態様が変更されて、打設進捗がリアルタイムに反映される。例えば、
図5の例では、コンクリート打設が完了しているブロックはグレー色に塗られ、現在打設作業が進行中のブロックは白色に塗られ、まだ打設作業が未着手のブロックはワイヤフレームで表示されている。
図5に示すような進捗状況画面11を利用することで、現在施工中の打設作業が、施工計画に従って無理、無駄なく進められているか、打設班毎で打設速度に偏りが生じてないか等、現場から離れた場所でも施工の進捗を俯瞰して把握できる。
【0052】
管理サーバ2は、施工対象物をメッシュ化した複数のセル(作業単位ブロック)ごとに、打設作業の進捗や打設管理情報を管理することができる。
【0053】
図6は、コンクリートの可使時間管理画面13の一例を示す図である。
図6に示す可使時間管理画面13は、例えば打設現場搬入口に配置されるタブレット4に表示され、作業員P2により使用される。
【0054】
可使時間管理画面13の右半分には、生コン工場から打設現場へ搬送されているミキサー車の各台に、出発時刻13Bと完了時刻13Cの入力表が表示される。出発時刻13Bとは、例えば生コン工場からミキサー車が出発した時刻の情報であり、生コン工場のタブレット3から作業員P1により入力される。なお、生コン工場にタブレット3が配置されない場合には、作業員P2がタブレット4を用いて入力してもよい。この場合、作業員P2は、ミキサー車の運転手から受け取った伝票に記載されている情報を参照して出発時刻等の情報を入力できる。出発時刻13Bは、上述の打設管理情報のうち「出荷時間」に相当する。完了時刻13Cとは、該当のミキサー車のコンクリートがすべて放出されて打ち込みに使われた時刻の情報であり、搬入口のタブレット4から作業員P2により入力される。完了時刻13Cは、上述の打設管理情報のうち「打ち込み完了時刻」に相当する。
【0055】
可使時間管理画面13の右半分には、生コン工場から打設現場へ搬送されているミキサー車の各台に、可使時間情報13Aが表示される。可使時間情報13Aには、各台に出発時刻と、可使時間までの残り時間とが表示される。
図6の例では、例えば6台目のミキサー車については、出発時刻が16時であり、可使時間まで残り26分であることが表示されている。また、4台目のミキサー車については、出発時刻が12時であり、打ち込みが完了しているので可使時間については「完了」と表示されている。また、5台目のミキサー車については、出発時刻が15時であり、現在時刻がすでに所定の可使時間の許容範囲を超過しているため、可使時間については「超過」と表示されている。
【0056】
可使時間の情報は、管理サーバ2の可使時間管理部23からタブレット4に提供される。可使時間管理部23は、タブレット3(またはタブレット4)に入力された「出発時刻」の情報と、タブレット4に入力された「完了時刻」の情報と、これらの情報に関するミキサー車のID情報(ミキサー車ID)とに基づき、各ミキサー車の可使時間の許容時刻を算出して、この許容時刻の情報、または、許容時刻までの残り時間の情報をタブレット4に送信して、タブレット4の可使時間管理画面13に表示させる。
【0057】
また、可使時間管理部23では、出荷から長時間経過しており打設が完了していないミキサー車について、可使時間情報13Aの画面において、該当のミキサー車の領域に枠を追加したり、色を変えるなどの表示態様の変更をして、作業員P2に視覚的に警告を報知して、該当ミキサー車の打ち込みを可使時間超過前に迅速に完了させるよう促すこともできる。
【0058】
図7は、作業単位ブロックごとのミキサー車IDの紐付け手法を説明する図である。
図7に例示する紐付けは、例えば管理サーバ2の施工情報処理部22により行われる。
【0059】
上述のように、管理サーバ2は施工対象物を複数層に区分し、各層では複数の作業単位ブロックに区分してブロックごとに打設管理情報を管理する。
図7の例では、施工対象物の三次元モデル12は、図中左上に示すように、上下方向に3つのロットに区分され、下方の1ロットは2層、中間の2ロットは4層、上方の3ロットは6層に区分されている。ここでは、1ロットの2層目における紐付け手順を例示する。
