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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042569
(43)【公開日】2022-03-15
(54)【発明の名称】軒天換気材及びこれを用いた建物構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/02 20060101AFI20220308BHJP
   E04B 1/70 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
E04B9/02 300
E04B1/70 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020147993
(22)【出願日】2020-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】390004145
【氏名又は名称】城東テクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新東 祝
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DA02
2E001DB02
2E001DE01
2E001DE04
2E001FA20
2E001FA35
2E001GA60
2E001GA63
2E001HB02
2E001LA01
2E001NA07
2E001NB01
2E001NC01
2E001ND23
(57)【要約】
【課題】換気口から入り込んだ水が軒天材の裏側に浸入するのを抑制する。
【解決手段】軒天換気材1は、上板部2と、下板部3と、連結板部4とを含む。上板部2は、上面から長手方向Bと直交する斜め下方に延びる斜面部23を有している。斜面部23には、換気孔23aが形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上板部と、前記上板部と対向する下板部と、前記上板部と前記下板部とを連結する連結板部とを備え、一方向に沿って長尺に延在する軒天換気材であって、
前記上板部は、上面から前記一方向と直交する斜め下方に延びる斜面部を有しており、
前記斜面部には、換気孔が形成されていることを特徴とする軒天換気材。
【請求項2】
前記換気孔は、前記斜面部の斜面を打ち抜いた貫通孔であることを特徴とする請求項1に記載の軒天換気材。
【請求項3】
前記換気孔は、前記斜面部の途中部位に形成されており、
前記斜面部の下方部分には、水抜き孔が前記一方向に沿って複数形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の軒天換気材。
【請求項4】
前記連結板部は、前記一方向に対して直交し且つ水平方向に対して傾斜する方向に延在する傾斜部を有しており、
前記傾斜部は、前記斜面部の下方において当該斜面部と上下方向に対向して配置されており、
前記斜面部と前記傾斜部との間には、断面視鋭角状の空間が画定されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の軒天換気材。
【請求項5】
前記上板部は、前記斜面部の下端から上方に延在する立ち上がり部を有しており、
前記上板部には、前記斜面部と前記立ち上がり部とによって上方に開口した凹部が形成されており、
前記下板部は、前記凹部と通気空間を挟んで対向しており、
前記上板部の下面から下方に延び、前記連結板部及び前記立ち上がり部と前記通気空間を挟んで対向する垂下部をさらに備えており、
前記垂下部の下端部と前記下板部との間には、前記通気空間に通じる通気口が形成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の軒天換気材。
【請求項6】
前記垂下部の下端から前記通気口とは反対側に前記一方向と直交する斜め上方に延びる傾斜板部をさらに備えていることを特徴とする請求項5に記載の軒天換気材。
【請求項7】
前記上板部と前記下板部と前記連結板部とに囲まれ、前記一方向と直交する方向の一端が開放されて軒天材の端部の差込口とされた差込部をさらに備えており、
前記下板部は、前記差込部の奥側の水平部と、前記水平部の端部から前記差込口に近づくに連れて上方に傾斜する銜え部とを有していることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の軒天換気材。
【請求項8】
上板部と、前記上板部と対向して配置された下板部と、前記上板部と前記下板部とを連結する連結板部とを備え、一方向に沿って長尺に延在する軒天換気材が軒下に設置された建物構造において、
