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特開2022-42385有機性排水の処理方法及び有機性排水の処理装置
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  • 特開-有機性排水の処理方法及び有機性排水の処理装置 図1
  • 特開-有機性排水の処理方法及び有機性排水の処理装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042385
(43)【公開日】2022-03-14
(54)【発明の名称】有機性排水の処理方法及び有機性排水の処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/02 20060101AFI20220307BHJP
   C02F 3/08 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
C02F3/02 Z
C02F3/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020147800
(22)【出願日】2020-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 太一
(72)【発明者】
【氏名】油井 啓徳
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 吉昭
【テーマコード(参考)】
4D003
【Fターム(参考)】
4D003AA01
4D003AA14
4D003AB02
4D003BA02
4D003BA03
4D003CA02
4D003CA03
4D003DA29
4D003EA14
4D003EA18
4D003EA19
4D003EA20
4D003FA04
4D003FA05
(57)【要約】
【課題】担体を用いて有機性排水を生物処理する有機性排水の処理方法において、余剰汚泥の発生量を抑え、且つBOD除去速度の大幅な低下を抑制する。
【解決手段】本開示は、担体44を備える反応槽12により、好気条件で有機性排水を生物処理する有機性排水の処理方法であって、反応槽12に流入する前記有機性排水のBOD:窒素の重量比が100:1以上であり、反応槽12内の溶解性窒素濃度が5mg/L以下に維持されるように、前記有機性排水に窒素源を添加し、且つ反応槽12内の溶解性リン濃度を0.1mg/L以上に維持して、前記生物処理を行うことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体を備える反応槽により、好気条件で有機性排水を生物処理する有機性排水の処理方法であって、
前記反応槽に流入する前記有機性排水のBOD:窒素の重量比が100:1以上であり、前記反応槽内の溶解性窒素濃度が5mg/L以下に維持されるように、前記有機性排水に窒素源を添加し、且つ前記反応槽内の溶解性リン濃度を0.1mg/L以上に維持して、前記生物処理を行うことを特徴とする有機性排水の処理方法。
【請求項2】
前記反応槽は、直列2段以上の反応槽から構成され、直列2段以上の反応槽のうちの少なくとも1つの反応槽において、前記反応槽に流入する前記有機性排水のBOD:窒素の重量比が100:1以上であり、前記反応槽内の溶解性窒素濃度が5mg/L以下に維持されるように、前記有機性排水に窒素源を添加し、且つ前記反応槽内の溶解性リン濃度を0.1mg/L以上に維持して、前記生物処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の有機性排水の処理方法。
【請求項3】
前記反応槽は流動床式反応槽であり、前記反応槽のBOD容積負荷は1.5kg/m/day以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機性排水の処理方法。
【請求項4】
担体を備える反応槽により、好気条件で有機性排水を生物処理する有機性排水の処理装置であって、
前記反応槽に流入する前記有機性排水のBOD:窒素の重量比が100:1以上であり、前記反応槽内の溶解性窒素濃度が5mg/L以下に維持されるように、前記有機性排水に窒素源を添加し、且つ前記反応槽内の溶解性リン濃度を0.1mg/L以上に維持して、前記生物処理を行うことを特徴とする有機性排水の処理装置。
【請求項5】
