特開 2022-42770 組織補強材装着器及び組織補強材装着キット

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2022042770

(43)【公開日】2022-03-15

(54)【発明の名称】組織補強材装着器及び組織補強材装着キット

(51)【国際特許分類】

   A61B 17/072 20060101AFI20220308BHJP

   A61L 17/10 20060101ALN20220308BHJP

【ＦＩ】

A61B17/072

A61L17/10

【審査請求】未請求

【請求項の数】5

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2020148352

(22)【出願日】2020-09-03

(71)【出願人】

【識別番号】000001339

【氏名又は名称】グンゼ株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110000914

【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】三木 圭佑

(72)【発明者】

【氏名】丸市 直之

【テーマコード（参考）】

4C081

4C160

【Ｆターム（参考）】

4C081AC02

4C081CD02

4C160CC23

4C160CC40

(57)【要約】      （修正有）

【課題】貼付型組織補強材を短時間で正確かつ容易に自動縫合器へ装着することができる組織補強材装着器及び該組織補強材装着器を用いた組織補強材装着キットを提供する。
【解決手段】貼付型組織補強材を自動縫合器に固定するための組織補強材装着器であって、組織補強材装着器は固定部１を有し、固定部は１組の対向する面に前記自動縫合器の前記組織補強材を装着する部位の形状に対応した凹部１１を有し、凹部は固定部の少なくとも１つの端まで連続している組織補強材装着器。
【選択図】図２

【特許請求の範囲】

【請求項1】

貼付型組織補強材を自動縫合器に固定するための組織補強材装着器であって、
前記組織補強材装着器は、固定部を有し、
前記固定部は、１組の対向する面に前記自動縫合器の前記組織補強材を装着する部位の形状に対応した凹部を有し、
前記凹部は前記固定部の少なくとも１つの端まで連続している
ことを特徴とする組織補強材装着器。

【請求項2】

前記固定部を挟み込んで補強する外枠部を有し、前記外枠部は、前記固定部の凹部上に位置する部分全体に開口部を有することを特徴とする請求項１記載の組織補強材装着器。

【請求項3】

前記固定部又は前記外枠部に取り付けられ、前記固定部の凹部又は前記外枠部の開口部を閉じるキャップ部を有することを特徴とする請求項１又は２記載の組織補強材装着器。

【請求項4】

前記キャップ部は前記固定部の凹部上に位置する表面に多数の貫通孔を有することを特徴とする請求項３記載の組織補強材装着器。

【請求項5】

請求項１、２、３又は４記載の組織補強材装着器の前記凹部に貼付型組織補強材が保持されていることを特徴とする組織補強材装着キット。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、貼付型組織補強材を短時間で正確かつ容易に自動縫合器へ装着することができる組織補強材装着器及び該組織補強材装着器を用いた組織補強材装着キットに関する。

【背景技術】

【0002】

従来、多数のステープルを埋入したホッチキスタイプの自動縫合器が組織の縫合に用いられている。しかし、肺等への適用においては縫合部からの空気漏れの問題があり、また、軟弱組織への適用においては組織の損傷、断裂等の問題が生じることがあった。

【0003】

そこで、空気漏れや体液漏れ、組織の損傷を防ぐために生体吸収性の補強材が自動縫合器とともに用いられている（例えば、特許文献１、２）。特許文献１、２の補強材は、１枚の生体吸収性不織布の対向する２辺を縫い合わせる、又は２枚の生体吸収性不織布若しくは１枚の生体吸収性不織布と１枚の伸縮性編地を重ねて、対向する２辺を縫い合わせることによって筒状の構造としている。そして、筒の中に自動縫合器のカートリッジの端部を差し込むことで自動縫合器に装着され、組織と一緒に縫合されることで組織を補強する。また、補強後は不要部位を補強材から延出した糸を引っ張ることで分離できるため、作業性が高い。更に、補強材は生体吸収性不織布でできているため、補強が不要になった後は最終的に生体内に吸収される。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【特許文献1】特開平０８－０４７５２６号公報

