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特開2022-42502歯科補綴物の製造方法、未加工材および歯科補綴物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042502
(43)【公開日】2022-03-14
(54)【発明の名称】歯科補綴物の製造方法、未加工材および歯科補綴物
(51)【国際特許分類】
   A61C 13/00 20060101AFI20220307BHJP
   A61C 13/083 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
A61C13/00 Z
A61C13/083
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021142524
(22)【出願日】2021-09-01
(31)【優先権主張番号】20194147.3
(32)【優先日】2020-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】596032878
【氏名又は名称】イボクラール ビバデント アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【弁理士】
【氏名又は名称】浜田 治雄
(72)【発明者】
【氏名】クレメンス アンドレアス ハーフェレ
(72)【発明者】
【氏名】ロジャー フレイ
(72)【発明者】
【氏名】コンラート ハーゲンブーフ
(72)【発明者】
【氏名】マルクス ガイアー
(72)【発明者】
【氏名】フランク フレンツェル
【テーマコード(参考)】
4C159
【Fターム(参考)】
4C159GG04
4C159GG07
(57)【要約】
【課題】CAD/CAM装置を使用して未加工材から歯科補綴物を製造する方法を提供する。
【解決手段】前記未加工材が一部は基礎材料から一部は歯材料からなり、前記の両材料の間に波形状に形成された境界面を有していて前記波の波頭と波底が前記未加工材の外周に沿って交互に延在する。各波頭の頂点が前記未加工材に対して実質的に放射状の軌道を有する。前記CAD/CAM装置が前記補綴物を患者の歯槽頂に固定するよう作用する固定部材、特に外側テレスコープ、バーのカバー、あるいはアバットメントの前記補綴物内における位置を前記固定部材が前記境界面を貫通するような方式で決定する。前記固定部材が接着あるいは重合結合によって固定される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CAD/CAM装置を使用して未加工材から歯科補綴物を製造する方法であって、前記未加工材が一部は基礎材料から一部は歯材料からなり、前記の両材料の間に波形状に形成された境界面を有していて前記波の波頭と波底が前記未加工材の外周に沿って交互に延在し、その際特に各波頭の頂点が前記未加工材に対して実質的に放射状の軌道を有してなる歯科補綴物の製造方法であり、前記CAD/CAM装置が前記補綴物を患者の歯槽頂に固定するよう作用する固定部材、特に外側テレスコープ、バーのカバー、あるいはアバットメントの前記補綴物内における位置を前記固定部材が前記境界面を貫通するような方式で決定し、また前記固定部材が特に接着、ネジ固定、あるいは重合結合によって固定されることを特徴とする歯科補綴物の製造方法。
【請求項2】
CAD/CAM装置を使用して未加工材から歯科補綴物を製造する方法であって、装置が固定部材周囲の補綴物の最低壁厚を補綴物内における固定部材の位置を決定するためのパラメータとして使用し、また特に基礎材料と歯材料の合計壁厚を壁厚の基準として使用することを特徴とする請求項1記載の歯科補綴物の製造方法。
【請求項3】
歯科補綴物を製造するための一部は基礎材料から一部は歯材料からなる未加工材であって、前記基礎材料と歯材料が相互に結合されていてそれら両材料の間に波形状に形成された境界面を有していて前記波の波頭と波底が前記未加工材の外周に沿って交互に延在、特に実質的に正弦波状あるいは実質的に懸垂線状に延在し、その際各波頭の頂点が円盤に対して特に実質的に放射状の軌道を有してなる未加工材であり、前記基礎材料および/または歯材料内に少なくとも2個の開孔部を形成し、その開孔部内または上に固定部材を設置して固定することを特徴とする未加工材。
