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特開2022-42444パルス分光装置及びマルチファイバ用照射ユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042444
(43)【公開日】2022-03-14
(54)【発明の名称】パルス分光装置及びマルチファイバ用照射ユニット
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/10 20060101AFI20220307BHJP
   G02F 1/365 20060101ALN20220307BHJP
【FI】
G01J3/10
G02F1/365
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020147906
(22)【出願日】2020-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097548
【弁理士】
【氏名又は名称】保立 浩一
(72)【発明者】
【氏名】長島 寿一
【テーマコード(参考)】
2G020
2K102
【Fターム(参考)】
2G020CA13
2G020CA14
2G020CB04
2G020CB23
2G020CB36
2G020CB42
2G020CB54
2G020CB56
2G020CC12
2G020CD04
2G020CD22
2G020CD36
2K102AA05
2K102BA20
2K102BB03
2K102BC02
2K102BD09
2K102DA06
2K102DA09
2K102EB20
(57)【要約】
【課題】 パルス光を複数のファイバで分割して伝送してパルス伸長させるパルス分光装置において、照射面において同一の領域に光が重なって照射される実用的な構成を提供する。
【解決手段】 パルス光源1からの広帯域パルス光は分割素子としてのアレイ導波路回折格子3により波長に応じて分割された後、バンドルファイバ21で伝送される際にパルス内の時間と光の波長が1対1で対応するようにされ、照射ユニット4を介して対象物Sに照射される。バンドルファイバ21の各コアから出射された光は、光軸Aに垂直な第一の面P1内の実質的に同一の領域R1に第一のレンズ41により重ねられ、第一の領域R1の像が第二のレンズ421,422により投影されることで対象物Sに照射される。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス光源と、
パルス光源からのパルス光が分割された各分割パルス光を伝送するマルチコアファイバ又はバンドルファイバとを備えており、
マルチコアファイバ又はバンドルファイバから出射された各分割パルス光は、時間と波長とが1対1で対応していて、各分割パルス光が照射された対象物からの光を受光する受光器を備えたパルス分光装置であって、
マルチコアファイバ又はバンドルファイバの出射側には、
マルチコアファイバの各コア又はバンドルファイバの各コアから出射された各分割パルス光が光軸に垂直な面内の実質的に同一の領域に重なるようにする一又は複数のレンズから成る第一のレンズ系と、
当該実質的に同一の領域の像を照射面に投影する一又は複数のレンズから成る第二のレンズ系と
が設けられていることを特徴とするパルス分光装置。
【請求項2】
前記第二のレンズ系は、前記照射面への投影倍率の調整が可能な複数のレンズから成ることを特徴とする請求項1又は2記載のパルス分光装置。
【請求項3】
前記第一のレンズ系は、前記マルチコアファイバの各コア又は前記バンドルファイバの各コアから出射された各分割パルス光を平行光にして前記実質的に同一の領域に重なるようにするレンズ系であることを特徴とする請求項2記載のパルス分光装置。
【請求項4】
マルチコアファイバ又はバンドルファイバであるマルチファイバの出射側に接続されるマルチファイバ用照射ユニットであって、
マルチコアファイバの各コア又はバンドルファイバの各コアから出射された光が光軸に垂直な面内の実質的に同一の領域に重なるようにする一又は複数のレンズから成る第一のレンズ系と、
当該実質的に同一の領域の像を照射面に投影する一又は複数のレンズから成る第二のレンズ系と
を備えているマルチファイバ用照射ユニット。
【請求項5】
前記第二のレンズ系は、前記照射面への投影倍率の調整が可能な複数のレンズから成ることを特徴とする請求項4記載のマルチファイバ用照射ユニット。
【請求項6】
前記第一のレンズ系は、前記マルチコアファイバの各コア又は前記バンドルファイバの各コアから出射された光を平行光にして前記実質的に同一の領域に重なるようにするレンズ系であることを特徴とする請求項5記載のマルチファイバ用照射ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願の発明は、パルス光における時間と波長との対応性を利用して分光測定を行う技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パルス光源の典型的なものは、パルス発振のレーザ(パルスレーザ)である。近年、パルスレーザの波長を広帯域化させる研究が盛んに行われており、その典型が、非線形光学効果を利用したスーパーコンティニウム光(以下、SC光という。)の生成である。