IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブラザー工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-液体吐出装置 図1
  • 特開-液体吐出装置 図2
  • 特開-液体吐出装置 図3
  • 特開-液体吐出装置 図4
  • 特開-液体吐出装置 図5
  • 特開-液体吐出装置 図6
  • 特開-液体吐出装置 図7
  • 特開-液体吐出装置 図8
  • 特開-液体吐出装置 図9
  • 特開-液体吐出装置 図10
  • 特開-液体吐出装置 図11
  • 特開-液体吐出装置 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042717
(43)【公開日】2022-03-15
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20220308BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020148272
(22)【出願日】2020-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒金 覚
(72)【発明者】
【氏名】市川 翔平
(72)【発明者】
【氏名】木元 太一朗
(72)【発明者】
【氏名】荒井 裕介
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EB12
2C056EB29
2C056EB38
2C056EB45
2C056EB58
2C056EC12
2C056EC36
2C056FA04
2C056FA10
2C056HA27
2C056HA33
(57)【要約】
【課題】記録媒体に着弾した液体がヘッドに対して搬送方向の下流側に配置されたローラに付着する問題を抑制する。
【解決手段】プリンタのCPUは、走査領域R(n)に対する吐出量と走査領域R(n)からローラ51aまでの搬送機構50による用紙Pの搬送時間とに基づいて所定時間を決定し、走査動作(n)から所定時間が経過した後、搬送処理を実行する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルを有するヘッドと、
搬送方向に記録媒体を搬送する搬送機構であって、前記ヘッドに対して前記搬送方向の下流側に配置されたローラを有する搬送機構と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
記録媒体の記録領域に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる、記録処理と、
前記記録処理から所定時間が経過したか否かを判断する、第1判断処理と、
前記第1判断処理において前記所定時間が経過したと判断された場合に、前記搬送機構により前記搬送方向に記録媒体を搬送させる、搬送処理と、を実行し、
さらに、前記第1判断処理の前に、前記記録領域に対する前記複数のノズルからの液体の吐出量と、前記記録領域から前記ローラまでの前記搬送機構による記録媒体の搬送時間とに基づいて前記所定時間を決定する、所定時間決定処理を実行することを特徴とする、液体吐出装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記吐出量が閾値を超えるか否かを判断する、第2判断処理をさらに実行し、
前記第2判断処理において前記吐出量が閾値を超えると判断された場合に、前記所定時間決定処理及び前記第1判断処理を実行することを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記閾値は、前記記録領域に対して前記複数のノズルから吐出される液体の含有成分に応じて異なることを特徴とする、請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記所定時間決定処理において、前記記録領域に対して前記複数のノズルから吐出される液体の含有成分に基づいて、前記所定時間を決定することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記記録領域は、記録媒体の一部の領域であって、前記ヘッドにおける前記複数のノズルが開口したノズル面と平行でかつ前記搬送方向と直交する主走査方向に延びる領域であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記記録領域は、記録媒体の一部の領域であって、前記ヘッドにおける前記複数のノズルが開口したノズル面と平行でかつ前記搬送方向と直交する主走査方向に延びる領域のうち、当該記録媒体が前記搬送方向に搬送されるときに前記ノズル面と直交する直交方向に前記ローラと対向する部分であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記ローラは、それぞれの記録媒体との接点が前記ヘッドにおける前記複数のノズルが開口したノズル面と直交する直交方向において互いに異なる位置にある、第1ローラ及び第2ローラを含み、
前記制御部は、前記所定時間決定処理において、前記第1ローラ及び前記第2ローラのそれぞれに対応する前記所定時間を、前記接点の前記直交方向の位置に基づいて決定することを特徴とする、請求項6に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記ローラは、材質が互いに異なる第1ローラ及び第2ローラを含み、
前記制御部は、前記所定時間決定処理において、前記第1ローラ及び前記第2ローラのそれぞれに対応する前記所定時間を、前記材質に基づいて決定することを特徴とする、請求項6に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記ローラは、それぞれの記録媒体との接点が前記ヘッドにおける前記複数のノズルが開口したノズル面と直交する直交方向において互いに異なる位置にある、第1ローラ及び第2ローラを含み、
前記記録領域は、記録媒体の一部の領域であって、前記ヘッドにおける前記複数のノズルが開口したノズル面と平行でかつ前記搬送方向と直交する主走査方向に延びる領域のうち、当該記録媒体が前記搬送方向に搬送されるときに前記ヘッドにおける前記複数のノズルが開口したノズル面と直交する直交方向に前記第1ローラと対向する第1部分と、前記一部の領域のうち、当該記録媒体が前記搬送方向に搬送されるときに前記直交方向に前記第2ローラと対向する第2部分とを含み、
前記閾値は、第1閾値及び第2閾値を含み、
前記制御部は、前記第2判断処理において、前記第1部分に対する前記吐出量が前記第1閾値を超えること、及び、前記第2部分に対する前記吐出量が前記第2閾値を超えることの少なくとも一方が成立するか否かを判断し、
前記第1閾値及び前記第2閾値は、前記接点の前記直交方向の位置に応じて異なることを特徴とする、請求項2又は3に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記ローラは、材質が互いに異なる第1ローラ及び第2ローラを含み、
前記記録領域は、記録媒体の一部の領域であって、前記ヘッドにおける前記複数のノズルが開口したノズル面と平行でかつ前記搬送方向と直交する主走査方向に延びる領域のうち、当該記録媒体が前記搬送方向に搬送されるときに前記ヘッドにおける前記複数のノズルが開口したノズル面と直交する直交方向に前記第1ローラと対向する第1部分と、前記一部の領域のうち、当該記録媒体が前記搬送方向に搬送されるときに前記直交方向に前記第2ローラと対向する第2部分とを含み、
前記閾値は、第1閾値及び第2閾値を含み、
前記制御部は、前記第2判断処理において、前記第1部分に対する前記吐出量が前記第1閾値を超えること、及び、前記第2部分に対する前記吐出量が前記第2閾値を超えることの少なくとも一方が成立するか否かを判断し、
前記第1閾値及び前記第2閾値は、前記材質に応じて異なることを特徴とする、請求項2又は3に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記記録領域は、上流部分と、前記上流部分に対して前記搬送方向の下流側に位置する下流部分とに区分され、
前記制御部は、前記所定時間決定処理において、前記所定時間として、前記上流部分に対する前記吐出量と前記上流部分から前記ローラまでの前記搬送時間とに基づく第1所定時間と、前記下流部分に対する前記吐出量と前記下流部分から前記ローラまでの前記搬送時間とに基づく第2所定時間とを決定することを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
前記記録領域は、上流部分と、前記上流部分に対して前記搬送方向の下流側に位置する下流部分とに区分され、
前記制御部は、前記第2判断処理において、前記上流部分に対する前記吐出量及び前記下流部分に対する前記吐出量の少なくとも一方が前記閾値を超えるか否かを判断することを特徴とする、請求項2、3、9、10のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項13】
