IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エスケー イノベーション  カンパニー リミテッドの特許一覧 ▶ エスケー アイイー テクノロジー カンパニー リミテッドの特許一覧

特開2022-42491ガラス基板多層構造体、その製造方法、およびそれを含むフレキシブルディスプレイパネル
<>
  • 特開-ガラス基板多層構造体、その製造方法、およびそれを含むフレキシブルディスプレイパネル 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042491
(43)【公開日】2022-03-14
(54)【発明の名称】ガラス基板多層構造体、その製造方法、およびそれを含むフレキシブルディスプレイパネル
(51)【国際特許分類】
   B32B 17/10 20060101AFI20220307BHJP
   C09D 179/04 20060101ALI20220307BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20220307BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20220307BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20220307BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20220307BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20220307BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20220307BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20220307BHJP
   G02B 1/18 20150101ALI20220307BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20220307BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
B32B17/10
C09D179/04
C09D183/04
B32B27/34
B05D1/36 Z
B05D7/00 E
B05D7/24 302X
B05D7/24 302U
B05D5/00 B
B05D5/00 A
B05D7/00 K
G02B1/14
G02B1/18
B32B27/38
B32B27/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021137449
(22)【出願日】2021-08-25
(31)【優先権主張番号】10-2020-0111578
(32)【優先日】2020-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】519214271
【氏名又は名称】エスケー アイイー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK IE TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 03188 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ユン チョル ミン
(72)【発明者】
【氏名】アン ジョン ナム
【テーマコード(参考)】
2K009
4D075
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
2K009AA15
2K009BB02
2K009BB22
2K009CC26
2K009CC33
2K009CC42
2K009DD02
2K009EE05
4D075AC53
4D075AE03
4D075AE19
4D075BB24Z
4D075BB26Z
4D075BB38Z
4D075BB42Z
4D075BB46Z
4D075BB91Y
4D075BB92Y
4D075CA02
4D075CA04
4D075CA14
4D075CA47
4D075CA48
4D075CB01
4D075CB06
4D075DA04
4D075DA06
4D075DB13
4D075DC24
4D075EA05
4D075EA07
4D075EB16
4D075EB33
4D075EB39
4D075EB42
4D075EB45
4D075EC30
4D075EC37
4F100AG00B
4F100AK43D
4F100AK49A
4F100AK49C
4F100AK52D
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100BA25A
4F100BA25C
4F100EH46A
4F100EH46C
4F100EH46D
4F100EJ08A
4F100EJ08C
4F100EJ08D
4F100GB41
4F100JK10B
4F100JK12D
4F100JK17B
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
4J038DJ021
4J038DL051
4J038GA07
4J038MA07
4J038MA09
4J038NA11
4J038NA12
4J038NA13
4J038PB08
4J038PB09
4J038PC03
4J038PC08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】外部の応力や、熱衝撃に応じた曲げの発生がほぼない、具体的には±0.2mm以内の曲げを有するガラス基板多層構造体を提供する。
【解決手段】フレキシブルガラス基板10と、前記フレキシブルガラス基板の前面に形成される第1ポリイミド系飛散防止層21と、前記第1ポリイミド系飛散防止層上に形成されるエポキシ系ハードコーティング層30と、前記ガラス基板の後面に形成される第2ポリイミド系飛散防止層22とを含むガラス基板多層構造体100、およびそれを含むフレキシブルディスプレイパネルを提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブルガラス基板と、
前記フレキシブルガラス基板の前面に形成される第1ポリイミド系飛散防止層と、
前記第1ポリイミド系飛散防止層上に形成されるエポキシ系ハードコーティング層と、
前記ガラス基板の後面に形成される第2ポリイミド系飛散防止層と、を含む、ガラス基板多層構造体。
【請求項2】
前記第1ポリイミド系飛散防止層および第2ポリイミド系飛散防止層は、フッ素系芳香族ジアミン単位および芳香族二無水物単位を含むポリイミド系樹脂からなる、請求項1に記載のガラス基板多層構造体。
【請求項3】
前記エポキシ系ハードコーティング層は、エポキシ系シラン樹脂を含んでなる、請求項1または2の何れか一項に記載のガラス基板多層構造体。
【請求項4】
前記フレキシブルガラス基板は、厚さが1~100μmである、請求項1から3の何れか一項に記載のガラス基板多層構造体。
【請求項5】
前記第1ポリイミド系飛散防止層および第2ポリイミド系飛散防止層は、厚さが1~10μmである、請求項1から4の何れか一項に記載のガラス基板多層構造体。
【請求項6】
前記第1ポリイミド系飛散防止層の厚さが、第2ポリイミド系飛散防止層の厚さよりも薄いかまたは同一である、請求項1から5の何れか一項に記載のガラス基板多層構造体。
【請求項7】
前記エポキシ系ハードコーティング層は、厚さが500nm~30μmである、請求項1から6の何れか一項に記載のガラス基板多層構造体。
【請求項8】
前記ガラス基板多層構造体は、ASTM D3363に準じた鉛筆硬度が4H以上である、請求項1から7の何れか一項に記載のガラス基板多層構造体。
【請求項9】