前記反応槽は、直列2段以上の反応槽から構成され、直列2段以上の反応槽のうちの少なくとも1つの反応槽において、前記反応槽に流入する前記有機性排水のBOD:窒素の重量比が100:1以上であり、前記反応槽内の溶解性窒素濃度が5mg/L以下に維持されるように、前記有機性排水に窒素源を添加し、且つ前記反応槽内の溶解性リン濃度を0.1mg/L以上に維持して、前記生物処理を行うことを特徴とする請求項4に記載の有機性排水の処理装置。
【請求項6】
前記反応槽は流動床式反応槽であり、前記反応槽のBOD容積負荷は1.5kg/m/day以上であることを特徴とする請求項4又は5に記載の有機性排水の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有機性排水の処理方法及び有機性排水の処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機性排水の処理には一般的に活性汚泥法が用いられているが、BOD容積負荷は0.5~1.0kg/m/day程度であるため、広い敷地面積が必要である。一方、担体を用いた生物処理法は、BOD容積負荷1.5kg/m/day以上の高負荷化が可能で、敷地面積を削減することが出来る。
【0003】
例えば、特許文献1には、BODに対する窒素およびリンの量が、BOD:窒素:リンの重量比で100:5:1よりも少ない有機性排水を処理する担体を用いた生物処理法において、原水中の窒素およびリンの量が、重量比でBOD:窒素:リンが100:5:1以上になるように、不足する窒素および/またはリンを原水に添加する一方で、担体の容積負荷に対する菌体数を計測し、担体の菌体数がほぼ一定値になった後、原水に添加される窒素および/またはリンの量を、BOD:窒素:リンの重量比で100:2.5:0.5以下に減少させる処理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-149974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、担体を用いた生物処理法では、余剰汚泥の発生量が多いことが問題となっている。また、余剰汚泥の発生量を抑えようとすると、BOD除去速度が大幅に低下することも問題となっている。
【0006】
そこで、本開示の目的は、担体を用いて有機性排水を生物処理する有機性排水の処理方法及び処理装置において、余剰汚泥の発生量を抑え、且つBOD除去速度の大幅な低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、担体を備える反応槽により、好気条件で有機性排水を生物処理する有機性排水の処理方法であって、前記反応槽に流入する前記有機性排水のBOD:窒素の重量比が100:1以上であり、前記反応槽内の溶解性窒素濃度が5mg/L以下に維持されるように、前記有機性排水に窒素源を添加し、且つ前記反応槽内の溶解性リン濃度を0.1mg/L以上に維持して、前記生物処理を行うことを特徴とする。
【0008】
また、前記有機性排水の処理方法において、前記反応槽は、直列2段以上の反応槽から構成され、直列2段以上の反応槽のうちの少なくとも1つの反応槽において、前記反応槽に流入する前記有機性排水のBOD:窒素の重量比が100:1以上であり、前記反応槽内の溶解性窒素濃度が5mg/L以下に維持されるように、前記有機性排水に窒素源を添加し、且つ前記反応槽内の溶解性リン濃度を0.1mg/L以上に維持して、前記生物処理を行うことが好ましい。なお、本開示において、有機性排水のBOD:窒素の重量比が100:1以上とは、有機性排水のBOD100重量部に対して窒素が1重量部以上を意味している。
【0009】
また、前記有機性排水の処理方法において、前記反応槽は流動床式反応槽であり、前記反応槽のBOD容積負荷は1.5kg/m/day以上であることが好ましい。
【0010】
また、本開示は、担体を備える反応槽により、好気条件で有機性排水を生物処理する有機性排水の処理装置であって、前記反応槽に流入する前記有機性排水のBOD:窒素の重量比が100:1以上であり、前記反応槽内の溶解性窒素濃度が5mg/L以下に維持されるように、前記有機性排水に窒素源を添加し、且つ前記反応槽内の溶解性リン濃度を0.1mg/L以上に維持して、前記生物処理を行うことを特徴とする。
【0011】