前記上板部は、上面から前記一方向と直交する斜め下方に延びる斜面部を有しており、
前記斜面部には、換気孔が形成され、
前記換気孔は、前記斜面部の途中部位に形成されており、
前記斜面部の前記換気孔よりも下方部分には、水抜き孔が前記一方向に沿って複数形成されており、
前記軒天換気材は、前記水抜き孔と野縁とが対向するように前記野縁に取り付けられていることを特徴とする建物構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の小屋裏の換気を行うための軒天換気材及びこれを用いた建物構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、木造住宅等の小屋裏の湿気や熱気を排出するために、軒下に軒天換気材が設置されている。このような軒天換気材としては、複数の通気開口(換気孔)が形成された上面板(上板部)と、上面板と対向して配置され、換気スリットが形成された下面板(下板部)と、これら上面板と下面板とを連結する斜面板(連結板部)とを含んだものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-100052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の軒天換気材においては、通気開口が水平な上面板に形成されている。このため、強風などによって雨などの水が外部から通気開口に入り込むと、その入り込んだ水が上面板よりも下にある軒天材の裏側(上面側)に流れ込むという問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、換気孔から入り込んだ水が軒天材の裏側に浸入するのを抑制することが可能な軒天換気材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の軒天換気材は、上板部と、前記上板部と対向する下板部と、前記上板部と前記下板部とを連結する連結板部とを備え、一方向に沿って長尺に延在する軒天換気材であって、前記上板部は、上面から前記一方向と直交する斜め下方に延びる斜面部を有しており、前記斜面部には、換気孔が形成されている。
【0007】
これによると、強風などによって雨などの水が外部から換気孔に入り込んでも、入り込んだ水は斜面部に沿って滑り落ちていく。このため、軒天材の裏側(小屋裏側)に水が浸入するのを抑制することが可能となる。また、換気孔を斜面部に形成することで、換気孔の開口幅を斜面に沿って大きくできて開口面積を増やすことができる。
【0008】
本発明において、前記換気孔は、前記斜面部の斜面を打ち抜いた貫通孔であることが好ましい。これにより、換気孔をブリッジ孔とした時よりも換気孔に雨水が滞留するのを抑制できる。
【0009】
また、本発明において、前記換気孔は、前記斜面部の途中部位に形成されており、前記斜面部の下方部分には、水抜き孔が前記一方向に沿って複数形成されていることが好ましい。これにより、水が換気孔から入り込んでも、斜面部に沿って滑り落ちた後に水抜き孔から外部に効果的に排出することが可能となる。
【0010】
また、本発明において、前記連結板部は、前記一方向に対して直交し且つ水平方向に対して傾斜する方向に延在する傾斜部を有しており、前記傾斜部は、前記斜面部の下方において当該斜面部と上下方向に対向して配置されており、前記斜面部と前記傾斜部との間には、断面視鋭角状の空間が画定されていることが好ましい。これにより、斜面部と傾斜部との間の空間が断面視鋭角状の空間であるため、強風などによって換気孔に向かってきた雨などの水が当該空間で集まりやすくなる。この結果、集まった水が傾斜部に沿って下方に流れ落ちやすくなって換気孔から入り込みにくくなる。
【0011】
また、本発明において、前記上板部は、前記斜面部の下端から上方に延在する立ち上がり部を有しており、前記上板部には、前記斜面部と前記立ち上がり部とによって上方に開口した凹部が形成されており、前記下板部は、前記凹部と通気空間を挟んで対向しており、前記上板部の下面から下方に延び、前記連結板部及び前記立ち上がり部と前記通気空間を挟んで対向する垂下部をさらに備えており、前記垂下部の下端部と前記下板部との間には、前記通気空間に通じる通気口が形成されていることが好ましい。これにより、強風などによって通気口から通気空間に入り込んだ雨などの水が、通気空間の立ち上がり部と垂下部との間の空間に入り込みやすくなる。このため、水が立ち上がり部に付着しやすくなり、付着した水同士が集まって下方に落ちる。この結果、換気孔から水が入り込みにくくなる。
