IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 美和ロック株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-扉制御システム 図1
  • 特開-扉制御システム 図2
  • 特開-扉制御システム 図3
  • 特開-扉制御システム 図4
  • 特開-扉制御システム 図5
  • 特開-扉制御システム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042687
(43)【公開日】2022-03-15
(54)【発明の名称】扉制御システム
(51)【国際特許分類】
   E05B 49/00 20060101AFI20220308BHJP
   E05F 15/77 20150101ALI20220308BHJP
   H04K 3/00 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
E05B49/00 K
E05F15/77
H04K3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020148203
(22)【出願日】2020-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】390037028
【氏名又は名称】美和ロック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100187562
【弁理士】
【氏名又は名称】沼田 義成
(72)【発明者】
【氏名】三浦 勇介
(72)【発明者】
【氏名】船守 進一
(72)【発明者】
【氏名】小山内 肇
【テーマコード(参考)】
2E052
2E250
【Fターム(参考)】
2E052AA01
2E052AA02
2E052BA07
2E052CA05
2E052EA01
2E052EA11
2E052EB01
2E052EC01
2E250AA02
2E250AA03
2E250AA04
2E250AA05
2E250BB08
2E250BB12
2E250BB65
2E250CC20
2E250FF27
2E250FF36
(57)【要約】
【課題】扉制御に用いられる応答要求信号や妨害信号の作用を最適化する。
【解決手段】扉制御システム1は、扉の室外側で第1通信範囲に向けて応答要求信号を送信し、認証媒体3aからの応答信号を受信する室外リーダ4と、応答信号の識別情報が正当か否かを認証する認証部12と、応答信号を認証した場合に、電気錠装置2又は扉開閉装置31を制御することで、扉を制御する電気錠制御部13と、扉の室内側で認証媒体3bからの応答信号を受信する室内リーダ5と、扉又は扉の近傍で第1通信範囲より小さい第2通信範囲に向けて応答要求信号を妨害する妨害信号を送信する妨害装置5aを備える。扉制御システム1は、室外リーダ4が受信した応答信号の第1受信強度の、室内リーダ5が受信した応答信号の第2受信強度との差分が所定の閾値未満である場合、認証媒体3bが扉の室内側にあると判定し、扉制御部による扉の制御を行わない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
認証媒体から固有の識別情報を認証したときに、扉を制御する扉制御システムであって、
前記扉の一方側に配置され、所定の第1通信範囲に向けて応答要求信号を送信し、該応答要求信号に応答した前記認証媒体からの応答信号を受信する第1読取装置と、
前記応答信号の前記識別情報が正当か否かを認証する認証部と、
前記応答信号を認証した場合に前記扉を制御する扉制御部と、
前記扉の他方側に配置され、前記認証媒体からの応答信号を受信する第2読取装置と、
前記扉又は該扉の近傍に配置され、前記第1通信範囲より小さい所定の第2通信範囲に向けて前記応答要求信号を妨害する妨害信号を送信する妨害装置と、を備え、
前記第1読取装置が受信した前記応答信号の第1受信強度の、前記第2読取装置が受信した前記応答信号の第2受信強度との差分が所定の閾値未満である場合、前記認証媒体が前記扉の他方側にあると判定し、前記扉制御部による前記扉の制御を行わないことを特徴とする扉制御システム。
【請求項2】
前記扉制御部は、前記扉に設けられた電気錠の施解錠を制御するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の扉制御システム。
【請求項3】
前記扉制御部は、前記扉の開閉を制御するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の扉制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、認証媒体の固有の識別情報を認証したときに、扉の施解錠又は開閉を制御する扉制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ホテルやオフィスビル等の商業施設又は公共施設の出入口や、集合住宅又は一般住宅のエントランスや玄関等では、その部屋又は領域への入退室又は入退場を制限するために、利用者の保持するリモコンやICカード等の認証媒体(携帯器)に記憶された識別情報を認証したときに扉の電気錠を制御する電気錠システムや、識別情報を認証したときに扉の開閉を制御する自動ドアシステム等の扉制御システムが採用されている。
【0003】
扉制御システムは、認証媒体から識別情報を読み取るリーダを扉又は扉の近傍に備え、リーダは、扉の近傍の認証媒体に向けて応答要求信号を常時送信する。認証媒体は、この応答要求信号に応答して固有の識別情報を含む応答信号をリーダへと送信する。例えば、扉制御システムとしての電気錠システムは、リーダが認証媒体から読み取った識別情報を正当と認証すると、電気錠を解錠することができる。また、電気錠システムにおいて、解錠した電気錠は、所定時間経過後に自動的に、又は扉近傍に設けた施錠操作手段を操作することにより、施錠される。
【0004】
