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特開2022-42472ベントナイトを染色するための組成物及びベントナイト染色方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042472
(43)【公開日】2022-03-14
(54)【発明の名称】ベントナイトを染色するための組成物及びベントナイト染色方法
(51)【国際特許分類】
   C09B 65/00 20060101AFI20220307BHJP
   C09B 61/00 20060101ALI20220307BHJP
   C09B 57/08 20060101ALI20220307BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20220307BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20220307BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20220307BHJP
   A61K 8/26 20060101ALI20220307BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20220307BHJP
   C01B 33/40 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
C09B65/00
C09B61/00 Z
C09B57/08 Z
A61K8/19
A61K8/86
A61K8/49
A61K8/26
A61Q1/02
C01B33/40
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021108701
(22)【出願日】2021-06-30
(31)【優先権主張番号】10-2020-0111483
(32)【優先日】2020-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】505421227
【氏名又は名称】韓国地質資源研究院
【氏名又は名称原語表記】KOREA INSTITUTE OF GEOSCIENCE AND MINERAL RESOURCES(KIGAM)
【住所又は居所原語表記】124,Gwahak-ro,Yuseong-gu,Daejeon 305-350,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】キム ジェファン
(72)【発明者】
【氏名】パク チャンユン
(72)【発明者】
【氏名】ソ スンマン
(72)【発明者】
【氏名】カン イルモ
(72)【発明者】
【氏名】ロ キミン
【テーマコード(参考)】
4C083
4G073
【Fターム(参考)】
4C083AC841
4C083AC842
4C083AD011
4C083AD012
4C083AD211
4C083AD212
4C083BB23
4C083BB25
4C083CC01
4C083CC11
4C083DD17
4C083EE07
4C083FF01
4G073AA06
4G073AA07
4G073BB75
4G073BC07
4G073BD21
4G073BD23
4G073CM16
4G073FA30
4G073FD05
4G073FD25
4G073FF04
4G073GA03
4G073UB31
(57)【要約】
【課題】本発明は、植物由来のポリフェノールを含むベントナイト染色用組成物及びこれを用いてベントナイトを染色する方法に関する。
【解決手段】植物由来物質としてリグニン(Lignin)、ペクチン(Pectin)、タンニン(Tannnic)、カテキン(Catechin)などのポリフェノールを含むベントナイト染色用組成物と、これを用いてベントナイトを染色する方法を提供する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェノール及び媒染剤を含む、ベントナイトを染色するための組成物。
【請求項2】
前記ポリフェノールは、リグニン、ペクチン、タンニン及びカテキンからなる群のうちの1つ以上である、請求項1に記載のベントナイトを染色するための組成物。
【請求項3】
前記媒染剤は、Fe3+、Fe2+及びAl3+からなる群のうちの1つ以上である、請求項1又は請求項2に記載のベントナイトを染色するための組成物。
【請求項4】
前記ポリフェノールと前記媒染剤のモル比は、1:1~1:10である、請求項1又は請求項2に記載のベントナイトを染色するための組成物。
