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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042468
(43)【公開日】2022-03-14
(54)【発明の名称】切断工具
(51)【国際特許分類】
   B26B 3/00 20060101AFI20220307BHJP
【FI】
B26B3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021003996
(22)【出願日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】P 2020147402
(32)【優先日】2020-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 翔平
【テーマコード(参考)】
3C061
【Fターム(参考)】
3C061AA02
3C061AA26
3C061AA27
3C061AA31
3C061BA35
3C061EE40
(57)【要約】
【課題】異なる径の長尺体をより簡単に切断することを可能とする切断工具を提供する。
【解決手段】切断工具100は、軸方向に延伸する回動軸103を介して互いに回動可能に接続され、長尺体10を内側に挟んで配置するための配置空間104を間に形成し、長尺体10を配置空間104に導入するための開閉動作可能な開閉端105を有する一対の分割体101,102と、一対の分割体101,102の少なくとも一方に設けられ、長尺体10を切断するために配置空間104に臨む切断刃111と、一対の分割体101,102の開閉端側に形成され、開閉端105を介して配置空間104に進入する長尺体10によって押圧されることにより、一対の分割体101,102を開放方向に回動させる駆動部106と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延伸する回動軸を介して互いに回動可能に接続され、長尺体を内側に挟んで配置するための配置空間を間に形成し、前記長尺体を前記配置空間に導入するための開閉動作可能な開閉端を有する一対の分割体と、
前記一対の分割体の少なくとも一方に設けられ、前記長尺体を切断するために前記配置空間に臨む切断刃と、
前記一対の分割体の開閉端側に形成され、前記開閉端を介して前記配置空間に進入する前記長尺体によって押圧されることにより、前記一対の分割体を開放方向に回動させる駆動部と、を備えることを特徴とする切断工具。
【請求項2】
前記駆動部は、前記一対の分割体の外面上で前記開閉端に連設され、前記一対の分割体の外面に当接する前記長尺体を前記開閉端に案内する案内面を有することを特徴とする請求項1に記載の切断工具。
【請求項3】
前記長尺体が、長尺方向に交互に連続する凹部および凸部を有する波付管である場合において、前記案内面には、前記凹部に入り込むように突出する案内突起が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の切断工具。
【請求項4】
前記一対の分割体の少なくとも一方に設けられ、前記分割体の内面から前記配置空間に向けて延在し、前記凹部に入り込むように形成されたガイド片をさらに備え、
前記ガイド片および前記案内突起の軸方向における位置が一致していることを特徴とする請求項3に記載の切断工具。
【請求項5】
前記長尺体が、長尺方向に交互に連続する凹部および凸部を有する波付管である場合において、前記切断刃の軸方向の両側に設けられ、前記波付管の隣接する前記凹部に入り込む一対のガイド片をさらに備えることを特徴とする請求項1から4に記載の切断工具。
【請求項6】
前記一対の分割体を閉鎖方向に付勢する付勢手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の切断工具。
【請求項7】
前記一対の分割体には、軸方向に延在し、前記一対の分割体を閉鎖方向に押圧するための把持部が設けられていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の切断工具。
【請求項8】
前記切断刃は、前記分割体における軸方向の一端側に片寄って設けられていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の切断工具。
【請求項9】
前記一対の分割体の各々に前記切断刃が設けられ、前記各切断刃は、軸方向の同じ位置に配置されているとともに、前記各分割体の開閉端側に片寄って配置されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の切断工具。
【請求項10】
前記一対の分割体の各々に前記切断刃が設けられ、
前記配置空間は、第1の径および第1中心点を有する第1長尺体と、第1の径よりも大きい第2の径および第2中心点を有する第2長尺体とを配置可能に構成され、
前記第1長尺体が前記配置空間に配置されたとき、前記一対の切断刃が前記第1長尺体に2つの接点で接し、一方の接点、前記第1中心点および他方の接点を順に結ぶ2本の直線が第1中心角をなし、
前記第2長尺体が前記配置空間に配置されたとき、前記一対の切断刃が前記第2長尺体に2つの接点で接し、一方の接点、前記第2中心点および他方の接点を順に結ぶ2本の直線が第2中心角をなし、
前記第2中心角が前記第1中心角よりも180度に近づくように、前記一対の切断刃が位置していることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の切断工具。
【請求項11】
軸方向に延伸する回動軸によって互いに回動可能に軸支され、長尺体を内側に挟んで配置するための配置空間を形成し、前記長尺体を前記配置空間に導入するための開閉動作可能な開閉端を有する一対の分割体と、
前記一対の分割体の少なくとも一方に設けられ、前記長尺体を切断するために前記配置空間に臨む切断刃と、を備え、
前記一対の分割体には、軸方向に延在し、前記一対の分割体を閉鎖方向に押圧するための把持部が設けられていることを特徴とする切断工具。
【請求項12】
軸方向に延伸する回動軸によって互いに回動可能に軸支され、長尺体を内側に挟んで配置するための配置空間を形成し、前記長尺体を前記配置空間に導入するための開閉動作可能な開閉端を有する一対の分割体と、
前記一対の分割体の少なくとも一方に設けられ、前記長尺体を切断するために前記配置空間に臨む切断刃と、を備え、
前記一対の分割体には、軸方向に延在し、前記一対の分割体を閉鎖方向に把持するための把持部が設けられ、
前記一対の分割体は、前記長尺体を内側に挟むように前記配置空間に配置した状態で、前記長尺体が前記分割体の軸方向の両端を貫くように、前記長尺体に対する軸方向への相対移動が可能であり、
前記切断刃は、前記長尺体が前記配置空間に配置された状態での前記長尺体の軸方向への相対移動によって、前記長尺体を軸方向に切り割り可能に構成されていることを特徴とする切断工具。
【請求項13】
前記切断刃は、前記分割体から内側に突出する基板部と、前記基板部における前記配置空間に臨む端縁に形成された刃部とを備え、
前記基板部の突出方向の先端には、前記刃部を部分的に被覆する被覆部材が設けられていることを特徴とする請求項12に記載の切断工具。
【請求項14】
前記配置空間は、第1の径を有する第1波付管と、第1の径よりも大きい第2の径を有する第2波付管とを配置可能に構成され、前記第1または第2波付管が前記配置空間に配置された状態での前記切断刃の軸方向への相対移動によって、前記第1または第2波付管の周方向の一箇所に長手方向に連続するスリットを形成するように切り割り可能であることを特徴とする請求項12または13に記載の切断工具。
【請求項15】
