(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042779
(43)【公開日】2022-03-15
(54)【発明の名称】電圧調整装置
(51)【国際特許分類】
H02J 3/12 20060101AFI20220308BHJP
H02M 5/12 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
H02J3/12
H02M5/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020148364
(22)【出願日】2020-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】下和田 周
(72)【発明者】
【氏名】平野 南洋
(72)【発明者】
【氏名】白土 紀明
【テーマコード(参考)】
5G066
5H750
【Fターム(参考)】
5G066DA01
5H750BA01
5H750BA05
5H750CC05
5H750CC12
5H750DD13
5H750DD17
5H750DD26
5H750DD27
5H750FF05
(57)【要約】
【課題】素通しタップ時に二次側の電圧を一次側の電圧よりも昇圧又は降圧することが可能な電圧調整装置を提供する。
【解決手段】電圧調整装置(100a)は、配電線(1u,1v)に二次巻線(112,122)が直列に接続される直列変圧器(1a)と、前記配電線に複数のタップを有する巻線が並列に接続される単巻の調整変圧器(2a)と、前記タップを切り換えて前記直列変圧器の一次巻線に接続するタップ切換器(3)とを備える。調整変圧器は、分路巻線(21)の一端及び他端それぞれに直列巻線(22,23)が設けられており、分路巻線の両端が前記配電線に接続されるか、又は2つの直列巻線の開放端が配電線に接続される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単相の配電線に二次巻線が直列に接続される直列変圧器と、前記配電線に複数のタップを有する巻線が並列に接続される単巻の調整変圧器と、前記タップを切り換えて前記直列変圧器の一次巻線に接続するタップ切換器とを備える電圧調整装置であって、
前記調整変圧器は、分路巻線の一端及び他端それぞれに直列巻線が設けられており、
前記分路巻線の両端が前記配電線に接続されるか、又は2つの前記直列巻線の開放端が前記配電線に接続される電圧調整装置。
【請求項2】
前記直列変圧器は、前記配電線の一方及び他方それぞれに、対応する一次巻線との巻数比が同一である二次巻線が接続され、
前記調整変圧器の2つの前記直列巻線は同一巻数である
請求項1に記載の電圧調整装置。
【請求項3】
前記調整変圧器の全巻線の中点から中性線が引き出されている請求項2に記載の電圧調整装置。
【請求項4】
前記タップ切換器は、逆並列に接続されたサイリスタの組又はトライアックを含む複数の切換スイッチを有する
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の電圧調整装置。
【請求項5】
前記配電線に接続される前記調整変圧器の巻線は、巻数を1対2に分割する点から引き出されたタップを含む請求項1から請求項4の何れか1項に記載の電圧調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電線の単相交流電圧を昇降圧して調整する電圧調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる間接切換方式による電圧調整装置は、二次巻線が配電線に直列に接続される直列変圧器と、配電線に並列に接続され、巻線に複数のタップが設けられた調整変圧器と、該複数のタップを切り換えて直列変圧器の一次巻線に接続するタップ切換器とを備えている。
【0003】
例えば、特許文献1には、前段の電圧平衡器によって配電線路のバランスをとり、該配電線路に二次巻線が直列接続される直列変圧器の一次巻線に所定の電圧が印加される自動電圧調整器が記載されている。この電圧調整器は、直列変圧器の一次巻線に印加される電圧の極性を半導体リレーのスイッチングによってタップ切換することにより、配電線路の電圧を調整する。
【0004】
また、特許文献2には、200Vの配電線に一次巻線が直列接続される直列変圧器と、複数の二次巻線を有しており、一次巻線に出力電圧(二次電圧)が印加される補助変圧器と、補助変圧器の二次巻線の電圧構成を切り換える半導体スイッチとを備える瞬時電圧調整装置が記載されている。この電圧調整装置は、直列変圧器の二次巻線に印加する電圧を半導体スイッチで切り換えることにより、出力電圧を単相3線式の電圧にして調整する。このような電圧調整器が柱上変圧器に付属するとされている。
【0005】
更に、特許文献3には、単相3線式の低圧配電線の+相及び-相間に接続された単巻の分路変圧器と、2ヶの直列巻線及びタップ付きの1ヶの励磁巻線を有する直列変圧器と、該励磁巻線のタップを切り換えて分路変圧器の両端に接続するタップ切換器とを備える電圧調整器が記載されている。この電圧調整器は、2ヶの直列巻線のそれぞれが+相及び-相に直列に挿入され、分路変圧器の巻線の中央からN相リードが引き出されており、タップが切り換わることによって配電線の電圧が調整される。
【0006】
特許文献1から3に記載の電圧調整器又は電圧調整装置は、一次側(変電所側)の電圧を昇降圧せずに素通しにした電圧を中心にして二次側(負荷側)の電圧の昇圧範囲及び降圧範囲を同等にするものである。例えば二次側に逆潮流が生じない場合は、一次側の電圧より高い電圧を中心に二次側の電圧を調整できるようにすることが好ましい。また、二次側における逆潮流による電圧上昇が想定される場合は、一次側の電圧より低い電圧を中心にして二次側の電圧を調整できるようにすることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-23593号公報
