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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042727
(43)【公開日】2022-03-15
(54)【発明の名称】細胞移送装置、および細胞移送方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/10 20060101AFI20220308BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20220308BHJP
   C12M 1/26 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
A61F2/10
C12M1/00 A
C12M1/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020148287
(22)【出願日】2020-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(71)【出願人】
【識別番号】317006683
【氏名又は名称】地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】兒玉 賢洋
(72)【発明者】
【氏名】福田 淳二
(72)【発明者】
【氏名】景山 達斗
(72)【発明者】
【氏名】南茂 彩華
【テーマコード(参考)】
4B029
4C097
【Fターム(参考)】
4B029AA09
4B029BB11
4B029HA10
4C097AA22
4C097BB04
(57)【要約】
【課題】細胞を含む対象物の状況を移送過程で把握可能にした細胞移送装置、および細胞移送方法を提供する。
【解決手段】細胞を含む対象物CMを移送する細胞移送装置であって、対象物CMを経路上に導く通路11と、経路上の第1位置での対象物CMの存否を検知する第1センサー21と、経路上の第2位置での対象物CMの存否を検知する第2センサー22と、を備える。通路11は、対象物CMを生体に配置するための針状体であり、第1センサー21および第2センサー22は、針状体に配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞を含む対象物を移送する細胞移送装置であって、
前記対象物を経路上に導く通路と、
前記経路上の第1位置での前記対象物の存否を検知する第1センサーと、
前記経路上の第2位置での前記対象物の存否を検知する第2センサーと、を備える
細胞移送装置。
【請求項2】
前記通路は、前記対象物を生体に配置するための針状体であり、
前記第1センサーおよび前記第2センサーは、前記針状体に配置されている
請求項1に記載の細胞移送装置。
【請求項3】
前記通路は、前記対象物を生体に配置するための針状体であり、
前記第1センサーおよび前記第2センサーの少なくとも一方は、前記針状体における径方向の外側に配置されている
請求項1に記載の細胞移送装置。
【請求項4】
前記対象物は、毛包原基を含み、
前記第1位置と前記第2位置との間の距離は、前記対象物よりも大きい
請求項1から3のいずれか一項に記載の細胞移送装置。
【請求項5】
前記対象物は、毛包原基を含み、
前記第1位置と前記第2位置との間の距離は、前記対象物よりも小さい
請求項1から3のいずれか一項に記載の細胞移送装置。
【請求項6】
前記通路、前記第1センサー、および前記第2センサーが単一のユニットであり、
複数の前記ユニットを備え、
各通路の内部に同時に圧力を加える圧力印加部をさらに備える
請求項1から5のいずれか一項に記載の細胞移送装置。
【請求項7】
前記第1センサーおよび前記第2センサーの少なくとも一方は、前記通路の周方向に沿って前記対象物の存否を検知する
請求項1から6のいずれか一項に記載の細胞移送装置。
【請求項8】
前記第1センサーおよび前記第2センサーの少なくとも一方は、前記経路の延在方向に延びる螺旋上において前記対象物の存否を検知する
請求項1から6のいずれか一項に記載の細胞移送装置。
【請求項9】
前記対象物を保持するための先端である保持端を備えた内挿部材をさらに備え、
前記内挿部材は、前記保持端に前記対象物を保持した状態で前記通路の延在方向に沿って前記通路の内部を移動可能に構成されている
請求項1から8のいずれか一項に記載の細胞移送装置。
【請求項10】
前記第1センサーの検知結果と前記第2センサーの検知結果とを用いて前記対象物の状況を推定する推定部をさらに備える
請求項1から9のいずれか一項に記載の細胞移送装置。
【請求項11】
細胞を含む対象物を移送する細胞移送方法であって、
前記対象物を経路上に導く通路に前記対象物を通すこと、
前記対象物が通る経路上の第1位置での前記対象物の存否を検知すること、および、
前記経路上の第2位置での前記対象物の存否を検知すること、を含む
細胞移送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞を移送する細胞移送装置、および細胞移送装置を用いる細胞移送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体から採取された細胞を移送する技術は、従来から医療や美容などの様々な分野において注目されている。細胞を移送する技術の一例は、毛包の形成に寄与する細胞を精製して細胞を皮内に移植する技術に用いられる。
【0003】
毛包を形成可能とする細胞について近年では様々な研究が行われている(例えば、特許文献1から4を参照)。上皮系細胞と間葉系細胞との相互作用から形成される毛包原基を移植する技術は、毛髪の良好な再生を可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2017/073625号
【特許文献2】国際公開第2012/108069号
【特許文献3】特開2008-29331号公報
【特許文献4】国際公開第2019/064653号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
培養環境や加工環境などから細胞を次の環境に移送する技術は、細胞の生存率や細胞の活性度合いに大きな影響を及ぼす。細胞を含む対象物の位置や速度などの状況を移送過程で把握できることは、対象物の移送が正常に行われているか否かの判断精度を高め、ひいては、生存率や活性度合いが移送に起因して低下することを抑制可能にする。特に、毛包原基を1つずつ移送する毛髪再生において毛包原基の状況を移送過程で把握できることは、良好な再生を促して当該技術を広く普及させ得る。
【0006】
本発明の目的は、細胞を含む対象物の状況を移送過程で把握可能にした細胞移送装置、および細胞移送方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための細胞移送装置は、細胞を含む対象物を移送する細胞移送装置であって、前記対象物を経路上に導く通路と、前記経路上の第1位置での前記対象物の存否を検知する第1センサーと、前記経路上の第2位置での前記対象物の存否を検知する第2センサーと、を備える。
【0008】
上記課題を解決するための細胞移送方法は、細胞を含む対象物を移送する細胞移送方法であって、前記対象物を経路上に導く通路に前記対象物を通すこと、前記対象物が通る経路上の第1位置での前記対象物の存否を検知すること、および、前記経路上の第2位置での前記対象物の存否を検知すること、を含む。
【0009】
上記各構成によれば、対象物の経路上において、第1位置での対象物の存否、および、第2位置での対象物の存否が、各別のセンサーによって検知される。これにより、第1位置から第2位置への対象物の移動、あるいは、第2位置から第1位置への対象物の移動を把握することができる。さらに、第1位置に到達した対象物が第2位置に到達していないこと、あるいは、第2位置に到達した対象物が第1位置に到達していないことを把握することができる。すなわち、経路上を円滑に移動したか否かを、対象物の移送過程で把握することができる。
【0010】
上記細胞移送装置において、前記通路は、前記対象物を生体に配置するための針状体であり、前記第1センサーおよび前記第2センサーは、前記針状体に配置されてもよい。
上記構成によれば、対象物を生体に配置するための針状体に2つのセンサーが配置されるため、対象物が針状体の中を円滑に移動したか否かが、対象物を生体に配置する前に把握することができる。これにより、移送過程における対象物の状況に基づいて配置方法を変えることや配置そのものを止めることができる。結果として、配置後の細胞による作用のばらつきが移送に起因して生じることを抑制することができる。
【0011】
上記細胞移送装置において、前記通路は、前記対象物を生体に配置するための針状体であり、前記第1センサーおよび前記第2センサーの少なくとも一方は、前記針状体における径方向の外側に配置されてもよい。
【0012】
上記構成によれば、対象物を生体に配置するための針状体の外側に2つのセンサーが配置されるため、対象物の配置に特化した設計を針状体に適用することができる。
上記細胞移送装置において、前記対象物は、毛包原基を含み、前記第1位置と前記第2位置との間の距離は、前記対象物よりも大きくてもよい。
【0013】
上記構成によれば、毛包原基が第1位置から第2位置に移動したこと、また、毛包原基が第2位置から第1位置に移動したことを、より高い精度のもとで把握することができる。さらに、第1位置に到達した毛包原基が第2位置に到達していないこと、また、第2位置に到達した毛包原基が第1位置に到達していないことを、より高い精度のもとで把握することができる。
【0014】
上記細胞移送装置において、前記対象物は、毛包原基を含み、前記第1位置と前記第2位置との間の距離は、前記対象物よりも小さくてもよい。
上記構成によれば、対象物が経路上を移動するとき、第1センサーが対象物の存在を検知している期間に、第2センサーが対象物の存在を検知しはじめる。あるいは、第2センサーが対象物を検知している期間に、第1センサーが対象物の存在を検知しはじめる。一方、対象物よりも小さい塵や埃などの異物が経路上を移動するとき、第1センサーが異物の存在を検知し終えた後に、第2センサーが異物の存在を検知しはじめる。あるいは、第2センサーが異物の存在を検知し終えた後に、第1センサーが異物の存在を検知しはじめる。そのため、対象物の経路上に異物が混入しているか否かを把握することができる。
