(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042744
(43)【公開日】2022-03-15
(54)【発明の名称】歯ブラシ
(51)【国際特許分類】
A46B 5/00 20060101AFI20220308BHJP
【FI】
A46B5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020148309
(22)【出願日】2020-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】亀井 誠一
【テーマコード(参考)】
3B202
【Fターム(参考)】
3B202AA06
3B202AB00
3B202AB01
3B202BB04
3B202CA05
3B202CB08
(57)【要約】
【課題】耐疲労強度を確保した透明系の歯ブラシを提供する。
【解決手段】ブラシ本体は、透明系飽和ポリエステル樹脂で形成さる。第1方向について、ヘッド部の厚さは全領域において2mm以上、3.8mm以下である。第2方向について、ネック部の最小幅は5.3mm以下であり、ネック部が最小幅となる長軸方向の位置をWとし、位置Wにおける第1方向の断面二次モーメントをW1とし、ヘッド部における長軸方向、第1方向および第2方向の中心Sにおける第1方向の断面二次モーメントをS1とし、把持部における長軸方向、第1方向および第2方向の中心Tにおける第1方向の断面二次モーメントをT1とすると、断面二次モーメントW1は、20mm
4以上、50mm
4以下であり、 W1/S1で表される値は、0.9以上、1.9以下であり、T1/W1で表される値は、6以上、26以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側に位置し植毛面を有するヘッド部と、前記ヘッド部より後端側に配置された把持部と、前記ヘッド部と前記把持部との間に配置されたネック部と、
を有するブラシ本体を備え、
前記ブラシ本体は、透明系飽和ポリエステル樹脂で形成され、
前記植毛面と直交する第1方向について、前記ヘッド部の厚さは全領域において2mm以上、3.8mm以下であり、
前記ブラシ本体が延びる長軸方向と前記第1方向とに直交する第2方向について、前記ネック部の最小幅は5.3mm以下であり、
前記ネック部が前記最小幅となる前記長軸方向の位置をWとし、前記位置Wにおける前記第1方向の曲げに関する断面二次モーメントをW1とし、
前記ヘッド部における前記長軸方向、前記第1方向および前記第2方向のそれぞれで中央となる中心をSとし、前記中心Sにおける前記第1方向の曲げに関する断面二次モーメントをS1とし、
前記把持部における前記長軸方向、前記第1方向および前記第2方向のそれぞれで中央となる中心をTとし、前記中心Tにおける前記第1方向の曲げに関する断面二次モーメントをT1とすると、
前記断面二次モーメントW1は、20mm4以上、50mm4以下であり、
W1/S1で表される値は、0.9以上、1.9以下であり、
T1/W1で表される値は、6以上、26以下であることを特徴とする歯ブラシ。
【請求項2】
前記第1方向で前記植毛面側である正面側から視た正面視における前記ネック部の撓み領域の前記長軸方向の長さに対して中間となる位置をHとし、位置Hにおける前記第1方向の曲げに関する断面二次モーメントをH1とすると、
前記位置Hにおける前記第2方向の幅は、5.5mm以下であり、且つ、前記断面二次モーメントH1は、28mm4以上、70mm4以下であり、
前記位置Hを起点として、前記ヘッド部側に15mm離れた位置をQとし、前記把持部側に10mm離れた位置をRとし、位置Qにおける前記第1方向の曲げに関する断面二次モーメントをQ1とし、位置Rにおける前記第1方向の曲げに関する断面二次モーメントをR1とすると、
H1/Q1で表される値は、1.0以上、2.0以下であり、
R1/H1で表される値は、1.7以上、3.0以下である、
請求項1に記載の歯ブラシ。
【請求項3】
前記撓み領域における前記正面視で前記長軸方向の前記先端側の端部は、前記植毛面に設けられた複数の植毛穴のうち、最も前記後端側に位置する前記植毛穴における前記後端側の縁の位置であり、
前記撓み領域における前記正面視で前記長さ方向の前記後端側の端部は、前記把持部の先端側の端部であり、
前記撓み領域における前記長さ方向の前記後端側の端部を位置Iとすると、
前記位置Hと前記位置Iとの間における前記正面視で前記第2方向の外形輪郭線において、前記先端側の端点と前記後端側の端点とを結ぶ直線は、前記長軸方向に対して1.9°以上、6.5°以下の傾きであり、
前記第2方向の一方側から視た側面視で前記位置Hと前記位置Iとの間における前記第1方向で前記正面側とは逆側である背面側の外形輪郭線において、前記先端側の端点と前記後端側の端点とを結ぶ直線は、前記長軸方向に対して3.0°以上、5.3°以下の傾きである、
請求項2に記載の歯ブラシ。
【請求項4】
前記位置Iから前記後端側に20mm離れた位置をUとすると、
前記側面視で前記中心Sと、前記正面側の前記外形輪郭線における位置H、位置Iおよび位置Uとは略直線上にあり、
前記側面視で前記中心Sと、前記背面側の前記外形輪郭線における位置H、位置Iおよび位置Uとは略直線上にあり、
前記側面視で前記外形輪郭線における位置H、位置Iおよび位置Uは、前記中心Sを起点として前記長軸方向に延びる直線からの距離がいずれも5mm以下である、
請求項3に記載の歯ブラシ。
【請求項5】