例えば、特許文献1に開示される錠制御システムでは、動き検出センサを備え、所定の応答要求無線信号を受信した際に動き検出センサからの動きの有無情報を含む応答無線信号を出力する携帯器と、携帯器に応答要求無線信号を出力し、携帯器からの応答無線信号に対する認証成立と動きあり信号の存在を条件に電気錠を解錠制御する錠制御装置とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-133137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような扉制御システムでは、例えば、認証媒体を所持した利用者が、玄関室内側且つリーダの通信可能領域にいる場合には、認証媒体は、リーダから応答要求信号を受信するたびに応答信号を送信するので、利用者の意図に沿わずにこの応答信号の識別情報が認証されて電気錠の解錠や自動ドアの開扉を可能にして、不正入室が可能になってしまう。例えば、リーダが室外に設けられていて、認証媒体が室内にある場合でも、応答要求信号や応答信号が扉や壁で完全に遮断されずに、扉の戸先や吊元、床付近の隙間、扉付近の窓等を介して室内外に通信されてしまうことがある。
【0007】
また、扉制御システムでは、室外のリーダの応答要求信号の送信範囲を狭くすると、応答要求信号に対する応答性が低下し、正当な認証媒体を所持した利用者が室外から扉に接近しても、扉を適切に制御できなくなり、室外のハンズフリー検知率(利便性)が低下する問題が生じる。一方、室外のリーダの応答要求信号の送信範囲を広くすると、応答要求信号が室内に大きく回り込むので、室外のリーダの応答要求信号に対して室内の認証媒体が応答する、いわゆる背面検知が生じ易くなる問題が生じる。
【0008】
これに対して、従来、扉制御システムには、上記の背面検知を防止するために、応答要求信号を妨害する妨害信号を送信して室内の認証媒体を認証しないようにするものがある。しかしながら、室内に大きく回り込む応答要求信号に対応するために、妨害信号の送信範囲を広くすることになる。このとき、妨害信号が室外に大きく回り込むので、妨害信号が室外の応答要求信号に不適切に作用して、室外の正当な認証媒体を認証できずに、扉を適切に制御できなくなり、室外のハンズフリー検知率(利便性)が低下する問題が生じる。
【0009】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、扉制御に用いられる応答要求信号や妨害信号の作用を最適化する扉制御システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の扉制御システムは、認証媒体から固有の識別情報を認証したときに、扉を制御する扉制御システムであって、前記扉の一方側に配置され、所定の第1通信範囲に向けて応答要求信号を送信し、該応答要求信号に応答した前記認証媒体からの応答信号を受信する第1読取装置と、前記応答信号の前記識別情報が正当か否かを認証する認証部と、前記応答信号を認証した場合に前記扉を制御する扉制御部と、前記扉の他方側に配置され、前記認証媒体からの応答信号を受信する第2読取装置と、前記扉又は該扉の近傍に配置され、前記第1通信範囲より小さい所定の第2通信範囲に向けて前記応答要求信号を妨害する妨害信号を送信する妨害装置と、を備え、前記第1読取装置が受信した前記応答信号の第1受信強度の、前記第2読取装置が受信した前記応答信号の第2受信強度との差分が所定の閾値未満である場合、前記認証媒体が前記扉の他方側にあると判定し、前記扉制御部による前記扉の制御を行わないことを特徴とする。
【0011】
上記した本発明の扉制御システムによれば、一方側の読取装置からの応答要求信号の漏出信号が他方側の認証媒体へと送信されても、第2通信範囲において妨害信号が漏出信号に干渉して、漏出信号の信号内容は妨害信号によって破壊され、又は妨害信号によって無効化された状態で認証媒体に到達する。そのため、他方側の認証媒体は漏出信号に応じて応答信号を一方側の読取装置へと送信することはなく、認証媒体の識別情報が一方側の読取装置を介して認証されることもない。従って、認証媒体を有する利用者の他方側への入室直後や、他方側の認証媒体を扉付近に置いている場合でも、扉を制御する装置は、他方側の認証媒体に反応して制御されることがなく、不正入室を防ぐことができる。
【0012】
また、一方側の読取装置からの応答要求信号の漏出信号が、妨害信号の第2通信範囲を超えて他方側の認証媒体へと送信される場合がある。この場合、認証媒体からの応答信号は、一方側の読取装置及び他方側の読取装置で受信されるところ、一方側の読取装置及び他方側の読取装置でのそれぞれの受信強度が比較される。他方側で第2通信範囲外の認証媒体は、他方側の読取装置から比較的遠いため、他方側の読取装置での応答信号の受信強度の低下が顕著になる。従って、認証媒体が妨害信号の第2通信範囲外にあっても、一方側の読取装置の第1受信強度の、他方側の読取装置の第2受信強度との差分が所定の閾値未満である場合、認証媒体が扉の他方側にあると判定することができる。これにより、他方側の第2通信範囲外における背面検知を防止することができる。
【0013】
なお、妨害装置による妨害信号の第2通信範囲は、一方側の読取装置による応答要求信号の第1通信範囲よりも十分に小さいので、妨害信号は、他方側に漏出しても、扉に極めて近い非常に狭い範囲のみで作用する。そのため、妨害信号は、一方側で扉を制御する利用者の行動範囲に作用しないので、一方側の利用者の所持する認証媒体は、妨害信号の影響を受けずに、一方側の読取装置の応答要求信号を適切に受信して応答信号を応答することができる。
【0014】
本発明の扉制御システムにおいて、前記扉制御部は、前記扉に設けられた電気錠の施解錠を制御するように構成されることを特徴とする。
【0015】