【0015】
上記細胞移送装置において、前記通路、前記第1センサー、および前記第2センサーが単一のユニットであり、複数の前記ユニットを備え、各通路の内部に同時に圧力を加える圧力印加部をさらに備えてもよい。
【0016】
上記構成によれば、複数の通路が同時に対象物を吸引する、あるいは複数の通路が同時に対象物を押し出すため、移送過程における対象物の状況把握と、移送効率の向上と、を両立することができる。
【0017】
上記細胞移送装置において、前記第1センサーおよび前記第2センサーの少なくとも一方は、前記通路の周方向に沿って前記対象物の存否を検知してもよい。
上記構成によれば、少なくとも一方のセンサーが通路の周方向において対象物を検知するため、対象物の検知漏れを抑制することができる。
【0018】
上記細胞移送装置において、前記第1センサーおよび前記第2センサーの少なくとも一方は、前記経路の延在方向に延びる螺旋上において前記対象物の存否を検知してもよい。
上記構成によれば、少なくとも一方のセンサーが螺旋上の範囲で対象物を検知するため、対象物の検知漏れを抑制することができる。
【0019】
上記細胞移送装置において、前記対象物を保持するための先端である保持端を備えた内挿部材をさらに備え、前記内挿部材は、前記保持端に前記対象物を保持した状態で前記通路の延在方向に沿って前記通路の内部を移動可能に構成されてもよい。
【0020】
上記構成によれば、対象物の移動が通路の延在方向に誘導されるから、対象物の移動する方向がばらつくことや、対象物の状況がばらつくことを抑制することができる。
上記細胞移送装置において、前記第1センサーの検知結果と前記第2センサーの検知結果とを用いて前記対象物の状況を推定する推定部をさらに備えてもよい。
【0021】
上記構成によれば、各センサーの検知結果に基づいて対象物の状況が推定されるため、検知結果の処理に要する負荷を軽減することや、移動過程における対象物の状況把握を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る細胞移送装置、および細胞移送方法によれば、対象物の状況を移送の過程で把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】細胞移送装置の第1実施形態における装置構成を示すブロック図。
図2】細胞移送装置の第1実施形態における細胞の移送過程を示す作用図。
図3】細胞移送装置の第1実施形態における細胞の移送過程を示す作用図。
図4】細胞移送装置の第1実施形態における細胞の移送過程を示す作用図。
図5】細胞移送装置の第2実施形態における装置構成を示すブロック図。
図6】細胞移送装置の第2実施形態における細胞の移送過程を示す作用図。
図7】細胞移送装置の第2実施形態における細胞の移送過程を示す作用図。
図8】第1変更例におけるセンサー構成を示す断面図。
図9】第2変更例におけるセンサー構成を示す断面図。
図10】第3変更例におけるセンサー構成を示す断面図。
図11】第4変更例におけるセンサー構成を示す断面図。
図12】第5変更例における細胞移送装置の構成を示すブロック図。
図13】第6変更例における細胞移送装置の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1実施形態)
以下、図1から図4を参照して細胞移送装置、および細胞移送方法の第1実施形態を説明する。まず、細胞を含む対象物の構成を説明し、次に、細胞移送装置の構成を説明し、そして、細胞移送方法を説明する。
【0025】
なお、細胞移送装置は、細胞を含む対象物を第1環境から第1環境と異なる第2環境に移送する。第1環境と第2環境とは、細胞の保存環境と細胞移送装置の内部環境、細胞移送装置の内部環境と細胞の培養環境、細胞の培養環境と細胞移送装置の内部環境、あるいは、細胞移送装置の内部環境と細胞の加工環境とでもよい。また、第1環境と第2環境とは、細胞の加工環境と細胞移送装置の内部環境、あるいは、細胞移送装置の内部環境と生体の組織とでもよい。生体の組織は、生体の皮内、生体の皮下、および臓器の少なくとも1つでもよい。「生体」には、生物の身体だけでなく、身体や組織を模した人工的な生体モデルが含まれる。細胞移送装置による移送は、細胞の保存、細胞の播種、細胞の培養、および細胞の移植の少なくとも1つの工程に用いられる。
【0026】
[対象物]
対象物は、1つの細胞、あるいは、複数の細胞から構成される細胞群を含んでもよい。対象物に含まれる細胞は、未分化の細胞であってもよいし、分化が完了した細胞であってもよいし、幹細胞性を有する細胞であってもよい。対象物に含まれる細胞群は、凝集された複数の細胞からなる集合体であってもよいし、細胞間結合により結合した複数の細胞からなる集合体であってもよいし、分散した複数の細胞から構成されてもよい。対象物に含まれる細胞群は、未分化の細胞と分化した細胞とから構成されてもよいし、幹細胞性を有する細胞を含んでもよい。
【0027】
対象物に含まれる細胞群は、スフェロイドである細胞塊、原基、組織、器官、オルガノイド、ミニ臓器でもよい。細胞群は、移植先に配置されることによって組織形成に作用してもよい。細胞群は、幹細胞性を有する細胞を含んでもよい。
【0028】
対象物に含まれる細胞群は、皮内、皮下、あるいは臓器に配置され、これによって、所望の効果を発揮する。例えば、対象物に含まれる細胞群は、皮内または皮下に配置され、発毛または育毛に寄与する。例えば、対象物に含まれる細胞群は、皮膚領域に配置され、皮膚における皺の解消や保湿状態の改善などの美容効果を発揮する。対象物に含まれる細胞群の一例は、毛包器官として機能する能力、毛包器官に分化する能力、毛包器官の形成を誘導もしくは促進する能力、あるいは、毛包における毛の形成を誘導もしくは促進する能力を有してもよい。対象物に含まれる細胞群は、色素細胞もしくは色素細胞に分化する幹細胞などのように、毛色の制御に寄与する細胞を含んでもよいし、血管系細胞を含んでもよい。
【0029】
対象物に含まれる細胞群のより具体的な一例は、原始的な器官原基でもよい。器官原基は、間葉系細胞と上皮系細胞とを含んでもよい。器官原基は、毛包器官に分化する毛包原基、肝臓の原基、腎臓の原基、膵臓の原基、神経系の原基細胞、および、血管系の原基細胞でもよい。器官原基を含む対象物は、器官原基の形成方法に応じて、例えば、原基としての形状や性能を補助するための核材料、ガイドワイヤー、および、夾雑物を含んでもよい。
【0030】
対象物に含まれる毛包原基は、毛乳頭などの間葉組織に由来する間葉系細胞と、バルジ領域や毛球基部などに位置する上皮組織に由来する上皮系細胞とを、所定の条件で混合培養することによって形成されてもよい。なお、間葉系細胞の由来、および上皮系細胞の由来は、毛包器官由来であってもよいし、毛包器官とは異なる器官由来であってもよいし、多能性幹細胞由来であってもよい。
【0031】
対象物に含まれる細胞群は、単一の構造体でもよいし、2以上の構造体でもよい。対象物に含まれる細胞群が2以上の構造体である場合、特定の細胞群について、生体内で存在している環境を模倣すること、生体機能を発現するための適切な細胞密度や培地条件、および、シグナル伝達物質の存在環境などを制御することが可能ともなる。
【0032】
対象物は、保護液を含んでもよい。保護液は、細胞の生存を阻害し難い液体であればよく、また、生体に注入された場合に生体に与える影響の低い液体でもよい。保護液は、生理食塩水、ワセリンや化粧水などの皮膚を保護する液体、これらの液体の混合物でもよい。保護液は、栄養成分などの添加成分を含んでいてもよい。保護液は、細胞を培養するための培地であってもよいし、培地から交換された液体であってもよい。対象物は、保護液を含む液状体でもよく、ゲル状体でもよく、低粘度の流体、あるいは、高粘度の流体でもよい。
【0033】
[細胞移送装置]
図1が示すように、細胞移送装置は、通路11、第1センサー21、および第2センサー22を備える。通路11は、細胞を含む対象物CMを経路上に導く。第1センサー21は、経路上の第1位置での対象物CMの存否を検知する。第2センサー22は、第1位置とは異なる経路上の第2位置での対象物CMの存否を検知する。
【0034】
対象物CMの経路は、対象物CMの移送において対象物CMが辿る予め定められた道である。通路11は、対象物CMの経路の少なくとも一部を区画する。第1位置は、対象物CMの経路上の位置であり、予め定められた位置である。第2位置は、対象物CMの経路上において第1位置とは異なる位置であり、予め定められた位置である。なお、図1では、第1センサー21の位置が第1位置であり、第2センサー22の位置が第2位置であり、第1位置と第2位置とが、通路11が延びる方向に沿って並ぶ例を示す。
【0035】
[通路]
通路11は、対象物CMが通る空間を内部に備えた筒状体でもよいし、対象物CMが通る空間を内部に備えた針状体でもよい。通路11を構成する材料は、金属でもよいし、樹脂でもよい。
【0036】
通路11が有する開口12の大きさ、および、対象物CMが通る空間である通路11の内径は、細胞移送装置に求められる要請に応じて、適宜選択される。なお、図1では、円筒状を有する通路11が、通路11の延在方向と交差する切断面によって切断されたことによる楕円環状の開口12を有する例を示す。
【0037】
通路11の開口12が大きいほど、通路11の内部に対象物CMを収容することが容易である。通路11の内径が大きいほど、通路11と対象物CMとの摩擦を軽減することが可能であるから、細胞の生存率や細胞の活性度合いに対する影響を抑えることが可能となる。一方で、通路11の開口12が小さいほど、通路11の内部に入る対象物CMの個数を、高い精度のもとで調整することが可能となる。通路11の内径が小さいほど、対象物CMの経路が狭められ、対象物CMの位置が特定されやすくなる。
【0038】
通路11が針状体である場合、針状体の先端部が細いほど、針状体の穿刺による傷跡を小さくすること、および、出血や痛みを軽減することが可能となる。一方で、針状体の先端部が太いほど、対象物CMが通る空間の形成が容易となる。
【0039】
