(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042446
(43)【公開日】2022-03-14
(54)【発明の名称】計測装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/28 20060101AFI20220307BHJP
G01N 27/27 20060101ALI20220307BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20220307BHJP
G01N 27/06 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
G01N27/28 R
G01N27/27 A
G01N27/416 353Z
G01N27/416 311G
G01N27/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020147912
(22)【出願日】2020-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000219451
【氏名又は名称】東亜ディーケーケー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169155
【弁理士】
【氏名又は名称】倉橋 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075638
【弁理士】
【氏名又は名称】倉橋 暎
(72)【発明者】
【氏名】杉澤 亨
【テーマコード(参考)】
2G060
【Fターム(参考)】
2G060AA05
2G060AE18
2G060AF08
2G060AG03
2G060HD03
(57)【要約】
【課題】正規品ではないセンサを用いることで想定外の測定結果となることを抑制して、安全に所望の精度の測定を行うことを可能とする計測装置を提供する。
【解決手段】測定対象に応じたセンサ4が着脱可能な計測装置1は、センサ4を用いた計測の制御を行う制御手段21を有し、制御手段21は、センサ4が接続された場合に、センサ4から識別情報を取得することに基づいて、接続されたセンサ4が正規品であるか否かを判別する識別処理と、識別処理の結果に応じて、上記制御を、センサ4が正規品である場合に対応する第1のモードと、センサ4が正規品ではない場合に対応する第2のモードと、に切り替える切り替え処理と、を実行可能である構成とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象に応じたセンサが着脱可能な計測装置において、
前記センサを用いた計測の制御を行う制御手段を有し、
前記制御手段は、
前記センサが接続された場合に、前記センサから識別情報を取得することに基づいて、接続された前記センサが正規品であるか否かを判別する識別処理と、
前記識別処理の結果に応じて、前記制御を、前記センサが正規品である場合に対応する第1のモードと、前記センサが正規品ではない場合に対応する第2のモードと、に切り替える切り替え処理と、
を実行可能であることを特徴とする計測装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記センサとの間での通信により、前記センサに設けられた識別手段に付帯された識別情報を取得することを特徴とする請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記識別手段は、記憶媒体を有して構成され、前記識別情報は、前記センサの種類に応じて予め定められた特定の識別コードの情報を含み、前記制御手段は、前記識別コードが所定の条件を満たす場合に、前記センサが正規品であると判別することを特徴とする請求項2に記載の計測装置。
【請求項4】
前記識別情報は、更に、前記センサの個体に固有の個別コードの情報を含み、前記制御手段は、更に、前記個別コードが所定の条件を満たす場合に、前記センサが正規品であると判別することを特徴とする請求項3に記載の計測装置。
【請求項5】
前記記憶媒体には、前記センサが製造された時期を示す製造時期情報と、前記センサが前記計測装置に初めて接続された時期を示す接続時期情報と、が記憶され、前記制御手段は、更に、前記製造時期情報と前記接続時期情報との関係が所定の条件を満たす場合に、前記センサが正規品であると判別することを特徴とする請求項3又は4に記載の計測装置。
【請求項6】
前記記憶媒体には計量法に基づく承認に関する情報が記憶され、前記制御手段は、更に、前記計量法に基づく承認に関する情報が所定の条件を満たす場合に、前記センサが正規品であると判別することを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記制御を前記第2のモードに切り替える場合、前記センサとは別の入力手段から所定のパス情報が取得されたか否かを判別するパス処理を実行し、前記パス処理の結果に応じて、前記所定のパス情報が取得された場合は計測を可能とし、前記所定のパス情報が取得されない場合は計測を禁止することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記制御を前記第2のモードに切り替える場合、前記第1のモードであれば前記センサから取得可能な計測に関する所定の情報を、前記センサとは別の入力手段から取得するための処理を実行することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項9】
前記所定の情報は、前記センサの出力を測定値に変換するために必要な情報であることを特徴とする請求項8に記載の計測装置。
【請求項10】
前記所定の情報は、前記センサが電気伝導率セルである場合のセル定数に関する情報、前記センサがイオン電極である場合のイオン価数に関する情報、前記センサが残留塩素電極である場合の電極係数に関する情報、前記センサに設けられた温度検出素子の特性に関する情報のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項9に記載の計測装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記第2のモードにおいて、前記第1のモードであれば実行可能な一部の機能に関する処理を実行しないことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項12】
前記機能は、前記センサに設けられた温度検出素子の検出結果を用いる機能であることを特徴とする請求項11に記載の計測装置。
【請求項13】
前記制御手段は、前記第2のモードにおいて、前記第1のモードであれば実行しない所定の処理を実行することを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項14】
前記所定の処理は、前記センサが正規品ではないことを示す情報を出力する処理であることを特徴とする請求項13に記載の計測装置。
【請求項15】
前記センサを含むセンサユニットと、前記センサユニットが着脱可能に接続され前記センサから取得されるアナログ信号を測定値を示すデジタル信号に変換する測定回路を含む測定ユニットと、前記測定ユニットが着脱可能に接続され前記測定値を表示する表示部を含む装置本体と、を有し、前記制御手段は、前記測定ユニット及び前記装置本体のうち少なくとも一方に設けられていることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電位差測定電極(pH電極、酸化還元電位差測定電極(ORP電極)、イオン電極など)、電気伝導率セル、酸化還元電流測定電極(溶存酸素電極、残留塩素電極など)、圧力センサ、光学センサ(濁度センサ、光学式溶存酸素センサなど)などの水質センサに代表されるセンサが着脱可能な、電位差計(pH計、酸化還元電位差計、イオンメータなど)、電気伝導率計、酸化還元電流測定器(溶存酸素計、残留塩素計など)、圧力計、光学式測定器(濁度計、光学式溶存酸素計など)などの計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、pH電極、電気伝導率セル、溶存酸素電極などの水質センサに代表されるセンサが着脱可能な、pH計、電気伝導率計、溶存酸素計などの計測装置がある。センサは、寿命や故障による交換などのために計測装置に対して着脱される。
【0003】
特許文献1には、pH電極などのセンサを備えたプローブに設けられた識別手段としてのメモリに記憶された識別情報を、装置本体に設けられた認識手段により認識してプローブの識別(すなわち、センサの識別)を行う計測装置が開示されている。これにより、プローブの種類(すなわち、センサの種類)に応じた複数の異なる測定項目のための機能を自動的に切り替えることなどが可能となるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のような水質センサに代表されるセンサは、通常、これを製造するメーカーが保証する性能を満たすように管理されて製造され、ユーザーに提供される。しかし、市場では当該メーカーが保証する性能を満たさない、正規品ではないセンサ(いわゆる、規格外品、非正規品、模造品などと呼ばれるものなど)が入手可能であることがある。このような正規品ではないセンサが接続されて計測装置が用いられると、例えば、当該メーカーが性能を保証する正規品であれば問題の無い、ある条件下において測定精度が低下するなどして、誤った測定が行われる可能性がある。