また、前記有機性排水の処理装置において、前記反応槽は、直列2段以上の反応槽から構成され、直列2段以上の反応槽のうちの少なくとも1つの反応槽において、前記反応槽に流入する前記有機性排水のBOD:窒素の重量比が100:1以上であり、前記反応槽内の溶解性窒素濃度が5mg/L以下に維持されるように、前記有機性排水に窒素源を添加し、且つ前記反応槽内の溶解性リン濃度を0.1mg/L以上に維持して、前記生物処理を行うことが好ましい。
【0012】
また、前記有機性排水の処理装置において、前記反応槽は流動床式反応槽であり、前記反応槽のBOD容積負荷は1.5kg/m/day以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、担体を用いて有機性排水を生物処理する有機性排水の処理方法及び処理装置において、余剰汚泥の発生量を抑え、且つBOD除去速度の大幅な低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る有機性排水の処理装置の構成の一例を示す模式図である。
図2】本実施形態に係る有機性排水の処理装置の構成の他の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本開示を実施する一例であって、本開示は本実施形態に限定されるものではない。
【0016】
図1は、本実施形態に係る有機性排水の処理装置の構成の一例を示す模式図である。図1に示す処理装置1は、原水槽10、反応槽12、処理水槽14、制御装置16、原水ポンプ18、検出器20a,20b、流入ライン22、処理水ライン24を備える。また、図1に示す処理装置1は、反応槽12に窒素源を供給する窒素源供給装置、反応槽12にリン源を供給するリン源供給装置を備える。図1に示す窒素源供給装置は、塩化アンモニウム等の窒素源を収容する窒素源タンク26、窒素源添加ライン28、及び窒素源添加ライン28に設置される窒素源添加ポンプ30を備える。図1に示すリン源供給装置は、リン酸等のリン源を収容するリン源タンク32、リン源添加ライン34、及びリン源添加ライン34に設置されるリン源添加ポンプ36を備える。
【0017】
原水槽10の原水出口には流入ライン22の一端が接続され、反応槽12の入口には流入ライン22の他端が接続されている。流入ライン22には原水ポンプ18が設置されている。また、流入ライン22には窒素源添加ライン28の一端が接続され、窒素源タンク26には窒素源添加ライン28の他端が接続されている。また、流入ライン22には、リン源添加ライン34の一端が接続され、リン源タンク32にはリン源添加ライン34の他端が接続されている。反応槽12の出口には処理水ライン24の一端が接続され、処理水槽14の入口には処理水ライン24の他端が接続されている。制御装置16と、各ポンプ及び各検出器とはそれぞれ、例えば電気的に接続されている。
【0018】
反応槽12内には、微生物を保持した担体44が充填されている。担体44は、特に限定されるものではないが、例えば、プラスチック製担体、スポンジ状担体、ゲル状担体等が挙げられる。
【0019】
反応槽12内の底部には、曝気装置46が設置されている。曝気装置46には、例えば、不図示のブロアが接続され、ブロアから供給される空気が、曝気装置46から反応槽12内に供給される。
【0020】
反応槽12には、検出器20a,20bが設置されている。検出器20aは、反応槽12内の溶解性窒素濃度を検出する装置である。また、検出器20bは、反応槽12内の溶解性リン濃度を検出する装置である。検出器20a,20bは、処理水槽14又は処理水ライン24に設置されてもよい。そして、検出器20a,20bにより測定された処理水の溶解性窒素濃度や溶解性リン濃度を反応槽12内の溶解性窒素濃度や溶解性リン濃度としてもよい。なお、溶解性窒素は、例えば、窒素源供給装置から供給された窒素源由来の窒素、排水中に当初から含まれていたアンモニア態窒素、硝酸態窒素、亜硝酸態窒素等である。また、溶解性リンは、例えば、リン源供給装置から供給されたリン源由来のリン、排水中に当初から含まれていたリン化合物等である。
【0021】
制御装置16は、例えば、プログラムを演算するCPU、プログラムや演算結果を記憶するROMおよびRAMから構成されるマイクロコンピュータと電子回路等で構成され、ROM等に記憶された所定のプログラムを読み出し、当該プログラムを実行して、処理装置1の動作を制御する。例えば、制御装置16は、原水ポンプ18の稼働・停止を制御する。また、例えば、有機性排水中のBODや検出器20aにより検出された溶解性窒素濃度等に基づいて、窒素源添加ポンプ30の稼働・停止を制御する。また、例えば、制御装置16は、検出器20bにより検出された溶解性リン濃度等に基づいて、リン源添加ポンプ36の稼働・停止を制御する。