【請求項5】
ポリフェノール及び媒染剤を含むベントナイト染色用組成物によって染色されるベントナイト。
【請求項6】
前記染色されたベントナイトは、結晶系の球面形状と20~50μmの直径を有することを特徴とする、請求項5に記載のベントナイト。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載のベントナイトを含む、化粧料組成物。
【請求項8】
ベントナイトを分離精製するステップと、
ポリフェノール及び媒染剤を混合して溶液を製造するステップと、
ポリフェノール及び媒染剤混液と分離精製されたベントナイトを撹拌させるステップと、
を含むベントナイト染色方法。
【請求項9】
前記分離精製されたベントナイトの粒度は0.01~100μmである、請求項8に記載のベントナイト染色方法。
【請求項10】
前記ベントナイトの含量は、前記ポリフェノール及び媒染剤混液100重量%に対して1~20重量%である、請求項8に記載のベントナイト染色方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物由来物質を含む粘土を染色するための組成物及び植物由来物質で粘土を染色する方法に関する。より具体的に、植物由来物質として、リグニン(Lignin)、ペクチン(Pectin)、タンニン(Tannnic)、カテキン(Catechin)などのポリフェノール(polyphenol)と媒染剤を含んでいる粘土を染色するための組成物、それを用いてベントナイトを染色する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
染色は、合成燃料を使用する人工染色と天然染料を使用する天然染色とに区分される。様々な色と優れる染色結果を取得するためにほとんどの合成燃料が使用されてきたが、合成燃料の使用は、各種の環境汚染物質の排出及び合成燃料を用いた繊維製品の場合にアトピーの皮膚炎を誘発するなど、人体に悪影響を及ぼすことが明らかになった。一方、合成燃料を使用する人工染色とは異なって、主に植物の皮、茎、実、根などが使用される天然染色は、人体に悪影響を及ぼさない上、原材料を購入しやすく、染料の抽出が容易で、染色過程が単純であることが長所である。
【0003】
これにより、植物のような天産物に由来する物質を用いた天然染色の染着性を高めて産業上の利用を活発にし、天然染色された物質の染着性を高めるための加工や操作により染着した物質の耐久性が低くなったり特性が変わるという問題を解決するために、天然染色の技術に対する標準化、自動化、及び大量生産のための技術開発が求められている。
【0004】
ベントナイト(Bentonite)は、モンモリロン石(Montmorillonite)を注な構成鉱物とする粘土鉱物の一種として、韓国の東海岸地方に多く埋められていることが知られている。ベントナイトは、微細なコロイド物質の集合体として、水に入れると吸収膨潤し、高い粘度を有し、陽イオン交換能が他の粘土鉱物に比べて高い特性を有するため、その用途が極めて多様で大量需要先として鋳物用の粘結剤、ボーリング用ニス、土木建築用などに使用されている。化粧品や美容パックにベントナイトが含まれており、肌の老廃物除去、肌の再生、シミ、そばかす、にきび、角質、アトピーなどの皮膚疾患にベントナイトが用いられている。また、天然ベントナイトは、無色を示す粘土の1つとして、着色させて化粧品原料に使用することができる。
【0005】
天然に存在している活性染料として茶ポリフェノール又はその酸化生成物である茶の色素及び活性媒染剤として、金属塩を使用して動物又はヒトのヘアーを染色するための製品について登録特許第10-1621032号において提供されているが、本発明は、天然のポリフェノールと媒染剤を用いてベントナイトなどの粘土を染色する組成物を提供することにある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
植物で由来するポリフェノールと媒染剤を含む染色用組成物は、粘土鉱物のうちの1つであるベントナイトを染色し、発色の効果を高めるための原料として使用されることを発見し、本発明を完成した。
【0007】
本発明の目的は、ポリフェノール及び媒染剤を含むベントナイトを染色するための組成物を提供することにある。
【0008】
本発明の目的は、前記ポリフェノールは、リグニン、ペクチン、タンニン、及びカテキンからなる群のうちの1つ以上であるベントナイトを染色するための組成物を提供することにある。
【0009】
本発明の目的は、前記媒染剤は、Fe3+、Fe2+及びAl3+からなる群のうちの1つ以上であるベントナイトを染色するための組成物を提供することにある。
【0010】