SC光は、パルスレーザ源からの光をファイバのような非線形素子に通し、自己位相変調や光ソリトンのような非線形光学効果により波長を広帯域化させることで得られる光である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-205390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した広帯域パルス光は、波長域としては大幅に伸長されているが、パルス幅(時間幅)としてはSC光の生成に用いた入力パルスに近いパルス幅のままである。しかし、ファイバのような伝送素子における群遅延を利用するとパルス幅も伸長することができる。この際、適切な波長分散特性を持つ素子を選択すると、パルス内の時間(経過時間)と波長とが1対1に対応した状態でパルス伸長することができる。
【0005】
このようにパルス伸長させた広帯域パルス光(以下、広帯域伸長パルス光という。)における時間と波長との対応関係は、分光測定に効果的に利用することが可能である。広帯域伸長パルス光をある受光器で受光した場合、受光器が検出した光強度の時間的変化は、各波長の光強度即ちスペクトルに対応している。したがって、受光器の出力データの時間的変化をスペクトルに換算することができ、回折格子のような特別な分散素子を用いなくても分光測定が可能になる。つまり、広帯域伸長パルス光を対象物に照射してその対象物からの光を受光器で受光してその時間的変化を測定することで、その対象物の分光特性(例えば分光透過率)を知ることができるようになる。
【0006】
このように、広帯域伸長パルス光は分光測定等の分野で特に有益と考えられる。しかしながら、より強い光を出力させるべくパルス光源の出力を高くした場合、意図しない非線形光学効果がパルス伸長素子において生じ、時間と波長との1対1の対応性(以下、時間-波長対応性という。)が崩れてしまうことが判っている。時間-波長対応性が崩れると、特に分光測定に用いた場合、測定精度の著しい低下につながる。
【0007】
このような問題を解決するには、伸長素子として複数のファイバを用い、一本のファイバで伝送される光のエネルギーを小さくして、意図しない非線形光学効果が生じないようにする構成が効果的である。しかしながら、このように複数のファイバで伝送することで時間-波長対応性を実現した場合、照射される光のパターンが照射面においてずれた状態となってしまう。複数のファイバによる時間-波長対応性実現の構成としては、マルチコアファイバ又はバンドルファイバを使用することが考えられるが、いずれの場合も、各コアから出射される光は照射面で互いにずれたパターンを形成してしまい、完全には重ならない。
【0008】
このように光がずれたパターンで照射されると、重なっていない周辺部では中央部に比べて異なる照射条件となり、照射特性が領域内で不均一となる。特に、波長に応じて光を分割してファイバで伝送する構成では、各ファイバ(又は各コア)から出射される光の波長が異なるため、照射領域内で場所によって波長成分が異なることになり、同じ対象物であっても配置位置がずれることで測定結果が異なってしまうという不具合(精度低下)が生じる。
【0009】
このような課題は、一般には知られていない。というのは、マルチコアファイバやバンドルファイバといった複数コアのファイバは、空間分割多重で知られているように通信用に開発されたものであり、分光等の目的である領域に均一に光照射する目的では使用されていない。したがって、同一の照射領域に重ねて照射するという技術課題も知られていない。
本願の発明は、この課題を解決するために為されたものであり、パルス光を複数のファイバで分割して伝送して時間-波長対応性を実現するパルス分光装置において、照射面において同一の領域に光が重なって照射される実用的な構成を提供し、照射パターンがずれることによる測定精度低下を防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、この出願のパルス分光装置は、パルス光源と、パルス光源からのパルス光が分割された各分割パルス光を伝送するマルチコアファイバ又はバンドルファイバとを備えており、マルチコアファイバ又はバンドルファイバから出射された各分割パルス光は、時間と波長とが1対1で対応していて、各分割パルス光が照射された対象物からの光を受光する受光器を備えている。
そして、このパルス分光装置において、
マルチコアファイバ又はバンドルファイバの出射側には、
マルチコアファイバの各コア又はバンドルファイバの各コアから出射された各分割パルス光が光軸に垂直な面内の実質的に同一の領域に重なるようにする一又は複数のレンズから成る第一のレンズ系と、
当該実質的に同一の領域の像を照射面に投影する一又は複数のレンズから成る第二のレンズ系と
が設けられている。
また、このパルス分光装置において、第二のレンズ系は、照射面への投影倍率の調整が可能な複数のレンズから成るレンズ系であり得る。
また、このパルス分光装置において、第一のレンズ系は、マルチコアファイバの各コア又はバンドルファイバの各コアから出射された各分割パルス光を平行光にして実質的に同一の領域に重なるようにするレンズ系であり得る。
【0011】