なお、開口12から通路11の内部に入った対象物CMは、保護液の流れとともに移動するが、対象物CMの保持されるべき位置が開口12に近いほど、対象物CMと通路11との接触が抑えられ、対象物CMが受ける負荷が抑えられる。また、通路11の内部が平滑であるほど、対象物CMと通路11との接触による負荷が、対象物CMにおいて抑えられる。
【0040】
針状体は、生体の内部に進入する部分を有してもよい。針状体は、対象物CMを生体の内部に移送することに適している。針状体が進入する生体の内部は、皮内でもよいし、皮下でもよい。針状体の延びる方向における針状体の長さは、200μm以上6mm以下でもよい。
【0041】
細胞移送装置が備える針状体の本数は、単一でもよいし、2以上でもよい。細胞移送装置が複数の針状体を備える場合、複数の針状体は、幾何学格子の格子点のように規則的に並んでもよいし、不規則に並んでもよい。細胞移送装置が複数の針状体を備える場合、複数の針状体は、単一の支持体に支持されてもよいし、2以上の支持体に支持されてもよい。細胞移送装置が複数の針状体を備える場合、各針状体が対象物CMを同時に引き込んでもよいし、各針状体が対象物CMを同時に押し出してもよい。各針状体での引き込みや各針状体での押し出しが同時に進められることは、細胞の移送に要する効率を高める。また、対象物が移送中に乾燥することを抑えることが可能ともなる。
【0042】
対象物CMに含まれる細胞群が発毛または育毛に寄与する場合、複数の針状体の配置に従って、移送先での細胞群の配置は定まる。すなわち、複数の針状体の配置に従って、細胞群の移植による毛の配置は定まる。対象物CMに含まれる細胞群が毛包原基である場合、単位面積当たりの針状体の密度は、1本/cm以上400本/cm以下であることが好ましく、さらには、20個/cm以上100個/cm以下であることが好ましい。針状体の密度が1本/cm以上であれば、1本ずつのきめ細かい毛髪再生が可能になる。針状体の密度が400本/cm以下であれば、毛髪再生に要する栄養分が各細胞群に行きわたりやすい。
【0043】
[センサー]
第1センサー21は、経路上の第1位置に対象物CMが存在するか否かを検知する。第2センサー22は、経路上の第2位置に対象物CMが存在するか否かを検知する。各センサー21,22は、通路11に配置されている。
【0044】
通路11の延在方向において、通路11の開口12における上端と第1位置との間の距離は、第1距離LAである。通路11の延在方向において、第1位置と第2位置との間の距離は、第2距離LBである。なお、通路11の開口12における上端は、対象物CMが開口12から押し出される場合、開口12のなかで、対象物CMが通路11の外部に露出しはじめる部位である。
【0045】
第1距離LAは、把握されるべき対象物CMの状況に従って定められる。例えば、通路11の開口12に対象物CMが引き込まれたか否かを対象物CMの状況として把握する場合、第1距離LAは、対象物CMの直径以下、あるいは、対象物CMの長軸方向での対象物CMの長さ以下でもよいし、対象物CMの半径以下、あるいは、対象物CMの長軸方向での対象物CMの長さの半分以下でもよい。例えば、通路11の開口12に対象物CMが詰まっているか否かを対象物CMの状況として把握する場合、第1距離LAは、対象物CMの半径以下でもよいし、0mmでもよい。
【0046】
第2距離LBは、把握されるべき対象物CMの状況に従って定められる。例えば、第1位置と第2位置との間に対象物CMが収容されているか否かを対象物CMの状況として把握する場合、第2距離LBは、対象物CMの直径よりも大きい、あるいは、対象物CMの長軸方向での対象物CMの長さより大きくてもよい。例えば、対象物CMの速度を対象物CMの状況として把握する場合、第2距離LBは、対象物CMの直径よりも大きい、あるいは、対象物CMの長軸方向での対象物CMの長さよりも大きくてもよい。
【0047】
対象物CMが毛包原基を含む場合、対象物CMの長軸方向での対象物CMの長さは、例えば、1500μm以下である。毛包原基を含む対象物CMが第1位置と第2位置との間に収容されているか否かを対象物CMの状況として把握する場合、第2距離LBは、1500μmよりも大きい。これにより、毛包原基が第1位置から第2位置に移動したこと、また、毛包原基が第2位置から第1位置に移動したことを、より高い精度のもとで把握することができる。さらに、第1位置に到達した毛包原基が第2位置に到達していないこと、また、第2位置に到達した毛包原基が第1位置に到達していないことを、より高い精度のもとで把握することができる。
【0048】
第1センサー21による対象物CMの存否の検知は、第1位置に位置する第1センサー21と、第1位置に位置する対象物CMとの間での接触による検知でもよい。第1センサー21による対象物CMの存否の検知は、第1位置とは異なる位置の第1センサー21と、第1位置に位置する対象物CMとの間での非接触による検知でもよい。
【0049】
第2センサー22による対象物CMの存否の検知は、第2位置に位置する第2センサー22と、第2位置に位置する対象物CMとの間での接触による検知でもよい。第2センサー22による対象物CMの存否の検知は、第2位置とは異なる位置の第2センサー22と、第2位置に位置する対象物CMとの間での非接触による検知でもよい。
【0050】
第1位置での接触による検知は、第1位置での対象物CMとの接触による状態量の変化の検知でもよいし、第1位置での対象物CMとの接触による状態量の維持の検知でもよい。第2位置での接触による検知は、第2位置での対象物CMとの接触による状態量の変化の検知でもよいし、第2位置での対象物CMとの接触による状態量の維持の検知でもよい。
【0051】
第1位置での非接触による検知は、第1位置での対象物CMの存在による状態量の変化の検知でもよいし、第1位置での対象物CMの存在による状態量の維持の検知でもよい。第1位置での非接触による検知の対象は、第1位置での状態量でもよいし、経路上における第1位置以外の位置での状態量でもよい。第1位置以外の位置は、第2センサー22が検知の対象とする位置とは異なる位置であり、経路上における第1位置よりも上流でもよいし、第1位置よりも下流でもよいし、対象物CMが第1位置に存在することに依拠した状態量が検知される位置であればよい。
【0052】
第2位置での非接触による検知は、第2位置での対象物CMの存在による状態量の変化の検知でもよいし、第2位置での対象物CMの存在による状態量の維持の検知でもよい。第2位置での非接触による検知の対象は、第2位置での状態量でもよいし、経路上における第2位置以外の位置での状態量でもよい。第2位置以外の位置は、第1センサー21が検知の対象とする位置とは異なる位置であり、経路上における第2位置よりも上流でもよいし、第2位置よりも下流でもよいし、対象物CMが第1位置に存在することに依拠した状態量が検知される位置であればよい。
【0053】
第1センサー21が検知する状態量の変化、あるいは、状態量の維持は、第1位置における対象物CMの到達、第1位置における対象物CMの滞在、および、第1位置における対象物CMの離脱のなかで、いずれによって生じてもよい。第2センサー22が検知する状態量の変化、あるいは、状態量の維持は、第2位置における対象物CMの到達、第2位置における対象物CMの滞在、および、第2位置における対象物CMの離脱のなかで、いずれによって生じてもよい。
【0054】
状態量は、電流、電圧、電気容量、電気抵抗、周波数、インダクタンスなどの(i)電気的状態量でもよいし、起電力、磁界強度、渦電流などの(ii)磁気的状態量でもよい。状態量は、振動の有無、振動数、振幅、位相、伝播速度などの(iii)波動学的状態量でもよい。状態量は、温度、温度差に従って変わる起電力などの(iv)熱的状態量でもよいし、透過率、反射率、分光分布などの光学状態量でもよい。状態量は、対象物CMが有する構造に起因した物理量でもよいし、対象物CMが有する物性に起因した物理量でもよい。状態量は、対象物CMが有するエネルギーに起因した物理量でもよいし、外部から対象物CMに加えられるエネルギーに起因した物理量でもよい。
【0055】
(i)電気的状態量は、二端子法や四端子法などを用いて計測される電気抵抗であってもよい。電気抵抗を検知するセンサーは、状態量を計測するための2以上の端子を備える。対象物CMが端子間に位置するときの電気抵抗と、対象物CMが端子間に位置しないときとの電気抵抗とは、相互に異なる値を示す。電気抵抗を検知するセンサーは、対象物CMが端子間に位置するときの電気抵抗を計測したことに基づいて、対象物CMが端子間に存在することを検知してもよい。電気抵抗を検知するセンサーは、ノイズを低減して測定精度を高めたり耐久性を高めたりするために、各端子を構成する材料を別々の材料としてもよい。
【0056】
電気的状態量は、互いに対向する電極を用いて計測される電気容量であってもよい。対象物CMが電極間に位置するときの電気容量と、対象物CMが端子間に位置しないときの電気容量とは、相互に異なる値を示す。電気容量を検知するセンサーは、対象物CMが電極間に位置するときの電気容量を計測したことに基づいて、対象物CMが電極間に存在することを検知してもよい。また、対象物CMが電極間に位置するときの共振周波数での信号と、対象物CMが電極間に位置しないときの当該信号とは、相互に異なる増幅率を示す。増幅率を検知するセンサーは、対象物CMが電極間に位置するときの増幅率を計測したことに基づいて、対象物CMが電極間に存在することを検知してもよい。
【0057】
(ii)磁気的状態量は、対象物CMが磁場中を移動する際に生じる起電力でもよいし、対象物CMが磁場中を移動する際の磁界強度でもよいし、対象物CMが磁場中を移動する際に生じる渦電流でもよい。対象物CMが磁場中を移動する際、対象物CMの流量が小さい場合、計測される起電力も小さく、対象物CMの流量が大きい場合、計測される起電力も大きい。保存液などの流体が磁場中を移動する際、対象物CMの存在によって流量が小さい場合、計測される起電力も小さく、対象物CMの存在によって流量が大きい場合、計測される起電力も大きい。起電力を検知するセンサーは、起電力が所定値以上であることに基づいて、対象物CMが磁場中に存在することを検知してもよい。また、対象物CMが磁場中を移動する際、対象物CMの通過によって起電力がノイズとして不規則に変化する。起電力を検知するセンサーは、起電力が不規則に変化したことに基づいて、対象物CMが磁場中に存在することを検知してもよい。
【0058】