前記一対の分割体のうちの少なくとも一方の開閉端側には、前記切断刃の軸方向位置を表示する位置表示部、および/または、前記配置空間に配置される前記長尺体の端部の配置位置を指示する配置位置指示部が設けられていることを特徴とする請求項12から14のいずれか一項に記載の切断工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺体、特には波付管を切断するための切断工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配管に用いられる波付管などの長尺体を切断する際、一般的に、カッターやはさみが用いられていた。しかしながら、カッターやはさみでは、熟練者であっても一定の断面状態で長尺体を切断することは困難であった。そこで、種々の切断工具が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1は、蛇腹状の円形鞘管を切断することができる鞘管切断治具を開示する。以下、当該段落において、()内に特許文献1の符号を示す。特許文献1の第1実施例である鞘管切断治具(C1)は、蛇腹状の鞘管(PO)を嵌合可能な凹部(11)を有する略U字形状に形成されており、凹部(11)の縁には、鞘管(PO)の谷部(P1)と符合する形状の凸部(12)が2条平行に設けられていると共に、鞘管(PO)を切断可能な刃(13)が鞘管(PO)の山部(P2)と対応する位置、つまり、2条の凸部(12)の間に設けられている。他方、特許文献1の第2実施例である鞘管切断治具(C2)は、蛇腹状の鞘管(PO)を挿通可能な円形穴を有するリング形状に接合可能な一対の半割り部材(2,2)をピン(3)でヒンジ結合させて構成されており、各半割り部材(2,2)は、ドーナツ形の部材を径方向に等分した形状のドーナツ部(21)と、そのドーナツ部(21)の外周に設けられた把手部(22)とで構成されている。両半割り部材(2,2)は、ドーナツ部(21)の円形穴縁部(23)に、鞘管(PO)の谷部(P1)と嵌合可能な凸部(24)が2列設けられていると共に、鞘管(PO)を長さ方向に切断可能な刃(25)が鞘管(PO)の山部(P2)と対応する位置、つまり、2列の凸部(24,24)の間に設けられている。すなわち、鞘管切断治具(C2)は、両方の半割り部材(2,2)の把手(22,22)を合せると、両方の半割り部材(2,2)のドーナツ部(21,21)がリング形状に接合されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-213761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の第1実施例の鞘管切断治具(切断工具)は、可動しないC字形状で形成され、特定の径の管しか切断することができないことから、利便性が悪い。これに対し、特許文献1の第2実施例の鞘管切断治具(切断工具)は、一対の半割り部材をヒンジ結合することにより、異なる径の管を切断可能となっている。鞘管切断治具で管を切断する際、ユーザーは、鞘管切断治具の一対の把手部を両手で操作して、一対の半割り部材を開き、管を一対の半割り部材の間に配置する。そして、一対の把手部を合わせるように両手で操作することで、一対の半割り部材を閉じて刃を管に接触させる。さらに、一対の把手部を手で掴んで閉状態を維持したまま、鞘管切断治具を管に対して相対的に回転させることにより、管を切断する。このように、ユーザーは、鞘管切断治具で管を切断するために、突起状に延びる一対の把手部を何度も握り直したり、何度も操作したりすることが必要であった。そのため、ユーザーが切断作業を簡単にできないことが問題であった。すなわち、従来の切断工具は、ユーザーの使い勝手に十分に配慮したものではなく、その操作性のさらなる改善が求められている。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、異なる径の長尺体をより簡単な操作で切断することを可能とする切断工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の切断工具は、軸方向に延伸する回動軸を介して互いに回動可能に接続され、長尺体を内側に挟んで配置するための配置空間を間に形成し、前記長尺体を前記配置空間に導入するための開閉動作可能な開閉端を有する一対の分割体と、
前記一対の分割体の少なくとも一方に設けられ、前記長尺体を切断するために前記配置空間に臨む切断刃と、
前記一対の分割体の開閉端側に形成され、前記開閉端を介して前記配置空間に進入する前記長尺体によって押圧されることにより、前記一対の分割体を開放方向に回動させる駆動部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の切断工具は、請求項1に記載の切断工具において、前記駆動部は、前記一対の分割体の外面上で前記開閉端に連設され、前記一対の分割体の外面に当接する前記長尺体を前記開閉端に案内する案内面を有することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の切断工具は、請求項2に記載の切断工具において、前記長尺体が、長尺方向に交互に連続する凹部および凸部を有する波付管である場合において、前記案内面には、前記凹部に入り込むように突出する案内突起が形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の切断工具は、請求項3に記載の切断工具において、前記一対の分割体の少なくとも一方に設けられ、前記分割体の内面から前記配置空間に向けて延在し、前記凹部に入り込むように形成されたガイド片をさらに備え、前記ガイド片および前記案内突起の軸方向における位置が一致していることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の切断工具は、請求項1から4のいずれか一項に記載の切断工具において、前記長尺体が、長尺方向に交互に連続する凹部および凸部を有する波付管である場合において、前記切断刃の軸方向の両側に設けられ、前記波付管の隣接する前記凹部に入り込む一対のガイド片をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の切断工具は、請求項1から5のいずれか一項に記載の切断工具において、前記一対の分割体を閉鎖方向に付勢する付勢手段をさらに備えることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の切断工具は、請求項1から6のいずれか一項に記載の切断工具において、前記一対の分割体には、軸方向に延在し、前記一対の分割体を閉鎖方向に押圧するための把持部が設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の切断工具は、請求項1から7のいずれか一項に記載の切断工具において、前記切断刃は、前記分割体における軸方向の一端側に片寄って設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の切断工具は、請求項1から8のいずれか一項に記載の切断工具において、前記一対の分割体の各々に前記切断刃が設けられ、前記各切断刃は、軸方向の同じ位置に配置されているとともに、前記各分割体の開閉端側に片寄って配置されていることを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載の切断工具は、請求項1から9のいずれか一項に記載の切断工具において、前記一対の分割体の各々に前記切断刃が設けられ、
前記配置空間は、第1の径および第1中心点を有する第1長尺体と、第1の径よりも大きい第2の径および第2中心点を有する第2長尺体とを配置可能に構成され、
前記第1長尺体が前記配置空間に配置されたとき、前記一対の切断刃が前記第1長尺体に2つの接点で接し、一方の接点、前記第1中心点および他方の接点を順に結ぶ2本の直線が第1中心角をなし、
前記第2長尺体が前記配置空間に配置されたとき、前記一対の切断刃が前記第2長尺体に2つの接点で接し、一方の接点、前記第2中心点および他方の接点を順に結ぶ2本の直線が第2中心角をなし、
前記第2中心角が前記第1中心角よりも180度に近づくように、前記一対の切断刃が位置していることを特徴とする。
【0017】
請求項11に記載の切断工具は、軸方向に延伸する回動軸によって互いに回動可能に軸支され、長尺体を内側に挟んで配置するための配置空間を形成し、前記長尺体を前記配置空間に導入するための開閉動作可能な開閉端を有する一対の分割体と、
前記一対の分割体の少なくとも一方に設けられ、前記長尺体を切断するために前記配置空間に臨む切断刃と、を備え、
前記一対の分割体には、軸方向に延在し、前記一対の分割体を閉鎖方向に押圧するための把持部が設けられていることを特徴とする。
【0018】
請求項12に記載の切断工具は、軸方向に延伸する回動軸によって互いに回動可能に軸支され、長尺体を内側に挟んで配置するための配置空間を形成し、前記長尺体を前記配置空間に導入するための開閉動作可能な開閉端を有する一対の分割体と、
前記一対の分割体の少なくとも一方に設けられ、前記長尺体を切断するために前記配置空間に臨む切断刃と、を備え、
前記一対の分割体には、軸方向に延在し、前記一対の分割体を閉鎖方向に押圧するための把持部が設けられ、
前記一対の分割体は、前記長尺体を内側に挟むように前記配置空間に配置した状態で、前記長尺体が前記分割体の軸方向の両端を貫くように、前記長尺体に対する軸方向への相対移動が可能であり、
前記切断刃は、前記長尺体が前記配置空間に配置された状態での前記長尺体の軸方向への相対移動によって、前記長尺体を軸方向に切り割り可能に構成されていることを特徴とする。
【0019】
請求項13に記載の切断工具は、請求項12に記載の切断工具において、前記切断刃は、前記分割体から内側に突出する基板部と、前記基板部における前記配置空間に臨む端縁に形成された刃部とを備え、
前記基板部の突出方向の先端には、前記刃部を部分的に被覆する被覆部材が設けられていることを特徴とする。
