(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042677
(43)【公開日】2022-03-15
(54)【発明の名称】加熱装置及び冷却装置
(51)【国際特許分類】
H05B 3/20 20060101AFI20220308BHJP
【FI】
H05B3/20 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020148176
(22)【出願日】2020-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】000129529
【氏名又は名称】株式会社クラベ
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 雅嗣
【テーマコード(参考)】
3K034
【Fターム(参考)】
3K034AA01
3K034AA02
3K034AA11
3K034AA13
3K034BA08
3K034BA16
3K034BB01
3K034BB14
3K034BC02
3K034BC03
3K034BC14
3K034FA02
3K034FA05
3K034FA07
3K034FA09
3K034FA10
3K034HA09
3K034HA10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】安全であり、感覚的な温かさを効率よくもたらすことができる加熱装置等を提供すること。
【解決手段】加熱部10と、暖気貯留部材30からなり、上記暖気貯留部材30は、隔壁31a,bと、該隔壁31a,bによって区切られた暖気貯留区画33を有し、該暖気貯留区画33は、開口部35を有している加熱装置51。上記加熱部10が、略平面形状であり、上記暖気貯留部材33が上記加熱部10の一方の面を略覆っている加熱装置51。上記加熱部10における上記暖気貯留部材33に覆われていない側の面が、断熱材41,42によって略覆われている加熱装置51。冷却部と、冷気貯留部材からなり、上記冷気貯留部材は、隔壁と、該隔壁によって区切られた冷気貯留区画を有し、該冷気貯留区画は、開口部を有している冷却装置。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱部と、暖気貯留部材からなり、上記暖気貯留部材は、隔壁と、該隔壁によって区切られた暖気貯留区画を有し、該暖気貯留区画は、開口部を有している加熱装置。
【請求項2】
上記加熱部が、略平面形状であり、上記暖気貯留部材が上記加熱部の一方の面を略覆っている請求項1記載の加熱装置。
【請求項3】
上記隔壁を上記加熱部の平面に投影した場合に、上記加熱部の平面が上記隔壁の投影によって覆われることになる請求項2記載の加熱装置。
【請求項4】
上記加熱部における上記暖気貯留部材に覆われていない側の面が、断熱材によって略覆われている請求項2又は3記載の加熱装置。
【請求項5】
上記隔壁が黒色である請求項1~4何れか記載の加熱装置。
【請求項6】
冷却部と、冷気貯留部材からなり、上記冷気貯留部材は、隔壁と、該隔壁によって区切られた冷気貯留区画を有し、該冷気貯留区画は、開口部を有している冷却装置。
【請求項7】
上記冷却部が、略平面形状であり、上記冷気貯留部材が上記冷却部の一方の面を略覆っている請求項6記載の冷却装置。
【請求項8】
上記隔壁を上記冷却部の平面に投影した場合に、上記冷却部の平面が上記隔壁の投影によって略覆われることになる請求項7記載の冷却装置。
【請求項9】
上記冷却部における上記冷気貯留部材に覆われていない側の面が、断熱材によって略覆われている請求項7又は8記載の冷却装置。
【請求項10】
上記隔壁が黒色である請求項6~9何れか記載の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置及び冷却装置に係り、特に、安全であり、感覚的な温かさ又は冷たさを効率よくもたらすことができるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、直接接触による伝導伝熱で加熱する暖房装置でなく、離れた距離から非接触で暖める暖房装置として、空気循環式の暖房装置と輻射式の暖房装置が知られている。空気循環式の暖房装置としては、例えば、ファンヒータなどが知られている。また、輻射式の暖房装置としては種々のものが知られており、例えば、ハロゲンランプヒータ、セラミックヒータ、カーボンヒータ、温水配管などから放射される輻射熱によって、加熱対象が暖められている。輻射式の暖房装置、いわゆる輻射ヒータの関連する技術として、例えば、特許文献1等が挙げられる。また、参考技術として特許文献2が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-212556公報:デンソー