(iii)波動学的状態量は、送信部と受信部との間における超音波の伝播速度でもよいし、圧電素子によって検知される微振動の有無でもよい。流体が流れる方向に沿った超音波の伝播速度は、流体が流れる方向とは反対方向に沿った伝播速度よりも高い。伝播速度を検知するセンサーは、送信部と受信部とを備えてもよい。伝播速度を検知するセンサーは、対象物CMが検知位置を流れているときの伝播速度が検知されたことに基づいて、対象物CMが送信部と受信部との間に存在することを検知してもよい。微振動の有無を検知するセンサーは、微振動を検知するための圧電素子を備えてもよいし、微振動を検知するためのダイヤフラムや薄膜を備えてもよい。微振動の有無を検知するセンサーは、対象物CMが流れているときの微振動が検知されたことに基づいて、対象物CMが圧電素子の近傍に存在することを検知してもよい。
【0059】
(iv)熱的状態量は、対象物CMと1つの端子との間で熱量の授受を行う当該端子の温度でもよいし、2つの端子間の温度差に従って生じる起電力でもよい。対象物CMと1つの端子との間で授受される熱量と、保存液などの流体と1つの端子との間で授受される熱量とは、相互に異なる大きさを示す。温度を検知するセンサーは、対象物CMと1つの端子とが接触しているときの温度が検知されたことに基づいて、対象物CMが端子位置に存在することを検知してもよい。また、2つの端子間の温度差を検知するセンサーは、対象物CMと端子とが接触しているときの温度差が検知されたことに基づいて、対象物CMが端子間に存在することを検知してもよい。
【0060】
第1センサー21が出力する検知結果SG1は、第1位置に対象物CMが存在するか否かを示すデータであり、検知時のタイムインデックスが付されたデータでもよいし、第1センサー21が計測した状態量、あるいは状態量の変化量を含むデータでもよい。第2センサー22が出力する検知結果SG2は、第2位置に対象物CMが存在するか否かを示すデータであり、検知時のタイムインデックスが付されたデータでもよいし、第2センサー22が計測した状態量、あるいは状態量の変化量を含むデータでもよい。
【0061】
[状況推定]
細胞移送装置は、制御装置31と圧力印加部41とを備えてもよい。制御装置31は、推定部32と記憶部33とを備えてもよい。
【0062】
推定部32は、第1センサー21の検知結果SG1と第2センサー22の検知結果SG2とを用いて対象物CMの状況を推定する。制御装置31は、推定部32による推定結果D3を出力する。推定部32は、第1センサー21の検知結果SG1と、第2センサー22の検知結果SG2と、を用いた論理演算によって対象物CMの状況を推定してもよい。
【0063】
推定部32は、記憶部33が記憶する参照データに、第1センサー21の検知結果SG1と、第2センサー22の検知結果SG2とを適用し、対象物CMの状況を推定してもよい。
【0064】
また、推定部32は、対象物CMを通路11の内部に引き込む期間において、第1センサー21の検知結果SG1のなかで対象物CMの存在を検知した回数をカウントし、当該カウントの結果を用いて、対象物CMの状況を推定してもよい。推定部32は、対象物CMを押し出す期間において、第1センサー21の検知結果SG1のなかで対象物CMの存在を検知した回数をカウントし、当該カウントの結果を用いて、対象物CMの状況を推定してもよい。
【0065】
また、推定部32は、対象物CMを通路11の内部に引き込む期間において、第2センサー22の検知結果SG2のなかで対象物CMの存在を検知した回数をカウントし、当該カウントの結果を用いて、対象物CMの状況を推定してもよい。推定部32は、対象物CMを押し出す期間において、第2センサー22の検知結果SG2のなかで対象物CMの存在を検知した回数をカウントし、当該カウントの結果を用いて、対象物CMの状況を推定してもよい。
【0066】
これらにより、各センサー21,22の検知結果SG1,SG2に基づいて対象物CMの状況が推定される。そのため、検知結果SG1,SG2の処理に要する負荷を軽減することや、移動過程における対象物CMの状況把握を容易にすることができる。
【0067】
記憶部33は、推定部32が推定に用いる参照データを記憶する。参照データは、各センサー21,22の検知結果SG1,SG2から対象物CMの状況を導くためのデータである。参照データは、各センサー21,22の検知結果SG1,SG2と、対象物CMの状況と、を関連付けたデータでもよいし、各センサー21,22のSG1,SG2を入力として対象物CMの状況を出力する演算モデルでもよい。
【0068】
なお、参照データは、第1距離LA、あるいは第2距離LBでもよいし、推定に用いられる所定時間でもよい。参照データは、通路11の断面積でもよいし、対象物CMを通路11の内部に引き込む力でもよいし、対象物CMの大きさから推定される対象物CMと通路11との接触面積でもよい。参照データは、対象物CMを通路11から押し出す力でもよいし、対象物CMを通路11から押し出すときに外部装置で計測される流体の容量でもよい。
【0069】
対象物CMの状況は、第1センサー21の検知結果SG1と、第2センサー22の検知結果SG2と、を用いて導き出される移送による対象物CMの様子である。対象物CMの状況は、(A)経路上における対象物CMの移動の状況でもよいし、(B)経路上において対象物CMが受けた負荷の状況でもよいし、(C)経路上における対象物CMの形態の状況でもよい。
【0070】
(A)対象物CMの移動状況は、(A1)対象物CMが第1位置と第2位置との間に存在することでもよい。対象物CMの移動状況は、(A2)対象物CMが第2位置よりも開口12から離れて位置することでもよいし、(A3)対象物CMが第1位置よりもさらに開口12の近くに位置することでもよい。また、対象物CMの移動状況は、(A4)対象物CMが通路11に詰まっていることでもよい。
【0071】
(A1)対象物CMが第1位置と第2位置との間に存在することは、対象物CMが第1位置を通過して第2位置に到達していないことでもよいし、対象物CMが第2位置を通過して第1位置に到達していないことでもよい。対象物CMが第1位置と第2位置との間に存在することは、対象物CMを引き込むときに、第1センサー21で存在が検知され、その後に、第2センサー22で存在が検知されないことに基づいて検知されてもよい。また、対象物CMが第1位置と第2位置との間に存在することは、対象物CMを押し出すときに、第2センサー22で存在が検知され、その後に、第1センサー21で存在が検知されないことに基づいて検知されてもよい。
【0072】
(A2)対象物CMが第2位置よりも開口12から離れて位置することは、対象物CMが第1位置を通過してさらに第2位置を通過したことでもよい。対象物CMが第2位置よりも開口12から離れて位置することは、対象物CMを引き込むときに、第1センサー21で存在が検知され、次いで、第2センサー22で存在が検知されることに基づいて検知されてもよい。
【0073】
(A3)対象物CMが第1位置よりも開口12の近くに位置することは、対象物CMが第2位置を通過してさらに第1位置を通過したことでもよい。対象物CMが第1位置よりも開口12の近くに位置することは、対象物CMを押し出すときに、第2センサー22で存在が検知され、次いで、第1センサー21で存在が検知されることに基づいて検知されてもよい。
【0074】
(A4)対象物CMが通路11に詰まっていることは、対象物CMが通路11の開口12に詰まっていることでもよいし、対象物CMが第1位置と第2位置との間に詰まっていることでもよいし、対象物CMが第2位置よりも開口12から離れた位置に詰まっていることでもよい。
【0075】
対象物CMが通路11の開口12に詰まっていることは、対象物CMの引き込み開始から所定時間の経過時に、第1センサー21で存在が検知されず、かつ、第2センサー22で存在が検知されないことに基づいて検知されてもよい。対象物CMが第1位置と第2位置との間に詰まっていることは、対象物CMの引き込み開始から所定時間の経過時に、第1センサー21で存在が検知され、かつ、第2センサー22で存在が検知されないことに基づいて検知されてもよい。また、対象物CMが第1位置と第2位置との間に詰まっていることは、対象物CMの押し出し開始から所定時間の経過時に、第2センサー22で存在が検知され、かつ、第1センサー21で存在が検知されないことに基づいて検知されてもよい。対象物CMが第2位置よりも開口12から離れた位置に詰まっていることは、対象物CMの押し出し開始から所定時間の経過時に、第1センサー21で存在が検知されず、かつ、第2センサー22で存在が検知されないことに基づいて検知されてもよい。
【0076】
(B)対象物CMの負荷状況は、(B1)対象物CMの速度でもよいし、(B2)対象物CMが液状体のなかで受ける抵抗力でもよい。対象物CMの負荷状況は、(B3)対象物CMが通路11から受ける摩擦力でもよいし、(B4)対象物CMの速度、抵抗力、摩擦力などから推定される細胞の状態でもよい。細胞の状態は、正常状態と異常状態とである。異常状態は、細胞死、分裂、分化誘導、休眠、サイトカインの産生、特定の遺伝子発現などである。
【0077】
(B1)対象物CMの速度は、対象物CMが第1位置に存在した時刻と、対象物CMが第2位置に存在した時刻との間の期間を算出し、第1位置と第2位置との間の距離である第2距離LBを期間で除算することによって算出されてもよい。対象物CMの速度は、対象物CMの押し出し開始から対象物CMが第2位置に到達するまでの期間を算出し、当該期間で通路11に流された流体の容量、通路11の断面積、および期間から、流体の流速として算出されてもよい。
【0078】
(B2)対象物CMが受ける抵抗力は、対象物CMの大きさと、上述した流体の流速と(B1)対象物CMの速度との差を用いて算出されてもよい。
(B3)対象物CMが受ける摩擦力は、対象物CMを通路11の内部に引き込む力、対象物CMの大きさから推定される対象物CMと通路11との接触面積、および、(B1)対象物CMの速度とを用いて算出されてもよい。対象物CMが受ける摩擦力は、対象物CMを通路11から押し出す力、対象物CMの大きさから推定される対象物CMと通路11との接触面積、および、(B1)対象物CMの速度とを用いて算出されてもよい。
【0079】