【0060】
1ロット2層目は、例えば
図7の右上に示すように、7列×6行の42個のブロックに区分されている。これらのブロック区分において、
図7の右下に示すように、左上の1番目のブロックから左下の42番目のブロックまでつづら折り状に打設順序が付される。この打設順序の情報は、例えばタブレット4やタブレット5に提供され、作業員P2や作業員P3は、この情報に基づいて打設作業を実施する。
【0061】
各ブロックの体積と、各ミキサー車が積載するコンクリートの量の情報は管理サーバ2は取得可能であるので、これらの情報を比較すれば、何台目ミキサー車のコンクリートが、どの打設順序のブロックの範囲に使用されたかを算出できる。例えば
図7の例では図中左下に示すように、1番目から16番目までのブロックにN台目のミキサー車のコンクリートが使用され、17番目から32番目までのブロックにN+1台目のミキサー車のコンクリートが使用され、33番目から42番目までのブロックにN+2台目のミキサー車のコンクリートが使用されていることが算出される。
【0062】
施工情報処理部22は、このように算出した作業単位ブロックとミキサー車IDとの
関係に基づいて、作業単位ブロックごとに、このブロックの打設に用いられた生コンを運搬したミキサー車のミキサー車IDを割り当てることができる。
【0063】
図8は、締固め管理画面14の一例を示す図である。
図8の締固め管理画面14は、例えば打設現場の型枠近傍に配置されるタブレット5に表示され、作業員P3により使用される。
【0064】
締固め管理画面14では、現在作業中の層(図では3層目)の各作業単位ブロックの締固め作業の進捗状況が表示される。締固め管理画面14では、作業単位ブロックごとに番号が割り当てられ、
図8の例では各行にF、G、H、Iが付され、各列には3,4,5の番号が付されている。
【0065】
例えば締固めを行う作業者(締固め作業者)があるブロックにバイブレータを設置して締固め作業を開始するとき、作業員P3がタブレット5の締固め管理画面14の該当ブロックの領域をタッチすると、締固め開始時刻と、該当ブロックの識別情報(セルID)とが管理サーバ2に送信される。管理サーバ2の締固め管理部24は、締固め開始時刻の受信に応じて、該当ブロックの締固め時間の管理を開始する。
【0066】
締固め管理部24は、例えば、締固め時間が所定時間に満たない状態では、例えば
図8では「G5」のブロックのように、ブロックの色を黄色に変更したり、ブロックに経過時間と共に「NG」(まだ締固め時間が不足しているので作業を継続するようにとの趣旨)の情報を表示するなど、該当ブロックでの締固め作業の継続の旨の注意喚起を促すように締固め管理画面14での表示態様を変更する。
【0067】
一方、締固め時間が所定時間以上となった状態では、例えば
図8では「G4」のブロックのように、例えばブロックの色を青色に変更したり、ブロックに経過時間と共に「OK」(締固め時間が十分となったので作業を終了しても大丈夫との趣旨)の情報を表示するなど、該当ブロックでの締固め作業の終了を促すように締固め管理画面14での表示態様を変更する。
【0068】
そして、締固めを行う締固め作業者が該当ブロックでの締固め作業を終了すると、作業員P3がタブレット5の締固め管理画面14の該当ブロックの領域を再度タッチすると、締固め終了時刻と、該当ブロックのセルIDとが管理サーバ2に送信される。管理サーバ2の締固め管理部24は、締固め終了時刻の受信に応じて、該当ブロックの締固め時間の管理を終了し、例えば
図8の「F3」「F4」「F5」「G3」ブロックのように、ブロックの色をグレー色に変更するなど、該当ブロックでの締固め作業が完了していることがわかるように締固め管理画面14での表示態様を変更する。このように、
図8のような締固め管理画面14を利用することで、締固め時間が不足していないか、また、締固めをしていない箇所が残っていないか、などの情報を、締固め作業者に作業中に視覚的かつ直感的に把握させることができる。
