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2022-42785液体吐出装置、液体吐出装置の制御方法及び制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042785
(43)【公開日】2022-03-15
(54)【発明の名称】液体吐出装置、液体吐出装置の制御方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20220308BHJP
   B41J 2/21 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
B41J2/01 201
B41J2/01 103
B41J2/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020148373
(22)【出願日】2020-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 智哉
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EC72
2C056ED01
2C056EE08
(57)【要約】
【課題】裏抜けによる画質の低下を抑制しつつ、形成画像の発色の低下を抑制する。
【解決手段】用紙に対してインクを吐出する記録ヘッドと、記録ヘッドから吐出されるインクによって用紙9の一方の面及び他方の面の両面にそれぞれ形成される画像に係る画像データを記憶する記憶部と、制御部とを備える。制御部は、メモリに記憶されている画像データに基づいて、用紙に形成される画像の種類を判断する判断処理と、判断処理で判断された画像の種類に基づいて、用紙に画像を形成する際の記録ヘッドからのインクの吐出量を変更する吐出量変更処理とを実行する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に対して液体を吐出するヘッドと、
前記ヘッドから吐出される液体によって前記記録媒体の一方の面及び他方の面の両面にそれぞれ形成される画像に係る画像データを記憶する記憶部と、
制御部とを備えており、
前記制御部は、
前記記憶部に記憶されている前記画像データに基づいて、前記記録媒体に形成される前記画像の種類を判断する判断処理と、
前記判断処理で判断された前記画像の前記種類に基づいて、前記記録媒体に前記画像を形成する際の前記ヘッドからの液体の吐出量を変更する吐出量変更処理とを実行することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記判断処理において前記他方の面に形成される前記画像の前記種類が文字であると判断した場合に、前記吐出量変更処理において、前記一方の面に前記画像を形成する際の前記ヘッドからの液体吐出量を前記記録媒体の片面のみに前記画像を形成する場合の液体吐出量に比べて少なくすることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記判断処理において前記一方の面に形成される前記画像の前記種類が文字であると判断した場合に、前記吐出量変更処理において、前記一方の面に前記画像を形成する際の前記ヘッドからの液体吐出量を前記記録媒体の片面のみに前記画像を形成する場合の液体吐出量と同じにすることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記判断処理において、前記記録媒体の前記一方の面及び前記他方の面のいずれに形成される前記画像の前記種類も文字ではないと判断した場合に、前記一方の面に形成される前記画像の前記他方の面への裏抜け度合いを示す第1の値と、前記他方の面に形成される前記画像の前記一方の面への裏抜け度合いを示す第2の値との大小関係を比較する比較処理をさらに実行し、
前記比較処理において前記第2の値が前記第1の値よりも前記裏抜け度合いが小さいと判断された場合に、前記吐出量変更処理において、前記一方の面に前記画像を形成する際の前記ヘッドからの液体吐出量を前記記録媒体の片面のみに前記画像を形成する場合の液体吐出量に比べて少なくすることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記裏抜け度合いを示す値は、数値が大きいほど前記裏抜け度合いが小さく、
前記制御部は、
前記比較処理において、前記第2の値が、前記第1の値に所定値を加算した第3の値よりも大きいか否かを判断し、
前記比較処理において前記第2の値が前記第3の値よりも大きいと判断された場合に、前記吐出量変更処理において、前記一方の面に前記画像を形成する際の前記ヘッドからの液体吐出量を前記記録媒体の片面のみに前記画像を形成する場合の液体吐出量に比べて少なくすることを特徴とする請求項4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記裏抜け度合いを示す値は、数値が大きいほど前記裏抜け度合いが小さく、