本発明の目的は、前記ポリフェノールと前記媒染剤のモル比は、1:1~1:10であるベントナイトを染色するための組成物を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、ポリフェノール及び媒染剤を含むベントナイト染色用組成物によって染色されたベントナイトを提供することにある。
【0012】
本発明の目的は、前記染色されたベントナイトは、結晶系の球面形状と20~50μmの直径を有することを特徴とするベントナイトを提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、ポリフェノール及び媒染剤を含むベントナイト染色用組成物によって染色されたベントナイトを含む化粧料組成物を提供することにある。
【0014】
本発明の目的は、前記染色されたベントナイトは、結晶系の球面形状と20~50μmの直径を有することを特徴とするベントナイトを含む化粧料組成物を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、ベントナイトを分離精製するステップ、ポリフェノール及び媒染剤を混合して溶液を製造するステップ、ポリフェノール及び媒染剤混液と分離精製されたベントナイトを撹拌させるステップを含むベントナイトを染色する方法を提供することにある。
【0016】
本発明の目的は、前記分離精製されたベントナイトの粒度は0.01~100μmであるベントナイトを染色する方法を提供することにある。
【0017】
本発明の目的は、前記ベントナイトの含量は、ポリフェノール及び媒染剤の混液100重量%に対して1~20重量%であるベントナイトを染色する方法を提供することにある。
【0018】
しかし、本発明が解決しようとする課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されない他の課題は、下記の記載によって当技術分野の通常の知識を有する者にとって明確に理解できるものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明のベントナイトを染色するための組成物使用する場合、天然ベントナイトの色を黄色、青色、又は茶色などに様々に変化させることができ、発色の効果を高めてベントナイトの鉱物学的な組成特性を保持することができる。
【0020】
特に、本発明のベントナイトを染色するための組成物によって染色されたベントナイトは、噴霧乾燥時に結晶系の球面形状を有して均一な直径を有するため、肌の質感が良好で染色されたベントナイトは化粧品原料として適する。
【0021】
本発明の効果は、前記効果に限定されるものではなく、本発明の詳細な説明又は権利要求に記載された発明の構成から推論可能な全ての効果を含むものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A】精製した後の天然ベントナイトとして白色を示す。
図1B】松葉(pine tree)抽出物とFe3+によって染色されたベントナイトを示す。
図2】ポリフェノールのモル濃度を10mMにし、媒染剤のモル濃度は100mMに混合して製造された溶液で染色されたベントナイトの様々な色を示す。
図3】ポリフェノールの重さを10mgにし、媒染剤のモル濃度は50mMに混合して製造された溶液で染色されたベントナイトの様々な色を示す。
図4】本発明のポリフェノール及び媒染剤を含むベントナイト染色用組成物によって着色されたベントナイトの鉱物学的組成の変化を測定するためにXRD分析を実施した結果である。
図5】CIE L*a*b*カラー空間(color space)グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付の図面を参照して実施形態を詳細に説明する。しかし、実施形態には多様な変更が加えられることができ、特許出願の権利範囲がこの実施形態により制限されたり限定されることはない。実施形態に対するすべての変更、均等物ないし代替物が権利範囲に含まれるものとして理解されなければならない。
【0024】
本明細書で用いる用語は、単に特定の実施形態を説明するために用いられるものであって、本発明を限定しようとする意図はない。単数の表現は、文脈上、明白に異なる意味をもたない限り複数の表現を含む。本明細書において、「含む」又は「有する」等の用語は明細書上に記載した特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品、又はこれらを組み合わせたものが存在することを示すものであって、一つ又はそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部品、又はこれらを組み合わせたものなどの存在又は付加の可能性を予め排除しないものとして理解しなければならない。