【0020】
請求項14に記載の切断工具は、請求項12または13に記載の切断工具において、前記配置空間は、第1の径を有する第1波付管と、第1の径よりも大きい第2の径を有する第2波付管とを配置可能に構成され、前記第1または第2波付管が前記配置空間に配置された状態での前記切断刃の軸方向への相対移動によって、前記第1または第2波付管の周方向の一箇所に長手方向に連続するスリットを形成するように切り割り可能であることを特徴とする。
【0021】
請求項15に記載の切断工具は、請求項12から14のいずれか一項に記載の切断工具において、前記一対の分割体のうちの少なくとも一方の開閉端側には、前記切断刃の軸方向位置を表示する位置表示部、および/または、前記配置空間に配置される前記長尺体の端部の配置位置を指示する配置位置指示部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載の切断工具によれば、一対の分割体の開閉端側に形成された駆動部が、開閉端を介して配置空間に進入する長尺体によって押圧されることにより、一対の分割体を開放方向に回動駆動する。すなわち、ユーザーは、長尺体を開閉端側の駆動部に対して押し付けるように切断工具を操作することにより、長尺体を一対の分割体の間の配置空間に導入することが可能である。したがって、本発明の切断工具は、ユーザーによる操作性を大幅に改善するものである。
【0023】
請求項2に記載の切断工具によれば、請求項1の発明の効果に加えて、ユーザーが案内面に対して長尺体を押し付けることにより、開放した開閉端を介して長尺体を配置空間へと案内することが可能である。したがって、本発明の切断工具は、ユーザーによる操作性を大幅に改善するものである。
【0024】
請求項3に記載の切断工具によれば、請求項2の発明の効果に加えて、案内突起が波付管の凹部に入り込むことで、案内面に当接した波付管を長尺方向に係止することができる。これにより、波付管を案内面から長尺方向にずれることを防止し、波付管を容易に位置決めすることができる。
【0025】
請求項4に記載の切断工具によれば、請求項3の発明の効果に加えて、ガイド片および案内突起の軸方向における位置が一致していることにより、波付管が案内面に案内されて開閉端から配置空間へと導入されるとき、波付管の凹部が案内突起からガイド片へとスライドし、波付管が長尺方向にずれることが抑えられる。
【0026】
請求項5に記載の切断工具によれば、請求項1から4のいずれかの発明の効果に加えて、
一対のガイド片が、切断刃の軸方向の両側から波付管の凸部を挟みこむことにより、切断時に、波付管が長尺方向にずれることを防止することができる。また、ガイド片が波付管に長尺方向に係合していることから、切断後、波付管の切断片が切断工具から抜け落ちることが防止される。
【0027】
請求項6に記載の切断工具によれば、請求項1から5のいずれかの発明の効果に加えて、付勢手段が一対の分割体を閉鎖方向に付勢することにより、使用しない状態で切断工具をコンパクトな形態に維持することができる。また、開閉端を開放させて長尺体を配置空間に配置した後、付勢手段の付勢力によって一対の分割体を自動的に閉鎖方向に回動させ、切断刃を長尺体に接触させることができる。さらに、切断後、付勢手段によって閉鎖状態が維持されるので、長尺体の切断片が切断工具から抜け落ちることが防止される。
【0028】
請求項7に記載の切断工具によれば、請求項1から6のいずれかの発明の効果に加えて、配置空間に配置された長尺体を切断する際、ユーザーが把持部を握って一対の分割体を閉鎖方向に押圧することにより、切断刃が長尺体の外面に食い込んだ状態を維持し、そして、ユーザーが手首を動かすことにより、切断工具を長尺体の周方向に回転操作させることが容易である。すなわち、ユーザーが把持部を操作することにより、押圧および回転操作を片手で行うことが可能である。
【0029】
請求項8に記載の切断工具によれば、請求項1から7のいずれかの発明の効果に加えて、切断刃が分割体における軸方向の一端側に片寄って設けられていることにより、切断刃と長尺体の接触部分の視認が比較的容易である。
【0030】
請求項9に記載の切断工具によれば、請求項1から8のいずれかの発明の効果に加えて、一対の切断刃が長尺体を両側から軸方向の同じ位置で切断し、より効率的に長尺体を切断することが可能である。また、各切断刃が各分割体の開閉端側に片寄って配置されていることにより、一対の分割体の開閉端が閉鎖されないような比較的大径の長尺体を配置空間に配置した際、(切断刃が分割体の中間に配置された場合と比べて)一対の切断刃を長尺体の外周上でより離隔した位置で、長尺体に接触させることができる。つまり、大径の長尺体を切断する際、一対の切断刃の回転時の移動経路の重なりを小さくことができ、必要な回転角度を180度に近付けることができる。
【0031】
請求項10に記載の切断工具によれば、請求項1から9のいずれかの発明の効果に加えて、より大径の第2長尺体が前記配置空間に配置されたときの第2中心角が、第1長尺体が配置空間に配置されたときの第1中心角よりも大きくなる(180度に近づく)ように、一対の切断刃が位置している。これにより、大径の第2長尺体を切断する際、一対の切断刃の回転時の移動経路の重なりを小さくなる。その結果、比較的回転操作が容易な小径の第1長尺体と比べて、第2長尺体を切断する際に必要な回転角度を減少させることができる。
【0032】
請求項11に記載の切断工具によれば、配置空間に配置された長尺体を切断する際、ユーザーが把持部を握って一対の分割体を閉鎖方向に押圧することにより、切断刃が長尺体の外面に食い込んだ状態を維持し、そして、ユーザーが手首を動かすことにより、切断工具を長尺体の周方向に回転操作させることが容易である。すなわち、本発明の切断工具は、従来の長尺体の離れ方向に延出する把手を持ち直す切断工具と比べて、ユーザーが片手で把持部を握りながら手の中で切断工具を回転操作させることができるので、長尺体の切断作業における操作性を大幅に改善するものである。
【0033】
請求項12に記載の切断工具によれば、配置空間に配置された長尺体を切断する際、ユーザーが把持部を握って一対の分割体を閉鎖方向に把持することにより、切断刃が長尺体の外面に食い込んだ状態を維持することができる。そして、ユーザーが切断工具を長尺体の軸方向に相対スライドすることにより、長尺体を軸方向に切り割りすることができる。すなわち、本発明の切断工具は、従来の切断工具と比べて、ユーザーが片手で把持部を握りながら切断工具を操作することができるので、長尺体の切り割り作業における操作性を大幅に改善するものである。
【0034】
請求項13に記載の切断工具によれば、請求項12の発明の効果に加えて、切断刃の刃部先端を被覆する被覆部材が設けられていることにより、ユーザーが刃部先端に触れて怪我をすることを防止することができる。すなわち、当該切断工具は、切断工具の操作における安全性に配慮したものである。
【0035】
請求項14に記載の切断工具によれば、請求項12または13の発明の効果に加えて、切断工具は、異なる種類の波付管を配置空間に配置し、各波付管を軸方向に切り割り可能である。これにより、波付管に対して、波付管内に収容する配線・配管材の入り口となるスリットを形成することが可能である。
【0036】
請求項15に記載の切断工具によれば、請求項12から14のいずれかの発明の効果に加えて、ユーザーが切断刃の軸方向位置を表示する位置表示部を確認することにより、長尺体の切断する位置を位置決めすることが容易であり、および/または、配置空間に配置される長尺体の端部の配置位置を指示する配置位置指示部を用いることにより、長尺体を端部から軸方向に切り割りするように位置決めすることが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明に係る一実施形態(第1実施形態)の切断工具の(a)閉鎖状態の概略斜視図及び(b)開放状態の概略斜視図。
図2図1の切断工具の(a)閉鎖状態の平面図、および(b)開放状態の平面図。
図3図1の切断工具の(a)閉鎖状態の正面図、および(b)開放状態の正面図。
図4図1の切断工具の閉鎖状態の(a)背面図及び(b)側面図。
図5図3(a)の切断工具のA-A断面図。
図6図3(a)の切断工具のB-B断面図。
図7図1の切断工具の分解斜視図。
図8図7の切断刃アセンブリの分解斜視図。
図9】本発明の一実施形態の切断工具で波付管を切断する一工程を示す概略斜視図。
図10】本発明の一実施形態の切断工具で波付管を切断する一工程を示す概略平面図であり、(a)切断工具を波付管に当接させる工程を示し、(b)切断工具を波付管に押圧させる工程を示す。
図11】本発明の一実施形態の切断工具において、波付管を配置空間に配置した状態を示す切断工具の平面図。
図12図11の形態の切断工具および波付管の正面図。
図13】本発明の一実施形態の切断工具において、配置空間に保持された波付管に切断刃が食い込んでいる形態を示す、切断工具および波付管の部分拡大縦断面図。