また、上記課題を解決するため、本願発明のマルチファイバ用照射ユニットは、マルチコアファイバ又はバンドルファイバであるマルチファイバの出射側に接続されるユニットである。このユニットは、マルチコアファイバの各コア又はバンドルファイバの各コアから出射された光が光軸に垂直な面内の実質的に同一の領域に重なるようにする一又は複数のレンズから成る第一のレンズ系と、当該実質的に同一の領域の像を照射面に投影する第二のレンズ系とを備えている。
また、マルチファイバ用照射ユニットにおいて、第二のレンズ系は、照射面への投影倍率の調整が可能な複数のレンズから成るレンズ系であり得る。
また、マルチファイバ用照射ユニットにおいて、第一のレンズ系は、マルチコアファイバの各コア又はバンドルファイバの各コアから出射された光を平行光にして実質的に同一の領域に重なるようにするレンズ系であり得る。
【発明の効果】
【0012】
以下に説明する通り、この出願のパルス分光装置によれば、マルチコアファイバの各コア又はバンドルファイバの各コアから出射されたパルス光が光軸に垂直な面内の実質的に同一の領域に重なるので、対象物の位置が多少ずれても、照射条件に変化はなく、再現性の高い分光測定が可能である。この際、照射距離が長く取れるので、対象物を配置する機構について高い精度が要求されることはなく、またフィルタの配置といった光学的な面でも自由度が高くなる。このため、実用的なパルス分光装置となる。
また、マルチファイバ用照射ユニットによれば、パルス分光装置において時間-波長対応性実現用として使用されるマルチファイバ以外の用途において、対象物の配置位置や光学的又は機構的設計において自由度が高くなるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態のパルス分光装置の概略図である。
図2】群遅延による時間-波長対応性実現について示した概略図である。
図3】分割素子として使用されたアレイ導波路回折格子の平面概略図である。
図4】実施形態のパルス分光装置における照射ユニットの概略図である。
図5】参考例の照射ユニットの構成を示した概略図である。
図6】パルス分光装置が備える測定プログラムの一例について主要部を概略的に示した図である。
図7】対象物の位置ずれが与える影響について示した平面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、この出願の発明を実施するための形態(実施形態)について説明する。
図1は、実施形態のパルス分光装置の概略図である。図1に示すパルス分光装置は、パルス光源1と、パルス光源1からのパルス光について時間-波長対応性を実現する対応化ユニット2とを備えており、時間-波長対応性を利用して分光測定を行う装置である。
【0015】
パルス光源1は、連続したスペクトルのパルス光を出射する光源である。この実施形態では、例えば、900nmから1300nmの範囲において少なくとも10nmの波長幅に亘って連続したスペクトルの光を出射する光源となっている。「900nmから1300nmの範囲において少なくとも10nmの波長幅に亘って連続したスペクトル」とは、900~1300nmの範囲の連続したいずれかの10nm以上の波長幅ということである。例えば、例えば900~910nmにおいて連続していても良いし、990~1000nmにおいて連続していても良い。尚、50nm以上の波長幅に亘って連続しているとさらに好適であるし、100nm以上の波長幅に亘って連続しているとさらに好適である。また、「スペクトルが連続している」とは、ある波長幅で連続したスペクトルを含んでいることを意味する。これは、パルス光の全スペクトルにおいて連続している場合には限られず、部分的に連続していても良い。
【0016】
900nmから1300nmの範囲とする点は、実施形態のパルス分光装置が近赤外域での分光分析を主な用途としているためである。少なくとも10nmの波長幅に亘って連続したスペクトルの光とは、典型的にはSC光である。したがって、この実施形態では、パルス光源1は、SC光源となっている。但し、SC光源以外の広帯域パルス光源が使用される場合もある。
【0017】
SC光源であるパルス光源1は、超短パルスレーザ11と、非線形素子12とを備えている。超短パルスレーザ11としては、ゲインスイッチレーザ、マイクロチップレーザ、ファイバレーザ等を用いることができる。また、非線形素子12としては、ファイバが使用される場合が多い。例えば、フォトニッククリスタルファイバやその他の非線形ファイバが非線形素子12として使用できる。ファイバのモードとしてはシングルモードの場合が多いが、マルチモードであっても十分な非線形性を示すものであれば、非線形素子12として使用できる。
【0018】
対応化ユニット2は、前述したように、時間と光の波長との関係が1対1になるようにするユニットである。この点について、図2を使用して説明する。図2は、群遅延による時間と波長の1対1対応性実現について示した概略図である。
ある波長範囲において連続スペクトルであるSC光L1を当該波長範囲で正の分散特性を有する群遅延ファイバ9に通すと、パルス幅が効果的に伸長される。図2(1)に示すように、SC光L1においては、超短パルスではあるものの、1パルスの初期に最も長い波長λが存在し、時間が経過すると徐々に短い波長の光が存在し、パルスの終期には最も短い波長λの光が存在する。この光を、正常分散の群遅延ファイバ9に通すと、正常分散の群遅延ファイバ9では、波長の短い光ほど遅れて伝搬するので、図2(2)に示すように1パルス内の時間差が増長され、ファイバ9を出射する際には、短い波長の光は長い波長の光に比べてさらに遅れるようになる。この結果、図2(3)に示すように、出射するSC光L2は、時間対波長の一意性が確保された状態でパルス幅が伸長された光となる。即ち、時刻t~tは、波長λ~λに対してそれぞれ1対1で対応した状態でパルス伸長される。