【0022】
次に、図1に示す処理装置1の動作について説明する。処理装置1で処理される有機性排水、すなわち原水槽10内に投入される有機性排水は、有機性排水のBOD:窒素の重量比が100:1未満の有機性排水である。
【0023】
制御装置16により、原水ポンプ18が稼働されると、原水槽10内の有機性排水が流入ライン22を通り、反応槽12に供給される。そして、曝気装置46から空気が反応槽12に供給され、好気条件で、反応槽12内で有機性排水中の有機物が、担体44に付着した微生物等により生物処理される(生物処理工程)。反応槽12で処理された処理水は、処理水ライン24を通り処理水槽14に供給される。
【0024】
ところで、有機性排水中のリンや窒素は、反応槽12内の微生物の栄養源として、微生物の細胞内に取り込まれる。したがって、反応槽12内の微生物の増殖、ひいては有機物の分解を促進する等の点で、有機性排水にリン源や窒素源を添加することが好ましい。ただし、本発明者らが鋭意検討したところ、有機物の分解に伴う余剰汚泥の発生量は、反応槽12内の溶解性窒素濃度及び溶解性リン濃度に依存することを見出した。そこで、更なる検討を重ねたところ、BOD除去速度の大幅な低下を抑制する点で、有機性排水のBOD:窒素の重量比が100:1以上となるように有機性排水に窒素源を添加する必要はあるが、窒素源を添加し過ぎると、余剰汚泥の発生量増加に繋がるため、反応槽12内の溶解性窒素濃度が5mg/L以下に維持されるように、好ましくは3mg/L以下に維持されるように、有機性排水に窒素源を添加することで、余剰汚泥の発生量を抑えることができることを見出した。一方、反応槽12内の溶解性リン濃度が枯渇状態であると、微生物の生合成が制限され、窒素の消費量が低下するため、反応槽12内の溶解性窒素濃度を5mg/L以下に維持することが困難となる。そこで、本発明者らが鋭意検討したところ、反応槽12内の溶解性窒素濃度を5mg/L以下に安定して維持するには、反応槽12内の溶解性リン濃度を0.1mg/L以上に維持すること、好ましくは0.5mg/L以上に維持することが必要であることを見出した。以下に、溶解性窒素濃度及び溶解性リン濃度の制御例について説明する。
【0025】
図1に示す処理装置1では、制御装置16により、窒素源添加ポンプ30を稼働して、窒素源を反応槽12内に導入する。この際、制御装置16は、有機性排水のBOD、有機性排水のBOD:窒素の重量比が100:1以上の範囲で予め規定された規定重量比から、窒素源の供給量を算出し、算出した供給量の窒素源が反応槽12内に供給されるように、窒素源添加ポンプ30を制御する。有機性排水のBODの測定は、例えば、JIS K0102に規定される方法に従って行われる。当該方法によるBODの測定は時間が掛かるため、処理装置1の運転前に予め行うことが望ましい。また、例えば、有機性排水のTOCを検出し、検出したTOCからBODを推定してもよい。TOCは速やかに測定できるため、TOCからBODを推定する方法により、処理装置1を運転しながら、随時、有機性排水のBODを求めることができる。測定したBODは、窒素源の供給量算出のために、制御装置16に記憶される。また、必要に応じて、有機性排水の窒素量を測定してもよい。測定した窒素量は、窒素源の供給量算出のために、制御装置16に記憶される。
【0026】
そして、制御装置16は、検出器20aにより測定された溶解性窒素濃度が、5mg/L以下であれば、例えば、上記算出した窒素源の供給量が維持されるように、窒素源添加ポンプ30を制御する、また、制御装置16は、検出器20aにより測定された溶解性窒素濃度が、5mg/Lを超える場合には、窒素源添加ポンプ30の出力を制限し、有機性排水のBOD:窒素の重量比が100:1以上の範囲で、窒素源の供給量を低減する。
【0027】
また、有機性排水中のリン濃度が低く、検出器20bにより測定された溶解性リン濃度が0.1mg/L未満の場合には、制御装置16は、リン源添加ポンプ36を稼働させ、リン源を反応槽12内に導入する。また、有機性排水中のリン濃度が高く、検出器20bにより測定された溶解性リン濃度が0.1mg/Lを超えるような場合であっても、リン源添加ポンプ36を稼働させ、リン源を反応槽12内に導入してもよい。ただし、放流基準等を考慮すれば、反応槽12内の溶解性リン濃度の上限は8mg/L以下に維持することが好ましく、4mg/L以下に維持することがより好ましい。
【0028】