【請求項4】
基礎材料および/または歯材料が二酸化ジルコニウムから形成されるかまたは含んでなり、未加工材内の少なくとも1個の開孔部内に固定部材が取り付けられ、特に接着されることを特徴とする請求項3記載の未加工材。
【請求項5】
少なくとも1個の開孔部が基礎材料を貫通し、固定部材は歯材料上あるいは歯材料内に接合するかあるいはそこに保持されることを特徴とする請求項3または4記載の未加工材。
【請求項6】
固定部材が開孔部から歯肉に向かって延在し、歯肉によって口腔側、前庭側、および咬合側で囲繞されることを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載の未加工材。
【請求項7】
固定部材が粗面化された外表面、溝、三次元構造、開口、突起、および/または低没部を備えることを特徴とする請求項3ないし6のいずれかに記載の未加工材。
【請求項8】
基礎材料と歯材料からなる円盤形状の未加工材から製造される義歯床と歯配列とを有する歯科補綴物であって、前記両材料の間に波形状に形成された境界面が存在していて前記波の波頭と波底が前記歯科補綴物および/または円盤の外周に沿って交互に延在し、その際各波頭の頂点が前記円盤に対して特に実質的に放射状の軌道を有してなる歯科補綴物であり、前記円盤の基礎材料内に少なくとも2個の開孔部を設け、その開孔部内または開孔部上に固定部材を保持、特に接着することを特徴とする歯科補綴物。
【請求項9】
少なくとも1個の固定部材がバーのカバーとされ、それによって特に歯科補綴物を患者の口から取り外し可能ならびに再度患者の口内に装着および固定可能にすることを特徴とする請求項8記載の歯科補綴物。
【請求項10】
少なくとも1個の固定部材が内側テレスコープと接続可能な外側テレスコープ、またはロケータとされ、それによって特に歯科補綴物を患者の口から取り外し可能ならびに再度患者の口内に装着および固定可能にすることを特徴とする請求項8記載の歯科補綴物。
【請求項11】
歯科補綴物の矢状面の各側にそれぞれ少なくとも1個の開孔部が形成されることを特徴とする請求項8ないし10のいずれかに記載の歯科補綴物。
【請求項12】
基礎材料が歯科補綴物の遠心端に隣接して被覆面を形成し、その被覆面の面法線が歯肉方向を指向し、前記被覆面は特に歯肉頂の上に被覆されるように設定されることを特徴とする請求項8ないし10のいずれかに記載の歯科補綴物。
【請求項13】
それぞれ1個の固定部材を収容する2ないし4個の開孔部が歯科補綴物の歯列弓の軌道にわたって配分して形成されることを特徴とする請求項8ないし12のいずれかに記載の歯科補綴物。
【請求項14】
歯材料が固定部材との直接的な接触を有するとともに開孔部が基礎材料を貫通し、および/または固定部材が基礎材料と歯材料の双方と接触を有するとともに開孔部がいずれも基礎材料を貫通することを特徴とする請求項8ないし13のいずれかに記載の歯科補綴物。
【請求項15】
補綴物の複数の歯が歯材料を使用して歯列弓あるいは部分歯列弓を形成しながら少なくとも部分的に相互に一体式に結合されることを特徴とする請求項8ないし14のいずれかに記載の歯科補綴物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、請求項1前文に記載の未加工材から歯科補綴物を製造する方法と、請求項3前文に記載の歯科補綴物を製造するための未加工材と、請求項8前文に記載の歯科補綴物に関する。
【背景技術】
【0002】
通常歯科補綴物の製造に際して、患者の違和感が可能な限り最小になるような歯科補綴物の形成が保証されるように考慮される。患者がまるで自身の自然歯のように会話、嚥下、および咀嚼できることが要求される。
【0003】
その種の歯科補綴物に関しては、良好な材料適合性に加えて細身の補綴物の構造が要望される。
【0004】