前記制御部は、
前記比較処理において、前記第2の値から所定値を減算した第3の値が、前記第1の値よりも大きいか否かを判断し、
前記比較処理において前記第3の値が前記第1の値よりも大きいと判断された場合に、前記吐出量変更処理において、前記一方の面に前記画像を形成する際の前記ヘッドからの液体吐出量を前記記録媒体の片面のみに前記画像を形成する場合の液体吐出量に比べて少なくすることを特徴とする請求項4に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記画像の前記種類は、写真及びグラフを含んでおり、
前記所定値は、前記他方の面に形成される前記画像の前記種類がグラフである場合、前記他方の面に形成される前記画像の前記種類が写真である場合に比べて小さいことを特徴とする請求項5又は6に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記他方の面に形成される前記画像の面積が大きいほど、前記所定値が小さいことを特徴とする請求項5~7のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記所定値は、前記他方の面に形成される前記画像に黒が含まれていない場合、前記他方の面に形成される前記画像に黒が含まれている場合に比べて小さいことを特徴とする請求項5~8のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記制御部は、
前記記憶部に記憶されている前記画像データに基づいて、前記記録媒体に形成される複数の前記画像に対応する複数の領域を認定する領域認定処理をさらに実行し、
前記領域認定処理で認定された前記複数の領域のうち最も面積の大きな領域から順番に、前記判断処理及び前記吐出量変更処理を実行することを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記制御部は、
前記判断処理において、前記記録媒体の前記一方の面及び前記他方の面のそれぞれについて1つの前記種類を判断し、
前記吐出量変更処理において、前記判断処理で判断された前記1つの種類に基づいて前記吐出量を変更することを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
記録媒体に対して液体を吐出するヘッドと、前記ヘッドから吐出される液体によって前記記録媒体の一方の面及び他方の面の両面にそれぞれ形成される画像に係る画像データを記憶する記憶部とを備えた液体吐出装置の制御方法であって、
前記記憶部に記憶されている前記画像データに基づいて、前記記録媒体に形成される前記画像の種類を判断する判断処理と、
前記判断処理で判断された前記画像の前記種類に基づいて、前記記録媒体に前記画像を形成する際の前記ヘッドからの液体の吐出量を変更する吐出量変更処理とを備えていることを特徴とする液体吐出装置の制御方法。
【請求項13】
記録媒体に対して液体を吐出するヘッドと、前記ヘッドから吐出される液体によって前記記録媒体の一方の面及び他方の面の両面にそれぞれ形成される画像に係る画像データを記憶する記憶部とを備えた液体吐出装置に実行させる制御プログラムであって、
前記液体吐出装置に、
前記記憶部に記憶されている前記画像データに基づいて、前記記録媒体に形成される前記画像の種類を判断する判断処理と、
前記判断処理で判断された前記画像の前記種類に基づいて、前記記録媒体に前記画像を形成する際の前記ヘッドからの液体の吐出量を変更する吐出量変更処理とを実行させることを特徴とする制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に液体を吐出して画像を形成する液体吐出装置、液体吐出装置の制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置によって記録媒体に画像を形成する際に、記録媒体の一方の面に吐出された液体が記録媒体の他方の面ににじみ出る現象(裏抜け)が生じることがある。記録媒体の両面に画像を形成する両面印刷を行う場合、一方の面に吐出された液体によって生じた裏抜けによって、他方の面に形成される画像の画質が劣化するという問題が生じる。
【0003】
特許文献1には、両面印刷時におけるインク滴量を調整可能なインクジェット記録装置が開示されている。かかるインクジェット記録装置においては、記録媒体上にテストパターンを記録し、記録されたテストパターンの裏映り度合いの判定結果に基づいて、両面印刷時におけるインク滴量を用紙に裏映り(裏抜け)を生じさせないインク滴量に調整する。これにより、裏抜けに起因する画質の劣化を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-106239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような、裏抜けが生じないようにインク滴量を減らすという制御を、画像の種類(文字、写真、グラフ等)に関わらず一律に実行すると、形成画像の発色が低下し得る。