【特許文献2】特許第４６７５２３７号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

従来の自動縫合器に用いられる補強材は、自動縫合器を操作した際にずれが生じないようにするために、組織を補強する生地と伸縮性を有する生地とを組み合わせて筒状とすることで、自動縫合器へ密着させている。しかしながら、自動縫合器のカートリッジは様々なサイズのものが存在しているため、カートリッジの大きさによっては補強材を充分に自動縫合器に密着させることができず、ずれが生じることがある。また、カートリッジの大きさに適合した補強材を用いた場合であっても、生地の縫い目付近には隙間が生じてしまうため、ずれが生じることがある。

【0006】

一方、自動縫合器を用いた内視鏡手術では、患者の体内に筒状のポートを複数本穿刺し、このポートを通して内視鏡や自動縫合器等の器具を挿入する。この際、従来の補強材は自動縫合器のカートリッジ部を取り巻くように装着されていることから、自動縫合器のポート挿入時に補強材が引っかかってしまうことがある。また、カートリッジ部を取り巻くように補強材が存在していることで、補強材を装着した自動縫合器はサイズが大きくなってしまうことから、自動縫合器自体のサイズよりも大きな口径のポートを用いなければ自動縫合器を通すことができない。患者の負担を軽減する観点からは、より口径の小さなポートに通すことができる補強材が求められている。

【0007】

そこで、本願出願人は、生体吸収性材料からなる布状体層と、水溶性高分子からなるスポンジ層とが積層一体化された自動縫合器用縫合補綴材を提案している。このような自動縫合器用縫合補綴材は、スポンジ層が水分を吸収することで粘着力が発生し、カートリッジ部に貼り付けることで自動縫合器に装着することができるため、あらゆるサイズの自動縫合器に用いることができるとともに、ポート通過性が高く、自動縫合器を操作した際にずれを生じ難くすることができる。

【0008】

しかしながら、このような貼付型組織補強材は、水分に浸した後自動縫合器に貼付するため、従来の円筒型の組織補強材よりも装着が煩雑になってしまう。また、装着位置がずれてしまった場合は剥がしてから再度貼り直す必要があることから、容易かつ正確に貼付型組織補強材を自動縫合器へ装着する方法が求められている。

【0009】

本発明は、上記問題に鑑み、貼付型組織補強材を短時間で正確かつ容易に自動縫合器へ装着することができる組織補強材装着器及び該組織補強材装着器を用いた組織補強材装着キットを提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0010】

本発明は、貼付型組織補強材を自動縫合器に固定するための組織補強材装着器であって、前記組織補強材装着器は、固定部を有し、前記固定部は、１組の対向する面に前記自動縫合器の前記組織補強材を装着する部位の形状に対応した凹部を有し、前記凹部は前記固定部の少なくとも１つの端まで連続している組織補強材装着器である。
以下、本発明について詳説する。

【0011】

本発明者らは、対向する面に凹部を有する部材の凹部に貼付型組織補強材を保持し、部材ごと水分に浸した後に自動縫合器で挟むことにより、容易かつ正確に貼付型組織補強材を装着できることを見出し、本発明を完成させるに至った。

【0012】

以下、本発明の組織補強材装着器とその使用対象である貼付型組織補強材について詳述するが、まず、本発明の組織補強材装着器について詳述する。
本発明の組織補強材装着器は、貼付型組織補強材を自動縫合器に固定するための組織補強材装着器である。
貼付型組織補強材は、従来の円筒状の組織補強材と比べてポートへの引っ掛かりがほとんどなく、組織補強材のサイズに関係なく使用できるといった利点がある。しかしながら、貼付型組織補強材を自動縫合器に装着するためには、自動縫合器の所定の位置に貼り付けなければならないため、短時間で正確な装着が難しいという課題があった。本発明の組織補強材装着器を用いることで、装着する人の熟練度に関係なく、短時間で正確かつ容易に貼付型組織補強材を自動縫合器に装着することができる。なお、本発明において「自動縫合器」とは、自動縫合器だけでなく自動吻合器も含まれる。

