(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042604
(43)【公開日】2022-03-15
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
B62J 23/00 20060101AFI20220308BHJP
B62J 17/10 20200101ALI20220308BHJP
B62J 50/30 20200101ALI20220308BHJP
B62J 15/00 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
B62J23/00 E
B62J17/10
B62J50/30
B62J15/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020148056
(22)【出願日】2020-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】福田 忠司
(57)【要約】
【課題】フロントフォークに泥や小石等が当たることを従来以上に防止することができ、フロントフォークの後方の部品に良好に風を送ることができ、ハンドリングの快適性を維持することができる鞍乗型車両を提供すること。
【解決手段】自動二輪車は、フロントフォークのサスペンション2を覆う上カバー4および下カバー3を備える。上カバー4は下カバー3から分離されている。上カバー4および下カバー3におけるサスペンション2の軸線と垂直な断面は、流線形の後部を切断したような形状に形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪と、
前記前輪に支持された下チューブと前記下チューブに摺動可能な上チューブとを有する左右のテレスコピック式のサスペンションを備えたフロントフォークと、
前記フロントフォークの後方に配置された車両部品と、
前記下チューブの少なくとも一部を覆う下カバーと、
前記下カバーから分離され、前記上チューブの少なくとも一部を覆う上カバーと、を備え、
前記下カバーの上端は、前記上カバーの下端よりも上方に位置し、
前記上カバーにおける前記サスペンションの軸線に垂直な断面は、前記サスペンションの軸線よりも前方に位置する上カバー前部と、前記サスペンションの軸線よりも後方に位置する上カバー後部と、を有し、
前記下カバーにおける前記サスペンションの軸線に垂直な断面は、前記サスペンションの軸線よりも前方に位置する下カバー前部と、前記サスペンションの軸線よりも後方に位置する下カバー後部と、を有し、
前記上カバー前部は、第1前縁と、前記第1前縁から後方かつ左方に延びる第1左縁と、前記第1前縁から後方かつ右方に延びる第1右縁とを有し、
前記上カバー前部の前後方向の寸法は、前記上カバー前部の左右方向の寸法の半分よりも大きく、
前記上カバー後部は、後方に開いた形状を有し、
前記上カバー後部の前後方向の寸法は、前記上カバー前部の前後方向の寸法よりも小さく、
前記下カバー前部は、第3前縁と、前記第3前縁から後方かつ左方に延びる第3左縁と、前記第3前縁から後方かつ右方に延びる第3右縁とを有し、
前記下カバー前部の前後方向の寸法は、前記下カバー前部の左右方向の寸法の半分よりも大きく、
前記下カバー後部は、後方に開いた形状を有し、
前記下カバー後部の前後方向の寸法は、前記下カバー前部の前後方向の寸法よりも小さい、鞍乗型車両。
【請求項2】
前記上カバー後部は、後方かつ右方に延びる第2左縁と、前記第2左縁の右方に位置し、後方かつ左方に延びる第2右縁とを有している、請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項3】
前記下カバー後部は、前記下チューブよりも車幅方向の外方の位置から後方かつ車幅方向の内方に延びる側縁を有している、請求項1または2に記載の鞍乗型車両。
【請求項4】
前記下カバー後部は、前記下チューブよりも車幅方向の内方の位置から後方かつ車幅方向の外方に延びる他の側縁を有している、請求項3に記載の鞍乗型車両。
【請求項5】
前記前輪の上方に配置された横部と、前記横部から下方に延び、前記前輪の側方に配置された縦部と、を有するフロントフェンダを備え、
前記下カバーは、前記フロントフェンダの前記縦部の後方に配置され、
前記フロントフェンダの前記縦部における前記サスペンションの軸線に垂直な断面は、第4前縁と、前記第4前縁から後方かつ左方に延びる第4左縁と、前記第4前縁から後方かつ右方に延びる第4右縁とを有し、前後方向の寸法が左右方向の寸法の半分よりも大きく形成されている、請求項1~4のいずれか一つに記載の鞍乗型車両。
【請求項6】
前記前輪の上方に配置され、左の下カバーおよび右の下カバーと一体化されたフロントフェンダを備えている、請求項1~4のいずれか一つに記載の鞍乗型車両。
【請求項7】
前記下カバーの上端は、前記下チューブの上端よりも上方に位置し、
前記下カバーの下端は、前記下チューブの上下の中間位置よりも下方に位置している、請求項1~6のいずれか一つに記載の鞍乗型車両。
【請求項8】
前記前輪は、リムと、前記リムに装着されたタイヤとを有し、
車両側面視において、前記下カバーの上端は、前記リムよりも上方に位置している、請求項1~7のいずれか一つに記載の鞍乗型車両。
【請求項9】
前記タイヤの上端は、前記車両部品の上端よりも下方、かつ、前記車両部品の下端よりも上方に位置し、
車両側面視において、前記上カバーの一部と前記下カバーの一部と前記タイヤの一部とは重なっている、請求項8に記載の鞍乗型車両。
【請求項10】
前記上チューブは、円筒状のアウターチューブであり、
前記下チューブは、前記アウターチューブに摺動可能に挿入されたインナーチューブである、請求項1~9のいずれか一つに記載の鞍乗型車両。
【請求項11】
前記上カバーの下端部は、前記下カバーの上端部の内側に配置されている、請求項1~10のいずれか一つに記載の鞍乗型車両。
【請求項12】
前記左のサスペンションの上チューブおよび前記右のサスペンションの上チューブに固定されたアンダーブラケットと、
前記アンダーブラケットに固定されたインナーフェンダと、を備え、
前記上カバーは、前記インナーフェンダに支持され、
前記下カバーは、前記下チューブに支持されている、請求項1~11のいずれか一つに記載の鞍乗型車両。
【請求項13】
前記インナーフェンダは、前記アンダーブラケットの下方に配置された水平板状の導風部を有し、
前記上カバーは、前記導風部から下方に延びている、請求項1~12のいずれか一つに記載の鞍乗型車両。
【請求項14】
少なくとも一部が前記上カバーよりも車幅方向の外方に配置されたカウリングを備え、
車両側面視において、前記上カバーの一部と前記カウリングの一部とが重なっている、請求項1~13のいずれか一つに記載の鞍乗型車両。
【請求項15】
前記上カバーを通る所定の水平断面において、前記上カバーの前端は前記カウリングの前端よりも前方に位置している、請求項14に記載の鞍乗型車両。
【請求項16】