図14図13の形態の切断工具および波付管の横断面図。
図15】本発明の一実施形態の切断工具において、波付管を配置空間で切断した後の形態を示す切断工具および波付管の部分拡大縦断面図。
図16】本発明の一実施形態の切断工具において、より大径の波付管を配置空間に配置した状態を示す切断工具の縦断面図。
図17】本発明の一実施形態の切断工具において、より大径の波付管を配置空間に配置した状態を示す切断工具の横断面図。
図18】本発明の第2形態の切断工具を示す概略斜視図。
図19図16の切断工具の切断刃ユニットの分解斜視図。
図20図16の切断工具において、波付管を配置空間に配置した切断工具の横断面図を示し、(a)第1の径を有する第1の波付管、(b)第2の径を有する第2の波付管を示す。
図21】本発明の別実施形態(第2実施形態)の切断工具を示す概略図。
図22】本発明の別実施形態(第3実施形態)の切断工具を示す概略図。
図23】本発明に係る別実施形態(第4実施形態)の切断工具の(a)閉鎖状態の概略斜視図及び(b)開放状態の概略斜視図。
図24図23の切断工具の(a)閉鎖状態の平面図、および(b)開放状態の平面図。
図25図23の切断工具の(a)閉鎖状態の正面図、および(b)開放状態の正面図。
図26図23の切断工具の閉鎖状態の(a)背面図および(b)側面図。
図27図24(a)の切断工具のC-C断面図。
図28図25(a)の切断工具の(a)D-D断面図、および(b)E-E断面図。
図29図23の切断工具の分解斜視図。
図30図23の切断工具で波付管を切断する一工程を示す概略図であり、波付管の端部の位置合わせをする工程を示す。
図31図23の切断工具で波付管を切断する一工程を示す概略断面図であり、(a)切断工具を波付管に当接させる工程を示し、(b)切断工具を波付管に押圧させる工程を示す。
図32図23の切断工具において、波付管を配置空間に配置した状態を示す切断工具の平面図。
図33図23の切断工具において、波付管を配置空間に配置した状態を示す切断工具の平面図。
図34図23の切断工具において、波付管を軸方向に切り割る工程の途中経過を示す(a)概略縦断面図および(b)概略横断面図。
図35図23の切断工具において、より大径の波付管を軸方向に切り割る工程の途中経過を示す(a)概略縦断面図および(b)概略横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図又は概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。
【0039】
本発明の一実施形態の切断工具100は、長尺体としての凹部11および凸部12が長尺方向に交互に連続する波付管10を長尺方向に直交して切断する用途に用いられるものである。より具体的には、切断工具100は、波付管10の周方向に回転操作され、切断刃111の回転動作で波付管10を切断するものである。
【0040】
図1(a),(b)は、本実施形態の切断工具100の閉鎖状態(当初姿勢)の斜視図、および、開放状態(変形姿勢)の斜視図である。図2(a),(b)は、切断工具100の閉鎖状態の平面図、および、開放状態の平面図である。図3(a),(b)は、切断工具100の閉鎖状態の正面図、および、開放状態の正面図である。図4(a),(b)は、閉鎖状態の切断工具100の背面図および側面図である。図5および図6は、切断工具100のA-A縦断面図およびB-B横断面図である。図7は、切断工具100の分解斜視図である。
【0041】
本実施形態の切断工具100は、可動式に組み合わされた一対の分割体101,102と、波付管10を切断するために一対の分割体101,102の各々に設けられた一対の切断刃111,111と、一対の分割体101,102を閉塞方向に付勢するバネ109とを備える。また、切断工具100は、切断する長尺体(波付管10)の長尺方向と一致する軸方向に沿って上端から下端に延在している。切断工具100は、波付管10を切断するように機能する上側部位を軸方向上側に有し、該上側部位の軸方向下側に延在し、ユーザーが操作するための下側部位を有している。つまり、切断刃111は、分割体101,102における軸方向の一端側に片寄って設けられている。
【0042】
一対の分割体101,102は、可動式に組み合わされてなる。ここで、一対の分割体101,102は、第1分割体101および第2分割体102として定められる。第1分割体101および第2分割体102は、それぞれ、(使用時に長尺方向と一致する)軸方向に沿って延在し、平面視において基端(固定端)および先端(自由端)を有している。また、各分割体101,102は、平面視において基端から先端に向けて周方向に延びる円弧形状を有し、内側の凹曲面が互いに対向している。
【0043】
第1分割体101および第2分割体102は、基端において回動軸103を介して互いに回動可能に接続されている。第1分割体101および第2分割体102は、基端において相互補完形状を有し、回動軸103を介して組み合わせられている。本実施形態では、回動軸103は、軸方向に延びる金属の長尺ピンであるが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明の回動軸は、一対の分割体の回動中心軸を意味するにすぎず、その形態は任意に変更され得る。また、一対の分割体101,102は、互いに対向する内面を有し、その間に切断する波付管10を内側に挟んで配置するための配置空間104を形成する。そして、切断工具100の回動軸103の反対側に位置する先端には、波付管10を配置空間104に導入するための開閉動作可能な開閉端105が形成されている。図2および図6に示すように、閉鎖状態では、開閉端105において、一対の分割体101,102が当接面105a,105aを介して当接する。
【0044】
また、各分割体101,102の上側部位には、配置空間104の中心側に押圧されることにより、一対の分割体101,102を開放方向に回動させる駆動部106が設けられている。駆動部106は、各分割体101,102の開閉端105に隣接して形成されている。より具体的には、駆動部106は、図2に示すように、分割体101,102の先端面をなし、外面上で開閉端105に連設された案内面106aを有している。案内面106aは、平面視において、開閉端105(当接面105a,105a)に近い側が基端側に位置し、開閉端105に遠い側が先端側に位置するように傾斜する傾斜平面である。すなわち、案内面106aは、表面に摺接する波付管10を開閉端105へと導き、開閉端105を通過しようとする波付管10による押圧力を、一対の分割体101,102を開放方向に回動する力に変換するように機能し得る。また、一対の分割体101,102の各案内面106aには、図3に示すように、波付管10の凹部11に入り込むように突出する案内突起106bが形成されている。案内突起106bは、周方向に延在する2本の突条であり、閉鎖した開閉端105を介して連続して延びている。これら上下2本の突条が波付管10の凸部12を挟み込むように構成されている。後述するように、案内突起106bは、案内面106aに当接する波付管10の長尺方向へのずれを防止し、切断する部位を位置決めするように機能し得る。なお、案内突起106bは、案内面106aを超えて分割体101,102の当接面105aや内周面にまで連続して延びていてもよい。
【0045】
各分割体101,102の下側部位には、軸方向に延在し、一対の分割体101,102を閉鎖方向に押圧するための把持部107がそれぞれ設けられている。把持部107は、上側部位の軸方向下側に連設されている。各把持部107は、ユーザーが片手で握り易い寸法の半筒形状を有している。すなわち、ユーザーが把持部107を片手で握って、手を開いたり閉じたりするだけで、分割体101,102を容易に開閉操作することが可能である。また、ユーザーは、把持部107を片手で握って、手首を動かすことで切断工具100を回転操作することも可能である。
【0046】
また、分割体101,102の下側部位の内面には、軸方向に直交して弧状に延在する複数のリブが形成されている。さらに、各分割体101,102の下端近傍には、配置空間104に配置した波付管10の一部を外部から視認することを可能とする窓部108が設けられている。また、窓部108には、高所作業時の落下防止用の紐を付けることも可能である。
【0047】
図4に示すように、切断工具100の回動軸103の下端近傍には、バネ109が配置されている。バネ109は、回動軸103の下端部位に外挿されたねじりコイルバネであり、一対の分割体101,102に回動方向の力を作用する。すなわち、バネ109は、一対の分割体101,102を閉鎖方向に付勢する付勢手段として機能する。バネ109が分割体101,102を閉鎖方向に常時付勢することにより、切断工具100をコンパクトな形態に維持することができる。
【0048】