【0069】
さらに、管理サーバ2の締固め管理部24は、1つ下の層の各ブロックの締固め完了時間に基づき打ち重ね時間の許容時刻を算出して、打ち重ね時間に基づく締固め作業の管理も行うことができる。例えば、
図8の「I3」「I4」「I5」ブロックのように、ブロックの色を点滅させるなど、打ち重ね時間の許容時刻に近づいているブロックについて締固め作業を迅速に完了させる旨の警告がわかるように、締固め管理画面14での表示態様を変更することができる。
【0070】
図9は、打設速度管理画面15の一例を示す図である。管理サーバ2は、ポンプ筒先の打設速度として、総打設量の時間推移を打設速度管理画面15としてグラフ表示することができる。
図9のグラフは、横軸が打設完了時刻、縦軸が打設数量(m
3)を示す。
図9横軸の打設完了時刻は、打設作業開始からの経過時刻を示し、縦軸の打設数量は、各時刻において打設現場への打ち込みが行われた生コンの作業開始時からの累積量を示す。総打設量は、例えば施工情報処理部22が、打設管理情報のうち、打ち込みが完了したミキサー車の情報と、該当するミキサー車のそれぞれの積載量の情報とを用いて算出できる。
【0071】
図9のような打設速度管理画面15を利用して、計画した出荷速度と、実際の打設速度とを比較することで、生コンの供給側と打設側の速度バランスを調整できる。これにより、コンクリート供給不足による打設中断や、供給過多に起因するアジテータ車の待機増に伴う可使時間の減少を抑制でき、スムーズな連続打設が可能になる。また、時々刻々変化する打設速度をリアルタイムで把握できるため、時間的余裕がどの程度残されているか等、施工中に生じうる突発的なトラブルに対しても臨機応変に対応することが可能になる。
【0072】
図10は、施工情報表示画面16の一例を示す図である。
図10の施工情報表示画面16は、施工情報データベース21に記憶された作業単位ブロックごとの打設管理情報について、閲覧や取得を容易にするためのユーザインタフェースの一例である。施工情報表示画面16は、管理サーバ2の表示装置や、事務所PC7などの他の端末装置に表示される。
【0073】
図10に示すように、施工情報表示画面16では、
図5の進捗状況画面11と同様の施工対象物の三次元モデル12が表示される。この三次元モデル12は、上述した作業単位ブロックごとに区分されている。そして、画面上で特定のブロックにおいて、ダブルクリックなどの所定の操作を入力することによって、当該ブロックに関する打設管理情報が記載されたウィンドウ16Aがポップアップ表示される。この処理は、例えばモデル表示部25が、選択された作業単位ブロックに割り当てられるセルIDに基づき、施工情報データベース21を参照してこのセルIDに紐付けられる各種情報を取得して、取得した情報を用いてウィンドウ16Aを作成して施工情報表示画面16に表示することで実現される。
【0074】
ウィンドウ16Aに表示される情報としては、例えば
図10に示すように、「1. 各層の打設順序(メッシュ番号)」、「2. メッシュの平面座標」、「3. メッシュ1個分の体積」、「4. ミキサー車の番号、出荷時間」、「5. 打込み完了時間」、「6. 締固め開始時間」、「7. 締固め完了時間」、「8. 打重ね時間間隔(2層目以降)」、「9. コンクリート品質試験の結果」、「10. 打設日の日付」、「11. その他(生コン工場名など)」などの情報を含む。なお、「コンクリート品質試験結果」とは、コンクリートのスランプ、空気量、温度、外気温などの情報を含み、構造物の条件により20~150m3に1回実施される。一般に、全ミキサー車の全数試験は無いが、特殊工事では、全数試験を行う場合もある。
【0075】
なお、施工情報データベース21に蓄積されている打設管理情報を出力する手法は、
図10の施工情報表示画面16のような三次元モデル12と絡めた表示に限られない。例えば、csv形式などの一覧表として出力することもできる。
【0076】