前記搬送機構は、前記ヘッドにおける前記複数のノズルが開口したノズル面と平行でかつ前記搬送方向と直交する主走査方向に並ぶ複数の前記ローラからそれぞれ構成される、複数のローラ群を有し、
前記制御部は、前記所定時間決定処理において、前記複数のローラ群毎に前記所定時間を決定することを特徴とする、請求項6に記載の液体吐出装置。
【請求項14】
前記搬送機構は、前記ヘッドにおける前記複数のノズルが開口したノズル面と平行でかつ前記搬送方向と直交する主走査方向に並ぶ複数の前記ローラからそれぞれ構成される、複数のローラ群を有し、
前記記録領域は、記録媒体の一部の領域であって、前記ヘッドにおける前記複数のノズルが開口したノズル面と平行でかつ前記搬送方向と直交する主走査方向に延びる領域のうち、当該記録媒体が前記搬送方向に搬送されるときに前記ヘッドにおける前記複数のノズルが開口したノズル面と直交する直交方向に前記複数のローラ群のそれぞれと対向する複数の部分を含み、
前記制御部は、前記第2判断処理において、前記複数の部分の少なくともいずれかにおいて前記吐出量が前記閾値を超えるか否かを判断することを特徴とする、請求項2、3、9、10、12のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項15】
前記制御部は、記録媒体の前記主走査方向の長さが所定長さ以上の場合に、前記所定時間決定処理において、前記複数のローラ群毎に前記所定時間を決定することを特徴とする、請求項13に記載の液体吐出装置。
【請求項16】
前記制御部は、記録媒体の前記主走査方向の長さが所定長さ以上の場合に、前記第2判断処理において、前記複数の領域の少なくともいずれかにおいて前記吐出量が前記閾値を超えるか否かを判断することを特徴とする、請求項14に記載の液体吐出装置。
【請求項17】
記録媒体は、前記記録領域に対して前記搬送方向の上流側にありかつ前記記録領域と隣接する隣接領域をさらに含み、
前記制御部は、
前記隣接領域の明度が前記記録領域の明度よりも高いか否かを判断する、第3判断処理をさらに実行し、
前記第3判断処理において前記隣接領域の明度が前記記録領域の明度よりも高いと判断された場合に、前記所定時間決定処理及び前記第1判断処理を実行することを特徴とする、請求項1~16のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項18】
記録媒体は、前記記録領域に対して前記搬送方向の上流側にありかつ前記記録領域と隣接する隣接領域をさらに含み、
前記制御部は、
前記隣接領域に対してシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色の液体が吐出されるか否かを判断する、第4判断処理をさらに実行し、
前記第4判断処理において前記隣接領域に対して前記4色の液体が吐出されないと判断された場合に、前記所定時間決定処理及び前記第1判断処理を実行することを特徴とする、請求項1~17のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項19】
前記搬送処理は、記録媒体を第1距離搬送する第1搬送処理と、記録媒体を前記第1距離よりも長い第2距離搬送する第2搬送処理とを含み、
前記制御部は、
前記記録処理である第1記録処理を実行した後、前記第1搬送処理を実行し、前記第1搬送処理の後、前記記録処理である第2記録処理を実行し、前記第2記録処理の後、前記第2搬送処理を実行する、というルーチンを繰り返し、
前記ルーチンにおける、前記第1記録処理の前記記録領域と、前記第2記録処理の前記記録領域とは、互いに重なる部分を有し、
前記ルーチンにおける前記第1記録処理の前記記録領域と、次の前記ルーチンにおける前記第1記録処理の前記記録領域とは、互いに重ならず、
前記ルーチンにおける、前記第2記録処理の後、前記第2搬送処理の前に、前記所定時間決定処理及び前記第1判断処理を実行することを特徴とする、請求項1~18のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドに対して搬送方向の下流側に配置されたローラを有する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の記録装置(液体吐出装置)は、ヘッドに対して副走査方向(搬送方向)の下流側に配置された排紙従動ローラ(ローラ)を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-096563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
排紙従動ローラは、ヘッドに対して搬送方向の下流側に配置されているため、記録媒体に着弾した液体がローラに付着する(ひいては、ローラに付着した液体が記録媒体に転写する)という問題が生じ得る。この点、特許文献1では、排紙従動ローラが外周に複数の歯を有する拍車を含むことで、上記問題をある程度は抑制できる。しかしながら、特に記録媒体に対する液体の吐出量が多い場合等には、上記問題を抑制できない。
【0005】
本発明の目的は、記録媒体に着弾した液体がヘッドに対して搬送方向の下流側に配置されたローラに付着する問題を抑制できる液体吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、複数のノズルを有するヘッドと、搬送方向に記録媒体を搬送する搬送機構であって、前記ヘッドに対して前記搬送方向の下流側に配置されたローラを有する搬送機構と、制御部と、を備え、前記制御部は、記録媒体の記録領域に対して前記複数のノズルから液体を吐出させる、記録処理と、前記記録処理から所定時間が経過したか否かを判断する、第1判断処理と、前記第1判断処理において前記所定時間が経過したと判断された場合に、前記搬送機構により前記搬送方向に記録媒体を搬送させる、搬送処理と、を実行し、さらに、前記第1判断処理の前に、前記記録領域に対する前記複数のノズルからの液体の吐出量と、前記記録領域から前記ローラまでの前記搬送機構による記録媒体の搬送時間とに基づいて前記所定時間を決定する、所定時間決定処理を実行することを特徴とする、液体吐出装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、記録領域に対する吐出量と記録領域からローラまでの搬送時間とに基づいて所定時間を決定し、記録処理から所定時間が経過した後に搬送処理を実行する。これにより、記録領域がローラに到達するまでに、記録領域に着弾した液体を乾燥させることができる。これにより、記録媒体に着弾した液体がローラに付着する問題を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態に係るプリンタの全体構成を示す平面図である。
図2図1に示されているヘッドの断面図である。
図3図1の矢印IIIの方向から見たプリンタの側面図である。
図4図1のプリンタの電気的構成を示すブロック図である。
図5図1のプリンタのCPUが実行するプログラムを示すフロー図である。
図6】本発明の第1実施形態における所定時間の決定手法を説明するための模式図である。
図7】第1搬送処理と第2搬送処理とが繰り返し実行される状況を示す模式図である。
図8】本発明の第2実施形態における所定時間の決定手法を説明するための模式図である。
図9】本発明の第3実施形態における図3に対応する側面図である。
図10】本発明の第5実施形態における所定時間の決定手法を説明するための模式図である。
図11】本発明の第6実施形態においてプリンタのCPUが実行するプログラムを示すフロー図である。
図12】本発明の第6実施形態における所定時間の決定手法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
先ず、図1図4を参照し、本発明の第1実施形態に係るプリンタ100の全体構成、及び、プリンタ100の各部の構成について説明する。
【0010】
プリンタ100は、図1に示すように、下面に複数のノズルNが形成されたヘッド10と、ヘッド10を保持するキャリッジ20と、キャリッジ20及びヘッド10を主走査方向(鉛直方向と直交する方向)に移動させる走査機構30と、用紙P(記録媒体)を下方から支持するプラテン40と、用紙Pを搬送方向(主走査方向及び鉛直方向と直交する方向)に搬送する搬送機構50と、制御装置90とを備えている。
【0011】
ノズルNは、主走査方向に並ぶ4つのノズル列Nc,Nm,Ny,Nkを構成している。各ノズル列Nc,Nm,Ny,Nkは、搬送方向に並ぶ複数のノズルNで構成されている。ノズル列Ncを構成するノズルNはシアンのインク、ノズル列Nmを構成するノズルNはマゼンタのインク、ノズル列Nyを構成するノズルNはイエローのインク、ノズル列Nkを構成するノズルNはブラックのインクを、それぞれ吐出する。
【0012】
走査機構30は、キャリッジ20を支持する一対のガイド31,32と、キャリッジ20に連結されたベルト33とを含む。ガイド31,32及びベルト33は、主走査方向に延びている。制御装置90の制御によりキャリッジモータ30m(図4参照)が駆動されると、ベルト33が走行し、ガイド31,32に沿ってキャリッジ20及びヘッド10が主走査方向に移動する。