歯科補綴物内の確実な歯の固定を保証するために、一般的に歯を接着するかあるいは射出成形工程によって歯を形成する。
【0005】
関連する解決方式の1つが特許文献1によって開示されている。
【0006】
しかしながらこの解決方式は、複雑な歯の形成が必要であったことに加えて、特に多様な歯の形状に対する金型を用意する必要がある場合、射出成形のためにスライダを備えた特殊な射出成形金型を使用する必要がありその製作が高コストであったため、普及していない。
【0007】
歯と義歯床の間の強固な結合を形成するために、高温重合法に基づくものも知られている。その一例が、特許文献2によって開示された解決方式である。
【0008】
その種の解決方式は、高温重合された補綴物が比較的破損し易いことが明らかであるため、今日あまり普及していない。
【0009】
改善された安定性を有する金属樹脂複合物から補綴物を製造することが長く知られている。
【0010】
インプラント支持された補綴物の場合は、例えばインプラントに固定されていて、補綴物基礎材料と結合されたいわゆるカバーのための取り付け部を形成するバーが知られている。
【0011】
その種の補綴物はカバーの領域で極めて安定的である。一般的にカバーはバーが終端になる位置で同様に終端となる。
【0012】
従って補綴物が丁度その位置で破断する傾向がある。
【0013】
さらに、アタッチメント、金属アンカ、およびテレスコープを含むその他の金属フレーム構造を有する補綴物も知られている。
【0014】
その種の解決方式は通常補綴物の歯列弓に沿って延在し、その際金属フレーム構造が補綴物材料によって囲繞される。
【0015】
一般的にその種の補綴物は比較的安定的であるものの重くかつ肉厚であり、従ってしばしば患者が不快に感じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】ドイツ国特許第837288号(B1)明細書
【特許文献2】ドイツ国特許出願公開第2021194号(A1)明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第3064170号(A2)明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って本発明の目的は、良好な口腔への適合と受容性を達成しながら比較的低い製造コストで長い寿命を可能にする、請求項1前文に記載の未加工材から歯科補綴物を製造する方法と、請求項3前文に記載の歯科補綴物を製造するための未加工材と、請求項8前文に記載の歯科補綴物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記の課題は本発明に従って請求項1、3および8によって解決される。従属請求項によって好適な追加構成が定義される。
【0019】
本発明によれば、特殊な未加工材から加工された歯科補綴物が製造される。前記の未加工材は波形状に相互に結合された歯材料と基礎材料を有する。前記の波形状の波が歯列弓および/または未加工材の外周に沿って延在する。
【0020】
その種の未加工材から切削方法、例えばフライス加工によって補綴物が製造されるが、意外なことにその未加工材が改善された基礎安定性と剛性を提供する。波形状の赤/白移行部が極めて良好な構造安定性を提供することが明らかである。歯材料と基礎材料は、同様に波形状あるいは貝形状に形成される移行部に沿って相互に重合結合される。
【0021】
本発明の好適な構成形態によれば、基礎材料が開孔部を備え、その中に固定部材を挿入可能にする。固定部材は例えばインプラント上あるいは支台歯上あるいは残根上に補綴物を取り付けおよび固定するように機能する。
【0022】
開孔部が境界面を貫通することが極めて好適である。その場合固定部材が歯材料内部まで延在する。歯材料内で固定部材が確実に固定される。その固定は、基礎材料中における固定に追加して実施される。
【0023】
本発明によれば、両方の材料層、すなわち歯材料と基礎材料の間に第3の層が存在しないことが好適である。従来はそこに接着剤の層が存在したが、本発明によってそれが除外される。
【0024】