【特許文献2】特開2014-23227号公報
【特許文献3】特開2004-187374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1又は3に記載の技術によれば、一次側の電圧平衡器又は分路変圧器を用いて一次側の電圧を予め昇降圧することも可能であるが、電圧調整器の前段に単巻変圧器に相当するものが必要とされることに変わりはなく、電圧調整器全体のサイズ及びコストの増大が避けられない。また、特許文献2に記載の技術によれば、一次側の柱上変圧器を取り込んで一次側の電圧を予め昇降圧することも考えられるが、電圧調整装置が付属する柱上変圧器で予め一次側の電圧を昇降圧することは想定されていない。
【0009】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、素通しタップ時に二次側の電圧を一次側の電圧よりも昇圧又は降圧することが可能な電圧調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る電圧調整装置は、単相の配電線に二次巻線が直列に接続される直列変圧器と、前記配電線に複数のタップを有する巻線が並列に接続される単巻の調整変圧器と、前記タップを切り換えて前記直列変圧器の一次巻線に接続するタップ切換器とを備える電圧調整装置であって、前記調整変圧器は、分路巻線の一端及び他端それぞれに直列巻線が設けられており、前記分路巻線の両端が前記配電線に接続されるか、又は2つの前記直列巻線の開放端が前記配電線に接続される。
【0011】
本態様にあっては、単相の配電線に二次巻線が直列に接続される直列変圧器の一次巻線に対し、配電線に巻線が並列に接続される調整変圧器のタップからタップ切換器を介して調整電圧が印加される。配電線に調整変圧器の分路巻線の両端が接続される場合は、配電線の電圧よりも2つの直列巻線の開放端の電圧の方が高い。また、配電線に調整変圧器の2つの直列巻線の開放端が接続される場合は、配電線の電圧よりも分路巻線の両端の電圧の方が低い。これにより、素通しタップ時に二次側の電圧を一次側の電圧よりも昇圧又は降圧することができる。
【0012】
本発明の一態様に係る電圧調整装置は、前記直列変圧器は、前記配電線の一方及び他方それぞれに、対応する一次巻線との巻数比が同一である二次巻線が接続され、前記調整変圧器の2つの前記直列巻線は同一巻数である。
【0013】
本態様にあっては、直列変圧器の2つの二次巻線に誘起する大きさが等しい電圧によって、配電線の一方及び他方の電圧が平衡度よく調整される。更に、調整変圧器の分路巻線の両端又は直列巻線の開放端に印加される電圧が調整変圧器の2つの直列巻線によって固定的に且つ平衡度よく昇降圧される。これにより、2つの直列巻線の開放端又は分路巻線の両端から入力又は出力される単相の電圧がバランスよく調整される。
【0014】
本発明の一態様に係る電圧調整装置は、前記調整変圧器の全巻線の中点から中性線が引き出されている。
【0015】
本態様にあっては、調整変圧器の全巻線の中点、即ち分路巻線の中点から中性線が引き出されており、この中性線を接地線とすることによって、自装置が入出力する電圧を二分した電圧のバランスが良好となる。
【0016】
本発明の一態様に係る電圧調整装置は、前記タップ切換器は、逆並列に接続されたサイリスタの組又はトライアックを含む複数の切換スイッチを有する。
【0017】
本態様にあっては、単一方向に導通するサイリスタを逆並列に接続したサイリスタの組合せ又は双方向に導通するトライアックが切換スイッチに含まれている。これにより、汎用的なトライアック又はサイリスタで構成された切換スイッチが双方向に導通し、タップの切り換えに好適に用いられる。
【0018】
本発明の一態様に係る電圧調整装置は、前記配電線に接続される前記調整変圧器の巻線は、巻数を1対2に分割する点から引き出されたタップを含む。
【0019】
本態様にあっては、配電線に接続される調整変圧器の巻線の両端のタップと、該巻線の巻数を1対2に分割する点から引き出されたタップとを用いてタップ切換することにより、略均等なステップ幅で7タップの切り換えを行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、素通しタップ時に二次側の電圧を一次側の電圧よりも昇圧又は降圧することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態1に係る電圧調整装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】実施形態1に係る調整変圧器の各巻線の電圧値及びタップ間の電圧値を例示する説明図である。
【
図4】実施形態1に係る電圧調整装置でのタップ位置と電圧調整量との関係を示す図表である。
【
図5】実施形態2に係る電圧調整装置の構成例を示すブロック図である。
【
図6】実施形態2に係る調整変圧器の各巻線の電圧値及びタップ間の電圧値を例示する説明図である。
【
図7】実施形態2に係る電圧調整装置でのタップ位置と電圧調整量との関係を示す図表である。
【
図8】実施形態3に係る調整変圧器の各巻線の電圧値及びタップ間の電圧値を例示する説明図である。
【
図9】実施形態3に係る電圧調整装置でのタップ位置と電圧調整量との関係を示す図表である。
【
図10】実施形態4に係る調整変圧器の各巻線の電圧値及びタップ間の電圧値を例示する説明図である。
【