【0019】
尚、パルス伸長のための群遅延ファイバ9としては、異常分散ファイバを使用することも可能である。この場合は、SC光においてパルスの初期に存在していた長波長側の光が遅れ、後の時刻に存在していた短波長側の光が進む状態で分散するので、1パルス内での時間的関係が逆転し、1パルスの初期に短波長側の光が存在し、時間経過とともにより長波長側の光が存在する状態でパルス伸長されることになる。但し、正常分散の場合に比べると、パルス伸長のための伝搬距離をより長くすることが必要になる場合が多く、損失が大きくなり易い。したがって、この点で正常分散の方が好ましい。
【0020】
実施形態のパルス分光装置は、時間-波長対応性を実現するための構成として、上記のような一本のファイバにおける群遅延を利用する構成ではなく、複数のファイバで光を分割して伝送するとともに各ファイバの長さ等を最適化する構成を採用している。これは、ファイバにおける意図しない非線形光学効果を抑制するためである。
複数のファイバで分けて伝送することで時間-波長対応性を実現することは、発明者の研究に基づいている。発明者の研究によると、例えば吸収の多い対象物Sに光を照射してその透過光を分光することで吸収スペクトルを測定する場合、対象物Sに強い光を照射する必要が生じ、そのために時間-波長対応性を有する高強度の光が必要になる。また、測定のSN比を高くしたり測定を高速に行ったりする観点から、対象物Sに強い光を照射する必要が生じる場合がある。
【0021】
時間-波長対応性が実現された光を高い照度で対象物Sに照射するには、群遅延ファイバに対して高い強度で広帯域パルス光を入射させ、高い強度を保ったままパルス伸長する必要がある。しかしながら、群遅延ファイバに高強度の広帯域パルス光を入射させると、意図しない非線形光学効果が生じ、時間波長一意性が崩れる問題があることが判ってきた。この知見に基づき、この実施形態では、複数のファイバで分けて伝送することで時間-波長対応性を実現する構成が採用されている。
【0022】
複数のファイバは、この実施形態ではバンドルファイバ21となっている。バンドルファイバ21の入射側には、バンドルファイバ21を構成する各ファイバ(以下、要素ファイバという。)に光を入射させるために光を分割する分割素子が設けられている。分割素子については、波長に応じて光を分割する素子が使用されており、この実施形態ではアレイ導波路回折格子(Array Waveguide Grating,AWG)3が使用されている。
【0023】
バンドルファイバ2を群遅延素子として用いる場合、パルス光源1からの光を単純に複数の光束に分割して各ファイバに入射させて群遅延を生じさせる構成が考えられる。この構成でも良いのであるが、波長に応じた群遅延量を実現するため、この実施形態では、波長毎に光を分割する分割素子を設けている。このような分割素子としては、この実施形態では、アレイ導波路回折格子3を用いている。
【0024】
図3は、分割素子として使用されたアレイ導波路回折格子の平面概略図である。アレイ導波路回折格子は、光通信用として開発された素子であり、分光測定用としての利用は知られていない。図3に示すように、アレイ導波路回折格子3は、基板31上に各機能導波路32~36を形成することで構成されている。各機能導波路は、光路長が僅かずつ異なる多数のグレーティング導波路32と、グレーティング導波路32の両端(入射側と出射側)に接続されたスラブ導波路33,34と、入射側スラブ導波路33に光を入射させる入射側導波路35と、出射側スラブ導波路34から各波長の光を取り出す各出射側導波路36となっている。
【0025】
スラブ導波路33,34は自由空間であり、入射側導波路35を通って入射した光は、入射側スラブ導波路33において広がり、各グレーティング導波路32に同位相で入射する。各グレーティング導波路32は、僅かずつ長さが異なっているので、各グレーティング導波路32の終端に達した光は、この差分だけ位相がそれぞれずれる(シフトする)。各グレーティング導波路32からは光が回折して出射するが、回折光は互いに干渉しながら出射側スラブ導波路34を通り、出射側導波路36の入射端に達する。この際、位相シフトのため、干渉光は波長に応じた位置で最も強度が高くなる。つまり、各出射端導波路36には波長が順次異なる光が入射するようになり、光が空間的に分光される。厳密には、そのように分光される位置に各入射端が位置するよう各出射側導波路36が形成される。
【0026】
尚、バンドルファイバ21における各要素ファイバは、各出射側導波路36に対して中継ファイバ22により接続されている。各中継ファイバ22と各要素ファイバは、ファンインファンアウトデバイスのようなコネクタ素子23により接続されている。このため、波長毎に分割されたパルス光は、中継ファイバ22を介して各要素ファイバで伝送され、この際に波長に応じた遅延が生じるようになっている。即ち、中継ファイバ22が波長に応じて長さが違っていて波長間で伝送に時間差をつけている。各要素ファイバから出射される光が対象物Sにおいて重ね合わされる(合波される)と、パルス伸長の場合と同様に、時間と波長とが1対1に対応した光が照射された状態となる。