【0012】
また、本発明において、前記垂下部の下端から前記通気口とは反対側に前記一方向と直交する斜め上方に延びる傾斜板部をさらに備えていることが好ましい。これにより、傾斜板部に付着した水が傾斜板部に沿って流れ、垂下部の下端から下方に落ちやすくなる。また、傾斜板部の先端を鼻隠しに当接させて本軒天換気材を取り付けておくことで、傾斜板部が変形しても、垂れ下がることを防止することができる。
【0013】
また、本発明において、前記上板部と前記下板部と前記連結板部とに囲まれ、前記一方向と直交する方向の一端が開放されて軒天材の端部の差込口とされた差込部をさらに備えており、前記下板部は、前記差込部の奥側の水平部と、前記水平部の端部から前記差込口に近づくに連れて上方に傾斜する銜え部とを有していることが好ましい。これにより、銜え部が水平部の端部から上方に傾斜するため、銜え部に沿って流れてきた水が水平部の端部付近で落下しやすくなり、当該水が通気口側へと流れにくくなる。このため、銜え部から流れてきた水が通気口から通気空間に入り込みにくくなる。また、下板部の差込部を画定する部分が水平部と銜え部とによって構成されているため、強風などによって雨などの水が軒天材と銜え部との間から入り込んでも、当該水が銜え部に沿って水平部側へと流れやすくなる。このため、水が軒天材の端部に流れにくくなる。したがって、水が軒天材の端部の小口から滲み込んだり、小口を回って軒天材の裏側に水が浸入するのを抑制することが可能となる。
【0014】
本発明の建物構造は、上板部と、前記上板部と対向して配置された下板部と、前記上板部と前記下板部とを連結する連結板部とを備え、一方向に沿って長尺に延在する軒天換気材が軒下に設置された建物構造において、前記上板部は、上面から前記一方向と直交する斜め下方に延びる斜面部を有しており、前記斜面部には、換気孔が形成されている。また、前記換気孔は、前記斜面部の途中部位に形成されており、前記斜面部の前記換気孔よりも下方部分には、水抜き孔が前記一方向に沿って複数形成されており、前記軒天換気材は、前記水抜き孔と野縁とが対向するように前記野縁に取り付けられている。
【0015】
このようにしてなる本発明の建物構造によれば、強風などによって雨などの水が外部から換気孔に入り込んでも、入り込んだ水は斜面部に沿って滑り落ちていく。このため、軒天材の裏側に水が浸入するのを抑制することが可能となる。また、斜面部に換気孔を設けたことで、換気孔と野縁との間に空間を形成でき、野縁によって換気孔が塞がれることもなく、強風などによって雨などの水が水抜き孔から入り込んでも、当該入り込んだ水が野縁の下面でガードされ、水抜き孔から入った雨水が軒天材の裏側に浸入するのを抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の軒天換気材及び建物構造によると、強風などによって雨などの水が外部から換気孔に入り込んでも、入り込んだ水は斜面部に沿って滑り落ちていく。このため、軒天材の裏側に水が浸入するのを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る軒天換気材の側面図である。
図2図1に示す軒天換気材の上面図である。
図3図1に示す軒天換気材の底面図である。
図4図1に示す軒天換気材を軒下に設置した状態を示す説明図である。
図5】(a)は軒天換気材を軒下に仮固定した状態を示す図であり、(b)は軒天換気材を軒下に本固定した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る軒天換気材について、図1図3を参照しつつ説明する。
【0019】
軒天換気材1は、木造住宅等の小屋裏の湿気や熱気を排出するために、軒下に設置されるものであり、図1に示すように、上板部2と、上板部2と対向して配置された下板部3と、上板部2と下板部3とを連結する連結板部4と、差込部5と、垂下部6と、傾斜板部7と、熱膨張材8とを含んでいる。そして、これらの構成部位2~6によって、軒天換気材1内には通気空間Sが画定されている。
【0020】
本実施形態における軒天換気材1は、ガルバニウム鋼板(溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板)から構成されているが、他の金属や合成樹脂などから構成されていてもよく、特に限定するものではない。なお、図1に示す左右方向を幅方向A(水平方向)とし、幅方向Aに直交する水平方向を長手方向B(一方向)とし、幅方向A及び長手方向Bに直交する方向を上下方向Cとして、以下に説明する。また、図2図5についても方向A~Cを反映して示す。
【0021】
