(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042356
(43)【公開日】2022-03-14
(54)【発明の名称】締固め作業管理システム
(51)【国際特許分類】
E04G 21/06 20060101AFI20220307BHJP
【FI】
E04G21/06 ESW
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020147762
(22)【出願日】2020-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000182030
【氏名又は名称】若築建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】秋山 哲治
【テーマコード(参考)】
2E172
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172FA13
(57)【要約】
【課題】締固め作業の位置や手順を精度良く作業者に教示できる締固め作業管理システムを提供する。
【解決手段】締固め作業管理システム1では、締固め作業の作業領域10を区分して複数の作業単位ブロック12が設定される。複数の作業単位ブロック12は、各ブロック内の所定位置において締固め用のバイブレータ11を作動させた場合に当該ブロックの全域がバイブレータ11の振動伝達範囲に含まれるように設定される。そして締固め作業管理システム1は、締固め作業の作業員Pに対して作業単位ブロック12ごとに作業順を教示する教示装置としての端末装置3の教示表示部32を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
締固め作業の作業領域を区分して複数の作業単位ブロックが設定され、
前記複数の作業単位ブロックは、各ブロック内の所定位置において締固め用のバイブレータを作動させた場合に当該ブロックの全域が前記バイブレータの振動伝達範囲に含まれるように設定され、
前記締固め作業の作業員に対して前記作業単位ブロックごとに作業順を教示する教示装置を備える、
締固め作業管理システム。
【請求項2】
前記作業単位ブロックにおいて締固め時間を計測し、前記締固め時間が所定時間未満の場合に前記作業員に報知する管理装置を備える、
請求項1に記載の締固め作業管理システム。
【請求項3】
前記管理装置が行う報知では、前記締固め時間が所定時間未満のまま次のブロックで作業を開始したときに、一つ前のブロックの締固め作業を再度行うよう促すか、または、全ブロックの作業が終わった後に再作業が必要なブロックを纏めて指示する、
請求項2に記載の締固め作業管理システム。
【請求項4】
前記教示装置は、前記作業領域の周囲に設置され、前記作業領域内の前記複数の作業単位ブロックの個々の位置を表示する標識と、前記作業員が参照可能な端末装置と、を有し、
前記端末装置上に前記標識に対応する情報を用いて前記作業順を提示することで、前記作業員に前記作業順を教示する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の締固め作業管理システム。
【請求項5】
前記教示装置は、AR(拡張現実)用の表示装置を有し、
前記作業員が前記表示装置を介して前記作業領域を見るときに、前記表示装置上で前記作業領域に前記作業単位ブロックを重畳表示して、前記作業員に前記作業順を教示する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の締固め作業管理システム。
【請求項6】
前記教示装置は、前記作業領域の任意の位置に光を照射する照明装置を有し、
前記照明装置を用いて前記作業領域上の1つまたは複数の作業単位ブロックに対応する位置に前記光を照射して、前記作業員に前記作業順を教示する、