【特許文献2】特許第6320935号公報:クラベ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今では、この輻射ヒータを人体近くで使用することや、種々の機器に貼り付けて使用することも検討されている。ファンヒータなどの空気循環式の暖房装置の場合、送風機と組合せる必要があるなど、形状に制限が出るとともに大型化することになり、簡易的なものとすることができない。また、輻射ヒータの場合、感電を防止することは勿論であるが、使用者が触れることによる火傷を防止することや、他の機器への熱影響を最小限とすることも課題となってくる。そのため、このような輻射ヒータの内部温度及び表面温度は百数十℃程度に止める必要がある。一方で、放射される熱量は輻射面の温度の4乗に比例することから、輻射ヒータの輻射面の温度は、なるべく高くしなければ加熱対象を十分に加熱することはできない。ここに、安全性と加熱能力のジレンマがある。また、省エネルギー化が叫ばれる昨今、最小限の電力で最大限の暖かさを得ることも求められる。このような観点から、簡易的な非接触の暖房装置について、実現が困難な状況となっている。
【0005】
本発明はこのような従来技術の問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、安全であり、感覚的な温かさを効率よくもたらすことができる加熱装置、及び、感覚的な冷たさを効率よくもたらすことができる冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するべく、本発明による加熱装置は、加熱部と、暖気貯留部材からなり、上記暖気貯留部材は、隔壁と、該隔壁によって区切られた暖気貯留区画を有し、該暖気貯留区画は、開口部を有しているものである。
また、上記加熱部が、略平面形状であり、上記暖気貯留部材が上記加熱部の一方の面を略覆っていることが考えられる。
また、上記隔壁を上記加熱部の平面に投影した場合に、上記加熱部の平面が上記隔壁の投影によって覆われることになることが考えられる。
また、上記加熱部における上記暖気貯留部材に覆われていない側の面が、断熱材によって略覆われていることが考えられる。
また、上記隔壁が黒色であることが考えられる。
本発明による冷却装置は、冷却部と、冷気貯留部材からなり、上記冷気貯留部材は、隔壁と、該隔壁によって区切られた冷気貯留区画を有し、該冷気貯留区画は、開口部を有しているものである。
また、上記冷却部が、略平面形状であり、上記冷気貯留部材が上記冷却部の一方の面を略覆っていることが考えられる。
また、上記隔壁を上記冷却部の平面に投影した場合に、上記冷却部の平面が上記隔壁の投影によって略覆われることになることが考えられる。
また、上記冷却部における上記冷気貯留部材に覆われていない側の面が、断熱材によって略覆われていることが考えられる。
また、上記隔壁が黒色であることが考えられる。
【発明の効果】
【0007】
本発明による加熱装置は、加熱部により暖められた空気(暖気)が、暖気貯留区画に保持されている。例えば人体のような被加熱物が近づくと、周辺の空気の流れや圧力変化が生じて、暖気が開口部から漏れ出て、この暖気により被加熱物が暖められることとなる。特に人体にとっては、このような暖められ方は非常に心地よいものとして感じられる。また、安全面においても、加熱部は、暖気貯留部材によって断熱されることになるので、加熱装置に直接触れても火傷をするまでの温度にはなっていない。また、暖気が暖気貯留区画に保持されることになるので、人体等が接近するまでは、この暖気が貯留されることになるので、少ない電力で優れた暖房効果を得ることができ、省電力に寄与することができる。