本実施形態における軒天換気材1は、図1に示すように、上側に位置する上板材1aと、上板材1aの下側に位置する下板材1bとが組み合わされて構成されている。上板材1aは、長手方向Bに長尺な薄板に曲げ加工や打ち抜き加工を行うことで構成されており、下板材1bも、長手方向Bに長尺な薄板に曲げ加工を行うことで構成されている。これら上板材1a及び下板材1bは、長手方向Bの長さが同じである。そして、上板材1aの右端部の上面から下板材1bの右端部の下面にかけて連結テープ10を貼り付けることで、両者が右端部で連結されている。テープ10は、各板材1a,1bの右端部の全長に亘って設けられていてもよいし、各板材1a,1bの右端部の全長よりも短いものが長手方向Bに1以上設けられていてもよい。また、テープ10の幅方向Aにおける長さは、後述の固定部21の両面における中央付近にまで達する長さ以上であってもよい。このように軒天換気材1は、長手方向Bに長尺に形成されており、構成部位2~7の長手方向Bの長さが同じになっている。また、上板材1aは、上板部2の大部分(固定部21の上側部分、換気部22)、垂下部6及び傾斜板部7を構成し、下板材1bは、上板部2の一部(固定部21の下側部分)、連結板部4、下板部3を構成する。
【0022】
上板部2は、図1及び図2に示すように、長手方向Bに沿って長尺な板形状を有する。上板部2は、軒天換気材1を軒下に固定するための固定部21と、換気部22とを有する。固定部21は、図1に示すように、幅方向Aにおいて、上板部2の中央よりも右側に配置されており、幅方向Aに延在する。また、固定部21は、上板材1aの右端部側の水平部分と下板材1bの右端部側の水平部分とが上下に重ねられて構成されている。そして、固定部21の左端部(下板材1bが構成する部分)には連結板部4の上端が連結されている。換言すると、固定部21は、連結板部4の上端から差込部5側(右側)に水平に延在している。また、固定部21には、上方に凸となるように湾曲した湾曲部21aが形成されている。湾曲部21aは、軒天換気材1を固定する際に、ビスや釘などをねじ込む又は打ち込まれる箇所である。また、上板材1aの湾曲部21aに対応する部分と、下板材1bの湾曲部21aに対応する部分は、互いに嵌合可能に構成されており、上板材1aと下板材1bとの位置合わせに用いることもできる。
【0023】
換気部22は、図1に示すように、斜面部23と、立ち上がり部24と、上水平部25とを有する。斜面部23は、固定部21の上面(左端)から長手方向Bと直交する左斜め下方に延在する。斜面部23には、図2に示すように、厚み方向に貫通した複数の換気孔23aが形成されている。複数の換気孔23aは、長手方向Bに沿って所定間隔で配列されている。換気孔23aは、幅方向Aに長尺な長方形平面形状を有し、上板材1aに抜き加工を行うことで形成されている。このように換気孔23aが、斜面部23の斜面を打ち抜いた貫通孔であるため、換気孔23aをブリッジ孔としたときよりも換気孔23aに雨水が滞留するのを抑制できる。
【0024】
また、複数の換気孔23aは、図1に示すように、幅方向Aにおいて、斜面部23の途中部位、すなわち、中央部に形成されており、下板部2の下水平部31(後述する)と上下方向Cに沿って重なる位置に配置されている。また、斜面部23には、図2に示すように、厚み方向に貫通した複数の水抜き孔23bが形成されている。これら水抜き孔23aは、換気孔23aよりもその開口面積が小さく、円形平面形状を有している。また、水抜き孔23bは、図1に示すように、斜面部23の下方部分に配置されており、幅方向Aにおいて、換気孔23aの下方部分と重なる位置に配置されている。また、水抜き孔23bは、その形成数が換気孔23aよりも少なく、長手方向Bにおいて、換気孔23aの配列ピッチよりも大きなピッチで設けられている。本実施形態における水抜き孔23bの配列ピッチは、例えば、野縁が長手方向Bに455mmピッチで配置された際に、水抜き孔23bを野縁に対して上下方向Cに対向させて配置することが可能な配列ピッチにされている。これにより、水抜き孔23bを野縁に対して上下方向Cに対向させて配置することが可能となる。
【0025】
立ち上がり部24は、図1に示すように、斜面部23の下端である左端から鉛直上方に延在して形成されている。なお、立ち上がり部24は、斜面部23から斜め上方に延在して形成されていてもよい。このように換気部22には、斜面部23と立ち上がり部24とで画定され、上方に開口する凹部26が形成されている。上水平部25は、立ち上がり部24の上端から左方に水平に延在して形成されている。また、上水平部25の左端部は、幅方向Aにおいて、下板部3の左端部よりも外側(左方)に配置されている。つまり、上板部2は、幅方向Aにおいて、固定部21の端部(上板部2の連結板部4の上端と連結された連結位置)から下板部3の左端部よりも外側に延在した換気部22を有している。固定部21の上面及び上水平部25の上面は、上下方向Cにおいて、同じ高さレベルに配置されている。上水平部25は、軒天換気材1の上板材1aを仮固定する際に、ビスや釘などをねじ込む又は打ち込まれる部分である。