【0013】

本発明の組織補強材装着器は、固定部を有し、前記固定部は、１組の対向する面に上記自動縫合器の上記貼付型組織補強材を装着する部位の形状に対応した凹部を有し、上記凹部は、前記固定部の少なくとも１つの端まで連続している。
上記固定部の凹部に貼付型組織補強材を保持することで、貼付型組織補強材の輸送、保管時の取り扱い性を向上させることができるとともに、固定部ごと貼付型組織補強材を水分に浸して凹部を自動縫合器で挟むことにより、貼付型組織補強材を２枚同時に自動縫合器に装着することができる。また、上記凹部の形状は、自動縫合器の貼付型組織補強材を装着する部位の形状に対応しているため、凹部がガイドとなることで所定の位置に正確に貼付型組織補強材を装着することができる。更に上記凹部が上記固定部の少なくとも１つの端まで連続していることで、連続している端の側から自動縫合器を挟み込むことができる。

【0014】

上記固定部の材料は特に限定されないが、貼付型組織補強材を自動縫合器により確実に装着するために、ある程度のクッション性を有することが好ましい。このような材料としては例えば、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン、発泡エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂、発泡ポリ塩化ビニル、発泡ポリスチレン、発泡ポリウレタン等が挙げられる。なかでも、ある程度の摩擦力を有し、貼付型組織補強材をより確実に保持できることから、発泡ポリエチレン、発泡エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂が好ましい。

【0015】

上記固定部の凹部の底部間距離は０．５ｍｍ以上５．０ｍｍ以下であることが好ましい。
凹部の底部間距離が上記範囲であることで、自動縫合器をより確実に凹部に挟み込むことができ、その結果、より確実に貼付型組織補強材を自動縫合器に装着することができる。上記凹部の底部間距離は、１ｍｍ以上であることがより好ましく、３ｍｍ以下であることがより好ましい。

【0016】

本発明の組織補強材装着器は、上記固定部を挟み込んで補強する外枠部を有し、上記外枠部は上記固定部の凹部上に位置する部分全体に開口部を有することが好ましい。
このような外枠部を有することで、固定部及び貼付型組織補強材を振動や衝撃から守り、輸送、保管時の貼付型組織補強材の取り扱い性を向上させることができる。また、外枠部の上記固定部の凹部上に位置する部分全体が開口部であることで、外枠を取り付けたまま自動縫合器を固定部の凹部に挟み込むことができる。

【0017】

上記外枠部の材料は特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。
なかでも、組み合わせ性に優れていることからポリエチレンが好ましい。

【0018】

上記固定部を挟み込んで固定する方法は特に限定されず、例えば、上記固定部の凹部以外の部分に凸部又は凹部を形成し、外枠部の形状をそれらに合わせた形状としてはめ込む方法が挙げられる。

【0019】

本発明の組織補強材装着器は、上記固定部又は上記外枠部に取り付けられ、上記固定部の凹部又は上記外枠部の開口部を閉じるキャップ部を有することが好ましい。
上記固定部の凹部又は上記外枠部の開口部を閉じるキャップ部を有することで、組織補強材が製品の輸送時などに固定部から外れることを抑制することができる。

【0020】

上記キャップ部は、上記固定部の凹部上に位置する表面に多数の貫通孔を有することが好ましい。
キャップ部の上記固定部の凹部上に位置する表面に多数の貫通孔を有することで、組織補強材が固定部から外れることを抑制しつつも、貼付型組織補強材を保持して滅菌する際に滅菌ガスを貼付型組織補強材まで届きやすくすることができる。

【0021】

上記キャップ部の材料は特に限定されず、上記外枠部と同様のものを用いることができる。

【0022】

上記貫通孔の開孔率は特に限定されないが、１０％以上５０％以下であることが好ましい。
上記貫通孔の開孔率が上記範囲であることで、キャップ部の強度を保ちつつ滅菌ガスをより通しやすくすることができる。
上記貫通孔の開孔率は、１５％以上であることがより好ましく、３０％以下であることがより好ましい。