前記上カバーを通る所定の水平断面において、前記上カバーの前端は前記カウリングの前端よりも前方に位置し、前記上カバーの後端は前記カウリングの前記前端よりも後方に位置している、請求項14に記載の鞍乗型車両。
【請求項17】
前記上カバー前部の前後方向の寸法は、前記上カバー前部の左右方向の寸法以上であり、および/または、
前記下カバー前部の前後方向の寸法は、前記下カバー前部の左右方向の寸法以上である、請求項1~16のいずれか一つに記載の鞍乗型車両。
【請求項18】
前記上カバー後部の前後方向の寸法は、前記上カバー後部の左右方向の寸法の1/4~3/4倍であり、および/または、
前記下カバー後部の前後方向の寸法は、前記下カバー後部の左右方向の寸法の1/4~3/4倍である、請求項1~17のいずれか一つに記載の鞍乗型車両。
【請求項19】
前記車両部品は、ラジエタまたはオイルクーラである、請求項1~18のいずれか一つに記載の鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントフォークを備えた鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、フロントフォークに泥が付着することや小石が当たること等を防止するために、フロントフォークにカバー(以下、フロントフォークカバーという)を設けることが行われている。
【0003】
また、特開平08-332982号公報に開示されているように、横断面の一部が流線形に形成されたフロントフォークカバーが知られている。このフロントフォークカバーは、ゼッケンプレートと一体化されており、ゼッケンプレートから下方に延びている。このフロントフォークカバーは前半部と後半部とを有しており、後半部の横断面形状が流線形に形成されている。詳しくは、前半部の横断面形状は半円形に形成され、後半部の横断面形状は、後方に細長い形状に形成されている。フロントフォークカバーの横断面の一部が流線形に形成されていることにより、鞍乗型車両の走行に伴って発生する風は、フロントフォークカバーの周囲を円滑に流れる。これにより、フロントフォークの後方に配置されたラジエタ等に、風を良好に供給することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フロントフォークは、インナーチューブおよびアウターチューブを有するテレスコピック式のサスペンションを左右に一対備えている。サスペンションは細長い部品であるため、サスペンションの上下方向の寸法は大きい。特開平08-332982号公報に開示されたフロントフォークカバーは、サスペンションの上部を覆っているが、下部を覆っていない。上記フロントフォークカバーは、ゼッケンプレートと一体化されているため、サスペンションの大部分を覆うように下方に延長することは難しい。そのため、上記フロントフォークカバーでは、サスペンションの大部分を覆うことはできない。
【0006】
また、上記フロントフォークカバーでは、後半部の横断面形状は流線形であるが、前半部の横断面形状は円形であり、流線形ではない。そこで、整流機能を更に高めるために、前半部の横断面形状を流線形にすることが考えられる。すなわち、前半部および後半部の両方の横断面形状を、前後方向の寸法が左右方向の寸法の半分よりも大きな形状にすることが考えられる。
【0007】
しかし、この場合、フロントフォークカバーの前後方向の寸法が大きくなるため、フロントフォークカバーは斜め方向の風の圧力の影響を受けやすくなる。鞍乗型車両では、ライダーがハンドルを操舵するときに、フロントフォークカバーはフロントフォークと一緒にステアリング軸周りに回転する。このとき、風は,フロントフォークカバーに対して、傾いた方向から当たることになる。フロントフォークカバーが受ける風圧は、フロントフォークの回転角度によって相違する。よって、フロントフォークカバーの前後方向の寸法が大きすぎると、操舵時に受ける風圧が実質的に一定でなくなり、ハンドリングの快適性が低下するおそれがある。
【0008】
本発明の目的は、フロントフォークに泥や小石等が当たることを従来以上に防止することができ、フロントフォークの後方の車両部品に良好に風を送ることができ、ハンドリングの快適性を維持することができる鞍乗型車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ここに開示される鞍乗型車両は、前輪と、前記前輪に支持された下チューブと前記下チューブに摺動可能な上チューブとを有する左右のテレスコピック式のサスペンションを備えたフロントフォークと、前記フロントフォークの後方に配置された車両部品と、前記下チューブの少なくとも一部を覆う下カバーと、前記下カバーから分離され、前記上チューブの少なくとも一部を覆う上カバーと、を備える。前記下カバーの上端は、前記上カバーの下端よりも上方に位置する。前記上カバーにおける前記サスペンションの軸線に垂直な断面は、前記サスペンションの軸線よりも前方に位置する上カバー前部と、前記サスペンションの軸線よりも後方に位置する上カバー後部と、を有する。前記下カバーにおける前記サスペンションの軸線に垂直な断面は、前記サスペンションの軸線よりも前方に位置する下カバー前部と、前記サスペンションの軸線よりも後方に位置する下カバー後部と、を有する。前記上カバー前部は、第1前縁と、前記第1前縁から後方かつ左方に延びる第1左縁と、前記第1前縁から後方かつ右方に延びる第1右縁とを有する。前記上カバー前部の前後方向の寸法は、前記上カバー前部の左右方向の寸法の半分よりも大きい。前記上カバー後部は、後方に開いた形状を有している。前記上カバー後部の前後方向の寸法は、前記上カバー前部の前後方向の寸法よりも小さい。前記下カバー前部は、第3前縁と、前記第3前縁から後方かつ左方に延びる第3左縁と、前記第3前縁から後方かつ右方に延びる第3右縁とを有する。前記下カバー前部の前後方向の寸法は、前記下カバー前部の左右方向の寸法の半分よりも大きい。前記下カバー後部は、後方に開いた形状を有している。前記下カバー後部の前後方向の寸法は、前記下カバー前部の前後方向の寸法よりも小さい。
【0010】
上記鞍乗型車両は、フロントフォークのサスペンションを覆う上カバーおよび下カバーを備えており、上カバーと下カバーとは別体である。上カバーおよび下カバーにより、サスペンションの多くの部分を覆うことができる。よって、サスペンションに泥や小石等が当たることを従来以上に防止することができる。また、上カバーおよび下カバーにおけるサスペンションの軸線に垂直な断面は、円形ではなく、サスペンションの軸線よりも後方において流線形の一部を切断したような形状に形成されている。上カバーおよび下カバーは、流線形に準じた形状を有しており、また、サスペンションの軸線よりも後方まで延びている。そのため、上カバーおよび下カバーは、前方からの気流を十分に整えることができる。よって、フロントフォークの後方の車両部品には、十分に整流された空気が供給される。フロントフォークの後方の車両部品に、良好に風を送ることができる。また、上カバーおよび下カバーの上記断面は、流線形の後部が切断されたような形状に形成されているので、全体が流線形に形成されている場合に比べて、前後方向の寸法は小さい。そのため、上カバーおよび下カバーの全体の断面が流線形に形成されている場合に比べて、上カバーおよび下カバーが側方から受ける風圧は小さい。フロントフォークが左方または右方に回転するときに、上カバーおよび下カバーが受ける風圧の変化は抑えられる。よって、ハンドリングの快適性が確保される。したがって、上記鞍乗型車両によれば、フロントフォークに泥や小石等が当たることを従来以上に防止することができ、フロントフォークの後方の車両部品に良好に風を送ることができ、ハンドリングの快適性を維持することができる。