前記中心Sと前記位置Uとの間において、前記側面視の前記外形輪郭線は全て半径45mm以上の円弧と直線とから選択された線で形成され、
前記中心Sと前記位置Uとの間において、前記側面視の前記外形輪郭線における任意の二点を結んだ直線は、前記中心Sを起点として前記長軸方向に延びる直線に対する交差角度が8°以下である、
請求項4に記載の歯ブラシ。
【請求項6】
前記透明系飽和ポリエステル樹脂は、PCTA樹脂である、
請求項1から5のいずれか一項に記載の歯ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯ブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
う蝕や歯周病の予防にはプラークコントロールが重要である。従来、う蝕好発部位である奥歯の奥のプラークを除去するために、ヘッド部を薄く、ネック部を細くした仕様で奥歯到達性を高めた歯ブラシが開発されてきた。
【0003】
薄型のヘッド部を有する歯ブラシの開発時に、PP(ポリプロピレン)などの汎用樹脂を用いた際に留意することは、PPが比較的柔らかい樹脂であることから、口腔内操作性を確保しながら、使用時のネック部の撓みを抑制することである。そのため、当該課題を解決する施策としては、ネック領域における最適な「撓み挙動」、「幅と厚みの推移」、および「湾曲形状」などの工夫が報告されている(例えば、特許文献1~特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2017/155033号
【特許文献2】国際公開第2018/079114号
【特許文献3】国際公開第2018/079115号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在市場に出ている薄型ヘッド部を有する歯ブラシの多くは不透明樹脂であるPPやPOM(ポリアセタール)であるため、外観差別性の観点から透明系(透明または半透明)樹脂によるヘッド部の薄型化が望まれている。従来、歯ブラシ用の透明系樹脂としてはポリエステル系が主に使われてきたが、当該樹脂は一般的に耐疲労強度に課題がある。
【0006】
具体的には、ポリエステル系樹脂は、瞬間的な衝撃には強いものの、比較的軽い力を継続して受けると破断しやすいというPPにはない特性を有している(PPは自身が塑性変形するので破断しづらい)。そのため、ポリエステル系樹脂によるヘッド部の薄型化は技術的難易度が高いものであった。
【0007】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、耐疲労強度を確保した透明系の歯ブラシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
疲労破断は一般的にネック部で起こるため、耐疲労強度の確保には負荷エネルギーがネック部領域に蓄積しないようにすることが大事である。そこで、本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、従来の薄型化施策として使われた、ネック部に特化した断面形状推移(すなわち、ネック部自体の強化)ではなく、当該エネルギーを広範囲に分散させるために、ヘッド部、ネック部および把持部の各位置における断面2次モーメントのバランスを適正化することで、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
具体的には、本発明の第1の態様に従えば、先端側に位置し植毛面を有するヘッド部と、前記ヘッド部より後端側に配置された把持部と、前記ヘッド部と前記把持部との間に配置されたネック部と、を有するブラシ本体を備え、前記ブラシ本体は、透明系飽和ポリエステル樹脂で形成され、前記植毛面と直交する第1方向について、前記ヘッド部の厚さは全領域において2mm以上、3.8mm以下であり、前記ブラシ本体が延びる長軸方向と前記第1方向とに直交する第2方向について、前記ネック部の最小幅は5.3mm以下であり、前記ネック部が前記最小幅となる前記長軸方向の位置をWとし、前記位置Wにおける前記第1方向の曲げに関する断面二次モーメントをW1とし、前記ヘッド部における前記長軸方向、前記第1方向および前記第2方向のそれぞれで中央となる中心をSとし、前記中心Sにおける前記第1方向の曲げに関する断面二次モーメントをS1とし、前記把持部における前記長軸方向、前記第1方向および前記第2方向のそれぞれで中央となる中心をTとし、前記中心Tにおける前記第1方向の曲げに関する断面二次モーメントをT1とすると、前記断面二次モーメントW1は、20mm4以上、50mm4以下であり、W1/S1で表される値は、0.9以上、1.9以下であり、T1/W1で表される値は、6以上、26以下であることを特徴とする歯ブラシが提供される。
【0010】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記第1方向で前記植毛面側である正面側から視た正面視における前記ネック部の撓み領域の前記長軸方向の長さに対して中間となる位置をHとし、位置Hにおける前記第1方向の曲げに関する断面二次モーメントをH1とすると、前記位置Hにおける前記第2方向の幅は、5.5mm以下であり、且つ、前記断面二次モーメントH1は、28mm4以上、70mm4以下であり、前記位置Hを起点として、前記ヘッド部側に15mm離れた位置をQとし、前記把持部側に10mm離れた位置をRとし、位置Qにおける前記第1方向の曲げに関する断面二次モーメントをQ1とし、位置Rにおける前記第1方向の曲げに関する断面二次モーメントをR1とすると、H1/Q1で表される値は、1.0以上、2.0以下であり、R1/H1で表される値は、1.7以上、3.0以下であることを特徴とする。