本発明の扉制御システムにおいて、前記扉制御部は、前記扉の開閉を制御するように構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、扉制御に用いられる応答要求信号や妨害信号の作用を最適化する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係る扉制御システムの概略を示すブロック図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る扉制御システムを模式的に示す上面図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る扉制御システムの概略を示すブロック図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る扉制御システムの概略を示すブロック図である。
図5】本発明の他の実施形態に係る扉制御システムを模式的に示す上面図である。
図6】本発明の他の実施形態に係る扉制御システムの概略を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態に係る扉制御システムについて、添付の図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る扉制御システム1の構成の概略を示すブロック図、図2は、本発明の第1実施形態に係る扉制御システム1の模式的な上面図である。
【0019】
第1実施形態の扉制御システム1は、部屋の入退室を制限する扉を電動で自動的に施解錠する電気錠装置2(電気錠)と、固有のIDである識別情報を記憶した認証媒体3a、3b(携帯器)と、認証媒体3a、3bから識別情報を読み取る室外リーダ4(第1読取装置)及び室内リーダ5(第2読取装置)とを備える。また、扉制御システム1は、室外リーダ4又は室内リーダ5で受信した識別情報の認証結果に応じて電気錠装置2を制御する制御ユニット6を備える。即ち、第1実施形態の扉制御システム1は、識別情報を認証することで扉の電気錠装置2を施解錠する電気錠システムである。
【0020】
電気錠装置2は、例えば、デッドボルト(図示せず)及び該デッドボルトを移動させる電動アクチュエータ(図示せず)からなる施解錠機構7と、電動アクチュエータを駆動するためのモータ等の駆動部8とを備えて構成される。デッドボルトは、扉の戸先から突出するように移動して扉枠のストライク内に固定されることにより扉を施錠して開扉不能にし、他方、ストライクから抜脱するように移動して扉内に引き込まれることにより扉を解錠して開扉可能にする。電気錠装置2は、制御ユニット6に接続されていて、制御ユニット6から施錠又は解錠を指示する制御信号を受けて、この制御信号に応じて駆動部8が電動アクチュエータを駆動する。
【0021】
認証媒体3a及び3bは、各種情報を読み出し/書き込み可能に記憶する記憶領域を有するICチップ等の電子部品を設けていて、特に、扉の施解錠許可の認証に必要な情報として、利用者情報等の固有の識別情報を記憶領域に記憶している。また、認証媒体3a及び3bは、所定の通信半径(通信範囲)内で非接触通信(近距離無線通信)により室外リーダ4及び室内リーダ5と通信信号を送受信する。例えば、認証媒体3a及び3bは、室外リーダ4又は室内リーダ5から送信された応答要求信号に応答して、識別情報を含む応答信号を室外リーダ4又は室内リーダ5へと送信する。応答信号は、所定の周波数帯(例えば、315MHz)の応答電波であって、応答信号の電界強度(又は磁界強度)は、距離(受信距離)の2乗に反比例して減衰する。
【0022】
認証媒体3a及び3bは、例えば、室外リーダ4又は室内リーダ5からの電磁波や磁界結合又は電界結合に応じて電力を発生させるパッシブタグを備えたICカード等のカード状記憶媒体や、内蔵した電池等の電源より電力が供給されるアクティブタグを備えたリモコンキー等の非接触キーでよい。あるいは、認証媒体3a及び3bは、室外リーダ4及び室内リーダ5と非接触通信可能なスマートフォンやタブレット等の携帯式の端末装置でよい。なお、認証媒体3a及び3b3a及び3bは、室外リーダ4及び室内リーダ5と近距離無線通信可能で利用者が携帯可能な機器であればこれらに限定されない。
【0023】
室外リーダ4及び室内リーダ5は、それぞれ部屋の外側及び内側で、扉の表面又はその周囲の壁面等に設けられる。室外リーダ4及び室内リーダ5は、認証媒体3a及び3bと近距離無線通信可能なリーダ又は送受信装置であって、所定の通信半径(通信範囲)内で通信することができる。室外リーダ4及び室内リーダ5は、例えば、認証媒体3a及び3bに向けて応答要求信号を送信すると共に、この応答要求信号に応答した認証媒体3a及び3bからの応答信号を受信可能になっている。
【0024】
特に、室内リーダ5は、応答信号の認証のために、室内リーダ5が応答要求信号を送信した場合に応答信号を受信可能にしていて、更に、応答信号の受信強度の判定のために、室外リーダ4及び室内リーダ5の何れかが応答要求信号を送信した場合に応答信号を受信可能にしている。なお、室外リーダ4は、応答信号の認証のために、室外リーダ4が応答要求信号を送信した場合だけ応答信号を受信可能にしてもよく、あるいは、応答信号の受信強度の判定のために、室外リーダ4及び室内リーダ5の何れかが応答要求信号を送信した場合に応答信号を受信可能にしてもよい。
【0025】
室外リーダ4及び室内リーダ5は、例えば、所定の周波数帯(例えば、134MHz)の応答要求信号を、扉に対してそれぞれ室外側及び室内側で認証媒体3a及び3bに対応するために、約1.5~2mの通信半径の室外側の第1通信範囲及び室内側の第1通信範囲にそれぞれ向けて送信する。応答要求信号の磁界強度(又は電界強度)は、応答信号よりも減衰量が大きく、距離(受信距離)の3乗に反比例して減衰する。室外リーダ4及び室内リーダ5は、例えば、所定の周期のパルスの応答要求信号を生成して所定の時間間隔毎に送信する。なお、室外リーダ4及び室内リーダ5は、応答要求信号を、周期的に送信してもよいし、ボタン操作に応じて送信してもよい。室外リーダ4及び室内リーダ5は、制御ユニット6に接続されていて、認証媒体3a又は3bから受信した応答信号から識別情報を読み取り、制御ユニット6へと送信する。
【0026】