むしろ両方の材料が圧力および熱作用によって相互に重合し、従って両材料の直接的な化学結合が形成される。そのことが応力の極大を抑制するように作用する。
【0025】
意外なことに、境界面の三次元構造に伴って移行層を省略することによって改善された耐久性および剛性が達成される。
【0026】
両方の材料についてPMMA、歯材料については特にDCL材料が好適である。
【0027】
本発明によれば、開孔部が境界面を斜めに貫通することが極めて好適である。その場合、境界面の高さに通常歯材料と基礎材料の両方が存在する。すなわち、ある1つの位置において基礎材料が開孔部と固定部材に対して歯材料の半径方向外側に延在する。従って、例えば歯材料あるいは基礎材料の一方のみが義歯床内にロケータあるいは固定部材を確実に取り付けるための最低壁厚を下回ったとしても最低壁厚を保持することができる。
【0028】
従来の歯科補綴物においては例えば2mmの最低壁厚を維持するように材料が積層されるが、本発明によればそのことが不要になる。
【0029】
歯肉/咬合方向において比較的長い固定部材と開孔部の間の接続長のため、補綴物内に比較的小さな材料負荷しか生じず、また咀嚼応力によっても補綴物材料の小さな面圧力しか生じない。そのことにより、特に中央/遠位側に延在する金属製フレーム構造による剛性上昇を放棄しても、長い寿命が達成される。
【0030】
固定部材は対応する開孔部内に固定、好適には接着される。しかしながら固定部材は開孔部内に重合結合させるかあるいはその他の方法によって固定、例えばネジ固定することもできる。開孔部は歯肉方向に向かって開いており、そして一種のポケット状に咬合方向に閉鎖されている。
【0031】
本発明によれば、歯材料が一体型の歯列弓を形成する事実も安定性に寄与する。そのような歯列弓は個別の歯に比べて著しく高い安定性を有する。その安定性が破損耐久性に寄与する。
【0032】
本発明によれば、ロケータあるいは固定部材のための開孔部の位置および配列がまずCADによって予設定される。それによって、場合によって歯材料と基礎材料の組み合わせからなる最低壁厚を境界条件として決定することができる。
【0033】
必要に応じて、インプラントが設置される該当位置における顎骨の硬度および適合性も、強度設計および強度計算に算入することができる。予め前庭―口腔方向におけるインプラントの位置を最適化することもでき、そのことがインプラントの長期耐久性とその結果補綴物の長期耐久性に対して好適なものになる。
【0034】
本発明は固定式あるいは取り外し可能な補綴物に限定されるものではない。また取り付けの方式、すなわちインプラント支持、残根支持、あるいはハイブリッド補綴物等の方式も本発明において限定されず;本発明はむしろ全ての種類の補綴物に適用可能である。
【0035】
変更された構成形態において、歯材料として酸化ジルコニウムが選択される。
【0036】
それに代えて、二酸化ジルコニウムを使用して歯材料と基礎材料からなる未加工材全体を形成することもできる。
【0037】
二酸化ジルコニウムは高い耐摩耗性を有していて、そのため特に歯の形成に適している。また歯列弓あるいは部分歯列弓として製造することもできる。
【0038】
その種の二酸化ジルコニウム製の歯列弓は特に補綴物の補剛に大きく寄与する。そのことは、インプラント支持された補綴物の場合に自然歯と比べて咀嚼負荷が大きくなるため、極めて好適である。
【0039】
本発明の好適な構成形態において、基礎材料と歯材料が二酸化ジルコニウムからなるか二酸化ジルコニウムを含んでなり、固定部材が未加工材/完成補綴物内の少なくとも1個の開孔部内に取り付けられ、特に接着される。
【0040】
本発明の好適な構成形態において、歯材料がさらに少なくとも部分的に高架橋PMMA、特にDCL材料から形成され、基礎材料はそれに対してより低いレベルの高架橋PMMAでその基礎材料に重合結合された高架橋PMMAからなる。
【0041】
本発明のその他の詳細および利点は、添付図面を参照しながら以下に記述する実施例の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の一実施形態において製造された歯科補綴物の一部を概略的に示した口腔/前庭方向の断面図である。