【0026】
連結板部4は、図1に示すように、上端が上板部2に連結され、下端が下板部3に連結されており、固定部21の左端部(下板材1bが構成する部分)から左斜め下方に延在している。つまり、連結板部4は、長手方向Bに対して直交し且つ幅方向Aに対して傾斜する方向に延在する傾斜部から構成されている。連結板部4が、下板部3との連結位置から差込部5側へ向かって上方に傾斜する傾斜面を有していることで、後述の軒天材106を端部から差込部5に差込んだ時に連結板部4と軒天材106の端部との間に空間を確実に形成でき、軒天材106の小口からの吸水をより確実に防止することができる。
【0027】
連結板部4は、長手方向Bに沿って延在しており、長手方向Bの長さが上板部2と同じになっている。また、連結板部4は、斜面部23の下方において当該斜面部23と上下方向Cに対向して配置されている。また、連結板部4は、固定部21とでなす角度θ1が固定部21と斜面部23とでなす角度θ2よりも小さくなるように傾斜している。そして、連結板部4と斜面部23との間には、図1に示すように、通気空間Sの右側部分であって、断面視鋭角状の空間S1が画定されている。
【0028】
下板部3は、図1及び図3に示すように、長手方向Bに沿って長尺な板形状を有する。下板部3は、図1に示すように、凹部26と通気空間Sを挟んで上下方向Cに対向している。また、下板部3は、斜面部23と通気空間Sを挟んで対向する水平な下水平部31と、銜え部32とを有する。下水平部31は、幅方向Aに水平に延在しており、幅方向Aの中央部分に連結板部4の下端が連結されている。下水平部31の連結板部4が連結された連結位置から左側部分は、下板材1bのU字状に折り返されて重ねられた部分によって構成されている。一方、下水平部31の連結板部4が連結された連結位置から右側部分は、下板材1bの水平に延在する部分から構成されている。このように下水平部31は、連結板部4の下端と連結された連結位置から右方に水平に延在する部分と、左方に水平に延在する部分とを有する。
【0029】
銜え部32は、図1に示すように、下水平部31の右端部から下板部3の右端部(差込部5側の端部)に近づくに連れて上方に傾斜する傾斜部である。また、銜え部32は、その右端部に、銜え部32を構成する部分の下板材1bがU字状に折り返されて重ねられた部分を有する。この下板部3の銜え部32及び下水平部31の一部(下水平部31の連結板部4が連結された連結位置から右側部分)と、連結板部4と、上板部2の一部(固定部21)とで、差込部5が画定されている。差込部5は、長手方向Bに沿って長尺に形成され、後述の軒天材50の端部を差し込み可能な溝状に形成されている。つまり、差込部5の幅方向Aの一端には、軒天材50の端部を差し込むための開放された差込口5aが構成されている。
【0030】
垂下部6は、図1に示すように、上水平部25の左端部の下面から下方に延在した板形状を有している。垂下部6の下端は、下水平部31の左端部と同一高さレベルに配置されている。垂下部6は、長手方向Bに沿って延在しており、長手方向Bの長さが上板部2と同じになっている。また、垂下部6は、連結板部4及び立ち上がり部24と通気空間Sを挟んで対向している。垂下部6の下端部と下水平部31の左端部との間には、図1及び図3に示すように、通気空間Sに通じる通気口9が形成されている。
【0031】
傾斜板部7は、図1に示すように、垂下部6の下端から左方(通気口9とは反対側)に長手方向Bと直交する左斜め上方に延びて形成されている。この傾斜板部7は、軒天換気材1が軒下に設置される際に、その先端が後述の鼻隠し104の裏面側に当接される。このように傾斜板部7が傾斜し先端が鼻隠し104に当接されることで、火災などによって軒天換気材1自体が加熱され多少柔らかくなっても、傾斜板部7の先端が鼻隠し104との当接によって踏ん張り、傾斜板部7が下方に垂れ下がるように変形しにくくなる。また、傾斜板部7は、その左端部に、傾斜板部7を構成する部分の上板材1aがU字状に折り返されて重ねられた部分を有する。
【0032】
熱膨張材8は、図1に示すように、下板部3の下水平部31上であって通気空間Sに配置されている。より詳細には、熱膨張材8は、下水平部31の連結板部4と連結された連結位置よりも左側部分上に配置されている。下水平部31の当該左側部分は、幅方向Aにおいて、連結板部4と通気口9との間に配置され、連結板部4近傍部分が上下方向Cに沿って換気孔23aと重なって配置されている。そして、熱膨張材8は、その右側部分が換気孔23aと上下方向Cに沿って換気孔23aと重なって配置されている。つまり、熱膨張材8は、換気孔23aと対向するように、下水平部31上に配置されている。