【0006】
上述のように、従来、センサを識別する機能を有する計測装置について提案されているが、計測装置に正規品ではないセンサが接続された場合の対策については開示されていない。ユーザーがセンサを入手した経緯、あるいはセンサを使用する状況(目的)や条件によっては、単に正規品ではないセンサの使用を一律に禁止することは望ましくないことがある。正規品ではないセンサの対策としては、ユーザーが正規品ではないセンサを用いていることを認識でき、正規品ではないセンサを用いた場合の結果を十分に想定できるようにしたうえで、正規品ではないセンサの使用を可能とすることも必要となる。
【0007】
したがって、本発明の目的は、正規品ではないセンサを用いることで想定外の測定結果となることを抑制して、安全に所望の精度の測定を行うことを可能とする計測装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は本発明に係る計測装置にて達成される。要約すれば、本発明は、測定対象に応じたセンサが着脱可能な計測装置において、前記センサを用いた計測の制御を行う制御手段を有し、前記制御手段は、前記センサが接続された場合に、前記センサから識別情報を取得することに基づいて、接続された前記センサが正規品であるか否かを判別する識別処理と、前記識別処理の結果に応じて、前記制御を、前記センサが正規品である場合に対応する第1のモードと、前記センサが正規品ではない場合に対応する第2のモードと、に切り替える切り替え処理と、を実行可能であることを特徴とする計測装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、正規品ではないセンサを用いることで想定外の測定結果となることを抑制して、安全に所望の精度の測定を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】計測装置の全体構成を示す模式的な斜視図である。
【
図2】pH測定用のプローブが接続された計測装置の機能ブロック図である。
【
図3】電気伝導率測定用のプローブ及び溶存酸素測定用のプローブの機能ブロック図である。
【
図4】識別処理及び計測制御切り替え処理を説明するためのフローチャートである。
【
図5】正規品の場合の計測制御の一例を示すフローチャートである。
【
図6】正規品ではない場合の計測制御の一例を示すフローチャートである。
【
図7】正規品ではない場合の計測制御の他の例を示すフローチャートである。
【
図8】正規品ではない場合の計測制御の他の例を示すフローチャートである。
【
図9】正規品ではない場合の計測制御の他の例を示すフローチャートである。
【
図11】エラー表示、警告表示の例を示す模式図である。
【
図12】計測用情報、パス情報の入力画面の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る計測装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0012】
[実施例1]
1.計測装置の構成
図1は、本実施例の計測装置1の全体構成を示す模式的な斜視図である。また、
図2は、本実施例の計測装置1の機能ブロック図である。
【0013】
本実施例では、計測装置1は、装置本体2と、装置本体2に対して着脱可能なプローブ3と、を有する。本実施例では、計測装置1は、センサとして電位差測定電極であるpH電極を備えたpH測定用のプローブ(ここでは「pHプローブ」ともいう。)3A、センサとして電気伝導率セルを備えた電気伝導率測定用のプローブ(ここでは「ECプローブ」ともいう。)3B(
図3(a))、及びセンサとして酸化還元電流測定電極である溶存酸素電極を備えた溶存酸素測定用のプローブ(ここでは「DOプローブ」ともいう。)3C(
図3(b))を取り替えて使用できるものである。なお、pHプローブ3A、ECプローブ3B、DOプローブ3Cに共通して設けられる要素について総括的に説明する場合、いずれかのプローブに属する要素であることを示す符号の末尾のA、B、Cは省略することがある。
図1、
図2は、それぞれプローブ3の一例としてpHプローブ3Aが装置本体2に接続された状態を示している。
【0014】
本実施例では、プローブ3は、センサユニット4と、測定ユニット5と、を有する。センサユニット4は、測定対象に応じた測定部41を有する。例えば、pHプローブ3Aの場合、センサユニット4Aは、図中下方の先端部に測定部41Aを構成するガラス感応膜などのpH感応部を備えた、全体が細長形状のpH電極を有して構成される。また、センサユニット4は、詳しくは後述する識別手段を構成する記憶媒体であるセンサメモリ42を有する。一方、測定ユニット5は、センサユニット4から取得したアナログ信号をセンサユニット4の測定結果を示すデジタル信号に変換する測定回路51を有する。例えば、pHプローブ3Aの場合、測定回路51は、電位差測定用の測定回路であるpH測定用の測定回路51Aとされる。測定ユニット5は、センサユニット4の先端部側とは反対側の基端部側に設けられている。また、測定ユニット5は、ケーブル55を介して測定回路51に接続された、装置本体2に対してプローブ3を着脱可能に接続するためのプローブ側コネクタ52を有する。本実施例では、センサユニット4が、計測装置1に着脱可能なセンサを構成する。
【0015】
なお、
図3(a)に示すように、ECプローブ3Bは、測定部41Bとセンサメモリ42Bとを備えた全体が細長形状の電気伝導率セルを有して構成されるセンサユニット4Bと、測定ユニット5Cと、を有する。ECプローブ3Bの測定ユニット5Cは、電気伝導率測定用の測定回路51Bと、ケーブル55Bを介して測定回路51Bに接続されたプローブ側コネクタ52Bと、を備えている。
【0016】
また、
図3(b)に示すように、DOプローブ3Cは、測定部41Cとセンサメモリ42Cとを備えた全体が細長形状の溶存酸素電極を有して構成されるセンサユニット4Cと、測定ユニット5Cと、を有する。DOプローブ3Cの測定ユニット5Cは、酸化還元電流測定用の測定回路である溶存酸素測定用の測定回路51Cと、ケーブル55Cを介して測定回路51Cに接続されたプローブ側コネクタ52Cと、を備えている。
【0017】
プローブ3について更に説明する。本実施例では、センサユニット4は、測定ユニット5に対して着脱可能である。センサユニット4は、第1のユニット間コネクタ(センサユニット側コネクタ)44を備え、測定ユニット5は、第1のユニット間コネクタ44に着脱可能に接続される第2のユニット間コネクタ(測定ユニット側コネクタ)54を備えている。このように、本実施例では、センサユニット4が測定ユニット5に対して着脱可能とされていることで、センサユニット4は計測装置1に着脱可能とされている。
【0018】
センサユニット4は、その基端部に隣接してプリント基板である第1の基板(センサユニット基板)43を有し、この第1の基板43に、センサメモリ42と、第1のユニット間コネクタ44と、が設けられている。また、測定ユニット5は、プリント基板である第2の基板(測定ユニット基板)53を有し、この第2の基板53に、測定回路51と、第2のユニット間コネクタ54と、が設けられている。第1のユニット間コネクタ44は、概略細長円柱状のセンサユニット4の基端部から露出するようにセンサユニット4に配置されている。また、測定ユニット5は、センサユニット4の基端部が挿入される凹部8を有し、第2のユニット間コネクタ54はこの凹部8に露出するようにして測定ユニット5に配置されている。そして、センサユニット4の基端部が測定ユニット5の凹部8に挿入(嵌合)され、第1、第2のユニット間コネクタ44、54が接続されることで、センサユニット4と測定ユニット5とが一体化されてプローブ3が形成される。本実施例では、センサユニット4は、スライド移動させられて測定ユニット5の凹部8に嵌合される。また、測定ユニット5の測定回路51などから引き出された配線は、ケーブル55としてまとめられてプローブ側コネクタ52に接続されている。プローブ3は、ケーブル55を介してプローブ側コネクタ52によって装置本体2に設けられた本体側コネクタ22に着脱可能に接続される。
【0019】
上述のように、センサユニット4の第1の基板43には、第1のユニット間コネクタ44と、センサメモリ42と、が設けられている。また、例えば、pHプローブ3Aの場合、センサユニット4Aには、ガラス感応膜などのpH感応部と共に測定部41Aを構成する測定電極(内部電極)61及び比較電極(内部電極)62と、温度補償用の温度センサ(温度検出素子)63と、が設けられている。そして、測定電極(内部電極)61、比較電極(内部電極)62、温度補償用の温度センサ63、第1の基板43に設けられたセンサメモリ42は、それぞれ第1のユニット間コネクタ44が備えた複数のピンのうち対応するピンに接続されている。
【0020】