また、本発明による冷却装置は、冷却部により冷やされた空気(冷気)が、冷気貯留区画に保持されている。例えば人体のような被冷却物が近づくと、周辺の空気の流れや圧力変化が生じて、冷気が開口部から漏れ出て、この冷気により被冷却物が冷やされることとなる。特に人体にとっては、このような冷やされ方は非常に心地よいものとして感じられる。また、安全面においても、冷却部は、冷気貯留部材によって断熱されることになるので、冷却装置に直接触れても凍傷をするまでの温度にはなっていない。また、冷気が冷気貯留区画に保持されることになるので、人体等が接近するまでは、この冷気が貯留されることになるので、少ない電力で優れ冷房効果を得ることができ、省電力に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明による加熱装置の構成を示す一部切欠平面図である。
【
図2】本発明の実施の形態1による加熱装置の要部を拡大して模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明で使用される加熱部製造装置の構成を示す図である。
【
図4】本発明の加熱装置において、ヒータ素子を所定のパターン形状に配設する様子を示す一部斜視図である。
【
図5】本発明で使用されるヒータ素子の一例を示す一部切欠側面図である。
【
図6】本発明の他の形態による加熱装置の要部を拡大して模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0010】
まず、
図1~
図5を参照して実施の形態1を説明する。この実施の形態1における加熱部10の構成から説明する。実施の形態1では、加熱部10として、コード状ヒータからなるヒータ素子1と基材9とからなる面状ヒータを使用している。ヒータ素子1は、
図5に示すような構成になっている。まず、外径約0.2mmの芳香族ポリアミド繊維束からなる芯線3があり、該芯線3の外周には、素線径0.08mmの硬質錫入り銅合金線からなる5本の導体素線5aを引き揃えて構成されたものがピッチ約1.0mmで螺旋状に巻装されている。導体素線5aには、アルキドシリコーンワニス(アルキド:シリコーン=50:50)を塗布し乾燥して形成したシリコーンを含有する絶縁被膜5bが、厚さ約5μmで形成されている。このように構成されたヒータ素子1の外径は、0.38mmとなっている。また、ヒータ素子1の外周には、ポリエチレン系樹脂組成物が0.13mmの厚さで押出被覆されて被覆部7が形成されている。この被覆部7は、所定の熱により溶融し、他部材に融着させることができる。被覆部7まで含めたヒータ素子1の仕上がり外径は、0.64mmである。
【0011】
上記構成をなすヒータ素子1は、基材9に接着・固定されていてもよい。実施の形態1における基材9は、見かけ密度0.05g/cm3、(JIS K7222準拠)、硬さ30(JIS K6400-2準拠)、縦240mm、横320mm、厚さ8mm発泡ポリウレタン樹脂からなる。このような基材9は、型抜き等の公知の手法により所望の形状とされる。
【0012】
次に、上記ヒータ素子1を基材9に所定のパターン形状で配設して接着・固定する構成について説明する。
図3はヒータ素子1が配設された基材9を加圧加熱するためのホットプレス式ヒータ製造装置13の構成を示す図である。まず、ヒータパターン治具15があり、このヒータパターン治具15上には複数個の係り止め機構17が設けられている。上記係り止め機構17は、
図4に示すように、ピン19を備えていて、このピン19はホットプレス冶具15に穿孔された孔21内に下方より差し込まれている。このピン19の上部には係り止め部材23が軸方向に移動可能に取り付けられていて、コイルスプリング25によって常時上方に付勢されている。そして、
図4中仮想線で示すように、これら複数個の係り止め機構17の係り止め部材23にヒータ素子1を引っ掛けながら、ヒータ素子1を所定のパターン形状にて配設することになる。
【0013】
図3に戻って、上記複数個の係り止め機構17の上方にはプレス板27が昇降可能に配置されている。すなわち、ヒータ素子1を複数個の係り止め機構17の係り止め部材23に引っ掛けながら所定のパターン形状にて配設し、その上に基材9を置く。その状態で上記プレス板27を降下させてヒータ素子1及び基材9に、加熱加圧を施すものである。このプレス熱板27の降下にあたっては、少なくとも、基材9の圧縮量がヒータ素子1の外径よりも大きくなるように設計する必要がある。それによって、基材9が圧縮されると共に、ヒータ素子1の熱融着層7が融着してヒータ素子1と基材9が接着・固定されることになる。尚、上記熱プレス熱板27の降下による加熱加圧時には複数個の係り止め機構17の係り止め部材23はコイルスプリング25の付勢力に抗して下方に移動するものである。本実施の形態においては、この後に基材9を裏返し、ヒータ素子1を配設した側の面から更にプレス熱板27によって加熱加圧を行った。これにより加熱部10の両面が平坦となり、断熱材41と暖気貯留部材30を取り付けたときに隙間ができることを防止できる。