前記ガラス基板多層構造体は、ペンドロップ試験(PEN DROP TEST)による耐衝撃性が5cm以上である、請求項1から8の何れか一項に記載のガラス基板多層構造体。
【請求項10】
前記ガラス基板多層構造体は、曲げ特性が±0.4mm以内の値を有する、請求項1から9の何れか一項に記載のガラス基板多層構造体。
(前記曲げ特性は、横180mm×縦76mm、厚さ40μmのガラス基板上に、前記第1ポリイミド系飛散防止層および第2ポリイミド系飛散防止層とハードコーティング層とを塗布および硬化した直後、常温でのガラス基板多層構造体の曲げ程度を測定したものである。この際、除振台方向にガラス基板多層構造体が曲がり、ガラス基板の中心(center)がエア(air)層に曲がっている場合には、負(応力)の値(mm)で示し、その逆に、除振台上でガラス基板の両端(エッジ)がエア(air)層方向に曲がっている場合には、正(張力)の値(mm)で示す。)
【請求項11】
フレキシブルガラス基板の前面に飛散防止組成物を塗布して硬化し、第1ポリイミド系飛散防止層を形成するステップと、
前記フレキシブルガラス基板の後面に前記飛散防止組成物を塗布して硬化し、第2ポリイミド系飛散防止層を形成するステップと、
前記第1ポリイミド系飛散防止層上にハードコーティング組成物を塗布して硬化し、エポキシ系ハードコーティング層を形成するステップと、を含む、ガラス基板多層構造体の製造方法。
【請求項12】
前記飛散防止組成物は、フッ素系芳香族ジアミンおよび芳香族二無水物を含む、請求項11に記載のガラス基板多層構造体の製造方法。
【請求項13】
前記ハードコーティング組成物は、エポキシ系シラン樹脂および架橋剤を含む、請求項11または12の何れか一項に記載のガラス基板多層構造体の製造方法。
【請求項14】
請求項1から10の何れか一項に記載のガラス基板多層構造体を含むフレキシブルディスプレイパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガラス基板多層構造体、その製造方法、およびそれを含むフレキシブルディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、タブレットPCのようなモバイル機器の発展とともにディスプレイ装置の薄膜化が求められており、中でも、ユーザが望む際に曲げたり折り畳んだりできるフレキシブルディスプレイ装置、または製造工程において曲げたり折り畳んだりするステップを備えるフレキシブルディスプレイ装置が注目されている。
【0003】
かかるディスプレイ装置は、ディスプレイ画面を覆う透明なウィンドウを含み、ウィンドウは、外部衝撃と使用中に加えられるスクラッチなどからディスプレイ装置を保護する機能をする。
【0004】
ディスプレイ用ウィンドウとしては、機械的特性に優れた素材であるガラスまたは強化ガラスが一般的に用いられているが、従来のガラスは、柔軟性がなく、自体の重さにより、ディスプレイ装置の高重量化の原因になるという問題がある。
【0005】
上記のような問題を解決するために、フレキシブルガラス基板を薄膜化する技術が開発されているが、依然として曲げたり撓ませたりできるフレキシブル特性を実現することが充分ではなく、また、依然として外部の衝撃に対して容易に破損するという問題を解決できていない現状である。特にフレキシブルディスプレイ装置の場合、外部衝撃または曲がったり折り畳まれたりする過程でガラス基板ウィンドウが容易に割れ、その破片が飛散してユーザが負傷を受けるという問題がある。また、これを解決するために、フレキシブルガラス薄膜上に飛散防止層を形成して問題を解決しようとする努力があったが、熱履歴などにより収縮する場合、ガラス基板の変形および飛散防止層が形成されたガラス多層構造体の変形の問題は、依然として解決できていない。
【0006】
そこで、耐久性が向上し、ガラス基板が破損する際の飛散現象が改善され、ユーザの安全を確保することができ、耐熱性および光学的特性が改善されるとともに、前記熱履歴などの外部応力に応じたガラス基板およびガラス基板の変形問題を解決するための新しい多層構造の開発が必要な現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2015-0028471号(2015.03.16.)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一課題は、薄膜のガラス基板を基材として用いる場合、飛散防止層およびハードコーティング層の形成時、硬化に応じた熱収縮によるガラス基板のエッジ(edge)部分などの曲げの発生を防止することができ、優れた表面硬度を有するため、従来のプラスチック基材に比べて同一厚さ上でも優れた耐衝撃(ペンドロップ、PEN DROP)特性を有する、フレキシブルディスプレイ装置に適用可能なガラス基板多層構造体を提供することで実現可能である。
【0009】
本発明の他の一課題は、優れた耐久性および耐飛散特性を有するため、ユーザの安全を確保することができ、曲げたり撓ませたりできる柔軟な特性を有するため、折り畳んだり曲げたりする動作を繰り返しても、ガラスが割れたりクラックが発生したりしないため、フレキシブルディスプレイ装置に適用可能なガラス基板多層構造体を提供することで実現可能である。
【0010】
本発明のまた他の課題は、外部の応力や、熱衝撃に応じた曲げの発生がほぼない、具体的には±0.2mm以内の曲げを有するガラス基板多層構造体を提供することで実現可能である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、フレキシブルガラス基板と、前記フレキシブルガラス基板の前面に形成される第1ポリイミド系飛散防止層と、前記第1ポリイミド系飛散防止層上に形成されるエポキシ系ハードコーティング層と、前記ガラス基板の後面に形成される第2ポリイミド系飛散防止層と、を含む、ガラス基板多層構造体を提供する。
【0012】
本発明の一態様において、前記第1ポリイミド系飛散防止層および第2ポリイミド系飛散防止層は、フッ素系芳香族ジアミン単位および芳香族二無水物単位を含むポリイミド系樹脂からなってもよい。
本発明の一態様において、前記エポキシ系ハードコーティング層は、エポキシ系シラン樹脂を含んでなってもよい。
【0013】
本発明の一態様において、前記ガラス基板多層構造体は、曲げ特性が±0.4mm以内の値を有してもよい。
前記曲げ特性は、横180mm×縦76mm、厚さ40μmのガラス基板上に、前記第1ポリイミド系飛散防止層および第2ポリイミド系飛散防止層とハードコーティング層とを塗布および硬化した直後、常温でのガラス基板多層構造体の曲げ程度を測定したものである。この際、ガラス基板多層構造体が除振台方向に基板が曲がり、ガラス基板の中心(center)がエア(air)層に曲がっている場合には、負(応力)の値(mm)で示し、その逆に、除振台上でガラス基板の両端(エッジ)がエア(air)層方向に曲がっている場合には、正(張力)の値(mm)で示す。
【0014】
本発明の一態様において、前記フレキシブルガラス基板は、厚さが1~100μmであってもよい。
本発明の一態様において、前記第1ポリイミド系飛散防止層および第2ポリイミド系飛散防止層は、厚さが1~10μmであってもよい。
【0015】
本発明の一態様において、前記第1ポリイミド系飛散防止層の厚さが、第2ポリイミド系飛散防止層の厚さよりも薄いかまたは同じであってもよい。
本発明の一態様において、前記エポキシ系ハードコーティング層は、厚さが500nm~30μmであってもよい。
【0016】
本発明の一態様において、前記ガラス基板多層構造体は、ASTM D3363に準じた鉛筆硬度が4H以上であってもよい。
本発明の一態様において、前記ガラス基板多層構造体は、ペンドロップ試験(PEN DROP TEST)による耐衝撃性が5cm以上であってもよい。
【0017】
本発明の他の一態様は、ガラス基板の前面に飛散防止組成物を塗布して硬化し、第1ポリイミド系飛散防止層を形成するステップと、前記ガラス基板の後面に前記飛散防止組成物を塗布して硬化し、第2ポリイミド系飛散防止層を形成するステップと、前記第1ポリイミド系飛散防止層上にハードコーティング組成物を塗布して硬化し、エポキシ系ハードコーティング層を形成するステップと、を含む、ガラス基板多層構造体の製造方法を提供する。