また、測定ユニット5の第2の基板53には、第2のユニット間コネクタ54と、測定回路51と、CPU56と、通信ドライバ57と、記憶媒体である測定ユニットメモリ58と、が設けられている。例えば、pHプローブ3Aの場合、測定回路51はpH測定用の測定回路51Aである。測定回路51には、増幅器と、A/D変換器と、が設けられている。増幅器は、センサユニット4から取得したアナログ信号(pH測定信号、温度測定信号など)を適宜増幅する。増幅器は、測定ユニット5に入力される信号(pH測定信号、温度測定信号など)に対応して複数設けられていてよい。A/D変換器は、増幅器で増幅されたアナログ信号をセンサユニット4の測定結果を示すデジタル信号に変換する。測定ユニット5のCPU56は、プローブ3における処理(動作)を統括的に制御する。特に、測定ユニット5のCPU56は、A/D変換器から取得したデジタル信号を処理(補正など)して、センサユニット4の測定結果(測定値)を求める。通信ドライバ57は、測定ユニット5のCPU56と装置本体2との間のデジタル信号の伝送を制御する。測定ユニットメモリ58には、プローブ3における処理を制御する手順(プログラム)及びデータが記憶されている。特に、本実施例では、測定ユニットメモリ58には、測定結果(pH値・温度値など)を演算し出力するための手順及びデータなどが記憶されている。本実施例では、測定ユニットメモリ58としては、不揮発性メモリ(電気的消去書き込み可能な読み出し専用メモリ)を用いた。測定ユニットメモリ58としては、不揮発性メモリ、フラッシュメモリ、電池バックアップ付きRAM、EPROM又はワンタイムROMなどを使用し得る。第2のユニット間コネクタ54が備えた複数のピンは、それぞれ第1のユニット間コネクタ44が備えた複数のピンのうち対応するピンと接続される。そして、第2の基板53に設けられた測定回路(pH測定用の増幅器、温度測定用の増幅器など)51、CPU56などは、第2の基板53に設けられた第2のユニット間コネクタ54が備えた複数のピンのうち対応するピンに接続されている。
【0021】
なお、
図3(a)に示すように、ECプローブ3Bの場合、センサユニット4Bには、測定部41Bを構成する検出用の白金黒電極64及び電圧印加用の白金黒電極65と、温度補償用の温度センサ63と、が設けられている。そして、検出用の白金黒電極64、電圧印加用の白金黒電極65、温度補償用の温度センサ63、第1の基板43Bに設けられたセンサメモリ42Bは、それぞれ第1の基板43Bに設けられた第1のユニット間コネクタ44Bが備えた複数のピンのうち対応するピンに接続されている。また、ECプローブ3Bの場合、測定回路51は、電気伝導率測定用の測定回路51Bである。電気伝導率測定用の測定回路51Bには、上述の増幅器、A/D変換器の他、電圧印加部が設けられている。そして、第2の基板53Bに設けられた測定回路(電気伝導率測定用の増幅器、温度測定用の増幅器、電圧印加部など)51B、CPU56は、第2の基板53Bに設けられた第2のユニット間コネクタ54Bが備えた複数のピンのうち対応するピンに接続されている。
【0022】
また、
図3(b)に示すように、DOプローブ3Cの場合、センサユニット4Cには、測定部41Cを構成する作用極66及び対極67と、温度補償用の温度センサ63と、が設けられている。そして、作用極66、対極67、温度補償用の温度センサ63、第1の基板43Cに設けられたセンサメモリ42Cは、それぞれ第1の基板43Cに設けられた第1のユニット間コネクタ44Cが備えた複数のピンのうち対応するピンに接続されている。また、DOプローブ3Cの場合、測定回路51は、溶存酸素測定用の測定回路51Cである。溶存酸素測定用の測定回路51Cには、上述の増幅器、A/D変換器の他、電圧印加部が設けられている。そして、第2の基板53Cに設けられた測定回路(溶存酸素測定用の増幅器、温度測定用の増幅器、電圧印加部など)51C、CPU56は、第2の基板53Cに設けられた第2のユニット間コネクタ54Cが備えた複数のピンのうち対応するピンに接続されている。
【0023】
ここで、本実施例では、pHプローブ3Aのセンサユニット4Aは、測定電極(ガラス電極)と比較電極とが一体とされた複合電極である。そして、pHプローブ3Aの測定ユニット5Aが備えるpH測定用の測定回路51Aは、両極間の電位差を電圧計で測定することによりガラス感応膜に発生した起電力を検出する。
【0024】
また、本実施例では、ECプローブ3Bのセンサユニット4Bは、白金黒電極を用いた交流2極方式である。そして、ECプローブ3Bの測定ユニット5Bが備える電気伝導率測定用の測定回路51Bは、両極間に交流電圧を印加し、そのときに流れる電流を電流計で測定してインピーダンスを検出する。
【0025】
また、本実施例では、DOプローブ3Cのセンサユニット4Cは、作用極と対極とを酸素ガス透過性隔膜で仕切られたセンサユニット4C内に有する隔膜式ポーラログラフ型電極である。そして、DOプローブ3Cの測定ユニット5Cが備える溶存酸素測定用の測定回路51Cは、両極間に直流電圧を印加し、隔膜を透過した酸素が作用極で還元されるときに流れる電流を電流計で測定することにより溶存酸素に比例した拡散電流を検出する。
【0026】
次に、装置本体2について更に説明する。本実施例では、装置本体2は、互いに測定回路51が異なるプローブ3であるpHプローブ3A、ECプローブ3B、DOプローブ3Cのそれぞれのプローブ側コネクタ52を取り替えて接続可能な本体側コネクタ22を有する。また、装置本体2には、デジタル信号処理手段としてのデジタル信号処理回路23と、プローブ電源供給手段としてのプローブ電源供給回路24と、プローブ有無識別手段としてのプローブ有無識別回路25と、制御手段としてのCPU21と、操作手段としての操作キーなどの操作部26と、表示手段としての液晶ディスプレイなどの表示部27と、記憶媒体である本体メモリ28と、電源部29と、が設けられている。デジタル信号処理回路23、プローブ電源供給回路24、プローブ有無識別回路25、操作部26、表示部27、本体メモリ28は、それぞれ装置本体2のCPU21に接続されている。また、装置本体2の各部は、電源部29から供給される電力により動作する。本体側コネクタ22が備えた複数のピンは、それぞれデジタル信号処理回路23、プローブ電源供給回路24、プローブ有無識別回路25のうち対応する回路に接続されている。そして、プローブ側コネクタ52が備えた複数のピンは、それぞれ本体側コネクタ22が備えた複数のピンのうち対応するピンと接続される。
【0027】
デジタル信号処理回路23は、プローブ3からデジタル信号を取得して、測定結果を出力する処理、あるいは詳しくは後述する識別処理や計測制御切り替え処理などのために、装置本体2のCPU21に伝達する。プローブ電源供給回路24は、プローブ3に電力を供給する。プローブ3の各部は、プローブ電源供給回路24から供給される電力により動作する。プローブ有無識別回路25は、本体側コネクタ22におけるプローブ有無識別用のピンに対する、プローブ側コネクタ52におけるプローブ有無識別用のピンの接続の有無に基づいて、プローブ3の接続の有無を識別し、識別結果を示す信号を装置本体2のCPU21に伝送する。装置本体2のCPU21は、装置本体2における処理(動作)を統括的に制御する。特に、本実施例では、装置本体2のCPU21は、プローブ3から取得したデジタル信号に基づいてプローブ3の測定結果(pH値・電気伝導率値・溶存酸素濃度値・温度値など)を出力する処理を行う。操作部26は、使用者(操作者)による測定の開始・停止、各種設定の入力などの指示を受け付け、装置本体2のCPU21に伝送する。表示部27は、装置本体2のCPU21の制御のもと、測定結果の表示、各種設定のための設定画面の表示などを行う。装置本体2は、操作手段(操作部)及び表示手段(表示部)の機能を有するタッチパネルを有していてよい。本体メモリ28は、装置本体2における処理を制御する手順及びデータなどが記憶されている。本体メモリ28には、装置本体2に接続されたプローブ3(すなわち、センサユニット4)に応じて測定結果(pH値・電気伝導率値・溶存酸素濃度値・温度値など)の出力(表示など)を行うための手順及びデータ、及び装置本体2に接続されたプローブ3(すなわち、センサユニット4)に応じて操作部26による設定操作などを行うための手順及びデータなどが記憶されている。また、特に、本実施例では、本体メモリ28には、詳しくは後述する識別処理や計測制御切り替え処理を行うための手順やデータが記憶されている。さらに、本体メモリ28には、測定結果を記憶させることもできる。本実施例では、本体メモリ28としては、EPROMを用いた。本体メモリ28としては、不揮発性メモリ、フラッシュメモリ、電池バックアップ付きRAM、EPROM又はワンタイムROMなどを使用し得る。
【0028】
2.識別手段及び認識手段
本実施例では、センサユニット4には、識別手段を構成する記憶媒体であるセンサメモリ42が設けられている。本実施例では、センサメモリ42としては、不揮発性メモリを用いた。識別手段を構成する記憶媒体としては、不揮発性メモリ、フラッシュメモリ、電池バックアップ付きRAM、EPROM、ワンタイムROM、メモリ付きCPUなどを使用し得る。なお、識別手段は、記憶媒体を有して構成されることに限定されるものではない。識別手段は、上記のような記憶媒体;スイッチ、アナログスイッチ、抵抗器、コンデンサなどの物理量若しくは状態変更手段;電圧発生器、電流発生器、光発生器などの物理量発生手段;センサユニット4の物理的形状変化;又はバーコードなどを有して構成されていてもよい。
【0029】