図11】実施形態4に係る電圧調整装置でのタップ位置と電圧調整量との関係を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明をその実施形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る電圧調整装置100aの構成例を示すブロック図である。サイリスタ式の電圧調整装置(TVR=Thyristor type step Voltage Regulator )100aは、一次側の変電所から配電線1u,1vを介して供給されるU相,V相の交流電圧を調整し、二次側の負荷へ配電線2u,2vを介してu相,v相の交流電圧を配電する。
【0023】
電圧調整装置100aは、配電線1u,1vそれぞれに二次巻線112,122が直列に接続される直列変圧器1aと、配電線1u,1vに分路巻線21が並列に接続される調整変圧器2aとを備える。電圧調整装置100aは、更に、調整変圧器2aの分路巻線21及び直列変圧器1aの一次巻線111,121の間に設けられたタップ切換器3を備える。
【0024】
直列変圧器1aは、二次巻線112,122それぞれに一次巻線111,121が対応している。一次巻線111,121は、それぞれ二次巻線112,122に互いに逆位相の電圧が誘起するように並列に接続されている。二次巻線112,122それぞれの上記負荷側の端子に対応する一次巻線111,121の端子をu1,v1とする。また、二次巻線112,122それぞれの上記電源側の端子に対応する一次巻線111,121の端子をu2,v2とする。
【0025】
調整変圧器2aの分路巻線21の一端及び他端には、それぞれから延設すべく直列巻線22及び23が設けられている。分路巻線21と直列巻線22との接続点からはタップt1が引き出されている。分路巻線21と直列巻線23との接続点からはタップt3が引き出されている。分路巻線21は、タップt1,t3によって配電線1u,1v間に接続されている。直列巻線22,23それぞれの開放端、即ち分路巻線21との接続端に対向する各一端は、配電線2u,2vに接続されている。分路巻線21の巻数を1対2に分割する点からは、タップt2が引き出されている。タップの数は3つに限定されない。更に、分路巻線21及び直列巻線22,23の全巻線の中点、即ち分路巻線21の中点oからは、中性線となるタップが引き出されている。中性線となるタップ以外のタップの数は3つに限定されない。
【0026】
タップt1~t3の何れか1つがタップ切換器3を介して直列変圧器1aの一次側の端子u2,v1に接続され、該1つと同一又は異なる他の1つがタップ切換器3を介して直列変圧器1aの一次側の端子u1,v2に接続される。同一のタップが直列変圧器1aの一次側の各端子に接続されるのは、後述する素通しタップの場合である。
【0027】
調整変圧器2aの直列巻線22,23の開放端間の電圧、即ち配電線2u,2v間の電圧を計測するために、配電線2u,2v間には計測用変圧器PTの一次巻線が接続されている。後述する制御部31が計測用変圧器PTの二次巻線から降圧した電圧を取得して配電線2u,2v間の電圧を検出する。計測用変圧器PTに代えて、例えば抵抗分圧等の手段を用いて配電線2u,2v間の電圧を検出してもよい。
【0028】
タップ切換器3は、調整変圧器2aの分路巻線21のタップt1~t3を切り換えるための6つの切換スイッチTrA,TrB,TrC,Tr1,Tr2,Tr3を有する。切換スイッチの数は、調整変圧器2aのタップの数に応じて適宜増加させればよい。タップ切換器3は、更に、上記各切換スイッチの切り換えを制御する制御部31と、制御部31からの駆動信号に基づいて各切換スイッチをオンに駆動する駆動部32とを有する。制御部31には、計測用変圧器PTの二次巻線が接続されている。制御部31と計測用変圧器PTとの接続、及び駆動部32と各切換スイッチとの接続は、図示を省略する。
【0029】
制御部31は、不図示のCPU(Central Processing Unit )を有し、予めROM(Read Only Memory )に記憶された制御プログラムに従って、電圧の調整を制御する。一時的に発生した情報はRAM(Random Access Memory )に記憶される。制御部31は、また、経過時間を計測するためのタイマカウンタを有する。
【0030】
分路巻線21のタップt1は、保護用のヒューズ(不図示:以下同様)を介して切換スイッチTrA及びTr1の一端に接続され、タップt2は、ヒューズを介して切換スイッチTrB及びTr2の一端に接続され、タップt3は、ヒューズを介して切換スイッチTrC及びTr3の一端に接続されている。切換スイッチTrA,TrB,TrCの他端同士は、接続線3uを介して直列変圧器1aの一次側の端子u2及びv1に接続されている。切換スイッチTr1,Tr2,Tr3の他端同士は、接続線3vを介して直列変圧器1aの一次側の端子u1及びv2に接続されている。
【0031】
接続線3u及び3v間には、限流抵抗器RS及び矯絡用スイッチTrSの直列回路と、電磁接触器MCとが接続されている。矯絡用スイッチTrSは、分路巻線21のタップt1~t3を切り換える過程で、限流抵抗器RSを介してタップ間を矯絡させておくために、タップ間への限流抵抗器RSの接続及び切り離しを行うためのものである。電磁接触器MCは、過電流が検出されて全ての切換スイッチがオフされる場合、又はタップ切換器3の運用が停止される場合に、直列変圧器1aの一次側の端子u1,u2間及び端子v1,v2間を矯絡して、開放状態にしないようにするためのものである。制御部31と矯絡用スイッチTrS及び電磁接触器MCとの接続は、図示を省略する。
【0032】
次に、各スイッチの構成を、切換スイッチTrAを例として説明する。他の切換スイッチ及び矯絡用スイッチTrSについても同様である。
