(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042583
(43)【公開日】2022-03-15
(54)【発明の名称】漬け床包装体及び熟成漬け床
(51)【国際特許分類】
A23B 7/10 20060101AFI20220308BHJP
【FI】
A23B7/10 B
A23B7/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020148026
(22)【出願日】2020-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】520339161
【氏名又は名称】株式会社京の舞妓さん本舗
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】今井 洋之
【テーマコード(参考)】
4B169
【Fターム(参考)】
4B169DA20
4B169DC10
4B169FA02
(57)【要約】
【課題】より手軽に家庭で漬物ができるようにするとともに、糠漬け等の普及に貢献する。
【解決手段】発酵し熟成された熟成漬け床12を包装した漬け床包装体11において、熟成漬け床12を平板形状に真空包装する。熟成漬け床12の平面視形状を長方形にするとともにその厚さを1mm~2mmとする。また熟成漬け床12を硬めに調整する。これによって、必要な時に開封して熟成漬け床12を使用でき、漬物材料に対する適用については巻付けなどにより手軽に行える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熟成された熟成漬け床を包装した漬け床包装体であって、
前記熟成漬け床が真空包装されるとともに、
前記熟成漬け床が平板形状に包装された
漬け床包装体。
【請求項2】
前記熟成漬け床の量が、一回の使用に見合った量である
請求項1に記載の漬け床包装体。
【請求項3】
前記熟成漬け床の平面視形状が四角形である
請求項1または請求項2に記載の漬け床包装体。
【請求項4】
前記熟成漬け床の厚さが0.5mm~2mmである
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の漬け床包装体。
【請求項5】
前記熟成漬け床の水分量が、好適水分量のうちその下限値に近づけられた
請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の漬け床包装体。
【請求項6】
前記熟成漬け床を包む包装材が、前記熟成漬け床を載せる裏シート部と、前記熟成漬け床の上面を被覆する表シート部を有し、
前記表シート部が、前記裏シート部に前記熟成漬け床を載せた状態のまま前記熟成漬け床から分離可能に設けられた
請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の漬け床包装体。
【請求項7】
熟成された熟成漬け床であって、
平板形状に成形された
熟成漬け床。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熟成された熟成漬け床を包装した漬け床包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
熟成された糠床は、通常、毎日手を入れて撹拌し、酸素を供給しないと、カビが繁殖してきたりして、質が劣化してしまう。このため、糠床を適切に維持することは容易ではなく、新規に自家製の糠漬けを作ることは行いにくかった。
【0003】
手軽に糠漬ができるように、例えば下記特許文献1に開示のような漬け床づくりのための漬物床の形成用袋体はあるものの、手入れの煩雑さゆえか、普及しにくい。
【0004】
このような背景のなか、下記特許文献2のように長期に亘って撹拌をしなくても雑菌の繁殖をきわめて少なくし、品質を安定できるように、乳酸菌を含む特定の発酵物を有する漬け床が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-266784号公報
【特許文献2】特許第4205006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2の漬け床にあっては、漬け床を作る手間が不要であり、手入れに煩わされないという利点があるものの、あくまでも漬け床づくりの手間を省き、手入れの煩わしさを軽減したものである。維持管理が全く不要となったわけではない。例えば水分が多くなったら除去するなどの手入れを怠れば、漬け床を劣化させてしまうことに変わりはない。