【0027】
パルス分光装置は、上記のように時間-波長対応性が実現された光を対象物Sに照射するため、図1に示すように、照射ユニット4を備えている。照射ユニット4は、バンドルファイバ2の出射側に設けられたユニットである。
図4は、実施形態のパルス分光装置における照射ユニットの概略図である。照射ユニット4は、各要素ファイバから出射される光が、照射面において実質的に同一の領域に重なって照射されるようにするユニットである。図4に示すように、照射ユニット4は、第一第二のレンズ41,421,422と、これらレンズ41,421,422を収容した不図示の筐体とから成っている。
【0028】
第一のレンズ41は、各要素ファイバのコアから出射された光が光軸(図4にAで示す。)に垂直な面内の実質的に同一の第一の領域に重なるようにするレンズである。ここでの光軸Aは、バンドルファイバ21の出射端面における光軸である。より正確には、バンドルファイバ21の全体の中心から端面に対して垂直に延びる線が光軸Aである。バンドルファイバ21は、通常、複数の要素ファイバが中心対称状に束ねられるから、その中心がバンドルファイバ21の全体の中心ということになる。中心対称状でない場合、バンドルを構成するファイバの端面の包絡線で囲まれた領域の中心(領域を均質な板と仮定した場合の重心)である。
【0029】
図4において、第一の領域をR1で示す。また、第一の領域Rが属する面をP1で示す。図4に示すように、第一の領域R1は、バンドルファイバ21の出射端面に近い位置の小さな領域である。尚、図4に示すように、この実施形態では、第一のレンズ41は、各要素ファイバのコアから広がって出射する光をコリメートして第一の領域R1に照射するレンズとなっている。
【0030】
第二のレンズ421,422は、第一の領域R1の像を第二の領域に投影するレンズである。第二の領域を図4においてR2で示す。また、第二の領域R2が属する面(光軸Aに垂直な面)をP2で示す。第二のレンズ421,422は、二枚のレンズである。二枚の第二のレンズのうち、バンドルファイバ21の出射端面に近い側のレンズ421を前段レンズと呼び、遠い側のレンズ422を後段レンズと呼ぶ。
【0031】
前段レンズ421は、第一の領域R1の像の拡大倍率の調整用のレンズである。したがって、ズームレンズ等と同様に、前段レンズ421を光軸に沿って移動可能に保持する機構が設けられている。後段レンズ422は、第二の領域R2に光を結ばせるためのレンズである。倍率については適宜に選定し得るが、例えば0.5~3倍程度の範囲とされる。
【0032】
図4から解るように、第一の領域R1までの距離は短い。この距離は、4~10mm程度である。逆に言えば、この程度の短い距離であれば、各要素ファイバからの光の照射バターンを1枚のレンズで実質的に同一の領域に重ねることができる。しかしながら、何らかの理由で照射距離を長く取りたい場合には、適した焦点距離のレンズがないため、実質的に同一の領域に重ねることができない。コリメートではなく集光して重ねるようにする場合、長い焦点距離のレンズで実現はできるが、実質的に同一の領域には重ならない。
【0033】
図5は、この点を示した図であり、参考例の照射ユニットの構成を示した概略図である。この参考例では、3個のコアを有するマルチコアファイバ81からの出射光を焦点距離50mm程度の集光レンズ40で集光しつつ投影する構成となっている。3個のコアの出射端は、紙面上の縦に並んでいる。
図5中の右側に、3個のコアから出た照射される光のパターンEが描かれている。ここに示すように、各コアから出た光は平面Pにおいて実質的に同一の領域Rには重ならず、ずれて照射される。
【0034】
一方、実施形態においては、第一のレンズ41で第一の領域R1において照射パターンが重なるようにしておき、この領域R1の像を第二のレンズで第二の領域R2に投影するので、照射領域を長く取りつつ、図4に示すように実質的に同一の領域R2に重なった照射パターンを得ることができる。寸法例を示すと、第一の領域R1は直径1~3mm程度、第二の領域R2は2~4mm程度である。
尚、「実質的に同一の領域」における「実質的に」は、照射パターンのずれが実用上問題にならない範囲という意味である。例えば、照射パターンが円形の場合、直径に対して10%以下の距離のずれであれば「実質的に同一」とし得る。円形ではない場合、最も長くなる方向及び位置で見た幅に対して10%以下のずれであれば、「実質的に同一」とし得る。
【0035】
尚、第一のレンズ41が光をコリメートして(平行光にして)第一の領域R1に重ねるレンズである点は、前段レンズ421による投影倍率の調整を容易にする意義がある。第一の領域R1において重ねられた光は、その後、再び分離して異なる方向に向かうが、第一のレンズ41がコリメートするレンズであると、ビーム径が実質的に同一のまま前段レンズ421に達する。前段レンズ421は、倍率調整のために光軸に沿って移動されるが、この場合でも、前段レンズ421に達するビーム径は変わらないので、前段レンズ421や後段レンズ422の設計は容易である。
【0036】
このような照射ユニット4において、不図示の筐体内又は筐体の出射側開口には、適宜フィルタが設けられる。フィルタは、減光フィルタや、バンドパスフィルタやカットフィルタのような波長選択フィルタであり得る。筐体内に設けられる場合、いずれの場所でも良く、例えば前段レンズ421と後段レンズ422との間、後段レンズ422の出射側等に設けられる。
