(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042676
(43)【公開日】2022-03-15
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/543 20210101AFI20220308BHJP
H01M 50/50 20210101ALI20220308BHJP
H01M 50/531 20210101ALI20220308BHJP
【FI】
H01M2/30 D
H01M2/20 A
H01M2/26 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020148175
(22)【出願日】2020-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107249
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 恭久
(72)【発明者】
【氏名】松本 繁
【テーマコード(参考)】
5H043
【Fターム(参考)】
5H043AA02
5H043CA13
5H043FA04
5H043HA08D
5H043HA13D
5H043HA13F
5H043HA16D
5H043HA16F
5H043HA17D
5H043HA17F
5H043JA01D
5H043JA13F
5H043KA09D
5H043KA09F
(57)【要約】
【課題】集電端子の接合部にかかる荷重を低減することによって、集電端子と外部端子との接合状態を良好に維持する。
【解決手段】二次電池は、座ぐり部331を有する外部端子33と、軸方向の一方の端部が電極体に電気的に接続され、軸方向の他方の端部が外部端子33に対してかしめられるとともに外部端子33に溶接又はろう接され、座ぐり部331内に収容されたかしめ部301を有する集電端子30と、を備え、かしめ部301及び外部端子33は、互いに嵌合する凹凸構造である突部303と切り欠き部321とを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部端子と、
軸方向の一方の端部が電極体に電気的に接続され、軸方向の他方の端部が前記外部端子に対してかしめられるとともに前記外部端子に溶接又はろう接されたかしめ部を有する集電端子と、を備え、
前記かしめ部及び前記外部端子は、互いに嵌合する切り欠き部及び突部からなる凹凸構造を備える
二次電池。
【請求項2】
前記集電端子は、前記かしめ部の周方向の側面に突部を備え、
前記外部端子は、前記突部に嵌合する切り欠き部を備える
請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記外部端子は、バスバーに溶接又はろう接され、
前記バスバー及び前記外部端子が溶接又はろう接された接合部と、前記かしめ部及び前記外部端子が溶接又はろう接された接合部は、前記かしめ部の中心を通り複数の前記二次電池の積層方向と平行な第1の中心線又は前記第1の中心線に対して直交する第2の中心線に対して互いに反対側の領域に設けられる
請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項4】
複数の二次電池を電気的に接合するバスバーに溶接又はろう接された外部端子と、
軸方向の一方の端部が電極体に電気的に接続され、軸方向の他方の端部が前記外部端子に対してかしめられるとともに前記外部端子に溶接又はろう接されたかしめ部を有する集電端子と、を備え、
前記バスバー及び前記外部端子が溶接又はろう接された接合部と、前記かしめ部及び前記外部端子が溶接又はろう接された接合部とは、前記かしめ部の中心を通り複数の前記二次電池の積層方向と平行な第1の中心線又は前記第1の中心線に対して直交する第2の中心線に対して互いに反対側の領域に設けられる
二次電池。
【請求項5】
前記かしめ部及び前記外部端子が溶接又はろう接された接合部は、前記第1の中心線又は前記第2の中心線上に設けられる
請求項4に記載の二次電池。
【請求項6】
複数の二次電池を電気的に接合するバスバーに接合される外部端子と、
軸方向の一方の端部が電極体に電気的に接続され、軸方向の他方の端部が前記外部端子に対してかしめられるとともに前記外部端子に溶接又はろう接されたかしめ部を有する集電端子と、を備え、
前記かしめ部及び前記バスバーは、互いに嵌合する切り欠き部及び突部からなる凹凸構造を前記かしめ部の中心から離れた位置に備える