本実施形態に係る現場打ちコンクリートの打設管理システム1は、管理サーバ2と、各現場に配置され作業員P1、P2、P3により操作される複数の端末装置3,4,5と、を備える。複数の端末装置3,4,5のいずれかが、各ミキサー車のコンクリートの可使時間に係る情報、打込み完了時間に係る情報、締固め時間に関する情報を含む打設管理情報を取得して管理サーバ2に送信し、管理サーバ2は、複数の端末装置3,4,5から送信された打設管理情報を紐づけて施工情報データベース21に格納する。
【0077】
この構成により、複数の端末装置3,4,5を利用して個別に入力された打設管理情報に係る各種情報は、管理サーバ2に集約されて、各情報同士が関連付けられた上で施工情報データベース21に纏めて格納される。これにより、打設現場の作業員同士の紙媒体や口頭などの連絡に頼ることなく打設管理情報を集約することができるので、伝達時のヒューマンエラーなど情報の欠落や誤認を排除でき、より確実にコンクリート打設の管理情報を集約できる。また、従来のように紙媒体のデータ整理などの情報集約化のために作業員が行う必要があった煩雑な作業が不要となるので、管理作業を省力化できると共に、より簡易にコンクリート打設の管理情報を集約できる。この結果、本実施形態の打設管理システム1は、コンクリート打設の管理情報を簡易かつ確実に集約できる。また、管理サーバ2や事務所PC7から、施工情報データベース21に格納された打設管理情報を参照することで、工事管理者等が打設工事の進捗状況をリアルタイムで把握することが可能となり、施工管理を改善できる。
【0078】
また、本実施形態の打設管理システム1では、管理サーバ2は、コンクリート打設の施工対象物を所定高さで区分して多層化し、各層で所定領域に区分して複数の作業単位ブロックを設定し、作業単位ブロックごとに、複数の端末装置3,4,5から送信された打設管理情報を紐づけて施工情報データベース21に格納する。
【0079】
この構成により、作業単位ブロックごとに打設管理情報を参照することが可能となり、これらの打設管理情報を利用することによって作業単位ブロックごとの締固め作業や打ち重ね作業の管理が可能となるので、コンクリート打設工事の各工程のきめ細かな作業管理を行うことができる。また、打設工事完了後には、施工情報データベース21には施工対象物のすべての作業単位ブロックに関する打設管理情報が蓄積されるので、これらの情報を利用することで、作業単位ブロックごとにコンクリートに係る情報を提供できる。コンクリートに係る情報とは、例えば、使用されたコンクリートの配合や製造時期等の材料に関する情報や、可使時間内に打ち込みが完了したか否かや、締固めが所定時間を満足して行われたか否か、打ち重ねが所定時間内に完了したか否か、などの製造に関する情報、を含む。すなわち、工事竣工後の施工対象物であるコンクリート構造物の品質のトレーサビリティ(追跡可能性)を確保できる。
【0080】
また、本実施形態の打設管理システム1では、管理サーバ2は、施工対象物を作業単位ブロックで区分した三次元モデル12を有し、例えば
図10に例示した施工情報表示画面16のように、三次元モデル12を表示装置に表示可能である。そして、表示装置の施工情報表示画面16上で、例えばダブルクリック操作などによって特定の作業単位ブロックが指定されると、管理サーバ2は、施工情報データベース21を参照して、指定された作業単位ブロックに紐づけられている打設管理情報を出力する。
【0081】
この構成により、システム利用者は打設管理情報を確認したい作業単位ブロックを三次元モデル12上で指定できるので、極めて簡単にかつ直感的な操作で所望の情報を取得することが可能となり、システムが蓄積した打設管理情報のユーザビリティを向上できる。また、打設管理情報を電子データで扱うため、離隔地でも情報を享受でき、より幅広い打設管理情報の活用が可能となる。
【0082】
また、本実施形態の打設管理システム1では、可使時間管理部23が、管理サーバ2に集約された打設管理情報のうち可使時間に係る情報に基づき、可使時間の許容範囲内で打設現場へのコンクリートの打ち込みが完了するように打ち込み作業を管理する。同様に、締固め管理部24が、管理サーバ2に集約された打設管理情報のうち締固め時間に関する情報に基づき、打設現場の特定の位置において所定時間以上の締固めが行われるように締固め作業を管理する。