また、室内リーダ5は、応答要求信号を妨害する妨害信号を生成する妨害装置5aを備えていて、扉に対して少なくとも室内側で応答要求信号に対応するためにジャミング信号等の妨害信号を送信する。妨害装置5aは、応答要求信号と同一周波数帯の妨害信号を生成し、室外リーダ4及び室内リーダ5による応答要求信号の第1通信範囲よりも小さい約1.0mの通信半径の室内側の第2通信範囲に向けて妨害信号を送信する。妨害装置5aは、妨害信号の送信機能を有していてもよく、あるいは、室内リーダ5の送信機能を利用して妨害信号を送信してもよい。
【0027】
なお、妨害装置5aは、室外リーダ4が応答要求信号を送信している間に亘って妨害信号を送信するとよく、より好ましくは、応答要求信号を送信する直前に妨害信号の送信を開始し、応答要求信号の送信を停止した後で妨害信号の送信を停止するとよい。妨害装置5aで生成される妨害信号を、応答要求信号に干渉させることで、応答要求信号を無効化する。妨害信号は、応答要求信号と同一周波数帯であることに加えて、応答要求信号と位相又はピークの異なる信号でもよい。例えば、妨害信号は、応答要求信号のパルスの所定の周期の一部を妨害するように生成される。
【0028】
例えば、図2に示すように、室外リーダ4は、扉に対して室外側の認証媒体3aに対応するために所定の送信範囲R1で応答要求信号を送信する。このとき、室外リーダ4からの応答要求信号が扉や壁で遮断されずに、室内側に漏出する可能性がある。このような応答要求信号の漏出信号Sが、室内側の認証媒体3bによって受信されてしまうと、この認証媒体3bは、漏出信号Sに応じて応答信号を室外リーダ4へと送信してしまう。
【0029】
しかしながら、室内リーダ5の妨害装置5aは、所定の送信範囲R2に妨害信号を送信しているため、妨害信号が漏出信号Sに干渉して、漏出信号Sの信号内容は妨害信号によって破壊される。例えば、漏出信号Sに妨害信号が重畳されて、応答要求信号の正常な振幅の有無が判別できなくなり、パルス幅を判別できなくなる。そのため、認証媒体3bが漏出信号Sを受信しても、漏出信号Sが応答要求信号としての正当な信号内容を有していないので、認証媒体3bは漏出信号Sに応じて応答信号を送信することはない。従って、室外リーダ4からの応答要求信号の漏出信号Sが室内側の認証媒体3bへと送信されても、室外リーダ4が認証媒体3bから応答信号を受信することはなく、識別情報を読み取ることもない。
【0030】
なお、室内リーダ5は、妨害装置5aが妨害信号を送信する間は、応答要求信号の送信を停止していてよく、扉に対して室内側には、室内側から手動で電気錠装置2の施解錠機構7を施解錠可能なサムターンやキーシリンダー等の機構を備えてよい。
【0031】
また、妨害装置5aによる妨害信号の送信範囲R2は、室外リーダ4による応答要求信号の送信範囲R1よりも十分に小さいので、妨害信号は、室外側に漏出しても、扉に極めて近い非常に狭い範囲のみで作用する。そのため、妨害信号は、室外側で扉を制御する利用者の行動範囲に作用しないので、室外側の認証媒体3aは、妨害信号に拘わらず、室外リーダ4の応答要求信号を適切に受信して応答信号を応答することができる。
【0032】
また、室外リーダ4及び室内リーダ5は、認証媒体3a又は3bから応答信号を受信したときの受信強度を測定して、認証媒体3a又は3bの応答信号の識別情報と紐付ける(対応付ける)。室外リーダ4及び室内リーダ5は、2つ以上の認証媒体3a又は3bから応答信号を受信している場合でも、識別情報を識別することで、認証媒体3a又は3b毎に受信強度を識別することができる。
【0033】
室内リーダ5は、認証媒体3a又は3bの応答信号の識別情報及び受信強度を室外リーダ4へ送信する。なお、室内リーダ5は、室外リーダ4と直接的に通信可能にしていて識別情報及び受信強度を送信してもよく、あるいは、制御ユニット6を介して室外リーダ4と間接的に通信可能にしていて識別情報及び受信強度を送信してもよい。
【0034】
室外リーダ4は、室外リーダ4によって所定の認証媒体3a又は3bから受信した応答信号の受信強度(第1受信強度F1)と、室内リーダ5によって当該認証媒体3a又は3bから受信した応答信号の受信強度(第2受信強度F2)とを比較する。室外リーダ4は、2つ以上の認証媒体3a又は3bから応答信号を受信している場合でも、識別情報を識別することで、認証媒体3a又は3b毎に受信強度を比較することができる。
【0035】
その比較の結果、室外リーダ4は、第1受信強度F1の第2受信強度F2との差分、即ち、第1受信強度F1から第2受信強度F2を減算した差分が所定の閾値未満である場合、当該認証媒体3bが室外リーダ4よりも室内リーダ5に近いと判断できるので、当該認証媒体3bが室内側にあると判定する。このとき、室外リーダ4は、当該認証媒体3bから受信した応答信号を不当と判断して、応答信号の識別情報を制御ユニット6へ送信せず、制御ユニット6による扉の制御を行わないようにする。
【0036】
一方、室外リーダ4は、第1受信強度F1の第2受信強度F2との差分が所定の閾値以上である場合、当該認証媒体3bが室内リーダ5よりも室外リーダ4に近いと判断できるので、当該認証媒体3bが室外側にあると判定する。このとき、室外リーダ4は、当該認証媒体3bから受信した応答信号を正当と判断して、応答信号の識別情報を制御ユニット6へ送信し、制御ユニット6による扉の制御を行わせるようにする。
【0037】
制御ユニット6は、扉制御システム1の全体の動作を統括制御するCPU(Central Processing Unit)等の制御部10と、この制御部10による制御に必要な情報を記憶するROMやRAM等の記憶媒体からなる記憶部11とを備える。
【0038】
制御部10は、例えば、認証部12と、電気錠制御部13(扉制御部)とを備えて構成される。なお、認証部12及び電気錠制御部13は、記憶部11に記憶されて制御部10によって実行されるプログラムで構成されてよい。また、記憶部11は、例えば、認証媒体3a及び3bの識別情報の認証に用いられる一つ以上の認証情報14を記憶する。
【0039】