【0011】
前記上カバー後部は、後方かつ右方に延びる第2左縁と、前記第2左縁の右方に位置し、後方かつ左方に延びる第2右縁とを有していてもよい。
【0012】
前記下カバー後部は、前記下チューブよりも車幅方向の外方の位置から後方かつ車幅方向の内方に延びる側縁を有していてもよい。
【0013】
前記下カバー後部は、前記下チューブよりも車幅方向の内方の位置から後方かつ車幅方向の外方に延びる他の側縁を有していてもよい。
【0014】
好ましい一態様によれば、前記鞍乗型車両は、前記前輪の上方に配置された横部と、前記横部から下方に延び、前記前輪の側方に配置された縦部と、を有するフロントフェンダを備える。前記下カバーは、前記フロントフェンダの前記縦部の後方に配置されている。前記フロントフェンダの前記縦部における前記サスペンションの軸線に垂直な断面は、第4前縁と、前記第4前縁から後方かつ左方に延びる第4左縁と、前記第4前縁から後方かつ右方に延びる第4右縁とを有し、前後方向の寸法が左右方向の寸法の半分よりも大きく形成されている。
【0015】
上記態様によれば、フロントフェンダにより、前輪から泥が巻き上げられることを防止することができると共に、フロントフォークの後方の部品に対する導風性能を向上させることができる。
【0016】
好ましい一態様によれば、前記鞍乗型車両は、前記前輪の上方に配置され、左の下カバーおよび右の下カバーと一体化されたフロントフェンダを備えている。
【0017】
上記態様によれば、下カバーがフロントフェンダの縦部を兼ねるので、部品点数を削減することができる。
【0018】
好ましい一態様によれば、前記下カバーの上端は、前記下チューブの上端よりも上方に位置している。前記下カバーの下端は、前記下チューブの上下の中間位置よりも下方に位置している。
【0019】
上記態様によれば、下カバーは下チューブの半分以上を覆っている。よって、下チューブの多くの部分において、泥や小石等が当たることを防止することができる。
【0020】
好ましい一態様によれば、前記前輪は、リムと、前記リムに装着されたタイヤとを有している。車両側面視において、前記下カバーの上端は、前記リムよりも上方に位置している。
【0021】
上記態様によれば、下カバーは比較的高い位置まで延びている。よって、サスペンションに泥や小石等が当たることを効果的に抑制することができる。
【0022】
好ましい一態様によれば、前記タイヤの上端は、前記車両部品の上端よりも下方、かつ、前記車両部品の下端よりも上方に位置している。車両側面視において、前記上カバーの一部と前記下カバーの一部と前記タイヤの一部とは重なっている。
【0023】
上記態様によれば、鞍乗型車両の走行中にサスペンションが伸縮しても、車両部品に対して風が良好に送られる。
【0024】
前記サスペンションは倒立式サスペンションであってもよい。すなわち、前記上チューブは、円筒状のアウターチューブであり、前記下チューブは、前記アウターチューブに摺動可能に挿入されたインナーチューブであってもよい。
【0025】
好ましい一態様によれば、前記上カバーの下端部は、前記下カバーの上端部の内側に配置されている。
【0026】
上記態様によれば、泥水が路面から巻き上げられて下カバーに付着した場合、泥水は下カバーの表面を伝って下カバーの上端部に至った後、風によって後方に飛散しやすい。そのため、サスペンションに泥水が付着することが抑制される。
【0027】
好ましい一態様によれば、前記鞍乗型車両は、前記左のサスペンションの上チューブおよび前記右のサスペンションの上チューブに固定されたアンダーブラケットと、前記アンダーブラケットに固定されたインナーフェンダと、を備える。前記上カバーは前記インナーフェンダに支持され、前記下カバーは前記下チューブに支持されている。
【0028】
上記態様によれば、上カバーおよび下カバーは良好に支持される。
【0029】
好ましい一態様によれば、前記インナーフェンダは、前記アンダーブラケットの下方に配置された水平板状の導風部を有している。前記上カバーは、前記導風部から下方に延びている。
【0030】
上記態様によれば、インナーフェンダの導風部と左右の上カバーとにより、後方に向けて気流を導く門形の導風路が形成される。この導風路により、フロントフォークの後方の部品に対し、更に良好に風を送ることができる。
【0031】
好ましい一態様によれば、前記鞍乗型車両は、少なくとも一部が前記上カバーよりも車幅方向の外方に配置されたカウリングを備える。車両側面視において、前記上カバーの一部と前記カウリングの一部とが重なっている。
【0032】
上記態様によれば、上カバーおよびカウリングにより、前方からの気流を良好に整えることができる。フロントフォークの後方の車両部品に対し、更に良好に風を送ることができる。
【0033】
好ましい一態様によれば、前記上カバーを通る所定の水平断面において、前記上カバーの前端は前記カウリングの前端よりも前方に位置している。
【0034】
上記態様によれば、気流は上カバーの少なくとも一部により整流されてから、上カバーとカウリングとの間に導入される。フロントフォークの後方の車両部品に対し、更に良好に風を送ることができる。
【0035】
前記上カバーを通る所定の水平断面において、前記上カバーの前端は前記カウリングの前端よりも前方に位置し、前記上カバーの後端は前記カウリングの前記前端よりも後方に位置していてもよい。
【0036】
前記上カバー前部の前後方向の寸法は、前記上カバー前部の左右方向の寸法以上であってもよい。前記下カバー前部の前後方向の寸法は、前記下カバー前部の左右方向の寸法以上であってもよい。
【0037】
前記上カバー後部の前後方向の寸法は、前記上カバー後部の左右方向の寸法の1/4~3/4倍であってもよい。前記下カバー後部の前後方向の寸法は、前記下カバー後部の左右方向の寸法の1/4~3/4倍であってもよい。
【0038】
前記車両部品は特に限定されず、例えば、ラジエタまたはオイルクーラであってもよい。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、フロントフォークに泥や小石等が当たることを従来以上に防止することができ、フロントフォークの後方の車両部品に良好に風を送ることができ、ハンドリングの快適性を維持することができる鞍乗型車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、実施形態に係る自動二輪車の前部の側面図である。
【
図2】
図2は、自動二輪車の前輪等を左斜め前方から見た斜視図である。
【
図3】
図3は、自動二輪車の前輪等を左斜め方向から見た斜視図である。