反応槽12内の溶解性リン濃度及び溶解性窒素濃度は、検出器によるオンライン分析が望ましいが、検出器を設置しない場合には、作業者によるマニュアル分析でもよい。
【0029】
また、例えば、検出器20bを原水槽10に設置し、有機性排水の溶解性リン濃度から、反応槽12内の溶解性リン濃度を推定してもよい。この場合、例えば、予め実験等により、有機性排水の溶解性リン濃度と反応槽12内の溶解性リン濃度の相関を示すマップ(或いは式やテーブル等)を作成し、これを制御装置16に記憶させる。そして、制御装置16は、検出器20bにより測定された有機性排水の溶解性リン濃度を上記マップ等に当てはめて、反応槽12内の溶解性リン濃度を推定する。制御装置16は、推定した反応槽12内の溶解性リン濃度が0.1mg/L未満の場合には、リン源添加ポンプ36を稼働させ、リン源を反応槽12に導入する。
【0030】
また、例えば、検出器20aを原水槽10に設置し、有機性排水の溶解性窒素濃度等から、反応槽12内の溶解性窒素濃度を推定してもよい。この場合、例えば、予め実験等により、有機性排水の溶解性窒素濃度と反応槽12内の溶解性窒素濃度の相関を示すマップ(或いは式やテーブル等)を作成し、これを制御装置16に記憶させる。そして、制御装置16は、検出器20aにより測定された有機性排水の溶解性窒素濃度と、有機性排水のBOD:窒素の重量比が100:1以上の範囲で設定された窒素源の供給量から求められる溶解性窒素濃度との和を、上記マップ等に当てはめて、反応槽12内の溶解性窒素濃度を推定する。制御装置16は、推定した反応槽12内の溶解性窒素濃度が5mg/Lを超える場合には、窒素源添加ポンプ30の出力を制限し、有機性排水のBOD:窒素の重量比が100:1以上の範囲で、窒素源の供給量を低減する。
【0031】
図2は、本実施形態に係る有機性排水の処理装置の構成の他の一例を示す模式図である。図2の処理装置2において、図1の処理装置1と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。図2の処理装置2は、第1反応槽12a及び第2反応槽12bを有する反応槽群を備える。反応槽群は、第1反応槽12aを前段とし、第2反応槽12bを後段として、第1反応槽12a及び第2反応槽12bを直列配置した構成となっている。なお、反応槽群は、反応槽を3段以上に直列配置した構成でもよい。
【0032】
原水槽10の原水出口には流入ライン22aの一端が接続され、第1反応槽12aの入口には流入ライン22aの他端が接続されている。第1反応槽12aの出口には流入ライン22bの一端が接続され、第2反応槽12bの入口には流入ライン22bの他端が接続されている。第2反応槽12bの出口には処理水ライン24の一端が接続され、処理水槽14の入口には処理水ライン24の他端が接続されている。また、流入ライン22aには、窒素源添加ライン28aの一端が接続され、窒素源タンク26aには窒素源添加ライン28aの他端が接続されている。また、流入ライン22aには、リン源添加ライン34aの一端が接続され、リン源タンク32aにはリン源添加ライン34aの他端が接続されている。また、流入ライン22bには、窒素源添加ライン28bの一端が接続され、窒素源タンク26bには窒素源添加ライン28bの他端が接続されている。また、流入ライン22bには、リン源添加ライン34bの一端が接続され、リン源タンク32bにはリン源添加ライン34bの他端が接続されている。
【0033】
次に、図2に示す処理装置2の動作について説明する。
【0034】
制御装置16により、原水ポンプ18が稼働され、原水槽10内の有機性排水が流入ライン22aを通り、第1反応槽12aに供給される。そして、曝気装置46から空気が第1反応槽12aに供給され、好気条件で、第1反応槽12a内で有機性排水中の有機物が、担体44に付着した微生物等により生物処理される(第1生物処理工程)。第1反応槽12aで処理された第1処理水は、流入ライン22bを通り、第2反応槽12bに供給される。そして、曝気装置46から空気が第2反応槽12bに供給され、好気条件で、第2反応槽12b内で第1処理水中の有機物が、担体44に付着した微生物等により生物処理される(第2生物処理工程)。第2反応槽12bで処理された処理水は、処理水ライン24を通り処理水槽14に供給される。
【0035】