一方、本実施例では、装置本体2には、識別手段に付帯された情報を読み取って認識するための認識手段(読み取り手段)が設けられている。本実施例では、装置本体2に設けられたCPU21が、センサメモリ42に記憶された情報を読み取って認識する認識手段の機能を有する。ここで、認識手段が識別手段に付帯された情報を認識するとは、装置本体2に設けられた認識手段が識別手段に付帯された情報を直接的に読み取って認識することに限定されるものではない。例えば、本実施例のように、計測装置1が、センサユニット4と、測定ユニット5と、装置本体2と、を有する構成では、測定ユニット5に設けられた認識手段が識別手段に付帯された情報を読み取って(更には認識して)、その読み取り結果(更には認識結果)を示す情報を装置本体2に設けられた認識手段が認識することも含む。また、測定ユニット5に設けられた認識手段による認識結果に基づく処理を、測定ユニット5に設けられた制御手段が行うこともできる。つまり、本実施例のように、計測装置1が、センサユニット4と、測定ユニット5と、装置本体2と、を有する構成では、認識手段は、測定ユニット5及び装置本体2のうち少なくとも一方に設けられていてよい。また、認識手段は、上記各種の識別手段に対応して、識別手段に付帯された情報を読み取って認識することが可能であればよい。例えば、識別手段が上記物理量若しくは状態変更手段である場合、認識手段はその物理量若しくは状態の変化(違い)を読み取って認識するための手段とし、識別手段が上記物理量発生手段であれば、認識手段はその物理量を受容して認識するための手段とし、識別手段が上記センサユニット4の物理的形状変化(違い)であれば、認識手段はその物理的形状変化を読み取って認識するための手段とし、識別手段が上記バーコードであれば、認識手段はバーコードを読み取って認識するための手段とすればよい。
【0030】
ただし、コスト、あるいは情報伝達の容易さ、更には付帯させることの可能な情報量などの点で、識別手段は、好ましくは、電子的なメモリで構成される記憶媒体である。本実施例では、識別手段を構成する記憶媒体と認識手段との間は有線にて通信可能とされているが、識別手段を構成する記憶媒体は、認識手段との間で無線にて通信可能な非接触型のものであってもよい。
【0031】
識別手段には、センサユニット4に関する識別情報が付帯される。特に、本実施例では、識別情報は、センサユニット4が正規品であることを示す、センサユニット4の種類(測定項目、型式など)に応じて予め定められた特定の識別コードの情報を含む。識別コードは、例えば、「123456」、「a1b2」といった文字列情報からなるものとすることができる。ここで、識別情報は、センサユニット4の種類(測定項目、型式など)の情報を含んでいてよい。例えば、識別情報は、所定の記述方式による、実質的にセンサユニット4の種類(測定項目、型式など)の情報のみからなる、あるいはセンサユニット4の種類(測定項目、型式など)の情報を一部に含む、識別コードの情報であってよい。また、識別コードは非公開とする。さらに、識別情報は、所定の暗号化方式により暗号化されていてよい。識別情報が所定の暗号化方式により暗号化されている場合は、認識手段は該識別情報を該暗号化方式に対応する所定の復号化方式により復号化することで読み取って認識するようにすればよい。
【0032】
3.基本的な動作
次に、本実施例におけるプローブ3を装置本体2に取り替えて接続した際の計測装置1の基本的な動作について説明する。
【0033】
本実施例では、装置本体2のCPU21は、センサメモリ42に記憶された識別情報に基づいて、測定結果を出力する処理を、装置本体2に接続されたプローブ3(すなわち、センサユニット4)に応じて自動的に切り替える。また、本実施例では、装置本体2のCPU21は、センサメモリ42に記憶された識別情報に基づいて、装置本体2に設けられた操作部26の機能を、装置本体2に接続されたプローブ3(すなわち、センサユニット4)に応じて自動的に切り替える。
【0034】
例えば、pHプローブ3Aのプローブ側コネクタ52Aが装置本体2の本体側コネクタ22に接続されると、プローブ側コネクタ52Aの各ピンと本体側コネクタ22の各ピンとが接続され、pHプローブ3Aと装置本体2との間でのデジタル信号の授受、装置本体2からpHプローブ3Aへの電力の供給、及びpHプローブ3Aの有無の識別が可能となる。そして、認識手段として機能する装置本体2のCPU21は、pHプローブ3Aの測定ユニット5Aを介して、識別手段としてのpHプローブ3Aのセンサユニット4Aが備えるセンサメモリ42Aに記憶されている識別情報を読み取り、装置本体2に接続されたプローブ3がpHプローブ3Aであること(すなわち、計測装置1に接続されたセンサユニット4がpH測定用のセンサユニット4Aであること)を認識する。また、装置本体2のCPU21は、pHプローブ3Aが接続されたことを認識すると、
図10(a)に示すように表示部27における表示をpH測定用の表示に切り替え、pH値、温度値などを表示させる。なお、測定結果を出力する処理は、表示部27により測定結果を表示する処理、装置本体2に設けられているか又は装置本体2に接続されたプリンタにより測定結果を印字して出力する処理、装置本体2に通信可能に接続されたパーソナルコンピュータなどの外部機器の表示手段により表示するなどのために外部機器に向けて測定結果に関する信号を出力する処理、あるいは装置本体2や外部機器に設けられるか又はこれらに接続される記憶媒体に測定結果を記録するために測定結果に関する信号を出力する処理の少なくとも1つであってよい。また、装置本体2のCPU21は、操作部26における使用者による操作による設定操作などの操作部26の機能を、pH測定に適応した機能、例えば、pH測定の開始・停止、pH電極の校正動作の開始・停止などに切り替える。
【0035】
同様にして、ECプローブ3Bが装置本体2に接続されると、装置本体2のCPU21は、測定ユニット5Bを介して、センサメモリ42Bに記憶されている識別情報を読み取って、ECプローブ3Bが接続されたこと(すなわち、電気伝導率測定用のセンサユニット4Bが接続されたこと)を認識する。そして、装置本体2のCPU21は、表示部27における表示を、
図10(b)に示すように電気伝導率測定用の表示(電気伝導率値、温度値など)に切り替え、操作部26の機能を電気伝導率測定用の機能に切り替える。
【0036】
また、同様にして、DOプローブ3Cが装置本体2に接続されると、装置本体2のCPU21は、測定ユニット5Cを介して、センサメモリ42Cに記憶されている識別情報を読み取って、DOプローブ3Cが接続されたこと(すなわち、溶存酸素測定用のセンサユニット4Cが接続されたこと)を認識する。そして、装置本体2のCPU21は、表示部27における表示を、
図10(c)に示すように溶存酸素測定用の表示(溶存酸素濃度値、温度値など)に切り替え、操作部26の機能を溶存酸素測定用の機能に切り替える。
【0037】
4.識別処理及び計測制御切り替え処理
次に、本実施例における識別処理及び計測制御切り替え処理について説明する。
【0038】
本実施例では、装置本体2のCPU21は、センサユニット4が計測装置1に接続された場合に、センサユニット4から識別情報を取得することに基づいて、接続されたセンサユニット4が正規品であるか否かを判別する識別処理と、識別処理の結果に応じて、センサユニット4を用いた計測の制御(計測制御)を、センサユニット4が正規品である場合に対応する第1のモードと、センサユニット4が正規品ではない場合に対応する第2のモードと、に切り替える切り替え処理(計測制御切り替え処理)と、を実行可能である。ここで、センサユニット4が計測装置1に接続された場合とは、装置本体2に接続されている測定ユニット5にセンサユニット4が接続された場合、測定ユニット5にセンサユニット4が接続されて形成されたプローブ3が装置本体2に接続された場合などを含む。
【0039】
図4は、センサユニット4が計測装置1に接続された際の計測装置1の動作の概略を示すフローチャートである。ここでは、主に、測定ユニット5にセンサユニット4が接続されて形成されたプローブ3が装置本体2に接続された場合を例として説明する。
【0040】
まず、装置本体2のCPU21は、プローブ有無識別回路25の識別結果を読み取り、プローブ3が装置本体2に接続されているか否かを判断して、プローブ3が接続されていると判断した場合は、測定ユニット5を介してセンサメモリ42からの識別情報の読み取りを行う(S101)。この動作は、プローブ3が装置本体2に接続された場合、プローブ3が装置本体2に接続された後に計測装置1の電源が投入された場合、又は計測装置1の電源が投入されるごとに行うことができる。
【0041】
次に、装置本体2のCPU21は、センサメモリ42から読み取った識別情報に基づいて、計測装置1に接続されているセンサユニット4が正規品であるか否かを判断する識別処理を実行する(S102)。本実施例では、装置本体2のCPU21は、識別処理において、センサメモリ42から読み取った識別情報としての予め定められた特定の識別コードが、本体メモリ28に記憶されている所定の条件を満たすか否かを判断し、該所定の条件を満たす場合(典型的には、センサメモリ42に記憶されている識別コードと本体メモリ28に記憶されている照合用の識別コードとが合致する場合)に、センサユニット4が正規品であると判別する。換言すれば、装置本体2のCPU21は、適正な識別コードがセンサメモリ42から取得されたか否かを判断し、取得された場合にセンサユニット4が正規品であると判別する。また、装置本体2のCPU21は、識別コードは読み取ることができたが所定の条件を満たさない場合(典型的には、センサメモリ42に記憶されている識別コードと本体メモリ28に記憶されている照合用の識別コードとが合致しない場合)、あるいは識別コードを読み取ることができない場合は、センサユニット4が正規品ではないと判断する。ここで、識別コードを読み取ることができない場合とは、センサメモリ42は設けられているが識別情報が所定の記述方式で記憶されていないため読み取り(認識)ができない場合、センサメモリ42自体が設けられていない場合などを含む。