(C)対象物CMの形態状況は、(C1)対象物CMが開裂あるいは分解していないことでもよいし、(C2)対象物CMが開裂あるいは分解していることでもよいし、(C3)対象物CMの一部が通路11の内部に残留していることでもよい。対象物CMの形態状況は、(C4)対象物CMが変形していないことでもよいし、(C5)対象物CMが変形していること、あるいは、対象物CMの大きさが所定の大きさを超えることでもよい。
【0080】
(C1)対象物CMが開裂あるいは分解していないことは、1つの対象物CMの引き込み開始から引き込み終了までの期間で、第1センサー21、あるいは第2センサー22による対象物CMの存在の検知が1度であることに基づいて検知されてもよい。対象物CMが開裂あるいは分解していないことは、1つの対象物CMの引き込み開始から引き込み終了までの期間で、第1センサー21による対象物CMの存在の検知が1度であり、かつ、第2センサー22による対象物CMの存在の検知が1度であることに基づいて検知されてもよい。
【0081】
また、対象物CMが開裂あるいは分解していないことは、1つの対象物CMの押し出し開始から押し出し終了までの期間で、第1センサー21、あるいは第2センサー22による対象物CMの存在の検知が1度であることに基づいて検知されてもよい。また、対象物CMが開裂あるいは分解していないことは、1つの対象物CMの押し出し開始から押し出し終了までの期間で、第2センサー22による対象物CMの存在の検知が1度であり、かつ、第1センサー21による対象物CMの存在の検知が1度であることに基づいて検知されてもよい。
【0082】
(C2)対象物CMが開裂あるいは分解していることは、1つの対象物CMの引き込み開始から引き込み終了までの期間で、第1センサー21、あるいは第2センサー22による対象物CMの存在の検知が2度以上であることに基づいて検知してもよい。また、対象物CMが開裂あるいは分解していることは、1つの対象物CMの押し出し開始から押し出し終了までの期間で、第1センサー21、あるいは第2センサー22による対象物CMの存在の検知が2度以上であることに基づいて検知してもよい。
【0083】
(C3)対象物CMの一部が通路11の内部に残留していることは、1つの対象物CMの押し出し開始から押し出し終了までの期間で、第1センサー21による対象物CMの存在の検知が1度であり、かつ、第2センサー22による対象物CMの存在の検知が2度以上であることに基づいて検知してもよい。
【0084】
(C4)対象物CMが変形していないことは、通路11が延びる方向に対象物CMが延びていないことであってもよい。対象物CMが延びていないことは、第2距離LBが対象物CMの長軸方向での長さよりも大きく、かつ、第1センサー21による対象物CMの検知期間と、第2センサー22による対象物CMの検知期間と、が重ならないことに基づいて、検知されてもよい。
【0085】
(C5)対象物CMが変形していることは、通路11が延びる方向に対象物CMが延びていることであってもよい。対象物CMの大きさが所定の大きさを超えることは、通路11が延びる方向において対象物CMの大きさが第2距離LBよりも大きいことであってもよい。対象物CMが延びていることなどは、対象物CMの長軸方向での長さが第2距離LBよりも大きく、これにより、第1センサー21による対象物CMの検知期間と、第2センサー22による対象物CMの検知期間と、が重なることに基づいて、検知されてもよい。
【0086】
圧力印加部41は、通路11における開口12とは反対側の端部である基端13に接続される。圧力印加部41は、対象物CMを通路11の内部に引き込むための吸引圧を通路11の内部に印加する。圧力印加部41は、通路11の内部に排出圧を印加してもよい。圧力印加部41が印加する吸引圧は、対象物CMを通路11の先端である開口12に引き付ける。圧力印加部41が印加する排出圧は、対象物CMを開口12から押し出す。
【0087】
制御装置31は、指令SG4を圧力印加部41に入力してもよい。指令SG4は、引き込みの開始、および、引き込みの終了を圧力印加部41に実行させる。指令SG4は、押し出しの開始、および、押し出しの終了を圧力印加部41に実行させる。圧力印加部41は、制御装置31の指令SG4を受け、対象物CMの周囲に存在する流体を定量的に通路11に引き込む。圧力印加部41は、制御装置31の指令SG4を受け、対象物CMの周囲に存在する流体を定量的に通路11から押し出す。
【0088】
[細胞移送方法]
細胞移送方法の一例として上記細胞移送装置を用いた方法を以下に説明する。
細胞移送装置を用いた細胞移送方法は、対象物CMを経路上に導く通路11に対象物CMを通すこと、対象物CMが通る経路上の第1位置での対象物CMの存否を検知すること、および、経路上の第2位置での対象物CMの存否を検知すること、を含む。
【0089】
図2が示すように、まず、通路11の開口12が、対象物CMを含む保護液のなかに配置される。次いで、対象物CMが通路11の開口12から通路11の内部に引き込まれる。対象物CMの引き込みは、圧力印加部41による吸引圧の印加によって行われてもよい。
【0090】
この間、図2の破線が示すように、対象物CMが第1位置に到達するまで、第1センサー21は、第1位置での対象物CMの不存在を、検知結果SG1として出力する。第2センサー22もまた、第2位置での対象物CMの不存在を、検知結果SG2として出力する。推定部32は、各検知結果SG1,SG2に基づいて、対象物CMの状況を推定する。推定部32は、推定結果D3を外部に出力する。
【0091】
推定結果D3は、対象物CMが第1位置に到達していないことを、細胞移送装置の利用者に把握させる。細胞移送装置の利用者は、対象物CMが第1位置に到達していないことに基づいて、対象物CMの引き込みを続ける。一方で、細胞移送装置の利用者は、第1位置と第2位置との両方での対象物CMの存在が検知されたり、第2位置での対象物CMの存在が検知されたりするなどのように、対象物CMの状況が異常であることに基づいて、対象物CMの引き込みを停止する。
【0092】
図3が示すように、対象物CMが第1位置に到達すると、第1センサー21は、第1位置での対象物CMの存在を、検知結果SG1として出力する。第2センサー22は、第2位置での対象物CMの不存在を、検知結果SG2として出力し続ける。推定部32は、各検知結果SG1,SG2に基づいて、対象物CMの状況を推定する。推定部32は、推定結果D3を外部に出力する。
【0093】
推定結果D3は、対象物CMが第1位置に到達したことを、細胞移送装置の利用者に把握させる。細胞移送装置の利用者は、対象物CMが第1位置に到達したことに基づいて、対象物CMの引き込みを続ける。一方で、細胞移送装置の利用者は、第1位置と第2位置との両方での対象物CMの存在が検知されるなどのように、対象物CMの状況が異常であることに基づいて、対象物CMの引き込みを停止する。
【0094】
対象物CMが第1位置を通過すると、第1センサー21は、第1位置での対象物CMの不存在を、検知結果SG1として出力する。第2センサー22は、第2位置での対象物CMの不存在を、検知結果SG2として出力し続ける。推定部32は、各検知結果SG1,SG2に基づいて、対象物CMの状況を推定する。推定部32は、推定結果D3を外部に出力する。
【0095】
推定結果D3は、対象物CMが第1位置を通過したことを、細胞移送装置の利用者に把握させる。細胞移送装置の利用者は、対象物CMが第1位置を通過したことに基づいて、対象物CMの引き込みを続ける。一方で、細胞移送装置の利用者は、第1位置での対象物CMの存在が所定期間以上にわたり検知され続けたり、第1位置と第2位置との両方での対象物CMの存在が検知されたりするなどのように、対象物CMの状況が異常であることに基づいて、対象物CMの引き込みを停止する。
【0096】
図3の破線が示すように、対象物CMが第2位置に到達すると、第1センサー21は、第1位置での対象物CMの不存在を、検知結果SG1として出力し続ける。第2センサー22は、第2位置での対象物CMの存在を、検知結果SG2として出力し続ける。そして、対象物CMが第2位置を通過すると、第1センサー21は、第1位置での対象物CMの不存在を、検知結果SG1として出力し続ける。第2センサー22は、第2位置での対象物CMの不存在を、検知結果SG2として出力する。推定部32は、各検知結果SG1,SG2に基づいて、対象物CMの状況を推定する。推定部32は、推定結果D3を外部に出力する。
【0097】
推定結果D3は、対象物CMが第2位置を通過したことを、細胞移送装置の利用者に把握させる。また、推定結果D3は、対象物CMの移動状況、負荷状況、あるいは、形態状況が正常であることを利用者に把握させる。細胞移送装置の利用者は、対象物CMの状況が正常であることに基づいて、対象物CMの引き込みを終了する。これにより、対象物CMの保存環境から細胞移送装置の内部環境への移送が完了する。
【0098】
一方で、細胞移送装置の利用者は、推定結果D3において異常が検知されることに基づいて、対象物CMの移送を停止する。なお、細胞移送装置の利用者は、対象物CMの引き込みの停止以降、および、対象物CMの移送の停止以降、例えば、対象物CMの取り出しなどの処置を行う。
【0099】
例えば、図4が示すように、対象物CMの引き込みに際し、対象物CMに開口12に引っ掛かったり詰まったりすると、第1位置での対象物CMの存在が所定期間以上にわたり検知され続ける。対象物CMが開口12に引っ掛かったり詰まったりした状態で対象物CMの移送が行われると、対象物CMの保持条件が満たされず、対象物CMの落下や対象物CMの性状低下を招いてしまう。この点、上述した推定部32は、第1位置での対象物CMの存在が所定期間以上にわたり検知され続けると、対象物CMの状況が異常であると推定する。結果として、対象物CMが開口12に引っ掛かったり詰まったりしていることを、細胞移送装置の利用者に把握させることが可能となる。
【0100】
次いで、通路11の開口12が生体内などの別の環境のなかに配置される。次いで、対象物CMが通路11の開口12に向けて押し出される。対象物CMの押し出しは、圧力印加部41による排出圧の印加によって行われてもよい。
【0101】
この間、対象物CMが第2位置に到達するまで、第1センサー21は、第1位置での対象物CMの不存在を、検知結果SG1として出力する。第2センサー22もまた、第2位置での対象物CMの不存在を、検知結果SG2として出力する。推定部32は、各検知結果SG1,SG2に基づいて、対象物CMの状況を推定する。推定部32は、推定結果D3を外部に出力する。