【0014】
次いで、加熱部10の基材9におけるヒータ素子1が配設されていない面に、暖気貯留部材30が貼り付けられる。本実施の形態における暖気貯留部材30は、縦240mm、横320mm、厚さが5mmで黒色の紙製のものである。本実施の形態では、暖気貯留部材30と加熱部10について、縦と横が同寸法で、主面の形状が同じものを使用しており、暖気貯留部材30が加熱部10の一方の面を完全に覆っている状態となっている。暖気貯留部材30は、隔壁31と、この隔壁31によって区切られた暖気貯留区画33を有しており、また、暖気貯留区画33は、開口部35を有している。また、暖気貯留部材30の主面において、長辺方向に平行な隔壁31aが約3mm間隔で配置され、隣り合う隔壁31a同士を連結するように波形状の隔壁31bが配置された構成となっており、いわゆる段ボール紙の断面を並べたような形状となっている。隔壁31(31a及び31b)の厚さは、0.3mmとなっている。また、隔壁31aは、暖気貯留部材30の主面に対して、垂直ではなく、30度程度傾いて配置されている。そのため、暖気貯留部材30には、暖気貯留区画33となり得る隙間が形成されているが、暖気貯留部材30の主面に垂直な方向からは、反対側を透過してみることはできない。即ち、隔壁31aを加熱部10の平面に投影した場合に、加熱部10の平面が隔壁31aの投影によって覆われることになる。また、暖気貯留区画33の体積は約30mm3、開口部35の面積は約6mm2となっている。
【0015】
加熱部10と暖気貯留部材30を貼り付ける際、加熱部10、暖気貯留部材30またはこれら両方に接着層(図示しない)を形成してもよい。接着層は、粘着テープや接着剤等を使用して形成することが考えられる。また、接着層の形成は、予め離型シート上に接着剤のみからなる接着層を形成し、該接着層を上記離型シートから上記加熱部10の表面に転写することが好ましい。
【0016】
加熱部10の基材9におけるヒータ素子1が配置された面には、第一断熱材41を配置することができる。第一断熱材41は、縦240mm、横320mm、厚さ5mmの面状の形状となっており、見かけ密度0.17kg/m3、(JIS-K6401準拠)、硬さ8N(JIS-K6301準拠)の発泡シリコーン樹脂からなる。本実施の形態では、第一断熱材41と加熱部10について、縦と横が同寸法で、主面の形状が同じものを使用しており、第一断熱材41が加熱部10の一方の面を完全に覆っている状態となっている。また、この第一断熱材41の一方の面には、アルミニウム等による金属層(図示しない)が形成されている。このような第一断熱材41は、型抜き等の公知の手法により所望の形状とされる。
【0017】
また、第一断熱材41における、ヒータ素子1と接しない側の面に、更に別の第二断熱材42を配置することができる。第二断熱材42は、縦240mm、横320mm、厚さ5mmの面状の立体構造物であり、ポリプロピレン樹脂からなる。この第二断熱材42は、2つの平面板の間を衝立壁で支える構造のもので、いわゆるプラ段と称されるものである。
【0018】
これら、暖気貯留部材30、加熱部10、第一断熱材41及び第二断熱材42を重ねて配置したものについて、これらの外周部分を粘着テープからなる固定材45により固定保持しても良い。
【0019】
上記作業を行うことにより、
図1及び
図2に示すような加熱装置51を得ることができる。なお、
図2は
図1の要部を拡大して示す断面図である。また、
図1においては、暖気貯留部材30、加熱部10及び第一断熱材41の一部を切り欠いて表示しているが、実際には、暖気貯留部材30、加熱部10、第一断熱材41及び第二断熱材42は同じ形状として重ねられるものとなっている。
【0020】
上記のようにして得られた加熱装置51について、ヒータ素子1の両端は引き出されてリード線(図示しない)に接続され、このリード線により、ヒータ素子1、温度制御装置(図示しない)、及び、コネクタ(図示しない)が接続されている。温度制御装置はヒータ素子1上に配置され、ヒータ素子1の発熱によって輻射ヒータの温度制御を行うこととなる。そして、上記したコネクタを介して電源(図示しない)に接続されることになる。