【0042】
次に、装置本体2のCPU21は、S102でセンサユニット4が正規品であると判断した場合は、計測制御をセンサユニット4が正規品である場合に対応する第1のモードに切り替える計測制御切り替え処理を実行する(S103)。
【0043】
図5は、第1のモードに切り替える場合の動作(計測制御)の一例の概略を示すフローチャートである。
図4のS103において第1のモードに切り替える場合、装置本体2のCPU21は、前述のように、識別情報に基づいて、測定結果を出力する処理を、装置本体2に接続されたプローブ3(すなわち、センサユニット4)に応じて自動的に切り替え(S201)、装置本体2に設けられた操作部26の機能を、装置本体2に接続されたプローブ3(すなわち、センサユニット4)に応じて自動的に切り替える(S202)。例えば、pHプローブ3Aが装置本体2に接続されている場合は、装置本体2のCPU21は、表示部27における表示、操作部26における設定操作などの機能をpH測定用に切り替える(
図10(a))。同様に、ECプローブ3Bが接続されている場合は、表示部27における表示、操作部26における設定操作などの機能を電気伝導率測定用に切り替え(
図10(b))、DOプローブ3Cが接続されている場合は、表示部27における表示、操作部26における設定操作などの機能を溶存酸素測定用に切り替える(
図10(c))。
【0044】
また、本実施例では、センサメモリ42には、識別情報の他、センサユニット4の出力を測定値に変換するために必要な校正データや補正値などの情報(ここでは「計測用情報」ともいう。)が記憶されている。そして、
図4のS103において第1のモードに切り替える場合、装置本体2のCPU21は、測定ユニット5のCPU56に指示して、センサメモリ42からの計測用情報の読み取り(S203)、読み取った計測用情報の測定ユニットメモリ58(又は測定ユニット5のCPU56における記憶部)への記憶(S204)を行わせる。また、S201~S204の処理とほぼ同時に、測定ユニット5のCPU56は、測定回路51が生成したセンサユニット4の出力に応じたデジタル信号を読み込み、上述の計測用情報を用いて測定値(pH値・電気伝導率値・溶存酸素濃度値・温度値など)を算出して、その測定値を示すデジタル信号を装置本体2のCPU21に向けて伝送することができる。そして、装置本体2のCPU21は、測定ユニット5から取得したデジタル信号に応じて測定値を表示部27で表示するための信号を生成し、表示部27に測定値を表示させることができる。このように、センサユニット4が正規品である場合は、プローブ3が装置本体2に接続されると、ユーザーによる特別な操作を必要とすることなく、実質的に直ちにセンサユニット4を用いた計測が可能となる。
【0045】
上記計測用情報としては、例えば、次のものが挙げられる。
【0046】
(I)例えば、pHプローブ3AやDOプローブ3Cにおいては、使用する前に標準液などを用いてプローブ3(より詳細にはセンサユニット4)の特性を校正し、この校正結果に基づいて測定値を計算・補正することが必要である。そこで、センサメモリ42に、識別情報に加えて、計測用情報としてのセンサユニット4の検査時の校正データを記憶させておくことが可能である。例えば、センサメモリ42には、センサユニット4の製造時に識別情報が記憶され、センサユニット4の検査時に計測用情報としての校正データが記憶される。ここで、装置本体2のCPU21は、識別情報に基づいて、そのセンサユニット4が前回に使用していたセンサユニット4であるか否かを判断することができる。そして、装置本体2のCPU21は、センサユニット4が前回に使用していたセンサユニット4であると判断した場合は、以前にセンサメモリ42から読み込まれて測定ユニットメモリ58(又は測定ユニット5のCPU56における記憶部)に記憶されている、前回使用した校正データを使用することとすることができる。一方、装置本体2のCPU21は、センサユニット4が前回に使用していたセンサユニット4ではないと判断した場合は、センサメモリ42から校正データを読み出し、測定ユニットメモリ58(又は測定ユニット5のCPU56における記憶部)に記憶させることとすることができる。そして、測定ユニット5は、測定ユニットメモリ58(又は測定ユニット5のCPU56における記憶部)に記憶された校正データに基づいて、測定値の演算・補正を行うことができる。また、装置本体2のCPU21は、直接又は測定ユニット5を介して、センサメモリ42に対する新たな校正データなどのセンサユニット4に関する情報の書き込みを制御するように構成されていてよい。例えば、pHプローブ3AやDOプローブ3Cにおいては、必要に応じて、標準液を用いた所定の校正手順により校正データを取得することが行われる。例えば、センサユニット4を交換した後に最初にそのセンサユニット4を用いた測定を行う前、あるいは定期的に、センサユニット4の校正が行われる。この場合、装置本体2のCPU21は、取得した新たな校正データをセンサメモリ42に書き込む(更新する)ように制御することができる。
【0047】
(II)また、例えば、ECプローブ3Bにおいては、その感度を補正するための補正値であるセル定数の情報が必要となる。そこで、センサメモリ42に、識別情報に加えて、計測用情報として予めセル定数を記憶させておくことが可能である。例えば、センサメモリ42には、センサユニット4の製造時に識別情報が記憶され、センサユニット4の検査時に計測用情報としてのセル定数が記憶される。そして、測定ユニット5は、センサメモリ42から読み取られて測定ユニットメモリ58(又は測定ユニット5のCPU56の記憶部)に記憶されたセル定数に基づいて、測定値の演算・補正を行うことができる。
【0048】
(III)また、詳しくは後述するが、電位差測定用のプローブ3としては、pH電極を備えたpH測定用のセンサユニット4を有するものの他、pH電極以外のイオン電極(イオン電極)を備えたイオン測定用のセンサユニット4を有するものがある。例えば、センサユニット4がイオン電極を備えたイオン測定用のセンサユニット4の場合は、計測用情報として予めイオン価数をセンサメモリ42に記憶させておくことが可能である。そして、測定ユニット5は、センサメモリ42から読み取られて測定ユニットメモリ58(又は測定ユニット5のCPU56の記憶部)に記憶されたイオン価数に基づいて、測定値の演算処理を自動設定することができる。他の電極係数を持つセンサ(例えば、残留塩素電極)でも同様である。ここで、残留塩素電極の電極係数とは、DPD法の測定値と残留塩素電極の測定値とが一致するよう、残留塩素電極の測定値に乗ずる係数のことをいう(DPD法の測定値=残留塩素電極の測定値×電極係数)。
【0049】
(IV)また、例えば、サーミスタ式温度計では、温度測定の精度又は互換性を上げるためにサーミスタに補正抵抗を入れたり、又は同じ特性の素子を選択して使用したりすることが行なわれる。したがって、センサユニット4がサーミスタ(温度補償用の温度センサ、又は温度測定用の温度センサ)を備えている場合、センサメモリ42に、計測用情報としてサーミスタの特性データ、例えばB定数、公称抵抗値、温度テーブルなどのデータを記憶させておくことができる。そして、測定ユニット5は、センサメモリ42から読み取られて測定ユニットメモリ58(又は測定ユニット5のCPU56の記憶部)に記憶されたこれらのデータに基づいて、測定値の演算・補正を行なうことができる。なお、温度検出素子として、サーミスタ電極の代わりに白金測温抵抗体などの他の抵抗式測温体電極を使用した計測装置においても同様である。
【0050】
図4のフローチャートに戻って、装置本体2のCPU21は、S102でセンサユニットが正規品ではないと判断した場合は、計測制御をセンサユニット4が正規品ではない場合に対応する第2のモードに切り替える計測制御切り替え処理を実行する(S104)。
【0051】
図6は、第2のモードに切り替える場合の動作(計測制御)の一例の概略を示すフローチャートである。
図4のS104において第2のモードに切り替える場合、装置本体2のCPU21は、正規品ではないセンサユニット4を用いた計測を禁止する処理を行うことができる(S301)。そして、装置本体2のCPU21は、そのセンサユニット4が正規品ではなく、そのセンサユニット4を用いた計測は行えないことを示す情報を表示部27に表示する処理を行うことができる(S302)。
【0052】
S301における計測を禁止する処理としては、例えば、次のものが挙げられる。例えば、測定ユニット5のCPU56に測定値を求める処理を行わないように指示することができる。また、酸化還元電流測定用の測定ユニット5などのセンサユニット4に電圧を印加する測定ユニット5が用いられている場合に測定ユニット5からセンサユニット4への電圧の印加を停止(又は禁止)することができる。また、本実施例のように複数の異なる測定項目の測定が可能な計測装置1において表示部27の表示又は操作部26の機能の少なくとも一方の測定項目に応じた切り替えを行わないこととすることができる。
【0053】
また、S302における表示としては、例えば、