【0011】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記撓み領域における前記正面視で前記長軸方向の前記先端側の端部は、前記植毛面に設けられた複数の植毛穴のうち、最も前記後端側に位置する前記植毛穴における前記後端側の縁の位置であり、前記撓み領域における前記正面視で前記長さ方向の前記後端側の端部は、前記把持部の先端側の端部であり、前記撓み領域における前記長さ方向の前記後端側の端部を位置Iとすると、前記位置Hと前記位置Iとの間における前記正面視で前記第2方向の外形輪郭線において、前記先端側の端点と前記後端側の端点とを結ぶ直線は、前記長軸方向に対して1.9°以上、6.5°以下の傾きであり、前記第2方向の一方側から視た側面視で前記位置Hと前記位置Iとの間における前記第1方向で前記正面側とは逆側である背面側の外形輪郭線において、前記先端側の端点と前記後端側の端点とを結ぶ直線は、前記長軸方向に対して3.0°以上、5.3°以下の傾きであることを特徴とする。
【0012】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記位置Iから前記後端側に20mm離れた位置をUとすると、前記側面視で前記中心Sと、前記正面側の前記外形輪郭線における位置H、位置Iおよび位置Uとは略直線上にあり、前記側面視で前記中心Sと、前記背面側の前記外形輪郭線における位置H、位置Iおよび位置Uとは略直線上にあり、前記側面視で前記外形輪郭線における位置H、位置Iおよび位置Uは、前記中心Sを起点として前記長軸方向に延びる直線からの距離がいずれも5mm以下であることを特徴とする。
【0013】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記中心Sと前記位置Uとの間において、前記側面視の前記外形輪郭線は全て半径45mm以上の円弧と直線とから選択された線で形成され、前記中心Sと前記位置Uとの間において、前記側面視の前記外形輪郭線における任意の二点を結んだ直線は、前記中心Sを起点として前記長軸方向に延びる直線に対する交差角度が8°以下であることを特徴とする。
【0014】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記透明系飽和ポリエステル樹脂は、PCTA樹脂であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、耐疲労強度を確保した透明系の歯ブラシを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態を示す図であって、歯ブラシ1の構成を示す側面図である。
【
図2】歯ブラシ1を植毛面5a側から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の歯ブラシの実施の形態を、
図1および
図2を参照して説明する。
なお、以下の実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせている。
【0018】
また、以下の説明では、後述するヘッド部3の植毛面3aが設けられた側(植毛面側)を歯ブラシ1の正面側とし、ヘッド部3の植毛面3aが臨む側とは逆側を歯ブラシ1の背面側とする。加えて、ブラシ本体2が延びる方向を長軸方向とし、植毛面3aと平行、且つ、長軸方向に直交する方向を歯ブラシ1の幅方向(第2方向)とし、植毛面3aに直交する方向を歯ブラシ1の厚さ方向(第1方向)として説明する。また、ヘッド部3が設けられる側(ヘッド部側)を先端側とし、把持部5が設けられる側(把持部側)を後端側として説明する。
【0019】
図1は、歯ブラシ1の構成を示す側面図である。
図2は、歯ブラシ1を植毛面3a側から見た正面図である。
図2においては、ブラシ40の図示を省略している。
【0020】
図1および
図2に示すように、本実施形態の歯ブラシ1は、全体として長尺状に形成された樹脂成形体からなるブラシ本体2とブラシ40とを備えている。
【0021】
ブラシ本体2は、先端側に位置し植毛面3aを有するヘッド部3と、ヘッド部3より後端側に配置された把持部5と、ヘッド部3と把持部5との間に配置されたネック部4と有している。歯ブラシ1は、ヘッド部3の植毛面3aに植設された複数の毛束(図示せず)を有するブラシ40により口腔内を清掃することが可能となっている。
【0022】
ブラシ本体2を構成する樹脂としては、透明または半透明となる透明系の非晶性の硬質樹脂で形成されている。本実施形態のブラシ本体2は、非晶性の硬質樹脂としてポリエステル樹脂が用いられている。非晶性のポリエステル樹脂としては、一例として、テレフタル酸(TA)とイソフタル酸(IPA)を主成分とするジカルボン酸成分と、1、4シクロヘキサンジメタノールジオール(CHDM)を主成分とするジオール成分から成るPCTA樹脂、あるいはポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアリレート樹脂が挙げられる。また、ポリエステル系以外の非晶性の樹脂としては、ポリスチレン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂が挙げられる。
【0023】
(ブラシ本体の正面側の外形輪郭線形状)