図2は、切換スイッチTrAの構成例を示す回路図である。切換スイッチTrAは、アノードからカソードへ一方向に導通するサイリスタTrAa及びTrAbを逆並列に接続してなる。サイリスタTrAaのアノード及びサイリスタTrAbのカソードは、接続線3uに接続されている。サイリスタTrAaのカソード及びサイリスタTrAbのアノードは、調整変圧器2aの分路巻線21のタップt1に接続されている。サイリスタTrAa及びTrAbのゲートは、駆動部32に接続されている。駆動部32からトリガ信号が各サイリスタのゲートに印加された場合、切換スイッチTrAは双方向に導通する。切換スイッチTrAを1つのトライアックで構成してもよい。電磁接触器MCを切換スイッチTrAと同様に構成してもよい。
【0033】
図3は、実施形態1に係る調整変圧器2aの各巻線の電圧値及びタップ間の電圧値を例示する説明図である。ここに示す各電圧値は1組の例であって、各電圧値を同じ割合で増減させても同様に説明される。なお、前述の素通しタップとは、タップt1からt3のうちの1つのタップに接続される2つの切換スイッチのみがオンすることにより、直列変圧器1aの一次巻線111,121の両端が短絡され、且つ一次巻線111,121と分路巻線21とが1つのタップによって接続される切換状態である。
【0034】
素通しタップ時は、直列変圧器1aの二次巻線112,122に電圧が誘起しないから、例えば一次側の電圧である198Vが調整変圧器2aの分路巻線21の両端に印加される。ここで、タップt2はタップt1,t3間の巻数を1対2に分割する点に対応するから、タップt1,t2間の電圧は66Vであり、タップt2,t3間の電圧は132Vである。従って、タップt2及び中点oの間の電圧は33Vである。
【0035】
直列巻線22,23については、それぞれの巻数が、例えば分路巻線21の巻数の1/33となるようにすれば、それぞれに誘起する電圧が6Vとなる。この場合、二次側の電圧が210Vとなるから、u相及び中点oの間に接続されるuo間負荷、並びにv相及び中点oの間に接続されるvo間負荷に、それぞれ105Vが供給される。なお、中点oは、中性点として二次側に引き出されるが、一次側の不図示の柱上変圧器の中性点に接続してもよい。
【0036】
図4は、実施形態1に係る電圧調整装置100aでのタップ位置と電圧調整量との関係を示す図表である。切換スイッチの組合せは7通りあり、これらの組合せをタップ1からタップ7までのタップ位置で表す。図中の一次電圧及び二次電圧それぞれは、一次側及び二次側の電圧である。一次電圧が4Vステップで低下した場合に、二次電圧が一定の210Vとなるように調整するための電圧が電圧調整量である。この電圧調整量には、直列巻線22,23によって固定的に昇圧される電圧が含まれている。従って、直列変圧器1aによって昇降圧される電圧の範囲は、図中の電圧調整量から12Vを減算した±12Vである。
【0037】
例えば、タップ位置をタップ1にする場合、切換スイッチTrA及びTr3がオンする。これにより、タップt1が接続線3uに接続され、タップt3が接続線3vに接続される。この場合、タップt1及びt3間の巻数が分路巻線21の巻数に等しくなり、タップ切換器3が出力する電圧の絶対値が最大となる。タップ2からタップ4までについては、タップ間の巻数が段階的に少なくなるようなタップの組合せに応じて、2つのタップを接続線3u及び3vに接続する切換スイッチが決まる。
【0038】
タップ位置をタップ2にする場合、切換スイッチTrB及びTr3がオンする。これにより、タップt2が接続線3uに接続され、タップt3が接続線3vに接続される。この場合、タップt2及びt3間の巻数が分路巻線21の巻数の2/3となり、タップ切換器3が出力する電圧の絶対値が最大値の2/3となる。タップ位置をタップ3にする場合、切換スイッチTrA及びTr2がオンする。これにより、タップt1が接続線3uに接続され、タップt2が接続線3vに接続される。この場合、タップt1及びt2間の巻数が分路巻線21の巻数の1/3となり、タップ切換器3が出力する電圧の絶対値が最大値の1/3となる。
【0039】
タップ位置をタップ4にする場合、切換スイッチTrA及びTr1がオンする。これにより、タップt1が接続線3u及び3vに接続される。この場合、タップ切換器3が出力する電圧が0となる。これが、いわゆる素通しタップである。なお、素通しタップにするための切換スイッチは、切換スイッチTrA及びTr1に限定されず、切換スイッチTrB及びTr2でもよいし、切換スイッチTrC及びTr3でもよい。
【0040】
タップ4からタップ7までについては、タップ間の巻数が段階的に多くなるようなタップの組合せに応じて、2つのタップを接続線3u及び3vに接続する切換スイッチが決まる。例えば、タップ位置をタップ5にする場合、切換スイッチTrB及びTr1がオンする。これにより、タップt1が接続線3vに接続され、タップt2が接続線3uに接続される。この場合、タップt1及びt2間の巻数が分路巻線21の巻数の1/3となり、タップ切換器3が出力する電圧の絶対値が最大値の1/3となる。但し、タップ3の場合と比較して、タップ切換器3が出力する電圧の位相が反転する。
【0041】
タップ位置をタップ6にする場合、切換スイッチTrC及びTr2がオンする。この場合は、タップ位置をタップ2にする場合と比較して、タップ切換器3が出力する電圧の絶対値が等しく、位相が反転する。タップ位置をタップ7にする場合、切換スイッチTrC及びTr1がオンする。この場合は、タップ位置をタップ1にする場合と比較して、タップ切換器3が出力する電圧の絶対値が等しく、位相が反転する。
【0042】
次に、一次側からの交流電圧に加算又は減算される電圧について説明する。上述したように、タップ位置がタップ1からタップ3までの何れかである場合と、タップ位置がタップ5からタップ7までの何れかである場合とでは、タップ切換器3が出力する電圧の位相が互いに反転する。ここでは、タップ位置がタップ4からタップ7までの間にある場合について説明する。なお、タップ切換器3が出力する電圧の大きさと、直列変圧器1aによって昇降圧される電圧の大きさとの関係は、直列変圧器1aの変圧比、即ち変圧比によって決まる。後述する他の実施形態であっても同様である。