図2】本発明の一実施形態において製造された歯科補綴物の一部を概略的に示した遠心/近心方向の断面図である。
図3】例示的な歯科補綴物の一部を概略的に示した口腔/前庭方向の断面図である。
図4】本発明の変更された実施形態において製造された歯科補綴物に係り、歯材料を省略して境界面を重点的に示した概略説明図である。
図4a図4の実施形態に係るが変更された波頭の湾曲線を有する義歯床を示した口腔―前庭方向の断面図である。
図5】本発明の別の実施形態において製造された歯科補綴物を示した概略立体図である。
図6】本発明の別の実施形態において製造された歯科補綴物を概略的に示した口腔―前庭方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1には、本発明に係る歯科補綴物10の断面が概略的に示されており、その際歯列弓12が歯材料14から、また義歯床16は基礎材料18から形成される。それらが境界面20上で相互に重合結合される。
【0044】
歯科補綴物10は、例えば円盤形状の未加工材から製造される。その未加工材内で境界面20が波形状に延在し、外周に沿って延在する波を有する。その境界面と未加工材の構成については特許文献3を全体的に引用する。
【0045】
境界面20の波は(歯肉縁に相当する外周に沿って見て)交互に波底と波頭を有していて、好適には図2に示されるように一種の懸垂曲線の様に延在する。前庭―口腔方向に見て境界面は放射状に延在し、従って前庭方向、すなわち半径方向外側に向かって広がっている。
【0046】
図1によれば境界面は放射方向に見て直線状に延在する。
【0047】
変更された構成形態よれば、境界面が放射方向に向かって湾曲した軌道を有することも可能である(図4参照)。この場合、波頭と波底が半径方向外側に向かって広がるものの、放射状には延在せずむしろ三次元の構造を有する。
【0048】
図1に示されるように、材料14と18の間の移行部の口腔側と前庭側の両方にくびれ部22および24が形成される。それらが、好適には相互に重合結合される両方の材料14と18の材料移行部の箇所に歯肉縁26を形成する。
【0049】
図1によればその位置で補綴物10が固定部材28によって支持される。
【0050】
その固定部材は図中において明瞭化のために付属するインプラントスクリューおよび内側テレスコープと一体的に示されている。一般的に実用上においては3個の部材が存在する。固定部材28としてテレスコープの他、例えばロケータ、ボール式アンカ、円錐形クラウンあるいはその他の任意の固定部材を使用することができる。
【0051】
固定部材28は補綴物10に重合結合される。固定部材は境界面20を貫通する。
【0052】
CAD/CAM装置30を使用した補綴物10の開発に際して境界面20が仮想的に存在する。さらに、材料に応じて最低壁厚32が決定される。その最低壁厚は現実的にCAD/CAM装置30内のみに存在するものであるが、明瞭化のため図中に示されている。図1によれば、最低壁厚32が歯材料14と基礎材料18の両方の中に延在し、いずれにおいても最低壁厚を下回ることがないように設計される。重合結合と波形状によって材料14と18が相互に補強され、従って補綴物10の安定性のためには最低壁厚32を場所によってもくびれ部24と同程度に維持すれば充分である。
【0053】
本発明に係る一体型の未加工材とそれの内部の波構造によって、比較的小さな基礎材料あるいは歯材料の壁厚を他方の材料領域による強化によって補完し、それにもかかわらず必要な最低壁厚を維持することが可能になる。
【0054】
独立した義歯床および独立した歯列弓をフライス削り/プレスすることによって製造される二部品型の補綴物に比べて、本発明においては個々の部品/システムの安定性の個別の評価が不要になる。それによって補綴物の安定性が保証されるにもかかわらず計算時間は短縮され、またCADに際しての調節が高速化される。
【0055】