【0023】

ここで、本発明の組織補強材装着器の態様と使用法について図を用いて詳しく説明する。図１は本発明の組織補強材装着器の一例を表した模式図である。本発明の組織補強材装着器は、１組の対向する面に凹部１１を有する固定部１を有している。上記凹部１１の形状は、自動縫合器の組織補強材を装着する部位の形状に対応しており、また、上記凹部１１は、固定部の少なくとも１つの端まで連続しているため、自動縫合器を凹部と完全に噛み合うように挟み込めば２枚の貼付型組織補強材を自動縫合器の所定の位置に正確に装着することができる。

【0024】

図２には上記外枠部と上記キャップ部を有する本発明の組織補強材装着器の一例を表した模式図を示している。図２の態様では、組織補強材装着器は固定部１を挟みこむ外枠部２と、更に外枠部２の開口部を閉じるキャップ部３を有している。外枠部２は固定部１を固定し、振動や衝撃から固定部１を守る役割を有する。図２では固定部１の端部に凸部が設けられ、外枠部２を固定部１に合わせた形状とすることで、固定部１を確実に固定している。外枠部２は固定部１の凹部１１上に当たる部分の全てが開口部となっており、このような構造となっていることで、外枠部を取り外すことなく自動縫合器を挟み込むことができる。キャップ部３は、外枠部２の開口部をふさいで使用時までに異物が凹部１１上の貼付型組織補強材に付着することを抑制する役割を有する。また、キャップ部３が固定部１の凹部１１上に位置する表面に多数の貫通孔を有していると、滅菌処理の際に用いられる滅菌ガスを貼付型組織補強材まで届きやすくすることができる。なお、外枠部２及びキャップ部３は、図２のように２つのパーツからなっていてもよく、端部が連結した１つのパーツからなっていてもよい。

【0025】

図３は図２の態様の組織補強材装着器の使用時の様子を模式的に表した図である。図３は各部の状態をわかりやすくするために外枠部２を分離して描写しているが、実際は固定部に取り付けられたまま使用される。図２の態様の組織補強材装着器は、固定部１の凹部１１に貼付型組織補強材を保持し、外枠部２とキャップ部３が取り付けられた状態で滅菌、包装され、輸送、保管される。使用の際は、開封後まずキャップ部３を取り外し、次いで貼付型組織補強材を固定部１と外枠部２ごと滅菌水に浸す。その後滅菌水から取り出し、固定部１の凹部１１がつながっている端部側から自動縫合器５を挿入し、２つの凹部１１を挟み込むことで、２つの貼付型組織補強材４が自動縫合器５に同時に装着される。なお、本発明の組織補強材装着器が固定部１のみからなる場合又は固定部１及びキャップ部３からなる場合も、図２の態様と同様の使用方法である。

【0026】

本発明の組織補強材装着器は、貼付型組織補強材の装着から手術現場で行ってもよいが、上記のように固定部の凹部に貼付型組織補強材を保持した状態で輸送、保管することで、貼付型組織補強材の取り扱い性を向上させることができるとともに手術現場での作業をより簡略化できるものである。
このような本発明の組織補強材装着器の上記凹部に上記貼付型組織補強材が保持されている組織補強材装着キットもまた、本発明の１つである。

【0027】

本発明の組織補強材装着器の製造方法は特に限定されず、射出成型やプレス成型、切削等の従来公知の方法を特に限定されることなく用いることができる。

【0028】

次に、貼付型組織補強材について詳説する。
上記貼付型組織補強材とは、粘着力によって自動縫合器に固定される組織補強材のことを意味する。上記貼付型組織補強材は、従来の組織補強材に粘着性の物質を塗布又は積層したものや、組織補強材自体が粘着性を有するもの等の粘着性を有する組織補強材であれば特に限定されないが、生体吸収性材料からなる布状体層と水溶性高分子からなるスポンジ層とが積層一体化された貼付型組織補強材であることが好ましい。このような貼付型組織補強材を用いる場合、本発明の効果が大きく発揮される。以下、生体吸収性材料からなる布状体層と水溶性高分子からなるスポンジ層とが積層一体化された貼付型組織補強材について説明する。