【0043】
タップ位置がタップ4からタップ7までの間にある場合、接続線3uに対する接続線3vの電圧は、配電線1vに対する配電線1uの電圧と同相になる。即ち、直列変圧器1aの一次巻線111の端子u2に対する端子u1の電圧は、配電線1vに対する配電線1uの電圧と同相になる。また、一次巻線121の端子v2に対する端子v1の電圧は、配電線1vに対する配電線1uの電圧と逆相になる。従って、接続線3u及び3v間の電圧が直列変圧器1aの一次巻線111,121に印加されることにより、二次巻線112,122から配電線1u,1vに配電される電圧が昇圧されて負荷側に配電される。
【0044】
以上のことから、タップ位置をタップ1からタップ7までタップ位置を切り換えることにより、一次側からの単相交流を降圧した電圧から昇圧した電圧まで段階的に調整して負荷側に配電することができる。制御部31は、計測用変圧器PTにより、配電線2u,2v間の電圧を検出し、検出した電圧が不感帯を逸脱した場合に、タップ位置を上げ下げすることによって、配電線2u,2v間の電圧が基準電圧に近づくように調整する。
【0045】
ここでは、直列変圧器1aによって昇降圧される電圧の絶対値の最大値が12Vであるものとする。直列巻線22,23によって固定的に昇圧される電圧が12Vであるから、タップ1からタップ7までの電圧調整量は、±0Vから+24Vまで4Vステップで変化する。換言すれば、一次側の電圧が210Vから4Vステップで186Vまで変化した場合、これに合わせてタップ位置をタップ1からタップ7まで切り換えることにより、二次側の電圧が210Vとなるように調整される。
【0046】
以上のように本実施形態1によれば、単相の配電線1u,1vそれぞれに二次巻線112,122が直列に接続される直列変圧器1aの一次巻線111,121に対し、配電線1u,1vに分路巻線21が並列に接続される調整変圧器2aのタップからタップ切換器3を介して調整電圧が印加される。配電線1u,1vに調整変圧器2aの分路巻線21の両端が接続されているため、配電線1u,1vの電圧よりも2つの直列巻線22,23の開放端に接続される配電線2u,2vの電圧の方が高い。従って、素通しタップ時に二次側の配電線2u,2vの電圧を一次側の変電所からの電圧よりも昇圧することができる。
【0047】
また、実施形態1によれば、直列変圧器1aの二次巻線112,122に誘起する大きさが等しい電圧によって、配電線1u,1vの一方及び他方(一般的に+相及び-相、u相及びv相、L1及びL2と称される)の電圧が平衡度よく調整される。更に、分路巻線21の両端に印加される電圧が2つの直列巻線22,23によって固定的に且つ平衡度よく昇圧される。従って、直列巻線22,23それぞれの開放端から出力される電圧をバランスよく調整することができる。
【0048】
更に、実施形態1によれば、単一方向に導通するサイリスタTrAa及びTrAbを逆並列に接続したサイリスタの組合せ又は双方向に導通するトライアックが、切換スイッチTrAに含まれている。他の切換スイッチについても同様である。従って、汎用的なサイリスタ又はトライアックで構成された切換スイッチTr1,Tr2,Tr3,TrA,TrB,TrCが双方向に導通し、タップの切り換えに好適に用いられる。
【0049】
更に、実施形態1によれば、配電線1u,1vに接続される調整変圧器2aの分路巻線21の両端のタップt1,t3と、分路巻線21の巻数を1対2に分割する点から引き出されたタップt2とを用いてタップ切換することにより、例えば4Vのステップ幅で7タップの切り換えを行うことができる。
【0050】
(実施形態2)
実施形態1が、二次側の配電線2u,2vの電圧を一次側の変電所からの電圧よりも高い電圧を中心に調整する形態であるのに対し、実施形態2は、二次側の配電線2u,2vの電圧を一次側の変電所からの電圧よりも低い電圧を中心に調整する形態である。
図5は、実施形態2に係る電圧調整装置の構成例を示すブロック図である。実施形態1に係る電圧調整装置100aが直列変圧器1a及び調整変圧器2aを備えるのに対し、電圧調整装置100bは直列変圧器1b及び調整変圧器2bを備える。
【0051】
調整変圧器2bの分路巻線21の一端及び他端には、それぞれから延設すべく直列巻線22及び23が設けられている。直列巻線22,23それぞれの開放端からはタップt1,t3が引き出されている。直列巻線22,23それぞれの開放端は、タップt1,t3によって配電線1u,1vに接続されている。分路巻線21は、配電線2u,2v間に接続されている。分路巻線21及び直列巻線22,23の全巻数を1対2に分割する点からは、タップt2が引き出されている。更に、分路巻線21及び直列巻線22,23の全巻線の中点、即ち分路巻線21の中点oからは中性線となるタップが引き出されている。
【0052】
直列変圧器1bは、実施形態1に係る直列変圧器1aと比較して変圧比が僅かに異なるのみであり、配電線1u,1v及びタップ切換器3に対する接続構成は実施形態1の場合と同様である。その他、実施形態1に対応する箇所には同様の符号を付してその説明を省略する。
【0053】
図6は、実施形態2に係る調整変圧器2bの各巻線の電圧値及びタップ間の電圧値を例示する説明図である。素通しタップ時は、例えば一次側の電圧222Vが調整変圧器2bの直列巻線22,23の開放端間に印加される。ここで、タップt2はタップt1,t3間の巻数を1対2に分割する点に対応するから、タップt1,t2間の電圧は74Vであり、タップt2,t3間の電圧は148Vである。従って、タップt2及び中点oの間の電圧は37Vである。
【0054】