【0006】
本発明の目的は、裏抜けによる画質の低下を抑制しつつ、形成画像の発色の低下を抑制することができる液体吐出装置、液体吐出装置の制御方法及び制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液体吐出装置は、記録媒体に対して液体を吐出するヘッドと、前記ヘッドから吐出される液体によって前記記録媒体の一方の面及び他方の面の両面にそれぞれ形成される画像に係る画像データを記憶する記憶部と、制御部とを備えており、前記制御部は、前記記憶部に記憶されている前記画像データに基づいて、前記記録媒体に形成される前記画像の種類を判断する判断処理と、前記判断処理で判断された前記画像の前記種類に基づいて、前記記録媒体に前記画像を形成する際の前記ヘッドからの液体の吐出量を変更する吐出量変更処理とを実行することを特徴とする。
【0008】
本発明の制御方法は、記録媒体に対して液体を吐出するヘッドと、前記ヘッドから吐出される液体によって前記記録媒体の一方の面及び他方の面の両面にそれぞれ形成される画像に係る画像データを記憶する記憶部とを備えた液体吐出装置の制御方法であって、前記記憶部に記憶されている前記画像データに基づいて、前記記録媒体に形成される前記画像の種類を判断する判断処理と、前記判断処理で判断された前記画像の前記種類に基づいて、前記記録媒体に前記画像を形成する際の前記ヘッドからの液体の吐出量を変更する吐出量変更処理とを備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明の制御プログラムは、記録媒体に対して液体を吐出するヘッドと、前記ヘッドから吐出される液体によって前記記録媒体の一方の面及び他方の面の両面にそれぞれ形成される画像に係る画像データを記憶する記憶部とを備えた液体吐出装置に実行させる制御プログラムであって、前記液体吐出装置に、前記記憶部に記憶されている前記画像データに基づいて、前記記録媒体に形成される前記画像の種類を判断する判断処理と、前記判断処理で判断された前記画像の前記種類に基づいて、前記記録媒体に前記画像を形成する際の前記ヘッドからの液体の吐出量を変更する吐出量変更処理とを実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
画像の種類によっては、裏抜けが画質に与える影響が少ない場合がある。本発明の液体吐出装置では、記録媒体に画像を形成する際のインクの吐出量を決定する際に、画像の種類を考慮することで、必要以上に裏抜けを防ぐためにインクの吐出量を減らしてしまうことがない。よって、裏抜けによる画質の低下を抑制しつつ、形成画像の発色の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態にかかるプリンタの内部構造を示す概略側面図である。
図2図1に示すプリンタの電気的構成を概略的に示すブロック図である。
図3】吐出量変更処理を実行する対象の面と対象の面の裏面とにそれぞれ形成される画像の種類の組み合わせと、吐出量変更処理の内容とを示す表である。
図4】用紙の両面に形成する画像の一例を示す図であり、(a)は一方の面、(b)は他方の面を示す。
図5】プリンタの処理動作を示すフローチャート(前)である。
図6】プリンタの処理動作を示すフローチャート(中)である。
図7】プリンタの処理動作を示すフローチャート(後)である。
図8】領域認定処理で認定された領域の一例を示す図であり、(a)は一方の面を示し、(b)は他方の面を示し、(c)は一方の面の領域と他方の面の領域とを重ね合わせたものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な一実施の形態にかかるインクジェットプリンタ(以下、単に「プリンタ」と称する)について、図面を参照しつつ説明する。以下の説明においては、プリンタ10が使用可能に設置された状態(図1の状態)を基準として上下方向が定義され、筐体11の開口13が設けられている側を手前側(正面)として前後方向が定義され、プリンタ10を手前側(正面)から見て左右方向が定義される。
【0013】
プリンタ10は、用紙9の一方の面のみに画像を形成する片面印刷と、用紙9の一方の面及び他方の面の両面に画像を形成する両面印刷とを行うことができる。図1に示すように、プリンタ10は、給紙トレイ4、排紙トレイ5、記録部6、搬送部7及び制御部8などを有する。給紙トレイ4、記録部6、搬送部7及び制御部8は、プリンタ10の筐体11内に収容されている。筐体11内において、記録部6の下方に給紙トレイ4が配置されている。
【0014】
給紙トレイ4は、複数の用紙9を積層状態で支持して収容することが可能なものである。給紙トレイ4は、筐体11に対して前後方向に挿抜可能となっている。給紙トレイ4は、用紙9を支持する支持面4aを有している。