【0037】
実施形態の装置は、このような照射ユニット4によってパルス光が照射される位置(第二の領域R2の位置)に対象物Sを保持する保持部材を備えている。この実施形態では、上側からパルス光を照射する構成であるため、保持部材は受け板5である。この実施形態の装置は、対象物Sの分光透過特性を測定する装置であるため、受け板5は透光性であり、透過光を受光する位置に受光器6が設けられている。
【0038】
受光器6の出力を処理して分光測定結果を得る手段として、装置は、演算手段7を備えている。演算手段7としては、この実施形態では汎用PCが使用されている。受光器6と演算手段7の間にはAD変換器70が設けられており、受光器6の出力はAD変換器70を介して演算手段7に入力される。
演算手段7は、プロセッサ71や記憶部(ハードディスク、メモリ等)72を備えている。記憶部72には、受光器6からの出力データを処理してスペクトルを算出する測定プログラム73やその他の必要なプログラムがインストールされている。図6は、パルス分光装置が備える測定プログラムの一例について主要部を概略的に示した図である。
【0039】
図6の例は、測定プログラム73が吸収スペクトル(分光吸収率)を測定するプログラムの例となっている。吸収スペクトルの算出に際しては、基準スペクトルデータが使用される。基準スペクトルデータは、吸収スペクトルを算出するための基準となる波長毎の値である。基準スペクトルデータは、照射ユニット4からの光を対象物Sを経ない状態で受光器6に入射させることで取得する。即ち、対象物Sを経ないで光を受光器6に直接入射させ、受光器6の出力をAD変換器70経由で演算手段7に入力させ、時間分解能Δtごとの値を取得する。各値は、Δtごとの各時刻(t,t,t,・・・)の基準強度として記憶される(V,V,V,・・・)。時間分解能Δtとは、受光器6の応答速度(信号払い出し周期)によって決まる量であり、信号を出力する時間間隔を意味する。
【0040】
各時刻t,t,t,・・・での基準強度V,V,V,・・・は、対応する各波長λ,λ,λ,・・・の強度(スペクトル)である。1パルス内の時刻t,t,t,・・・と波長との関係が予め調べられており、各時刻の値V,V,V,・・・が各λ,λ,λ,・・・の値であると取り扱われる。
そして、対象物Sを経た光を受光器6に入射させた際、受光器6からの出力はAD変換器70を経て同様に各時刻t,t,t,・・・の値(測定値)としてメモリに記憶される(v,v,v,・・・)。各測定値は、基準スペクトルデータと比較され(v/V,v/V,v/V,・・・)、その結果が吸収スペクトルとなる(必要に応じて逆数の対数を取る)。上記のような演算処理をするよう、測定プログラム73はプログラミングされている。
【0041】
次に、上記パルス分光装置の動作について説明する。
実施形態のパルス分光装置を使用して分光測定する場合、まず対象物Sを配置しない状態でパルス光源1を動作させる。パルス光源1からの広帯域パルス光は、分割素子としてのアレイ導波路回折格子3で分割されて各中継ファイバ22を介してバンドルファイバ21の各要素ファイバで伝送される。伝送された光は、時間-波長対応性が実現された状態となって照射ユニット4から出射され、受光器6に達する。そして、受光器6からの出力データを処理して予め基準スペクトルデータを取得する。
【0042】
次に、対象物Sを受け板5に配置し、パルス光源1を再び動作させる。パルス光は、同様に分割されて同様に時間-波長対応性が実現され、照射ユニット4を介して対象物Sに照射される。対象物Sを透過した光が受光器6に達し、受光器6からの出力データがAD変換器70を介して演算手段7に入力される。そして、測定プログラム73により吸収スペクトルが算出される。
このような動作において、対象物Sが位置する第二の領域R2においては、各要素ファイバからの出射光のパターンがずれずに重なって照射される。このため、対象物Sの位置が多少ずれても、照射条件に変化はなく、再現性の高い分光測定が可能である。
【0043】
上記の点について、図7を参照して補足して説明する。図7は、対象物の位置ずれが与える影響について示した平面概略図である。図7(1-1)及び図7(2-1)は、図5の参考例のように、照射パターンE1と照射パターンE2がずれている場合、図7(1-2)及び図7(2-2)は、実施形態のように照射パターンE1と照射パターンE2が同一の領域に重なっている場合を示す。
照射領域と対象物Sのサイズとの関係については、照射領域が対象物Sよりも小さくて対象物Sのある領域にのみ光照射する場合と、照射領域が対象物Sよりも大きく、対象物Sの全域(入射側の面の全域)に光照射する場合とがあり得る。図7(1-1)及び図7(1-2)は前者の場合を示し、図7(2-1)及び図7(2-2)は後者の場合を示す。
【0044】
ここで、対象物Sに含まれる成分のうち、成分Xを照射パターンE1の光の波長で検出し、成分Yを照射パターンE2の波長で検出すると仮定する。照射パターンE1は波長λ1の光であり、成分Xの量は波長λ1の光の吸収率により知ることができるとする。また照射パターンE2は波長λ2の光であり、成分Yの量は波長λ2の光の吸収率により知ることができるとする。