請求項1~5いずれか1項に記載の締固め作業管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、締固め作業管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート施工において、コンクリートを型枠内に流し込んだ際にコンクリート内に巻き込まれた気泡を除去して密度を高める作業を「締固め」という。この締固めは、例えばバイブレータをコンクリート中に挿入して、型枠内でコンクリートに直接振動を加えることで実施できる(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンクリート打設の作業領域内に締固め作業が行われていない部分が残るとジャンカなどの初期欠陥が生じやすい。これを防ぐには、作業領域の全体に亘って締固め作業が万遍なく行われるように、締固め作業を精度良く管理できることが望ましい。管理精度を向上させるためには、締固め作業の位置や手順を精度良く作業者に教示できることが望ましい。
【0005】
本開示は、締固め作業の位置や手順を精度良く作業者に教示できる締固め作業管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の一観点に係る締固め作業管理システムは、締固め作業の作業領域を区分して複数の作業単位ブロックが設定され、前記複数の作業単位ブロックは、各ブロック内の所定位置において締固め用のバイブレータを作動させた場合に当該ブロックの全域が前記バイブレータの振動伝達範囲に含まれるように設定され、前記締固め作業の作業員に対して前記作業単位ブロックごとに作業順を教示する教示装置を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、締固め作業の位置や手順を精度良く作業者に教示できる締固め作業管理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る締固め作業管理システムの概略構成図
【
図5】管理装置による作業領域の管理態様の一例を示す図
【
図8】ARを利用した作業単位ブロックの表示手法の一例を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0010】
なお、以下の説明において、x方向、y方向、z方向は互いに垂直な方向である。x方向及びy方向は水平方向であり、z方向は鉛直方向である。x方向は、矩形状の作業領域10の二組の対辺のうち一方の延在方向である。y方向は、矩形状の作業領域10の二組の対辺のうち他方の延在方向である。また、以下では説明の便宜上、z正方向側を上側、z負方向側を下側とも表現する場合がある。
【0011】
図1は、実施形態に係る締固め作業管理システム1の概略構成図である。
図2は、締固め作業管理システム1の機能ブロック図である。
図3は、管理装置2及び端末装置3のハードウェア構成図である。
図4は、締固め作業の教示画面の一例を示す図である。
図5は、管理装置2による作業領域10の管理態様の一例を示す図である。
【0012】
図1に示すように、コンクリートの打設工事では、型枠内に打ち込まれた生コンクリート(生コン)から成る作業領域10に締固めが施される。
図1の例では、型枠は矩形状に形成され、作業領域10も型枠に沿った略直方体形状であり、その上面は矩形状の平面である。締固めでは、作業者Pがバイブレータ11等の振動発生機器を用いて作業領域10の生コン内部に振動を入力する(
図5参照)。これによりコンクリート内に巻き込まれた気泡を除去して密度を高めることができる。締固めの効果を作業領域の全体に亘って確保するためには、概ね50cm以下の間隔で締固めを行い、各位置での締固め時間が5~15秒程度であることが好ましい。このように、打ち込みと締固めが所定高さの複数層ごとに繰り返し行われて、最終的に施工対象物が完成する。
【0013】
本実施形態の締固め作業管理システム1は、このようなコンクリート打設工事における締固め作業を、型枠内の作業領域10の全体に亘って万遍なく行われるように精度良く管理するためのシステムである。締固め作業管理システム1は、管理装置2と、端末装置3(教示装置)と、情報取得装置4とを備える。
【0014】
情報取得装置4は、作業領域10の全体の形状や位置の情報や、作業領域10上の作業員Pの位置の情報など、締固め作業の教示に利用するための情報を取得する。情報取得装置4は、管理装置2と通信可能に接続されており、取得した情報を管理装置2に送信する。情報取得装置4は例えばカメラを含む。作業者Pを含む締固め作業の作業領域10の全体をカメラが撮像し、情報取得装置4はカメラにより撮像された作業領域10の撮像画像を管理装置2に送信する。また、情報取得装置4は、バイブレータ11の動作状態を検出するための振動センサや、バイブレータ11への制御入力の電気信号を取得する装置を含む構成でもよい。