【0083】
従来、コンクリートの品質管理は慣習的に実施されていた部分があり、例えば締固めの時間などの管理は曖昧で、施工の不具合(可使時間超過により生コンの廃棄、締固めの過不足による材料分離、コールドジョイントなどの発生)に繋がることもあった。これに対して本実施形態では、上記構成により、管理サーバ2に集約された打設管理情報を利用することによって、打ち込み作業や締固め作業をきめ細かく管理することが可能となり、品質項目の定量的な管理により施工の不具合を防止でき、この結果、生成されるコンクリート構造物の品質を向上できる。
【0084】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【0085】
上記実施形態では、作業員P3の入力操作により、端末装置5が締固め開始時間、締固め完了時間、セルIDなどの情報(締固め時間に関する情報)を取得して管理サーバ2に送信する構成を例示したが、締固め時間に関する情報を取得する手法は作業員の入力操作以外の手法でもよい。例えば、締固め作業者を含む締固め作業の作業領域を撮像部(静止画カメラ、動画カメラなど)で撮像し、撮像画像を用いて締固め作業者の骨格モデルを推定し、推定された骨格モデルに基づき締固め作業者の締固め作業の作業位置を推定する手法でもよい。この手法では、骨格モデルの推定に、例えば人物画像と骨格との対応関係をディープラーニングなどの機械学習手法によって獲得した、ディープニューラルネットワークなどの推論器を用いることができる。この手法では、例えば骨格モデルに基づき締固め作業者の足下の位置を作業位置として推定することができる。また、この手法の場合、推定された締固め作業者の作業位置の情報に基づいて、所定の作業単位ブロックにおける締固め時間を計測することができる。なお、これらの機能は端末装置5が備えてもよいし、管理サーバ2が備えてもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、打設現場の型枠近傍に配置される端末装置5に表示される締固め管理画面14(
図8参照)によって、各作業単位ブロックの締固め作業の進捗状況を締固め作業者に提示する構成を例示したが、これに加えて締固め作業の作業者に対して作業単位ブロックごとに作業順を教示する教示装置を備える構成としてもよい。教示装置は、例えば、締固め作業の作業領域(型枠)の周囲に設置され、作業領域内の複数の作業単位ブロックの個々の位置を表示する標識(例えば個々の作業単位ブロックに応じて数字やアルファベットが付されたゲージなど)と、締固め作業者が参照可能な端末装置と、を有する。この構成では、端末装置上に標識に対応する情報を用いて作業順を提示することで、締固め作業者に各作業単位ブロックの作業順を教示することできる。また、教示装置は、AR(拡張現実)用の表示装置(例えばヘッドマウントディスプレイ)を有する構成でもよい。この構成では、締固め作業者が表示装置を介して作業領域を見るときに、表示装置上で作業領域に作業単位ブロックを重畳表示して、締固め作業者に作業順を教示することができる。また、教示装置は、作業領域の任意の位置に光を照射する照明装置を有する構成でもよい。この構成では、照明装置を用いて作業領域上の1つまたは複数の作業単位ブロックに対応する位置に光を照射して、締固め作業者に作業順を教示することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 打設管理システム
2 管理サーバ
21 施工情報データベース
22 施工情報処理部
23 可使時間管理部
24 締固め管理部
25 モデル表示部
3,4,5 タブレット(端末装置)
6 無線機器
7 事務所PC
11 進捗状況画面
12 三次元モデル
13 可使時間管理画面
14 締固め管理画面
15 打設速度管理画面
16 施工情報表示画面