また、図7(1-1)に示すように、対象物Sに凹凸があり、照射パターンE1は凸部に、照射パターンE2が凹部に照射されたとする。いずれの照射パターンE1,E2も、対象物Sよりも小さい。この場合、対象物Sの中に成分Xと成分Yとが同量含まれていたとしても、光の進行方向に沿った凸部の断面に含まれる成分の量はXYともに多く、凹部の断面に含まれる成分の量はXYともに少ない。したがって、凸部を通過する照射パターンE1の光によって検出される成分Xは多く、反対に凹部を通過する照射パターンE2の光によって検出される成分Yは少なく検出される。即ち、成分Xと成分Yの成分の検出量に相対的な違いが生じる。
このように、照射パターンE1と照射パターンE2がずれていると、相対的な成分量の異なりが、対象物Sの位置(厚さ)の違いによるものなのか、対象物に同量含まれていないことによるものなのかが判別できない。
一方、照射パターンE1と照射パターンE2が重なっている場合、図7(1-2)に示すように、対象物Sに凹凸があったとしても、同じ位置で測定できるので、厚さの違いによる成分量の測定結果の違いが生じない。したがって精度の良い測定が可能である。
【0045】
また、図7(2-1)のように、照射パターンが対象物Sよりも大きく、例えば照射パターンE2が対象物Sに照射されていない場合、対象物Sに成分Yが含まれていたとしても、検出することができない。一方、図7(2-2)に示すように、照射パターンE1と照射パターンE2が重なっていれば、成分Xと成分Yをともに検出することができる。
【0046】
図7から解るように、照射パターンが実質的に同一の領域に重なっている場合、対象物Sが多少ずれても再現性が低下することはない。逆に言えば、厳密に同じ位置にされる必要はなく、対象物Sの配置位置について高い精度が要求されないという優位性がある。この点は、製造ラインに流れている(搬送されている)製品にパルス光を照射してリアルタイムで分光分析をして良否を判断するような用途の場合に特に顕著である。即ち、このような用途では、照射領域にパルス光を照射しながら対象物Sを移動させ、対象物Sを停止させることなく対象物Sが照射領域を通過するタイミングで受光器6からデータを取得して分光分析をする場合が多い。このような場合、タイミングのずれは上記配置位置のずれに相当するが、配置位置について高い精度が要求されない実施形態の構成は、タイミングが多少ずれても再現性が低下することがないという優位性をもたらす。
【0047】
照射距離が長く取れる点も、種々の分光測定の用途において顕著な意義を有する。例えば、上述したように、搬送されている対象物Sにパルス光を照射する場合、照射距離が短いと、搬送機構の精度の影響を受け易い。即ち、搬送機構の精度が低くて対象物Sが光軸方向にずれて搬送されると、対象物Sが照射ユニット4にぶつかってしまう事故が生じ易い。このため、精度の高い搬送機構が必要となる。照射距離が長い場合、このような問題はなく、精度の高い搬送機構は要求されない。この点は、照射領域に対象物Sを停止させる場合も同じである。
【0048】
機構的な面の他、照射距離を長く取れるということは光学的な面でもメリットがある。照射距離が短い場合には前述したようなフィルタを配置することは難しくなるが、実施形態では容易である。また、何らかの事情で途中で光の方向を変える必要があり、ミラー等を配置する必要がある場合もあり得る。このような場合も、実施形態の構成によれば容易である。
【0049】
尚、図4において、第一のレンズ41や各第二のレンズ421,422は1枚のレンズで構成されるように描かれているが、色収差除去等の目的で複数のレンズで構成される場合もあり得る。また、第二のレンズは、前段レンズ421及び後段レンズ422の2枚のレンズではなく1枚のレンズで構成される場合もあり得る。この場合、倍率の変更については、リボルバ機構等によってレンズを交換して行う構成が採用されることもあり得る。さらに、後段レンズ422は、最終的な投影面までの距離を規定しており、後段レンズ422を交換することで照射距離を変更することもできる。
【0050】
上記実施形態において、各中継ファイバ22やバンドルファイバ21における各要素ファイバは、同じファイバであっても良いし、材料や長さの点で異なるファイバであっても良い。同じ材料であっても長さを変えれば全体としての群遅延量は変わってくるので、波長によって長さの異なる要素ファイバを使用しても良い。材料についても同様である。波長に応じて最適な群遅延量になるようにファイバの長さや材料を選定することで、Δλ/Δtの値をより均一にして均一な分解能の(波長帯による分解能の差が小さい)分光測定を実現することができる。バンドルファイバ21における各要素ファイバについて材料や長さを相互に変えることは煩雑な場合が多いので、中継ファイバ22について長さや材料を波長に応じて変えるのが実用的である。
【0051】
また、群遅延素子としてマルチコアファイバが使用される場合もある。マルチコアファイバの場合も、照射ユニット4は、各コアから出射される光を実質的に同一の第一の領域に重ね合わせる第一のレンズ41と、第一の領域R1の像を第二の領域R2に投影する第二のレンズ421,422とを備えた構成とされる。マルチコアファイバの具体例を示すと、例えばコア径が100~150μ程度で、コア数が7程度のものを好適に使用することができる。第一の領域R1の大きさや第二の領域R2の大きさは、バンドルファイバの場合と同程度である。