本実施形態の歯ブラシ1は、ブラシ本体2を側面視したときに、ブラシ本体2の正面側の外形輪郭線において、ヘッド部3の後端側から把持部5側に向けて、ヘッド部3の植毛面3aから連続して後端側に直線状に延びる第1直線領域L1と、正面側に曲率中心を有し第1直線領域L1の後端から後端側に円弧状に延びる第1曲線領域E1と、背面側に曲率中心を有し第1曲線領域E1の後端から後端側に円弧状に延びる第2曲線領域E2とを有している。また、歯ブラシ1は、側面視における正面側に、正面側に曲率中心を有し第2曲線領域E2の後端から後端側に円弧状に延びる第3曲線領域E3と、背面側に曲率中心を有し第3曲線領域E3の後端から後端側に円弧状に延びる第4曲線領域E4とを有している。さらに、歯ブラシ1は、側面視における正面側に、正面側に曲率中心を有し第4曲線領域E4の後端から後端側に円弧状に延びる第5曲線領域E5と、背面側に曲率中心を有し第5曲線領域E5の後端から後端側に円弧状に延びる第6曲線領域E6とを有している。
【0024】
(ブラシ本体の背面側の外形輪郭線形状)
本実施形態の歯ブラシ1は、ブラシ本体2を側面視したときに、ブラシ本体2の背面側の外形輪郭線において、ヘッド部3の後端側から把持部5側に向けて、ヘッド部3の背面から連続して後端側に直線状に延びる第2直線領域L2と、背面側に曲率中心を有し第2直線領域L2の後端側中途から後端側に円弧状に延びる第7曲線領域E7と、第7曲線領域E7の後端から後端側に長軸方向と平行に直線状に延びる第3直線領域L3とを有している。また、歯ブラシ1は、側面視における背面側に、背面側に曲率中心を有し第3直線領域L3の後端から後端側に円弧状に延びる第8曲線領域E8と、背面側に曲率中心を有し第8曲線領域E8の後端から後端側に円弧状に延びる第9曲線領域E9と、正面側に曲率中心を有し第9曲線領域E9の後端から後端側に円弧状に延びる第10曲線領域E10とを有している。さらに、歯ブラシ1は、側面視における背面側に、背面側に曲率中心を有し第10曲線領域E10の後端から後端側に円弧状に延びる第11曲線領域E11と、正面側に曲率中心を有し第11曲線領域E11の後端から後端側に円弧状に延びる第12曲線領域E12と、第12曲線領域E12の後端から後端側に長軸方向と平行に直線状に延びる第4直線領域L4とを有している。
【0025】
(ブラシ本体の幅方向両側の外形輪郭線形状)
本実施形態の歯ブラシ1は、ブラシ本体2を正面視したときに、幅方向の中心に位置し長軸方向に延びる中心線に対してブラシ本体2の幅方向両側の外形輪郭線が線対称に形成されている。そのため、以下の説明では、幅方向の一方側(
図2中、下側)の外形輪郭線について説明する。また、円弧状に延びる曲線領域の曲率中心の位置については、外形輪郭線に対して幅方向の中心側の場合を内側とし、幅方向の中心と逆側の場合を外側と称する。
【0026】
本実施形態の歯ブラシ1は、ブラシ本体2を正面視したときに、ブラシ本体2の幅方向の外形輪郭線において、ヘッド部3とネック部4との境界(詳細は後述)から後端側に直線状に延びる第5直線領域L5と、外側に曲率中心を有し第5直線領域L5の後端側中途から後端側に円弧状に延びる第13曲線領域E13と、内側に曲率中心を有し第13曲線領域E13の後端から後端側に円弧状に延びる第14曲線領域E14とを有している。また、本実施形態の歯ブラシ1は、ブラシ本体2の正面視において、外側に曲率中心を有し第14曲線領域E14の後端から後端側に円弧状に延びる第15曲線領域E15と、内側に曲率中心を有し第15曲線領域E15の後端から後端側に円弧状に延びる第16曲線領域E16とを有している。さらに、歯ブラシ1は、ブラシ本体2の正面視において、外側に曲率中心を有し第16曲線領域E16の後端から後端側に円弧状に延びる第17曲線領域E17と、内側に曲率中心を有し第17曲線領域E17の後端から後端側に円弧状に延びる第18曲線領域E18とを有している。
【0027】
(ヘッド部)
ヘッド部3は、複数の毛束により口腔内を刷掃する部分であり、略直方体状を為すと共に、角部が丸みを帯びた形状を有している。ヘッド部3は、正面視において4つの頂部が曲線で隅切りされた略四角形の平板状の形状を有している。本実施形態において、ヘッド部3とネック部4との境界は、ヘッド部3の正面視形状における、ネック部4側の隅切を形成する曲線の終点、すなわち、隅切を形成する曲線の曲がり方向が変化する位置である。
【0028】
ヘッド部3は、正面側に植毛面3aを有している。植毛面3aには、同一径の植毛穴6が複数並んで配置されている。植毛穴6は、ヘッド部3の幅方向の長さに応じた幅方向に間隔をあけて複数個(
図2では、2~4個)配列された列が長軸方向に間隔をあけて複数列(
図2では8列)設けられている。植毛穴6には、ブラシ40を構成する毛束がそれぞれ植毛されている。
【0029】
毛束は、複数本の刷毛(フィラメント)を束ねて二つ折りにし、その間に平線と呼ばれる金属製の抜止め具(図示せず)を挟んで植毛穴6に打ち込むことによって、各植毛穴6に植設されている。ヘッド部3は、正面側の植毛面3aと背面側の面とが互いに平坦で平行な面を形成している。
【0030】
ヘッド部3は、口腔内を刷掃し易い形状や大きさであればよく、その形状について特に限定されるものではなく、例えば、その基端側から先端側に向かって漸次幅が狭くなる形状としてもよい。また、ヘッド部3は、その基端側から先端側に向かって漸次厚みが薄くなるテーパー形状であってもよく、ヘッド部3の背面側の中央部が盛り上がった丸みのある形状であってもよい。
【0031】
ヘッド部3の全領域における厚さは、2mm以上、3.8mm以下であることが好ましく、3.0~3.7mmであることがより好ましく、3.1~3.5mmであることがさらに好ましい。なお、ヘッド部3の厚さが一定でない場合、ヘッド部3の厚さは、ヘッド部3の最大厚さとして定義される。