図11(a)に示すように、「センサが正規品ではありません。正規品ではないセンサを用いた計測はできません。」といったメッセージによるエラー表示を行うことができる。このように、正規品ではないセンサユニット4を用いた計測を禁止することは、正規品のセンサユニット4が比較的厳密な製品管理が必要なものであり、正規品ではないセンサユニット4を用いた場合の測定結果が予測できない、あるいは正規品ではないセンサユニット4を用いた場合に誤った測定が行われる可能性が比較的高い場合などに有効である。
【0054】
図7は、第2のモードに切り替える場合の動作(計測制御)の他の一例の概略を示すフローチャートである。
図4のS104において第2のモードに切り替える場合、装置本体2のCPU21は、正規品ではないセンサユニット4を用いた計測を制限付きで可能とする処理を行うことができる(S401)。そして、装置本体2のCPU21は、そのセンサユニット4が正規品ではなく、そのセンサユニット4を用いた計測は制限付きで可能であることを示す情報を表示部27に表示する処理を行うことができる(S402)。
【0055】
S402における計測を制限付きで可能とする処理としては、例えば、次のものが挙げられる。例えば、表示部27における測定結果の表示、装置本体2に設けられているか又は装置本体2に接続されたプリンタによる測定結果の印字、外部機器の表示手段における表示、あるいは装置本体2や外部機器に設けられるか又はこれらに接続される記憶媒体への測定結果の記録などの、測定結果を出力する処理において、正規品ではないセンサユニット4を用いて得られた測定結果であることを示す情報を測定結果と関係付けて表示、印字、あるいは記録することができる。また、センサメモリ42から所定の計測用情報が読み取れない場合に、一部の機能を使用不可とすることができる。ここで、センサメモリ42から所定の計測用情報が読み取れない場合とは、センサメモリ42に所定の計測用情報が記憶されていない場合(所定の記述方式で記憶されていないため読み取れない場合を含む)、対応する計測用情報は記憶されているがその計測用情報の使用が不適切である可能性がある場合などを含む。例えば、センサユニット4がサーミスタなどの温度補償用の温度センサや温度測定用の温度センサを備えている構成において、センサメモリ42に所定の計測用情報としてサーミスタの特性データ、例えばB定数、公称抵抗値、温度テーブルなどのデータが記憶されていない場合が考えられる。また、正規品のセンサユニット4に設けられたサーミスタの特性に鑑みて、正規品ではないセンサユニット4のセンサメモリ42に記憶されているサーミスタの特性データが適正ではない可能性が比較的高い場合が考えられる。このような場合に、温度センサの検出結果を用いる機能、例えば、温度測定値の出力、あるいは自動温度補償(ATC)の機能を使用不可とすることができる。
【0056】
また、S402における表示としては、例えば、上述のようにセンサユニット4が正規品ではないことを付して測定値を表示などする場合は、
図11(b)に示すように、「センサが正規品ではありません。測定精度が低下する場合があります。測定値には正規品ではないセンサが用いられたことが記録されます。」といったメッセージによる警告表示を行うことができる。また、上述のようにセンサユニット4が備える温度センサの検出結果を用いる機能を使用不可とする場合は、
図11(c)に示すように、「センサが正規品ではありません。自動温度補償(ATC)機能は無効です。別途温度を測定して温度補償を行う必要があります。」といったメッセージによる警告表示を行うことができる。このように、正規品ではないセンサユニット4を用いた計測を制限付きで可能とすることで、正規品ではないセンサユニット4を入手したユーザーは、センサユニット4が正規品ではなことを認識したうえで、自身が必要とする精度の範囲での測定を行うことが可能となる。
【0057】
図8は、第2のモードに切り替える場合の動作(計測制御)の更に他の一例の概略を示すフローチャートである。
図4のS104において第2のモードに切り替える場合、装置本体2のCPU21は、表示部27における表示により、センサメモリ42から読み取れない所定の計測用情報を、別途入力手段としての操作部26から入力することを促すことができる(S501)。次に、装置本体2のCPU21は、所定の計測用情報が入力されたか否かを判断する(S502)。そして、装置本体2のCPU21は、S502で所定の計測用情報が入力されたと判断した場合は、測定ユニット5のCPU56に指示して、入力された所定の計測用情報を測定ユニットメモリ58(又は測定ユニット5のCPU56の記憶部)に記憶させることができる(S503)。その後、装置本体2のCPU21は、
図7で説明した例の場合と同様のメッセージによる警告表示を行うなどした後に、計測を可能とする(S504)。このとき、装置本体2のCPU21は、正規品ではないセンサユニット4を用いた計測を、実質的に制限無しで可能(実質的に全ての機能を使用可能)としてもよいし、
図7で説明した例の場合と同様に制限付き(例えば、温度測定や自動温度補償の機能が無効)で可能としてもよい。一方、装置本体2のCPU21は、S502で所定の計測用情報が入力されないと判断した場合は(例えば入力されずに所定の時間が経過した場合や、入力操作をキャンセルする指示が入力された場合など)、
図6のS301、S302と同様に、正規品ではないセンサユニット4を用いた計測を禁止し(S505)、表示部27においてエラー表示を行う(S506)。
【0058】
S501で入力を促す所定の計測用情報としては、センサユニット4が電気伝導率測定用のセンサユニット4Bである場合のセル定数、センサユニット4がイオン測定用のセンサユニット4である場合のイオン価数などが挙げられる。この場合、S501では、
図12(a)に示すように、セル定数やイオン価数の入力を促す表示を表示部27において行うことができる。他の電極係数を持つセンサ(例えば、残留塩素電極)でも同様である。
【0059】
図9は、第2のモードに切り替える場合の動作(計測制御)の更に他の一例の概略を示すフローチャートである。
図4のS104において第2のモードに切り替える場合、装置本体2のCPU21は、
図12(b)に示すような表示部27における表示により、パス情報としてのパスコードを、入力手段としての操作部26から入力することを促すことができる(S601)。パスコードは、例えば、「345678」、「c2d3」といった文字列情報からなるものとすることができる。次に、装置本体2のCPU21は、パスコードが入力されたか否かを判断する(S602)。また、装置本体2のCPU21は、S602でパスコードが入力されたと判断した場合は、入力されたパスコードが所定のパスコードであるか否かを判断する(S603)。例えば、所定のパスコードは、装置本体2の正規のユーザーに提供される取扱説明書や、インターネットなどのコンピュータネットワークを通じて正規のユーザーに提供されるアカウント情報表示などを介して、予めユーザーに提供することができる。また、その所定のパスコードに対応する照合用のパスコードを本体メモリ28に記憶させておくことができる。装置本体2のCPU21は、入力されたパスコードが本体メモリ28に記憶されている照合用のパスコードと合致する場合に、入力されたパスコードが所定のパスコードが入力されたと判断し、合致しない場合に所定のパスコードではないと判断する。そして、装置本体2のCPU21は、S603で所定のパスコードであると判断した場合は、
図7で説明した例の場合と同様のメッセージによる警告表示を行うなどした後に、計測を可能とする(S604)。このとき、装置本体2のCPU21は、正規品ではないセンサユニット4を用いた計測を、実質的に制限無しで可能(実質的に全ての機能を使用可能)としてもよいし、
図7で説明した例の場合と同様に制限付き(例えば、温度測定や自動温度補償の機能が無効)で可能としてもよい。また、このとき、センサメモリ42から所定の計測用情報が読み取れる場合は、
図5で説明した正規品のセンサユニット4を用いる場合と同様にセンサメモリ42から所定の計測用情報を取得することができる。また、このとき、センサメモリ42から所定の計測用情報が読み取れない場合は、
図8で説明した例の場合と同様に別途ユーザーが所定の計測用情報の入力を行うようにすることができる。
【0060】
一方、装置本体2のCPU21は、S603で所定のパスコードではないと判断した場合は、S602の処理に戻って再度パスコードの入力を促すことができる。また、装置本体2のCPU21は、S602でパスコードが入力されないと判断した場合(例えば入力されずに所定の時間が経過した場合や、入力操作をキャンセルする指示が入力された場合など)、
図6のS301、S302と同様に、正規品ではないセンサユニット4を用いた計測を禁止し(S605)、表示部27においてエラー表示を行う(S606)。換言すれば、装置本体2のCPU21は、センサユニット4とは別の入力手段から適正なパスコードが取得されたか否かを判断し、取得された場合に計測を可能とし、取得されない場合に計測を禁止するパス処理を実行することができる。
【0061】
なお、以上の例において、センサユニット4が正規品ではない場合に必要となる情報の報知手段(エラー、警告などの報知手段)は、表示部27にメッセージを表示することに限定されるものではない。表示部27におけるメッセージの表示に代えて又は加えて、次のような報知手段を用いることができる。例えば、音声メッセージ、ビープ音、ブザー音などの音(警報)を装置本体2に設けられた発音手段としてのスピーカなどから発することができる。また、例えば、装置本体2に設けられた発光手段としての警告灯などの光の点灯や点滅を行うことができる。また、例えば、装置本体2に通信可能に接続された外部機器の表示手段、発音手段、あるいは発光手段などにより上記同様の報知を行うことができる。