【0015】
管理装置2は、情報取得装置4により取得された作業領域10に関する情報に基づき、締固め作業の作業位置を計測して、各作業位置での締固め時間を管理する。本実施形態では、管理装置2は、端末装置3を利用して、作業員Pに対して締固め作業の教示を行う。締固め作業の教示とは、具体的には締固めを行う作業単位ブロック12の位置の教示や、作業領域10内の複数の作業単位ブロック12の作業手順の教示を含む。
【0016】
また、管理装置2は、各作業位置での締固め作業の進捗状況を把握して、締固めが作業領域10の全域に亘って漏れなく実施されるよう管理できる。本実施形態では、管理装置2は、
図5に示すように、作業領域10をメッシュ化した複数の作業単位ブロック12に区分し、個々の作業単位ブロック12ごとに、締固め作業の進捗を管理することができる。
図5の例では、作業領域10が4×4=16個の作業単位ブロック12に区分される構成が例示されている。
【0017】
特に本実施形態では、個々の作業単位ブロック12は、
図5に示すように、各ブロック内の所定位置において締固め用のバイブレータ11を作動させた場合に、当該ブロックの全域がバイブレータ11の振動伝達範囲に含まれるように設定される。このように作業単位ブロック12を設定することにより、個々の作業単位ブロック12内で確実に締固めを行うことが可能となり、作業領域10内のすべての作業単位ブロック12において締固めを所定時間行うように管理すれば、必然的に作業領域10の全域に亘って締固めを漏れなく実施することができる。
【0018】
端末装置3は、締固め作業を行う作業員Pやその周囲の別の作業員により操作される。端末装置3は、管理装置2と通信可能に接続されており、管理装置2から送信される情報を表示して、作業員Pに締固め作業の教示を行う。端末装置3としては、例えばタッチパネルを有するタブレットを適用できる。以降の説明では、端末装置3を「タブレット3」とも表記する場合がある。
【0019】
図2に示すように、管理装置2は、締固め作業の管理に関する機能として、締固め作業教示部21と、作業位置計測部22と、締固め時間計測部23と、締固め監視部24と、を備える。
【0020】
締固め作業教示部21は、締固め作業の作業員Pに対して作業単位ブロックごとに作業順を教示するための情報を作成して、タブレット3に送信する。
【0021】
図4に示すように、タブレット3の表示画面31には、締固め作業教示部21により作成された締固め作業の教示情報に基づく教示表示部32が表示される。教示表示部32は、作業領域10を平面視し、複数の作業単位ブロック12に区分したものに対応する模式図を描画している。ここで
図4では、作業領域10を平面視した2次元での例を示しているが、作業領域の表示方法としては、平面視に加えてz方向(鉛直方向)も合わせた立体視(3次元)による表示方法でもよい。
【0022】
教示表示部32には、複数の作業単位ブロック12のそれぞれに対応する複数のセル33が描画される。複数のセル33には個々を識別するための符号を付して表示することができる。
図4、
図5の例では、作業領域10が4×4=16個の作業単位ブロック12に区分される構成が例示され、教示表示部32上では、画面左右方向(例えばx方向に対応)に沿って1~4の数字が付され、画面上下方向(例えばy方向に対応)に沿ってA~Dのアルファベットが付され、各セル33ではこれらの数字とアルファベットが組み合わせて符号として表示される。例えば、左上のブロックの符号はA1であり、右下のブロックの符号はD4である。なお、各セル33の符号は、個々を識別可能であればどのような内容でもよく、
図4の例に限られない。
【0023】
また、教示表示部32には、締固め作業の実施順序を示す矢印34も表示することができる。
図4の例では、画面左上のブロックA1から画面左下のブロックD1までつづら折り状の作業順となるように矢印34が表示されている。なお、締固め作業の実施順序を示す方法は、矢印34以外の方法を用いてもよい。
【0024】
作業位置計測部22は、情報取得装置4により取得された作業領域10に関する情報に基づき、作業員Pの作業位置を計測する。例えば、