認証部12は、制御部10が室外リーダ4又は室内リーダ5から受信した認証媒体3a又は3bの識別情報を、記憶部11に記憶された認証情報14と比較して、識別情報が正当と認証できるか否かを判定する。
【0040】
電気錠制御部13は、認証部12による判定結果に応じて電気錠装置2を制御し、例えば、識別情報が正当であると認証されたときに、電気錠装置2を解錠する制御信号を電気錠装置2へと送信する。また、電気錠制御部13は、解錠する制御信号を電気錠装置2へと送信してから所定時間が経過したときに、電気錠装置2を施錠する制御信号を電気錠装置2へと送信する。
【0041】
第1実施形態では、本発明の扉制御システム1を、識別情報を認証することで扉の電気錠装置2を施解錠する電気錠システムに適用した例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、第2実施形態では、本発明の扉制御システム30を、エントランス等に備わる扉(自動ドア)の開閉を制御する自動ドアシステムに適用することもできる。以下では、第2実施形態の扉制御システム30について図3を参照しながら説明するが、図1に示す上記の第1実施形態の扉制御システム1と同様の構成及び機能については、説明を省略する。
【0042】
図3に示すように、第2実施形態の扉制御システム30は、例えば、認証媒体3a、3b、室外リーダ4、室内リーダ5及び制御ユニット6(制御装置)に加えて、扉開閉装置31を備える。第2実施形態においても、室内リーダ5は、第1実施形態と同様に、応答要求信号を妨害する妨害信号を生成する妨害装置5aを備えている。第2実施形態の制御ユニット6は、制御部10、記憶部11及び認証部12に加えて、扉開閉装置31を制御する扉開閉制御部32(扉制御部)を備える。扉開閉制御部32は、記憶部11に記憶されて制御部10によって実行されるプログラムで構成されてよい。
【0043】
なお、認証媒体3a、3bの識別情報は、扉の開閉許可の認証に必要な情報であり、記憶部11は、扉開閉装置31の開閉を許可される認証媒体3a及び3bの識別情報を認証情報33として予め記憶する。例えば、記憶部11は、一つ以上の認証媒体3a及び3bの識別情報のそれぞれに対応する一つ以上の認証情報33を記憶してよい。なお、認証部12は、制御部10が室外リーダ4又は室内リーダ5から受信した認証媒体3a又は3bの識別情報を、記憶部11に記憶された認証情報33と比較して、識別情報が正当と認証できるか否かを判定する。
【0044】
扉開閉装置31は、制御ユニット6(扉開閉制御部32)によって制御されて自動ドアを電動で自動的に開閉する機構である。自動ドアは、スライドドアや開き戸の何れで構成されてもよい。なお、開き戸の場合には、自動ドアの開閉に対する障害物を検知する障害物センサ(図示せず)を備え、扉開閉装置31は、障害物がない場合に自動ドアを開閉させる。
【0045】
第2実施形態の扉開閉制御部32は、扉(電気錠装置2)の施錠及び解錠を制御する第1実施形態の電気錠制御部13に対して、扉(扉開閉装置31)の開扉及び閉扉を制御する点で異なるが、略同様に構成される。
【0046】
扉開閉制御部32は、認証部12による判定結果に応じて扉開閉装置31を制御し、例えば、識別情報が正当であると認証されたときに、扉開閉装置31を開扉する制御信号を扉開閉装置31へと送信する。また、扉開閉制御部32は、開扉する制御信号を扉開閉装置31へと送信して(扉を開扉して)から所定時間が経過したときに、扉開閉装置31を閉扉する制御信号を扉開閉装置31へと送信する。
【0047】
上記したように、本実施形態に係る扉制御システム1、30は、認証媒体3a、3bから固有の識別情報を認証したときに、扉に設けられた電気錠装置2(電気錠)又は扉開閉装置31を制御することで、扉を制御する電気錠システム又は自動ドアシステムである。扉制御システム1、30は、扉の室外側(一方側)に配置され、所定の第1通信範囲に向けて応答要求信号を送信し、応答要求信号に応答した認証媒体3aからの応答信号を受信する室外リーダ4(第1読取装置)と、応答信号の識別情報が正当か否かを認証する認証部12と、応答信号を認証した場合に、電気錠装置2又は扉開閉装置31を制御することで、扉を制御する電気錠制御部13や扉開閉制御部32等の扉制御部と、扉の室内側(他方側)に配置され、認証媒体3bからの応答信号を受信する室内リーダ5(第2読取装置)と、を備えている。また、扉制御システム1、30は、扉又は扉の近傍に配置され、第1通信範囲より小さい所定の第2通信範囲に向けて応答要求信号を妨害する妨害信号を送信する妨害装置5aを備える。そして、扉制御システム1、30は、室外リーダ4によって、室外リーダ4が受信した応答信号の第1受信強度F1の、室内リーダ5が受信した応答信号の第2受信強度F2との差分が所定の閾値未満である場合、認証媒体3bが扉の室内側にあると判定し、扉制御部による扉の制御を行わないようにする。
【0048】
例えば、扉制御部は、扉に設けられた電気錠装置2の施解錠を制御するように構成される電気錠制御部13であり、あるいは、扉の開閉を制御するように構成される扉開閉制御部32である。
【0049】
このような構成により、扉制御システム1、30では、室外リーダ4からの応答要求信号の漏出信号Sが室内側の認証媒体3bへと送信されても、室内の扉付近の第2通信範囲において妨害信号が漏出信号Sに干渉して、漏出信号Sの信号内容は妨害信号によって破壊され、又は妨害信号によって無効化された状態で認証媒体3bに到達する。そのため、認証媒体3bは漏出信号Sに応じて応答信号を室外リーダ4へと送信することはなく、認証媒体3bの識別情報が室外リーダ4を介して認証されることもない。従って、認証媒体3bを有する利用者の室内側への入室直後や、認証媒体3bを扉付近に置いている場合でも、電気錠装置2又は扉開閉装置31等の扉を制御する装置は、室内側の認証媒体3bに反応して制御されることがなく、不正入室を防ぐことができる。これにより、室内の扉付近の第2通信範囲における背面検知を防止することができる。
【0050】