ヘッド部3の厚さが2mm未満の場合、耐久性が低下する可能性がある。ヘッド部3の厚さが3.8mmを超えた場合、奥歯への挿入性や操作性が低下する可能性がある。ヘッド部3の厚さを2mm以上、3.8mm以下とすることにより、耐久性が低下することなく、奥歯への挿入性や操作性を向上させることができる。
【0032】
(ネック部)
ネック部4は、把持部5とヘッド部3との間に配置され把持部5とヘッド部3とを連結する部分である。本実施形態では、正面視及び側面視におけるネック部4と把持部5との外形輪郭線は、ヘッド部3とネック部4の境界から把持部5側に向けて直線および緩やかな曲線が複数繋がった形状である。そして、正面視において、
図2に示した第14曲線領域E14と第15曲線領域E15との交点であり曲率が変化する位置Iをネック部4と把持部5との境界とする。なお、上記の曲率変化が不明瞭な場合、あるいは曲率変化する位置が存在しない場合は、ブラシ本体2の全長に対してブラシ本体2(ヘッド部3)の先端から42.2%の位置(例えば、ブラシ本体2の全長が180mmの場合、ブラシ本体2の先端から76.0mmの位置)を境界とする。
【0033】
ネック部4の長軸方向の長さは、正面視における位置W(詳細は後述)と位置Iとの最短距離と定義する。ネック部4の長さは25~45mmであることが好ましく、25~40mmであることがさらに好ましい。
ネック部4の長さを上記範囲とすることで、奥歯への挿入性および奥歯の清掃時の操作性を向上させることができる。
【0034】
ネック部4は、ヘッド部3との境界から把持部5に向けて、正面視で外形輪郭線が第5直線領域L5で形成される領域が一定の最小幅であり、外形輪郭線が第13曲線領域E13および第14曲線領域E14で形成される領域が最小幅から幅が漸次広くなる。ネック部4の最小幅は、5.3mm以下であることが好ましく、5.0mm以下であることがより好ましく、4.8mm以下であることがさらに好ましい。ネック部4の最小幅を5.3mm以下とすることにより、奥歯への挿入性や操作性を向上させることができる。ネック部4の最小幅は、強度面から3.5mm以上であることが好ましい。
【0035】
ネック部4は、ヘッド部3との境界から把持部5に向けて、側面視で外形輪郭線が第1直線領域L1と第3直線領域L3とで形成される領域が一定の最小厚さであり、外形輪郭線が曲線領域E1、E2および曲線領域E8、E9で形成される領域が最小厚さから厚さが漸次広くなる。位置W(詳細は後述)におけるネック部4の最小厚さは、5.3mm以下であることが好ましく、5.0mm以下であることがより好ましく、4.8mm以下であることがさらに好ましい。ネック部4の最小厚さが5.3mmを超えた場合、奥歯への挿入性や操作性が低下する可能性がある。ネック部4の最小厚さは、強度面から3.5mm以上であることが好ましい。
【0036】
ネック部4において最小幅となる長軸方向の位置をWとし、位置Wにおける厚さ方向の曲げに関する断面二次モーメント(幅×厚さ3/12)をW1とすると、断面二次モーメントW1は、20mm4以上、50mm4以下であることが好ましく、25mm4以上、50mm4以下であることがより好ましく、30mm4以上、45mm4以下であることがさらに好ましい。
【0037】
断面二次モーメントW1が50mm4を超えた場合、奥歯の頬側を磨く際に唇でネック部4を幅方向に挟み込むため抵抗を感じ、口腔内操作性が低下する。断面二次モーメントW1が20mm4未満の場合、十分な耐疲労性を得ることが困難になる。断面二次モーメントW1を20mm4以上、50mm4以下とすることにより、良好な口腔内操作性と十分な耐疲労性を得ることができる。
【0038】
また、ヘッド部3における長軸方向、厚さ方向および幅方向のそれぞれで中央となる中心をSとし、中心Sにおける厚さ方向の曲げに関する断面二次モーメントをS1とすると、W1/S1表される値は、0.9以上、1.9以下であることが好ましく、0.9以上、1.8以下であることがより好ましく、1.0以上、1.8以下であることがさらに好ましい。
【0039】
W1/S1表される値が0.9よりも小さい場合、ヘッド部3がネック部4と比較して撓みにくくなる。この場合、厚さ方向の曲げに伴う応力集中がネック部3の先端側に生じやすくなり耐疲労性が不利になるとともに、負荷エネルギーを把持部5側に伝達しづらくなる。W1/S1表される値が1.9よりも大きい場合、ヘッド部3と比べてネック部4が撓みにくくなる。この場合、ヘッド部3の撓み易さに対してネック部4が連動して撓まず、撓み挙動の乖離が大きくなることから、負荷エネルギーを把持部5側に伝達しづらくなり、ネック部4の領域のみで負荷を負担することになってしまう。
【0040】
ネック部4は、ヘッド部3に負荷が加わった際に撓む撓み領域4Aを有している。撓み領域4Aは、先端側の端部がヘッド部3の後端側の位置Gであり、後端側の端部がネック部4と把持部5との境界(すなわち、把持部5の先端側端部)の位置Iである。撓み領域4Aにおける先端側の位置Gは、
図2に示されるように、植毛面3aに設けられた複数の植毛穴6のうち、最も後端側に位置する植毛穴6aにおける後端側の縁の位置である。
【0041】
撓み領域4Aの長軸方向の長さに対して中間位置となる長軸方向の位置をHとし、位置Hにおける厚さ方向の曲げに関する断面二次モーメントをH1とすると、位置Hにおけるネック部4の幅は、5.5mm以下であることが好ましい。位置Hにおけるネック部4の幅を5.5mm以下とすることにより、ネック部4の中間位置においても良好な奥歯への挿入性および操作性が得られる。