一対の切断刃111,111は、一対の分割体101,102の両方にそれぞれ設けられ、軸方向の同じ位置で対向配置されている。そして、各切断刃111の切っ先が、波付管10を切断するために配置空間104に臨んでいる。本実施形態では、図6に示すように、一対の切断刃111,111は、分割体101,102の円弧の略中央部分(つまり、基端および先端の間の略中間)に位置し、互いに対向している。各切断刃111は、先端が尖っているとともに周方向の双方に刃を有している。すなわち、切断刃111の切っ先が波付管10に食い込んだ状態で、切断刃111が波付管10に対して周方向に相対的に回転することで、切断刃111が波付管10を軸方向に直交する面で切断し得る。また、切断刃111は、上端から視認し易いように、分割体101,102における軸方向の一端側に片寄って設けられている。
【0049】
また、各切断刃111の軸方向上下には、上下一対のガイド片112,112が設けられている。各ガイド片112は、軸方向に直交する平面上に延在し、波付管10の外周形状に対応する扇形状の薄板からなる。また、各ガイド片112は、軸方向に弾性的に撓み変形可能である。各ガイド片112は、波付管10の凹部11に入り込むことが可能な厚みで構成されている。そして、一対のガイド片112,112は、その間に波付管10の凸部12を配置することができるように互いに離間している。一対のガイド片112,112の間の中間位置に、切断刃111が位置している。一対のガイド片112,112は、一対の案内突起106b,106bと軸方向において同じ位置に配置されている。なお、案内突起106bとガイド片112とが連結されて連続する突条が形成されてもよい。この場合、案内突起106bからガイド片112への波付管10の連続的な受け渡しが可能となる。
【0050】
また、ガイド片112の内周縁は、平面視において、切断刃111先端と同じ位置か、または、切断刃111先端よりも径方向内側に位置していることが好ましい。すなわち、切断刃111先端がガイド片112から中心に向けて突出していないことから、ユーザーが切断刃111に手で触れて怪我をすることが抑えられる。
【0051】
本実施形態では、切断刃111およびガイド片112は、切断刃カートリッジ110の一部として分割体101,102の所定位置に固定されている。図7に示すように、切断刃カートリッジ110は、各分割体101,102の上面にビスおよびナットにより容易に取り付けおよび取り外し可能に構成されている。
【0052】
図8は、切断刃カートリッジ110の分解斜視図である。図8に示すように、切断刃カートリッジ110は、円弧形状の所定厚を有するベース113に対して、該ベース113中央の刃収容部113aに埋め込まれた切断刃111と、刃収容部を覆うカバー114と、ベース113の上面および下面に配置された一対のガイド片112,112とが組み合わさったアセンブリである。ベース113の周方向および厚み方向の略中央位置に切断刃111が保持されている。また、ベース113の厚みが、一対のガイド片112,112の間の離間距離を形成している。切断工具100の使い古した切断刃カートリッジ110を新品の切断刃カートリッジ110に取り替えることにより、劣化した切断刃111の交換作業を容易に行うことができる。あるいは、切断する対象や用途に応じて、異なる形態の切断刃カートリッジ(例えば、図19参照)に取り替えることも可能である。
【0053】
次に、図9乃至図14を参照して、本実施形態の切断工具100を用いて波付管10を切断する方法を説明する。当該方法は、概して、波付管10を切断工具100の一対の分割体101,102の間の配置空間104に導入する工程と、切断工具100を波付管10の周囲に相対的に回転させて波付管10を切断する工程とを有する。
【0054】
波付管10を配置空間104に導入する工程を具体的に説明する。まず、切断工具100の把持部107を片手で緩く把持する。図9に示すように、波付管10の外面に切断工具100の開閉端105を向けて、且つ、波付管10を切断する位置に切断工具100を保持して、切断工具100を波付管10に対して相対的に近接させる。このとき、波付管10の長尺方向と切断工具100の軸方向とを一致させる。
【0055】
次いで、図10(a)に示すように、波付管10を切断する箇所を位置決めし、切断位置に従って波付管10に切断工具100の駆動部106を当接させる。波付管10の外面は、両方の案内面106aに当接し、且つ、案内突起106bが波付管10の凹部11に入り込む。波付管10は、案内面106aによって開閉端105に向かうように案内される。このとき、上下一対の案内突起106b,106bの間に(切断箇所を含む)凸部12を上下から挟み込むことにより、波付管10および切断工具100が軸方向(長尺方向)に係止される。これにより、波付管10に対して位置決めされた切断工具100が、軸方向に相対スライドすることが規制される。
【0056】
そして、図10(b)に示すように、波付管10に開閉端105を通過させるように、切断工具100を波付管10に対して押し付ける。すると、この押圧力が切断工具100の駆動部106に作用し、駆動部106が一対の分割体101,102を開放方向に駆動する。一対の分割体101,102は、開放方向に徐々に回動し、最終的に、波付管10が通過可能な幅まで開閉端105が開放される。この開放された開閉端105を介して、波付管10が、切断工具100の一対の分割体101,102の間の配置空間104に配置される。
【0057】
図11および図12は、切断工程のために切断工具100の配置空間104に波付管10を配置した状態を示している。図11および図12に示すように、切断工具100は、一対の分割体101,102で波付管10を挟持し、開閉端105から正面に波付管10の外面が臨んでいる。この状態で、ユーザーが把持部107の握りを強めることで、一対の分割体101,102を閉鎖方向に押圧して、波付管10の外面に切断刃111の切っ先を食い込ませることができる。
【0058】
図13に示すように、波付管10が配置空間104に配置されたとき、上下一対のガイド片112,112が、波付管10の凹部11,11にそれぞれ入り込み、切断される凸部12を挟み込んでいる。これにより、配置空間104内で波付管10が軸方向(長尺方向)に位置ずれすることが規制される。このとき、切断刃111は、凸部12の長尺方向の略中央部に食い込んでいる。また、上下一対のガイド片112,112が、上下一対の案内突起106b,106bと軸方向の同じ位置にあるので、開閉端105を通過する波付管10が軸方向にずれることなく配置空間104に導入され得る。
【0059】
そして、図14に示すように、ユーザーは把持部107を片手で把持し、手首を動かしながら切断工具100を波付管10の周囲に矢印方向に回転させることによって、波付管10を切断することができる。反対に、切断工具100を動かさずに、波付管10を周方向に回転させてもよい。
【0060】
より詳細には、図14に示すように、一対の切断刃111,111が、波付管10に2つの接点で接し、一方の接点、中心点C1および他方の接点が波付管10の直径上にほぼ位置している。換言すると、一方の接点、中心点C1および他方の接点を順に結ぶ2本の直線が中心角をなし、当該中心角は約180度である。また、一対の切断刃111,111は、波付管10の外周上で最も離隔した位置で波付管10外面に接触している。これにより、ユーザーは、切断工具100を波付管10の回りに180度回転させることで、波付管10を切断することができる。一般的に、この中心角が180度に近づくほど、一対の切断刃111,111の回転軌跡(移動経路)において重複する箇所が少なくなり、回転操作量を減少させることができる。一方で、中心角が180度から離れるにつれ、一対の分割体101,102の回転軌跡が重複し、ユーザーにより多くの回転操作を強いることになる。つまり、この回転操作量の最小化は、ユーザーの操作性の改善につながる。よって、切断する波付管10の径に合わせて一対の切断刃111,111が波付管10の直径上に整列するように、切断刃111,111の位置が設定されることが好ましい。
【0061】
図15は、切断工具100で波付管10を切断した後の形態を示している。図15に示すように、波付管10は、凸部12の外周面に沿って切断されている。そして、凹部11外面と凸部12外面とを連結する側壁外面が、ガイド片112の上に載置されている。これにより、ユーザーが把持部107の把持を緩めたとしても、バネ109の付勢力のみで、波付管10の切除片が配置空間104から不意に落下することが抑えられる。なお、ユーザーが分割体101,102を開くことにより、波付管10の切除片を配置空間104から取り除くことができる。
【0062】