【0102】
推定結果D3は、対象物CMが第2位置に到達していないことを、細胞移送装置の利用者に把握させる。細胞移送装置の利用者は、対象物CMが第2位置に到達していないことに基づいて、対象物CMの押し出しを続ける。一方で、細胞移送装置の利用者は、第1位置と第2位置との両方での対象物CMの存在が検知されたり、第1位置での対象物CMの存在が検知されたりするなどのように、対象物CMの状況が異常であることに基づいて、対象物CMの押し出しを停止する。
【0103】
対象物CMが第2位置に到達すると、第1センサー21は、第1位置での対象物CMの不存在を、検知結果SG1として出力し続ける。第2センサー22は、第2位置での対象物CMの存在を、検知結果SG2として出力する。推定部32は、各検知結果SG1,SG2に基づいて、対象物CMの状況を推定する。推定部32は、推定結果D3を外部に出力する。
【0104】
推定結果D3は、対象物CMが第2位置に到達したことを、細胞移送装置の利用者に把握させる。細胞移送装置の利用者は、対象物CMが第2位置に到達したことに基づいて、対象物CMの押し出しを続ける。一方で、細胞移送装置の利用者は、第1位置と第2位置との両方での対象物CMの存在が検知されるなどのように、対象物CMの状況が異常であることに基づいて、対象物CMの押し出しを停止する。
【0105】
対象物CMが第2位置を通過すると、第1センサー21は、第1位置での対象物CMの不存在を、検知結果SG1として出力する。第2センサー22は、第2位置での対象物CMの不存在を、検知結果SG2として出力し続ける。推定部32は、各検知結果SG1,SG2に基づいて、対象物CMの状況を推定する。推定部32は、推定結果D3を外部に出力する。
【0106】
推定結果D3は、対象物CMが第2位置を通過したことを、細胞移送装置の利用者に把握させる。細胞移送装置の利用者は、対象物CMが第2位置を通過したことに基づいて、対象物CMの押し出しを続ける。一方で、細胞移送装置の利用者は、第2位置での対象物CMの存在が所定期間以上にわたり検知され続けたり、第1位置と第2位置との両方での対象物CMの存在が検知されたりするなどのように、対象物CMの状況が異常であることに基づいて、対象物CMの押し出しを停止する。
【0107】
対象物CMが第1位置に到達すると、第1センサー21は、第1位置での対象物CMの存在を、検知結果SG1として出力する。第2センサー22は、第2位置での対象物CMの不存在を、検知結果SG2として出力し続ける。そして、対象物CMが第1位置を通過すると、第1センサー21は、第1位置での対象物CMの不存在を、検知結果SG1として出力する。第2センサー22は、第2位置での対象物CMの不存在を、検知結果SG2として出力し続ける。推定部32は、各検知結果SG1,SG2に基づいて、対象物CMの状況を推定する。推定部32は、推定結果D3を外部に出力する。
【0108】
推定結果D3は、対象物CMが第1位置を通過したことを、細胞移送装置の利用者に把握させる。また、推定結果D3は、対象物CMの移動状況、負荷状況、あるいは、形態状況が正常であることを利用者に把握させる。細胞移送装置の利用者は、対象物CMの状況が正常であることに基づいて、対象物CMの押し出しを終了する。これにより、細胞移送装置の内部環境から対象物CMの配置環境への移送が完了する。一方で、細胞移送装置の利用者は、推定結果D3において異常が検知されることに基づいて、対象物CMの再移送などの処置を行う。
【0109】
以上、第1実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1-1)第1位置から第2位置への対象物CMの移動、あるいは、第2位置から第1位置への対象物CMの移動を把握することができる。さらに、第1位置に到達した対象物CMが第2位置に到達していないこと、あるいは、第2位置に到達した対象物CMが第1位置に到達していないことを把握することができる。すなわち、経路上を円滑に移動したか否かを、対象物CMの移送過程で把握することができる。
【0110】
(1-2)対象物CMが針状体の中を円滑に移動したか否かが、対象物CMを生体に配置する前に把握することができる。これにより、移送過程における対象物CMの状況に基づいて配置方法を変えることや配置そのものを止めることができる。結果として、配置後の細胞による作用のばらつきが移送に起因して生じることを抑制することができる。
【0111】
(1-3)通路11の延在方向において、毛包原基を含む対象物CMの大きさよりも第2距離LBが大きい。そのため、毛包原基が第1位置から第2位置に移動したこと、また、毛包原基が第2位置から第1位置に移動したことを、より高い精度のもとで把握することができる。さらに、第1位置に到達した毛包原基が第2位置に到達していないこと、また、第2位置に到達した毛包原基が第1位置に到達していないことを、より高い精度のもとで把握することができる。
【0112】
(1-4)各センサー21,22の検知結果SG1,SG2に基づいて対象物CMの状況が推定されるため、検知結果SG1,SG2の処理に要する負荷を軽減することや、移動過程における対象物CMの状況把握を容易にすることができる。
【0113】
(1-5)対象物CMの移動状況、負荷状況、および形態状況が推定されるため、対象物CMの状況に生じている異常を、より詳細に把握することが可能となる。移動状況に異常が生じている場合には、同一の対象物CMを用いた再度の移送を試みる処置が可能である。一方で、負荷状況や形態状況に異常が生じている場合には、対象物CMそのものの交換を要する。上記構成であれば、対象物CMに生じている異常の種類に適した処置を施すことが可能ともなる。
【0114】
(1-6)第1距離LAが、対象物CMの直径以下、あるいは、対象物CMの長軸方向での対象物CMの長さ以下であれば、通路11の開口12に対象物CMが引っ掛かったり詰まったりしている状況を把握することが可能ともなる。
【0115】
(第2実施形態)
以下、図5から図7を参照して細胞移送装置、および細胞移送方法の第2実施形態を説明する。まず、細胞移送装置の構成を説明し、次に、細胞移送装置を用いた細胞移送方法を説明する。なお、第2実施形態の細胞移送装置は、第1実施形態の細胞移送装置と比べて第2距離LBの大きさが異なる。以下では、第1実施形態の細胞移送装置との相違点を詳細に説明し、第1実施形態の細胞移送装置と同様の構成に同一の符号を付し、その説明を割愛する。
【0116】
[細胞移送装置]
図5が示すように、第2距離LBは、把握されるべき対象物CMの状況に従って定められる。例えば、対象物CMよりも小さい異物が通路11のなかに引き込まれたか否かを対象物CMの状況として把握する場合、第2距離LBは、対象物CMの直径よりも小さい、あるいは、対象物CMの長軸方向での対象物CMの長さよりも小さくてもよい。
【0117】
推定部32が推定する対象物CMの状況は、第1センサー21の検知結果SG1と、第2センサー22の検知結果SG2と、を用いて導き出される情報である。対象物CMの状況は、(D)対象物CMの移動環境における異物の混入状況でもよい。
【0118】
(D)異物の混入状況は、(D1)対象物CMに先駆けて異物が通路11の内部に入ることでもよいし、(D2)対象物CMに後続して異物が通路の内部に入ることでもよい。
(D1)対象物CMに先駆けて異物が入ることは、まず、第1センサー21による移動物の存在の検知期間と、第2センサー22による移動物の存在の検知期間との間に、第1センサー21および第2センサー22による移動物の非検知が認められ、こうした非検知が認められることに基づいて、移動物が異物であると検知してもよい。その後、第1センサー21による移動物の存在の検知期間と、第2センサー22による移動物の存在の検知期間とが重なることに基づいて、異物の後に対象物CMが入ったことを検知してもよい。
【0119】
(D2)対象物CMに後続して異物が入ることは、まず、第1センサー21による移動物の存在の検知期間と、第2センサー22による移動物の存在の検知期間とが重なることが認められ、こうした検知期間の重なりが認められることに基づいて、対象物CMが入ったことを検知してもよい。その後、第1センサー21による移動物の存在の検知期間と、第2センサー22による移動物の存在の検知期間との間に、第1センサー21および第2センサー22による移動物の非検知が認められ、こうした非検知が認められることに基づいて、移動物が異物であると検知してもよい。
【0120】
[細胞移送方法]
細胞移送方法の一例として上記細胞移送装置を用いた方法を以下に説明する。
細胞移送装置を用いた細胞移送方法は、対象物CMを経路上に導く通路11に対象物CMを通すこと、対象物CMが通る経路上の第1位置での対象物CMの存否を検知すること、および、経路上の第2位置での対象物CMの存否を検知すること、を含む。
【0121】
図6が示すように、まず、通路11の開口12が、対象物CMを含む保護液のなかに配置される。次いで、対象物CMが通路11の開口12から通路11の内部に引き込まれる。対象物CMの引き込みは、圧力印加部41による吸引圧の印加によって行われてもよい。
【0122】
次いで、対象物CMが第1位置に到達すると、第1センサー21は、第1位置での対象物CMの存在を、検知結果SG1として出力する。第2センサー22は、第2位置での対象物CMの不存在を、検知結果SG2として出力し続ける。推定部32は、各検知結果SG1,SG2に基づいて、対象物CMの状況を推定する。推定部32は、推定結果D3を外部に出力する。
【0123】
続いて、対象物CMが第1位置を通過する前に、対象物CMが第2位置に到達する。対象物CMが第2位置を到達すると、第2センサー22は、第2位置での対象物CMの存在を、検知結果SG2として出力する。この際、第1センサー21は、第1位置での対象物CMの存在を、検知結果SG1として出力し続ける。すなわち、第1センサー21による対象物CMの存在の検知期間と、第2センサー22による対象物CMの存在の検知期間とが重畳する。推定部32は、各検知結果SG1,SG2に基づいて、対象物CMの状況を推定する。推定部32は、推定結果D3を外部に出力する。
【0124】