二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集電構造を備える二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池や、アルカリ二次電池等の二次電池は、電極体からの電流を外部に取り出すとともに、外部からの電流を電極体に供給するための集電構造を備えている(例えば、特許文献1参照)。集電構造は、電極体に電気的に接続される金属材からなる集電端子と、二次電池のケースの外側に設けられた外部端子とを備えている。集電端子の一方の端部は、二次電池の電極体に接続されている。集電端子の他方の端部は、外部端子に対してかしめられる。また、集電端子のかしめ部は、外部端子に溶接される。これにより、電極体、集電端子及び外部端子からなる電流経路が形成される。
【0003】
また、所望の電力を得るために複数の二次電池が組み合わされた組電池が用いられている。二次電池は、その集電構造が、隣接する二次電池の集電構造と金属材からなるバスバーで接続されている。組電池は、例えば電気自動車又はハイブリッド自動車等の車両の電源として用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば車両に加わった衝撃等、バスバーに何らかの外部から荷重が加わると、バスバー及びバスバーに接合された外部端子は僅かにずれることがある。一方、外部端子に接合された集電端子は他方の端部が電極体に接続されているため、外部端子のずれに抗して所定位置に留まろうとする。このように外部端子と集電端子との相対位置が変化すると、かしめ部の接合部に荷重がかかる。意図しない過酷な使用環境においては、外部端子と集電端子との相対位置の変化量が大きくなる。集電端子と外部端子とが異なる材料からなる場合、かしめ部の溶接部が脆いため、集電端子及び外部端子が同じ材料からなる場合に比べ、割れや剥離等が発生しやすい傾向がある。このため、かしめ部の接合部にかかる荷重を低減することが求められている。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、集電端子の接合部にかかる荷重を低減することによって、集電端子と外部端子との接合状態を良好に維持することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する二次電池は、外部端子と、軸方向の一方の端部が電極体に電気的に接続され、軸方向の他方の端部が前記外部端子に対してかしめられるとともに前記外部端子に溶接又はろう接されたかしめ部を有する集電端子と、を備え、前記かしめ部及び前記外部端子は、互いに嵌合する切り欠き部及び突部からなる凹凸構造を備える。
【0008】
上記構成によれば、外部端子に外部から荷重が加わった場合でも、凹凸構造により、集電端子及び外部端子の相対位置の変化である位置ずれが抑制される。よって、集電端子の溶接又はろう接された接合部にかかるせん断荷重を小さくすることができるため、かしめ部の接合部の接合状態を良好に維持することができる。
【0009】
上記二次電池について、前記集電端子は、前記かしめ部の周方向の側面に突部を備え、前記外部端子は、前記突部に嵌合する切り欠き部を備えることが好ましい。
上記構成によれば、集電端子の周方向における外部端子に対するずれを抑制することができる。
【0010】
上記二次電池について、前記外部端子は、バスバーに溶接又はろう接され、前記バスバー及び前記外部端子が溶接又はろう接された接合部と、前記かしめ部及び前記外部端子が溶接又はろう接された接合部は、前記かしめ部の中心を通り複数の前記二次電池の積層方向と平行な第1の中心線又は前記第1の中心線に対して直交する第2の中心線に対して互いに反対側の領域に設けられることが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、外部端子と集電端子との接合部及び外部端子とバスバーとの接合部は第1の中心線又は第2の中心線に対して反対側に設けられるため、接合部に加わる荷重を小さくすることができる。このため、接合部の接合状態を良好に維持することができる。
【0012】
上記課題を解決する二次電池は、複数の二次電池を電気的に接合するバスバーに溶接又はろう接された外部端子と、軸方向の一方の端部が電極体に電気的に接続され、軸方向の他方の端部が前記外部端子に対してかしめられるとともに前記外部端子に溶接又はろう接されたかしめ部を有する集電端子とを備え、前記バスバー及び前記外部端子が溶接又はろう接された接合部と、前記かしめ部及び前記外部端子が溶接又はろう接された接合部とは、前記かしめ部の中心を通り複数の前記二次電池の積層方向と平行な第1の中心線又は前記第1の中心線に対して直交する第2の中心線に対して互いに反対側の領域に設けられる。
【0013】
上記構成によれば、外部端子と集電端子との接合部及び外部端子とバスバーとの接合部は第1の中心線又は第2の中心線に対して反対側に設けられるため、接合部に加わる荷重を小さくすることができる。このため接合部の接合状態を良好に維持することができる。
【0014】