【0007】
また、漬物づくりに際して漬け床に漬物材料を埋め込むという作業は必要であり、漬け床として通常1kg程度の量は必要である。このため、冷蔵庫内で管理しようとする場合には、袋に入れた漬け床であって変形が可能な場合でも、常に一定の容積を占有することになる。
【0008】
そこでこの発明は、好まなければ手入れを全くせずともよく、より手軽に家庭で漬物ができるようにすることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのための手段は、熟成された熟成漬け床を包装した漬け床包装体であって、前記熟成漬け床が真空包装されるとともに、前記熟成漬け床が平板形状に包装された漬け床包装体である。
【0010】
この構成では、真空包装された熟成漬け床は、開封されることによって内部に存在する乳酸菌等の活動が再開される。開封した熟成漬け床は、平板形状のまま、漬物材料である野菜などの周りに被せたり巻き付けたりしたのち、適宜のフィルムに包んだり袋や容器に入れたりして漬け込みに供される。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、熟成漬け床は真空包装されているので、比較的長期間にわたって保存でき、必要な時に使用できる。使用に際しては平板形状に包装されているので、開封後にその形状のまま漬物材料を被覆することで、漬物材料の全体をまんべんなく熟成漬け床で包むことができる。しかも、その作業は熟成漬け床の塊を伸ばす場合と比べて容易である。また、熟成漬け床の量を極力少なくでき、漬け込み後の熟成漬け床の手入れを一切不要にすることができる。
【0012】
このように、熟成漬け床を用いると家庭で手軽に漬物を作ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図5】熟成漬け床で漬物材料を包んだ状態の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
【0015】
図1の斜視図に示したように、漬け床包装体11は熟成された熟成漬け床12を包装したものである。ここで、熟成された熟成漬け床12とは、発酵して漬け床として完成した状態の物のことである。
【0016】
この例では漬け床としての代表格である糠床について説明する。
【0017】
図2は、
図1のA-A切断部端面図であり、
図3は漬け床包装体11の分解斜視図である。これらの図に示すように、熟成漬け床12は平板形状に真空包装されている。熟成漬け床12は、それ自体では形状保持力のない状態であり、包装材13で包装されて平板形状となるものであるほか、熟成漬け床12自体が成形されて平板形状に保持される状態のものであってもよい。
【0018】
熟成漬け床12は、米糠、塩、水、昆布、野菜片、香辛料等の適宜の材料からなり、実際に野菜を漬け込んで熟成されたものである。この漬け床包装体11を得るためだけの特殊な材料は不要であり、糠床づくりに通常用いられる適宜の材料が使用される。
【0019】
熟成漬け床12の平面視形状は四角形である。図示例では、熟成漬け床12を長方形にしている。熟成漬け床12の大きさは、適宜設定された熟成漬け床12の量に応じて決まる。熟成漬け床12の量は、例えば100g、150g、200gなどと、漬物材料を漬けるのに必要な量を考慮して設定される。例えば、一回の使用(漬け込み)に見合った量に設定されるとよい。また、一回の使用に見合った量よりも多くてもよい。
【0020】
熟成漬け床12の量については、漬け込みに必要な量であるのはもちろんであるが、漬け込み後にすべて洗い流しても良いように、少なくするとよい。
【0021】
また、熟成漬け床12の厚さは、漬物材料に対する被覆作業性の点から薄いほうが良い。好ましい厚さは、0.5mm~2mm程度である。このため、熟成漬け床12は平板形状というほかシート状とも表現し得る。
【0022】
例えば熟成漬け床12の量を100gとした場合、たて240mm、よこ125mm程度の大きさとすると、厚さは1mm~2mm程度となる。
【0023】