【0025】
異なる定義がされない限り、技術的であるか又は科学的な用語を含むここで用いる全ての用語は、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。一般的に用いられる予め定義された用語は、関連技術の文脈上で有する意味と一致する意味を有するものと解釈すべきであって、本明細書で明白に定義しない限り、理想的又は過度に形式的な意味として解釈されることはない。
【0026】
また、添付図面を参照して説明することにおいて、図面符号に関係なく、同じ構成要素は同じ参照符号を付与し、これに対する重複する説明は省略することにする。実施形態の説明において、関連する公知技術に対する具体的な説明が実施形態の要旨を不要に曖昧にするものと判断される場合、その詳細な説明を省略する。
【0027】
また、実施形態の構成要素の説明において、第1,第2,A,B,(a),(b)などの用語を使用することがある。このような用語は、その構成要素を他の構成要素と区別するためのものにすぎず、その用語によって該当の構成要素の本質や順番又は順序などが限定されない。
【0028】
いずれか一つの実施形態に含まれている構成要素と、共通の機能を含む構成要素は、他の実施形態で同じ名称を用いて説明することにする。反対となる記載がない以上、いずれか一つの実施形態に記載した説明は、他の実施形態にも適用され、重複する範囲において具体的な説明は省略することにする。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、ポリフェノール及び媒染剤を含むベントナイトを染色するための組成物が提供される。
【0030】
一実施形態によれば、前記ポリフェノールは、リグニン、ペクチン、タンニン及びカテキンからなる群のうちの1つ以上であるベントナイトを染色するための組成物が提供される。
【0031】
一実施形態によれば、前記媒染剤は、Fe3+、Fe2+及びAl3+からなる群のうちの1つ以上であるベントナイトを染色するための組成物が提供される。
【0032】
一実施形態によれば、前記ポリフェノールと前記媒染剤のモル比は1:1~1:10であるベントナイトを染色するための組成物が提供される。
【0033】
本発明の他の一実施形態によれば、ポリフェノール及び媒染剤を含むベントナイト染色用組成物によって染色されたベントナイトが提供される。
【0034】
一実施形態によれば、前記染色されたベントナイトは、結晶系の球面形状と20~50μmの直径を有することを特徴とするベントナイトが提供される。
【0035】
本発明の他の一実施形態によれば、ポリフェノール及び媒染剤を含むベントナイト染色用組成物によって染色されたベントナイトを含む化粧料組成物が提供される。
【0036】
一実施形態によれば、前記染色されたベントナイトは、結晶系の球面形状と20~50μmの直径を有することを特徴とするベントナイトを含む化粧料組成物が提供される。
【0037】
本発明の他の一実施形態によれば、ベントナイトを分離精製するステップと、ポリフェノール及び媒染剤を混合して溶液を製造するステップと、ポリフェノール及び媒染剤混液と分離精製されたベントナイトを撹拌させるステップとを含むベントナイト染色方法が提供される。
【0038】
一実施形態によれば、前記分離精製されたベントナイトの粒度は0.01~100μmであるベントナイト染色方法が提供される。
【0039】
一実施形態によれば、前記ベントナイトの含量は、ポリフェノール及び媒染剤の混液100重量%に対して1~20重量%であるベントナイト染色方法が提供される。
【0040】
本発明の一実施形態によれば、ポリフェノール及び媒染剤を含むベントナイトを染色するための組成物が提供される。
【0041】
本発明の明細書において、用語「ポリフェノール(polyphenol)」は、複数のフェノール(phenol)官能基を有する高分子を意味する。ポリフェノールは、植物から発見される化学物質の一種として、分子1つにフェノールグループが1つ以上あることを特徴とする。ポリフェノールは、一般に、タンニン、フェニルプロパノイド(フラボノイド、リグニンなど)に分類される。フェノールは、ベンゼンの水素原子1つがヒドロキシル基に置換されたものであり、ポリフェノールは、2つ以上のヒドロキシル基に置換されたのである。ポリフェノールの種類は数千種類が越えるが、緑茶に入っているカテキン、ワインのレスベラトロール、リンゴ、タマネギのクェルセチンなどがある。果実に多くのフラボノイドと豆に多くのイソフラボンもポリフェノールの一種である。
【0042】
一実施形態によれば、前記ポリフェノールは、リグニン、ペクチン、タンニン及びカテキンからなる群のうちの1つ以上であるベントナイトを染色するための組成物である。