【0018】
本発明の一態様において、前記飛散防止組成物は、フッ素系芳香族ジアミンおよび芳香族二無水物を含んでもよい。
本発明の一態様において、前記ハードコーティング組成物は、エポキシ系樹脂前駆体および反応性官能基が表面に導入された無機粒子を含んでもよい。
【0019】
本発明のまた他の一態様は、前記ガラス基板多層構造体を含むフレキシブルディスプレイパネルを提供する。
【発明の効果】
【0020】
本開示のガラス基板多層構造体は、表面硬度が高く、柔軟であり、耐熱性および光学性特性に優れるという長所がある。
また、本開示のガラス基板多層構造体は、フレキシブルガラス基板の両面に、同一な化学構造を有するポリイミド系飛散防止層、特にフッ素含有ポリイミドを採択することで、フレキシブルガラス基板が、熱履歴などの外部応力による、ガラス基板の変形またはガラス基板多層構造体の変形を防止し、長期的変形が発生しないという効果を有する。
【0021】
また、本開示のガラス基板多層構造体は、同一な化学構造を有する物質のポリイミド、特にフッ素元素を含有するポリイミドを飛散防止層として形成することで、フレキシブルガラス基板の熱変形を抑制するだけでなく、その上部に形成されるエポキシ系ハードコーティング層の変形も抑制するという驚くべき効果を有する。さらに、ガラス基板の前面に形成される第1ポリイミド系飛散防止層およびガラス基板の後面に形成される第2ポリイミド系飛散防止層の厚さを特定の割合に調節することで、ガラス基板が破損する際に飛散する現象が改善され、顕著に向上した耐衝撃(ペンドロップ、PEN DROP)特性を実現することができるため、従来のプラスチック基材からなるカバーウィンドウレベルの厚さ上でペン適用が可能であるという長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一態様に係るガラス多層構造体の断面を概略的に示した分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示で用いられる用語は、特に定義しない限り、当業者により一般的に理解される意味と同一の意味を有する。また、本開示において、説明で用いられる用語は、単に特定の具体例を効果的に記述するためのものであり、本開示を制限することを意図しない。
本開示の明細書および添付された特許請求の範囲で用いられる単数の形態は、文脈上、特に指示しない限り、複数の形態も含むことを意図する。
【0024】
本開示を記述する明細書の全般にわたって、ある部分がある構成要素を「含む」とは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0025】
本明細書で用いられる第1、第2などの用語は、多様な構成要素を説明するのに用いられてもよいが、構成要素が用語により限定されてはならない。用語は、1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的にのみ用いられる。
【0026】
本開示において、用語「フレキシブル(flexible)」は、曲がったり撓んだり折り畳まれたりすることを意味する。
本開示において、用語「ポリイミド系飛散防止層」は、「第1飛散防止層」および「第2飛散防止層」を含む意味として用いられたものであり、前記「第1飛散防止層」および「第2飛散防止層」は、それぞれ「第1ポリイミド系飛散防止層」および「第2ポリイミド系飛散防止層」を含む意味として用いられたものである。
【0027】
本開示において、用語「ガラス基板」は、「フレキシブルガラス基板」、「薄膜ガラス基板」などのガラス基板を何れも含む意味として用いられたものである。
本開示において、用語「以内」は、包含する範囲を意味するものとして用いられたものであり、具体的な一例として、「±0.2mm以内」は、+0.2mmおよび-0.2mmを含んだ範囲を意味するものとして用いられたものである。
【0028】
本開示の発明者らは、上記の課題を解決するために多くの研究をした結果、フレキシブルガラス基板の両面に、同一な化学構造を有するポリイミド物質からなる第1ポリイミド系飛散防止層および第2ポリイミド系飛散防止層を形成し、前記第1ポリイミド系飛散防止層上にハードコーティング層を形成することで、フレキシブル特性を実現しながらも、耐飛散特性、耐衝撃特性、および光学特性に優れるため、フレキシブルディスプレイパネルのカバーウィンドウへの適用に好適なガラス基板多層構造体を見出し、本開示を完成した。
【0029】
また、前記第1ポリイミド系飛散防止層および第2ポリイミド系飛散防止層は、ポリイミド、特にフッ素含有ポリイミドを採択することで、フレキシブルガラス基板が、熱履歴などの多様な外部応力に応じた短期的または長期的変形が発生しないという効果を有するだけでなく、エポキシ系ハードコーティング層の変形も抑制するという効果を有することを確認した。さらに、本開示のポリイミド系飛散防止層を形成する物質として、特定のポリイミド系組成物、特にフッ素元素を含有するポリイミド系組成物を用いて、前記ポリイミド系飛散防止層を形成することで、前記変形防止効果をさらに極大化し、また、耐飛散特性に優れながらも、耐熱性および光学的特性に優れることを見出し、本開示を完成するに至った。
【0030】
以下、本開示の各構成について図面を参照して具体的に説明する。但し、これは例示的なものにすぎず、本開示が例示的に説明された具体的な実施形態に制限されるものではない。
図1は、本発明の一態様に係るガラス基板多層構造体を示した概略図である。図1に示されたように、本発明の一態様に係るガラス基板多層構造体100は、フレキシブルガラス基板10の両面に形成されたポリイミド系飛散防止層20、およびエポキシ系ハードコーティング層30を含む。前記ポリイミド系飛散防止層20は、前記フレキシブルガラス基板10の前面に形成された第1ポリイミド系飛散防止層21と、前記フレキシブルガラス基板10の後面に形成された第2ポリイミド系飛散防止層22と、を含む。前記エポキシ系ハードコーティング層30は、前記第1ポリイミド系飛散防止層21上に形成されたものである。
【0031】
本発明の一態様に係るガラス基板多層構造体は、ASTM D3363に準じた鉛筆硬度が3H以上であってもよく、具体的には4H以上であってもよい。また、ペンドロップ試験(PEN DROP TEST)による耐衝撃性が3cm以上であってもよく、具体的には、5cm以上、10cm以上、または30cm以上であってもよい。この際、ペンドロップ試験(PEN DROP TEST)による耐衝撃特性は、0.7mmの直径を有し、5.3gの重さを有するボールペンを垂直落下させた際に表面打痕および圧痕がない状態を意味する。
【0032】
本発明の一態様に係るガラス基板多層構造体は、曲げ特性が±0.4mm以内の値を有してもよく、具体的には、±0.38mm、または±0.2mm以内の値を有してもよい。
前記曲げ特性は、横180mm×縦76mm、厚さ40μmのガラス基板上に、前記第1ポリイミド系飛散防止層および第2ポリイミド系飛散防止層とハードコーティング層とを塗布および硬化した直後、常温でのガラス基板多層構造体の曲げ程度を測定したものである。この際、除振台方向にガラス基板多層構造体が曲がり、ガラス基板の中心(center)がエア(air)層に曲がっている場合には、負(応力)の値(mm)で示し、その逆に、除振台上でガラス基板の両端(エッジ)がエア(air)層方向に曲がっている場合には、正(張力)の値(mm)で示す。
【0033】
本発明の一態様に係るガラス基板多層構造体は、ポリイミド系飛散防止層を形成するポリイミドのASTM E111に準じたモジュラスが4GPa以下、3GPa以下、または2.5GPa以下であり、破断伸びが10%以上、20%以上、または30%以上であり、ASTM D1746に準じて388nmで測定された光透過率が5%以上、または5~80%であり、400~700nmで測定された全光線透過率が87%以上、88%以上、または89%以上であり、ASTM D1003に準じたヘイズが2.0%以下、1.5%以下、または1.0%以下であり、ASTM E313に準じた黄色度が5.0以下、3.0以下、または0.4~3.0であり、およびb値が2.0以下、1.3以下、または0.4~1.3を有してもよい。