【
図4】
図4は、左のサスペンションおよび上カバー等に関する
図1のIV-IV線断面図である。
【
図5】
図5は、左のサスペンション、上カバー、および下カバー等に関する
図1のV-V線断面図である。
【
図6】
図6は、左のサスペンション、下カバー、およびフロントフェンダ等に関する
図1のV-V線断面図である。
【
図7】
図7(a)は、サスペンションおよび下カバーの側面図である。
図7(b)は、サスペンションおよび上カバーの側面図である。
図7(c)は、サスペンション、フロントフェンダ、および上カバーの側面図である。
【
図8】
図8は、上カバーおよびカウリング等に関する
図1のVIII-VIII線断面図である。
【
図9】
図9(a)は、上カバーが無い場合について、ラジエタの前方の気流を模式的に表す図である。
図9(b)は、実施形態に係る上カバーが設けられている場合について、ラジエタの前方の気流を模式的に表す図である。
図9(c)は、流線形の上カバーが設けられている場合について、ラジエタの前方の気流を模式的に表す図である。
【
図10】
図10(a)は、流線形の上カバーが設けられている場合について、フロントフォークが前方を向いているときの気流を模式的に表す図である。
図10(b)は、流線形の上カバーが設けられている場合について、フロントフォークが右方に回転したときの気流を模式的に表す図である。
【
図11】
図11(a)は、実施形態に係る上カバーが設けられている場合について、フロントフォークが前方を向いているときの気流を模式的に表す図である。
図11(b)は、実施形態に係る上カバーが設けられている場合について、フロントフォークが右方に回転したときの気流を模式的に表す図である。
【
図13】他の実施形態に係る左のサスペンションおよび上カバーに関する
図4相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。以下では、鞍乗型車両の一例として、自動二輪車について説明する。なお、鞍乗型車両とは、乗員が跨がって乗車する車両のことである。
図1は、本実施形態に係る自動二輪車10の前部の左側面図である。
【0042】
図面中の符号F、Re、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表す。以下の説明では特に断らない限り、前、後、左、右、上、下とは、乗員が乗車せずかつ荷物が載せられていない自動二輪車10が水平面上に直立した状態で停止している場合に、図示しないシートに着座した仮想的な乗員から見た前、後、左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。
【0043】
自動二輪車10は、前輪1と、前輪1に支持されたフロントフォーク12と、フロントフォーク12に支持されたステアリング軸11と、ステアリング軸11に固定されたハンドル13とを備えている。フロントフォーク12の前方および側方には、カウリング8が配置されている。フロントフォーク12の後方には、ラジエタ15およびオイルクーラ16が配置されている。ラジエタ15およびオイルクーラ16は、それぞれフロントフォーク12の後方に配置された車両部品の一例である。オイルクーラ16はラジエタ15の下方に配置されている。
【0044】
図示は省略するが、自動二輪車10は、ヘッドパイプと、ヘッドパイプから後方に延びる車体フレームと、車体フレームに支持された内燃機関と、車体フレームに支持されたシートと、車体フレームに揺動可能に支持されたリアアームと、リアアームに支持された後輪とを備えている。ヘッドパイプには、ステアリング軸11が挿入されている。ステアリング軸11は、ヘッドパイプに回転可能に支持されている。シートはヘッドパイプの後方に配置されている。ヘッドパイプは内燃機関の上方に配置されている。
【0045】
フロントフォーク12は、左右のテレスコピック式のサスペンション2を備えている。
図2は、前輪1等を左斜め前方から見た斜視図である。
図3は、前輪1等を左斜め後方から見た斜視図である。
図3に示すように、左のサスペンション2と右のサスペンション2とには、アンダーブラケット6と、アンダーブラケット6よりも上方に配置されたアッパーブラケット6Bとが固定されている。アンダーブラケット6およびアッパーブラケット6Bは、左右のサスペンション2に架け渡されている。
図2において、符号25はサスペンション2の伸縮量を検出するストロークセンサを表す。なお、
図3では、ストロークセンサ25の図示は省略している。
【0046】
図2に示すように、フロントフォーク12の前方には、フロントフェンダ5が配置されている。フロントフェンダ5は、前輪1の上方に配置された横部51と、横部51の左端から下方に延び、前輪1の左の側方に配置された縦部52と、横部51の右端から下方に延び、前輪1の右の側方に配置された縦部52とを有している。
【0047】
図3に示すように、各サスペンション2は、アウターチューブ2Bと、アウターチューブ2Bに摺動可能に挿入されたインナーチューブ2Aとを有している。本実施形態では、フロントフォーク12はいわゆる倒立式のフロントフォークであり、インナーチューブ2Aは下方に配置され、アウターチューブ2Bは上方に配置されている。インナーチューブ2A、アウターチューブ2Bは、それぞれ「下チューブ」、「上チューブ」の一例である。
【0048】
図2に示すように、自動二輪車10は、左右のインナーチューブ2Aの少なくとも一部を覆う左右の下カバー3と、左右のアウターチューブ2Bの少なくとも一部を覆う左右の上カバー4とを備えている。なお、
図3では、左右の下カバー3の図示は省略している。左の上カバー4は、左の下カバー3から分離されている。右の上カバー4は、右の下カバー3から分離されている。左の上カバー4、左の下カバー3は、それぞれ右の上カバー4、右の下カバー3と左右対称の構成を有している。以下の説明では、左の上カバー4および左の下カバー3の構成について説明し、右の上カバー4および右の下カバー3の構成の説明は省略することとする。
【0049】
上カバー4は、前側部分が閉じ、後側部分が後方に開いた流線形状に形成されている。
図4は、サスペンション2および上カバー4等に関する
図1のIV-IV線断面図である。
図4に表されるサスペンション2および上カバー4の断面は、サスペンション2の軸線2cに垂直な断面である。なお、サスペンション2の軸線2cは、インナーチューブ2Aおよびアウターチューブ2Bの軸線のことである。
図4に示すように、上カバー4におけるサスペンション2の軸線2cに垂直な断面は、サスペンション2の軸線2cよりも前方に位置する上カバー前部41と、サスペンション2の軸線2cよりも後方に位置する上カバー後部42とを有する。
【0050】
上カバー前部41は、前方に行くほど左右の寸法が小さくなるように形成されており、流線形に形成されている。上カバー前部41は、前方に向けて閉じた形状をしている。詳しくは、上カバー前部41は、第1前縁41Fと、第1前縁41Fから後方かつ左方に延びる第1左縁41Lと、第1前縁41Fから後方かつ右方に延びる第1右縁41Rとを有している。