また、室外リーダ4からの応答要求信号の漏出信号Sが、妨害信号の第2通信範囲を超えて室内側の認証媒体3bへと送信される場合がある。この場合、認証媒体3bからの応答信号は、室外リーダ4及び室内リーダ5で受信されるところ、室外リーダ4及び室内リーダ5でのそれぞれの受信強度が比較される。室内側で第2通信範囲外の認証媒体3bは、室内リーダ5から比較的遠いため、室内リーダ5での応答信号の受信強度の低下が顕著になる。従って、認証媒体3bが妨害信号の第2通信範囲外にあっても、室外リーダ4の第1受信強度F1の、室内リーダ5の第2受信強度F2との差分が所定の閾値未満である場合、認証媒体3bが扉の室内側にあると判定することができる。これにより、室内の第2通信範囲外における背面検知を防止することができる。
【0051】
なお、妨害装置5aによる妨害信号の第2通信範囲は、室外リーダ4による応答要求信号の第1通信範囲よりも十分に小さいので、妨害信号は、室外側に漏出しても、扉に極めて近い非常に狭い範囲のみで作用する。そのため、妨害信号は、室外側で扉を制御する利用者の行動範囲に作用しないので、室外側の利用者の所持する認証媒体3aは、妨害信号の影響を受けずに、室外リーダ4の応答要求信号を適切に受信して応答信号を応答することができる。
【0052】
このようにして、扉制御に用いられる応答要求信号や妨害信号の作用を最適化する扉制御システム1、30を提供することが可能となる。
【0053】
なお、上記した実施形態では、扉制御システム1、30は、室外リーダ4が受信した応答信号の第1受信強度F1と室内リーダ5が受信した応答信号の第2受信強度F2との比較を、室外リーダ4によって行う例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、他の実施形態では、室外リーダ4が受信した応答信号の第1受信強度F1と室内リーダ5が受信した応答信号の第2受信強度F2との比較を、制御ユニット6の制御部10によって行うように構成されてもよい。この場合、室外リーダ4は、認証媒体3a又は3bの応答信号の識別情報及び受信強度を制御ユニット6へ送信し、また、室内リーダ5は、認証媒体3a又は3bの応答信号の識別情報及び受信強度を制御ユニット6へ送信する。
【0054】
上記した実施形態では、扉制御システム1、30において、室外リーダ4及び室内リーダ5が、それぞれ部屋の外側及び内側で、扉の表面又はその周囲の壁面等に設けられる例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、他の実施形態では、扉制御システム1、30は、室外リーダ4及び室内リーダ5を、扉の近傍の枠や袖パネル等の、扉を制御する利用者が接近する位置に配置していればよい。
【0055】
上記した実施形態では、扉制御システム1、30が室内リーダ5に妨害装置5aを備えて室内側で妨害信号を送信し、室外リーダ4からの応答要求信号の室内側への漏出信号Sに起因する不正解錠や不正開扉を抑制する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、他の実施形態では、扉制御システム1、30は、室外リーダ4に妨害装置5aを備えて室外側で妨害信号を送信し、室内リーダ5からの応答要求信号の室外側への漏出信号Sに起因する不正解錠や不正開扉を抑制してもよい。この場合、室外リーダ4の妨害装置5aは、室外側の第2通信範囲に向けて妨害信号を送信する。
【0056】
また、上記した実施形態では、扉制御システム1、30が室内リーダ5又は室外リーダ4に妨害装置5aを備えて室内側又は室外側で妨害信号を送信する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、他の実施形態では、扉制御システム1、30は、室外リーダ4及び室内リーダ5の両方に妨害装置4a及び5aを備える(図4図6参照)。この場合、室外リーダ4の妨害装置4aは、室外側の第2通信範囲に向けて妨害信号を送信し、室内リーダ5の妨害装置5aは、室内側の第2通信範囲に向けて妨害信号を送信する。例えば、室外リーダ4から送信された応答要求信号が室内側に漏出した漏出信号Sは、室内側の第2通信範囲において妨害信号によって無効化された状態で認証媒体3bに到達する。
【0057】
そして、室外リーダ4による応答要求信号の送信及び室内リーダ5による妨害信号の送信を同時に行う制御と、室外リーダ4による妨害信号の送信及び室内リーダ5による応答要求信号の送信を同時に行う制御とを、応答要求信号の送信の都度、切り換える。制御ユニット6の認証部12は、室外リーダ4及び室内リーダ5の妨害信号の送信の切り換えタイミングと、認証媒体3a、3bからの応答信号の受信タイミングとに基づいて、認証媒体3a、3bが室外側及び室内側の何れにあるかを判定する。
【0058】
例えば、室内リーダ5が妨害信号を送信している間に、室外リーダ4が認証媒体3a、3bから応答信号を受信していて、且つ、室外リーダ4が妨害信号を送信している間に、室内リーダ5が認証媒体3a、3bから応答信号を受信していない場合、認証部12は、認証媒体3a、3bが室外側にあると判定する。また、室内リーダ5が妨害信号を送信している間に、室外リーダ4が認証媒体3a、3bから応答信号を受信してなく、且つ、室外リーダ4が妨害信号を送信している間に、室内リーダ5が認証媒体3a、3bから応答信号を受信している場合、認証部12は、認証媒体3a、3bが室内側にあると判定する。
【0059】
ただし、室内リーダ5が妨害信号を送信している間に、室外リーダ4及び室内リーダ5が認証媒体3a、3bから応答信号を受信している場合には、室外リーダ4又は制御ユニット6が、上記した実施形態と同様に、室外リーダ4が受信した応答信号の第1受信強度F1と室内リーダ5が受信した応答信号の第2受信強度F2とを比較し、その比較結果に基づいて認証媒体3a、3bが室外側にあるか室内側にあるかを判定する。
【0060】
なお、室外リーダ4及び室内リーダ5は、応答要求信号の送信側を識別するためにそれぞれ異なる送信元識別情報を応答要求信号に付加して送信してもよい。そして、認証媒体3a、3bが送信元識別情報の認識結果を応答信号に付加して送信する。これにより、上記のように応答要求信号を切り換えて送信する場合に、認証媒体3a、3bからの応答信号が室外リーダ4及び室内リーダ5の何れの応答要求信号への応答であるかを判断して、応答信号の受信タイミングを正確に判断することができる。