図5に例示した複数の作業単位ブロック12のうちどのブロックに作業員Pがいるかを計測する。情報取得装置4は、例えばカメラなど、作業員Pを含む作業領域10の全体を撮像した画像情報を取得可能な要素を有し、作業位置計測部22はこの画像情報を画像処理することによって、作業領域10上の作業員Pの位置を算出し、複数の作業単位ブロック12のどのブロックにいるかを特定できる。また、情報取得装置4が、例えば位置センサなど、バイブレータ11や作業員Pの位置を計測する要素を有し、作業位置計測部22はこの位置情報に基づいて作業員Pの位置を計測する構成でもよい。
【0025】
締固め時間計測部23は、情報取得装置4により取得された作業領域10に関する情報に基づき、作業員Pが存在している作業単位ブロック12における締固め時間を計測する。締固め時間計測部23は、作業位置計測部22により推定された作業者の作業位置の情報に基づいて、特定の作業単位ブロック12における締固め時間を計測する。情報取得装置4は、例えばバイブレータ11の振動を検出する振動センサや、バイブレータ11に供給される電気信号を検出する装置など、バイブレータ11の動作状態を検出する要素を有し、締固め時間計測部23はこの動作状態の情報に基づいてバイブレータ11が作動されてから停止されたまでの時間を検出して、特定のブロックの締固め時間として出力できる。
【0026】
締固め監視部24は、締固め作業の作業領域10を所定領域に区分して複数の作業単位ブロック12を設定し、作業単位ブロック12ごとに締固め時間を監視する。締固め監視部24は、特定の作業単位ブロック12における締固め時間が所定時間未満の場合には、締固めが不十分であるので、再度の締固め作業を作業者Pに促すように音や光などの任意の手法によって作業者Pに報知することができる。
【0027】
図5を参照して、作業員Pがコンクリート打設現場において作業領域10内の個々の作業単位ブロック12を把握する手法の一例を説明する。本実施形態では、上述のとおり、タブレット3の教示表示部32によって締固め作業手順が作業員Pに教示される。打設現場にいる作業員は、
図5に示すように作業領域10の外側に設置されるゲージ13、14(標識)をみることで、個々の作業単位ブロック12の範囲を特定できる。ゲージ13は、作業領域10の矩形状の枠体のx方向の一辺の全長に亘って4つの領域に区分され、各領域に1~4の数字が付される。ゲージ14は、枠体のy方向の一辺の全長に亘って4つの領域に区分され、各領域にA~Dのアルファベットが付される。ゲージ13の数字と、ゲージ14のアルファベットとを組み合わせたものは、
図4に示す教示表示部32の各セル33に付される符号と対応する。したがって、作業員Pは、ゲージ13、14を参照すれば、ゲージ13の任意の1つの数字が割り当てられるx方向の位置と、ゲージ14の任意の1つのアルファベットが割り当てられるy方向の位置とが重なる作業領域10上の位置を、特定の作業単位ブロックの位置として把握することが可能となる。
【0028】
このように、打設現場の作業員Pは、これらのゲージ13、14に表示される数字やアルファベットを、複数の作業単位ブロック12のそれぞれの位置を特定するための識別情報として利用できる。タブレット3の教示表示部32は、ゲージ13、14に表示される識別情報を用いて作業順を提示することで、作業員Pに作業順を教示する。これにより、作業員Pは、実際の作業領域10で指定ブロックの位置を正確に把握することができ、教示表示部32に表示される作業手順に沿って各ブロックで締固め作業を行うことができる。
【0029】
すなわち本実施形態では、タブレット3とゲージ13、14とが、締固め作業の作業員Pに対して作業単位ブロック12ごとに作業順を教示する教示装置として機能する。なお、ゲージ13、14は、作業領域10において複数の作業単位ブロック12の個々の位置を表示する標識として機能できるものであればよく、ゲージ13、14以外の要素を用いてもよい。
【0030】
図3に示すように、管理装置2及び端末装置3は、物理的には、CPU(Central Processing Unit)101、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)102およびROM(Read Only Memory)103、入力デバイスであるキーボード及びマウス等の入力装置104、ディスプレイ等の出力装置105、ネットワークカード等のデータ送受信デバイスである通信モジュール106、補助記憶装置107、などを含むコンピュータシステムとして構成することができる。