上記二次電池について、前記かしめ部及び前記外部端子が溶接又はろう接された接合部は、前記第1の中心線又は前記第2の中心線上に設けられる。
上記構成によれば、外部端子と集電端子との接合部は、第1の中心線又は第2の中心線上に設けられる。つまり、外部端子と集電端子との接合部及び外部端子とバスバーとの接合部が第1の中心線に対して反対側に設けられる場合には、接合部は第2の中心線上に設けられる。また、外部端子と集電端子との接合部及び外部端子とバスバーとの接合部が第2の中心線に対して反対側に設けられる場合には、接合部は第1の中心線上に設けられる。このため、バスバーに、中心線を挟んだ両側の領域の一方に偏って外部から荷重が加わったとしても、安定してかしめ部を支持することができる。
【0015】
上記課題を解決する二次電池は、複数の二次電池を電気的に接合するバスバーに接合される外部端子と、軸方向の一方の端部が電極体に電気的に接続され、軸方向の他方の端部が前記外部端子に対してかしめられるとともに前記外部端子に溶接又はろう接されたかしめ部を有する集電端子と、を備え、前記かしめ部及び前記バスバーは、互いに嵌合する切り欠き部及び突部からなる凹凸構造を前記かしめ部の中心から離れた位置に備える。
【0016】
上記構成によれば、外部端子に外部から荷重が加わった場合でも、凹凸構造により、外部端子及び集電端子の相対位置の変化であるずれを抑制することができる。また、凹凸構造を、かしめ部の回転の中心となる位置から離れた位置に設けることで、かしめ部の回転を抑制することができる。このため、集電端子の溶接又はろう接された接合部にかかるせん断荷重を小さくすることができる。このため、集電端子のかしめ部の接合部の接合状態を良好に維持することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、集電端子の接合部にかかる荷重を低減することによって、集電端子と外部端子との接合状態を良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】二次電池を具体化した一実施形態についてその斜視構造の概略を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1~
図5に従って、二次電池の一実施形態を説明する。本実施形態では、二次電池を、電気自動車又はハイブリッド自動車等の車両に搭載されるリチウムイオン二次電池に具体化した例について説明する。
【0020】
図1に示すように、二次電池としての電池モジュール11は、ケース12と、蓋部13と、電極体14とを備える。ケース12及び蓋部13は、金属材から形成されている。ケース12は開口部を有し、蓋部13は開口部を封止する。ケース12及び蓋部13によって形成される内部空間15には、電極体14及び電解液が収容されている。
【0021】
蓋部13には、集電構造である正極集電部21と負極集電部20とが設けられている。また、蓋部13には、内部空間15の圧力に応じて、内部空間15の気体を放出するガス排出弁24と、電解液を注入する注液口25とが設けられている。
【0022】
電極体14は、複数の負極板18と複数の正極板19とがセパレータ(図示略)を介して交互に積層された積層体である。正極板19は、アルミニウムやアルミニウム合金等の金属材からなる基材と、基材に設けられた正極合剤とを備える。正極合剤は、正極活物質であるリチウム含有複合酸化物、結着剤、及び導電剤等を含む。正極板19の基材には、端部から延出された正極タブ19A(集電タブ)が設けられている。
【0023】
負極板18は、銅(Cu)からなる基材と、基材に設けられた負極合剤とを備える。負極合剤は、例えば、炭素材料等の負極活物質、結着剤、導電剤等を含む。負極板18の基材には、端部から延出された負極タブ18A(集電タブ)が設けられている。
【0024】
負極板18及び正極板19は、負極タブ18Aの位置及び正極タブ19Aの位置をそれぞれ揃えた状態で積層される。複数の正極タブ19Aは、束状に集められて、正極タブ群23を構成する。また、複数の負極板18の負極タブ18Aは、束状に集められて、負極タブ群22を構成する。正極タブ群23は、正極集電部21に電気的に接続され、負極タブ群22は、負極集電部20に電気的に接続されている。
【0025】
図2に示すように、複数の電池モジュール11は、組電池10を構成する。電池モジュール11の正極集電部21は、隣り合う電池モジュール11の負極集電部20にバスバー26を介して接続されている。また、電池モジュール11の負極集電部20は、隣り合う電池モジュール11の正極集電部21にバスバー26を介して接続されている。本実施形態では、バスバー26は全体として略長方形の形状を有する金属板であって、その長手方向が、複数の電池モジュール11の積層方向(
図2中Z方向)と平行に設けられている。
【0026】