【0029】

上記布状体層は組織補強材としての役割を果たすものであり、生体吸収性材料を用いていることから、補強が不要になった後は最終的に生体内に吸収され、体内に異物を長期間残留させることがなく、安全性が高い。上記スポンジ層は貼付型組織補強材に粘着性を付与する役割を果たすものであり、上記水溶性高分子は水分を含むことで粘着性を発現する。なお、ここでスポンジ状とは多数の空隙を有する構造のことを指す。

【0030】

上記積層一体化とは、力を加えても上記布状体層と上記スポンジ層との間で剥離が起き難い程度に両層を接合することを指す。上記布状体層と上記スポンジ層とを積層一体化する方法としては、上記布状体を上記スポンジ層の原料となる水溶性高分子溶液上に浮かべた後に、凍結乾燥を行う方法が挙げられる。布状体層とスポンジ層の界面密着性を高めるためには、上記布状体をプラズマ処理装置等で親水処理を行い、布状体への水溶性高分子溶液の浸透性を改善することが好ましい。

【0031】

上記生体吸収性材料としては、例えば、ポリグリコリド、ポリラクチド（Ｄ、Ｌ、ＤＬ体）、グリコリド－ラクチド（Ｄ、Ｌ、ＤＬ体）共重合体、グリコリド－ε－カプロラクトン共重合体、ラクチド（Ｄ、Ｌ、ＤＬ体）－ε－カプロラクトン共重合体、ポリ（ｐ－ジオキサノン）、グリコリド－ラクチド（Ｄ、Ｌ、ＤＬ体）－ε－カプロラクトン共重合体等のα－ヒドロキシ酸重合体高分子等の合成吸収性高分子や、コラーゲン、ゼラチン、キトサン、キチン等の天然吸収性高分子が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、２種以上が併用されてもよい。例えば、上記生体吸収性材料として上記合成吸収性高分子を用いる場合に、天然吸収性高分子を併用してもよい。なかでも、高い強度を示すことから、ポリグリコール酸、ポリ乳酸又は乳酸とカプロラクトンの共重合体が好適である。

【0032】

上記生体吸収性材料としてポリグリコリド（グリコリドのホモポリマー又はコポリマー）を用いる場合、ポリグリコリドの重量平均分子量の好ましい下限は３００００、好ましい上限は１００００００である。上記ポリグリコリドの重量平均分子量が３００００以上であると、より確実に組織を補強することができ、１００００００以下であると、異物反応をより抑えることができる。上記ポリグリコリドの重量平均分子量のより好ましい下限は５００００、より好ましい上限は３０００００である。

【0033】

上記布状体層の形態は特に限定されず、例えば、編地、織地、不織布、フィルム等いかなる形態であってもよい。なかでも、柔軟性、通気性、ステープルの通り易さ等の観点から不織布であることが好ましい。

【0034】

上記布状体層が不織布である場合、上記不織布の目付は特に限定されないが、好ましい下限は３ｇ／ｍ^２、好ましい上限は３００ｇ／ｍ^２である。上記不織布の目付が３ｇ／ｍ^２以上であると、より確実に組織を補強することができ、３００ｇ／ｍ^２以下であると、組織への接着性をより高めることができる。上記生体吸収性不織布の目付のより好ましい下限は５ｇ／ｍ^２、より好ましい上限は１００ｇ／ｍ^２である。

【0035】

上記不織布を製造する方法は特に限定されず、例えば、エレクトロスピニングデポジション法、メルトブロー法、ニードルパンチ法、スパンボンド法、フラッシュ紡糸法、水流交絡法、エアレイド法、サーマルボンド法、レジンボンド法、湿式法等の従来公知の方法を用いることができる。

【0036】

上記水溶性高分子としては、例えば、多糖類系材料、タンパク質系材料等の天然高分子やポリアクリル酸、ポリビニルアルコール等の合成高分子が挙げられる。自動縫合器用の組織補強材は体内に埋入されるため、生体適合性の高い材料が必要とされる。なかでも、自動縫合器の操作時はずれが生じ難く、縫合終了時には容易に剥離できる程度の粘着力を有することから、上記水溶性高分子は多糖類系材料又はタンパク質系材料であることが好ましい。上記多糖類系材料としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プルラン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース等が挙げられ、タンパク質系材料としては、ゼラチン、コラーゲンペプチド、水溶性エラスチン等が挙げられる。