本実施形態の切断工具100は、第1長尺体として、第1の径および第1の軸方向の幅を有する波付管10に適合するように構成されている。しかし、切断工具100は、異なるサイズの波付管を切断することが可能である。次に説明する波付管10’は、第2長尺体として第1の径(切断工具100の基準径)よりも大きい第2の径および第2中心点C2を有している。また、波付管10’の凹部11および凸部12の軸方向の幅は、波付管10の軸方向の幅(切断工具100の基準幅)よりも大きい。
【0063】
図16に示すように、波付管10’の凹凸の軸方向の幅が、波付管10の軸方向の幅よりも大きく、且つ、上下一対のガイド片112,112の間隔よりも大きい場合であっても、ガイド片112,112が上下に離隔する方向に弾性的に撓み変更可能であることから、凸部12をガイド片112,112の間に配置することが可能である。
【0064】
また、図17に示すように、波付管10’の第2の径が、波付管10の第1の径よりも大きいことから、一対の分割体101,102が互いにより開放方向に離隔した姿勢を有している。この状態では、切断刃111は、分割体101,102の中間に位置していることから、波付管10’から基端側(回動軸103)に寄った位置に配置される。すなわち、一方の接点、中心点C2および他方の接点を順に結ぶ2本の直線がなす中心角(内角)は約140度である。そのため、一対の切断刃111,111の回転軌跡において重複する箇所が生じ、波付管10’を周方向に完全に切断するには、少なくとも220度の回転操作量が必要となる。このことは、基準径と異なる大径または小径の波付管を切断する際、追加の回転操作量が必要となり、ユーザーの操作性が低下することを意味している。特に、より大径の波付管の周囲に切断工具100を回転させる方が、切断工具100の移動距離が大きくなることから、手首を動かす負担や握り直す回数が増え、操作がより一層困難となるという追加の課題が生じ得る。
【0065】
そこで、上記追加の課題に対応するべく、本実施形態の切断工具100は、切断する波付管の径に合わせて切断刃111の位置を変更することを可能とする、切断刃位置調整手段を備えている。すなわち、切断刃位置調整手段は、異なる位置に切断刃が配置された複数種類の切断刃カートリッジである。より具体的には、図18に示す第2形態の切断工具100は、切断刃カートリッジ110を切断刃111の位置が異なる第2切断刃カートリッジ110-2に交換したものである。図19に示すように、第2切断刃カートリッジ110-2は、分割体101,102の先端側に切断刃111を配置するように構成されている。具体的には、第2切断刃カートリッジ110-2では、切断刃カートリッジ110と異なり、ベース113’の先端側に刃収容部113aが形成されている。
【0066】
図20(a),(b)は、それぞれ、第1の径および第1中心点C1を有する波付管10を配置空間104に配置した形態、および、第2の径および第2中心点C2を有する波付管10’を配置空間104に配置した形態を示している。図20に示すように、一対の切断刃111,111の各々は、軸方向の同じ位置に配置されているとともに、各分割体101,102の開閉端側に片寄って配置されている。
【0067】
図20(a)に示すように、第1の径の波付管10を配置空間104に配置した形態では、切断刃111,111は、波付管10の中心点C1よりも先端側(開閉端105側)に位置している。そして、一方の接点、中心点C1および他方の接点を順に結ぶ2本の直線がなす中心角(内角)は約100度である。そのため、一対の切断刃111,111の回転軌跡において重複する箇所が生じ、波付管10を周方向に完全に切断するには、少なくとも260度の回転操作量が必要となる。しかしながら、より小径の波付管10の周囲に切断工具100を回転操作させる方が、ユーザーの手首を返す動作が小さくてよいので、大径のものと比べて操作し易いといえる。
【0068】
図20(b)に示すように、第2の径の波付管10’を配置空間104に配置した形態では、切断刃111,111は、波付管10’の中心点C2を通る直径上にほぼ位置している。すなわち、一方の接点、中心点C2および他方の接点を順に結ぶ2本の直線の中心角は約180度である。そのため、一対の切断刃111,111の回転軌跡において重複する箇所がほとんどなく、波付管10を周方向に完全に切断するのに180度の(最小)回転操作量で十分となる。すなわち、本実施形態の切断工具100では、相対的に大径の波付管10’を切断する際、一対の切断刃111,111の回転時の移動経路の重なりが小さくなる。その結果、比較的回転操作が容易な小径の波付管10と比べて、波付管10’を切断する際に必要な回転角度を減少させることができる。よって、大小異なる種類の複数の波付管を切断する場合には、第2切断刃カートリッジ110-2が選択されることが好ましい。
【0069】
図示しないが、第3切断刃カートリッジとして、分割体101,102の基端側に切断刃111,111が配置されてもよい。この場合、第1径(基準径)を有する波付管10よりも小さい第3径の波付管を切断することが容易となる。小径の波付管を多く切断する場合には、第3切断刃カートリッジが選択されることが好ましい。
【0070】
すなわち、切断する波付管の種類や対応する径(や本数)に応じて、切断刃位置調整手段としてのカートリッジを変更することにより、ユーザーの回転操作量を減らし、長尺体の切断作業を効率化することができる。
【0071】
以下、本発明に係る一実施形態の切断工具100における作用効果について説明する。
【0072】
本実施形態の切断工具100によれば、一対の分割体101,102の開閉端105側に形成された駆動部106が、開閉端105を介して配置空間104に進入する波付管10によって押圧されることにより、一対の分割体101,102を開放方向に回動駆動する。すなわち、ユーザーは、波付管10を開閉端105側の駆動部106(案内面106a)に対して押し付けるように切断工具100を片手で操作することにより、波付管10を一対の分割体101,102の間の配置空間104に導入することが可能である。したがって、本実施形態の切断工具100は、ユーザーによる操作性を大幅に改善するものである。
【0073】
また、本実施形態の切断工具100によれば、配置空間104に配置された波付管10を切断する際、ユーザーが把持部107を握って一対の分割体101,102を閉鎖方向に押圧することにより、切断刃111が波付管10の外面に食い込んだ状態を維持し、そして、ユーザーが手首を動かすことにより、切断工具100を波付管10の周方向に回転操作させることが容易である。すなわち、本実施形態の切断工具100は、従来の波付管10の離れ方向に延出する把手を持ち直す切断工具(特許文献1参照)と比べて、把持部107を握りながら手の中で切断工具100を回転操作させることができるので、波付管10の切断作業における操作性を大幅に改善するものである。
【0074】
さらに、本実施形態の切断工具100によれば、切断刃位置調整手段として、切断刃カートリッジ110を交換することにより、波付管の外径の大きさに応じて回転操作量を増減させることができる。特には、各切断刃111,111が各分割体101,102の開閉端105側に片寄って配置されることにより、一対の分割体101,102の開閉端105が閉鎖されないような比較的大径の波付管10’を配置空間104に配置した際(図20(b)参照)、切断刃111が分割体101,102の中間に配置された場合(図17参照)と比べて、一対の切断刃111,111を波付管10’の外周上でより離隔した位置で、波付管10’に接触させることができる。つまり、大径の波付管10’を切断する際、一対の切断刃111,111の回転時の回転軌跡(移動経路)の重なりを小さくことができ、必要な回転角度を180度に近付けることができる。
【0075】
本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の実施形態や変形例を取り得る。以下、本発明の複数の変形例を説明する。各実施形態において、下二桁が共通する構成要素は、特定のない限り、同一又は類似の特徴を有し、その説明を一部省略する。
【0076】
(1)本発明の切断工具は、上記実施形態に限定されず、種々の形態を取り得る。例えば、図21は、本発明の別実施形態の切断工具200を示す。図21に示すように、切断工具200は、把持部が省略されたコンパクトな形態を有してもよい。切断工具200は、少なくとも駆動部206(案内面206a)を備えることにより、ユーザーによる操作性を大幅に改善するものである。
【0077】
(2)本発明の切断工具は、上記実施形態に限定されず、種々の形態を取り得る。図22は、本発明の別実施形態の切断工具300を示す。図22に示すように、本発明の切断工具は、駆動部(案内部)が省略されてもよい。切断工具300は、少なくとも把持部307を備えることにより、ユーザーによる操作性を大幅に改善するものである。
【0078】