図3を参照して、負極集電部20の構成について説明する。負極集電部20は、集電端子30、第1絶縁部31、第2絶縁部32、及び外部端子33を備えている。本実施形態では、集電端子30は、負極板18の基材と同様に、銅又は銅系の材料からなる。また、外部端子33及びバスバー26は、アルミニウム又はアルミニウム系の材料からなる。
【0027】
第1絶縁部31は、樹脂などの絶縁材料からなり、筒状の形状を有し、内側に貫通孔310を有する。第1絶縁部31は、蓋部13に設けられた貫通孔131の内側に設けられている。また、第2絶縁部32及び外部端子33は、蓋部13の表面130側に設けられている。
【0028】
第2絶縁部32は、樹脂などの絶縁材料からなり、外部端子33と蓋部13との間に介在し、外部端子33と蓋部13とを絶縁する。また、第2絶縁部32には、貫通孔320が設けられている。
【0029】
外部端子33は、集電端子30をバスバー26側に突出させないための座ぐり部331を備える。座ぐり部331は、表面330で開口し、表面330側から見て円形状の形状を有している。座ぐり部331の底面には、貫通孔332が設けられている。外部端子33は、貫通孔332が、第2絶縁部32の貫通孔320、第1絶縁部31の貫通孔310、及び蓋部13の貫通孔131と位置が一致するように配置されている。
【0030】
外部端子33の貫通孔332、第2絶縁部32の貫通孔320、第1絶縁部31の貫通孔310には、集電端子30が設けられる。集電端子30は、その一端が、ケース12及び蓋部13によって形成される内部空間15に突出している。集電端子30の一端は、接続部材34を介して電極体14に接続されている。集電端子30は、他端にかしめ部301を備えている。かしめ部301は、貫通孔332の内径よりも大きい外径を有する略円盤状の部分である。かしめ部301は、集電端子30が外部端子33にかしめられることにより形成され、外部端子33の座ぐり部331に配置されている。
【0031】
また、かしめ部301は、その一部に、外部端子33に接合された接合部302を備える。接合部302は、FSW(Friction Stir Welding、摩擦攪拌接合)、レーザー溶接、アーク溶接、超音波溶接等の溶接又はろう接により形成されている。集電端子30の表面300と、外部端子33の表面330とは、FSWが適用される場合は略同一面となっている。このため、集電端子30のかしめ部301と外部端子33とを接合しやすい。また、レーザー溶接、アーク溶接、超音波溶接等の溶接又はろう接の場合にも略同一面であることが好ましい。こうして第2絶縁部32及び外部端子33は、かしめ部301と蓋部13との間に保持される。なお、第2絶縁部32及び蓋部13の間と、第2絶縁部32及び外部端子33の間とには接着層は設けられていないが、各部材のずれを抑制するために接着層を設けてもよい。
【0032】
外部端子33の表面330の一部には、バスバー26が、レーザー溶接、アーク溶接、超音波溶接等の溶接又はろう接により接合される。バスバー26は、外部端子33との接合部261を備える。接続部材34、集電端子30及び外部端子33は、電極体14及びバスバー26間の電流経路を形成する。
【0033】
正極集電部21は、負極集電部20とほぼ同じ構成である。但し、集電端子(図示略)は、正極板19の基材と同様に、アルミニウム又はアルミニウム系の材料からなる点で負極集電部20と相違する。つまり、正極集電部21の外部端子(図示略)、集電端子(図示略)及びバスバー26は、同一又は同一成分系の材料からなる。
【0034】
本実施形態の負極集電部20の集電端子30及び外部端子33の接合構造について、その作用とともに詳述する。なお、正極集電部21の集電端子及び外部端子の接合構造は、負極集電部20の接合構造と同様であるため、その説明を省略する。
【0035】
先ず
図12及び
図13を参照して、従来の負極集電部20の接合構造について説明する。
図12に示すように、従来の集電端子30のかしめ部301は、溶接又はろう接等により、その複数箇所を接合されている。具体的には、
図13に示すように、かしめ部301の円周において所定間隔(例えばおよそ90°)毎に4つの接合部311が設けられている。換言すると、かしめ部301の円周においてバスバー26側の2箇所、その反対側に2箇所に接合部311が設けられている。このような接合構造において、集電端子30と外部端子33とが異なる材料からなると、かしめ部301の接合部311が脆いため、意図しない過酷な使用環境下では、接合部311の一部が割れたり、外部端子33等から剥離したりすることがある。本発明者はその理由について検討し、接合部311の割れ等は、負極集電部20や正極集電部21に外部から荷重が加わることによる集電端子30及び外部端子33の相対位置の変化が主な原因であることを見出した。つまり、バスバー26に、