【0034】
本発明の一態様に係るガラス基板多層構造体は、フッ素元素を含有するポリイミドを飛散防止層形成用物質として採択し、フレキシブルガラス基板の両面にポリイミド系飛散防止層を形成することで、フレキシブルガラス基板のストレス(例えば、熱履歴などの多様な外部応力)に応じた変形を抑制するだけでなく、ポリイミド系飛散防止層の上部に形成されるエポキシ系ハードコーティング層の変形も抑制し、全体的に本開示のガラス基板多層構造体の変形抵抗性を顕著に向上させるという効果を付与する。
【0035】
さらに、本発明の一態様に係るガラス基板多層構造体は、上記のような効果だけでなく、優れた柔軟性によりフレキシブル特性の実現が容易であり、耐衝撃および耐飛散特性に優れるため、ユーザの安全を確保することができ、優れた光学的特性により透明であるため、フレキシブルディスプレイパネルのウィンドウカバーとして適用されることができる。
【0036】
以下、図1を参照して、本発明の一態様に係るガラス基板多層構造体100をなすフレキシブルガラス基板10、第1ポリイミド系飛散防止層21、第2ポリイミド系飛散防止層22、およびエポキシ系ハードコーティング層30の各構成について具体的に説明する。
【0037】
<フレキシブルガラス基板>
フレキシブル(flexible)ガラス基板は、折り畳んだり(folderble)曲がったり(curved)するガラス基板を意味し、ディスプレイ装置のウィンドウとして機能できるものであって、耐久性が良く、表面平滑性および透明度に優れるという長所がある。
【0038】
本発明の一態様として、ガラス基板多層構造体100は、フレキシブルディスプレイパネル100の一面上に形成されてもよく、曲がりまたは折り畳まれに対応して曲がったり折り畳まれたりすることができる。この際、ガラス基板多層構造体100が比較的に小さい曲率半径で屈曲するかまたは大略的に折り畳まれる程度に変形するために、フレキシブルガラス基板10は、超薄型ガラス基材からなるべきである。本発明の一態様として、フレキシブルガラス基板10は、超薄型のガラス基材であってもよく、厚さは100μm以下であってもよく、具体的には、厚さが1~100μmまたは30~100μmであってもよい。
【0039】
本発明の一態様において、前記フレキシブルガラス基板は、化学強化層をさらに含んでもよく、前記化学強化層は、フレキシブルガラス基板に含まれるガラス基材の第1面または第2面のうち何れか1面以上に化学強化処理を行って形成されてもよい。これにより、フレキシブルガラス基板の強度が向上することができる。
【0040】
このように化学強化処理された超薄型のフレキシブルガラス基板を形成する方法には種々の方法があるが、一例として、100μm以下の厚さを有するマザーガラスを準備し、切断、面取り、焼成などを経て所定の形状に加工した後、それを化学強化処理してもよい。他の一例として、一般厚さのマザーガラスを準備し、100μm以下の厚さにスリミング(slimming)作業をした後、形状加工および化学強化処理を順次行ってもよい。この際、スリミング作業は、機械的方法および化学的方法から選択される何れか1つまたは2つの方法をともに用いて行われてもよい。
【0041】
<ポリイミド系飛散防止層>
本開示において、ポリイミド系飛散防止層は、前記ガラス基板10の破損時、発生するエネルギーを吸収することで、ガラス基板10の破片が飛散するのを防止する基本機能の他に、ハードコーティング層が形成される方向のポリイミド飛散防止層(第1ポリイミド系飛散防止層に該当)の厚さを、その反対面の飛散防止層(第2ポリイミド系飛散防止層に該当)の厚さよりも薄いかまたは同じくに形成することで、ガラス基板の両面の応力を調節するようにし、熱履歴などの外部応力に応じた長期変形または短期変形を防止する機能をする層であって、上述した第1ポリイミド系飛散防止層および第2ポリイミド系飛散防止層を含む意味として用いられたものである。
【0042】
前記第1ポリイミド系飛散防止層および第2ポリイミド系飛散防止層は、互いに同一または異なる樹脂からなってもよく、具体的には、同一な樹脂からなる際、ガラス基板の変形をさらに防止することができる。
【0043】
本発明の一態様として、本開示のポリイミド系飛散防止層は、同一な物質のポリイミド、特にフッ素元素を含有するポリイミドを飛散防止層として形成し、ハードコーティング層が形成される側面の厚さをその反対面に形成される飛散防止層の厚さよりも薄く形成することで、前記ポリイミド系飛散防止層の形成時に発生する熱収縮などの外部応力に応じたフレキシブルガラス基板の曲げおよび変形などの変形を抑制するだけでなく、その上部に形成されるエポキシ系ハードコーティング層の変形も抑制するという効果を有する。
【0044】
本発明の一態様において、ポリイミド系飛散防止層は、フッ素系芳香族ジアミンから誘導された単位および芳香族二無水物から誘導された単位を含むポリイミド系樹脂からなる場合、具体的には、前記フッ素系芳香族ジアミンおよび芳香族二無水物を含む単量体を重合したポリイミドイミド系樹脂からなる場合、光学的物性および機械的物性に優れ、弾性力および復原力に優れるという長所を有し、また、前記ガラス基板の変形を防止するという効果をさらに増進させることができる。
【0045】
本発明の一態様において、前記フッ素系芳香族ジアミンとしては、1,4-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン(1,4-Bis(4-amino-2-trifluoromethylphenoxy)benzene、6FAPB)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン(2,2’-Bis(trifluoromethyl)benzidine、TFMB)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(2,2’-Bis(trifluoromethyl)-4,4’-diaminodiphenyl ether、6FODA)などから選択される何れか1つまたは2つ以上を用いてもよい。また、前記フッ素系芳香族ジアミンは、他の公知の芳香族ジアミン成分と混合して用いてもよいが、これに制限されるものではない。かかるフッ素系芳香族ジアミンを用いることで、製造されるポリイミド系飛散防止層によるガラス基板の熱履歴などによる変形を抑制することができ、耐飛散特性をさらに向上させることができ、さらには、光学的特性を向上させることができ、黄色度も改善することができる。
【0046】
本発明の一態様において、前記芳香族二無水物は、4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物(6FDA)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、スルホニルジフタル酸無水物(SO2DPA)、(イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(6HDBA)、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸二無水物(TDA)、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ビス(カルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物(SiDA)、ビス(ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物(BDSDA)、およびエチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)(Ethylene glycol bis(anhydrotrimellitate)、TMEG100)などから選択される何れか1つまたは2つ以上であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0047】