【0015】
排紙トレイ5は、記録部6の後述する記録ヘッド63により画像が形成された用紙9を収容する。排紙トレイ5は、給紙トレイ4の前方側の上方に配置されており、給紙トレイ4とともに前後方向に移動するようになっている。
【0016】
記録部6は、キャリッジ61及び記録ヘッド63を有している。キャリッジ61は、2つのガイドレール67a、67bによって支持されている。2つのガイドレール67a、67bは、前後方向に互いに離隔して配置され、各々が左右方向に延設されている。キャリッジ61は、2つのガイドレール67a、67bを跨ぐようにして配置されている。キャリッジ61は、キャリッジ駆動モータ31(図2参照)の駆動力により、2つのガイドレール67a、67bに沿って主走査方向である左右方向に往復移動可能である。
【0017】
記録ヘッド63は、キャリッジ61に搭載されており、キャリッジ61とともに主走査方向に往復移動する。記録ヘッド63は、インクカートリッジ(不図示)から供給されたインクを下面のノズル面69に設けられたノズル(不図示)から吐出することで、用紙9に画像を形成する。
【0018】
搬送部7は、用紙9をプリンタ10の内部において搬送するものであり、給紙ローラ70、搬送ローラ対71~74、プラテン75及びガイド部材16、17を含む。
【0019】
給紙ローラ70は、給紙トレイ4に支持された用紙9のうちで最も上に位置する用紙9と接触する位置に配置されている。給紙ローラ70は、給紙モータ33(図2参照)からの駆動力が付与されて回転し、給紙トレイ4内の用紙9を後方に向かって送り出す。給紙ローラ70によって給紙トレイ4から送り出された用紙9は、給紙トレイ4から記録部6まで延びる搬送路14に送り込まれる。
【0020】
搬送ローラ対71~74は、互いに接触する2つのローラを含み、用紙9をその2つのローラで挟持しつつ搬送するように構成されている。各搬送ローラ対71~74を構成する2つのローラの一方は駆動ローラであり、搬送モータ34の(図2参照)からの駆動力が付与されて回転する。各搬送ローラ対71~74を構成する2つのローラの他方は従動ローラであり、駆動ローラの回転に伴って連れ回る。
【0021】
搬送ローラ対71、72、74は、正方向(搬送ローラ対71、72においては用紙9を図1の黒塗り矢印で示す方向D1に搬送する方向、搬送ローラ対74においては用紙9を図1の白抜き矢印で示す方向D2に搬送する方向)にのみ回転可能である。搬送ローラ対73は、正逆方向(用紙9を方向D1に搬送する方向、及び、方向D2に搬送する方向)に回転可能である。
【0022】
搬送ローラ対71、72は、前後方向に記録部6を挟んで配置されており、搬送ローラ対71は記録部6よりも後方に、搬送ローラ対72は記録部6よりも前方に配置されている。搬送ローラ対71は、給紙ローラ70によって給紙トレイ4から送り出された用紙9を記録ヘッド63のノズル面69と対向する画像記録領域Fに送る。画像記録領域Fに送られた用紙9は、記録ヘッド63のノズル面69と対向する面に、記録ヘッド63から吐出されたインクによって画像が形成される。搬送ローラ対72は、搬送ローラ対71によって送られた用紙9を受け取り、前方に向かって送る。
【0023】
搬送ローラ対73は、搬送ローラ対72によって送られた用紙9を受け取る。用紙9の一方の面のみに画像を形成する片面印刷を行う場合、及び、用紙9の両面に画像を形成する両面印刷を行う場合であって、すでに用紙9の両面に画像が形成されている場合には、搬送ローラ対73は、正方向に回転して用紙9を排紙トレイ5に排出する。両面印刷を行う場合であって、用紙9の一方の面のみに画像が形成されている場合には、搬送ローラ対73は、用紙9の搬送方向の後端が搬送ローラ対73の近傍まで搬送されたときに、回転方向を正方向から逆方向に反転し、搬送ローラ対73の近傍から記録部6の下方に延びる反転搬送路15に用紙9を送り込む。
【0024】
搬送ローラ対74は、搬送ローラ対73によって反転搬送路15に送り込まれた用紙9を受け取り、後方に向かって送る。反転搬送路15に送り込まれた用紙9は、装置の後端部において給紙トレイ4から記録部6まで延びる搬送路14の途中に送り込まれる。反転搬送路15から搬送路14に送り込まれた用紙9は、すでに画像が形成されている面とは反対の面が記録ヘッド63のノズル面69と対向する状態で画像記録領域Fに搬送される。両面に画像が記録された用紙9は、搬送ローラ対73によって排紙トレイ5に排出される。
【0025】
プラテン75は、記録部6の下方において記録部6のノズル面69と対向するように配置されている。プラテン75は、画像記録領域Fに搬送された用紙9を支持する。ガイド部材16は、給紙トレイ4から送り出された用紙9を画像記録領域Fに送り込む搬送路14を画定している。ガイド部材17は、搬送ローラ対73の近傍から記録部6の下方に延びる反転搬送路15を画定している。