【0062】
また、以上の例において、センサユニット4が正規品ではない場合に必要となる情報の入力手段(所定の計測用情報、パスコードなどの入力手段)は、操作部26から入力することに限定されるものではない。操作部26からの入力に代えて又は加えて、次のような入力手段を用いることができる。例えば、装置本体2に通信可能に接続された外部機器から入力することができる。このとき、外部機器の操作部からユーザーが手動で情報を入力するようにしてもよいし、外部機器にインストールされた、装置本体2の正規のユーザーに提供されたデータ収集プログラムなどの装置本体2に情報を入力する機能を備えたプログラムが入力するようにしてもよい。
【0063】
また、計測装置1は、正規品ではないセンサユニット4が接続された場合の上記各例の動作のうち複数の種類の動作を、例えばセンサユニット4の種類などに応じて選択して実行することが可能とされていてよい。
【0064】
また、以上の例では図示を省略しているが、本実施例のように複数の異なる測定項目の測定が可能な計測装置1では、正規品ではないセンサユニット4が接続された際に計測を可能とする場合には、表示部27の表示や操作部26の機能は、操作部26からのユーザーの操作により手動で切り替えるようになっていてよい。
【0065】
以上のようにして、本実施例によれば、単に正規品ではないセンサの使用を一律に禁止することなく、ユーザーが正規品ではないセンサを用いていることを認識でき、正規品ではないセンサを用いた場合の結果を十分に想定できるようにしたうえで、正規品ではないセンサの使用を可能とすることができる。これにより、ユーザーが正規品ではないセンサを不用意に用いることで想定外の測定結果となることを抑制して、安全に所望の精度の測定を行うことが可能となる。
【0066】
[実施例2]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の計測装置において、実施例1の計測装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して詳しい説明は省略する。本実施例では、主に、識別情報及びパス情報の他の例について説明する。
【0067】
1.識別情報
識別情報は、所定の規則に従って変化するものとすることができる。例えば、識別手段は、メモリ、CPU及びバッテリーを有して構成されるものとする。そして、CPUが識別情報を所定の規則に従って変化させて更新してメモリに記憶させるようにする。一例として、識別情報は、所定の規則として所定のタイミングごとに所定の値Nずつ増加する変数を含む識別コードとする。また、本体メモリ28に記憶される照合用の識別コードは、装置本体2のCPU21により対応する規則により所定のタイミングで所定の値Nずつ増加する変数を含む識別コードとする。上記所定のタイミングは、例えば、CPUが備えた時計機能を用いて、1月ごと、1日ごとなどとすることができる。この識別コードは、全体が変数で構成されていてもよいし、例えばセンサユニット4の種類(測定項目、型式など)の情報などからなる変化しない部分と、変数部分と、を含むものであってもよい。また、この識別コードの変数は、所定の上限値(リミット値)に達した場合に初期値に戻るようにすることができる。また、上記識別コード及び上記所定の規則は非公開とする。そして、装置本体2のCPU21は、センサユニット4が正規品であるか否かを判断する時点における変数に応じて、センサメモリ42に記憶された識別コードと本体メモリ28に記憶された照合用の識別コードとが合致する場合に、センサユニット4が正規品であると判断することができる。これにより、識別情報が偽装される可能性を低減して、識別情報に基づいて正規品の判別精度を高める(セキュリティを強化する)ことができる。
【0068】
また、識別情報は、識別コードのみではなく、複数の因子をチェックすることで正規品の判別を行うものとすることができる。いくつかの例について次に説明する。
【0069】
例えば、識別情報として、センサユニット4の種類(測定項目、型式など)の情報を含む識別コードと、センサユニット4の個体に固有の個別コード(シリアル番号などからなる製造番号など)と、を用いることができる。この場合、例えば、センサメモリ42には、識別情報として、識別コードと、個別コードと、が記憶される。また、例えば、本体メモリ28には、照合用の情報として、識別コードと、個々のセンサユニット4に割り振られる個別コードに関する情報(例えば、001A0001から999Z9999)までといった個別コードの範囲の情報など)と、が記憶される。そして、装置本体2のCPU21は、センサメモリ42に記憶された識別コード及び個別コードの両方が、それぞれ本体メモリ28に記憶された照合用の情報と合致する場合に、センサユニット4が正規品であると判断することができる。
【0070】
また、例えば、センサメモリ42に、センサユニット4が製造された時期を示す製造時期情報と、センサユニット4が計測装置1に初めて接続された時期を示す接続時期情報と、を記憶させることができる。つまり、センサユニット4は、製造された後に、メーカーの手順に従ったある期間内に計測装置1に接続されて検査が行われることがある。この検査に用いられる計測装置1は、ユーザーに提供される計測装置1と実質的に同一のものであってもよいし、少なくともセンサユニット4の所定の検査(校正であってもよい)を行う機能を備えた、ユーザーに提供される計測装置1に対応するものであってもよい。また、製造時期情報は、製造年月日、製造年月の情報などとすることができる。また、接続時期情報は、接続(検査)年月日、接続(検査)年月の情報などとすることができる。一般に、あるセンサユニット4に関して製造時期情報が示す時期と接続時期情報が示す時期とはある範囲内の比較的近い時期である関係を有する。したがって、製造時期情報と接続時期情報との比較結果を、正規品の判別のために用いることができる。この場合、例えば、センサメモリ42には、識別コードと、個別コードと、製造時期情報と、接続時期情報と、が記憶される。また、例えば、本体メモリ28には、照合用の情報として、識別コードと、個別コードと、製造時期情報が示す時期と接続時期情報が示す時期との所定の関係に関する情報(両時期の間の期間を示す閾値など)と、が記憶される。そして、装置本体2のCPU21は、センサメモリ42に記憶された識別コード及び個別コードの両方がそれぞれ本体メモリ28に記憶された照合用の情報と合致し、かつ、センサメモリ42に記憶された製造時期情報が示す時期と接続時期情報が示す時期との関係が本体メモリ28に記憶された所定の関係を満たす(例えば両時期の間の期間が閾値以下である)場合に、センサユニット4が正規品であると判断することができる。なお、識別コード及び上記両時期間の関係のみに基づいて正規品の判別を行うようにしてもよい。また、製造時期情報は、個別コードの一部を構成していてもよい。
【0071】
また、例えば、pH電極を備えたセンサユニット4など、取引証明に使用する場合には計量法による検定が必要なセンサユニット4がある。このようなセンサユニット4の場合、センサメモリ42に計量法に基づく承認に関する情報(計量法に基づく電極の認証番号の情報など)を記憶させ、これを正規品の判別のために用いることができる。この場合、例えば、センサメモリ42には、識別コードと、個別コードと、製造時期情報と、接続時期情報と、計量法に基づく承認に関する情報と、が記憶される。また、本体メモリ28には、照合用の情報として、識別コードと、個別コードと、製造時期情報が示す時期と接続時期情報が示す時期との所定の関係に関する情報と、計量法に基づく承認に関する情報と、が記憶される。そして、装置本体2のCPU21は、センサメモリ42に記憶された識別コード、個別コード、及び製造時期情報が示す時期と接続時期情報が示す時期との関係が、それぞれ本体メモリ28に記憶された所定の条件を満たし、かつ、センサメモリ42に記憶された計量法に基づく承認に関する情報が本体メモリ28に記憶された照合用の情報と合致する場合に、センサユニット4が正規品であると判断することができる。なお、計量法に基づく承認に関する情報は、識別コードのみと組み合わせて用いたり、識別コード及び個別コードのみと組み合わせて用いたりすることもできる。
【0072】
このように、識別コードに加えて、個別コード、製造時期情報と接続時期情報との関係の情報、あるいは計量法に基づく承認に関する情報を用いて二重、三重、四重のチェックを行うことで、正規品の判別精度を高める(セキュリティを強化する)ことができる。
【0073】
2.パス情報
実施例1では、計測装置1に正規品ではないセンサユニット4が接続された場合に、パス情報の入力を条件としてそのセンサユニット4を用いた計測を可能とする例について説明した。パス情報は、ある正規品ではないセンサユニット4が計測装置1に接続されている間は本体メモリ28に保持されて、再入力無しでそのセンサユニット4を用いた計測を可能とすることができる。別法として、ある正規品ではないセンサユニット4が計測装置1に継続して接続されていても、パス情報の再入力を必要とすることができる。例えば、所定の期間(例えば年1回、月1回など)ごとに、実施例1で説明したのと同様にしてパス情報の再入力を必要とすることができる。また、計測装置1の電源を投入するごとに実施例1で説明したのと同様にしてパス情報の再入力を必要とすることができる。このようにパス情報の再入力を必要とすることで、例えば、複数の異なる操作者が計測装置1に接続されているセンサユニット4が正規品であると誤認する可能性を低減して、より安全に所望の精度の測定を行うことを可能とすることができる。