熟成漬け床12の硬さは硬めである。柔らかすぎると熟成漬け床12が包装材13にくっつきすぎて扱いにくいからである。熟成漬け床12の硬さを水分量で表現すると、好適水分量の下限値を利用できる。すなわち、使いやすい硬さの一例を水分量で表現すると、熟成漬け床12の水分量は、好適水分量、つまり正常な糠床として適した水分量のうちその下限値に近づけられたものである。具体的には、糠床の好適水分量は耳たぶ程度の硬さのときであり、握った時に水が滲むくらいである。好適水分量はおおよそ55%から65%程度である。このため、55%に近い値になるように水分の除去を行って調整をする。
【0024】
このような熟成漬け床12は、
図3に示したように包装材13で真空包装される。熟成漬け床12は平板形状に成形してから包装されるほか、包装材13に収容後に成形されてもよい。
【0025】
図3に示した包装材13は、分離すると別体となる裏シート部31と表シート部32で構成される。裏シート部31は熟成漬け床12を載せる部分であり、表シート部32は熟成漬け床12の上面を被覆する部分であって、表シート部32が、裏シート部31に熟成漬け床12を載せた状態のまま熟成漬け床12から分離可能に設けられている。なお、裏シート部31と表シート部32の区別は絶対的なものではなく、扱いによって裏シート部31は表シート部32でもあり、逆に表シート部32は裏シート部31でもある。
【0026】
具体的には、裏シート部31と表シート部32は同形同大の長方形であり、熟成漬け床12の平面視形状よりも一回り大きく長手方向に長い形状である。裏シート部31と表シート部32の全周に熱シール部13aで封止される(
図3の仮想線参照)。熟成漬け床12は包装材13における長手方向の一方に寄せて収容され、
図1に示したように包装材13における熟成漬け床12の存在しない他方側の部分が裏側に折り返されている。
【0027】
漬け床包装体11の出荷形態には常温出荷と冷凍出荷の2種類がある。常温出荷は、前述のようにして製造された熟成漬け床12を真空包装してから殺菌消毒のために熱処理をし、その後冷却して常温で出荷する。熱処理は通常行われる程度のものでよく、例えば85度で20分間煮沸するとよい。冷凍出荷は、熟成漬け床12を真空包装してから冷凍し、冷凍した状態のまま出荷する。
【0028】
このような構成の漬け床包装体11は、次のようにして使用される。
【0029】
まず、漬け床包装体11を開封して熟成漬け床12を平板形状のまま取り出す。取り出すとは、熟成漬け床12の片面の全体を露出させることであり、熟成漬け床12は裏シート部31の上に載った状態のままでもよい。平板形状に成形された熟成漬け床12の場合には、熟成漬け床12のみを適宜取り出してもよい。
【0030】
漬け床包装体11の開封は包装材13を熟成漬け床12の外周位置で、それよりも外側の部分を切り離して行う。冷凍出荷された漬け床包装体11の場合には、冷凍され活動停止している熟成漬け床12内の乳酸菌等が常温に戻り、開封されることによって空気に触れて乳酸菌等の活動が再開される。
【0031】
つぎに、熟成漬け床12を食品用ラップフィルム14(
図4参照)やまな板(図示せず)、パッド(図示せず)などの上に載せる。続いて、熟成漬け床12の上に漬物材料15を載せたのち、熟成漬け床12を折ったり丸めたりするようにして、熟成漬け床12で漬物材料15を包む。
図4に示したように食品用ラップフィルム14を敷いたうえで行う場合には、食品用ラップフィルム14ごと包む。熟成漬け床12が裏シート部31の上に載った状態である場合には、裏シート部31ごと包むことができる。まな板等の上で漬物材料15を熟成漬け床12で包んだ場合には、袋や容器に収容する。
図5は食品用ラップフィルム14ごと包んだ例を模式的に表現している。
【0032】
このようにして、漬物材料15の外周に熟成漬け床12が付着した状態にして、適宜の時間を置くと、漬物が完成する。常温出荷された漬け床包装体11の場合には、熱処理の段階で乳酸菌がほとんど死滅すると考えられるが、漬物材料と接触すると、漬物材料に付着している乳酸菌が熟成漬け床12の中に入り、熟成漬け床12内の乳酸菌が増える。
【0033】
漬物を食する際には漬物材料15の周りについている熟成漬け床12を洗い流す。
【0034】
漬物材料15に付着した熟成漬け床12は、必要であれば取って置き、別の漬物づくりに使用できる。ただし、この場合は、熟成漬け床12に対して通常の糠床で必要とされる適切な手入れが必要となる。