【0021】
このようにして得られた加熱装置51は、暖気貯留部材30が存する面を下側にして配置することができる。これにより、加熱部10で暖められた空気は、暖気貯留区画33に保持されることになる。そして、例えば人体のような被加熱物が近づくと、周辺の空気の流れや圧力変化が生じて、暖気が開口部35から吐出されて、この暖気により被加熱物が暖められることとなる。特に人体にとっては、このような暖められ方は非常に心地よいものとして感じられる。本発明による加熱装置51の作用効果については、以下のように説明することができる。まず、暖気貯留部材30により蓄熱機能があるために、必要とされるタイミングでの一時的な熱量として、単位時間当たりの消費電力以上の熱量が吐出されるので、低消費電力で高い採暖効果を得ることができる。また、例えば人体のような被加熱物が近付く際の周辺の空気の流れや圧力変化によって暖気が吐出されるため、人体等が近付いた際のみ効率的に採暖することができ、人体が離れた時には自動的に蓄熱を開始することになり、蓄熱と暖気の吐出を自動で切り替えられることになる。また、暖気を貯留することによる蓄熱であるため、空気の対流による熱の損失が少なく、加熱部10近傍の温度を効率的に上昇することができ、それにより、輻射による暖房の効果も向上させることができる。また、安全面においても、加熱部10は、暖気貯留部材30によって断熱されることになるので、加熱装置51に直接触れても火傷をするまでの温度にはなっていない。
【0022】
一方、本実施の形態における加熱装置51は、暖気貯留部材30が存する面を上側にして配置すると、本発明の効果を奏することができない。このような配置であると、加熱部10で暖められた空気は上昇するため、暖気貯留区画33に保持されず、すぐに開口部35から放出されてしまう。また、本実施の形態における加熱装置51は、例えば、鉛直面や曲面などにも貼付け等により配置することができるが、その場合、開口部35が暖気貯留区画33の下側になるような向きで配置する必要がある。
【0023】
上記のようにして得られた実施の形態1による加熱装置51について、以下に示す測定方法で温度測定を行った。室温を0℃とした環境において、熱電対と対向するように所定距離を離して加熱装置51を配置した。加熱装置51は、主面が水平面に対して垂直となる壁面に貼り付けられており、開口部35が下方向を向くよう配置されている。その状態で、加熱装置51の出力が60Wとなるように通電し、30min保持して、この間の温度変化を測定した。なお、熱電対と加熱装置51の距離は、0mm、50mm,100mm,150mmの4種類とした。実施の形態1に対し、開口部35が上方向を向くよう配置されたものを比較の形態1、暖気貯留部材30が無いものを比較の形態2とし、上記同様に温度測定も行った。これらの温度測定によって得られた30min保持後の温度について、表1に示す。
【0024】
また、上記の実施の形態1、比較の形態1及び比較の形態2による加熱装置について、併せて官能試験を行った。まず、室温0℃で無風とした環境において、上記温度測定と同様に加熱装置51を配置し、その状態で、加熱装置51の出力が60Wとなるように通電し、10min保持した。その後、加熱装置51から100mmの距離に被験者が右手の手のひらを差し込み、5s保持した。実施の形態1、比較の形態1及び比較の形態2による加熱装置について、10人の被験者に対してこのような試験を行い、暖かかった順番を回答してもらった。なお、実施の形態1、比較の形態1及び比較の形態2の試験の順番は、被験者ごとにランダムとした。最も暖かかったものを3点、2番目に暖かかったものを2点、3番目に暖かかったものを1点とした10人の合計点を併せて表1に示す。
【0025】
【0026】
表1に示す通り、加熱装置51から50mm,100mm,150mm離れた地点において、実施の形態1によるものが最も温度が高くなっており、暖房の効果が高いことが確認された。また、0mm、即ち、加熱装置51の表面においては、実施の形態1によるものは、65℃以下となっていた。これは直接触ったとしてもすぐに火傷をする温度ではない。ISO 13732-1:2006において、接触時間と火傷の温度の関係について、10秒の接触時間に対し、材料がセラミック、ガラス及び石材料の場合は65℃、材料がプラスチックの場合は70℃を閾値としている。また、官能試験においても、実施の形態1による加熱装置が最も得点が高く、10人中8人が最も暖かかったと回答していた。このように、実施の形態1による加熱装置は、安全であり、感覚的な温かさを効率よくもたらすことができるものであることが確認された。