【0043】
本発明の明細書において、用語「媒染剤」は、媒染に使用する金属塩を意味する。媒染は、染色の前後に被染物処理して発色と染め液の固着を助ける過程である。被染物と染料とが結合する性質を高めると共に、染色の堅牢度を高め、染料吸着を促進して色を高める作用を果たす。媒染において、染色前に行う先媒染と染色後に行う後媒染とがあり、染め液に媒染剤を入れて媒染と同時に染色する同時媒染と、染料により媒染を行わない無媒染もある。媒染剤として主に使用されるのが、アルミニウム塩(ミョウバン、酢酸アルミニウムなど)、クロム塩(クロムミョウバン、 ジクロム酸塩、塩化クロムなど)、鉄塩(硫酸鉄、酢酸鉄など)などが挙げられる。金属イオンの種類に応じて色が変わる場合が多い。金属塩は染料と結合して不溶性であるレイクになり、粘土、ベントナイト、繊維などに固着されてもよい。
【0044】
一実施形態によれば、前記媒染剤は、Fe3+、Fe2+及びAl3+からなる群の1つ以上であるベントナイトを染色するための組成物であってもよい。
【0045】
本発明において、ポリフェノールは植物から由来する物質として、媒染剤(Fe3+、Fe2+、Al3+など)とキレート(chelating)して発色する。前記Fe3+、Fe2+、Al3+などの金属の媒染剤は、ベントナイトにポリフェノール-金属媒染剤分子を吸着及び固定されるように媒介し、ベントナイトは着色して色が変わる。
【0046】
一実施形態によれば、前記ポリフェノールと前記媒染剤のモル比は、1:1~1:10であるベントナイトを染色するための組成物である。前記ポリフェノールと前記媒染剤のモル比が1:1~1:10であるとき、前記媒染剤は、ベントナイトにポリフェノール-媒染剤分子を高効率で吸着及び固定させ、ベントナイトの着色の効果を持続させることができる。
【0047】
本発明の一実施形態によれば、ポリフェノール及び媒染剤を含むベントナイト染色用組成物によって天然ベントナイトは着色される。
【0048】
一実施形態によれば、ポリフェノール及び媒染剤を含むベントナイト染色用組成物によって染色されたベントナイトが提供される。
【0049】
図1Aを参照すると、精製された天然ベントナイトは白色を示す。図1Bを参照すると、松葉から抽出したポリフェノールと媒染剤としてFe3+を用いて染色されたベントナイトは、白色、赤色/紫色と黄色に近い色を示す。
【0050】
図2を参照すると、10mMのポリフェノールと100mMの媒染剤を混合して製造した溶液で染色されたベントナイトの様々な色を示す。
【0051】
図3を参照すると、ポリフェノールの重さを10mgにし、媒染剤のモル濃度は50mMに混合して製造された溶液で染色されたベントナイトの様々な色を示す。
【0052】
一実施形態によれば、前記染色されたベントナイトは、噴霧乾燥時に結晶系の球面形状と均一な直径を有してもよい。前記均一な直径は10~100μmであってもよく、好ましくは、20~50μmであってもよい。結晶系の球面形状と均一な直径を有する染色されたベントナイトは、肌の質感が良好で化粧料組成物などに適用できる。
【0053】
図4によれば、XRDの分析結果、ポリフェノール-金属媒染剤分子がベントナイトに吸着又は固定されても、ベントナイトの鉱物学的な性状は保持される。従って、前記金属の媒染剤は、ベントナイトにポリフェノール-金属媒染剤分子を吸着、固定されるように媒介してベントナイトの色を変化させるが、ポリフェノール-金属媒染剤分子がベントナイトの鉱物学的な性状を破壊させることはない。
【0054】
前記化粧料組成物として、アトピー用石鹸、クレンジングフォーム、クレンジングクリーム、クレンジングウォーター、バス剤、化粧水ローション、スキンソフナー、スキントナー、ローション、クリーム、エッセンス、アストリンゼント、乳液、ジェル、リップスティック、噴霧剤、シャンプー、リンス、トリートメント、ボディクレンザー、パック、マッサージ剤、フェース・パウダー、コンパクト、ファンデーション、ツーウェイケーキ、及びメイクアップベースからなる群より選択されたいずれか1つ以上の剤形で製造されてもよく、染色されたベントナイトなどの粘土鉱物が適用される物品であれば、前記に限定されない。
【0055】
本発明の他の実施形態によれば、ベントナイトを分離精製するステップ、媒染剤及びポリフェノールを混合した溶液を製造するステップ、及びポリフェノール及び媒染剤混液と分離精製されたベントナイトを撹拌させるステップを含むベントナイト染色方法が提供される。
【0056】
一実施形態によれば、前記分離精製されたベントナイトの粒度は0.01~100μmであってもよい。
【0057】