【0033】
本実施形態における熱膨張材8は、火災時に体積が数十倍程度に熱膨張して通気空間Sや換気孔23aを塞ぐものであって、特にその材質を限定するものではなく、公知のものを広く使用することができる。
【0034】
また、熱膨張材8は、図1に示すように、加熱前の状態において、長手方向Bに沿って長尺な略直方体形状を有している。なお、熱膨張材8の形状は、特に限定するものではなく、直方体形状以外の形状であってもよい。また熱膨張材8は、加熱前の状態において、長手方向Bに短尺な複数の膨張体が長手方向Bに沿って配置されて構成されていてもよい。これら複数の膨張体は、長手方向Bに沿って互いに連続的に繋がっていてもよいし、繋がらずに不連続であってもよい。また、熱膨張材8は、火災などで加熱されたときに、全体的に膨張し斜面部23の下端に当接して部分的に膨張が規制され、熱膨張材8が規制されていない左右部分がそのまま膨張し、図1中二点鎖線で示す状態となる。このように熱膨張材8が膨張することで、通気空間Sの通気口9よりも右側部分全体の空間(断面視鋭角状の空間S1)と、通気空間Sの通気口9と上下方向Cに対向する部分の右側部分を占めることが可能となる。このように熱膨張材8は、火災などで加熱されたときに、換気孔23aを覆って塞ぐことが可能に構成されている。また、熱膨張材8は、斜面部23の下端と上下方向Cに沿って対向する位置に配置されている。このため、熱膨張材8は、膨張時に斜面部23の下端が食い込むように膨張する。このため、熱膨張材8の膨張後に時間経過とともに縮んできても、熱膨張材8の斜面部23の下端が食い込んだ部分に隙間が生じにくくなって、漏気を防ぐことが可能となる。
【0035】
このような軒天換気材1を製造するには、まず、上述したように薄板に曲げ加工や打ち抜き加工を施して、上板材1a及び下板材1bを個別に製造する。この後、下板材1bの下水平部31の所定箇所に、熱膨張材8を貼り付ける。軒天換気材1が2つの板材1a,1bを組み合わせてなるため、熱膨張材8を貼り付けやすくなる。この後、上板材1aの右端部と、下板材1bの右端部とをテープ10で連結することで、軒天換気材1が製造される。なお、軒天換気材1は、銜え部32の下水平部31に対する傾斜角度を変更した下板材1bに付け替えることで、差込部5の上下幅を軒天材の厚みに応じて変更することが可能である。
【0036】
続いて、軒天換気材1を軒下に設置した建物構造について、図4及び図5を参照しつつ以下に説明する。図4に示すように、建物構造100は、屋根部材101、垂木102、下地材103、鼻隠し104及び野縁105等によって構成された木造住宅の屋根構造と、下地材103及び野縁105に下方から取り付けられた軒天換気材1と、軒天材106とを含んで構成されている。本実施形態における建物構造100は、軒天換気材1が鼻先に設置されたときの構造であり、通気口9が鼻先側に配置するようにして、上水平部25が下地材103にビス110で留め付けられ、固定部21が野縁105にビス111で留め付けられ、この後に軒天材106の端部を差込部5に差し込んで配置することで構成される。このとき、軒天換気材1は、軒天換気材1の水抜き孔23bと野縁105とが上下方向Cに沿って対向するようにして、野縁105に取り付けられている。これにより、強風などによって雨などの水が水抜き孔23bから入り込んでも、当該入り込んだ水が野縁105の下面に付着する。このため、軒天材106の裏側(上面側)に水が流れ込むのを抑制することが可能となる。
【0037】
また、軒天換気材1には、斜面部23が形成され、当該斜面部23に換気孔23aが形成されているため、換気孔23aと野縁105とが対向しても当該換気孔23aが野縁105によって封止されない。つまり、換気孔23aと野縁105との間には、斜面部23の形成によって空間が形成されている。このため、換気孔23aが野縁105に封止されることで換気能力が低下するのを抑制することが可能となる。また、斜面部23は、幅方向Aにおいて、通気口9に近づくに連れて下方に傾斜しており、当該斜面部23に換気孔23aが形成されているため、設置された軒天換気材1をユーザが下方から目視したときに、通気口9を介して換気孔23aがほとんど見えない状態となる。このため、美観に優れる。
【0038】