【0013】
プラテン40は、キャリッジ20及びヘッド10の下方に配置されている。プラテン40の上面に、用紙Pが支持される。
【0014】
搬送機構50は、図1及び図3に示すように、ヘッド10に対して搬送方向の上流側に配置された上流ローラユニット50Xと、ヘッド10に対して搬送方向の下流側に配置された下流ローラユニット50Yとを有する。搬送方向において上流ローラユニット50Xと下流ローラユニット50Yとの間に、ヘッド10、キャリッジ20及びプラテン40が配置されている。
【0015】
上流ローラユニット50Xは、用紙Pの搬送経路の上側に配置されたローラ50aと、用紙Pの搬送経路の下側に配置されたローラ50bとを含む。ローラ50a,50bは、互いに周面が接触するように上下に配置されている。ローラ50a,50bは、共に主走査方向に長尺であり、それぞれ主走査方向に延びる軸50ax,50bxに回転可能に支持されている。
【0016】
下流ローラユニット50Yは、搬送方向に並ぶ第1ローラセット51、第2ローラセット52及び第3ローラセット53を含む。ローラセット51~53のうち、第1ローラセット51が最も搬送方向上流側にあり、第3ローラセット53が最も搬送方向下流側にあり、第2ローラセット52が搬送方向において第1ローラセット51と第3ローラセット53との間にある。
【0017】
第1ローラセット51は、用紙Pの搬送経路の上側に配置された8つのローラ51aと、用紙Pの搬送経路の下側に配置された8つのローラ51bとを含む。ローラ51a及びローラ51bは、1つずつが組になって、互いに周面が接触するように上下に配置されている。即ち、第1ローラセット51は、1つのローラ51a及び1つのローラ51bからなる組を8つ有する。8つの組は、主走査方向に等間隔に並んでいる。8つのローラ51aは、主走査方向に並び、かつ、主走査方向に延びる軸51axに回転可能に支持されている。8つのローラ51bは、主走査方向に並び、かつ、主走査方向に延びる軸51bxに回転可能に支持されている。
【0018】
第2ローラセット52は、用紙Pの搬送経路の上側に配置された5つのローラ52aを含む。5つのローラ52aは、主走査方向に並び、かつ、主走査方向に延びる軸52axに回転可能に支持されている。
【0019】
第3ローラセット53は、用紙Pの搬送経路の上側に配置された6つのローラ53aと、用紙Pの搬送経路の下側に配置された6つのローラ53bとを含む。ローラ53a及びローラ53bは、1つずつが組になって、互いに周面が接触するように上下に配置されている。即ち、第3ローラセット53は、1つのローラ53a及び1つのローラ53bからなる組を6つ有する。6つのローラ53aは、主走査方向に並び、かつ、主走査方向に延びる軸53axに回転可能に支持されている。6つのローラ53bは、主走査方向に並び、かつ、主走査方向に延びる軸53bxに回転可能に支持されている。
【0020】
第3ローラセット53の6つのローラ53aは、第1ローラセット51の8つのローラ51aのうちの6つと、それぞれ主走査方向において同じ位置にある。第2ローラセット52の5つのローラ52aは、第1ローラセット51及び第3ローラセット53のいずれのローラとも、主走査方向において異なる位置にある。
【0021】
制御装置90の制御により搬送モータ50m(図4参照)が駆動され、上流ローラユニット50X及び下流ローラユニット50Yのローラが用紙Pを挟持しつつ回転することで、用紙Pが搬送方向に搬送される。
【0022】
なお、上流ローラユニット50Xのローラ50a,50b及び下流ローラユニット50Yのローラ51b,53bは、外周面に突起が形成されていないゴムローラであるのに対し、下流ローラユニット50Yのローラ51a,52a,53aは、外周面に複数の突起が形成された拍車ローラである。ローラ51a,52a,53aが拍車ローラであることにより、用紙Pの表面に着弾したインクがローラ51a,52a,53aに付着し難くなっている。
【0023】
下流ローラユニット50Yのローラ51a,52a,53aが、本発明の「ローラ」に該当する。
【0024】
ヘッド10は、図2に示すように、流路ユニット12と、アクチュエータユニット13とを含む。
【0025】
流路ユニット12の下面に、複数のノズルN(図1参照)が形成されている。流路ユニット12の下面は、ヘッド10における複数のノズルNが開口したノズル面10xに該当する。鉛直方向は、ノズル面10xと直交する方向であり、本発明の「直交方向」に該当する。主走査方向及び搬送方向は、ノズル面10xと平行な方向である。
【0026】
流路ユニット12の内部には、インクタンク(図示略)に連通する共通流路12aと、ノズルN毎に個別の個別流路12bとが形成されている。個別流路12bは、共通流路12aの出口から圧力室12pを経てノズルNに至る流路である。流路ユニット12の上面には、複数の圧力室12pが開口している。
【0027】
アクチュエータユニット13は、流路ユニット12の上面に複数の圧力室12pを覆うように配置された金属製の振動板13aと、振動板13aの上面に配置された圧電層13bと、圧電層13bの上面に複数の圧力室12pのそれぞれと対向するように配置された複数の個別電極13cとを含む。
【0028】
振動板13a及び複数の個別電極13cは、ドライバIC14と電気的に接続されている。ドライバIC14は、振動板13aの電位をグランド電位に維持する一方、個別電極13cの電位を変化させる。具体的には、ドライバIC14は、制御装置90からの制御信号(波形信号FIRE及び選択信号SIN)に基づいて駆動信号を生成し、信号線14sを介して駆動信号を個別電極13cに供給する。これにより、個別電極13cの電位が所定の駆動電位(VDD)とグランド電位(0V)との間で変化する。このとき、振動板13a及び圧電層13bにおいて各個別電極13cと各圧力室12pとで挟まれた部分(アクチュエータ13x)が変形することにより、圧力室12pの容積が変化し、圧力室12p内のインクに圧力が付与され、ノズルNからインクが吐出される。アクチュエータ13xは、個別電極13c毎(即ち、ノズルN毎)に設けられており、当該個別電極13cに供給される電位に応じて独立して変形可能である。
【0029】
制御装置90は、図4に示すように、CPU(Central Processing Unit)91と、ROM(Read Only Memory)92と、RAM(Random Access Memory)93と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)94とを含む。このうち、CPU91及びASIC94が本発明の「制御部」に該当する。
【0030】
ROM92には、CPU91やASIC94が各種制御を行うためのプログラムやデータが格納されている。RAM93は、CPU91やASIC94がプログラムを実行する際に用いるデータ(画像データ等)を一時的に記憶する。制御装置90は、外部装置(パーソナルコンピュータ等)200と通信可能に接続されており、当該外部装置200やプリンタ100の入力部(プリンタ100の筐体の外面に設けられたスイッチやボタン)から入力されたデータに基づいて、CPU91やASIC94により記録処理及び搬送処理を実行する。
【0031】
ASIC94は、図4に示すように、出力回路94a及び転送回路94bを含む。
【0032】
出力回路94aは、波形信号FIRE及び選択信号SINを生成し、これら信号を記録周期毎に転送回路94bに出力する。記録周期は、用紙P上に形成される画像の解像度に対応する単位距離だけ用紙Pがヘッド10に対して相対移動するのに要する時間であり、1画素に対応する。
【0033】
波形信号FIREは、4つの波形データを直列化したシリアル信号である。4つの波形データは、それぞれ1記録周期におけるノズルNから吐出されるインクの液滴量が「ゼロ(吐出なし)」「小」「中」「大」に対応するものであり、パルス数が互いに異なる。
【0034】
選択信号SINは、上記4つの波形データの中から1つを選択するための選択データを含むシリアル信号であり、記録指令に含まれる画像データに基づいて、アクチュエータ13x毎、かつ、記録周期毎に生成される。
【0035】
転送回路94bは、出力回路94aから受信した波形信号FIRE及び選択信号SINをドライバIC14に転送する。転送回路94bは、上記各信号に対応するLVDS(Low Voltage Differential Signaling)ドライバを内蔵しており、各信号をパルス状の差動信号としてドライバIC14に転送する。
【0036】
ASIC94は、記録処理において、ドライバIC14を制御し、画素毎に、波形信号FIRE及び選択信号SINに基づいて駆動信号を生成させ、信号線14sを介して駆動信号を個別電極13cに供給させる。これにより、ASIC94は、画素毎に、複数のノズルNのそれぞれから、4種類の液滴量(ゼロ、小、中、大)の中から選択された液滴量のインクを用紙Pに向けて吐出させる。
【0037】