【0027】
尚、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。まず、ヒータ素子1の構成としては、例えば、上記実施の形態のようなコード状ヒータだけでなく、他の種々の形態のコード状ヒータも使用できる。例えば、屈曲性や引張強度を考慮した場合には、上記実施の形態で使用した芯線3は有効であるが、芯線3を使用せず、複数本の導体素線を引き揃えるか或いは撚り合わせたものとすることも考えられる。また、昇温速度を高める場合は、導体素線5aとしてニッケル銅合金線を使用することも考えられる。また、上記実施の形態では導体素線5aに絶縁皮膜5bが塗布されているが、絶縁被膜5bを塗布しないことも考えられる。また、上記した特許文献2などを参考に、種々のコード状ヒータを選択することができる。また、コード状ヒータに限られず、面状ヒータ、管状ヒータ、フィルムヒータ、ランプヒータ、カーボンヒータ、温水配管など、種々のヒータ素子を使用することができる。
【0028】
本発明は、ヒータ素子1を暖気貯留部材30に直接配設することもでき、その場合、基材9を使用しない形態も考えられる。また、基材9として、第一断熱材41や第二断熱材42のようなものや、樹脂等のフィルム形状のもの、金属箔等を使用することもできる。例えば、種々の材質からなる発泡樹脂シート、発泡ゴムシートなど種々の高分子発泡体も考えられる。また、目的に応じた断熱性等の特性に応じて、気泡の状態を独立気泡または連続気泡にすることや、発泡率、硬度、使用材料を選定することになる。材料としては、ポリウレタン樹脂、クロロプレンゴム、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、ネオプレンゴム、ジエン系ゴム、ニトリルゴム、天然ゴム、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、メラミン樹脂など、種々の樹脂、ゴム、熱可塑性エラストマーなどから選択すれば良い。金属箔としては、アルミニウム箔、銅箔、銀箔、ステンレス鋼箔や、これらにコーティング等を施したものなど、種々のものから選択すればよい。また、基材9として、不織布や織布を使用することも考えられる。また、複数の基材9を積層する等して使用することもでき、この場合は、それぞれの基材9で異なる材料や異なる気孔率等のものを使用しても良い。
【0029】
基材9や第一断熱材41のヒータ素子1に近い側の面に金属層を形成することで、ヒータ素子1の熱が加熱装置51全面に均一に伝熱されることになるため好ましい。金属層の材料としては、例えば、アルミニウム、銅、銀、金など熱伝導性の良いものが好ましい。金属層の形成方法については、例えば、蒸着、吹き付け、接着剤や接着テープによる箔の貼付せなど、種々の方法によって形成される。
【0030】
また、例えば、ヒータ素子1の外周に接着層を形成し、これによって基材9等に接着する態様、表面に接着剤等を形成した基材9等によってヒータ素子1を挟持・固定する態様、ヒータ素子1を基材9等に縫製によって固定する態様、基材9等の側を溶融させてヒータ素子11を融着・固定する態様、ヒータ素子1の配設箇所に接着剤を塗布等によって形成して、ヒータ素子1を基材9等に接着・固定する態様等が考えられる。
【0031】
第一断熱材41や第二断熱材42のように、種々の断熱材を使用することによって、被加熱物と反対側に熱が伝熱することを防止し、熱効率を上げることができる。断熱材としては、発泡樹脂シート、発泡ゴムシートなど種々の高分子発泡体や、平面板の間を衝立壁で支える構造のものなど、断熱のための空気を保持する構造を備えたものが好ましく使用される。もちろん、断熱材は複数使用しても良い。
【0032】
暖気貯留部材30としては、暖めた空気を保持するための暖気貯留区画33と、暖めた空気を吐出するための開口部35を有するものであれば、種々の形態のものが使用できる。この暖気貯留区画33に関しては、開口部35の位置と、加熱装置51を配置する場所や向きによっては、暖気貯留区画として機能しなくなる場合がある。例えば、開口部35が隔壁31の上方に位置する場合、暖められた空気が貯留されることなく放出されてしまうことになるので、暖気貯留区画とはならない。少なくとも一部の囲まれた空間が、開口部35よりも上方にあることが必要であり、この開口部35よりも上方の囲まれた空間が暖気貯留区画33となる。