図12中矢印方向101に例示するような接合部261を中心とする回転荷重が加わると、バスバー26が僅かに回転する。また、バスバー26に接合された外部端子33も、バスバー26の回転に従って
図12中Y軸を中心する回転方向に僅かに回転する。一方、外部端子33に接合部311を介して接合された集電端子30は、他方の端部が電極体14に接合されているため、外部端子33の回転に抗して留まろうとする。これにより、外部端子33と集電端子30とは、かしめ部301の周方向において相対位置が変化するため、接合部311にせん断荷重が加わる。車両に大きな衝撃が加わったり、衝撃が加わる頻度が多い場合等、過酷な使用環境下で電池モジュール11が使用された場合には、集電端子30及び外部端子33の相対位置の変化の頻度が高くなるか、相対位置の変化量が大きくなり、接合部311が割れたり、剥離を招来する可能性がある。なお、バスバー26の回転方向101は、
図12に例示された方向のみならず、
図12に例示された回転方向の反対方向等も含む。
【0036】
また、
図13に示すように、車両に衝撃が加わった場合等、バスバー26に
図13中矢印方向103に例示するような方向に回転荷重が加わったとき、
図13中Z軸を中心にバスバー26が僅かに回転する。具体的には、外部端子33のうち、バスバー26との接合部261が設けられていない領域が蓋部13から離れる方向に若干上がるか、又は蓋部13に近づく方向に押し下げられる。これにより、接合部302のうち、バスバー26側に配置された接合部302Aに、
図13中上方向又は下方向に荷重がかかる。このため、集電端子30及び外部端子33が異なる材料からなる場合であって、過酷な使用環境下で電池モジュール11が使用された状況下では、接合部311が割れたり、剥離したりすることが想定される。
【0037】
次に
図4を参照して、本実施形態の負極集電部20について詳述する。集電端子30及び外部端子33は、互いに嵌合する凹凸構造を備える。具体的には、外部端子33の座ぐり部331には、切り欠き部321が設けられている。また、集電端子30には、切り欠き部321の内側に嵌合する突部303が設けられている。集電端子30の一方の端部が外部端子33の座ぐり部331内においてかしめられるとき、荷重が加わった集電端子30の一部が切り欠き部321に圧入されて、突部303が形成される。突部303が切り欠き部321の内側に嵌合することにより、かしめ部301の中心点105を中心とする周方向の回転が抑制される。なお、周方向の回転とは、集電端子30の中心軸112(
図5参照)を中心とする回転方向であって、
図4ではY軸を中心とする回転方向100及びその反対の回転方向である。なお、回転方向100をヨー方向ともいう。このため、車両に加わった衝撃等により、バスバー26に
図4中矢印方向101に例示されるような方向に荷重が加わっても、集電端子30の周方向の回転が抑制される。なお、突部303は、かしめられる前の集電端子30に予め形成してあってもよい。そして、集電端子30がかしめられたときに、突部303が切り欠き部321に圧入されるようにしてもよい。
【0038】
バスバー26は、外部端子33に対してレーザー溶接、超音波溶接等により1箇所又は複数箇所が溶接される。バスバー26及び外部端子33が溶接された接合部302と、かしめ部301及び外部端子33が溶接された接合部261とは、かしめ部301の中心点105を通り電池モジュール11の積層方向(
図4中Z軸方向)と平行な第1の中心線102に対して互いに反対側の領域に設けられる。つまり、かしめ部301のうち第1の中心線102によって分割される2つの領域のうち、バスバー26側の領域には接合部302は設けられない。また、接合部302は、かしめ部301の中心点105を通り、電池モジュール11の積層方向(
図4中Z方向)と直交する
図4中Y方向と平行な第2の中心線110とかしめ部301の円周との交点111及びその近傍に設けられる。
【0039】
また、集電端子30と外部端子33との接合部302の面積は必要最小限に留めることが好ましい。その理由は、接合部302の面積が大きくなるほど、接合工程にかかる時間が長くなるとともに、各部材への熱によるダメージが大きくなるためである。また、例えば集電端子30の全周に亘り接合部を設けた場合等、接合部302の面積が大きくなると、接合部302のうち荷重が集中した箇所において割れが発生したとき、その割れが他の箇所にも波及してしまう。
【0040】
図5に示すように、集電端子30と外部端子33との接合部302が、バスバー26と外部端子33との接合部261の反対側の領域307のみに設けられることにより、接合部302に加わる荷重が小さくなるため、接合部302の割れ等を抑制することができる。なお、ここでいう接合部302に加わる荷重は、バスバー26の