本発明の一態様において、前記フッ素系芳香族ジアミンと芳香族二無水物は、モル比で、1:0.8~1:1.2で用いてもよく、または1:0.9~1:1.1で用いてもよいが、これに制限されるものではない。
【0048】
本発明の一態様において、前記第1ポリイミド系飛散防止層および第2ポリイミド系飛散防止層は、エポキシ系ハードコーティング層がその上部に形成される第1ポリイミド系飛散防止層の厚さが、その反対面に形成される第2ポリイミド系飛散防止層の厚さよりも薄いかまたは同一である場合、さらに優れた本開示の効果を達成することができる。すなわち、熱変形または外部応力に対する変形防止特性が円滑に調節されて変形が防止されるが、それぞれの厚さが10μm以下であってもよく、下限は制限されないが、100nmまたは1μmであってもよい。
【0049】
<ハードコーティング層>
次に、ハードコーティング層について具体的に説明する。
ハードコーティング層は、ガラス基板多層構造体を外部の物理的および化学的損傷から保護する機能を行うことができ、優れた光学的、機械的特性を有してもよい。
【0050】
本発明の一態様において、前記エポキシ系ハードコーティング層30は、前記第1ポリイミド系飛散防止層21上に形成されてもよく、公知のハードコーティング層の形成物質からなるものであれば、制限されるものではないが、一例として、エポキシ系シラン樹脂を含んでなってもよい。
【0051】
本発明の一態様において、前記エポキシ系シラン樹脂は、シルセスキオキサン系化合物を主要成分とする。具体的に、前記シルセスキオキサン系化合物は、脂環族エポキシ化シルセスキオキサン(epoxidized cycloalkyl substituted silsesquioxanes)系化合物であってもよい。
【0052】
前記脂環族エポキシ化シルセスキオキサン系化合物は、例えば、下記化学式1で表されるトリアルコキシシラン化合物由来の繰り返し単位を含んでもよい。
【0053】
[化学式1]
A-Si(OR)
(前記化学式1中、Aは、C2~C7のエポキシ基が置換されたC1~C10のアルキル基を意味し、Rは、互いに独立して、C1~C10のアルキルであり、前記RのC1~C10のアルキル基の炭素は、酸素で置換されてもよい。)
【0054】
前記化学式1中、エポキシ基の一例としては、シクロアルキルが融合したエポキシ基であってもよく、具体的な一例は、シクロヘキシルエポキシ基などであってもよい。
ここで、アルコキシシラン化合物の具体的な一例としては、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランのうち1つ以上であってもよいが、本開示がこれに限定されるものではない。
【0055】
また、本発明の一態様において、シルセスキオキサン系化合物は、化学式1で表されるトリアルコキシシラン化合物由来の繰り返し単位とともに、下記化学式2で表されるジアルコキシシラン化合物由来の繰り返し単位を含んでもよい。この場合、シルセスキオキサン系化合物は、トリアルコキシシラン化合物100重量部に対してジアルコキシシラン化合物を0.1~100重量部を混合し、それを縮合重合して製造することができる。
【0056】
[化学式2]
A-SiR(OR)
(前記化学式2中、Rは、C1~C5から選択される直鎖状または分岐状アルキル基であり、AおよびRは、化学式1の定義と同様である。)
【0057】
前記化学式2の化合物は、具体的に、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルプロピルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロペンチル)エチルメチルジエトキシシランなどが挙げられるが、これに限定されるものではなく、1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0058】
本発明の一態様において、ハードコーティング層は、無機粒子をさらに含んでもよく、前記無機粒子は、シリカおよび金属酸化物からなる群から選択された何れか1つまたは2つ以上を含んでもよい。
【0059】
前記金属酸化物の具体的な一例として、アルミナ、酸化チタンなどを含んでもよく、これに制限されるものではないが、後述するハードコーティング組成物の他の成分との相溶性の面でシリカが用いられてもよい。これらは単独でまたは2種以上混合して用いられてもよい。また、前記無機粒子は、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウムなどの水酸化物;金、銀、銅、ニッケル、これらの合金などの金属粒子;カーボン、カーボンナノチューブ、フラーレンなどの導電性粒子;ガラス;セラミック;などから選択される粒子をさらに含んでもよく、これに制限されるものではない。
【0060】
本発明の一態様において、前記無機粒子は、平均粒径が1~200nmであってもよく、具体的には5~180nmであってもよく、前記平均粒径の範囲内で、2種以上の異なる平均粒径を有する無機粒子を用いてもよいが、これに制限されるものではない。
【0061】
また、前記ハードコーティング層は、滑剤をさらに含んでもよい。滑剤は、巻取り効率、耐ブロッキング性、耐摩耗性、耐スクラッチ性などを改善させることができる。前記滑剤の具体的な一例としては、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、合成ワックス、またはモンタンワックスなどのワックス類;シリコン系樹脂、フッ素系樹脂などの合成樹脂類;などが用いられてもよいが、これらは単独でまたは2種以上混合して用いられてもよい。
【0062】
本発明の一態様において、前記エポキシ系ハードコーティング層の厚さは500nm~30μmであってもよく、具体的には、1μm~25μm、3μm~20μm、または5μm~15μmであってもよいが、これに制限されるものではない。前記範囲の厚さを有する場合、エポキシ系ハードコーティング層は、優れた硬度を有しながらも柔軟性を維持し、曲げが実質的に発生しない。
【0063】
本発明の一態様において、前記エポキシ系ハードコーティング層は、鉛筆硬度が2H以上、3H以上、または4H以上であり、スチールウール(#0000、リベロン社製)を用いたスクラッチの評価時、10回/1Kgf、20回/1Kgf、または30回/1Kgfにおいてスクラッチが発生せず、水接触角が80°以上、90°以上、または100°以上であってもよい。
【0064】
<フレキシブルディスプレイパネル>
本発明の一態様は、前記一態様に係るガラス基板多層構造体をウィンドウカバーとして含む、フレキシブルディスプレイパネルまたはフレキシブルディスプレイ装置を提供することができる。
【0065】
本発明の一態様として、フレキシブルディスプレイ装置において、ガラス基板多層構造体100は、フレキシブルディスプレイパネルの最外面ウィンドウ基板として用いられてもよい。フレキシブルディスプレイ装置は、通常の液晶表示装置、電界発光表示装置、プラズマ表示装置、電界放出表示装置などの各種画像表示装置であってもよい。
【0066】
<ガラス基板多層構造体の製造方法>
以下、本発明の一態様に係るガラス基板多層構造体の製造方法について詳細に説明する。
本発明の一態様に係る、ガラス基板多層構造体の製造方法は、フレキシブルガラス基板の前面に飛散防止組成物を塗布して硬化し、第1ポリイミド系飛散防止層を形成するステップと、前記フレキシブルガラス基板の後面に前記飛散防止組成物を塗布して硬化し、第2ポリイミド系飛散防止層を形成するステップと、前記第1ポリイミド系飛散防止層上にハードコーティング組成物を塗布して硬化し、エポキシ系ハードコーティング層を形成するステップと、を含んでもよい。