【0033】
また、隔壁31の形状についても、種々のものが考えられる。隔壁31の形状も、加熱装置51を配置する場所や向きによって最適なものが設計される。例えば、暖気貯留部材30が存する面を上側にして配置する場合、
図6に示すように、折れ曲がった隔壁31とすれば、暖められた空気が貯留されることとなり、暖気貯留区画33が形成されることになる。
【0034】
上記実施の形態において、隔壁31aを傾けて配置したように、隔壁31については、加熱部10の平面に投影した場合に、加熱部10の平面が隔壁31の投影によって覆われることになることが好ましい。これにより、加熱部10からの輻射熱が隔壁31に当たりやすくなり、暖気貯留区画33内の空気を効率的に暖めることができる。また、加熱部10が外部から見えにくくなるので見栄えも良い。
【0035】
暖気貯留部材30を構成する材料について特に限定はないが、上記実施の形態で使用した紙のように、熱伝導率が低い材料で構成することが好ましい。その他にも、例えば、各種繊維材料からなる布材、無垢材や集成材のような木質材、ゴム材料、樹脂材料、発泡ゴム材料、発泡樹脂材料などにより構成することができる。セラミック材料や金属材料で構成することもできるが、熱伝導には注意を払う必要がある。これらの材料は、例えば、部分的に材料を変更したり、貼り合わせたり、コーティングしたり等、適宜組合せることもできる。特に、人体が触れ得る暖気貯留部材30の表面部分に、熱伝導率が低い材料を配置することが好ましい。暖気貯留部材30を構成する材料として、脱臭触媒、抗菌剤、蓄熱材等を含むものが使用できる。暖気貯留部材30を構成する材料にこれらを配合することや、暖気貯留部材30の表面にこれらを塗布等することが考えられる。また、暖気貯留部材30については、被加熱物への輻射効率を考慮すると黒色であることが好ましい。
【0036】
上記実施の形態では、暖気貯留部材30が加熱部10を完全に覆っているが、例えば、加熱部10の一部が覆われていないような形態も考えられる。本発明においては、暖気貯留部材30が加熱部10の一方の面を略覆っていればよく、略覆っているとは、完全にすべてを覆いつくすまでは必要ない。加熱部10や暖気貯留部材30の形状や形態、または、加熱装置51の取付け箇所等に応じて、適宜覆う面積は設計されるが、おおよそ加熱部10の面積の9割以上を覆うものが考えられる。また、上記実施の形態では、第一断熱材41が加熱部10を完全に覆っているが、例えば、加熱部10の一部が覆われていないような形態も考えられる。本発明においては、断熱材(例えば、第一断熱材41または第二断熱材42等)が加熱部10の一方の面を略覆っていればよく、略覆っているとは、完全にすべてを覆いつくすまでは必要ない。加熱部10や断熱材の形状や形態、または、加熱装置51の取付け箇所等に応じて、適宜覆う面積は設計されるが、おおよそ加熱部10の面積の9割以上を覆うものが考えられる。
【0037】
本発明による加熱装置は、加熱部を冷却部とすることで、冷却装置とすることができる。この場合、加熱装置における暖気貯留部材は冷気貯留部材となり、冷気貯留部材は、冷えた空気を保持するための冷気貯留区画と、冷えた空気を吐出するための開口部を有するものとなる。また、冷えた空気は下降するので、開口部を冷気貯留区画の上方に形成する必要がある。冷却部としては、例えば、ペルチェ素子や、冷水配管、冷気配管などが考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上詳述したように本発明によれば、安全であり、感覚的な温かさ又は冷たさを効率よくもたらすことができる加熱装置と冷却装置を得ることができる。このような加熱装置と冷却装置は、例えば、家庭用冷暖房器具、自動車内装用冷暖房装置、産業用加熱・冷却装置、各種除雪解氷装置、防曇装置、加熱・冷却調理器具、輻射熱を使用した温熱治療機など、種々の熱源や冷却源として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 ヒータ素子
9 基材
10 加熱部
30 暖気貯留部材
31(31a,31b) 隔壁
33 暖気貯留区画
35 開口部
41 第一断熱材
42 第二断熱材
51 加熱装置