【0061】
例えば、室外リーダ4及び室内リーダ5は、自身を特定するリーダ情報を送信元識別情報として応答要求信号に付加する。認証媒体3a、3bは、リーダ情報が付加された応答要求信号を受信すると、リーダ情報に基づいて応答要求信号の送信元が室外リーダ4及び室内リーダ5の何れかを認識し、その認識結果、例えば、リーダ情報を応答信号に付加して送信する。室外リーダ4及び室内リーダ5が送信した応答要求信号に対する所定の応答期間内に、認証媒体3a、3bから応答信号を受信すると、室外リーダ4及び室内リーダ5あるいは制御ユニット6の認証部12は、応答信号のリーダ情報に基づいて、室外リーダ4及び室内リーダ5の何れの応答要求信号への応答であるかを判断して、応答信号の受信タイミングを正確に判断することができる。
【0062】
あるいは、室外リーダ4及び室内リーダ5は、各々で異なる暗号コードを送信元識別情報として応答要求信号に付加する。なお、コードは、室外リーダ4及び室内リーダ5に予め設定されてもよく、ランダムに生成されてもよい。認証媒体3a、3bは、暗号コードが付加された応答要求信号を受信すると、暗号コードと自身の識別情報を用いて暗号化し、結果を応答信号として送信する。室外リーダ4及び室内リーダ5が認証媒体3a、3bから応答信号を受信すると、室外リーダ4及び室内リーダ5あるいは制御ユニット6の認証部12は、応答信号を復号して、その復号結果(認識結果)のコードに基づいて、室外リーダ4及び室内リーダ5の何れの応答要求信号への応答であるかを判断して、応答信号の受信タイミングを正確に判断することができる。
【0063】
このような構成により、認証媒体3a、3bの位置によって、室外リーダ4や室内リーダ5の通信相手として適切か否かを判定することができ、その判定結果に基づいて扉の適切な制御(電気錠装置2の適切な施解錠や扉開閉装置31の適切な開閉)を行うことができる。そして、認証部12は、例えば、室外側に存在すると判定された認証媒体3a、3bから室外リーダ4で受信された応答信号を認証した場合には電気錠装置2の解錠又は扉開閉装置31の開扉を許可する一方、室内側に存在すると判定された認証媒体3a、3bから室外リーダ4で受信された応答信号を認証した場合には電気錠装置2の解錠又は扉開閉装置31の開扉を許可しない。
【0064】
また、更なる実施形態では、扉制御システム1、30は、図4図6に示すように、室外リーダ4及び室内リーダ5の両方に妨害装置4a及び5aを備えた構成において、室外リーダ4及び室内リーダ5は、それぞれ起動ボタン4b及び5bを備える。起動ボタン4b及び5bの何れか一方の操作によって、室外リーダ4及び室内リーダ5の両方が内蔵の電池(図示せず)から電力供給を受けて起動する。なお、室外リーダ4及び室内リーダ5は、起動から所定時間経過後に、起動停止又はスリープ状態になってよく、あるいは、起動ボタン4b及び5bの再操作や停止ボタン(図示せず)の操作によって、起動停止又はスリープ状態になってもよい。
【0065】
室外リーダ4及び室内リーダ5が起動ボタン4b又は5bの操作によって起動すると、起動ボタン4b又は5bを操作された側(操作側)の室外リーダ4又は室内リーダ5が応答要求信号の送信を開始する。即ち、起動ボタン4b及び5bは、応答要求信号の送信を開始するための開始部であり、開始部が起動ボタン4b及び5bの操作によって開始を指示されることにより、応答要求信号は、扉に対して操作側のみに送信される。なお、開始部は、起動ボタン4b及び5bに代えて応答要求信号の送信を開始する開始ボタンを備えてもよく、開始部は開始ボタンの操作によって開始を指示される。あるいは、開始部は、利用者を検知する赤外線センサ等の検知装置で構成されてもよく、開始部は検知装置の検知によって開始を指示される。
【0066】
また、室外リーダ4及び室内リーダ5が起動ボタン4b又は5bの操作によって起動すると、操作側とは反対側(非操作側)の室外リーダ4又は室内リーダ5が妨害信号の送信を開始する。即ち、妨害信号は、扉に対して非操作側のみに送信される。
【0067】
このような構成により、認証媒体3a又は3bを利用した扉操作(解錠操作又は開扉操作)を確実に可能にする一方、非操作側に認証媒体3a又は3bがある場合に、操作側で認証媒体3a又は3bを持たずに起動ボタン4b又は5bが操作されても、非操作側には妨害信号が送信される。そのため、非操作側において、認証媒体3a又は3bが室外リーダ4又は室内リーダ5から応答要求信号を受信することはなく、室外リーダ4又は室内リーダ5が認証媒体3a又は3bから応答信号を受信することもない。これにより、認証媒体3a又は3bを所持しない者による不正入室を抑制することができる。
【0068】
例えば、図5に示すように、認証媒体3bを所持する利用者の室内側への入室直後や、室内側での認証媒体3bの置き忘れ等により、室内側の室内リーダ5の近傍に認証媒体3bがある場合がある。この場合に、室外側の室外リーダ4の起動ボタン4bを操作すると、室外リーダ4は室外側の送信範囲R3に対して応答要求信号を送信し、室内リーダ5は室内側の送信範囲R4に対して妨害信号を送信する。そのため、室内側では、応答要求信号が漏洩した場合でも、妨害信号によって、正常な応答要求信号が送信範囲R4内の認証媒体3bに受信されることはなく、認証媒体3bによる扉の解錠又は開扉を抑制することができる。
【0069】
なお、送信範囲R4外にある認証媒体3bが応答要求信号に応じて応答信号を送信した場合でも、室外リーダ4又は制御ユニット6が、室外リーダ4が受信した応答信号の第1受信強度F1と室内リーダ5が受信した応答信号の第2受信強度F2とを比較し、その比較結果に基づいて認証媒体3bが室内側にあると判定する。この場合、制御ユニット6の制御部10は、電気錠制御部13や扉開閉制御部32等の扉制御部による扉の制御を行わないようにする。
【0070】