少なくとも2個の固定部材28が歯科補綴物10の軌道にわたって設けられる。それらの固定部材は歯肉に向かって開口して延在し境界面20を貫通する開孔部34内にそれぞれ収容される。
【0056】
好適には、開孔部34が2個であるとするといずれも小臼歯の後方に設けられる。遠心側に周知の方式でスプーン状の歯肉被覆が形成され、それがさらに支持の機能を提供する。
【0057】
固定部材28あるいは対応するアバットメントの正確な位置および指向性は必要に応じて広範に調整することができる。
【0058】
図2によれば、開孔部34が波底40上に形成されることが示されている。その位置において歯材料14は極めて大きく歯肉方向に延在し、従って特にDCL材料を使用する場合その位置での固定が極めて良好かつ安定的になる。
【0059】
開孔部34と固定部材28の上方の小臼歯44が歯列弓12の一部であり、その歯列弓には少なくとも隣接歯48と50が含まれる。
【0060】
例示的に添付された図3には陰影線が付けられた領域46が示されており、そこにおいては最低壁厚32が基礎材料18単独では計算上維持できない。しかしながら、そこでは基礎材料の外側に歯材料14が設けられていて基礎材料を充分に補強する。
【0061】
図4には、本発明の変更された構成形態における境界面20の軌道が示されている。
【0062】
口腔―前庭方向において境界面20が湾曲して延在し、義歯床16の外周に沿って見ると波形状に延在する。
【0063】
好適には、波頭52の軌道が半径方向外側に向かって水平線に接近しまた半径方向内側に向かってはより急激に水平線から遠ざかるように湾曲が選定される。
【0064】
小さな補綴物を製造する場合、実質的に水平な波頭52が外側に存在する。それにもかかわらず、低コストの基礎材料18およびより安価なDCL材料を未加工材に使用することができる。
【0065】
美観的に有望な配置において、境界面20が前庭側の歯肉縁26上(下顎の場合)において口腔側の歯肉縁24の幾らか下方に存在することが好適である。このことは歯肉が収縮した高齢の患者において特に有効である。
【0066】
この境界面の形状は、図4aに示されるように波頭52の頂点56を半径方向内側、すなわち図4aにおいて左側に移動させることによって計算に入れることができる。横にしたS字型の境界面の軌道を図4aの波頭52上に設けることもできる。
【0067】
図4図4aの実施形態において波頭52に波底が後続することが理解される。従って、波の振幅は周囲方向に見て実質的に均一である。
【0068】
それに代えて、人間の歯肉の振幅に対応して振幅が半径方向内側に向かって縮小しまた半径方向外側に向かっては拡大するように構成することも可能である。
【0069】
その解決方式によれば、小さな補綴物の場合、より小さな(前庭側の)歯肉縁振幅の方がより協調的に作用するため、天然の性質に対する自動的な適応を確立することができる。
【0070】
図5には、本発明の別の実施例が示されている。それぞれネジ62を有するネジ構成60が設けられる。歯列弓66が設けられる。各ネジ62が歯列弓66と義歯床14を貫通し、患者の顎に固定されたインプラント本体70内の雌ネジ68と螺合する。従ってネジ62が患者の顎に補綴物を固定するように作用する。
【0071】
ここではマルチユニットシステムに係るものである。他方、ネジを直接インプラント内あるいはアバットメント内に螺合させるかあるいは固定することも可能である。この場合、インプラントの接続面構造を基底面上に形成し、従ってネジを唯一の固定要素として設けることもできる。
【0072】
その種の解決方式に関する概略的な断面図が図6に示されている。ネジ60のネジ頭72が周知の方式で歯列弓66上に存在する。
【符号の説明】
【0073】
10 歯科補綴物
12 歯列弓
14 歯材料
16 義歯床
18 基礎材料
20 境界面
22,24 くびれ部
26 歯肉縁
28 固定部材
30 CAD/CAM装置
32 最低壁厚
34 開孔部
40 波底
44 小臼歯
48,50 隣接歯
52 波頭
56 頂点
60 ネジ構成
62 ネジ
66 歯列弓
68 雌ネジ
70 インプラント本体
72 ネジ頭
図1
図2
図3
図4
図4a
図5
図6