【0051】
上カバー前部41は流線形に形成されているので、半円形よりも前方に細長い形状に形成されている。上カバー前部41の前後方向の寸法L41は、上カバー前部41の左右方向の寸法W41の半分よりも大きい。L41>0.5×W41である。ここでは、上カバー前部41の前後方向の寸法L41は、上カバー前部41の左右方向の寸法W41よりも大きい。L41>W41である。
【0052】
上カバー後部42は、後方に行くほど左右の寸法が小さくなるように形成されている。上カバー後部42は、後方に向けて開いた形状をしている。上カバー後部42は、仮想線42xで示される流線形の後部を切断したような形状に形成されている。上カバー後部42は、流線形に準じた形状を有している。詳しくは、上カバー後部42は、第2左縁42Lと第2右縁42Rとを有している。第2左縁42Lは、第1左縁41Lから後方かつ右方に延びている。第2右縁42Rは、第1右縁41Rから後方かつ左方に延びている。前輪1の中心線1CLから遠ざかる方を「車幅方向の外方」とし、前輪1の中心線1CLに近づく方を「車幅方向の内方」とすると、第2左縁42Lはアウターチューブ2Bよりも車幅方向の外方の位置から、後方かつ車幅方向の内方に延びている。第2右縁42Rは、アウターチューブ2Bよりも車幅方向の内方の位置から、後方かつ車幅方向の外方に延びている。
【0053】
上カバー後部42の前後方向の寸法L42は、上カバー前部41の前後方向の寸法L41よりも小さい。L41>L42である。なお、第2左縁42Lの前後方向の寸法と、第2右縁42Rの前後方向の寸法とは、等しくてもよく、異なっていてもよい。ここでは、第2右縁42Rの前後方向の寸法は、第2左縁42Lの前後方向の寸法よりも大きい。上カバー後部42の前後方向の寸法L42は、上カバー後部42の左右方向の寸法W42の1/4~3/4倍である。ただし、上記のL42とW42との関係は一例であり、特に限定される訳ではない。なお、上カバー前部41の後端と上カバー後部42の前端とは連続しているので、上カバー前部41の左右方向の寸法W41と上カバー後部42の左右方向の寸法W42とは等しい。W41=W42である。
【0054】
下カバー3は上カバー4と同様、前側部分が閉じ、後側部分が後方に開いた流線形状に形成されている。
図5は、サスペンション2、上カバー4、および下カバー3等に関する
図1のV-V線断面図である。
図5に表されるサスペンション2、上カバー4、および下カバー3の断面は、サスペンション2の軸線2cに垂直な断面である。
図5に示す断面において、下カバー3は上カバー4と同様の形状を有している。ただし、当該断面において、下カバー3は上カバー4よりも若干大きい。当該断面において、上カバー4は下カバー3の内側に配置されている。下カバー3におけるサスペンション2の軸線2cに垂直な断面は、サスペンション2の軸線2cよりも前方に位置する下カバー前部31と、サスペンション2の軸線2cよりも後方に位置する下カバー後部32とを有する。
【0055】
下カバー前部31は、前方に行くほど左右の寸法が小さくなるように形成されており、流線形に形成されている。下カバー前部31は、前方に向けて閉じた形状をしている。詳しくは、下カバー前部31は、第3前縁31Fと、第3前縁31Fから後方かつ左方に延びる第3左縁31Lと、第3前縁31Fから後方かつ右方に延びる第3右縁31Rとを有している。
【0056】
下カバー前部31は流線形に形成されているので、半円形よりも前方に細長い形状に形成されている。下カバー前部31の前後方向の寸法L31は、下カバー前部31の左右方向の寸法W31の半分よりも大きい。L31>0.5×W31である。ここでは、下カバー前部31の前後方向の寸法L31は、下カバー前部31の左右方向の寸法W31よりも大きい。L31>W31である。
【0057】
下カバー後部32は、後方に行くほど左右の寸法が小さくなるように形成されている。下カバー後部32は、後方に向けて開いた形状をしている。下カバー後部32は、流線形の後部を切断したような形状に形成されている。下カバー後部32は、流線形に準じた形状を有している。詳しくは、下カバー後部32は、左縁32Lと右縁32Rとを有している。左縁32Lは、第3左縁31Lから後方かつ右方に延びている。右縁32Rは、第3右縁31Rから後方かつ左方に延びている。左縁32Lはアウターチューブ2Bよりも車幅方向の外方の位置から、後方かつ車幅方向の内方に延びている。右縁32Rは、アウターチューブ2Bよりも車幅方向の内方の位置から、後方かつ車幅方向の外方に延びている。
【0058】
下カバー後部32の前後方向の寸法L32は、下カバー前部31の前後方向の寸法L31よりも小さい。L31>L32である。左縁32Lの前後方向の寸法と、右縁32Rの前後方向の寸法とは、等しくてもよく、異なっていてもよい。
図5に示す断面では、右縁32Rの前後方向の寸法は、左縁32Lの前後方向の寸法よりも大きい。下カバー後部32の前後方向の寸法L32は、下カバー後部32の左右方向の寸法W32の1/4~3/4倍である。ただし、上記のL32とW32との関係は一例であり、特に限定される訳ではない。なお、下カバー前部31の後端と下カバー後部32の前端とは連続しているので、下カバー前部3の左右方向の寸法W31と下カバー後部32の左右方向の寸法W32とは等しい。W31=W32である。
【0059】
図6は、サスペンション2、下カバー3、およびフロントフェンダ5等に関する
図1のVI-VI線断面図である。
図6に表されるサスペンション2、下カバー3、およびフロントフェンダ5の断面は、サスペンション2の軸線2cに垂直な断面である。下カバー3は、フロントフェンダ5の縦部52の後方に配置されている。
【0060】
下カバー3の
図6の断面形状は、下カバー3の
図5の断面形状と相違している。下カバー3の
図6の断面では、下カバー前部31の第3右縁31Rの後端は、サスペンション2の軸線2cよりも前方に位置している。下カバー後部32は、右縁32Rを有していない。符号55はブレーキディスクを表している。
図6に示す断面では、ブレーキディスク55が下カバー3と干渉しないように、下カバー後部32の右縁32Rが省略されている。ただし、ブレーキディスク55との干渉が生じない限り、下カバー後部32は右縁32Rを有していてもよい。
【0061】
フロントフェンダ5の縦部52におけるサスペンション2の軸線2cに垂直な断面は、前方に行くほど左右の寸法が小さくなるように形成されており、流線形の後部を切断したような形状に形成されている。フロントフェンダ5の縦部52におけるサスペンション2の軸線2cに垂直な断面は、第4前縁52Fと、第4前縁52Fから後方かつ左方に延びる第4左縁52Lと、第4前縁52Fから後方かつ右方に延びる第4右縁52Rとを有している。縦部52の前後方向の寸法L52は、縦部52の左右方向の寸法W52の半分よりも大きく形成されている。L52>0.5×W52である。
【0062】
図示は省略するが、フロントフェンダ5の右の縦部52は、上述の左の縦部52と左右対称の形状に形成されている。
【0063】
図7(a)は、サスペンション2および下カバー3の側面図である。