ここで、反応槽が2段以上で構成されている場合には、そのうちの少なくとも1つの反応槽において、反応槽に流入する有機性排水のBOD:窒素の重量比が100:1以上であり、反応槽内の溶解性窒素濃度が5mg/L以下に維持されるように、好ましくは3mg/L以下に維持されるように、有機性排水に窒素源を添加し、且つ反応槽内の溶解性リン濃度を0.1mg/L以上に維持すること、好ましくは0.5mg/L以上に維持すればよい。これにより、余剰汚泥の発生量を抑え、BOD除去速度の大幅な低下を抑制できる。なお、反応槽が2段以上で構成されている場合には、1段目の反応槽に流入する有機性排水のBOD:窒素の重量比が100:1以上であり、1段目の反応槽内の溶解性窒素濃度が5mg/L以下に維持されるように、有機性排水に窒素源を添加し、1段目の反応槽内の溶解性リン濃度を0.1mg/L以上に維持することが好ましい。この場合、1段目の反応槽で有機物の大半が除去されて、2段目の反応槽内で除去する有機物は少なくなるため、2段目以降の反応槽で、溶解性窒素濃度を5mg/L以下にする制御を行わなくても、システム全体での余剰汚泥量を抑えることができる。
【0036】
以下、本実施形態の処理装置の運転条件等を説明する。
【0037】
反応槽内のpHは、微生物の育成等の点から、例えば、弱酸性~弱アルカリ性に調整されることが好ましく、pH6~8の範囲に調整されることがより好ましい。
【0038】
反応槽内の溶存酸素濃度は、例えば、0.5 mg/L以上であることが好ましく、1 mg/L以上であることがより好ましい。
【0039】
反応槽の後段には、固液分離装置を設置してもよい。特に、処理水を河川放流する場合には、反応槽の後段に固液分離装置を設置することが好ましい。固液分離装置は、従来公知の装置等であり、例えば、沈澱池、加圧浮上装置、除濁膜装置、MBR等が挙げられる。
【0040】
反応槽は、担体が流動しない固定床式、担体が流動する流動床式のいずれでもよい。流動床式は原水のショートパスがおきにくい、メンテナンス性に優れる、導入コストが低い等といったメリットがある。
【0041】
また、反応槽のBOD容積負荷(反応槽群の場合は全反応槽のBOD容積負荷)は、1.5kg/m/day以上が好ましく、2.0kg/m/day以上がより好ましい。
【0042】
窒素源としては、窒素化合物であれば特に制限はないが、例えば、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、尿素等が挙げられる。工場で発生した余剰の廃硫酸アンモニウム等も適用可能である。
【0043】
リン源としては、リン酸及びリン化合物であれば特に制限はないが、例えば、リン酸二カリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸アンモニウム等が挙げられる。
【0044】
窒素源やリン源以外の栄養塩及び微量元素を原水中に添加してもよく、例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、銅、亜鉛、マンガン等が挙げられる。
【0045】
担体は、例えば、プラスチック製担体、スポンジ状担体、ゲル状担体等が挙げられるが、これらの中では、コストや耐久性の点で、スポンジ状担体が好ましい。
【0046】
担体のセル数(細孔の数)は、生物処理の処理速度を向上させる点で、好ましくは30個/25mm以上であり、より好ましくは30個/25mm以上、100個/25mm以下であり、さらに好ましくは40個/25mm以上、100個/25mm以下であり、特に好ましくは46個/25mm以上、100個/25mm以下である。担体のセル数は、例えば、JIS K 65400-1(附属書1)に基づいて求められる。
【0047】
担体の表面積は、生物処理の処理速度を向上させる点で、好ましくは3000m/m以上であり、より好ましくは3500m/m以上であり、さらに好ましくは4000m/m以上であり、特に好ましくは4500m/m以上である。担体の表面積の上限は、セル数や担体の大きさ等を考慮して決めればよく、特に制限はない。
【0048】
担体の生物付着量は、生物処理の処理速度を向上させる点で、500mg/L以上であることが好ましく、1000mg/L以上であることがより好ましい。担体の生物付着量は多ければ多い方がよく、特に上限はないが、上限は、例えば、5000mg/Lである。
【0049】
担体の形状は、特に限定されず、立方体状等の四角体状、粒状、球状、ペレット状、円筒状、繊維状、フィルム状等が挙げられる。
【0050】