【0031】
図2に示す管理装置2の各機能や、上述の端末装置3の機能は、CPU101、RAM102等のハードウェア上に所定のコンピュータソフトウェア(締固め作業管理プログラム)を読み込ませることにより、CPU101の制御のもとで通信モジュール106、入力装置104、出力装置105を動作させるとともに、RAM102や補助記憶装置107におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。すなわち、本実施形態に係る締固め作業管理プログラムをコンピュータ上で実行させることで、管理装置2は、
図2の締固め作業教示部21、作業位置計測部22、締固め時間計測部23、締固め監視部24として機能する。
【0032】
本実施形態の締固め作業管理プログラムは、例えばコンピュータが備える記憶装置内に格納される。なお、締固め作業管理プログラムは、その一部又は全部が、通信回線等の伝送媒体を介して伝送され、コンピュータが備える通信モジュール等により受信されて記録(インストールを含む)される構成としてもよい。また、締固め作業管理プログラムは、その一部又は全部が、CD-ROM、DVD-ROM、フラッシュメモリなどの持ち運び可能な記憶媒体に格納された状態から、コンピュータ内に記録(インストールを含む)される構成としてもよい。
【0033】
管理装置2及び端末装置3は、アナログ回路、デジタル回路又はアナログ・デジタル混合回路で構成された回路であってもよい。また、管理装置2及び端末装置3の各機能の制御を行う制御回路を備えていてもよい。各回路の実装は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等によるものであってもよい。
【0034】
図6は、締固め作業管理処理のフローチャートである。
【0035】
ステップS1では、作業者Pにより作業領域10での締固め作業が開始され、締固め作業管理システム1も始動する。
【0036】
ステップS2では、管理装置2の締固め作業教示部21により、端末装置3の教示表示部32を介して作業員Pに締固め作業の作業順が教示される。
【0037】
ステップS3では、管理装置2の作業位置計測部22により、情報取得装置4により取得された作業領域10に関する情報に基づき、現在作業者Pが締固め作業をしている作業位置が計測され、現在作業を行っている作業単位ブロック12が判別される。
【0038】
ステップS4では、締固め時間計測部23により、情報取得装置4により取得された作業領域10に関する情報に基づき、ステップS3で判別された作業単位ブロック12における締固め時間が計測される。
【0039】
ステップS5では、管理装置2の締固め監視部24により、ステップS4にて計測した締固め時間に基づき、締固め作業が監視される。例えば、締固め監視部24は、特定の作業単位ブロック12における締固め時間が所定時間未満の場合には、このブロックでの締固めが不十分なため再度の締固めを行う旨の警告を、例えば端末装置3を介して作業者Pに報知することができる。または、締固め監視部24は、締固め時間が所定時間を超えた場合に、締固めが十分に行われた旨と、他のブロックに移動してもよい旨の報知を作業者Pに対して行うこともできる。
【0040】
ステップS5にて管理装置2の締固め監視部24が行う報知では、締固め時間が所定時間未満のまま次のブロックで作業を開始したときに、一つ前のブロックの締固め作業を再度行うよう促す構成でもよいし、または、全ブロックの作業が終わった後に再作業が必要なブロックを纏めて指示する構成でもよい。
【0041】
ステップS5の締固め作業の監視は、作業領域10内のすべての作業単位ブロック12において所定時間の締固めが完了するまで行われる。
【0042】
このように、本実施形態に係る締固め作業管理システム1では、締固め作業の作業領域10を区分して複数の作業単位ブロック12が設定される。複数の作業単位ブロック12は、各ブロック内の所定位置において締固め用のバイブレータ11を作動させた場合に当該ブロックの全域がバイブレータ11の振動伝達範囲に含まれるように設定される。そして締固め作業管理システム1は、締固め作業の作業員Pに対して作業単位ブロック12ごとに作業順を教示する教示装置としての端末装置3の教示表示部32を備える。