推定結果D3は、1つの対象物CMが第1位置と第2位置とに存在することを、細胞移送装置の利用者に把握させる。すなわち、推定結果D3は、各センサー21,22に検知された移動物が対象物CMであることを、利用者に把握させる。
【0125】
そして、対象物CMが第1位置を通過すると、第1センサー21は、第1位置での対象物CMの不存在を、検知結果SG1として出力する。第2センサー22は、第2位置での対象物CMの存在を、検知結果SG2として出力する。続いて、対象物CMが第2位置を通過すると、第1センサー21は、第1位置での対象物CMの不存在を、検知結果SG1として出力し続ける。第2センサー22は、第2位置での対象物CMの不存在を、検知結果SG2として出力する。推定部32は、各検知結果SG1,SG2に基づいて、対象物CMの状況を推定する。推定部32は、推定結果D3を外部に出力する。
【0126】
推定結果D3は、対象物CMが第2位置を通過したことを、細胞移送装置の利用者に把握させる。また、推定結果D3は、対象物CMの移動状況、負荷状況、あるいは、形態状況が正常であることを利用者に把握させる。細胞移送装置の利用者は、対象物CMの状況が正常であることに基づいて、対象物CMの引き込みを終了する。これにより、対象物CMの保存環境から細胞移送装置の内部環境への移送が完了する。
【0127】
一方、図7が示すように、まず、対象物CMに先駆けて、異物PCが第1位置に到達すると、第1センサー21は、第1位置での移動物の存在を、検知結果SG1として出力する。第2センサー22は、第2位置での移動物の不存在を、検知結果SG2として出力し続ける。推定部32は、各検知結果SG1,SG2に基づいて、対象物CMの状況を推定する。推定部32は、推定結果D3を外部に出力する。
【0128】
続いて、異物PCが第1位置を通過し、その後に、異物PCが第2位置に到達する。この際、第1センサー21による移動物の存在の検知期間と、第2センサー22による移動物の存在の検知期間との間に、各センサー21,22による移動物の不存在の検知期間が存在する。推定部32は、こうした検知結果SG1,SG2に基づいて、対象物CMの状況を推定する。推定部32は、推定結果D3を外部に出力する。
【0129】
ここで、異物PCの大きさが対象物CMの大きさよりも小さい場合、移送時の他の検査などによって、異物PCの存在を確認することが困難となる。特に、利用者の手が介在する環境下の作業では、対象物CMよりも小さい繊維状の異物PCが、対象物CMの周辺環境に混入することが多い。単一のセンサーを備えた構成では、こうした異物PCと対象物CMとを区別することが困難ともなる。また、液体の流入による気泡が、対象物CMの周辺環境における気液界面に生じることも多い。単一のセンサーを備えた構成では、こうした気泡と対象物CMとを区別することが困難ともなる。
【0130】
この点、推定結果D3は、異物PCが第1位置を通過して第2位置に存在することを、細胞移送装置の利用者に把握させる。すなわち、推定結果D3は、各センサー21,22に検知された移動物が異物PCであり、対象物CMに先駆けて異物PCが入ったことを、利用者に把握させる。
【0131】
以上、上記実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(2-1)対象物CMが通過するときの各センサー21,22による検知の状況と、異物PCが通過するときの各センサー21,22による検知の状況と、が相互に異なる。そのため、通路11の内部に異物PCが混入したことを把握することができる。
【0132】
(2-2)対象物CMよりも小さい塵や埃などの異物PCが経路上を移動するとき、第1センサー21が異物PCの存在を検知し終えた後に、第2センサー22が異物PCの存在を検知しはじめる。あるいは、第2センサー22が異物PCの存在を検知し終えた後に、第1センサー21が異物PCの存在を検知しはじめる。そのため、対象物CMの状況を把握するための各センサー21,22を用いて、経路上に異物PCが混入しているか否かを把握することができる。
【0133】
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施できる。
[センサー]
・各センサー21,22は、通路11の内面に配置されてもよいし、通路11の外面に配置されてもよい。各センサー21,22が通路11の内面に配置される場合、通路11の内面が凹部を有し、各センサー21,22が凹部に埋め込まれてもよい。各センサー21,22が凹部に埋め込まれる構成であれば、通路11の内部における対象物CMの移動が各センサー21,22によって乱れることが抑えられる。
【0134】
・各センサー21,22は、対象物CMの状況の他に、通路11を流れる保護液などの流体の性状を検知してもよい。通路11に生じた湾曲や亀裂、通路11の内部に付着した異物などは、通路11を流れる流体の性状を変える。流体の性状は、流体における流れの乱れでもよいし、流体の電気的特性でもよいし、流体の磁気的特定でもよい。各センサー21,22による流体の検知結果SG1,SG2は、通路11に生じ得る劣化の検知に用いられてもよい。
【0135】
・細胞移送装置は、第1位置での対象物CMの存否を検知する他の第1センサー21を備えてもよいし、第2位置での対象物CMの存否を検知する他の第2センサー22を備えてもよい。同一位置での対象物CMの存否を複数のセンサーが検知する構成であれば、対象物CMの存否の検知結果について、検知精度を高めることが可能ともなる。
【0136】
・細胞移送装置は、経路上の第3位置での対象物CMの存否を検知する第3センサーをさらに備えてもよいし、経路上における4箇所以上の位置での対象物CMの存否を検知してもよい。経路上における3箇所以上の位置での検知結果に基づいて対象物CMの状況を推定する構成であれば、推定精度を高めることが可能ともなる。
【0137】
・1つのセンサーが2つ以上の端子を備える場合、端子に向けて異物を引き寄せるための電圧を端子間に印加する構成としてもよい。この構成によれば、対象物CMと異物PCとを、通路11の内部で選別することが可能ともなる。
【0138】
なお、上述したセンサーの機能に係る1つの変更例は、当該変更例とは異なる他の変更例と組み合わせて実施することもできる。
[第1変更例]
図8が示すように、第1センサー21を構成する端子21A,21Bは、通路11の周面に沿う螺旋上に配置されてもよい。第1センサー21による検知範囲は、通路11の周面に沿う螺旋上に配置された楕円環状を有してもよい。なお、第1センサー21は、各実施形態と同じく、通路11の内面に配置されてもよいし、通路11の外面に配置されてもよい。
【0139】
第2センサー22を構成する端子22A,22Bは、通路11の周面に沿う螺旋上に配置されてもよい。第2センサー22による検知範囲は、通路11の周面に沿う螺旋上に配置された楕円環状を有してもよい。なお、第2センサー22は、各実施形態と同じく、通路11の内面に配置されてもよいし、通路11の外面に配置されてもよい。
【0140】
この構成によれば、少なくとも一方のセンサー21,22が、通路11の周面に沿う螺旋上の範囲で、対象物CMを検知するため、通路11の周方向で対象物CMが偏在する場合であっても、対象物CMが存在することを検知することができる。
【0141】
[第2変更例]
図9が示すように、第1センサー21を構成する端子21A,21Bは、通路11の周面に沿う円環上に配置されてもよい。第1センサー21による検知範囲は、通路11の周面に沿う円環状を有してもよい。なお、第1センサー21は、各実施形態と同じく、通路11の内面に配置されてもよいし、通路11の外面に配置されてもよい。
【0142】
第2センサー22を構成する端子22A,22Bは、通路11の周面に沿う円環上に配置されてもよい。第2センサー22による検知範囲は、通路11の周面に沿う円環状を有してもよい。なお、第2センサー22は、各実施形態と同じく、通路11の内面に配置されてもよいし、通路11の外面に配置されてもよい。
【0143】
この構成によれば、少なくとも一方のセンサー21,22が、通路11の全周にわたり対象物CMを検知するため、通路11の周方向で対象物CMが偏在する場合であっても、対象物CMが存在することを検知することができる。
【0144】
[第3変更例]
図10が示すように、第1センサー21を構成する端子21A,21Bは、通路11の延在方向に沿う直線上に配置されてもよい。なお、第1センサー21は、各実施形態と同じく、通路11の内面に配置されてもよいし、通路11の外面に配置されてもよい。
【0145】
第2センサー22を構成する端子22A,22Bは、通路11の延在方向に沿う直線上に配置されてもよい。なお、第2センサー22は、各実施形態と同じく、通路11の内面に配置されてもよいし、通路11の外面に配置されてもよい。
【0146】
第1センサー21を構成する端子21A,21Bと、第2センサー22を構成する端子22A,22Bとは、通路11の延在方向に沿う直線上において、例えば、0.2mm程度の等間隔を空けて配置されてもよい。
【0147】
この構成によれば、各センサー21,22が通路11の延在方向に沿って規則的に並ぶため、各センサー21,22を通路11に搭載するための設計を容易にすることができる。
【0148】
[第4変更例]
図11が示すように、細胞移送装置は、各センサー21,22を支持する外挿部材15を備えてもよい。外挿部材15は、外挿部材15の内部に、通路11を抜き差しするための空間を区切る。第1センサー21は、第1送信部21Eと第1受信部21Dとから構成されてもよい。第2センサー22は、第2送信部22Eと第2受信部22Dとから構成されてもよい。各送信部21E,22Eと各受信部21D,22Dとは、通路11の外側から、対象物CMの存否を検知する。
【0149】
外挿部材15は、第1送信部21Eと第1受信部21Dとが相互に対向するように支持してもよい。外挿部材15は、第2送信部22Eと第2受信部22Dとが相互に対向するように支持してもよい。
【0150】
この構成によれば、各センサー21,22が、通路11における径方向の外側に配置される。そして、対象物CMの配置に特化した設計を通路11に適用することができ、また、対象物CMの状況の検知に特化した設計を外挿部材15に適用することができる。さらに、相互に異なる長さを有した通路11を用いる移送に対し、共通する外挿部材15を採用することが可能ともなる。
【0151】