担体の大きさは、特に限定されず、反応槽の大きさや担体の形状等に応じて、適宜設定されればよく、例えば、立方体状であれば、一辺の長さが3~20mmの範囲が好ましく、球状であれば、径が0.5~20mm程度の範囲が好ましい。担体の大きさは、ノギスまたはマイクロスコープ等を用いて測定することができる。
【0051】
担体の比重は、反応槽内部で流動状態を形成するために、少なくとも1.0より大きく、真比重として、1.1以上、または見かけ比重として、1.01以上のものが好ましい。
【0052】
反応槽への担体の投入量は、反応槽の容積に対して10~70%の範囲が好ましい。担体の投入量が反応槽の容積に対して10%未満であると反応速度が小さくなる場合があり、70%を超えると担体が流動しにくくなり、長期運転において汚泥による閉塞等で原水がショートパスし処理水質が悪くなる場合がある。
【実施例0053】
以下、実施例および比較例を挙げ、本開示をより具体的に詳細に説明するが、本開示は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0054】
下記に示す試験条件で、単一の反応槽に、イソプロピルアルコール含有排水を通水し、生物処理を行った。
【0055】
<試験条件>
反応槽の容積:2L
担体:疎水性ポリウレタン製のスポンジ担体
担体充填率:嵩体積として20%充填
滞留時間:6時間
イソプロピルアルコール含有排水:BODが約800mg/L、Nが2mg/L以下、Pが0.1mg/L以下
BOD容積負荷:約3.2kg/m/day
水温:約20℃
槽内DO:2mg/L以上
槽内pH:6.5~8.0
【0056】
<比較例1>
イソプロピルアルコール含有排水に塩化アンモニウムとリン酸を添加し、N濃度57mg/L、P濃度9.9mg/L、BOD:N:P=100:7.1:1.2として、反応槽へ流入させ、生物処理を行ったところ、反応槽内の溶解性窒素濃度は26mg/L、溶解性リン濃度は5.5mg/Lとなった。その結果、除去BODあたりの汚泥生成率は32%、BOD除去速度は2.9kg/m/dayであった。
【0057】
<実施例1>
イソプロピルアルコール含有排水に塩化アンモニウムとリン酸を添加し、N濃度8.3mg/L、P濃度6.5mg/L、BOD:N:P=100:1.0:0.81として、反応槽へ流入させ、生物処理を行ったところ、反応槽内の溶解性窒素濃度は2.6mg/L(アンモニア性窒素濃度0.4mg/L)となり、溶解性リン濃度は5.3mg/Lとなった。その結果、除去BODあたりの汚泥生成率は21~26%(平均24%)、BOD除去速度は2.1kg/m/dayであった。
【0058】
<実施例2>
イソプロピルアルコール含有排水に塩化アンモニウムとリン酸を添加し、N濃度15mg/L、P濃度6.9mg/L、BOD:N:P=100:1.9:0.86として、反応槽へ流入させ、生物処理を行ったところ、反応槽内の溶解性窒素濃度は1.0mg/L(アンモニア性窒素濃度0.2mg/L)となり、溶解性リン濃度は3.6mg/Lとなった。その結果、除去BODあたりの汚泥生成率は19~26%(平均23%)、BOD除去速度は2.4kg/m/dayであった。
【0059】
<比較例2>
イソプロピルアルコール含有排水にリン酸を添加し、N濃度1.4mg/L、P濃度6.7mg/L、BOD:N:P=100:0.18:0.84として、反応槽へ流入させ、生物処理を行ったところ、反応槽内の溶解性窒素濃度は1.6mg/Lとなり、溶解性リン濃度は6.5mg/Lとなった。その結果、除去BODあたりの汚泥生成率は19~39%(平均29%)、BOD除去速度は1.3kg/m/dayであった。
【0060】
実施例及び比較例の結果から、反応槽に流入する有機性排水のBOD:窒素の重量比が100:1以上であり、反応槽内の溶解性窒素濃度が5mg/L以下に維持されるように、有機性排水に窒素源を添加し、且つ反応槽内の溶解性リン濃度を0.1mg/L以上に維持して、生物処理を行うことで、余剰汚泥の発生量を抑え、BOD除去速度の大幅な低下を抑制することができると言える。
【符号の説明】
【0061】
1,2 処理装置、10 原水槽、12 反応槽、12a 第1反応槽、12b 第2反応槽、14 処理水槽、16 制御装置、18 原水ポンプ、20a,20b 検出器、22,22a,22b 流入ライン、24 処理水ライン、26,26a,26b 窒素源タンク、28,28a,28b 窒素源添加ライン、30,30a,30b 窒素源添加ポンプ、32,32a,32b リン源タンク、34,34a,34b リン源添加ライン、36,36a,36b リン源添加ポンプ、44 担体、46 曝気装置。
図1
図2