次いで、図5を参照し、CPU91が実行するプログラムについて説明する。当該プログラムは、制御装置90が外部装置200等から記録指令を受信した後、実行される。
【0038】
CPU91は、記録指令に基づき、ASIC94を介してドライバIC14、キャリッジモータ30m及び搬送モータ50m(図4参照)を駆動させ、キャリッジ20及びヘッド10を主走査方向に移動させながら用紙Pの走査領域R(図6参照)に対してノズルNからインクを吐出させる走査動作(記録処理)と、搬送機構50によって用紙Pを搬送方向に所定量搬送する搬送処理とを、交互に行わせる。これにより、用紙P上に、インクのドットが形成され、画像が記録される。
【0039】
各走査領域Rは、用紙Pの一部の領域であって、1回の走査動作に対応する、主走査方向に延びる矩形状の領域である。用紙P上に、複数の走査領域Rが搬送方向に並んでいる。本実施形態では、走査領域Rが、本発明の「記録領域」に該当する。
【0040】
CPU91は、先ず、図5に示すように、n=1とする(S1)。
【0041】
S1の後、CPU91は、n回目の走査動作(n)を実行する(S2)。S2では、上述のとおり、キャリッジ20及びヘッド10を主走査方向に移動させながら用紙Pの走査領域R(n)(図6参照)に対してノズルNからインクを吐出させる走査動作(記録処理)が実行される。
【0042】
S2の後、CPU91は、当該記録指令が示す画質モードが高画質モードであるか否かを判断する(S3)。画質モードは、通常画質モードと、高画質モードとを含む。
【0043】
通常画質モードでは、各搬送処理における用紙Pの搬送距離が一定であり、当該搬送距離は走査領域Rの搬送方向の長さと略同じである。
【0044】
高画質モードでは、各搬送処理における用紙Pの搬送距離が一定ではなく、図7に示すように、用紙Pを搬送方向に距離L1搬送する「第1搬送処理」と、用紙Pを搬送方向に距離L2搬送する「第2搬送処理」とが、交互に実行される。距離L2は、距離L1よりも長く、走査領域Rの搬送方向の長さと略同じである。距離L1及び距離L2は、それぞれ、本発明の「第1距離」「第2距離」に該当する。
【0045】
高画質モードにおいて、CPU91は、走査領域R1に対する走査動作(第1記録処理)を実行した後、第1搬送処理を実行し、第1搬送処理の後、走査領域R2に対する走査動作(第2記録処理)を実行し、第2記録処理の後、第2搬送処理を実行する、というルーチンを繰り返す。即ち、走査領域R2に対する走査動作の後に第2搬送処理を実行した後、CPU91は、さらに、走査領域R3に対する走査動作(第1記録処理)を実行し、その後第1搬送処理を実行し、第1搬送処理の後、走査領域R4に対する走査動作(第2記録処理)を実行し、その後第2搬送処理を実行する。走査領域R4に対する走査動作の後に第2搬送処理を実行した後、CPU91は、さらに、走査領域R5に対する走査動作(第1記録処理)を実行し、その後第1搬送処理を実行し、第1搬送処理の後、走査領域R6に対する走査動作(第2記録処理)を実行し、その後第2搬送処理を実行する。
【0046】
なお、図7では、理解を容易にするため、走査領域R1~R6を搬送方向と直交する方向にずらして示している。
【0047】
1つのルーチンにおける第1記録処理の記録領域(走査領域R)と第2記録処理の記録領域(走査領域R)とは互いに重なる部分を有する。例えば、走査領域R1と走査領域R2とは互いに重なる部分を有し、走査領域R3と走査領域R4とは互いに重なる部分を有し、走査領域R5と走査領域R6とは互いに重なる部分を有する。
【0048】
1つのルーチンにおける第1記録処理の記録領域(走査領域R)と次のルーチンにおける第1記録処理の記録領域(走査領域R)とは互いに重ならない。例えば、走査領域R1と走査領域R3とは互いに重ならず、走査領域R3と走査領域R5とは互いに重ならない。
【0049】
高画質モードであると判断された場合(S3:YES)、CPU91は、走査動作(n)の次に実行される搬送処理が第1搬送処理であるか否かを判断する(S4)。
【0050】
高画質モードでないと判断された場合(S3:NO)、又は、高画質モードであって次の搬送処理が第1搬送処理でない(即ち、第2搬送処理である)と判断された場合(S4:NO)、CPU91は、走査領域R(n)に対するノズルNからのインクの吐出量(以下、「走査領域R(n)に対する吐出量」という。)が閾値を超えているか否かを判断する(S5)。S5は、本発明の「第2判断処理」に該当する。
【0051】
S5において、CPU91は、先ず、記録指令に含まれる画像データに基づいて、走査領域R(n)に対する吐出量を算出し、さらに、ROM92に記憶されている閾値を読み出す。そしてCPU91は、算出された吐出量が、ROM92から読み出した閾値を超えているか否かを判断する。
【0052】
閾値は、インクの色に応じて異なる。インクの含有成分は、溶剤、着色剤(顔料系着色剤、染料系着色剤等)、樹脂、その他添加剤を含む。インクの色は、着色剤(顔料系着色剤、染料系着色剤等)によるものである。本実施形態のインクは、顔料系インクであり、色に応じて顔料の含有率が異なる。
【0053】
本実施形態では、明度が高いインクほど用紙P上で目立ち難い点に鑑みて、明度が高いインクほど、閾値を高くしている。例えば、イエローのインクはブラックのインクよりも明度が高いため、イエローのインクの閾値はブラックのインクの閾値よりも高い。
【0054】
また、本実施形態では、顔料の含有率が低いインクほどローラ51a,52a,53a(図1及び図3参照)に付着し難い点に鑑みて、顔料の含有率が低いインクほど、閾値を高くしている。例えば、シアンのインクはマゼンタのインクよりも顔料の含有率が低いため、シアンのインクの閾値はマゼンタのインクの閾値よりも高い。マゼンタのインクはブラックのインクよりも顔料の含有率が低いため、マゼンタのインクの閾値はブラックのインクの閾値よりも高い。
【0055】
S5において、CPU91は、走査領域R(n)に対する吐出量を、色毎に算出し、さらに、ROM92に記憶されている、色毎の閾値を読み出す。そしてCPU91は、算出された各色の吐出量が、ROM92から読み出した当該色に対応する閾値を超えているか否かを判断する。
【0056】
シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のうち少なくとも1色について、吐出量が閾値を超えると判断された場合(S5:YES)、CPU91は、記録指令に含まれる画像データに基づいて、隣接領域の明度が走査領域R(n)の明度よりも高いか否かを判断する(S6)。S6は、本発明の「第3判断処理」に該当する。隣接領域とは、走査領域R(n)に対して搬送方向の上流側にありかつ走査領域R(n)と隣接する領域をいう。
【0057】
n≠x(x:用紙Pに対する最終の走査動作)の場合、走査領域R(n+1)が、隣接領域に該当する。走査領域R(n+1)は、n+1回目の走査動作(n+1)においてインクが吐出される用紙Pの領域であり、走査領域R(n)に対して搬送方向の上流側にありかつ走査領域R(n)と隣接する領域である(図6参照)。
【0058】
n=xの場合、走査領域R(n)に対して搬送方向の上流側にありかつ走査領域R(n)と隣接する余白領域が、隣接領域に該当する。
【0059】
隣接領域の明度は、n≠xの場合は当該領域に対する記録処理後の明度をいい、n=xの場合は用紙Pの色に基づく明度をいう。
【0060】
隣接領域の明度が走査領域R(n)の明度よりも高いと判断された場合(S6:YES)、CPU91は、記録指令に含まれる画像データに基づいて、隣接領域に対してシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のインクが吐出されるか否かを判断する(S7)。S7は、本発明の「第4判断処理」に該当する。例えば、隣接領域に人物画像が記録される場合、4色のインクが吐出され得る。
【0061】
隣接領域に対して4色のインクが吐出されないと判断された場合(S7:NO)、CPU91は、走査領域R(n)に対する吐出量と、走査領域R(n)からローラ51a(ローラ51a,52a,53aのうち、搬送方向において走査領域R(n)に最も近いローラ51a)までの搬送機構50による用紙Pの搬送時間とに基づいて、所定時間を決定する(S8)。S8は、本発明の「所定時間決定処理」に該当する。例えば、CPU91は、走査領域R(n)に対する吐出量が多いほど、所定時間を長くし、また、走査領域R(n)からローラ51aまでの搬送時間が短いほど、所定時間を長くする。
【0062】
走査領域R(n)からローラ51aまでの搬送時間は、走査領域R(n)からローラ51aまでの搬送方向の距離D(図6参照)と、搬送機構50による用紙Pの搬送速度とに基づいて、算出される。
【0063】
走査領域R(n)に対する吐出量は、S5と同様、記録指令に含まれる画像データに基づいて、色毎に算出される。S8において、CPU91は、走査領域R(n)に対する各色の吐出量と、上記搬送時間とに基づいて、所定時間を決定する。例えば、CPU91は、走査領域R(n)に対する各色の吐出量と上記搬送時間とに基づいて決定された仮決定時間のうち、最も長い仮決定時間を所定時間とする。
【0064】