図7(b)は、サスペンション2および上カバー4の側面図である。
図7(c)は、サスペンション2、フロントフェンダ5、および上カバー4の側面図である。
【0064】
符号3tHは、下カバー3の上端3tを通る水平線を表す。符号4bHは、上カバー4の下端4bを通る水平線を表す。
図7(b)に示すように、下カバー3の上端3tは、上カバー4の下端4bよりも上方に位置している。下カバー3の上端部と上カバー4の下端部とは、側方から見て重なっている。上カバー4の下端部は、下カバー3の上端部の内側に挿入されている。
【0065】
符号2AtHは、インナーチューブ2Aの上端2Atを通る水平線を表す。なお、インナーチューブ2Aの上端2Atとは、乗員が乗車せずかつ荷物が載せられていない自動二輪車10が水平面上に直立した状態で停止している場合に、インナーチューブ2Aのアウターチューブ2Bから突出している部分の上端のことである。インナーチューブ2Aの上端部はアウターチューブ2Bの内部に挿入されているので、インナーチューブ2Aは上記上端2Atよりも上方に位置する部分を有する。しかし、ここでは、上述の上端2Atをインナーチューブ2Aの上端とする。
図7(b)に示すように、下カバー3の上端3tは、インナーチューブ2Aの上端2Atよりも上方に位置している。
【0066】
符号2AmHは、インナーチューブ2Aの上下の中間位置2Amを通る水平線を表す。なお、インナーチューブ2Aの上下の中間位置2Amとは、乗員が乗車せずかつ荷物が載せられていない自動二輪車10が水平面上に直立した状態で停止している場合に、インナーチューブ2Aのアウターチューブ2Bから突出している部分の上下の中間の位置のことである。符号3bHは、下カバー3の下端3bを通る水平線を表す。
図7(b)に示すように、下カバー3の下端3bは、インナーチューブ2Aの上下の中間位置2Amよりも下方に位置している。
【0067】
図1に示すように、前輪1は、リム1Aと、リム1Aに装着されたタイヤ1Bとを有している。タイヤ1Bの上端1Btは、ラジエタ15の上端15tよりも下方、かつ、ラジエタ15の下端15bよりも上方に位置している。車両側面視において、下カバー3の上端3tは、リム1Aよりも上方に位置している。車両側面視において、上カバー4の一部と下カバー3の一部とタイヤ1Bの一部とは、重なっている。
【0068】
図2および
図3に示すように、アンダーブラケット6にはインナーフェンダ7が固定されている。インナーフェンダ7は、水平板状の導風部7Aと、導風部7Aの後端から後方かつ上方に延びる導風部7Bとを有している。導風部7Aの前端7Afは、アンダーブラケット6の前端6fよりも前方に位置している。
【0069】
上カバー4はインナーフェンダ7に支持されている。上カバー4は、インナーフェンダ7およびアンダーブラケット6を介して、サスペンション2のアウターチューブ2Bに支持されている。下カバー3は、ブラケット35(
図7(a)および
図7(b)参照)を介して、サスペンション2のインナーチューブ2Aに支持されている。上カバー4は、アウターチューブ2Bに支持され、かつ、インナーチューブ2Aに支持されていない。下カバー3は、インナーチューブ2Aに支持され、かつ、アウターチューブ2Bに支持されていない。そのため、インナーチューブ2Aがアウターチューブ2Bに対して摺動したときに、それによって上カバー4および下カバー3に外力が加わることはない。
【0070】
図2に示すように、上カバー4は導風部7Aから下方に延びている。左右の上カバー4および導風部7Aにより、門形の導風路17が区画されている。
【0071】
図1に示すように、カウリング8の少なくとも一部は、上カバー4よりも車幅方向の外方に配置されている。カウリング8の左部は、上カバー4よりも左方に配置されている。車両側面視において、上カバー4の一部とカウリング8の一部とは重なっている。
図8は、上カバー4およびカウリング8等に関する
図1のVIII-VIII線断面図である。
図8は、上カバー4の上下の中間位置を通る水平断面を表している。当該水平断面において、上カバー4の前端4fは、カウリング8の前端8fよりも前方に位置している。当該水平断面において、上カバー4の後端4rは、カウリング8の前端8fよりも後方に位置している。
【0072】
図1に示すように、ラジエタ15は、フロントフェンダ5、上カバー4、および下カバー3の後方に配置されている。オイルクーラ16は、フロントフェンダ5、上カバー4、および下カバー3の後方に配置されている。
【0073】
自動二輪車10の走行に伴って、自動二輪車10に対して前方から風が流れる。ラジエタ15およびオイルクーラ16は、前方からの風により冷却される。ラジエタ15およびオイルクーラ16を良好に冷却するためには、ラジエタ15およびオイルクーラ16に対して、できるだけ整流された風を供給することが好ましい。ところが、
図1に示すように、ラジエタ15およびオイルクーラ16は、フロントフォーク12の後方に配置されている。風がフロントフォーク12の周囲を流れるときに乱れると、ラジエタ15およびオイルクーラ16の冷却性能が低下してしまう。
【0074】
ところで、フロントフォーク12のアウターチューブ2Bおよびインナーチューブ2Aの横断面の輪郭は円形である。例えば
図9(a)に示すように、上カバー4が無い場合、アウターチューブ2Bの後方には多くの渦が形成される。そのため、ラジエタ15には乱れた気流が供給され、ラジエタ15の冷却性能は低下する。
【0075】
一方、本実施形態では、
図9(b)に示すように、流線形の後部が切断されたような形状の上カバー4が設けられている。そのため、気流の乱れは抑制される。ラジエタ15には、比較的整流された気流が供給される。したがって、ラジエタ15の冷却性能の低下は抑制される。
【0076】
なお、
図9(c)に示すように、上カバー4の全体が流線形状を有している場合、気流の乱れはほとんど生じない。この場合、ラジエタ15には、非常に整流された気流が供給される。ラジエタ15の冷却性能を高める観点からは、上カバー4の全体が流線形状を有していることが好ましい。しかし、上カバー4の全体が流線形状を有している場合、上カバー4の前後方向の寸法は大きくなる。そのため、上カバー4は斜めからの風圧を受けやすくなる。ライダーがハンドル13(
図1参照)を操舵する際、フロントフォーク12および上カバー4は左方または右方に回転する。
図10(a)に示すように、自動二輪車10が直進しているときには、上カバー4が受ける風圧は小さい。しかし、上カバー4の前後方向の寸法が大きい場合、例えば
図10(b)に示すように、上カバー4が右方に回転したときに、上カバー4が受ける風圧は一時的に大きくなる。そのため、ライダーがハンドル13を回転させる前と後とでは、上カバー4が受ける風圧は比較的大きく変化する。これにより、ハンドリングの快適性が低下してしまう。
【0077】
しかし、本実施形態では、上カバー4は、流線形の後部が切断されたような形状に形成されている。そのため、上カバー4の前後方向の寸法は、上カバー4の全体が流線形に形成されている場合に比べて小さい。本実施形態では、上カバー4は斜め方向からの風圧を比較的受けにくい。よって、