また、建物構造100は、軒天換気材1が、幅方向Aにおいて、斜面部23を挟んだ両側でビス110,111により、下地材103及び野縁105に固定されている。このため、火災などによって軒天換気材1が加熱されても、一方側だけで固定されたものよりも変形しづらくなる。したがって、軒天換気材1近傍で漏気しにくくなる。
【0039】
軒天換気材1を下地材103及び野縁105に取り付けるには、図5(a)に示すように、軒天換気材1を構成する上板材1aと下板材1bとを上板部2の右端部を中心として、開いた状態とする。そして、軒天換気材1の傾斜板部7の先端(左端部)を鼻隠し104の裏面に当接させた状態で、上板材1aの上水平部25をビス110で下地材103に留め付ける。このとき、下板材1bが上板材1aに対してテープ10を介してぶら下がるように配置されるため、上板材1aを下地材103に仮固定する際に、工具が下板材1bに接触しにくくなって、軒天換気材1の下板部3にキズが付くのを抑制することができる。
【0040】
次に、図5(b)に示すように、下板材1bの湾曲部21aに対応する部分を、上板材1aの湾曲部21aに対応する部分に嵌合し、下板材1bと上板材1aとの位置合わせを行う。そして、湾曲部21a部分を、下方からビス111で野縁105に留め付ける。こうして、軒天換気材1が下地材103と野縁105に本固定されて設置される。この後、図4に示すように、軒天材106の端部を差込部5に差し込んで配置することで、建物構造100が構成される。
【0041】
上述の実施形態において、軒天換気材1は鼻先に設置したが、軒天換気材1の図4中の左右を反転させて壁元側に設置してもよいし、軒天換気材1を野縁105の中間部に設置してもよい。つまり、軒天換気材1は、軒下に設置されておれば、特に設置位置を限定するものではない。
【0042】
以上に述べたように、本実施形態における軒天換気材1及び建物構造100によると、斜め下方に傾斜する斜面部23に換気孔23aが形成されているため、強風などによって雨などの水が外部から換気孔23aに入り込んでも、入り込んだ水は斜面部23の上面に沿って滑り落ちていく。つまり、図2に示すように、換気孔23aから入り込んだ複数の水滴W1(図2中二点鎖線で示す)は、斜面部23の上面に沿って左方へと滑り落ちていく。そして、凹部26の下部において、流れ落ちた複数の水滴W1が集まってなる水滴W2(図2中二点鎖線で示す)が長手方向Bに延びるように成長し、水滴W2の端部が水抜き孔23bに達することで、水滴W2が水抜き孔23bから下方に滴下する。こうして、換気孔23aから入り込んだ水が軒天換気材1から外部に排出される。この結果、軒天材106の裏側(上面側:小屋裏側)に水が浸入するのを抑制することが可能となる。また、換気孔23aを斜面部23に形成することで換気孔23aの開口幅を斜面に沿って大きくできて開口面積を増やすことができる。
【0043】
また、斜面部23の下方部分に水抜き孔23bが形成されているため、水が換気孔23aから入り込んでも、斜面部23に沿って滑り落ちた後に水抜き孔23bから外部に排出することが可能となる。
【0044】
また、水抜き孔23bは、長手方向Bに沿って複数形成されているため、斜面部23の下方部分に溜まる水を効果的に排出することが可能となる。
【0045】
また、連結板部4と斜面部23は、図1に示すように、両者間に断面視鋭角状の空間S1が画定されるように形成されている。このように斜面部23と連結板部4との間の空間S1が断面視鋭角状の空間であるため、強風などによって通気口9から換気孔23aに向かってきた雨などの水が当該空間S1の上角部(図1中右上角部)で集まりやすくなる。この結果、集まった水が連結板部4に沿って下方に流れ落ちやすくなって換気孔23aから入り込みにくくなる。
【0046】
また、垂下部6が、連結板部4及び立ち上がり部24と通気空間Sを挟んで対向して配置され、垂下部6の下端部と下板部3との間に通気口9が形成されている。これにより、強風などによって通気口9から通気空間Sに入り込んだ雨などの水が、通気空間Sの立ち上がり部24と垂下部6との間の空間に入り込みやすくなる。これは、強風が通気口9から吹き込んだ際は、通気空間Sにおいて、通気口9から上水平部25に向かい、その後立ち上がり部24向かってから下方に向かうUターンの気流が生じるからである。このため、水が立ち上がり部24の垂下部6と対向する面に付着しやすくなり、付着した水同士が集まって下方に落ちる。この結果、換気孔23aから水が入り込みにくくなる。
【0047】