【0067】
先ず、本発明の一態様に係る、前記第1ポリイミド系飛散防止層および第2ポリイミド系飛散防止層を形成するステップにおける飛散防止組成物について説明する。
本発明の一態様において、前記飛散防止組成物は、フッ素系芳香族ジアミンおよび芳香族二無水物を含んでもよく、前記フッ素系芳香族ジアミンおよび芳香族二無水物として、上述したものと同一なものを用いてもよい。具体的に、前記飛散防止組成物は、フッ素系芳香族ジアミンを有機溶媒中に溶解させた後、その結果として得られた混合溶液に芳香族二無水物を添加して重合反応させることで製造されたポリイミド前駆体であってもよい。この際、反応は、不活性気体または窒素気流下で行われてもよく、無水条件で行われてもよい。また、前記重合反応時の温度は、-20℃~200℃、または0℃~180℃で行われてもよく、前記重合反応に使用可能な有機溶媒としては、N,N-ジエチルアセトアミド(N,N-diethylacetamide、DEAc)、N,N-ジエチルホルムアミド(N,N-diethylformamide、DEF)、N-エチルピロリドン(N-ethylpyrrolidone、NEP)、ジメチルプロパンアミド(DMPA)、ジエチルプロパンアミド(DEPA)、またはこれらの混合物の中から選択されてもよい。
【0068】
この際、前記ポリイミド前駆体溶液は、有機溶媒中に溶解された溶液の形態であってもよく、または、前記溶液を他の溶媒で希釈したものであってもよい。また、ポリイミド前駆体を固形粉末として得た場合には、それを有機溶媒に溶解させて溶液としたものであってもよい。
【0069】
その後、前記ポリイミド前駆体をイミド化させることで、ポリイミド溶液(飛散防止組成物)を製造することができる。この際、前記イミド化工程は、公知のイミド化方法を制限なしに用いてもよいが、具体的な一例として、化学イミド化方法、熱イミド化方法などが挙げられ、本発明の一態様としては、共沸熱イミド化法を用いてもよい。
【0070】
前記共沸熱イミド化法は、ポリイミド前駆体(ポリアミック酸溶液)にトルエンまたはキシレンを添加して撹拌し、160℃~200℃で6~24時間イミド化反応を行ってもよく、この間、イミド環が生成されるにつれて放出された水は、トルエンまたはキシレンの共沸混合物として分離されてもよい。
【0071】
前記製造方法により製造されたポリイミド溶液は、塗布性などの工程性を考慮して、適宜な粘度を有するようにする量で固形分を含んでもよい。
一実施形態によると、前記飛散防止組成物(ポリイミド溶液)は、固形分含量が1~30重量%、5~25重量%、または8~20重量%であってもよい。
【0072】
以下、第1ポリイミド系飛散防止層および第2ポリイミド系飛散防止層を形成する方法について説明する。
本発明の一態様において、第1ポリイミド系飛散防止層および第2ポリイミド系飛散防止層は、前記飛散防止組成物をフレキシブルガラス基板の前・後面にそれぞれ塗布し硬化することで形成してもよい。この際、塗布する方法としては、制限されるものではないが、バー(bar)コート、ディップ(dip)コート、ダイ(die)コート、グラビア(gravure)コート、コンマ(comma)コート、スリット(slit)コート、またはこれらの混合方式などの多様な方式を用いてもよい。
【0073】
前記硬化は40℃~250℃の温度で熱処理してもよく、前記熱処理回数は1回以上であってもよく、同一温度または異なる温度範囲で1回以上熱処理してもよい。また、前記熱処理時間は1分~60分であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0074】
以下、本発明の一態様に係る、前記エポキシ系ハードコーティング層を形成するステップにおける、ハードコーティング組成物について説明する。
本発明の一態様において、前記ハードコーティング組成物は、上述したエポキシ系シラン樹脂と架橋剤および光開始剤を含んでもよい。
【0075】
本態様において、前記架橋剤は、エポキシ系シラン樹脂と架橋結合を形成してハードコーティング層形成用組成物を固体化させ、ハードコーティング層の硬度を向上させることができる。
前記架橋剤は、例えば、下記化学式3で表される化合物を含有してもよく、前記化学式3で表される化合物は、前記化学式1および化学式2の構造のエポキシ単位と同一な脂環族エポキシ化合物であって、架橋結合を促進し、ハードコーティング層の屈折率を維持して視野角の変更をもたらさず、曲げ特性を維持することができ、また、透明性を損なわない。
【0076】
[化学式3]
【化1】
【0077】
(前記化学式3中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、炭素数1~5の直鎖状または分岐状アルキル基であり、Xは、直接結合;カルボニル基;カルボネート基;エーテル基;チオエーテル基;エステル基;アミド基;炭素数1~18の直鎖状または分岐状アルキレン基、アルキリデン基、またはアルコキシレン基;炭素数1~6のシクロアルキレン基、またはシクロアルキリデン基;またはこれらの連結基であってもよい。)
【0078】
ここで、「直接結合」とは、他の官能基なしに直接連結された構造を意味し、例えば、前記化学式3中、2つのシクロヘキサンが直接連結されたものを意味し得る。また、「連結基」は、前述した置換基が2個以上連結されたものを意味する。また、前記化学式3中、RおよびRの置換位置は、特に限定されないが、Xが連結された炭素を1番とし、エポキシ基が連結された炭素を3、4番とする際、6番の位置に置換されてもよい。
【0079】
前記架橋剤の含量は、特に限定されず、例えば、エポキシシラン系樹脂100重量部に対して1~150重量部で含まれてもよい。前記範囲の含量である場合、ハードコーティング組成物の粘度を適正範囲に維持することができ、塗布性および硬化反応性を改善させることができる。
【0080】
また、本発明の一態様において、前記ハードコーティング層は、前記化学式の化合物の他に、多様なエポキシ化合物を追加して用いてもよく、その含量は、前記化学式3の化合物100重量部に対して20重量部を超過しないようにしてもよいが、本開示の特性を達成する限り、これに制限されない。
【0081】
本発明の一態様において、エポキシ系単量体は、ハードコーティング層形成用組成物100重量部に対して10~80重量部で含まれてもよい。前記含量である場合、粘度を調節することができ、厚さ調節が容易であり、表面が均一であり、薄膜の欠点が発生せず、また、硬度を十分に達成することができるが、これに限定されるものではない。
【0082】
本発明の一態様において、光開始剤は、光カチオン開始剤であって、前記化学式を含むエポキシ系モノマーの縮合を開始することができる。光カチオン開始剤としては、例えば、オニウム塩および/または有機金属塩などを用いてもよく、これに制限されるものではない。例えば、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、アリールジアゾニウム塩、鉄-アレーン錯体などを用いてもよく、単独でまたは2種以上混合して用いられてもよい。
前記光開始剤の含量は、特に限定されず、例えば、前記化学式1の化合物100重量部に対して、0.1~10重量部、または0.2~5重量部で含まれてもよい。
【0083】
本発明の一態様において、溶媒の一例として、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのアルコール系;メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系;ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどのヘキサン系;ベンゼン、トルエン、キシレンなどのベンゼン系;などが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上混合して用いられてもよい。
【0084】
本発明の一態様において、溶媒は、組成物の総重量中で残りの成分が占める量を除いた残量で含まれてもよい。