【0042】
また、断面二次モーメントH1は、28mm4以上、70mm4以下であることが好ましく、35mm4以上、63mm4以下であることがより好ましく、37mm4以上、60mm4以下であることがさらに好ましい。断面二次モーメントH1が70mm4を超えた場合、奥歯の頬側を磨く際に唇でネック部4を幅方向に挟み込むため抵抗を感じ、口腔内操作性が低下する。断面二次モーメントH1が28mm4未満の場合、十分な耐疲労性を得ることが困難になる。断面二次モーメントH1を28mm4以上、70mm4以下とすることにより、良好な口腔内操作性と十分な耐疲労性を得ることができる。
【0043】
ネック部4において、位置Hを起点として、ヘッド部3側に15mm離れた位置をQとし、位置Qにおける厚さ方向の曲げに関する断面二次モーメントをQ1とすると、H1/Q1で表される値は、1.0以上、2.0以下であることが好ましく、1.1以上、1.5以下であることがより好ましい。また、位置Hを起点として、把持部5側に10mm離れた位置をRとし、位置Rにおける厚さ方向の曲げに関する断面二次モーメントをR1とすると、R1/H1で表される値は、1.7以上、3.0以下であることが好ましく、1.9以上、2.8以下であることがより好ましい。
【0044】
H1/Q1で表される値およびR1/H1で表される値を上記の範囲とすることにより、位置Hの幅が大きくなり口腔内操作性を低下させることなく、厚さ方向の曲げに伴う応力集中を断面二次モーメントが大きく曲げ強度が大きい後端側に移行させて耐疲労性を確保することができる。
【0045】
図2に示すように、位置Hと位置Iとの間における正面視で幅方向の外形輪郭線において、先端側の端点P1と後端側の端点P2とを結ぶ直線は、長軸方向に対して1.9°以上、6.5°以下の角度(以下、角度θ12と称する)で傾いて交差することが好ましい。
図1に示すように、位置Hと位置Iとの間における側面視で背面側の外形輪郭線において、先端側の端点P4と後端側の端点P5とを結ぶ直線は、長軸方向に対して3.0°以上、5.3°以下の角度(以下、角度θ45と称する)で傾いて交差することが好ましい。
【0046】
また、
図2に示すように、位置Wと位置Iとの間における正面視で幅方向の外形輪郭線において、先端側の端点P3と後端側の端点P2とを結ぶ直線は、長軸方向に対して1.9°以上、4.5°以下、好ましくは2.5°以上、4.0°以下の角度(以下、角度θ32と称する)で傾いて交差することが好ましい。
図1に示すように、位置Wと位置Iとの間における側面視で背面側の外形輪郭線において、先端側の端点P6と後端側の端点P5とを結ぶ直線は、長軸方向に対して2.0°以上、3.5°以下、好ましくは2.0°以上、3.0°以下の角度(以下、角度θ65と称する)で傾いて交差することが好ましい。
なお、最小幅となる位置が長軸方向で一箇所以上あるときの位置Wは、最小幅となる最も先端側の位置とする。
【0047】
そして、位置Wと位置Hとの間における正面視で幅方向の外形輪郭線において、先端側の端点P3と後端側の端点P1とを結ぶ直線は、長軸方向に対して3°以下、好ましくは1°以下の角度(以下、角度θ31と称する)であることが好ましい。位置Wと位置Hとの間における側面視で背面側の外形輪郭線において、先端側の端点P6と後端側の端点P4とを結ぶ直線は、長軸方向に対して3°以下、好ましくは1°以下の角度(以下、角度θ64と称する)で傾いて交差することが好ましい。
【0048】
ネック部4が最小幅となる位置Wと位置Hとの間においては、長軸方向に対して外形輪郭線が傾く角度が小さいことが磨き心地および口腔内操作性の観点から好ましい。一方、位置Hより後端側、すなわち位置Hと位置Iとの間において、上記角度が急激に大きくなると位置Wと位置Hとの間における磨き心地および口腔内操作性の効果が損なわれる可能性がある。そのため、外形輪郭線において、位置Hと位置Iとの間における正面視での上記角度θ12と側面視での上記角度θ45を上記の範囲とし、位置Wと位置Iとの間における正面視での上記角度θ32と側面視での上記角度θ65を上記の範囲として、後端側に向けて幅および厚さを緩やかに大きくすることにより、ネック部4の全体で磨き心地および口腔内操作性を確保できる。
【0049】
上記の断面二次モーメントを満足すれば、ネック部4の断面形状は、略四角形、略多角形、真円形、楕円形であることが好ましい。
【0050】
(把持部)
把持部5は、使用者が把持する部分であり、長尺柱状に形成されている。この把持部5を把持して使用するのに十分な長さを確保するため、正面視における位置Wから把持部5の後端までの長さを100~200mmとすることが好ましい。
【0051】
把持部5は、ネック部4との境界の位置Iから後端側に向けて、正面視で外形輪郭線が第16曲線領域E16の極大値を示す位置まで幅が漸次広くなる。正面視で第16曲線領域E16が極大値を示す位置から後端側の外形輪郭線は、第17曲線領域E17が極小値を示す位置まで幅が漸次狭くなる。正面視で第17曲線領域E17が極小値を示す位置から後端側の外形輪郭線は、第18曲線領域E18が極大値を示す位置まで幅が漸次広くなる。本実施形態の把持部5は、第18曲線領域E18が極大値を示す位置で最大幅となる。正面視で第18曲線領域E18が極大値を示す位置から後端側の外形輪郭線は、後端側の端部まで幅が漸次狭くなる。
【0052】