分路巻線21については、二次側の電圧を210Vとするために、その巻数を分路巻線21及び直列巻線22,23の全巻数の210/222とする。この場合、直列巻線22,23については、それぞれの巻数が分路巻線21及び直列巻線22,23の全巻数の6/222となり、それぞれに誘起する電圧が6Vとなる。この場合、二次側のu相及び中点oの間に接続されるuo間負荷、並びにv相及び中点oの間に接続されるvo間負荷に、それぞれ105Vが供給される。
【0055】
上述のとおり、調整変圧器2bにおける分路巻線21と直列巻線22,23の巻数の割合(電圧の割合)は、実施形態1に係る調整変圧器2aにおける分路巻線21と直列巻線22,23の巻数の割合とは僅かに異なるものとなる。
【0056】
図7は、実施形態2に係る電圧調整装置100bでのタップ位置と電圧調整量との関係を示す図表である。タップ位置、一次電圧、二次電圧、電圧調整量及びオンにする切換スイッチのそれぞれが意味するところは、実施形態1の
図4の場合と同様である。電圧調整量には、直列巻線22,23によって固定的に降圧される電圧が含まれている。従って、直列変圧器1bによって昇降圧される電圧の範囲は、図中の電圧調整量に12Vを加算した±12Vである。
【0057】
タップ1からタップ7までのタップ位置と、オンする切換スイッチとの対応についても、実施形態1の
図4に示す場合と同様である。直列変圧器1bによって昇降圧される電圧の絶対値の最大値が12Vである場合、直列巻線22,23によって固定的に降圧される電圧が12Vであるから、タップ1からタップ7までの電圧調整量は、-24Vから±0Vまで4Vステップで変化する。換言すれば、一次側の電圧が234Vから4Vステップで210Vまで変化した場合、これに合わせてタップ位置をタップ1からタップ7まで切り換えることにより、二次側の電圧が210Vとなるように調整される。
【0058】
以上のように本実施形態2によれば、単相の配電線1u,1vそれぞれに二次巻線112,122が直列に接続される直列変圧器1bの一次巻線111,121に対し、配電線1u,1vに全巻線が並列に接続される調整変圧器2bのタップからタップ切換器3を介して調整電圧が印加される。配電線1u,1vに調整変圧器2bの直列巻線22,23それぞれの開放端が接続されているため、配電線1u,1vの電圧よりも分路巻線21の両端に接続される配電線2u,2vの電圧の方が低い。従って、素通しタップ時に二次側の配電線2u,2vの電圧を一次側の変電所からの電圧よりも降圧することができる。
【0059】
また、実施形態2によれば、配電線1u,1vの一方及び他方の電圧が平衡度よく調整され、更に、直列巻線22,23の開放端に印加される電圧が2つの直列巻線22,23によって固定的に且つ平衡度よく降圧される。従って、分路巻線21の両端から出力される電圧をバランスよく調整することができる。
【0060】
更に、実施形態2によれば、配電線1u,1vに接続される調整変圧器2bの直列巻線22,23それぞれの開放端のタップt1,t3と、調整変圧器2bの全巻線の巻数を1対2に分割する点から引き出されたタップt2とを用いてタップ切換することにより、例えば4Vのステップ幅で7タップの切り換えを行うことができる。
【0061】
なお、実施形態1及び2にあっては、素通しタップ時に直列巻線22,23それぞれに誘起する電圧を6Vとしたが、これに限定されるものではなく、任意の電圧値にすることができる。例えば、実施形態1にて直列巻線22,23それぞれに誘起する電圧を4.5Vとする場合、素通しタップ時に一次側の電圧である201Vが固定的に昇圧されて、二次側に210Vの電圧が供給される。この場合、タップt1,t2間の電圧は67Vであり、タップt2,t3間の電圧は134Vである。同様に実施形態2にて直列巻線22,23それぞれに誘起する電圧を4.5Vとする場合、素通しタップ時に一次側の電圧である219Vが固定的に降圧されて、二次側に210Vの電圧が供給される。この場合、タップt1,t2間の電圧は73Vであり、タップt2,t3間の電圧は146Vである。
【0062】
(実施形態3)
実施形態1は、配電線1u,1vよりも配電線2u,2vが下流側に位置するものとして配電線2u,2v側を二次側とする形態であるのに対し、実施形態3は、配電線1u,1vよりも配電線2u,2vが上流側に位置するものとして配電線2u,2v側を一次側とする形態である。実施形態1に係る電圧調整装置100aが直列変圧器1a及び調整変圧器2aを備えるのに対し、本実施形態3に係る電圧調整装置は直列変圧器1c及び調整変圧器2cを備える。本実施形態3では、二次側の負荷へ直列変圧器1cを介して配電するu相,v相の交流電圧を、一次側の変電所から配電線2u,2vを介して供給されるU相,V相の交流電圧よりも低い電圧を中心に調整する。
【0063】
調整変圧器2cの構成及び接続態様については、各巻線間の巻数の関係を除いて、実施形態1の
図1に示す調整変圧器2aと同様である。直列変圧器1cは、実施形態1に係る直列変圧器1aと比較して変圧比が僅かに異なるのみであり、配電線1u,1v及びタップ切換器3に対する接続構成は実施形態1の場合と同様である。その他、実施形態1に対応する箇所には同様の符号を付してその説明を省略する。
【0064】
図8は、実施形態3に係る調整変圧器2cの各巻線の電圧値及びタップ間の電圧値を例示する説明図である。例えば一次側の電圧222Vが直列巻線22,23の開放端間に印加される。分路巻線21については、素通しタップ時に二次側の電圧を210Vとするために、その巻数を分路巻線21及び直列巻線22,23の全巻数の210/222とする。この場合、直列巻線22,23については、それぞれの巻数が分路巻線21及び直列巻線22,23の全巻数の6/222となるから、それぞれに誘起する電圧が6Vとなる。
【0065】