【0052】
尚、マルチコアファイバのコア数は数個程度から10個程度までが実用的であるが、バンドルファイバ21の要素ファイバ数はこれよりも多くでき、数十本の要素ファイバを束ねたバンドルファイバも使用可能である。このため、分割素子における分割数を多くする場合には、バンドルファイバの方が好ましい。分割数を多くする理由としては、コアの数を多くして1本あたりの伝送パワーを小さくし、意図しない非線形光学効果の発生をより抑制するため、波長に応じた分割を行う場合によりきめ細かく分割して群遅延量の調整をきめ細かくするため、又はその両方があり得る。例えば、前述したアレイ導波路回折格子を分割素子として用いる場合、50~70個程度に分割し、同程度の数の要素ファイバを束ねたバンドルファイバが使用され得る。
【0053】
また、分割素子としては、分割数は少なくなるが、ファイバカップラを複数段使用して分割したり、ダイクロイックミラーを複数段使用して分割したりする構成もあり得る。
尚、上述した装置の動作例は、吸収スペクトルの測定であったが、反射スペクトル(分光反射率)や内部散乱光のような分光特性を測定する場合もある。
また、マルチコアファイバやバンドルファイバを使用せず、通常のファイバを束ねることなくパラレルに複数用いる構成もあり得る。この場合、複数のファイバに対してファインファンアウトデバイス等のコネクタ素子を介して照射ユニット4が接続され得る。
【0054】
また、パルス分光装置の構成としては、基準スペクトルデータをリアルタイムで取得する構成が採用されることもあり得る。この場合には、バンドルファイバ又はマルチコアファイバから出射される光をビームスプリッタで二つに分け、一方を対象物Sに照射し、他方を参照用受光器に入射させる構成が採用される。参照用受光器には対象物Sを経ない状態の光が入射し、その出力を同様にAD変換して得られるデータが基準スペクトルデータとなる。この構成におけるビームスプリッタは、照射ユニット4内に設けられても良く、照射ユニット4の出射側に別途設けられても良い。
【0055】
尚、上記説明では対象物Sからの透過光の分光測定を例にしたが、対象物Sからの反射光を受光する位置に受光器6を設け、対象物Sからの反射光の分光測定を行う場合もあり得る。さらに、照射ユニット4により光が照射された対象物Sからの散乱光又は蛍光を捉えて分光測定する場合もあり得る。即ち、対象物Sからの光は、光照射された対象物Sからの透過光、反射光、蛍光、散乱光などであり得る。
【0056】
また、パルス光源1としては、SC光を出射するものの他、ASE(Amplified Spontaneous Emission)光源、SLD(Superluminescent diode)光源などが採用されることもあり得る。
さらに、上述した照射ユニット4は、マルチコアファイバ又はバンドルファイバの出射側に設けられるユニットであり、マルチファイバ用照射ユニットである。「マルチファイバ」とは、マルチコアファイバ及びバンドルファイバの総称である。マルチファイバ用照射ユニットは、マルチファイバが広帯域パルス光の時間-波長対応性実現用である場合に限られない。何らかの理由で光を分けて伝送し、照射面で重ねる必要がある用途において好適に使用される。尚、バンドルファイバは、出射端のみが束ねられていて入射端が束ねられていない場合もあり得る。
【符号の説明】
【0057】
1 パルス光源
2 対応化ユニット
21 バンドルファイバ
211 要素ファイバ
22 中継ファイバ
3 アレイ導波路回折格子
4 照射ユニット
41 第一のレンズ
421 第二のレンズ
422 第二のレンズ
5 受け板
6 受光器
7 演算手段
70 AD変換器
S 対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2021-08-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項2
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項2】
前記第二のレンズ系は、前記照射面への投影倍率の調整が可能な複数のレンズから成ることを特徴とする請求項記載のパルス分光装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0029】
図4において、第一の領域をR1で示す。また、第一の領域R1が属する面をP1で示す。図4に示すように、第一の領域R1は、バンドルファイバ21の出射端面に近い位置の小さな領域である。尚、図4に示すように、この実施形態では、第一のレンズ41は、各要素ファイバのコアから広がって出射する光をコリメートして第一の領域R1に照射するレンズとなっている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
図5は、この点を示した図であり、参考例の照射ユニットの構成を示した概略図である。この参考例では、3個のコアを有するマルチコアファイバ81からの出射光を焦点距離50mm程度の集光レンズ40で集光しつつ投影する構成となっている。3個のコアの出射端は、紙面上において縦に並んでいる。
図5中の右側に、3個のコアから出た照射される光のパターンEが描かれている。ここに示すように、各コアから出た光は平面Pにおいて実質的に同一の領域Rには重ならず、ずれて照射される。