【0035】
以上のように真空包装された熟成漬け床12は比較的長期間にわたって保存でき、漬け床づくりをする手間なしに必要な時にすぐに使用できる。しかも、熟成漬け床12は平板形状であるので、漬物材料15を被覆するように使用でき、熟成漬け床12の塊を伸ばす場合と比較して、漬物材料15の全体にまんべんなく容易に熟成漬け床12を付着させることが可能である。
【0036】
しかも、熟成漬け床12の硬さは硬めに調整しているうえに、熟成漬け床12の平面視形状は四角形であるので、あたかも物を紙で包むように多様な形状の漬物材料15に熟成漬け床12を付着させやすい。特に、熟成漬け床12の水分量を好適水分量の下限値に近づけた場合には、熟成漬け床12の健全な状態を維持して、所望通りの良好な漬け込みができる。熟成漬け床12の厚さが1mm~2mmであれば、漬物材料15の被覆が容易に無駄なく効率的に行える。
【0037】
また、熟成漬け床12の量は漬物材料15の周りに付着させる程度の量でよく、漬け込む漬け床に比べて大幅に少なくできる。このため、冷蔵庫に置く場合でも省スペース化を図れる。
【0038】
しかも、熟成漬け床12の量を一回の使用に見合った量とすることで、一回使い切りの調味料のように使用することができる。一回使い切りに使用する場合には、漬物材料15として、例えば野菜だけではなく、いろいろな食材を糠漬けにしてみようとする契機にもなり、糠漬けの普及にも資する。
【0039】
さらに包装材13は、熟成漬け床12を載せる裏シート部31と、熟成漬け床12の上面を被覆する表シート部32を有し、表シート部32が、裏シート部31に熟成漬け床12を載せた状態のまま熟成漬け床12から分離可能である。このため、熟成漬け床12が柔らかい場合でも平板形状を崩すことなく漬物材料15に被せることができる。また包装材13の一部を漬物材料15に対する熟成漬け床12の被覆作業に使用することもできる。
【0040】
このように、熟成漬け床12は必要な時に簡単に使用でき、家庭で手軽に漬物を作ることに大いに貢献する。
【0041】
以下、漬け床包装体11の他の例を説明する。この説明において、前述の構成と同一の部位については同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0042】
図6は、他の例に係る漬け床包装体11の斜視図であり、この漬け床包装体11は真空包装の他の態様を示している。熟成漬け床12は前述と同じである。
【0043】
包装材13は、三方シール構造である。つまり、包装材13は一枚のシート材で構成され、二つ折りした片方に熟成漬け床12が収容され、折り曲げ部分を除く3辺に熱シール部13aが形成されている。
【0044】
この包装材13も、熟成漬け床12を載せる裏シート部31と、熟成漬け床12の上面を被覆する表シート部32を有し、表シート部32が、裏シート部31に熟成漬け床12を載せた状態のまま熟成漬け床12から分離可能に設けられている。ただし、この例の裏シート部31と表シート部32は一体である。
【0045】
3辺の熱シール部13aにおける内側の端には、切断の目安となる切断箇所を示す目印16の表示がなされている。
【0046】
このような構成の漬け床包装体11は、使用に際してまず、はさみ等を用いて目印16に沿って3辺を切断して開封し、
図7に示したように、包装材13における熟成漬け床12の上面を覆っている部分、つまり表シート部32を開く。これによって表シート部32は裏シート部31と同一平面を形成することになる。
【0047】
つぎに、熟成漬け床12の上に漬物材料15を載せて、裏シート部31を起こして、これを漬物材料15に対して巻き付けるようにして、熟成漬け床12で漬物材料15を被覆する。このとき包装材13の全体を熟成漬け床12の付着に利用する。
【0048】
このような包装材13を有する熟成漬け床12では、漬け込みに際しての作業が容易に行える。
【0049】
前述の例では、熟成漬け床12の平面視形状を長方形としたが、例えば正方形やひし形、円形等の他の形状であってもよい。
【0050】
また、熟成漬け床12は、糠床のほか、糀床、味噌床、粕床などの別の漬け床であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
11…漬け床包装体
12…熟成漬け床
13…包装材
31…裏シート部
32…表シート部