図11(a)および
図11(b)に示すように、自動二輪車10が直進している場合と、上カバー4が右方に回転した場合とにおいて、上カバー4が受ける風圧の差は比較的小さい。ライダーがハンドル13を回転させるときに、上カバー4が受ける風圧の変化は抑えられる。したがって、本実施形態に係る上カバー4により、ラジエタ15の冷却性能の低下が抑制されると共に、ハンドリングの快適性が確保される。
【0078】
説明は省略するが、下カバー3についても同様である。
【0079】
以上、一実施形態に係る自動二輪車10について説明した。次に、本実施形態に係る自動二輪車10が奏する様々な効果について説明する。
【0080】
本実施形態に係る自動二輪車10によれば、フロントフォーク12のサスペンション2を覆う上カバー4および下カバー3を備えている。上カバー4は下カバー3とは別体であり、下カバー3から分離されている。本実施形態によれば、上下に分離された2つのカバー(すなわち、上カバー4および下カバー3)を備えているので、サスペンション2の多くの部分を覆うことができる。よって、サスペンション2に泥や小石等が当たることを、従来以上に防止することができる。
【0081】
上カバー4および下カバー3の断面は、円形ではなく、サスペンション2の軸線2cよりも後方において流線形の一部を切断したような形状に形成されている。上カバー4および下カバー3は、流線形に準じた形状を有しており、また、サスペンション2の軸線2cよりも後方まで延びているので、前方からの気流を十分に整えることができる。ラジエタ15およびオイルクーラ16には、十分に整流された空気が供給される。よって、ラジエタ15およびオイルクーラ16の冷却性能の低下を抑制することができる。
【0082】
上カバー4および下カバー3の断面は、流線形の後部が切断されたような形状に形成されているので、全体が流線形に形成されている場合に比べて、上カバー4および下カバー3の前後方向の寸法は小さい。そのため、上カバー4および下カバー3が斜め方向から受ける風圧は、上カバー4および下カバー3の断面の全体が流線形に形成されている場合に比べて、小さい。ライダーがハンドル13を回転させるときに、上カバー4および下カバー3が受ける風圧の変化は抑えられる。よって、ハンドリングの快適性が確保される。
【0083】
したがって、本実施形態に係る自動二輪車10によれば、フロントフォーク12に泥や小石等が当たることを従来以上に防止することができ、フロントフォーク12の後方に配置されたラジエタ15およびオイルクーラ16に良好に空気を供給することができ、ハンドリングの快適性を維持することができる。
【0084】
なお、下カバー後部32は、左縁32Lおよび右縁32Rのいずれか一方のみを有していてもよく(
図6参照)、両方を有していてもよい(
図5参照)。下カバー後部32が左縁32Lおよび右縁32Rの両方を有している場合、下カバー3の導風性能を更に向上させることができる。
【0085】
自動二輪車10はフロントフェンダ5を備え、フロントフェンダ5におけるサスペンション2の軸線2cに垂直な断面は、流線形に準じた形状を有している。すなわち、
図5および
図6に示すように、フロントフェンダ5の上記断面は、第4前縁52Fから後方かつ左方に延びる第4左縁52Lと、第4前縁52Fから後方かつ右方に延びる第4右縁52Rとを有し、前後方向の寸法L52が左右方向の寸法W52の半分よりも大きく形成されている。フロントフェンダ5により、前輪1から泥が巻き上げられることを防止することができると共に、ラジエタ15およびオイルクーラ16に対する導風性能を向上させることができる。
【0086】
図7(a)および
図7(b)に示すように、下カバー3の上端3tはインナーチューブ2Aの上端2Atよりも上方に位置し、下端3bはインナーチューブ2Aの上下の中間位置2Amよりも下方に位置している。下カバー3は、インナーチューブ2Aの半分以上を覆っている。よって、インナーチューブ2Aの多くの部分において、泥や小石等が当たることを防止することができる。
【0087】
図1に示すように、車両側面視において、下カバー3の上端3tは前輪1のリム1Aよりも上方に位置している。下カバー3は、比較的高い位置まで延びている。よって、サスペンション2に泥や小石等が当たることを効果的に抑制することができる。
【0088】
図1に示すように、車両側面視において、上カバー4の一部と下カバー3の一部とタイヤ1Bの一部とは重なっている。本実施形態によれば、自動二輪車10の走行中にサスペンション2が伸縮しても、ラジエタ15に対して良好に空気を供給することができる。
【0089】
本実施形態では、上カバー4の下端部は、下カバー3の上端部の内側に配置されている(
図7(b)参照)。泥水が路面から巻き上げられて下カバー3に付着した場合、泥水は下カバー3の表面を伝って下カバー3の上端部に至った後、風によって後方に飛散しやすい。そのため、泥水が下カバー3および上カバー4の内側に入り込むことが抑制される。よって、サスペンション2に泥水が付着することが抑制される。
【0090】
本実施形態によれば、
図2に示すように、上カバー4はインナーフェンダ7に支持され、下カバー3はインナーチューブ2Aに支持されている。そのため、上カバー4および下カバー3を良好に支持することができる。
【0091】
インナーフェンダ7は水平板状の導風部7Aを有し、上カバー4は導風部7Aから下方に延びている。導風部7Aと左右の上カバー4とにより、後方に向けて気流を導く門形の導風路17が形成されている。これにより、ラジエタ15に対して更に良好に空気を供給することができる。
【0092】
図1に示すように、車両側面視において、上カバー4の一部とカウリング8の一部とは重なっている。上カバー4およびカウリング8により、前方からの気流を良好に整えることができる(
図9(b)の符号A1参照)。よって、ラジエタ15に対して更に良好に空気を供給することができる。
【0093】
図8に示すように、上カバー4の上下の中間位置を通る水平断面において、上カバー4の前端4fはカウリング8の前端8fよりも前方に位置している。上カバー4およびカウリング8により、前方からの気流を良好に整えることができる。ラジエタ15に対し、更に良好に空気を供給することができる。
【0094】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、前記実施形態は一例に過ぎない。他にも様々な実施形態が可能である。次に、他の実施形態の例について簡単に説明する。
【0095】
前記実施形態では、フロントフェンダ5は、前輪1の左方に配置された左の縦部52と、前輪1の右方に配置された右の縦部52と、前輪1の上方に配置された横部51とを備えている。フロントフェンダ5の縦部52と下カバー3とは別体に形成されている。ただし、下カバー3は、必ずしもフロントフェンダ5と別体でなくてもよい。フロントフェンダ5は、左の下カバー3および右の下カバー3と一体化されていてもよい。下カバー3は、フロントフェンダ5の一部を兼ねていてもよい。例えば