ここで、タップt2はタップt1,t3間の巻数を1対2に分割する点に対応するから、タップt1,t2間の電圧は70Vであり、タップt2,t3間の電圧は140Vである。従って、タップt2及び中点oの間の電圧は35Vである。素通しタップ時は、二次側のu相及び中点oの間に接続されるuo間負荷、並びにv相及び中点oの間に接続されるvo間負荷に、それぞれ105Vが供給される。
【0066】
図9は、実施形態3に係る電圧調整装置でのタップ位置と電圧調整量との関係を示す図表である。タップ位置、一次電圧、二次電圧、電圧調整量及びオンにする切換スイッチのそれぞれが意味するところは、実施形態1の
図4の場合と同様である。電圧調整量には、直列巻線22,23によって固定的に降圧される電圧が含まれている。但し、二次電圧を一定にする場合、一次電圧の増大に応じて電圧調整量のステップ幅及び固定的な降圧量が僅かに増大する。従って、直列変圧器1cによって昇降圧される電圧の範囲は、一定の4Vステップにはならず、例えば、図中の電圧調整量に略12Vを加算した+12V~-13Vとなる。なお、
図9では電圧値を四捨五入してあるため、タップ6,7間で電圧値のステップ幅が5Vとなっている。
【0067】
タップ1からタップ7までのタップ位置と、オンする切換スイッチとの対応についても、実施形態1の
図4に示す場合と同様である。但し、タップ1からタップ7へと順次タップ切換するに連れて電圧調整量が負方向に増大する。具体的には、直列変圧器1cによって昇降圧される電圧の絶対値の最大値が略12Vである場合、直列巻線22,23によって固定的に降圧される電圧が略12Vであるから、タップ1からタップ7までの電圧調整量は、±0Vから-25Vまで略4Vステップで変化する。換言すれば、一次側の電圧が210Vから略4Vステップで235Vまで変化した場合、これに合わせてタップ位置をタップ1からタップ7まで切り換えることにより、二次側の電圧が略210Vとなるように調整される。
【0068】
以上のように本実施形態3によれば、単相の配電線1u,1vそれぞれに二次巻線112,122が直列に接続される直列変圧器1cの一次巻線111,121に対し、配電線1u,1vに分路巻線21が並列に接続される調整変圧器2cのタップからタップ切換器3を介して調整電圧が印加される。配電線1u,1vに調整変圧器2cの分路巻線21の両端が接続されているため、2つの直列巻線22,23の開放端に接続される配電線2u,2vの電圧よりも配電線1u,1vの電圧の方が低い。従って、素通しタップ時に直列変圧器1cを介して二次側に配電する電圧を一次側の配電線2u,2vの電圧よりも降圧することができる。
【0069】
また、実施形態3によれば、配電線1u,1vの一方及び他方の電圧が平衡度よく調整され、更に、直列巻線22,23の開放端に印加される電圧が2つの直列巻線22,23によって固定的に且つ平衡度よく降圧される。従って、直列変圧器1cを介して二次側に配電する電圧をバランスよく調整することができる。
【0070】
更に、実施形態3によれば、配電線1u,1vに接続される調整変圧器2cの分路巻線21の両端のタップt1,t3と、分路巻線21の巻数を1対2に分割する点から引き出されたタップt2とを用いてタップ切換することにより、例えば略4Vのステップ幅で7タップの切り換えを行うことができる。
【0071】
(実施形態4)
実施形態2は、配電線1u,1vよりも配電線2u,2vが下流側に位置するものとして配電線2u,2v側を二次側とする形態であるのに対し、実施形態4は、配電線1u,1vよりも配電線2u,2vが上流側に位置するものとして配電線2u,2v側を一次側とする形態である。実施形態2に係る電圧調整装置100bが直列変圧器1b及び調整変圧器2bを備えるのに対し、本実施形態4に係る電圧調整装置は直列変圧器1d及び調整変圧器2dを備える。本実施形態4では、二次側の負荷へ直列変圧器1dを介して配電するu相,v相の交流電圧を、一次側の変電所から配電線2u,2vを介して供給されるU相,V相の交流電圧よりも高い電圧を中心に調整する。
【0072】
調整変圧器2dの構成及び接続態様については、各巻線間の巻数の関係を除いて、実施形態2の
図5に示す調整変圧器2bと同様である。直列変圧器1dは、実施形態2に係る直列変圧器1bと比較して変圧比が僅かに異なるのみであり、配電線1u,1v及びタップ切換器3に対する接続構成は実施形態2の場合と同様である。その他、実施形態1及び2に対応する箇所には同様の符号を付してその説明を省略する。
【0073】
図10は、実施形態4に係る調整変圧器2dの各巻線の電圧値及びタップ間の電圧値を例示する説明図である。例えば一次側の電圧198Vが分路巻線21の両端間に印加される。分路巻線21及び直列巻線22,23については、素通しタップ時に二次側の電圧を210Vとするために、その全巻数を分路巻線21の巻数の210/198とする。この場合、直列巻線22,23については、それぞれの巻数が分路巻線21の巻数の6/198となり、それぞれに誘起する電圧が6Vとなる。
【0074】
ここで、タップt2はタップt1,t3間の巻数を1対2に分割する点に対応するから、タップt1,t2間の電圧は70Vであり、タップt2,t3間の電圧は140Vである。従って、タップt2及び中点oの間の電圧は35Vである。素通しタップ時は、二次側のu相及び中点oの間に接続されるuo間負荷、並びにv相及び中点oの間に接続されるvo間負荷に、それぞれ105Vが供給される。
【0075】
図11は、実施形態4に係る電圧調整装置でのタップ位置と電圧調整量との関係を示す図表である。タップ位置、一次電圧、二次電圧、電圧調整量及びオンにする切換スイッチのそれぞれが意味するところは、実施形態1の