把持部5は、ネック部4との境界の位置Iから後端側に向けて、側面視で外形輪郭線が第3曲線領域E3の極小値を示す位置まで厚さが漸次小さくなる。側面視で第3曲線領域E3が極小値を示す位置から後端側の外形輪郭線は、第4曲線領域E4が極大値を示す位置まで厚さが漸次大きくなる。側面視で第4曲線領域E4が極大値を示す位置から後端側の外形輪郭線は、第5曲線領域E5が極小値を示す位置まで厚さが漸次小さくなる。側面視で第5曲線領域E5が極小値を示す位置から後端側の外形輪郭線は、第6曲線領域E6が極大値を示す位置まで厚さが漸次大きくなる。
【0053】
図1および
図2に示すように、把持部5における長軸方向、厚さ方向および幅方向のそれぞれで中央となる中心をTとし、中心Tにおける厚さ方向の曲げに関する断面二次モーメントをT1とすると、T1/W1で表される値は、6以上、26以下であることが好ましく、7以上、20以下であることがより好ましく、7以上、14以下であることがさらに好ましい。
【0054】
T1/W1で表される値が6よりも小さい場合、ネック部4が把持部5と比較して撓みにくくなり、厚さ方向の曲げに伴う応力集中がネック部3の先端側に生じやすくなり強度的に不利になる。一方、T1/W1で表される値が26よりも大きい場合、ネック部4の撓みに対して把持部5の撓みが過度に抑制され、ネック部4と把持部5との境界付近で応力集中しやすくなり強度的に問題が生じる可能性がある。
【0055】
そのため、上述したように、断面二次モーメントW1を20mm4以上、50mm4以下とし、W1/S1表される値を0.9以上、1.9以下とし、T1/W1で表される値を6以上、26以下とすることにより、中心S、位置Wおよび中心T間の撓み挙動を制御することができる。すなわち、断面二次モーメントを上記に設定することにより、ヘッド部3の先端から把持部5に向かって、断面二次モーメントが滑らかに増加することで、断面二次モーメントが緩やかに変化する。これにより、本実施形態の歯ブラシ1では、常に先端側が撓みやすく、後端側が撓みにくくなり、ブラシ本体2に透明系飽和ポリエステル樹脂を用いた場合でも負荷エネルギーが局所的に留まらずに、先端側から耐疲労性として有利な後端側へ円滑に移行させることができる。
【0056】
また、把持部5において最大厚さとなる長軸方向の位置をTaとし、位置Taにおける厚さ方向の曲げに関する断面二次モーメントをTa1とすると、Ta1/W1で表される値は、7以上、35以下であることが好ましい。本実施形態では、位置Taは位置Iと同一位置である。Ta1/W1で表される値が7よりも小さい場合、ネック部4が把持部5と比較して撓みにくくなり、厚さ方向の曲げに伴う応力集中がネック部3の先端側に生じやすくなり強度的に不利になる。一方、Ta1/W1で表される値が35よりも大きい場合、ネック部4の撓みに対して把持部5の撓みが過度に抑制され、ネック部4と把持部5との境界付近で応力集中しやすくなり強度的に問題が生じる可能性がある。
【0057】
図1に示すように、把持部5において、位置Iから後端側に20mm離れた位置をUとし、側面視で位置Uにおける背面側の外形輪郭線上の点をP7とすると、中心S、上述した位置Hの端点P4、位置Iの端点P5および位置Uの点P7は、略直線上にある。同様に、側面視で正面側の外形輪郭線上における位置Hの点をP8とし、位置Iの点をP9とし、位置Uの点をP10とすると、中心S、位置Hの点P8、位置Iの点P9および位置Uの点P10は、略直線上にある。ここで、略直線上とは、中心Sを起点として長軸方向に延びる直線をSLとすると、上記の端点P4、端点P5、点P7、点P8、点P9および点P10は、直線SLからの距離がいずれも5mm以下であることを指す。上記の端点P4、端点P5、点P7、点P8、点P9および点P10が上記の位置にあることにより、歯ブラシ1の先端側から後端側にかけて厚さ方向に大きく湾曲する部分が設けられないことになる。そのため、歯ブラシ1においては、応力負荷が局所的に滞留することを防ぎ、曲げ強度が大きい把持部5側に滑らかに移行することができる。
【0058】
中心Sと位置Uとの間において、側面視の外形輪郭線は全て半径45mm以上の円弧と直線とから選択された線で形成されていることが好ましい。中心Sと位置Uとの間において、側面視の外形輪郭線における任意の二点を結んだ直線は、中心Sを起点として長軸方向に延びる直線SLに対する交差角度が8°以下であることが好ましい。
中心Sと位置Uとの間において、側面視の外形輪郭線を上記の規定とすることにより、歯ブラシ1においては、側面視の外形輪郭線に大きな凹凸部が設けられないことになり、さらに応力負荷が局所的に滞留することを防ぎ、曲げ強度が大きい把持部5側に滑らかに移行することができる。
【0059】
位置Uにおける厚さ方向の曲げに関する断面二次モーメントをU1とすると、U1/W1で表される値は、6以上、25以下であることが好ましく、7以上、20以下であることがより好ましい。U1/W1で表される値が6よりも小さい場合、ネック部4が把持部5と比較して撓みにくくなり、厚さ方向の曲げに伴う応力集中がネック部3の先端側に生じやすくなり強度的に不利になる。一方、U1/W1で表される値が25よりも大きい場合、ネック部4の撓みに対して把持部5の撓みが過度に抑制され、ネック部4と把持部5との境界付近で応力集中しやすくなり強度的に問題が生じる可能性がある。
【0060】
図1に示すように、把持部5において、位置Iから先端側に10mm離れた位置をJとし、位置Jにおける厚さ方向の曲げに関する断面二次モーメントをJ1とし、上述した位置Iにおける厚さ方向の曲げに関する断面二次モーメントをI1とすると、I1/J1で表される値は、2.0以上、6.0以下であることが好ましく、2.5以上、4.0以下であることがより好ましい。また、U1/I1で表される値は、0.5以上、1.1以下であることが好ましい。