図5中回転方向104で示すZ軸を中心とする回転及びその逆方向の回転によるものである。具体的には、この荷重は、バスバー26の接合部261を起点とする蓋部13と反対側への回転、又は接合部261を起点とする蓋部13側への回転により加わるものである。なお、回転方向104をロール方向ともいう。回転荷重が加わったとき、かしめ部301のバスバー26側の領域306が、その荷重を受ける。領域306の反対側の領域307には荷重がかからないか又は荷重がかかったとしてもその大きさが小さい。つまり、かしめ部301のうち大きな荷重がかかる領域306には接合部302が形成されないため、接合部302の割れや剥離を抑制して、電極体14とバスバー26との間の電流経路に変化が生じることを抑制することができる。
【0041】
また
図4に示すように、X軸方向を中心とする回転(ピッチ方向の回転)が加わった場合、かしめ部301には第2の中心線110を中心に回転しようとする荷重がかかる。このため、かしめ部301の円周上の各位置には、第2の中心線110とかしめ部301の円周との交点111から離れるに従い、大きな荷重が加わる。これに対し、接合部302は、第2の中心線110とかしめ部301の円周との交点111及びその近傍に設けられているため、交点111から離れた位置に設けられる場合に比べ、加わる荷重が小さく、割れや剥離が抑制される。また、集電端子30及び外部端子33が同一材料又は同一成分系である正極集電部21にも、凹凸構造や、かしめ部301の接合部302及びバスバー26の接合部261の構成を適用することによって、接合部302に荷重がかかる荷重が小さくなる。このため、集電端子30及び外部端子33が同一材料又は同一成分系であって接合部302が割れにくい場合であっても、接合状態を良好に維持することができるといった効果を奏することができる。
【0042】
上記実施形態の効果について説明する。
(1)集電端子30のかしめ部301及び外部端子33は、互いに嵌合する凹凸構造を備えるため、外部端子33に外部から荷重が加わった場合でも、集電端子30及び外部端子33の周方向の相対位置の変化である位置ずれが抑制される。このため、集電端子30の接合部302にかかるせん断荷重を小さくすることができる。よって、集電端子30と外部端子33とが同じ材料からなる場合はもとより、負極集電部20のように集電端子30と外部端子33とが異なる材料からなる場合にも、かしめ部301の接合部302の接合状態を良好に維持することができる。
【0043】
(2)集電端子30はかしめ部301の周方向の側面に突部303を備え、外部端子33は凹部としての切り欠き部321を備える。突部303は外部端子33の切り欠き部321の内側に嵌合するため、集電端子30の周方向における外部端子33に対するずれを抑制することができる。
【0044】
(3)外部端子33と集電端子30との接合部302及び外部端子33とバスバー26との接合部261は、第1の中心線102に対して反対側に設けられるため、接合部302に加わる荷重を小さくすることができる。このため、接合部302の接合状態を良好に維持することができる。
【0045】
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、切り欠き部321は蓋部13側からみて四角形状とした。これに代えて、切り欠き部321は、座ぐり部331側で開口した三角形の形状であってもよい。又は、切り欠き部321は、座ぐり部331側で開口した円形の形状を有していてもよい。要は、集電端子30の一方の端子がかしめられたときにかしめ部301の一部が圧入されて突部が形成されればよい。
【0046】
・上記実施形態では、かしめ部301の接合部302を、一方の第1の中心線102と直交する他方の第2の中心線110(
図4参照)とかしめ部301の円周との交点111(
図4参照)及びその近傍に設けた。これに代えて若しくは加えて、
図6に示すように、複数の接合部302を、かしめ部301の円周上に間隔を空けて設けるようにしてもよい。この構成でも、接合部302にかかる荷重を極力低減することができる。
【0047】
・上記実施形態では、外部端子33の切り欠き部321と、かしめ部301の周方向に形成された突部303とを嵌合させるようにした。これに代えて若しくは加えて、
図7に示すように、外部端子33に形成された突部340と、かしめ部301の周方向に形成された切り欠き部341とを嵌合させるようにしてもよい。この場合、突部340が形成された外部端子33の所定位置に集電端子30を設置し、集電端子30の一方の端部をかしめて変形させることで、突部340が集電端子30の切り欠き部341に食い込む。突部340及び切り欠き部341により、集電端子30と外部端子33とが嵌合する凹凸構造が形成される。このようにしても集電端子30の周方向の回転を抑制することができる。
【0048】
・上記実施形態では、外部端子33の切り欠き部321と、かしめ部301の周方向に形成された突部303とを嵌合させるようにした。これに代えて若しくは加えて、