【0037】

上記水溶性高分子は、２％濃度の水溶液にした際の粘度が１ｍＰａ・ｓ以上５００ｍＰａ・ｓ以下であることが望ましい。上記の範囲の水溶性高分子を用いることでスポンジ層にした際に適度な柔らかさを有し、水分が浸透した後、適度な粘着性を発現し、容易に自動縫合器へ貼り付けることが可能になる。

【0038】

上記スポンジ層は凍結乾燥体であることが好ましい。
スポンジ層を凍結乾燥によって形成することで、気孔形成剤を使わずにスポンジ層が形成できるため、気孔形成剤の除去が不要であり、材料純度の高いスポンジ層を形成できる。凍結乾燥の方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。

【0039】

上記スポンジ層の厚みは、０．５ｍｍ以上１０ｍｍ以下であることが好ましい。
スポンジ層の厚みを上記範囲とすることで、自動縫合器操作時のずれをより抑えることができるとともに、縫合終了後は容易に剥離できる程度の適度な粘着力に調節しやすくすることができる。上記スポンジ層の厚みは１．５ｍｍ以上であることが好ましく、５．０ｍｍ以下であることが好ましい。上記スポンジ層の厚みは、スポンジ層を凍結乾燥によって形成する場合は、布状体層に浸す水溶性高分子溶液の量によって調節することができる。また、ここで上記スポンジ層の厚みは、スポンジ層の全面積をダイヤルゲージ（例えば、テクロック社製ＳＭＤ－５６５Ｊ－Ｌ等）によって１箇所／ｃｍ^２の間隔で測定した厚みを平均したもののことを指す。

【0040】

上記スポンジ層の密度は特に限定されないが、０．０４ｇ／ｃｍ^３以上０．２ｇ／ｃｍ^３以下であることが好ましい。
スポンジ層の密度が上記範囲であることで、自動縫合器操作時のずれをより抑えることができるとともに、縫合終了後は容易に剥離できる程度の適度な粘着力に調節しやすくすることができる。

【0041】

上記貼付型組織補強材は、自動縫合器に貼付した際の接着強度が１．５Ｎ／ｃｍ^２以上であることが好ましい。
自動縫合器に貼付した際の接着強度が上記範囲であることで、自動縫合器操作時のずれをより抑えることができる。上記接着強度は３．０Ｎ／ｃｍ^２以上であることがより好ましい。上記接着強度の上限は特に限定されないが、縫合終了後の剥離を容易にする観点から３０Ｎ／ｃｍ^２以下であることが好ましい。なお、上記接着強度は具体的には以下の方法で測定することができる。
貼付型組織補強材を８ｍｍ幅×４０ｍｍ長にカットし、予め生理食塩水に浸しておいた自動縫合器（例えば、エチコン社製、エンドパスステープラーＥＣＨＥＬＯＮ ＦＬＥＸ ６０等）の作用面（アンビル側）に１０ｍｍ長のみ貼付し、３分間押さえつけて接着させる。次いで、自動縫合器の柄の部分を引張試験機（例えば、オートグラフ精密万能試験機ＡＧ－Ｘ Ｐｌｕｓ、島津製作所社製等）の下部チャックに装着し、自動縫合器からはみ出た貼付型組織補強材の端部を引張試験機の上部チャックに装着する。その後、引張速度１００ｍｍ／ｍｉｎにて引張試験を行い、ずれが生じた際の最大荷重を接着強度とする。

【0042】

上記貼付型組織補強材の製造方法は特に限定されず、例えば、上記方法で製造しても良いし、または布状体を底面に敷いた後、水溶性高分子溶液が布状体の下面に流れ込まないようにしたうえで布状体の上に水溶性高分子溶液を流し込み、凍結乾燥によってスポンジ層を形成することによって得ることができる。