【0061】
I1/J1で表される値およびU1/I1で表される値が上記の範囲である場合には、ネック部4と把持部5の境界付近において応力負荷が局所的に滞留することを防ぎ(抑制し)、曲げ強度が大きい把持部5側に滑らかに移行することができる。
【0062】
上記の位置Qと位置Rとの間においては、正面視で半径が100mm以上、500mm以下の円弧状の曲線または長軸方向に延びる直線に対して1.7°以上、4°以下の角度で交差する直線で外形輪郭線が形成されることが好ましく、1.8°以上、3°以下の角度で交差する直線で外形輪郭線が形成されることがより好ましい。
また、上記の位置Qと位置Rとの間においては、側面視で半径200mm以上の円弧状の曲線または長軸方向に延びる直線に対して1.0°以上、1.4°以下の角度で交差する直線で外形輪郭線が形成されることが好ましい。
【0063】
ネック部4の位置Qと位置Rとの間において、正面視および側面視の外形輪郭線を上記の規定とすることにより、位置Qと位置Rとの間でネック部4の断面積が緩やかに増加することになり、さらに応力負荷が曲げ強度が大きい把持部5側にさらに滑らかに移行することができる。
【0064】
以上説明したように、本実施形態の歯ブラシ1では、ヘッド部3、ネック部4および把持部5の各部位における断面二次モーメント比を適正化することで、負荷エネルギーが局所的に留まらず、耐疲労性として有利な後端側の部位へ移行でき、耐疲労強度を確保した透明系の歯ブラシ1を提供することが可能になる。
【実施例0065】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0066】
(実施例1~7、比較例1~6)
本実施例では、下記[表1A]、[表1B]に示す仕様に従って、実施例1~7、比較例1~6の歯ブラシを、
図1および
図2に示した歯ブラシと同様のサンプルを作製した。
各例の歯ブラシのハンドル体の全長は180mmであり、各部位は表1に示す寸法とした。ブラシ本体は、PCTA樹脂を用いた。
【0067】
[評価方法]
(1)疲労耐久性
[試験方法]疲労耐久性については、把持部における後端から60mm部分を固定し、ヘッド部に50mmの変位を240rpmの速さで繰り返し負荷した(サンプル数;n=5)。
上記の負荷を繰り返し100万回付与した際に全て破断せず、且つ全てクラックが発生しない場合を「A」とし、100万回付与した際に全て破断せず、0.5mm未満のクラックが1本でも確認できる場合を「B」とし、100万回付与した際に全て破断せず、0.5mm以上のクラックが1本でも確認できる場合を「C」とし、90~100万回付与の間で破断が1本以内の場合を「D」とし、80~90万回付与した間で破断が1本以内の場合を「E」とし、50~80万回付与した際に1本でも破断した場合を「F」とし、50万回未満の付与で1本でも破断した場合を「G」とした。
【0068】
(2)口腔内操作性
[試験方法]10人のモニターが口腔内を清掃し、各例の歯ブラシの操作性について評価した。
操作性の評価は、1点~7点の7段階とされ、操作性が良好であると感じたものほど、高い点数となっている。10人のモニターの平均点を下記判定基準に分類し、口腔内での操作性を判定した。
<判定基準>
A:平均点が6.0点以上
B:平均点が5.5点以上、6.0点未満
C:平均点が5.0点以上、5.5点未満
D:平均点が4.5点以上、5.0点未満
E:平均点が4.0点以上、4.5点未満
F;平均点が3.5点以上、4.0点未満
G:平均点が3.5点未満
【0069】
【0070】
【0071】
[表1A]、[表1B]に示されるように、ヘッド部の厚さが全領域において2mm以上、3.8mm以下であり、ネック部の最小幅が5.3mm以下であり、断面二次モーメントW1が、20mm4以上、50mm4以下であり、W1/S1で表される値が0.9以上、1.9以下であり、T1/W1で表される値が6以上、26以下である実施例1~7のサンプルでは、疲労耐久性、口腔内操作性および衝撃耐久性の全てで良好な結果が得られた。
【0072】
一方、断面二次モーメントに関してW1/S1で表される値が0.9以上、1.9以下の範囲から外れている比較例1のサンプルでは、疲労耐久性について良好な評価が得られなかった。ヘッド部の厚さ、ネック部の最小幅および断面二次モーメントW1が上記の好ましい範囲から外れている比較例2のサンプルでは、口腔内操作性について良好な評価が得られなかった。ヘッド部の厚さ、ネック部の最小幅および断面二次モーメントW1、T1/W1で表される値が上記の好ましい範囲から外れている比較例3のサンプルでは、口腔内操作性について良好な評価が得られなかった。
【0073】
ネック部の最小幅およびW1/S1で表される値が上記の好ましい範囲から外れている比較例4のサンプルでは、口腔内操作性について良好な評価が得られなかった。W1/S1で表される値が上記の好ましい範囲から外れている比較例5のサンプルでは、疲労耐久性について良好な評価が得られなかった。断面二次モーメントW1およびT1/W1で表される値が上記の好ましい範囲から外れている比較例6のサンプルでは、疲労耐久性について良好な評価が得られなかった。
【0074】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
1…歯ブラシ、 2…ブラシ本体、 3…ヘッド部、 3a…植毛面、 4…ネック部、 4A…撓み領域、 5…把持部、 6、6a…植毛穴、 S、T…中心