即ち、S8において、CPU91は、インクの色(含有成分の1つである着色剤)に基づいて、所定時間を決定する。具体的には、明度が高いインクほど用紙P上で目立ち難い点に鑑みて、明度が高いインクほど、上記仮決定時間を短くする。例えば、イエローのインクはブラックのインクよりも明度が高いため、イエローのインクに関する仮決定時間はブラックのインクに関する仮決定時間よりも短い。また、顔料の含有率が低いインクほどローラ51a,52a,53a(図1及び図3参照)に付着し難い点に鑑みて、顔料の含有率が低いインクほど、仮決定時間を短くする。例えば、シアンのインクはマゼンタのインクよりも顔料の含有率が低いため、シアンのインクに関する仮決定時間はマゼンタのインクに関する仮決定時間よりも短い。マゼンタのインクはブラックのインクよりも顔料の含有率が低いため、マゼンタのインクに関する仮決定時間はブラックのインクに関する仮決定時間よりも短い。
【0065】
S8の後、CPU91は、走査動作(n)の終了時点から、所定時間が経過したか否かを判断する(S9)。所定時間が経過していないと判断された場合(S9:NO)、CPU91は、S9の処理を繰り返す。
【0066】
なお、走査動作(n)の終了時点から、所定時間が経過するまでの間、CPU91は、ドライバIC14を駆動させ、ノズルNからインクを吐出させることなくノズルNに形成されたメニスカスを振動させる、不吐出フラッシングを行う。これにより、走査動作(n)の終了時点から所定時間が経過するまでの間に、ノズルN内のインクの増粘が進行する問題を抑制できる。
【0067】
所定時間が経過したと判断された場合(S9:YES)、CPU91は、n=xか否かを判断する(S10)。
【0068】
n=xでない場合(S10:NO)、CPU91は、n=n+1として(S11)、搬送処理(搬送機構50によって用紙Pを搬送方向に所定量搬送する処理)を実行し(S12)、処理をS2に戻す。
【0069】
n=xである場合(S10:YES)、CPU91は、排紙処理を実行し(S13)、当該プログラムを終了する。S13において、CPU91は、第3ローラセット53に対して搬送方向の下流側にある排紙部(図示略)まで、搬送機構50によって用紙Pを搬送方向に搬送する処理をいう。
【0070】
以上に述べたように、本実施形態によれば、CPU91は、走査領域R(n)に対する吐出量と走査領域R(n)からローラ51aまでの搬送機構50による用紙Pの搬送時間とに基づいて所定時間を決定し(S8)、走査動作(n)から所定時間が経過した後(S9:YES)、搬送処理(S12)を実行する。これにより、走査領域R(n)がローラ51a,52a,53aに到達するまでに、走査領域R(n)に着弾したインクを乾燥させることができる。これにより、用紙Pの走査領域R(n)に着弾したインクがローラ51a,52a,53aに付着する問題を抑制できる。
【0071】
CPU91は、走査領域R(n)に対する吐出量が閾値を超えると判断された場合に(S5:YES)、所定時間決定処理(S8)及び第1判断処理(S9)を実行する。走査領域R(n)に対する吐出量が閾値を超える場合は、走査領域R(n)に着弾したインクが乾燥するまでに時間を要する。そこで、この場合は所定時間を設けることで、走査領域R(n)に着弾したインクがローラ51a,52a,53aに付着する問題を抑制できる。一方、走査領域R(n)に対する吐出量が閾値以下の場合は、走査領域R(n)用紙に着弾したインクが乾燥するまでにさほど時間がかからない。そこで、この場合は所定時間を設けないことで、記録速度の低下を抑制できる。
【0072】
閾値は、インクの含有成分(本実施形態では、インクの色の要因となる着色剤)に応じて異なる。これは、インクが溶剤、着色剤、樹脂、添加剤等から構成されており、これら各成分の種類や割合に応じて、用紙P上でのインクの目立ち易さや、ローラ51a,52a,53aへのインクの付着し易さが異なる点に鑑みたものである。本実施形態によれば、インクの含有成分に応じて閾値を異ならせることで、所定時間を設けるか否かを精度よく判断できる。ひいては、不要に所定時間を設けず、記録速度の低下を抑制できる。
【0073】
CPU91は、インクの含有成分(本実施形態では、インクの色の要因となる着色剤)に基づいて、所定時間を決定する(S8)。これは、上述のとおり、インクが溶剤、着色剤、樹脂、添加剤等から構成されており、これら各成分の種類や割合に応じて、用紙P上でのインクの目立ち易さや、ローラ51a,52a,53aへのインクの付着し易さが異なる点に鑑みたものである。本実施形態によれば、S8において、走査領域R(n)に対する吐出量と走査領域R(n)からローラ51a,52a,53aまでの搬送機構50による用紙Pの搬送時間だけでなく、インクの含有成分に基づいて所定時間を決定することで、所定時間をより精度よく決定できる。ひいては、不要に所定時間を長くせず、記録速度の低下を抑制できる。
【0074】
CPU91は、主走査方向に延びる走査領域R(n)を記録領域として、S5~S9の処理を実行する。この場合、S5~S9の各処理における制御が容易である。
【0075】
CPU91は、隣接領域の明度が走査領域R(n)の明度よりも高いと判断された場合に(S6:YES)、所定時間決定処理(S8)及び第1判断処理(S9)を実行する。隣接領域の明度が走査領域R(n)の明度よりも高い場合は、ローラ51a,52a,53aに付着したインクが隣接領域に転写すると、転写したインクが目立ち易い。そこで、この場合は所定時間を設けることで、転写したインクが目立つ問題を抑制できる。一方、隣接領域の明度が走査領域R(n)の明度と同じ又は走査領域R(n)の明度よりも低い場合は、ローラ51a,52a,53aに付着したインクが隣接領域に転写しても、転写したインクが目立ち難い。そこで、この場合は所定時間を設けないことで、記録速度の低下を抑制できる。
【0076】
CPU91は、隣接領域に対してシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のインクが吐出されないと判断された場合に(S7:NO)、所定時間決定処理(S8)及び第1判断処理(S9)を実行する。隣接領域に4色のインクが吐出されない場合は、ローラ51a,52a,53aに付着したインクが隣接領域に転写すると、転写したインクが目立ち易い。そこで、この場合は所定時間を設けることで、転写したインクが目立つ問題を抑制できる。一方、隣接領域に4色のインクが吐出される場合は、ローラ51a,52a,53aに付着したインクが隣接領域に転写しても、転写したインクが目立ち難い。そこで、この場合は所定時間を設けないことで、記録速度の低下を抑制できる。
【0077】
CPU91は、高画質モードにおいて(S3:YES)、次が第1搬送処理でない(即ち、第2搬送処理である)と判断された場合に(S4:NO)、所定時間決定処理(S8)及び第1判断処理(S9)を実行する。つまり、この場合、S2で実行される走査動作(n)が、高画質モードの1つのルーチンの第2記録処理に該当し、S12で実行される搬送処理が、高画質モードの当該1つのルーチンの第2搬送処理に該当する。CPU91は、当該1つのルーチンにおける、第2記録処理(S2)の後、第2搬送処理(S12)の前に、所定時間決定処理(S8)及び第1判断処理(S9)を実行する。第1搬送処理の前に所定時間が設けられると、第1記録処理で吐出されたインクが乾燥し、第1記録処理と第2記録処理とで重ねて記録された画像(図7の走査領域R1と走査領域R2等参照)間で色味が変化してしまう。この点、本実施形態では、第2搬送処理の前に第1判断処理が実行され、所定時間が設けられても、上記のような色味が変化する問題を抑制できる。
【0078】
<第2実施形態>
続いて、図8を参照し、本発明の第2実施形態について説明する。
【0079】
第1実施形態(図6)では、走査領域R(n)を記録領域としてS5~S9の処理が実行されるが、本実施形態(図8)では、走査領域R(n)の一部(用紙Pが搬送方向に搬送されるときにローラ51a,52a,53aと鉛直方向に対向する部分)P1,P2,P3を記録領域としてS5~S9の処理が実行される。
【0080】
部分P1は、走査領域R(n)のうち、用紙Pが搬送方向に搬送されるときにローラ51aと鉛直方向に対向する部分である。部分P2は、走査領域R(n)のうち、用紙Pが搬送方向に搬送されるときにローラ51aと鉛直方向に対向する部分である。部分P3は、走査領域R(n)のうち、用紙Pが搬送方向に搬送されるときにローラ53aと鉛直方向に対向する部分である。
【0081】
図8では、複数のローラ51aのうち最も左側の1つのローラ51aに対応する部分P1、複数のローラ52aのうち最も左側の1つのローラ52aに対応する部分P2、及び、複数のローラ53aのうち最も左側の1つのローラ53aに対応する部分P3のみを示している。図8の例では、複数のローラ51aのうち最も左側の1つのローラ51aと、複数のローラ53aのうち最も左側の1つのローラ53aとの主走査方向の位置が一致するため、部分P1,P3が互いに同じになっている。
【0082】
S5において、CPU91は、部分P1~P3毎に、当該部分P1~P3に対する吐出量が閾値を超えているか否かを判断する。