図12に示すように、下カバー3がフロントフェンダ5の縦部を構成してもよい。フロントフェンダ5は、前輪1の左方に配置された左の下カバー3と、前輪1の右方に配置された右の下カバー3と、前輪1の上方に配置された横部51とを備えていてもよい。下カバー3は横部51と一体物であってもよい。フロントフェンダ5を下カバー3と一体化することにより、部品点数を削減することができる。
【0096】
前記実施形態では、
図4に示すように、上カバー後部42の第2左縁42Lは、上カバー前部41の第1左縁41Lの後端から後方かつ右方に延びている。上カバー後部42の第2右縁42Rは、上カバー前部41の第1右縁41Rの後端から後方かつ左方に延びている。ただし、限定されない。例えば
図13に示すように、上カバー後部42は、上カバー前部41の第1左縁41Lの後端から後方かつ左方に延びる他の左縁42Laを有し、第2左縁42Lは、この他の左縁42Laの後端から後方かつ右方に延びていてもよい。上カバー後部42は、上カバー前部41の第1右縁41Rの後端から後方かつ右方に延びる他の右縁42Raを有し、第2右縁42Rは、この他の右縁42Raの後端から後方かつ左方に延びていてもよい。
【0097】
下カバー3についても同様である。前記実施形態では、
図5に示すように、下カバー後部32の左縁32Lは、下カバー前部31の第3左縁31Lの後端から後方かつ右方に延びている。下カバー後部32の第3右縁32Rは、下カバー前部31の第3右縁31Rの後端から後方かつ左方に延びている。ただし、限定されない。例えば、下カバー後部32は、下カバー前部31の第3左縁31Lの後端から後方かつ左方に延びる他の左縁を有し、左縁32Lは、この他の左縁の後端から後方かつ右方に延びていてもよい。下カバー後部32は、下カバー前部31の第3右縁31Rの後端から後方かつ右方に延びる他の右縁を有し、右縁32Rは、この他の右縁の後端から後方かつ左方に延びていてもよい。
【0098】
前記実施形態では、フロントフォーク12は倒立式のフロントフォークであり、インナーチューブ2Aはアウターチューブ2Bの下方に配置されている。しかし、フロントフォーク12は正立式のフロントフォークであってもよい。すなわち、インナーチューブ2Aはアウターチューブ2Bの上方に配置されていてもよい。この場合、インナーチューブ2Aが「上チューブ」となり、アウターチューブ2Bが「下チューブ」となる。
【0099】
前記実施形態では、フロントフェンダ5の縦部52は左縁52Lおよび右縁52Rを有しているが、前輪1の左方に配置された縦部52は、右縁52Rを有していなくてもよい。すなわち、縦部52は、車幅方向の外方に位置する縁だけを有していてもよい。また、フロントフェンダ5は、横部51のみを有し、縦部52を有していなくてもよい。
【0100】
下カバー3の上端3tは、下チューブの上端(前記実施形態ではインナーチューブ2A)の上端2At)よりも下方に位置していてもよい。下カバー3の下端3bは、下チューブの上下の中間位置(前記実施形態では、インナーチューブ2Aの上下の中間位置2Am)よりも上方に位置していてもよい。
【0101】
車両側面視において、下カバー3の上端3tは前輪1のリム1Aの上端よりも下方に位置していてもよい。車両側面視において、上カバー4の一部と下カバー3の一部とタイヤ1Bの一部とは重なっていなくてもよい。
【0102】
下カバー3の上端部は、上カバー4の下端部の内側に配置されていてもよい。
【0103】
上カバー4を支持する部材および下カバー3を支持する部材は特に限定されない。上カバー4は、インナーフェンダ7以外の部品に支持されていてもよい。下カバー3は、インナーチューブ2A以外の部品に支持されていてもよい。
【0104】
インナーフェンダ7は必ずしも必要ではない。インナーフェンダ7は無くてもよい。
【0105】
車両側面視において、上カバー4とカウリング8とは重なっていなくてもよい。
【0106】
前記実施形態では、上カバー4の上下の中間位置を通る水平断面において、上カバー4の前端4fがカウリング8の前端8fよりも前方に位置しているが、他の水平断面において、上カバー4の前端4fがカウリング8の前端8fよりも前方に位置していてもよい。また、上カバー4の上下の中間位置を通る水平断面において、上カバー4の前端4fがカウリング8の前端8fよりも前方に位置していなくてもよい。上記水平断面において、上カバー4の前端4fはカウリング8の前端8fよりも後方に位置していてもよい。上記水平断面において、上カバー4の後端4rはカウリング8の前端8fよりも前方に位置していてもよい。また、自動二輪車10において、カウリング8は必ずしも必要ではない。
【0107】
ラジエタ15およびオイルクーラ16のいずれか一方または両方はなくてもよい。ラジエタ15およびオイルクーラ16の代わりに、または、ラジエタ15およびオイルクーラ16と共に、気流によって冷却される他の部品を配置してもよい。
【0108】
鞍乗型車両は自動二輪車10に限定されない。鞍乗型車両は、例えば、自動三輪車、ATV(All Terrain vehicle)、スノーモービルであってもよい。
【0109】
ここに用いられた用語及び表現は、説明のために用いられたものであって限定的に解釈するために用いられたものではない。ここに示されかつ述べられた特徴事項の如何なる均等物をも排除するものではなく、本発明のクレームされた範囲内における各種変形をも許容するものであると認識されなければならない。本発明は、多くの異なった形態で具現化され得るものである。この開示は本発明の原理の実施形態を提供するものと見なされるべきである。それらの実施形態は、本発明をここに記載しかつ/又は図示した好ましい実施形態に限定することを意図するものではないという了解のもとで、実施形態がここに記載されている。ここに記載した実施形態に限定されるものではない。本発明は、この開示に基づいて当業者によって認識され得る、均等な要素、修正、削除、組み合わせ、改良及び/又は変更を含むあらゆる実施形態をも包含する。クレームの限定事項はそのクレームで用いられた用語に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書あるいは本願のプロセキューション中に記載された実施形態に限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0110】
1…前輪、1A…リム、1B…タイヤ、2…サスペンション、2A…インナーチューブ(下チューブ)、2B…アウターチューブ(上チューブ)、3…下カバー、4…上カバー、5…フロントフェンダ、6…アンダーブラケット、7…インナーフェンダ、7A…導風部、8…カウリング、10…自動二輪車(鞍乗型車両)、12…フロントフォーク、15…ラジエタ(車両部品)、16…オイルクーラ(車両部品)、31…下カバー前部、31F…第3前縁、31L…第3左縁、31R…第3右縁、32…下カバー後部、32L…側縁(左縁)、32R…他の側縁(右縁)、41…上カバー前部、41F…第1前縁、41L…第1左縁、41R…第1右縁、42…上カバー後部、42L…第2左縁、42R…第2右縁、51…横部、52…縦部、52F…第4前縁、52L…第4左縁、52R…第4右縁