【発明の効果】

【0043】

本発明によれば、貼付型組織補強材を短時間で正確かつ容易に自動縫合器へ装着することができる組織補強材装着器及び該組織補強材装着器を用いた組織補強材装着キットを提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【0044】

【図1】本発明の組織補強材装着器の一例を表した模式図である。

【図2】外枠部とキャップ部を有する本発明の組織補強材装着器の一例を表した模式図である。

【図3】図２の態様の組織補強材装着器を使用している様子を模式的に表した図である。

【発明を実施するための形態】

【0045】

以下に図を用いて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの態様にのみ限定されるものではない。

【0046】

（実施例１）
（１）貼付型組織補強材の製造
ヒドロキシプロピルメチルセルロース（ＨＰＭＣ）（粘度グレード６：ＡＮ６、２％溶液粘度：５．１ｍＰａ／ｓ、三菱ケミカルフーズ社製）に蒸留水を加えて８重量％のＨＰＭＣ水溶液を調製し、φ１００ｍｍのシャーレに１０ｇ加えた。次いで、ＨＰＭＣ水溶液を加えたシャーレ上に、布状体層としてφ１００ｍｍにカットしたポリグリコール酸（ＰＧＡ）製のシート状不織布を浮かべた。シート状不織布にＨＰＭＣ水溶液が浸透したのを確認した後、シャーレを－８０℃の冷凍庫に１５分間入れることでＨＰＭＣ水溶液を凍結した。その後、凍結したＨＰＭＣ水溶液を真空凍結乾燥機にて乾燥することで、不織布上にＨＰＭＣのスポンジ層（接着剤層）を形成し、貼付型組織補強材を作製した。
（２）組織補強材装着器の製造
発泡ポリエチレン（サンペルカＬ－１０００、三和加工社製）を切削加工することで、図２に示したような形状を有し、１組の対向する面に自動縫合器の貼付型組織補強材を装着する部位の形状に対応した凹部を有する固定部を得た。
次いで、低密度ポリエチレン（サンテック―ＬＤ Ｍ６５４５、旭化成社製）を射出成型することで、図２に示したような形状を有する固定部、外枠部、キャップ部からなる組織補強材装着器を得た。その後、得られた貼付型組織補強材を固定部の凹部の形状にカットして固定部の凹部に保持し、固定部を得られた外枠部で挟み込んで固定し、更に外枠部に得られたキャップ部を取り付けて貼付型組織補強材装着キットとした。
（３）自動縫合器への装着
得られた貼付型組織補強材装着キットのキャップ部を取り外し、生理食塩水（大塚生食注、大塚製薬製）に５秒間浸漬した。その後図３に示すように固定部の凹部が端部とつながっている側から自動縫合器（エチコン社製、エンドパスステープラーＥＣＨＥＬＯＮ ＦＬＥＸ ６０）を挿入し、凹部を５秒間挟み込んだ。その後、自動縫合器の組織補強材の装着部位を確認したところ、貼付型組織補強材は所定の位置をずれることなく装着されていた。また、キャップ部を取り外してから装着完了までの時間は約３０秒だった。

【0047】

（比較例１）
実施例１で製造した貼付型組織補強材を自動縫合器の形状に合わせてカットした。その後、滅菌水に５秒間浸し、自動縫合器の所定の位置（２箇所）に貼り付けて、厚み２ｍｍの発泡ポリエチレンシートを用いて５秒間抑えることで貼付型組織補強材を装着した。貼付型組織補強材は所定の位置をずれることなく装着されたが、滅菌水に浸漬してから装着完了までの時間は約９０秒だった。

【産業上の利用可能性】

【0048】

本発明によれば、貼付型組織補強材を短時間で正確かつ容易に自動縫合器へ装着することができる組織補強材装着器及び該組織補強材装着器を用いた組織補強材装着キットを提供することができる。

【符号の説明】

【0049】

１ 固定部
１１ 凹部
２ 外枠部
３ キャップ部
４ 貼付型組織補強材
５ 自動縫合器

【図1】

【図2】

【図3】