【0083】
部分P1~P3の少なくとも1つにおいて、吐出量が閾値を超えると判断された場合(S5:YES)、CPU91は、部分P1~P3毎に、隣接領域の明度が部分P1~P3の明度よりも高いか否かを判断する(S6)。
【0084】
本実施形態において、隣接領域は、各部分P1~P3に対して搬送方向の上流側にありかつ各部分P1~P3と隣接する領域をいう。
【0085】
n≠x(x:用紙Pに対する最終の走査動作)の場合、走査領域R(n+1)のうち、用紙Pが搬送方向に搬送されるときにローラ51a,52a,53aと鉛直方向に対向する部分P1’,P2’,P3’が、隣接領域に該当する。
【0086】
n=xの場合、部分P1~P3に対して搬送方向の上流側にありかつ部分P1~P3と隣接する余白領域が、隣接領域に該当する。
【0087】
部分P1~P3に対する隣接領域の少なくとも1つが、対応する部分P1~P3の明度よりも明度が高いと判断された場合(S6:YES)、CPU91は、記録指令に含まれる画像データに基づいて、隣接領域に対してシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のインクが吐出されるか否かを判断する(S7)。S7における隣接領域の定義は、S6における隣接領域の定義と同じである。
【0088】
部分P1~P3に対する隣接領域の少なくともいずれかに対して4色のインクが吐出されないと判断された場合(S7:NO)、CPU91は、各部分P1~P3に対する吐出量と、各部分P1~P3から当該部分に対応するローラ51a,52a,53aまでの搬送機構50による用紙Pの搬送時間とに基づいて、所定時間を決定する(S8)。
【0089】
即ち、本実施形態では、部分P1~P3毎に、所定時間が決定される。部分P1については、部分P1に対する吐出量と、部分P1からローラ51aまでの搬送機構50による用紙Pの搬送時間とに基づいて、所定時間が決定される。部分P2については、部分P2に対する吐出量と、部分P2からローラ52aまでの搬送機構50による用紙Pの搬送時間とに基づいて、所定時間が決定される。部分P3については、部分P3に対する吐出量と、部分P3からローラ53aまでの搬送機構50による用紙Pの搬送時間とに基づいて、所定時間が決定される。
【0090】
部分P1からローラ51aまでの搬送機構50による用紙Pの搬送時間は、部分P1からローラ51aまでの搬送方向の距離D1と、搬送機構50による用紙Pの搬送速度とに基づいて、算出される。部分P2からローラ52aまでの搬送機構50による用紙Pの搬送時間は、部分P2からローラ52aまでの搬送方向の距離D2と、搬送機構50による用紙Pの搬送速度とに基づいて、算出される。部分P3からローラ53aまでの搬送機構50による用紙Pの搬送時間は、部分P3からローラ53aまでの搬送方向の距離D3と、搬送機構50による用紙Pの搬送速度とに基づいて、算出される。
【0091】
S8の後、CPU91は、部分P1~P3毎に、当該部分P1~P3に対する記録処理の終了時点から、当該部分P1~P3について決定された所定時間が経過したか否かを判断する(S9)。CPU91は、全ての部分P1~P3について所定時間が経過したと判断された場合(S9:YES)、S10に処理を進める。
【0092】
以上に述べたように、本実施形態によれば、走査領域R(n)のうちローラ51a,52a,53aに対応する部分P1,P2,P3を記録領域としてS5~S9の処理を実行することで、各処理をより精度よく実行できる。例えば、S5において部分P1~P3毎に吐出量が閾値を超えるか否かを判断することで、所定時間を設けるか否かを精度よく判断でき、ひいては、不要に所定時間を設けず、記録速度の低下を抑制できる。また、S8において所定時間をより精度よく決定できるため、不要に所定時間を長くせず、記録速度の低下を抑制できる。
【0093】
<第3実施形態>
続いて、図9を参照し、本発明の第3実施形態について説明する。
【0094】
第1実施形態のプリンタ100(図3参照)では、下流ローラユニット50Yのローラ51a,52a,53aが鉛直方向において互いに同じ位置にあるが、本実施形態のプリンタ300(図9参照)では、下流ローラユニット50Yのローラ51a,52a,53aのうち、ローラ52aが他のローラ51a,53aよりも距離Aだけ上方に位置する。
【0095】
即ち、本実施形態では、ローラ51a,53aの用紙Pとの接点と、ローラ52aの用紙Pとの接点とが、鉛直方向において互いに異なる位置にある。ローラ52aの用紙Pとの接点は、ローラ51a,53aの用紙Pとの接点よりも距離Aだけ上方に位置する。ローラ51a,53aが本発明の「第1ローラ」、ローラ52aが本発明の「第2ローラ」に該当する。
【0096】
本実施形態では、S5において、CPU91は、第2実施形態(図8参照)と同様、部分P1~P3毎に、当該部分P1~P3に対する吐出量が閾値を超えているか否かを判断する。部分P1,P3が本発明の「第1部分」、部分P2が本発明の「第2部分」に該当する。
【0097】
本実施形態では、さらに、S5で用いられる閾値を、ローラ51a,53aに対応する部分P1,P3と、ローラ52aに対応する部分P2とで、異ならせている。即ち、S5で用いられる閾値を、ローラ51a,52a,53aの用紙Pとの接点の鉛直方向の位置に応じて、異ならせている。具体的には、接点の鉛直方向の位置が低いほど、ローラ51a,52a,53aにインクが付着し易い点に鑑みて、接点の鉛直方向の位置が低いほど、閾値を低くしている。したがって、ローラ51a,53aに対応する部分P1,P3の閾値(第1閾値)は、ローラ52aに対応する部分P2の閾値(第2閾値)よりも低い。閾値は、第1閾値及び第2閾値を含む。
【0098】
そしてCPU91は、第2実施形態(図8参照)と同様、部分P1~P3の少なくとも1つにおいて、吐出量が閾値を超えると判断された場合(S5:YES)、処理をS6に進める。即ち、CPU91は、S5において、部分P1,P3(第1部分)に対する吐出量が第1閾値を超えること、及び、部分P2(第2部分)に対する吐出量が第2閾値を超えることの少なくとも一方が成立するか否かを判断する。
【0099】
S8において、CPU91は、第2実施形態(図8参照)と同様、部分P1~P3毎に、各部分P1~P3に対する吐出量と、各部分P1~P3から当該部分に対応するローラ51a,52a,53aまでの搬送機構50による用紙Pの搬送時間とに基づいて、所定時間を決定する。
【0100】
本実施形態では、さらに、S8において、部分P1~P3毎の所定時間を、対応するローラ51a,52a,53aの用紙Pとの接点の鉛直方向の位置に基づいて、決定する。具体的には、接点の鉛直方向の位置が低いほど、ローラ51a,52a,53aにインクが付着し易い点に鑑みて、接点の鉛直方向の位置が低いほど、所定時間を長くする。したがって、ローラ51a,53aに対応する部分P1,P3の所定時間は、ローラ52aに対応する部分P2の所定時間よりも長くなる。
【0101】
S8の後、CPU91は、部分P1~P3毎に、当該部分P1~P3に対する記録処理の終了時点から、当該部分P1~P3について決定された所定時間が経過したか否かを判断する(S9)。CPU91は、全ての部分P1~P3について所定時間が経過したと判断された場合(S9:YES)、S10に処理を進める。
【0102】
以上に述べたように、本実施形態によれば、CPU91は、各ローラ51a,52a,53aに対応する所定時間を、各ローラ51a,52a,53aの用紙Pとの接点の鉛直方向の位置に基づいて決定する(S8)。これは、上述のとおり、接点の鉛直方向の位置に応じて、ローラ51a,52a,53aへのインクの付着し易さが異なる点に鑑みたものである。本実施形態によれば、S8において、走査領域R(n)に対する吐出量と走査領域R(n)からローラ51a,52a,53aまでの搬送機構50による用紙Pの搬送時間だけでなく、ローラ51a,52a,53aの接点の直交方向の位置に基づいて所定時間を決定することで、所定時間をより精度よく決定できる。ひいては、不要に所定時間を長くせず、記録速度の低下を抑制できる。
【0103】
また、本実施形態によれば、閾値は、各ローラ51a,52a,53aの用紙Pとの接点の鉛直方向の位置に応じて異なる。これは、上述のとおり、接点の鉛直方向の位置に応じて、ローラ51a,52a,53aへのインクの付着し易さが異なる点に鑑みたものである。本実施形態によれば、ローラ51a,52a,53aの用紙Pとの接点の鉛直方向の位置に応じて閾値を異ならせることで、所定時間を設けるか否かを精度よく判断できる。ひいては、不要に所定時間を設けず、記録速度の低下を抑制できる。
【0104】
<第4実施形態>
続いて、本発明の第4実施形態について説明する。
【0105】
第1実施形態では、下流ローラユニット50Yのローラ51a,52a,53aの材質について考慮せずに処理が実行されるが、本実施形態では、下流ローラユニット50Yのローラ51a,52a,53aの材質を考慮して処理が実行される。
【0106】
本実施形態では、ローラ51a,53aが樹脂製であり、ローラ52aが金属製である。即ち、ローラ51a,53aとローラ52aとは、材質が互いに異なる。ローラ51a,53aが本発明の「第1ローラ」、ローラ52aが本発明の「第2ローラ」に該当する。