図4の場合と同様である。電圧調整量には、直列巻線22,23によって固定的に昇圧される電圧が含まれている。但し、二次電圧を一定にする場合、一次電圧の減少に応じて電圧調整量のステップ幅及び固定的な降圧量が僅かに減少する。従って、直列変圧器1dによって昇降圧される電圧の範囲は、図中の電圧調整量から略12Vを減算した+11V~-12Vとなる。なお、
図11では電圧値を四捨五入してあるため、タップ2,3間で電圧値のステップ幅が3Vとなっている。
【0076】
タップ1からタップ7までのタップ位置と、オンする切換スイッチとの対応についても、実施形態1の
図4に示す場合と同様である。但し、タップ1からタップ7へと順次タップ切換するに連れて電圧調整量が負方向に増大する。具体的には、直列変圧器1dによって昇降圧される電圧の絶対値の最大値が略12Vである場合、直列巻線22,23によって固定的に昇圧される電圧が略12Vであるから、タップ1からタップ7までの電圧調整量は、+23Vから±0Vからまで略4Vステップで変化する。換言すれば、一次側の電圧が187Vから略4Vステップで210Vまで変化した場合、これに合わせてタップ位置をタップ1からタップ7まで切り換えることにより、二次側の電圧が略210Vとなるように調整される。
【0077】
以上のように本実施形態4によれば、単相の配電線1u,1vそれぞれに二次巻線112,122が直列に接続される直列変圧器1dの一次巻線111,121に対し、配電線1u,1vに全巻線が並列に接続される調整変圧器2dのタップからタップ切換器3を介して調整電圧が印加される。配電線1u,1vに調整変圧器2dの直列巻線22,23それぞれの開放端が接続されているため、分路巻線21の両端に接続される配電線2u,2vの電圧よりも配電線1u,1vの電圧の方が高い。従って、素通しタップ時に直列変圧器1dを介して二次側に配電する電圧を一次側の配電線2u,2vの電圧よりも昇圧することができる。
【0078】
また、実施形態4によれば、配電線1u,1vの一方及び他方の電圧が平衡度よく調整され、更に、分路巻線21の両端に印加される電圧が2つの直列巻線22,23によって固定的に且つ平衡度よく昇圧される。従って、直列変圧器1dを介して二次側に配電する電圧をバランスよく調整することができる。
【0079】
更に、実施形態4によれば、配電線1u,1vに接続される調整変圧器2dの直列巻線22,23それぞれの開放端のタップt1,t3と、調整変圧器2dの全巻線の巻数を1対2に分割する点から引き出されたタップt2とを用いてタップ切換することにより、例えば略4Vのステップ幅で7タップの切り換えを行うことができる。
【0080】
更に、実施形態1、2、3及び4によれば、調整変圧器2a、2b、2c及び2dの全巻線の中点oから中性線が引き出されており、この中性線を接地線とすることによって、単相200Vを二分した単相100Vの電圧のバランスを良好にすることができる。
【0081】
なお、実施形態1から4にあっては、直列変圧器1a,1b,1c,1dそれぞれに一次巻線111及び二次巻線112の組と、一次巻線121及び二次巻線122の組とが含まれる場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、励磁巻線としての一次巻線111と、二次巻線112,122とを同じ鉄心に巻回し、一次巻線121を削減しても実施形態1から4と同様の効果を奏する。
【0082】
また、実施形態1から4にあっては、調整変圧器2a,2b,2c,2dそれぞれとタップ切換器3とを用いて直列変圧器1a,1b,1c,1dそれぞれの一次巻線111,121に印加する電圧を切り換えたが、これに限定されるものではない。例えば、調整変圧器2a,2b,2c,2d及びタップ切換器3に代えて、配電線1u,1vの電圧を該電圧と同相又は逆相の電圧に変換する電圧変換器を用い、一次巻線111,121に印加する電圧を切り換えるようにしてもよい。この場合は、配電線1uと2uを直結し、配電線1vと2vを直結する。
【0083】
具体的には、電圧変換器が配電線1u,1vの電圧と同相の電圧を接続線3u,3vに印加した場合、実施形態1,2に係る直列変圧器1a,1bによって配電線1u,1vの電圧が降圧されて二次側の配電線2u,2vに配電される。同様に、電圧変換器が配電線1u,1vの電圧と逆相の電圧を接続線3u,3vに印加した場合、直列変圧器1a,1bによって配電線1u,1vの電圧が昇圧されて二次側の配電線2u,2vに配電される。実施形態3,4に係る直列変圧器1c,1dの場合は、上記の降圧と昇圧の場合が逆転する。
【0084】
例えば、直列変圧器1aによって二次側の電圧を一次側の電圧より高い電圧を中心に調整するには、電圧変換器が接続線3u,3vに印加する電圧に、配電線1u,1vの電圧と逆相の一定電圧を加算すればよい。また、直列変圧器1bによって二次側の電圧を一次側の電圧より低い電圧を中心に調整するには、電圧変換器が接続線3u,3vに印加する電圧に、配電線1u,1vの電圧と同相の一定電圧を加算すればよい。
【0085】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。また、各実施形態で記載されている技術的特徴は、お互いに組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0086】
1u,1v,2u,2v 配電線、 100a,100b 電圧調整装置、 1a,1b,1c,1d 直列変圧器、 111,121 一次巻線、 112,122 二次巻線、 u1,u2,v1,v2 端子、 2a,2b,2c,2d 調整変圧器、 21 分路巻線、 22,23 直列巻線、 t1,t2,t3 タップ、 3 タップ切換器、 31 制御部、 32 駆動部、 Tr1,Tr2,Tr3,TrA,TrB,TrC 切換スイッチ、 3u,3v 接続線、 TrS 矯絡用スイッチ、 RS 限流抵抗器、 PT 計測用変圧器、 TrAa,TrAb サイリスタ