本発明の一態様において、前記ハードコーティング層形成用組成物は、熱硬化剤をさらに含んでもよい。
【0085】
前記熱硬化剤は、一例として、スルホニウム塩系、アミン系、イミダゾール系、酸無水物系、アミド系の熱硬化剤などを含んでもよく、変色防止および高硬度を実現するという面で、具体的には、スルホニウム塩系熱硬化剤をさらに用いてもよい。これらは単独でまたは2種以上混合して用いてもよい。
【0086】
前記熱硬化剤の含量は、特に限定されず、例えば、前記エポキシシラン系樹脂100重量部に対して5~30重量部で含まれてもよい。前記範囲の含量で含まれる場合、ハードコーティング層形成用組成物の硬化効率をさらに改善し、優れた硬度を有するハードコーティング層を形成することができる。
【0087】
本発明の一態様において、前記ハードコーティング層形成用組成物を用いることで、ガラス基板多層構造体を物理的に保護することができ、機械的な物性をさらに向上させることができるだけでなく、曲げ耐久性をさらに向上させることができる。
【0088】
本開示に係る脂環族エポキシ化シルセスキオキサン系化合物の重合方法は、公知のものであれば制限されないが、例えば、水の存在下で、上述した化学式1および2で表されるアルコキシシラン間の加水分解および縮合反応により製造することができる。この際、無機酸などの成分を含んで加水分解反応を促進させることができる。また、前記エポキシシラン系樹脂は、エポキシシクロヘキシル基を含むシラン化合物が重合されてなってもよい。
【0089】
この際、脂環族エポキシ化シルセスキオキサン系化合物の重量平均分子量は1,000~20,000g/molであってもよく、前記範囲の重量平均分子量を有する場合、ハードコーティング層形成用組成物が適宜な粘度を有するため、流れ性、塗布性、硬化反応性などが向上することができる。
【0090】
また、製造されるハードコーティング層の硬度が向上することができる。また、ハードコーティング層の柔軟性が改善され、カール発生が抑制されることができる。例えば、脂環族エポキシ化シルセスキオキサン系化合物の重量平均分子量は1,000~18,000g/mol、または2,000~15,000g/molであってもよい。この際、重量平均分子量は、GPCを用いて測定される。
【0091】
以下、エポキシ系ハードコーティング層を形成する方法について説明する。
本発明の一態様において、エポキシ系ハードコーティング層は、前記ハードコーティング組成物を第1ポリイミド系飛散防止層上に塗布し硬化して製造してもよい。この際、塗布する方法としては、制限されるものではないが、バー(bar)コート、ディップ(dip)コート、ダイ(die)コート、グラビア(gravure)コート、コンマ(comma)コート、スリット(slit)コート、またはこれらの混合方式などの多様な方式を用いてもよい。
【0092】
前記硬化は、光硬化や熱硬化を単独で、または光硬化後に熱硬化、熱硬化後に光硬化するなどの方法により行われてもよい。
本発明の一態様として、前記硬化ステップは、光照射前に乾燥ステップをさらに含んでもよく、前記乾燥は、30℃~70℃で1~30分間行われてもよいが、これに制限されるものではない。
本発明の一態様において、前記ハードコーティング組成物を用いることで、ガラス基板多層構造体を物理的に保護することができ、機械的な物性をさらに向上させることができる。
【0093】
以下、実施例および比較例に基づいて本開示を詳細に説明する。但し、下記の実施例および比較例は本開示を詳細に説明するための1つの例示にすぎず、本開示が下記の実施例および比較例によって制限されるものではない。
【0094】
以下、物性は次のように測定した。
1)鉛筆硬度
ASTM D3363に準じて、鉛筆硬度計(Kipae E&T社製)を用いて、1kgの荷重で、硬度別の鉛筆(Mitsubishi社製)を用いて、実施例および比較例で製造されたガラス基板多層構造体の表面に対する鉛筆硬度を測定した。前記表面は、ハードコーティング層が形成された方向の表面を意味する。
【0095】
2)耐衝撃特性の評価(ペンドロップ、pen drop)
BIC Orange 0.7mmのペン(5.3gの重量)を下記の実施例および比較例で製造されたガラス基板多層構造体サンプル上に垂直に立て、指定された位置からペンを落下させた後、基板の状態を下記基準によって評価した。この際、ペンは、ハードコーティング層が形成された面上に落下させて測定した。
【0096】
<評価基準>
◎:打痕および圧痕がない
○:打痕および圧痕がある
X:割れ(飛散しない)
▲:2回の評価時に結果が異なる
【0097】
3)曲げ特性
下記の実施例および比較例で製造したガラス基板多層構造体を平たい地面に置き、前記ガラス基板多層構造体の上方向または下方向への曲げ程度を測定したものであり、ガラス基板のエッジ(edge)部分が上側に曲げが発生する場合を+値で示し、下側に曲げまたは丸めが発生する場合を-値で示した。
【0098】
具体的に、横180mm×縦76mm、厚さ40μmのガラス基板上に各飛散防止層およびハードコーティング層形成用組成物を塗布および硬化した直後、水平が正確に合わせられた除振台上にガラス基板多層構造体を載置した後、常温でガラス基板多層構造体の曲げを測定した。この際、除振台方向にガラス基板多層構造体が曲がり、ガラス基板の中心(center)がエア(air)層に曲がっている場合には、エッジを基準に中心の最上曲点部分との段差を測定し、負(応力)の値(mm)で示し、その逆に、除振台上でガラス基板の両端(エッジ)がエア(air)層方向に曲がっている場合には、中心を基準にエッジが上がった段差を測定し、正(張力)の値(mm)で示した。
【0099】
4)光透過率
ASTM D1746の規格に準じて、厚さ50μmのフィルムに対して、分光光度計(Spectrophotometer)(日本電色工業社製、COH-400)を用いて400~700nm波長領域全体で測定された全光線透過率、およびUV/Vis(島津製作所社製、UV3600)を用いて388nmで測定された単一波長光透過率を測定した。単位は%である。
【0100】
5)黄色度(YI)およびb*値
ASTM E313の規格に準じて、厚さ50μmのフィルムを基準として、測色計(Colorimeter)(HunterLab社製、ColorQuest XE)を用いて測定した。
【0101】
6)位相差(Rth)
RETS-100(OTSUKA ELECTRONICS社製)を用いて、入射角0~45度の範囲を5度間隔で垂直方向位相差を測定した。具体的に、サンプル大きさは縦横それぞれ5cmの正方形の形態で試験片をサンプルホルダーに取り付け、モノクロメータを用いて550nmに固定し、厚さ方向位相差(Rth)は入射角を0~45゜の範囲で測定した。
【0102】
Rth=[(nx+ny)/2-nz]×d
ここで、nxは、面内屈折率のうち最も大きい屈折率であり、nyは、面内屈折率のうちnxと垂直な屈折率であり、nzは、垂直な屈折率であり、dは、ガラス基板多層構造体の厚さを10μmに換算して計算した値である。
【0103】
[製造例1]飛散防止層形成用組成物の製造
窒素気流が流れる撹拌器内にN,N-dimethylpropionamide(DMPA)230gを充填した後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、6FAPB(1,4-Bis(4-amino-2-trifluoromethylphenoxy)benzene)36.5gを溶解させた。前記6FAPB溶液にTMEG100(Ethylene glycol bis-anhydro trimellitate)35gを同じ温度で添加し、一定時間溶解しつつ撹拌した。前記反応から製造されたポリイミド前駆体溶液にトルエン(Toluene)70gを追加し、180℃で6時間還流させて水を除去した後、固形分濃度が20重量%になるようにジメチルプロパンアミド(DMPA)を添加し、飛散防止層形成用組成物(ポリイミド溶液)を製造した。
【0104】
[製造例2]ウレタンアクリル系飛散防止層形成用組成物の製造