【0107】
本実施形態では、S5において、CPU91は、第2実施形態(図8参照)と同様、部分P1~P3毎に、当該部分P1~P3に対する吐出量が閾値を超えているか否かを判断する。部分P1,P3が本発明の「第1部分」、部分P2が本発明の「第2部分」に該当する。
【0108】
本実施形態では、さらに、S5で用いられる閾値を、ローラ51a,53aに対応する部分P1,P3と、ローラ52aに対応する部分P2とで、異ならせている。即ち、S5で用いられる閾値を、ローラ51a,52a,53a材質に応じて異ならせている。具体的には、樹脂製のローラは金属製のローラよりもインクが付着し易い点に鑑みて、樹脂製のローラ51a,53aに対応する部分P1,P3の閾値(第1閾値)を、金属製のローラ52aに対応する部分P2の閾値(第2閾値)よりも低くしている。したがって、ローラ51a,53aに対応する部分P1,P3の閾値(第1閾値)は、ローラ52aに対応する部分P2の閾値(第2閾値)よりも低い。閾値は、第1閾値及び第2閾値を含む。
【0109】
そしてCPU91は、第2実施形態(図8参照)と同様、部分P1~P3の少なくとも1つにおいて、吐出量が閾値を超えると判断された場合(S5:YES)、処理をS6に進める。即ち、CPU91は、S5において、部分P1,P3(第1部分)に対する吐出量が第1閾値を超えること、及び、部分P2(第2部分)に対する吐出量が第2閾値を超えることの少なくとも一方が成立するか否かを判断する。
【0110】
S8において、CPU91は、第2実施形態(図8参照)と同様、部分P1~P3毎に、各部分P1~P3に対する吐出量と、各部分P1~P3から当該部分に対応するローラ51a,52a,53aまでの搬送機構50による用紙Pの搬送時間とに基づいて、所定時間を決定する。
【0111】
本実施形態では、さらに、S8において、部分P1~P3毎の所定時間を、対応するローラ51a,52a,53aの材質に基づいて、決定する。具体的には、樹脂製のローラは金属製のローラよりもインクが付着し易い点に鑑みて、樹脂製のローラ51a,53aに対応する部分P1,P3の所定時間を、金属製のローラ52aに対応する部分P2の所定時間よりも長くする。
【0112】
S8の後、CPU91は、部分P1~P3毎に、当該部分P1~P3に対する記録処理の終了時点から、当該部分P1~P3について決定された所定時間が経過したか否かを判断する(S9)。CPU91は、全ての部分P1~P3について所定時間が経過したと判断された場合(S9:YES)、S10に処理を進める。
【0113】
以上に述べたように、本実施形態によれば、CPU91は、各ローラ51a,52a,53aに対応する所定時間を、各ローラ51a,52a,53aの材質に基づいて決定する(S8)。これは、上述のとおり、ローラの材質に応じて、ローラ51a,52a,53aへのインクの付着し易さが異なる点に鑑みたものである。本実施形態によれば、S8において、走査領域R(n)に対する吐出量と走査領域R(n)からローラ51a,52a,53aまでの搬送機構50による用紙Pの搬送時間だけでなく、ローラ51a,52a,53aの材質に基づいて所定時間を決定することで、所定時間をより精度よく決定できる。ひいては、不要に所定時間を長くせず、記録速度の低下を抑制できる。
【0114】
また、本実施形態によれば、閾値は、各ローラ51a,52a,53aの材質に応じて異なる。これは、上述のとおり、ローラ51a,52a,53aの材質に応じて、ローラ51a,52a,53aへのインクの付着し易さが異なる点に鑑みたものである。本実施形態によれば、ローラ51a,52a,53aの材質に応じて閾値を異ならせることで、所定時間を設けるか否かを精度よく判断できる。ひいては、不要に所定時間を設けず、記録速度の低下を抑制できる。
【0115】
<第5実施形態>
続いて、図10を参照し、本発明の第5実施形態について説明する。
【0116】
第1実施形態(図6)では、走査領域R(n)を記録領域としてS5~S9の処理が実行されるが、本実施形態(図10)では、走査領域R(n)の一部(用紙Pが搬送方向に搬送されるときにローラ51a,52a,53aと鉛直方向に対向する部分を、さらに区分した上流部分P1a及び下流部分P1b)を記録領域としてS5~S9の処理が実行される。なお、図10では、最も左側の1つのローラ51aに対応する部分P1と、これを区分した上流部分P1a及び下流部分P1bのみを示している。下流部分P1bは、上流部分P1aに対して搬送方向の下流側に位置する。
【0117】
S5において、CPU91は、部分P1a,P1b毎に、当該部分P1a,P1bに対する吐出量が閾値を超えているか否かを判断する。上流部分P1aに対する吐出量及び下流部分P1bに対する吐出量の少なくとも一方が閾値を超えると判断された場合(S5:YES)、CPU91は、処理をS6に進める。
【0118】
S8において、CPU91は、各部分P1a,P1bに対する吐出量と、各部分P1a,P1bから当該部分に対応するローラ51a,52a,53aまでの搬送機構50による用紙Pの搬送時間とに基づいて、所定時間を決定する。
【0119】
即ち、本実施形態では、部分P1a,P1b毎に、所定時間が決定される。例えば、上流部分P1aについては、上流部分P1aに対する吐出量と、上流部分P1aからローラ51aまでの搬送機構50による用紙Pの搬送時間とに基づいて、所定時間が決定される。下流部分P1bについては、下流部分P1bに対する吐出量と、下流部分P1bからローラ51aまでの搬送機構50による用紙Pの搬送時間とに基づいて、所定時間が決定される。上流部分P1aについて決定される所定時間を「第1所定時間」、下流部分P1aについて決定される所定時間を「第2所定時間」という。
【0120】
上流部分P1aからローラ51aまでの搬送機構50による用紙Pの搬送時間は、上流部分P1aからローラ51aまでの搬送方向の距離D1aと、搬送機構50による用紙Pの搬送速度とに基づいて、算出される。下流部分P1bからローラ51aまでの搬送機構50による用紙Pの搬送時間は、下流部分P1bからローラ51aまでの搬送方向の距離D1bと、搬送機構50による用紙Pの搬送速度とに基づいて、算出される。
【0121】
ローラ52a,53aに対応する上流部分及び下流部分についても同様である。
【0122】
S8の後、CPU91は、部分P1a,P1b毎に、当該部分P1a,P1bに対する記録処理の終了時点から、当該部分P1a,P1bについて決定された所定時間が経過したか否かを判断する(S9)。CPU91は、全ての部分P1a,P1bについて所定時間が経過したと判断された場合(S9:YES)、S10に処理を進める。
【0123】
以上に述べたように、本実施形態によれば、搬送方向に区分された上流部分P1a及び下流部分P1bを記録領域としてS5~S9の処理を実行することで、各処理をより精度よく実行できる。例えば、S5において部分P1a,P1b毎に吐出量が閾値を超えるか否かを判断することで、所定時間を設けるか否かを精度よく判断でき、ひいては、不要に所定時間を設けず、記録速度の低下を抑制できる。また、S8において所定時間をより精度よく決定できるため、不要に所定時間を長くせず、記録速度の低下を抑制できる。
【0124】
<第6実施形態>
続いて、図11及び図12を参照し、本発明の第6実施形態について説明する。
【0125】
第1実施形態(図6)では、走査領域R(n)を記録領域としてS5~S9の処理が実行されるが、本実施形態(図12)では、走査領域R(n)の一部(用紙Pが搬送方向に搬送されるときに各ローラ51aと鉛直方向に対向する部分)P1を記録領域としてS5~S9の処理が実行される。
【0126】
さらに、本実施形態において、CPU91は、用紙Pの幅(主走査方向の長さ)が所定幅(長さ)以上の場合、主走査方向の中央に位置する4つのローラ51aを2つのローラ群G1,G2にグルーピングし、かつ、上記4つのローラ51aに対応する4つの部分P1を2つの群X1,X2にグルーピングして、群X1,X2毎にS5~S9の処理を実行する。搬送機構を構成する第1ローラセット51は、主走査方向に並ぶ2つのローラ51aからそれぞれ構成される、2つのローラ群G1,G2を有する。
【0127】
CPU91は、図5のプログラムを実行する前に、図11のプログラムを実行する。
【0128】
図11のプログラムにおいて、CPU91は、記録指令に基づき、用紙Pの幅が所定幅(例えば、レターサイズ、A4サイズ等の幅)以上か否かを判断する(S21)。用紙Pの幅が所定幅以上であると判断された場合(S21:YES)、CPU91は、図12に示すように、主走査方向の中央に位置する4つのローラ51aを2つのローラ群G1,G2にグルーピングし、かつ、上記4つのローラ51aに対応する4つの部分P1を2つの群X1,X2にグルーピングする(S22)。S22の後、又は、用紙Pの幅が所定幅以上でないと判断された場合(S21:NO)、CPU91は、当該プログラムを終了する。
【0129】
CPU91は、図11のプログラムにおいてローラ51a(部分P1)のグルーピング(S22)が実行されなかった場合、図5のプログラムのS5~S9において、部分P1毎に処理を実行する。