一実施形態によれば、前記ベントナイトの含量はポリフェノール及び媒染剤混液100重量%に対して1~20重量%であってもよい。
【0058】
本発明のベントナイトを染色するための組成物を用いてベントナイトを染色し、図5に示すCIE L*a*b*カラー空間(color space)を用いて分析した。前記CIE L*a*b*カラー空間において、L*値は明るさを示す。L*=0であれば黒色であり、L*=100であれば白色を示す。a*は赤と緑のいずれかに偏っているかを示す。a*が負数であれば緑に偏った色であり、正数であれば赤色/紫の方に偏った色である。b*は黄と青を示す。b*が負数であれば青であり、b*が正数であれば黄である。
【0059】
<試験例1.ベントナイトの精製>
ベントナイト原鉱を破粉砕した後、水で洗浄した。洗浄後に湿式分級器でふるいをかけて粒度25μm以下であるベントナイトを分離した。ここで、分級器に入る懸濁液の固体-液体比は10%以内である。分離された粒度25μm以下であるベントナイトと脱イオン水(Deionized water)又は精製水を混合して5%以下の固体-液体比を有する懸濁液を製造した。塩基性を有するベントナイト懸濁液を有機酸又は無機酸を用いてpHがpH6~pH8になるようベントナイト懸濁液のpHを調節した。ここに凝集剤を入れて撹拌した。凝集剤としてCaCl溶液が好ましく、濃度は1M以下にする。撹拌した後に固体-液体を分離し、塩素濃度200-300ppm以下に洗浄して最終の懸濁液の濃度は5%未満にした。
【0060】
<試験例2.ベントナイトの染色用組成物の製造及びベントナイト染色>
ポリフェノールのモル濃度による染色用溶液の製造及びベントナイト染色
ポリフェノールと媒染剤を混合してベントナイト染色用溶液を製造した。ポリフェノールは、リグニン(Lignin)、ペクチン(Pectin)、タンニン(Tannnic)、又は、カテキン(Catechin)のいずれか1つ以上であり、媒染剤はFe3+、Fe2+又はAl3+のいずれか1つ以上である。ポリフェノールと媒染剤のモル比は1:1~1:10である。表1は、ポリフェノールのモル濃度を10mMとし、媒染剤のモル濃度は100mMに混合した。製造例1~6は、ポリフェノールのモル濃度を10mMにして製造されたベントナイト染色用溶液である。
【0061】
【表1】

*:松葉抽出物は、アルコールによる抽出液を使用した。松葉5g、アルコール(99.8%以上)30ml、撹拌6時間以上である。
【0062】
【表2】
【0063】
表1の製造例1~6によって製造された染色用溶液25mlと精製されたベントナイト0.5g(表2)を撹拌させた。ここでベントナイトの固体-液体比(ベントナイト溶液(媒染剤+ポリフェノール))は5~10%である。撹拌は1~6時間行い、媒染剤とポリフェノールとを混合した溶液の体積増加により撹拌時間が増加し得る。
【0064】
ポリフェノールの重さによる染色用溶液の製造及びベントナイト染色
表3は、ポリフェノールの重さを10mgにし、媒染剤のモル濃度は50mMに混合して製造したベントナイト染色用溶液である。前記ポリフェノールは、リグニン(Lignin)、ペクチン(Pectin)、タンニン(Tannnic)、又は、カテキン(Catechin)のいずれか1つ以上であり、前記媒染剤は、Fe3+、Fe2+又はAl3+のいずれか1つ以上である。製造例7~11は、ポリフェノールの重さを10mgにして製造されたベントナイト染色用溶液である。
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】
【0067】
製造例7~11によって製造された染色用溶液と染色前精製されたベントナイトを30分間0.5M HCl溶液で酸洗浄を行った。その後、製造例7~11により製造された染色用溶液20mlと精製されたベントナイト0.5g(表4)を撹拌させた。
【0068】
<実施形態1.染色されたベントナイトの色分析>
試験例1において精製されたベントナイト(0.5g)を試験例2で製造されたポリフェノールと媒染剤を含んでいる染色用溶液で染色し、変色を色彩色差計(MINOLTA)を用いて分析した。CIE L*a*b*color spaceを用いて染色されたベントナイト(0.5g)の色を分析した。表5は、ポリフェノールのモル濃度を10mMに固定して製造された溶液でベントナイトを染色し、変色を色彩色差計を用いて分析した結果である。表6は、ポリフェノールの重さを10mgに固定して製造された溶液でベントナイトを染色し、変色を色彩色差計を用いて分析した結果である。
【0069】
【表5】
【0070】
対照群は、精製されたベントナイトとして、色彩色差計を用いて分析した。色度はL値が74.69、a値が-0.37、b値が6.14であって、白色、緑色及び黄色に近い色を示した。