図8に示すように、バスバー26Aを、外部端子33の座ぐり部331の開口部を覆う大きさとし、バスバー26Aに形成された切り欠き部262と、集電端子30に形成された突部305とを嵌合させるようにしてもよい。突部305は、集電端子30の中心軸112からかしめ部301の円周側へ偏った位置に設けられる。又は
図9に示すように、バスバー26に突部342を設け、集電端子30に切り欠き部343を設けるようにしてもよい。これらの態様によれば、集電端子30が中心軸112を中心に周方向に回転しようとするとき、切り欠き部262及び突部305、又は、切り欠き部343及び突部342が当接することにより、集電端子30の回転を抑制する。
【0049】
・上記実施形態では、バスバー26は、その長手方向が電池モジュール11の積層方向と平行となるように設けられるものとしたが、バスバー26はこれ以外の構成であってもよい。例えば
図11に示すように、電池モジュール11の長手方向と平行な部分と、電池モジュール11の短手方向(積層方向)と平行な部分とからなる屈曲した形状としてもよい。この場合であっても、集電端子30及び外部端子33の相対位置の変化を抑制することができる。
【0050】
・上記実施形態では、外部端子33に座ぐり部331を設けるようにした。これに代えて、バスバー26側に、かしめ部301を収容する凹部を設けるようにしてもよい。
・少なくとも集電端子30及び外部端子33に互いに嵌合する凹凸構造を備えていれば、接合部302をかしめ部301のいずれの位置に設けても良い。この態様によれば、かしめ部301及び外部端子33の周方向の相対位置の変化を抑制することができる。
【0051】
・上記実施形態では、かしめ部301と外部端子33との接合部302及びバスバー26と外部端子33の接合部261を、かしめ部301の中心を通り電池モジュール11の積層方向と平行な第1の中心線102に対して反対側になるように設けた。これに代えて、
図10に示すように、かしめ部301と外部端子33との接合部346及びバスバー344と外部端子33の接合部345を、第1の中心線102に直交する第2の中心線110に対して反対側になるように設けてもよい。この場合、例えばバスバー344は、一方の電池モジュール11の集電端子30と、他方の電池モジュール11の集電端子30との間に配置されて、各外部端子33と接合される。また、かしめ部301の接合部346は、バスバー26の接合部261に対して、第2の中心線110を挟んだ反対側に設けられる。例えば、接合部346は、第1の中心線102とかしめ部301との交点350を含む位置に設けられる。
【0052】
・かしめ部301の接合部302及びバスバー26の接合部261が、かしめ部301の中心を通り電池モジュール11の積層方向と平行な第1の中心線102又は第2の中心線110に対して互いに反対側の領域に形成されれば、集電端子30及び外部端子33が互いに嵌合する凹凸構造を省略しても良い。この態様においても、接合部302にかかる荷重を低減し、接合部302の接合状態を良好に維持することができる。
【0053】
・集電構造は、上記実施形態に記載した構成のものに限らない。例えば、バスバー26と集電構造とをボルトによって連結するものであってもよい。また、外部端子33及び第2絶縁部32は、
図1~5等に示す形状以外の形状であってもよい。
【0054】
・上記実施形態では、電池モジュール11を、リチウム含有複合酸化物を含む正極合剤と、炭素材料を含む負極合剤とを備えるリチウムイオン二次電池として説明したが、リチウムイオン二次電池に限定されない。
【0055】
・上記各実施形態では、電池モジュール11の電極体14を、複数の負極板18及び複数の正極板19を、セパレータを介して交互に積層した積層型の構造とした。これに代えて、電極体14を、長尺の正極板及び長尺の負極板を長尺のセパレータを介して扁平に捲回した捲回型の構造としてもよい。また、二次電池は、電池モジュール11以外であってもよく、例えば複数のセルを備えるモジュールであってもよい。要は、正極集電部及び負極集電部を備え、電極体に充放電できるものであればよい。
【0056】
・電池モジュール11は、電気自動車、ハイブリッド自動車、ガソリン自動車やディーゼル自動車等の車両やその他の移動体に用いられてもよい。又は、家庭定置用、産業定置用の二次電池であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
11…二次電池
12…ケース
13…蓋部
14…電極体
20…負極集電部
21…正極集電部
26,344…バスバー
30…集電端子
32…第2絶縁部
33…外部端子
261…接合部
262,341,343…切り欠き部
303,305,340,342…突部
301…かしめ部
302,302A,346…接合部