【0130】
具体的には、S5において、CPU91は、部分P1毎に、当該部分P1に対する吐出量が閾値を超えているか否かを判断する。部分P1の少なくとも1つにおいて、吐出量が閾値を超えると判断された場合(S5:YES)、CPU91は、部分P1毎に、隣接領域の明度が部分P1の明度よりも高いか否かを判断する(S6)。隣接領域は、各部分P1に対して搬送方向の上流側にありかつ各部分P1と隣接する領域をいう。n≠x(x:用紙Pに対する最終の走査動作)の場合、第2実施形態(図8)と同様の部分P1’が、隣接領域に該当する。n=xの場合、部分P1に対して搬送方向の上流側にありかつ部分P1と隣接する余白領域が、隣接領域に該当する。部分P1に対する隣接領域の少なくとも1つが、対応する部分P1の明度よりも明度が高いと判断された場合(S6:YES)、CPU91は、記録指令に含まれる画像データに基づいて、隣接領域に対してシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のインクが吐出されるか否かを判断する(S7)。部分P1に対する隣接領域の少なくともいずれかに対して4色のインクが吐出されないと判断された場合(S7:NO)、CPU91は、各部分P1に対する吐出量と、各部分P1からローラ51aまでの搬送機構50による用紙Pの搬送時間とに基づいて、所定時間を決定する(S8)。各部分P1からローラ51aまでの搬送機構50による用紙Pの搬送時間は、各部分P1からローラ51aまでの搬送方向の距離Dと、搬送機構50による用紙Pの搬送速度とに基づいて、算出される。このように、S8では、部分P1毎に所定時間が決定される。S8の後、CPU91は、部分P1毎に、当該部分P1に対する記録処理の終了時点から、当該部分P1について決定された所定時間が経過したか否かを判断する(S9)。CPU91は、全ての部分P1について所定時間が経過したと判断された場合(S9:YES)、S10に処理を進める。
【0131】
CPU91は、図11のプログラムにおいてローラ51a(部分P1)のグルーピング(S22)が実行された場合、図5のプログラムのS5~S9において、グルーピングされた部分P1については群X1,X2毎に処理を実行し、グルーピングされない部分P1については部分P1毎に処理を実行する。
【0132】
具体的には、S5において、CPU91は、グルーピングされない部分P1については部分P1毎に、グルーピングされた部分P1については群X1,X2毎に、当該部分P1又は群X1,X2に対する吐出量が閾値を超えているか否かを判断する。部分P1及び群X1,X2の少なくとも1つにおいて、吐出量が閾値を超えると判断された場合(S5:YES)、CPU91は、グルーピングされない部分P1については部分P1毎に、グルーピングされた部分P1については群X1,X2毎に、隣接領域の明度が部分P1の明度よりも高いか否かを判断する(S6)。隣接領域の定義は、上記と同様である。部分P1及び群X1,X2に対する隣接領域の少なくとも1つが、対応する部分P1又は群X1,X2の明度よりも明度が高いと判断された場合(S6:YES)、CPU91は、記録指令に含まれる画像データに基づいて、隣接領域に対してシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のインクが吐出されるか否かを判断する(S7)。部分P1及び群X1,X2に対する隣接領域の少なくともいずれかに対して4色のインクが吐出されないと判断された場合(S7:NO)、CPU91は、各部分P1又は群X1,X2に対する吐出量と、各部分P1又は群X1,X2からローラ51aまでの搬送機構50による用紙Pの搬送時間とに基づいて、所定時間を決定する(S8)。各部分P1又は群X1,X2からローラ51aまでの搬送機構50による用紙Pの搬送時間は、各部分P1又は群X1,X2からローラ51aまでの搬送方向の距離Dと、搬送機構50による用紙Pの搬送速度とに基づいて、算出される。このように、S8では、部分P1及び群X1,X2毎に所定時間が決定される。S8の後、CPU91は、部分P1及び群X1,X2毎に、当該部分P1又は群X1,X2に対する記録処理の終了時点から、当該部分P1又は群X1,X2について決定された所定時間が経過したか否かを判断する(S9)。CPU91は、全ての部分P1及び群X1,X2について所定時間が経過したと判断された場合(S9:YES)、S10に処理を進める。
【0133】
なお、本実施形態では、用紙Pの主走査方向端部は反り上がりが生じ易く、ローラ51aにインクが付着し易いため、主走査方向端部近傍のローラ51aについては、グルーピングの対象外とし、用紙Pの幅が所定幅以上の場合でも、グルーピングせずに各部分P1について判断を行うようにしている。
【0134】
以上に述べたように、本実施形態によれば、ローラ群G1,G2に対応する群X1,X2毎にS5~S9の処理を実行することで、各ローラ51aに対応する部分P1毎にS5~S9の処理を実行する場合に比べ、各処理を簡素化できる。これにより、制御回路の規模を小さくでき、制御回路に係るコストを低減できる。
【0135】
CPU91は、用紙Pの幅が所定幅以上の場合に、ローラ群G1,G2に対応する群X1,X2毎にS5~S9の処理を実行する。用紙Pの幅が所定幅以上の場合、用紙Pに接触するローラ51aの数が多くなり、ローラ51aに対応する部分P1の数も多くなるため、S5~S9の処理が煩雑化し得る。本実施形態では、このような場合にローラ群G1,G2に対応する群X1,X2毎にS5~S9の処理を実行することで、S5~S9の処理の煩雑化を効果的に抑制できる。
【0136】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0137】
例えば、上述の実施形態では、インクの色(インクの含有成分である着色剤)に応じて閾値を異ならせているが、これに限定されず、4色全てにおいて同じ閾値としてもよい。
【0138】
上述の実施形態では、インクの色(インクの含有成分である着色剤)に基づいて所定時間を決定するが、これに限定されず、4色全てにおいて同じ基準で所定時間を決定してもよい。
【0139】
上述の実施形態では、第1判断処理において、「記録処理の終了時点」から所定時間が経過したか否かを判断するが、これに限定されず、記録処理の任意の時点(例えば、記録処理の開始時点)から所定時間が経過したか否かを判断してよい。
【0140】
上述の実施形態では、記録領域からローラまでの搬送距離として、記録領域とローラとの中心間距離(図6の距離D、図8の距離D1~D3、図10の距離D1a,D1b、図12の距離D)を例示したが、これに限定されない。例えば、記録領域の搬送方向上流端からローラの搬送方向上流端までの距離、記録領域の搬送方向下流端からローラの搬送方向下流端までの距離、記録領域の搬送方向下流端からローラの搬送方向上流端までの距離、記録領域の搬送方向上流端からローラの搬送方向下流端までの距離等を、記録領域からローラまでの搬送距離としてもよい。
【0141】
第5実施形態(図10)では、部分P1を2つ部分P1a,P1bに区分しているが、これに限定されず、3以上の部分に区分してもよい。また、第5実施形態では、部分P1を上流部分P1aと下流部分P1bとに区分しているが、これに限定されず、走査領域R(n)を上流部分と下流部分とに区分してもよい。
【0142】
第6実施形態(図12)では、ローラ51aに対応する部分P1をグルーピングする例について説明したが、これに限定されず、他のローラ52a,53aに対応する部分をグルーピングしてもよい。また、第5実施形態では、主走査方向端部近傍のローラ51aをグルーピングの対象外としているが、これに限定されず、全てのローラ51aをグルーピングの対象としてもよい。
【0143】
本発明に係るローラは、拍車ローラに限定されず、外周面に突起が形成されていないローラであってもよい。
【0144】
ヘッドは、上述の実施形態ではシリアル式であるが、ライン式であってもよい。
【0145】
ノズルから吐出される液体は、インクに限定されず、インク以外の液体(例えば、インク中の成分を凝集又は析出させる処理液等)であってもよい。
【0146】
記録媒体は、用紙に限定されず、例えば、布、樹脂部材等であってもよい。
【0147】
本発明は、プリンタに限定されず、ファクシミリ、コピー機、複合機等にも適用可能である。また、本発明は、画像の記録以外の用途で使用される液体吐出装置(例えば、基板に導電性の液体を吐出して導電パターンを形成する液体吐出装置)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0148】
10 ヘッド
10x ノズル面
50 搬送機構
51a,52a,53a ローラ
91 CPU(制御部)
94 ASIC(制御部)
100;300 プリンタ(液体吐出装置)
G1,G2 ローラ群
L1 第1距離
L2 第2距離
N ノズル
P 用紙(記録媒体)
R 走査領域
P1a 上流部分
P1b 下流部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12