(3)本発明の切断工具の形状寸法は、上記実施形態に限定されない。例えば、案内面は傾斜平面でなくてもよく、湾曲面などであってもよい。また、駆動部は、切断刃から軸方向に離隔した位置に形成されてもよい。さらに、一対の分割体が閉鎖した状態において、開閉端が開いていてもよい。また、切断刃は、波付管の凹部を切断するように一対のガイド片の間に配置されてもよい。さらに、切断刃は、一対の分割体の一方のみに形成されていてもよく、または、3つ以上の切断刃が設けられてもよい。また、切断刃の長さは、切断する長尺体の形態に応じて任意に選択され得る。
【0079】
(4)本発明の切断工具は、上記実施形態に限定されず、種々の形態を取り得る。切断工具は、複数対の切断刃を有してもよく、切断される長尺体の径によって主要に使用される刃が違い、径によって切断している刃と遊んでいる刃(または切断への関与が少ない刃)があってもよい。例えば、本実施形態の第1形態の切断刃カートリッジ110の切断刃111,111位置と第2形態の切断刃カートリッジ110-2の切断刃111,111位置とが組み合わせられてもよい。すなわち、各分割体の略中間位置に第1切断刃が形成され、さらに各分割体の先端側位置に第2切断刃が形成され得る。基準径の長尺体を切断する際には、第1切断刃が長尺体を主に切断し、第2切断刃は切断にあまり関与しない。他方、基準径よりも大径の長尺体を切断する際には、第2切断刃が長尺体を主に切断し、第1切断刃は切断にあまり関与しない。なお、小径、基準径、大径の3種の長尺体に対応すべく、基端側位置、中間位置、先端側位置の3箇所にそれぞれ3対の切断刃が設けられてもよい。
【0080】
(5)本発明の切断工具は、上記実施形態に限定されず、種々の形態を取り得る。例えば、一対の分割体を閉鎖方向に付勢する付勢手段が省略されてもよい。付勢手段がなくとも、手動で一対の分割体を開閉操作可能である。
【0081】
(6)本発明の切断工具は、上記実施形態に限定されず、種々の長尺体を切断する用途に用いられ得る。長尺体は、凹凸のない直状管、中実の線材、ケーブルの被覆材等であってもよい。例えば、切断工具100で螺旋の波付管を切断する際、手で開きを抑制しつつ、波付管の凹凸に対応して開いたり閉じたりしながら切断することも可能である。
【0082】
(7)従来(特許文献1)の切断工具の追加の課題として、従来の切断工具は、長尺体を径方向に沿って切断することが可能であるが、長尺体を軸方向に切る割ることを考慮しておらず、長尺体の軸方向の切り割り操作をすることができなかった。これに対し、本発明は、ここに、ユーザーが片手で把持部を握りながら切断工具を操作させることができ、長尺体の軸方向の切り割り作業における操作性を大幅に改善することが可能な切断工具を提供する。以下、第4実施形態の切断工具400を例示的として説明する。
【0083】
図23(a),(b)は、本実施形態の切断工具400の閉鎖状態(当初姿勢)の斜視図、および、開放状態(変形姿勢)の斜視図である。図24(a),(b)は、切断工具400の閉鎖状態の平面図、および、開放状態の平面図である。図25(a),(b)は、切断工具400の閉鎖状態の正面図、および、開放状態の正面図である。図26(a),(b)は、閉鎖状態の切断工具400の背面図および側面図である。図27および図28は、切断工具400のC-C縦断面図、D-D横断面図およびE-E断面図である。図29は、切断工具400の分解斜視図である。
【0084】
本実施形態の切断工具400は、可動式に組み合わされた一対の分割体401,402と、波付管10を軸方向に切断するために一対の分割体401,402の一方に設けられた切断刃411と、一対の分割体401,402を閉塞方向に付勢するバネ409とを備える。また、切断工具400は、切断する長尺体(波付管10)の長尺方向と一致する軸方向に沿って上端から下端に延在している。切断工具400は、波付管10を切断するように機能する上側部位を軸方向上側に有し、該上側部位の軸方向下側に延在し、ユーザーが操作するための下側部位を有している。つまり、切断刃411は、分割体401,402における軸方向の一端側に片寄って設けられている。
【0085】
一対の分割体401,402は、可動式に組み合わされてなる。ここで、一対の分割体401,402は、第1分割体401および第2分割体402として定められる。第1分割体401および第2分割体402は、それぞれ、(使用時に長尺方向と一致する)軸方向に沿って延在し、平面視において基端(固定端)および先端(自由端)を有している。また、各分割体401,402は、平面視において基端から先端に向けて周方向に延びる円弧形状を有し、内側の凹曲面が互いに対向している。
【0086】
第1分割体401および第2分割体402は、基端において回動軸403を介して互いに回動可能に接続されている。第1分割体401および第2分割体402は、基端において相互補完形状を有し、回動軸403を介して組み合わせられている。また、一対の分割体401,402は、互いに対向する内面を有し、その間に切断する波付管10を内側に挟んで配置するための配置空間404を形成する。そして、切断工具400の回動軸403の反対側に位置する先端には、波付管10を配置空間404に導入するための開閉動作可能な開閉端405が形成されている。
【0087】
各分割体401,402の下側部位には、軸方向に延在し、一対の分割体401,402を閉鎖方向に押圧するための把持部407がそれぞれ設けられている。把持部407は、上側部位の軸方向下側に連設されている。各把持部407は、ユーザーが片手で握り易い寸法の半筒形状を有している。すなわち、ユーザーが把持部407を片手で握って、手を開いたり閉じたりするだけで、分割体401,402を容易に開閉操作することが可能である。また、ユーザーは、把持部407を片手で握って、手を軸動かすことで切断工具400を軸方向に移動操作することも可能である。
【0088】
また、各分割体401,402の下側部位には、配置空間404の中心側に押圧されることにより、一対の分割体401,402を開放方向に回動させる駆動部406が設けられている。駆動部406は、各分割体401,402の開閉端405に隣接し、かつ、切断刃411よりも下側に形成されている。より具体的には、駆動部406は、図28(b)に示すように、外面上で開閉端405の外面側に連設された案内部406aを有している。案内部406aは、軸方向に並設された複数のリブおよび軸方向下端に形成されたフランジからなり、平面視において、開閉端405に近い側が基端側に位置し、開閉端405に遠い側が先端側に位置するように傾斜している。すなわち、案内部406aは、表面に摺接する波付管10を開閉端405へと導き、開閉端405を通過しようとする波付管10による押圧力を、一対の分割体401,402を開放方向に回動する力に変換するように機能し得る。また、案内部406aを構成するリブおよびフランジは、波付管10の凹部11に部分的に入り込み、案内部406aに当接する波付管10の長尺方向へのずれを防止するように機能し得る。
【0089】
さらに、駆動部406の上側には、波付管10の端面を当接させて波付管10の軸方向の位置決めをするための段部421が設けられている。段部421は、各分割体401,402の上側部位および下側部位の境界に位置する。特には、段部421は、駆動部406に対して軸方向上側に連設され、軸方向下方を向く当接面を有する。他方、段部421に対向する側の面は、波付管10を配置可能に開放されている。すなわち、段部421は、配置空間404に配置される長尺体の端部の配置位置をユーザーに指示する配置位置指示部として機能する。
【0090】
また、一対の分割体401,402の開閉端405側の外面には、切断刃411の軸方向位置を視覚的に表示する位置表示部422が設けられている。位置表示部422は、切断工具400の正面を向くマークであり、切断刃411と軸方向のほぼ同じ位置に形成されている。なお、位置表示部422は、一対の分割体401,402の一方のみに形成されてもよい。
【0091】
また、分割体401,402の下側部位の配置空間404に面する内面には、軸方向に沿って延在する1または複数の突条部423が形成されている。突条部423は、分割体401,402を補強するとともに、配置空間404内の波付管10の軸方向のスムーズな相対移動を案内するように機能し得る。
【0092】
切断刃411は、一対の分割体401,402のうちの第1分割体401のみに設けられている。そして、切断刃411が、波付管10を軸方向に切断するために配置空間404に臨んでいる。本実施形態では、波付管10の周方向の一箇所に長手方向に連続するスリットを形成するように切り割りするために、配置空間404に1つの切断刃411が配置されている。なお、波付管10を軸方向に2つ以上の断片に分断する場合には、2以上の切断刃が設けられてもよい。
【0093】