【0071】
製造例1は、リグニン10mMとFe3+100mMを混合して製造した染色用溶液であり、精製されたベントナイトを染色した。色彩色差計を用いて分析した結果、色度はL値が14.34、a値が1.22、b値が6.1であった。精製されたベントナイトの色度と比較してb値はほとんど変化していないが、L値とa値が変わって黒色と赤色/紫色に近い色を示した。
【0072】
製造例2は、ペクチン10mMとFe3+100mMを混合して製造した染色用溶液であり、精製されたベントナイトを染色した。色彩色差計を用いて分析した結果、色度はL値が68.38、a値が4.4、b値が24.01であって、白色、赤色/紫色と黄色に近い色を示した。
【0073】
製造例3は、タンニン10mMとFe3+100mMを混合して製造した染色用溶液であり、精製されたベントナイトを染色した。色彩色差計を用いて分析した結果、色度はL値が4.68、a値が0.4、b値が-0.44であって、精製されたベントナイトの色度と比較してL値の変化が大きく、黒色、赤色/紫色と青色に近い色を示した。
【0074】
製造例4は、カテキン10mMとFe3+100mMを混合して製造した染色用溶液であり、精製されたベントナイトを染色した。色彩色差計を用いて分析した結果、色度はL値が15.32、a値が1.47、b値が5.53であって、黒色、赤色/紫色と黄色に近い色を示した。
【0075】
製造例5は、松葉抽出物10mMとFe3+100mMを混合して製造した染色用溶液であり、精製されたベントナイトを染色した。色彩色差計を用いて分析した結果、色度はL値が71.3、a値が4.96、b値が35.68であって、白色、赤色/紫色と黄色に近い色を示した。
【0076】
製造例6は、松葉抽出物10mMとFe2+100mMを混合して製造した染色用溶液であり、精製されたベントナイトを染色した。色彩色差計を用いて分析した結果、色度はL値が73.82、a値が0.87、b値が16.83であって、白色、赤色/紫色と黄色に近い色を示した。
【0077】
【表6】
【0078】
対照群は精製されたベントナイトを30分間0.5M HCl溶液で酸洗浄を行ったもので、色彩色差計を用いて分析した。色度はL値が64.51、a値が-2.03、b値が6.01であって、白色、緑色及び黄色に近い色を示した。
【0079】
製造例7は、Fe3+50mMを含む染色用溶液であり、酸洗浄された精製されたベントナイトを染色した。色彩色差計を用いて分析した結果、色度はL値が61.61、a値が-5.85、b値が37.33であった。精製されたベントナイトの色度と比較して、L値とa値はほとんど変化していないが、b値が変わって酸洗浄された精製されたベントナイトに比べて黄色がさらに濃く示された。
【0080】
製造例8は、リグニン10mgとFe3+50mMを混合して製造した染色用溶液であり、酸洗浄された精製されたベントナイトを染色した。色彩色差計を用いて分析した結果、色度はL値が39.01、a値が-0.18、b値が14.03であって、黒色、緑色及び黄色に近い色を示した。
【0081】
製造例9は、ペクチン10mgとFe3+50mMを混合して製造した染色用溶液であり、酸洗浄された精製されたベントナイトを染色した。色彩色差計を用いて分析した結果、色度はL値が66.27、a値が-7.30、b値が30.27であって、白色、緑色及び黄色に近い色を示した。
【0082】
製造例10は、タンニン10mgとFe3+50mMを混合して製造した染色用溶液であり、酸洗浄された精製されたベントナイトを染色した。色彩色差計を用いて分析した結果、色度はL値が34.04、a値が-3.80、b値が7.85であって、黒色、緑色及び黄色に近い色を示した。
【0083】
製造例11は、カテキン10mgとFe3+50mMを混合して製造した染色用溶液であり、酸洗浄された精製されたベントナイトを染色した。色彩色差計を用いて分析した結果、色度はL値が29.41、a値が1.36、b値が8.99であって、黒色、赤色/紫色及び黄色に近い色を示した。
【0084】
上述したように、各実施形態は限定された実施形態と図面によって説明されたが、当技術分野で通常の知識を有する者であれば、上記の記載から様々な修正及び変形が可能である。例えば、説明された技術が説明された方法と異なる順に実行されたり、及び/又は説明された構成要素が説明された方法と異なる形態に結合又は組み合せわせられたり、他の構成要素又は均等物によって代替、置換されても適切な結果が達成されることができる。従って、他の実現、他の実施形態及び特許請求の範囲と均等なものなども後述する請求の範囲の範囲に属する。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5