また、室外側において認証媒体3a又は3bを所持していれば、認証媒体3a又は3bが応答要求信号に対して識別情報を有する応答信号を室外リーダ4へ送信するので、扉を解錠又は開扉することが可能となる。一方、室外側において認証媒体3a又は3bを所持していないと、識別情報を有する応答信号を室外リーダ4へ送信できないので、扉を解錠又は開扉することができず、不正入室の抑制となる。
【0071】
また、応答要求信号は、所定の時間間隔毎に送信される所定の周期のパルスで構成され、妨害信号は、応答要求信号のパルスの所定の周期の一部を妨害するように生成されてもよい。このような構成により、必要最小限の構成で、妨害信号による効果を発揮することができる。
【0072】
また、応答要求信号や妨害信号の送信開始として、室外リーダ4及び室内リーダ5の起動ボタン4b及び5bを利用するので、構成を簡易化することができる。なお、扉制御システム1、30を利用しない間は、室外リーダ4及び室内リーダ5を起動せずに電力供給をしないので、省エネルギー化及び低コスト化を実現することもできる。
【0073】
なお、上記の実施形態と同様に、室外リーダ4又は室内リーダ5が応答要求信号を送信している間に亘って室内リーダ5又は室外リーダ4が妨害信号を送信するとよい。例えば、室外リーダ4又は室内リーダ5が応答要求信号を送信する直前(所定時間前)に室内リーダ5又は室外リーダ4が妨害信号の送信を開始し、室外リーダ4又は室内リーダ5が応答要求信号の送信を停止した後(所定時間後)に室内リーダ5又は室外リーダ4が妨害信号の送信を停止する。これにより、応答要求信号を送信する間は妨害信号による効果を常に発揮することができる。
【0074】
起動ボタン4b又は5bの操作側の室外リーダ4又は室内リーダ5が、認証媒体3a又は3bから応答信号を受信して、その応答信号の識別情報が認証部12で正当と認証された場合、電気錠制御部13は電気錠装置2を解錠制御し、又は扉開閉制御部32は扉開閉装置31を開扉制御する。このとき、室外リーダ4及び室内リーダ5は、電気錠装置2の解錠後又は扉開閉装置31の開扉後に、応答要求信号の送信及び妨害信号の送信を停止してよい。これにより、応答要求信号や妨害信号の送信を必要最小限に抑制することができる。
【0075】
また、第1実施形態では、認証部12が認証媒体3a又は3bの識別情報を認証したときに、電気錠制御部13が電気錠装置2を直接、制御して施解錠する電気錠システムとしての扉制御システム1の構成を説明したが、電気錠システムとしての扉制御システム1の構成はこれに限定されない。例えば、他の実施形態の電気錠システムとしての扉制御システム1は、電気錠装置2の解錠や施錠を操作するための解錠ボタンや施錠ボタンを扉付近に備え、認証部12が認証媒体3a又は3bの識別情報を認証した場合には解錠ボタンや施錠ボタンの操作を有効にし、それ以外の場合には解錠ボタンや施錠ボタンの操作を無効にするように構成してもよい。あるいは、電気錠システムとしての扉制御システム1は、扉を開けるための操作ハンドルを備えて、認証部12が認証媒体3a又は3bの識別情報を認証した場合のみ、操作ハンドルの操作を有効にするように構成してもよい。
【0076】
更に、第2実施形態では、認証部12が認証媒体3a又は3bの識別情報を認証したときに、扉開閉制御部32が扉開閉装置31を直接、制御して開扉や閉扉する自動ドアシステムとしての扉制御システム30の構成を説明したが、自動ドアシステムとしての扉制御システム30の構成はこれに限定されない。例えば、他の実施形態の自動ドアシステムとしての扉制御システム30は、扉開閉装置31の開扉や閉扉を操作するための開扉ボタンや閉扉ボタンを扉付近に備え、認証部12が認証媒体3a又は3bの識別情報を認証した場合には開扉ボタンや閉扉ボタンの操作を有効にし、それ以外の場合には開扉ボタンや閉扉ボタンの操作を無効にするように構成してもよい。
【0077】
なお、上記した実施形態では、室内リーダ5が、所定の通信信号として、室内側で応答要求信号に直接作用する妨害電波を生成して室内側に向けて送信する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、他の実施形態では、室内リーダ5は、室内側で応答要求信号に直接作用する所定の通信信号として、応答要求信号の信号パターンを同時間軸上で互いに消し合うキャンセル電波を生成して室内側に向けて送信してもよい。室内リーダ5がキャンセル電波を室内側に向けて送信すると、室外リーダ4から室内側に漏出した応答要求信号の漏出信号Sは、キャンセル電波によって打ち消されるので、妨害電波の場合と同様に、室内側の携帯器3bが漏出信号Sを正当な応答要求信号として受信することはなく、あるいは携帯器3bが漏出信号Sを受信しても正当な応答要求信号でないと判定するため、携帯器3bが漏出信号Sに応じて応答信号を送信することはない。
【0078】
本発明の扉制御システム1、30は、複数の扉のそれぞれに認証機能を有する制御ユニット6を設けて、認証媒体3a、3bを各扉に共通に使用して施解錠又は開閉できるように構成することもできる。また、本発明の扉制御システム1、30は、ホテルやオフィスビル等の商業施設又は公共施設の出入口や、集合住宅又は一般住宅のエントランスや玄関等だけでなく、病院、リクリエーション施設、店舗、ショッピングセンター、学校等、様々な建物に適用することが可能である。
【0079】
また、本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う扉制御システムもまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0080】
1、30 扉制御システム
2 電気錠装置
3a、3b 認証媒体
4 室外リーダ(第1読取装置)
5 室内リーダ(第2読取装置)
4a、5a 妨害装置
6 制御ユニット
10 制御部
11 記憶部
12 認証部
13 電気錠制御部(扉制御部)
14、33 認証情報
31 扉開閉装置
32 扉開閉制御部(扉制御部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6