ウレタンアクリレート(UV-6100B(日本合成化学(株)社製))60g、2-ヒドロキシプロピルアクリレート(「ライトエステル(Light Ester)HOP-A」、共栄社化学(株)社製)20g、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDODA、Dial UCB社製)20g、開始剤としてダロキュア(Darocure)1173(商標名、チバガイギー(株)社製)1gを均一に混合し、飛散防止層形成用組成物を製造した。
【0105】
[製造例3]ハードコーティング層形成用組成物の製造
2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(ECTMS、TCI社製)および水を24.64g:2.70g(0.1mol:0.15mol)の割合で混合して反応溶液を製造し、250mLの2-neckフラスコに入れた。前記混合物に0.1mLの水酸化テトラメチルアンモニウム(Aldrich社製)触媒およびテトラヒドロフラン(Aldrich社製)100mLを添加し、25℃で36時間撹拌した。その後、層分離を行い、生成物層を塩化メチレン(Aldrich社製)で抽出し、抽出物を硫酸マグネシウム(Aldrich社製)で水分を除去し、溶媒を真空乾燥させ、エポキシ系シラン樹脂を得た。
【0106】
上記のように製造されたエポキシ系シラン樹脂30g、架橋剤として(3’,4’-エポキシシクロヘキシル)メチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートを10gおよびビス[(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル]アジペート5g、光開始剤として(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート0.5g、メチルエチルケトン54.5gを混合し、ハードコーティング組成物を製造した。
【0107】
[実施例1]
ガラス基板(UTG 40μm)の前面に、前記製造例1で作った飛散防止層形成用組成物を#8メイヤーバー(mayer bar)で塗布し、50℃で1分間乾燥し、230℃で10分間乾燥し、2μmの厚さを有する第1ポリイミド系飛散防止層を形成した。そして、前記ガラス基板の後面に、20バー(bar)を用いて、同じ方式により飛散防止層形成用組成物を塗布した後に硬化し、5μmの厚さを有する第2ポリイミド系飛散防止層を製造した。その後、第1ポリイミド系飛散防止層上に、製造例3で製造したハードコーティング用組成物を#10バー(bar)でコーティングし、60℃で5分間乾燥した後、1J/cmの紫外線を照射した後、120℃で15分間硬化させ、5μmの厚さを有するハードコーティング層が形成されたガラス基板多層構造体を製造した。
【0108】
[実施例2]
前記実施例1において、第1ポリイミド系飛散防止層の厚さが3μmであり、第2ポリイミド系飛散防止層の厚さが6μmであることを除いては、実施例1と同様に行い、ガラス基板多層構造体を製造した。
【0109】
[実施例3]
前記実施例1において、第1ポリイミド系飛散防止層の厚さが4.5μmであり、第2ポリイミド系飛散防止層の厚さが10μmであることを除いては、実施例1と同様に行い、ガラス基板多層構造体を製造した。
【0110】
[実施例4]
前記実施例1において、ハードコーティング層の厚さが4.5μmであり、第1ポリイミド系飛散防止層の厚さが2.86μmであり、第2ポリイミド系飛散防止層の厚さが2.86μmであることを除いては、実施例1と同様に行い、ガラス基板多層構造体を製造した。
【0111】
[実施例5]
前記実施例1において、ハードコーティング層の厚さが4.5μmであり、第1ポリイミド系飛散防止層の厚さが5.79μmであり、第2ポリイミド系飛散防止層の厚さが5.79μmであることを除いては、実施例1と同様に行い、ガラス基板多層構造体を製造した。
【0112】
[比較例1]
前記実施例1において、第1ポリイミド系飛散防止層の厚さが7.5μmであり、第2ポリイミド系飛散防止層の厚さが15μmであることを除いては、実施例1と同様に行い、ガラス基板多層構造体を製造した。
【0113】
[比較例2]
前記実施例1において、第1ポリイミド系飛散防止層の厚さが2μmであり、第2ポリイミド系飛散防止層の代わりに、厚さが10μmのハードコーティング層を形成したことを除いては、実施例1と同様に行い、ガラス基板多層構造体を製造した。
【0114】
[比較例3]
前記実施例1において、第1ポリイミド系飛散防止層の厚さが5μmであり、第2ポリイミド系飛散防止層の厚さが2μmであることを除いては、実施例1と同様に行い、ガラス基板多層構造体を製造した。
【0115】
[比較例4]
前記実施例1において、第2ポリイミド系飛散防止層を形成しないことを除いては、実施例1と同様に行い、ガラス基板多層構造体を製造した。
【0116】
[比較例5]
前記実施例1において、製造例1の飛散防止層形成用組成物の代わりに、製造例2の飛散防止形成用組成物を用いて飛散防止層を形成することを除いては、実施例1と同様に行い、ガラス基板多層構造体を製造した。
【0117】
前記実施例1~5および比較例1~5で製造したガラス基板多層構造体の物性を測定し、下記表1に示した。下記表1は、ガラス基板を基準に、前面と後面の多層構造に対して示したものである。
【0118】
【表1】
【0119】
前記表1のように、実施例1~5の場合、4H以上の優れた表面硬度を有することが分かり、また、5cm以上の高さからも優れた耐飛散特性および耐衝撃特性を有することが分かった。また、第1飛散防止層の厚さが第2飛散防止層の厚さよりも薄く、各飛散防止層の厚さが10μm以下である実施例の場合、比較例4、5に比べて、相対的にさらに薄い厚さを有しながらも、顕著に向上した耐飛散および耐衝撃特性を有することを確認することができた。特に、第2飛散防止層が形成されていない比較例4の場合は、ガラス基板多層構造体の曲げが-0.51mmであり、製造例2により飛散防止層を両面に形成した比較例5の場合は、曲げが-1.1mmであって、曲げが非常に大きく発生することを確認することができた。
【0120】
これに対し、本発明の一態様である、薄板のガラス基板の両面に、フッ素元素を含有するポリイミド樹脂からなる第1ポリイミド系飛散防止層および第2ポリイミド系飛散防止層を有する実施例1~5の場合、曲げの発生が非常に低く、黄色度、光透過率、位相差などのような特性が比較例に比べて優れることを確認することができた。これは、本開示の第1ポリイミド系飛散防止層および第2ポリイミド系飛散防止層が、フレキシブルガラス基板の熱変形およびハードコーティング層の熱変形も抑制することで、製造されるガラス基板多層構造体の曲げの発生を顕著に抑制することを示す。
【0121】
さらに、実施例1~5の場合、優れた透明性、位相差特性を有することも確認することができた。
これに対し、比較例の場合、表面硬度、耐飛散特性、曲げ特性などの物性が顕著に低下し、特に、ガラス基板多層構造体の曲げが大きく発生することを確認することができた。
【0122】
以上、特定の事項と限定された実施形態および図面により本開示を説明したが、これは本開示のより全般的な理解のために提供されたものにすぎず、本開示は上記の実施形態に限定されない。本開示が属する分野において通常の知識を有する者であれば、このような記載から多様な修正および変形が可能である。
【0123】
したがって、本開示の思想は、説明された実施形態に限定されて決まってはならず、添付の特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価的変形を有するものは、何れも本開示の思想の範囲に属するといえる。
【符号の説明】
【0124】
10 フレキシブルガラス基板
20 ポリイミド系飛散防止層
21 第1ポリイミド系飛散防止層
22 第2ポリイミド系飛散防止層
30 エポキシ系ハードコーティング層
100 ガラス基板多層構造体
図1