切断刃411は、図29に示すように、第1分割体401の内面から内側に突出する基板部415と、基板部415における配置空間404に臨む端縁に形成された刃部416とを備える。基板部415は、矩形板状を有し、上縁、下縁および先端縁からなる端縁を有する。刃部416は、基板部415の軸方向下側の端縁に波付管10を切断可能な刃を有している。また、基板部415の突出方向の先端には、被覆部材417が設けられている。ここで、図29に示すように、切断刃411および被覆部材417が組み合わさって、第1分割体401に交換可能にネジで固定される切断刃カートリッジ410が構成される。被覆部材417が刃部416の鋭利な角部を被覆することにより、ユーザーの安全性を担保している。すなわち、切断刃411は、刃部416の(鋭利な部位を除いた)軸方向下側を向く部位が露出しているので、被覆部材417を取り付けた状態で波付管10を軸方向に切り割り可能である。そして、切断刃411の刃部416が波付管10に食い込んだ状態で、切断工具400が波付管10の軸方向に相対的にスライドすることで、切断刃411が波付管10の肉部を軸方向に沿って切断し得る。このように、切断刃411先端が被覆部材417で被覆されていることから、ユーザーが切断刃411の先端に手で触れて怪我をすることが抑えられる。なお、用途に応じて、切断刃411の基板部415の端縁の上側および/または先端に刃部416が形成されてもよい。
【0094】
次に、図30乃至図35を参照して、本実施形態の切断工具400を用いて波付管10を軸方向に切り割りする方法を説明する。当該方法は、概して、波付管10を切断工具400の一対の分割体401,402の間の配置空間404に導入する工程と、切断工具400を波付管10の軸方向に相対的にスライドさせて波付管10を切断する工程とを有する。なお、当該方法は、波付管10に長手方向に延びるスリットを形成し、そこから配線・配管材を波付管10の内部に導入する、または、波付管10を配線・配管材に被せることを主な用途とする。あるいは、1つの波付管10に対して2回以上の切断操作をすることによって、波付管10を縦に分割し、廃棄の際の嵩減らしを用途としてもよい。また、長尺体の長さは特に限定されず、管径よりも軸方向長さが短い管も長尺体に含まれ得る。
【0095】
波付管10を配置空間404に導入する工程を具体的に説明する。まず、切断工具400の把持部407を片手で緩く把持する。図30に示すように、波付管10の外面に切断工具400の開閉端405を向けて、切断工具400を波付管10に対して相対的に近接させる。このとき、波付管10の長尺方向と切断工具400の軸方向とを一致させる。そして、波付管10の外面を案内部406aに当接させる(図31(a)参照)とともに、波付管10の端面を段部421(当接面)に当接させることにより、切断工具400および波付管10の相互の位置決め工程を行う。ユーザーは、位置表示部422を目視して位置決めをしてもよい。
【0096】
そして、図31(b)に示すように、波付管10に開閉端405を通過させるように、切断工具400を波付管10に対して押し付ける。すると、この押圧力が切断工具400の駆動部406に作用し、駆動部406が一対の分割体401,402を開放方向に駆動する。一対の分割体401,402は、開放方向に徐々に回動し、最終的に、波付管10が通過可能な幅まで開閉端405が開放される。この開放された開閉端405を介して、波付管10が、切断工具400の一対の分割体401,402の間の配置空間404(切断刃411よりも軸方向下方に位置する空間)に配置される。
【0097】
図32および図33は、切断工程のために切断工具400の配置空間404に波付管10を配置した状態を示している。図32および図33に示すように、切断工具400は、一対の分割体401,402で波付管10を挟持し、開閉端405から正面に波付管10の外面が臨んでいる。この状態で、ユーザーが把持部407の握りを強めることで、一対の分割体401,402による波付管10の挟持を維持することができる。このとき、切断刃411は、波付管10端部の軸方向上方に位置し、その刃部416の露出部分が波付管10端面に対向している。また、被覆部材417は、平面視において波付管10の肉部よりも径方向内側に位置している。そして、一対の分割体401,402は、波付管10を内側に挟むように配置空間404に配置した状態で、波付管10が分割体401,402の軸方向の両端を貫くように、波付管10に対する軸方向への相対移動が可能である。
【0098】
次いで、切断工具400を波付管10に対して軸方向に相対スライドさせることにより、切断刃411が波付管10を端面から下方に向けて切断していく。図34(a),(b)は、波付管10を軸方向に切り割る工程の途中経過を示している。図34(a),(b)に示すように、切断刃411が波付管10の肉部を切断するように軸方向下方に移動するとともに、被覆部材417が波付管10の中空空間を軸方向下方に移動することで、波付管10に長尺のスリットSが形成されていく。そして、切断刃411が波付管10の下端に到達することにより、波付管10の軸方向全体に亘る配線・配管材を導入するためのスリットSを形成することができる。なお、必要に応じて、スリットSは、波付管10の軸方向の一部に形成されてもよい。また、切断刃411の形状を変更するとともに切断刃411から被覆部材417を取り外すことで、切断刃411の先端側に切っ先を露出させ、波付管10の(両端を含まない)中央部分のみにスリットSを形成することも可能である。
【0099】
本実施形態の切断工具400は、上述した第1の径を有する第1波付管10に加えて、第1波付管10の第1の径よりも大きい第2の径を有する第2波付管10’を切り割りすることが可能であるように構成されている。図35(a),(b)は、第2の径を有する第2波付管10’を切り割りする形態を示す模式図である。図35(a),(b)に示すように、開閉端405の開き度合いを大きくすることにより、配置空間404に第2波付管10’を配置し、同様に、第2波付管10’を軸方向に切り割りすることが可能である。すなわち、配置空間404は、第1の径を有する第1波付管10と、第1の径よりも大きい第2の径を有する第2波付管10’とを配置可能に構成されている。
【0100】
本実施形態の切断工具400によれば、配置空間404に配置された長尺体(波付管10)を切断する際、ユーザーが把持部407を握って一対の分割体401,402を閉鎖方向に把持することにより、切断刃411が長尺体の外面に食い込んだ状態を維持することができる。そして、ユーザーが切断工具400を長尺体の軸方向に相対スライドすることにより、長尺体を軸方向に切り割りすることができる。すなわち、本実施形態の切断工具400は、従来の切断工具と比べて、ユーザーが片手で把持部407を握りながら切断工具400を操作することができるので、長尺体の切り割り作業における操作性を大幅に改善するものである。なお、切断工具400から駆動部406が省略されてもよい。
【0101】
本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。
【0102】
(付記)
本願明細書の開示事項に従って、切断工具は以下の形態をさらに取り得る。
【0103】
(形態1)
軸方向に延伸する回動軸を介して互いに回動可能に接続され、長尺体を内側に挟んで配置するための配置空間を間に形成し、前記長尺体を前記配置空間に導入するための開閉動作可能な開閉端を有する一対の分割体と、
前記一対の分割体の各々の軸方向の同じ位置に設けられ、前記長尺体を切断するために前記配置空間に臨む一対の切断刃と、を備え、
前記各切断刃は、前記各分割体の開閉端側に片寄って配置されていることを特徴とする切断工具。
【0104】
(形態2)
軸方向に延伸する回動軸を介して互いに回動可能に接続され、長尺体を内側に挟んで配置するための配置空間を間に形成し、前記長尺体を前記配置空間に導入するための開閉動作可能な開閉端を有する一対の分割体と、
前記一対の分割体の各々の軸方向の同じ位置に設けられ、前記長尺体を切断するために前記配置空間に臨む一対の切断刃と、
前記分割体に対する前記切断刃の位置を調整するための切断刃位置調整手段と、
を備え、
前記切断刃の位置調整手段により、前記各分割体の開閉端側に片寄った位置に配置可能であることを特徴とする切断工具。
【符号の説明】
【0105】
100 切断工具
101 第1分割体
102 第2分割体
103 回動軸
104 配置空間
105 開閉端
105a 当接面
106 駆動部
106a 案内面
106b 案内突起
107 把持部
108 窓
109 バネ(付勢手段)
110 切断刃カートリッジ
111 切断刃
112 ガイド片
113 ベース
113a 刃収容部
114 カバー
411 切断刃
415 基板部
416 刃部
417 被覆部材
421 段部(配置位置指示部)
422 位置表示部
423 突条部
10 波付管
11 凹部
12 凸部
図1
図2
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図5
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図35