【0074】
[実施例3]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の計測装置において、実施例1の計測装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して詳しい説明は省略する。本実施例では、主に、センサユニットの他の例について説明する。
【0075】
(I)上述の実施例では、電位差測定用のプローブ3のセンサユニット4は、pH電極を有するものであるものとして説明したが、pH電極、酸化還元電位差測定電極(ORP電極)、及びイオン電極のうち少なくとも1つを含む電位差測定電極から選択される電極を有するものであってよい。pH電極以外のイオン電極(イオン電極)としては、ナトリウムイオン電極、塩化物イオン電極、臭化物イオン電極、よう化物イオン電極、シアン化物イオン電極、カドミウムイオン電極、銅イオン電極、銀イオン電極、硫化物イオン電極、フッ化物イオン電極、カリウムイオン電極、カルシウムイオン電極、硝酸イオン電極、アンモニア電極、炭酸ガス電極などが挙げられる。その他の利用可能なイオン電極であってもよい。
【0076】
(II)上述の実施例では、酸化還元電流測定用のプローブ3のセンサユニット4は、溶存酸素電極を有するものであるものとして説明したが、溶存酸素電極、残留塩素電極、溶存オゾン電極、二酸化塩素電極、亜塩素酸イオン電極、過酸化水素電極、及び溶存水素電極のうち少なくとも1つを含む酸化還元電流測定電極から選択される電極を有するものであってよい。これらの酸化還元電流測定電極は、例えば、隔膜型又は露出型のポーラログラフ式、あるいは、ガルバニ式の酸化還元電流測定電極とされる。その他の利用可能な酸化還元電流測定電極であってもよい。
【0077】
(III)計測装置1は、電位差測定用のプローブ3、電気伝導率測定用のプローブ3、酸化還元電流測定用のプローブ3のうち少なくとも1つの代わりに、又はこれらに加えて、センサユニット4として光学センサを備えたプローブ3を接続して使用可能なものであってよい。光学センサとしては、濁度センサ、光学式溶存酸素センサ、吸光度センサ、蛍光センサが挙げられる。その他の利用可能な光学センサであってもよい。
【0078】
濁度センサとしては、例えば90°散乱光測定方式のものが挙げられる。濁度センサは、例えば、センサユニット4に投光部及び受光部を有し、センサユニット4に設けた試料液導入部に導入された試料液に投光部からの光を導入し、試料液により散乱された光を受光部にて受光した量に応じた信号を出力する。測定ユニット5に設ける濁度測定用の測定回路51は、上述のように濁度センサが試料液に光を投入して90°方向の散乱光の受光量に応じて発する信号を検出する。その他の方式のものを利用することもできる。
【0079】
吸光度センサとしては、例えば、センサユニット4に投光部、受光部、試料液導入部を有し、試料液導入部内の試料液に投光部から光を投入し、試料液を透過した光を受光部にて検出した光量に応じた信号を出力する。測定ユニット5に設ける吸光度測定用の測定回路51は、投光部から試料液に光を照射させて、上述のようにして受光部が試料液透過光を受光して発する信号を検出する。
【0080】
また、蛍光センサは、例えば、センサユニット4に励起刺激発生部としての励起光投光部と、受光部とを有し、センサユニット4に設けた試料液導入部に導入された試料液に励起光投光部から励起光を照射して、試料液が発する蛍光を受光部にて受光した光量に応じた信号を出力する。測定ユニット5に設ける蛍光測定用の測定回路51は、励起光投光部から励起光を試料液に照射させて、上述のように蛍光センサが試料液の発する蛍光を受光した量に応じて発する信号を検出する。なお、光学式溶存酸素センサとして、蛍光色素の蛍光が溶存酸素によって妨げられることによる蛍光の持続時間の短縮、あるいは蛍光の強度の低下を検出するものが知られている。この光学式溶存酸素センサの構成は、上記蛍光センサと概略同様であるが、上記試料液導入部に代えて、酸素透過膜と、特定の波長の励起光により蛍光を発する蛍光色素が固定された蛍光色素膜と、を有し、蛍光色素膜に励起光を照射し、蛍光を発生させ、蛍光の持続時間や強度を検出するように構成されている。
【0081】
(IV)計測装置1は、電位差測定用のプローブ3、電気伝導率測定用のプローブ3、酸化還元電流測定用のプローブ3、光学的測定対象用のプローブ3のうち少なくとも1つの代わりに、又はこれらに加えて、センサユニット4として圧力センサ(圧力電極)を備えたプローブ3を接続して使用可能なものであってよい。圧力センサは、大気圧測定、隔膜式電極と共に用いてこの電極の気圧補正、ダムなどにおける水深測定などに利用される。
【0082】
圧力センサとしては、例えば、当業者には周知のダイアフラム式の圧力センサ、半導体圧力センサなどが挙げられる。ダイアフラム式の圧力センサは、感圧素子としてプローブ本体内にダイアフラムを有し、このダイアフラムの変位を電気量に変換し出力する。例えば、ダイアフラムを接地可動電極とし、その両側に絶縁固定電極を配置し、定周波電源によりダイアフラムの変位をコンデンサの両端電圧の比として変換することにより、静電容量式にダイアフラムの変位を電気信号にて出力する方式が周知である。また、半導体圧力センサは、感圧素子として、ヘリウムなどの一定圧力のガスを封入した空間に、Siダイアフラムの上にピエゾ抵抗素子を形成してこれをブリッジ結合したものなどの感圧チップを内蔵したものが周知である。これらの圧力センサを接続可能とする場合、測定ユニット5に設ける圧力測定用の測定回路51は、感圧素子に電圧を印加して、コンデンサの両端電圧の比又は電気抵抗の変化を検出する。その他の方式の圧力センサであってもよい。
【0083】
(V)また、計測装置1は、センサユニット4として温度センサを備える単独のプローブ3を接続して使用可能とすることができる。
【0084】
[その他]
以上、本発明を具体的な実施例に即して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
【0085】
例えば、上述の実施例では、センサユニットから取得したアナログ信号を測定ユニットの測定回路でデジタル信号に変換し、測定ユニットのCPUがそのデジタル信号と、校正データや補正値などの計測用情報と、に基づいて測定値を演算して求めた。これに対して、装置本体のCPUが測定ユニットの測定回路から取得したデジタル信号と、計測用情報と、に基づいて測定値を演算して求めるようにしてもよい。この場合、計測用情報がセンサメモリに記憶されている場合は、装置本体のCPUがセンサメモリから計測用情報を読み込んで、本体メモリ(又は装置本体のCPUの記憶部)に記憶させて用いることができる。さらには、測定に関する温度補償演算や、単位の設定変更に伴う単位の変換などについても、センサユニットのCPUと装置本体のCPUとのいずれに演算を行う役割を与えてもよい。
【0086】
また、上述の実施例では、計測装置は、センサユニットが測定ユニットに対して着脱可能な構成とされていたが、上述の実施例におけるセンサユニットの機能と測定ユニットの機能とを有する一体型のセンサが装置本体に対して着脱可能とされていてもよい。この場合、その一体型のセンサが、計測装置に着脱可能なセンサを構成する。また、この場合、例えば、センサメモリは、その一体型のセンサが有するプリント基板に設けられ、そのプリント基板と同一のプリント基板上に測定回路などの他の要素が設けられていてよい。なお、正規品においては上述の実施例と同様にセンサユニットと測定ユニットとが着脱可能とされているが、正規品ではないものにおいては上述の実施例におけるセンサユニットに対応する部分と測定ユニットに対応する部分とが一体化されている場合も考えられる。
【0087】
また、計測装置は、装置本体に対して着脱可能なプローブ(例えば、上述の実施例における測定ユニット、あるいは上記一体型のセンサ)に測定回路が設けられ、該プローブと装置本体との間で測定結果に関するデジタル信号が伝送される構成に限定されるものではない。計測装置は、装置本体に測定回路が設けられており、装置本体に対して着脱可能なセンサと装置本体との間で測定結果に関するアナログ信号(電極の検出信号)が伝送される構成であってもよい。この場合も、センサ(ケーブルやコネクタを含む。)に例えばメモリを有して構成される識別手段を設け、装置本体にこの識別手段に付帯された識別情報を読み取って認識する認識手段を設けることで、上述の実施例と同様の作用により、上述の実施例と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0088】
1 計測装置
2 装置本体
3 プローブ
3A pH測定用のプローブ(第1のプローブ)
3B 電気伝導率測定用のプローブ(第2のプローブ)
3C 溶存酸素測定用のプローブ(第2のプローブ)
4 センサユニット(計測装置に着脱可能なセンサ)
5 測定ユニット
21 装置本体のCPU
22 本体側コネクタ
42 センサメモリ(識別手段)
51 測定回路
52 プローブ側コネクタ