なお、上述したセンサーの配置に係る1つの変更例は、先に説明したセンサーの機能に係る変更例と組み合わせて実施することもできる。
[第5変更例]
図12が示すように、細胞移送装置が備える通路11は、通路11の内部に、内挿部材11BLを備えてもよい。内挿部材11BLは、対象物CMを保持するための先端である保持端11Bを備える。内挿部材11BLは、内挿部材11BLの内部に保護液などの流体を流す空間を区切ってもよい。内挿部材11BLが区切る空間は、対象物CMが入らない大きさである。内挿部材11BLの保持端11Bは、内挿部材11BLが延びる方向と直交する環状の平面でもよいし、内挿部材11BLが延びる方向と交差する楕円環状の平面でもよい。
【0152】
内挿部材11BLは、通路11の延在方向に沿って通路11の内部を往復する。内挿部材11BLは、保持端11Bが通路11の開口から突き出た位置と、保持端11Bが通路11の内部に収容された位置と、の間で往復する。内挿部材11BLは、保持端11Bに対象物CMを保持していない状態で、通路11の内部を往復する。また、内挿部材11BLは、保持端11Bに対象物CMを保持した状態で、通路11の内部を往復する。
【0153】
通路11は、対象物CMが移動する経路の一部を区切る。通路11から突き出た内挿部材11BLは、内挿部材11BLの往復する経路を、対象物CMが移動する経路の一部とする。
【0154】
内挿部材11BLの内部は、圧力印加部41に接続される。圧力印加部41は、内挿部材11BLの内部に吸引圧を印加する。圧力印加部41は、内挿部材11BLの内部に排出圧を印加してもよい。圧力印加部41が印加する吸引圧は、対象物CMを保持端11Bに引き付ける。圧力印加部41が印加する排出圧は、対象物を保持端11Bから離脱させる。圧力印加部41は、通路11に接続されなくてもよい。
【0155】
細胞移送方法において、内挿部材11BLは、通路11の開口から保持端11Bを突き出した位置で、圧力印加部41による吸引圧を対象物CMに作用させる。吸引圧を受ける対象物CMは、内挿部材11BLの保持端11Bに向けて導かれる。通路11が備える内挿部材11BLは、内挿部材11BLが定める経路上に対象物CMを導く。
【0156】
内挿部材11BLは、吸引圧の作用によって、保持端11Bに対象物CMを保持する。内挿部材11BLは、保持端11Bに対象物CMを保持した状態で、保持端11Bを通路11の内部に移動させる。内挿部材11BLは、保持端11Bの移動に伴い、対象物CMを通路11の内部に収容する。これにより、内挿部材11BLは、内挿部材11BLが定める経路上に対象物CMを導き、通路11は、通路11が区切る経路上に対象物CMを導く。
【0157】
この間、対象物CMが第1位置を通過するとき、第1センサー21は、第1位置での対象物CMの存在を、検知結果SG1として出力する。対象物CMが第2位置を通過するとき、第2センサー22は、第2位置での対象物CMの存在を、検知結果SG2として出力する。推定部32は、各検知結果SG1,SG2に基づいて、対象物CMの状況を推定する。推定部32は、推定結果D3を外部に出力する。
【0158】
推定結果D3は、対象物CMの状況が正常であることを、細胞移送装置の利用者に把握させる。細胞移送装置の利用者は、対象物CMの状況が正常であることに基づいて、通路11を生体内に穿刺するなどを行い、通路11の開口12を次の環境に移す。一方で、細胞移送装置の利用者は、対象物CMの状況が異常であることに基づいて、対象物CMの移送を停止する。
【0159】
次いで、内挿部材11BLは、通路11の開口12から保持端11Bが突き出るように再び移動する。内挿部材11BLは、内挿部材11BLの移動に伴い、通路11の開口12から対象物CMを突き出させる。
【0160】
この間、対象物CMが第2位置を通過するとき、第2センサー22は、第2位置での対象物CMの存在を、検知結果SG2として出力する。対象物CMが第1位置を通過するとき、第1センサー21は、第1位置での対象物CMの存在を、検知結果SG1として出力する。推定部32は、各検知結果SG1,SG2に基づいて、対象物CMの状況を推定する。推定部32は、推定結果D3を外部に出力する。
【0161】
推定結果D3は、対象物CMの状況が正常であることを、細胞移送装置の利用者に把握させる。細胞移送装置の利用者は、対象物CMの状況が正常であることに基づいて、吸引圧の印加を圧力印加部41に停止させる。あるいは、細胞移送装置の利用者は、排出圧の印加を圧力印加部41に開始させる。これにより、対象物CMは、内挿部材11BLの保持端11Bから離脱し、次の環境に配置される。なお、細胞移送装置の利用者は、対象物CMの状況が異常であることに基づいて、対象物CMの配置を停止する。
【0162】
このように、内挿部材11BLが対象物の移動を通路11の延在方向に誘導するから、対象物CMの移動する方向がばらつくことや、対象物CMの状況がばらつくことを抑制することができる。なお、内挿部材を備えた変更例は、先に説明したセンサーの機能に係る変更例、あるいはセンサーの配置に係る変更例と組み合わせて実施することもできる。
【0163】
[第6変更例]
・第2センサー22は、上記各実施形態において、流体が通路11に引き込まれるときの吸引圧を監視してもよい。第2センサー22は、上記第5変更例において、流体が内挿部材11BLに引き込まれるときの吸引圧を監視してもよい。第2センサー22は、吸引圧の監視結果を圧力印加部41に出力してもよい。
【0164】
第2センサー22は、上記各実施形態において、流体が通路11から押し出されるときの排出圧を監視してもよい。第2センサー22は、上記第5変更例において、流体が内挿部材11BLから押し出されるときの排出圧を監視してもよい。第2センサー22は、排出圧の監視結果を圧力印加部41に出力してもよい。
【0165】
図13が示すように、制御装置31は、引き込みを開始させる指令SG4を圧力印加部41に入力してもよい。圧力印加部41は、対象物CMの周囲に存在する流体を定量的に通路11に引き込む。圧力印加部41は、第2センサー22による吸引圧を、検知結果SG2に含めて、検知結果SG2を制御装置31に出力し続けてもよい。制御装置31は、検知結果SG2に含まれる吸引圧に基づいて、対象物CMの存否を検知してもよい。吸引圧による対象物CMの存否の検知は、吸引圧が負の方向で増大した否か、吸引圧が負の方向で所定値以上であるか否か、あるいは、吸引圧に変動が認められたか否かの判断結果でもよい。
【0166】
制御装置31は、押し出しを開始させる指令SG4を圧力印加部41に入力してもよい。圧力印加部41は、第2センサー22による排出圧を、検知結果SG2に含めて、検知結果SG2を制御装置31に出力し続けてもよい。制御装置31は、検知結果SG2に含まれる排出圧に基づいて、対象物CMの存否を検知してもよい。排出圧による対象物CMの存否の検知は、排出圧が正の方向で減少したか否か、排出圧が正の方向で所定値以下であるか否か、あるいは、排出圧に変動が認められたか否かの判断結果でもよい。
【0167】
対象物CMを通路11に引き込むための吸引圧は、流体のみを通路11に引き込むための吸引圧と比べて、負の方向に大きくなる。吸引圧が負の方向に増大することは、対象物CMが通路11の開口に引き込まれた直後であることの指標となる。流体のみを通路11から押し出すための排出圧は、対象物CMを通路11から押し出すための排出圧と比べて、正の方向に小さくなる。排出圧が正の方向に減少することは、対象物CMが通路11の開口から押し出された直後であることの指標となる。
【0168】
なお、圧力印加部41は、対象物CMの周囲に存在する流体を定量的に内挿部材11BLに引き込んでもよい。この際も、圧力印加部41は、第2センサー22による吸引圧を、検知結果SG2に含めて、検知結果SG2を制御装置31に出力し続けてもよい。制御装置31は、検知結果SG2に含まれる吸引圧に基づいて、内挿部材11BLの保持端11Bでの対象物CMの存否を検知してもよい。また、圧力印加部41は、第2センサー22による排出圧を、検知結果SG2に含めて、検知結果SG2を制御装置31に出力し続けてもよい。制御装置31は、検知結果SG2に含まれる排出圧に基づいて、内挿部材11BLの保持端11Bでの対象物CMの存否を検知してもよい。
【0169】
このように、通路11の外部で対象物CMの存否を検知することが可能であるから、対象物CMの状況を移送過程で把握するための構成における自由度を拡張することが可能ともなる。さらに、対象物CMに接触することなく対象物CMの存否を検知すること、および、移送に要する負荷以外のエネルギーを対象物CMに与えることなく対象物CMの存否を検知することが可能である。そのため、対象物CMの状況把握に際し、細胞の生存率や細胞の活性度合いに与える影響を軽減することが可能ともなる。なお、第2センサーが吸引圧を監視する変更例は、当該第2センサーを別途備えることを前提として、先に説明したセンサーの機能に係る変更例、あるいはセンサーの配置に係る変更例と組み合わせて実施することもできる。
【0170】
[ユニット]
・通路11、第1センサー21、および第2センサー22は、単一のユニットを構成してもよい。細胞移送装置は、複数のユニットを備え、各通路11に接続された別々の圧力印加部41を同時に駆動してもよいし、各通路11に共通する単一の圧力印加部41を駆動してもよい。これにより、細胞移送装置は、各通路11に別々の対象物CMを各通路11において同時に吸引してもよい。
【0171】
これによれば、複数の通路11が同時に対象物CMを吸引するため、移送過程における対象物CMの状況把握と、移送効率の向上と、を両立することができる。特に、多数の毛包原基を別々の対象物CMとして移送することを求められる再生技術において、移送効率の向上が著しい。なお、各通路11の圧力を同時に変更する変更例は、先に説明したセンサーの機能に係る変更例、センサーの配置に係る変更例、内挿部材を備える変更例、および吸引圧を監視する変更例のなかの少なくとも1つと組み合わせて実施することもできる。
【符号の説明】
【0172】
CM…対象物
LA…第1距離
LB…第2距離
11…通路
11BL…内挿部材
12…開口
13…基端
21…第1センサー
22…第2センサー
31…制御装置
32…推定部
33…記憶部
41…圧力印加部
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