【0043】
この構成により、締固め作業の作業領域10を区分して設定した複数の作業単位ブロック12の個々の範囲でバイブレータ11を用いることで、当該ブロック内で充分に振動を伝達でき、締固めを充分に実施できる。この作業をすべての作業単位ブロック12で行うことにより、必然的に作業領域10の全体で締固めを万遍無く行うことが可能となる。さらに、教示装置としての端末装置3の教示表示部32やゲージ13、14を利用することで、締固め作業の位置や手順を精度良く作業者Pに教示でき、これにより、締固め作業を行うべき作業単位ブロック12の位置を作業員Pにより確実に把握させることができる。この結果、本実施形態の締固め作業管理システム1は、作業領域10の全体に亘って締固め作業が万遍なく行われるように締固め作業を精度良く管理できることが可能となり、コンクリートの品質を向上できる。
【0044】
また、本実施形態の締固め作業管理システム1は、作業単位ブロック12において締固め時間を計測し、締固め時間が所定時間未満の場合に作業員Pに報知する管理装置2の締固め監視部24を備える。この構成により、作業員Pに締固め作業の進捗を的確に報知することができ、締固め作業をより一層高精度に管理できる。
【0045】
図7、
図8を参照して実施形態の変形例について説明する。上記実施形態では、締固め作業の作業員Pに対して作業単位ブロック12ごとに作業順を教示する教示装置として、タブレット3の教示表示部32と、作業領域10に設けられるゲージ13、14を備える構成を例示したが、他の教示装置を適用することもできる。
【0046】
図7は、教示装置の第1変形例を示す図である。
図7の例では、教示装置は、作業員Pが装着するAR(拡張現実)用の表示装置としてのヘッドマウントディスプレイ(HMD)35を有する。HMD35は透過型のディスプレイであり、作業員PがHMD35を装着して作業領域10を見るときに、HMD35上で作業領域10に作業単位ブロック12をリアルタイムで平面視(2次元)あるいは立体視(3次元)による方法で重畳表示して、作業員Pに作業順を教示する。
【0047】
図8は、ARを利用した作業単位ブロック12の表示手法の一例を示す模式図である。
図8には、作業領域10を作業員Pの視点で表現した模式図が図中の上部と下部に2つ図示されている。上部の図は、AR用のHMD35を非着用の場合の見え方の模式図である。一方、下部の図はAR用のHMD35を着用した場合の見え方の模式図である。
図8の下部の図に示すように、HMD35着用時には、作業員Pの視界には、作業領域10の表面に沿って、作業単位ブロック12のそれぞれに対応する複数のセル36が描画され、また、これらのセル36を結び作業手順を示す矢印37も描画できる。
【0048】
なお、例えばタブレットやスマートフォンなどの端末のカメラ機能で作業領域10を撮像し、撮像画像にセル36や矢印37を重ねた画像を端末の表示部に表示するなど、HMD35以外のAR用の表示装置を用いる構成でもよい。また、例えばプロジェクションマッピングと同様の手法を利用して、作業領域10の表面にセル36や矢印37を投影することで、ARと同様の視覚効果を実現することもできる。
【0049】
図9は、教示装置の第2変形例を示す図である。
図9の例では、教示装置は、作業領域10の任意の位置に光を照射する照明装置38を有する。照明装置38を用いて作業領域10上の1つまたは複数の作業単位ブロック12に対応する位置に光39を照射して、作業員Pに作業順を教示することができる。この光39を作業領域10の表面に沿って移動させることで、作業員Pはこの光39の軌跡を追従しながら締固め作業を行うことで、作業領域10の全域に亘って万遍なく締固めを行うことができる。
【0050】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 締固め作業管理システム
2 管理装置
3 端末装置(教示装置)
10 作業領域
12 作業単位ブロック
13,14 ゲージ(教示装置)
35 ヘッドマウントディスプレイ(表示装置、教示装置)
38 照明装置(教示装置)
P 作業者