また、下板部3が、下水平部31と、下水平部31の端部から下板部3の差込部5側の端部に近づくに連れて上方に傾斜する銜え部32とを有している。これにより、銜え部32の下面に付着した水が当該下面に沿って流れ、下水平部31の端部付近で落下しやすくなり、当該水が通気口9側へと流れにくくなる。このため、銜え部32から流れてきた水が通気口9から通気空間Sに入り込みにくくなる。また、下板部3の差込部5を画定する部分が、下水平部31の右側部分(連結板部4の下端との連結位置から差込部5側に水平に延びる部分)、及び、銜え部32によって構成されている。これによると、強風などによって雨などの水が軒天材106と銜え部32との間から入り込んでも、当該水が銜え部32の上面に沿って下水平部31側へと流れやすくなる。つまり、図4に示すように、軒天材106と銜え部32との間から入り込んだ水W3(図中二点鎖線で示す)が、軒天材106の端部から離れつつ下水平部31に向かって流れる。このため、水が軒天材106の端部に流れにくくなる。このため、水が軒天材106の端部に流れにくくなる。したがって、水が軒天材106の端部の小口から滲み込んだり、端部を回って軒天材106の裏側(小屋裏側)に水が滲み上がって浸入するのを抑制することが可能となる。
【0048】
また、傾斜板部7が、垂下部6の下端から斜め上方に延在している。これにより、傾斜板部7に付着した水が傾斜板部7に沿って流れ、垂下部6の下端から下方に落ちやすくなる。また、傾斜板部7の先端を鼻隠し104の裏面側に当接させて本軒天換気材1を取り付けておくことで、傾斜板部7が変形しても、垂れ下がることを防止することができる。
【0049】
また、換気部22が下水平部31と通気空間Sを挟んで上下方向Cに対向しており、上水平部25の下面から垂下した垂下部6が連結板部4と通気空間Sを挟んで幅方向Aに対向しており、垂下部6の下端部と下水平部31の左端部との間に、通気空間Sに通じる通気口9が形成されている。これにより、雨などの水は、通気口9から通気空間Sに入り込んでから換気孔23aから入り込むこととなる。このため、換気孔23aに水が入り込みにくくなる。
【0050】
また、熱膨張材8が通気空間Sに配置されている。これにより、火災時などに、火炎が通気空間Sを介して換気孔23aから小屋裏へと入り込むのを抑制することが可能となる。
【0051】
また、熱膨張材8は、換気孔23aと対向するように下水平部31上に配置されている。これにより、火災時に、熱膨張材8で換気孔23aを覆うことが可能となり、火炎が換気孔23aから小屋裏へと入り込むのをより一層抑制することが可能となる。
【0052】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の実施形態における連結板部4は、下方に近づくに連れて下端が通気口9に近づくように傾斜しているが、上下方向Cに沿って垂直に形成されていてもよいし、下方に近づくに連れて下端が通気口9から離れるように傾斜するように形成されていてもよい。連結板部4は、その全体が傾斜しているが、一部が傾斜する傾斜部を有していてもよい。例えば、連結板部の上端部及び下端部が垂直に延在し、これら両端部間の中央部に垂直及び水平に対して傾斜する傾斜部が配置されていてもよい。
【0053】
また、換気孔23aは、斜面部23に形成されておれば、どの位置に形成されていてもよい。また、換気孔23aは、斜面部23を抜き加工で形成しているが、換気孔は斜面部23に窪みを設け、その側面に開口して形成してもよい。
【0054】
また、斜面部23には、少なくとも1つの水抜き孔23bが形成されておればよい。また、水抜き孔23bは形成されていなくてもよい。また、垂下部6や傾斜板部7が形成されていなくてもよい。また、銜え部32は、水平であってもよい。
【0055】
また、本実施形態における軒天換気材1は、上板材1aと下板材1bとが右端部でテープ10によって連結されているが、当該テープ10に代えてヒンジ結合により上板材1aに対して下板材1bを右端部のヒンジを中心に開閉できるようにしてもよい。或いは上板材1aと下板材1bとを右端同士が繋がった一枚の鋼板によって構成するようにしてもよい。
【0056】
また、上板部2には、図1に示すように、固定部21、斜面部23、立ち上がり部24及び上水平部25によって底面の全部が傾斜する凹溝状の換気部22を形成したが、底面の一部が傾斜してもよいし、傾斜角度の異なる傾斜面を組み合わせてもよいし、底面が傾斜しその両端に立ち上がり部を形成した凹溝状の換気部であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 軒天換気材
2 上板部
3 下板部
4 連結板部(傾斜部)
5 差込部
5a 差込口
6 垂下部
7 傾斜板部
8 熱膨張材
9 通気口
23 斜面部
23a 換気孔
23b 水抜き孔
24 立ち上がり部
26 凹部
31 下水平部(水平部)
32 銜え部
105 野縁
106 軒天材
S 通気空間
S1 空間
図1
図2
図3
図4
図5