【0026】
制御部8は、プリンタ10全体の制御を司るものであり、図2に示すようにキャリッジ駆動モータ31、記録ヘッド63、給紙モータ33、搬送モータ34などが電気的に接続されている。制御部8は、CPU(Central Processing Unit)81、メモリ82、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)83などを含み、これらが協働して、キャリッジ駆動モータ31、記録ヘッド63、給紙モータ33及び搬送モータ34などの動作を制御する。
【0027】
メモリ82は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリなどによって構成されており、CPU81によって実行されるプログラム82aが記憶されている。メモリ82は、各種プログラムが読み出される作業領域や、画像データを一時的に記憶する記憶領域として利用される。ASIC83は、画像データの書き替えなどを行う。
【0028】
メモリ82に記憶されるプログラム82aは、プリンタ10の製造時に予め記憶されるものであってもよい。プログラム82aは、CD-ROMなどに記録された形態で提供されてもよく、インターネットなどの通信ネットワークを介して提供されてもよい。CPU81は、プログラム82aを実行することにより、プリンタ10の制御を実行する。
【0029】
メモリ82に記憶される画像データは、記録ヘッド63から吐出されたインクによって用紙9に形成される画像に係る画像データである。メモリ82に記憶される画像データは、記録ヘッド63のノズルから吐出されるべきインクの量を示す、ノズル毎且つ画素毎に定められたデータである。画素は、用紙9上に形成される画像を構成する要素であり、用紙9上の画像形成領域に対応してマトリックス状に配置されている。本実施形態では、階調数が4であり、1画素を形成するインクの量が「ゼロ」「小」「中」「大」のそれぞれに対応する4種類のデータとしてメモリ82に記憶されており、「ゼロ」「小」「中」「大」のいずれかのデータがノズル毎に割り当てられる。メモリ82には、少なくとも両面印刷時において用紙9の一方の面及び他方の面の両面にそれぞれ形成される画像に係る画像データを一度に記憶することができる。
【0030】
なお、図2では、CPU81及びASIC83を1つずつ図示しているが、制御部8は、CPU81を1つだけ含み、この1つのCPU81が必要な処理を一括して行うものであってもよいし、CPU81を複数含み、これら複数のCPU81が必要な処理を分担して行うものであってもよい。また、制御部8は、ASIC83を1つだけ含み、この1つのASIC83が必要な処理を一括して行うものであってもよいし、ASIC83を複数含み、これら複数のASIC83が必要な処理を分担して行うものであってもよい。
【0031】
制御部8は、メモリ82に記憶されている画像データに基づいて、用紙9に形成される画像の種類を判断する判断処理を実行する。具体的には、判断処理においては、画像が文字、写真、グラフのいずれであるかを判断する。
【0032】
制御部8は、判断処理で判断された画像の種類に基づいて、用紙9に画像を形成する際の記録ヘッド63からのインクの吐出量(以降、単に「インク吐出量」と称する)を変更する吐出量変更処理を実行する。図3に示す表は、用紙9において吐出量変更処理を実行する対象の面(一方の面)と対象の面の裏面(他方の面)とにそれぞれ形成される画像の種類の組み合わせと、吐出量変更処理の内容とを示している。
【0033】
図3の表に示すように、判断処理において用紙9の一方の面に形成される画像の種類が文字であると判断した場合には、吐出量変更処理において、この用紙9の一方の面に画像(文字)を形成する際のインク吐出量を、片面印刷モードである場合のインク吐出量と同じにする。また、判断処理において用紙9の他方の面に形成される画像の種類が文字であると判断した場合には、吐出量変更処理において、この用紙9の一方の面に画像を形成する際のインク吐出量を、片面印刷モードである場合のインク吐出量に比べて少なくする。
【0034】
さらに、制御部8は、用紙9の一方の面及び他方の面のいずれに形成される画像の種類も文字ではないと判断した場合には、吐出量変更処理において、用紙9の両面の裏抜け度合に基づいて、この用紙9の一方の面に画像(写真又はグラフ)を形成する際のインク吐出量を変更する。すなわち、まず制御部8は、用紙9の一方の面に形成される画像の他方の面への裏抜け度合いを示す第1の値と、用紙9の他方の面に形成される画像の一方の面への裏抜け度合いを示す第2の値との大小関係を比較する比較処理を実行する。そして、比較処理において第2の値が第1の値よりも裏抜け度合いが小さいと判断された場合に、吐出量変更処理において、用紙9の一方の面に画像を形成する際のインク吐出量を、片面印刷モードである場合のインク吐出量に比べて少なくする。
【0035】
本実施形態においては、「裏抜け度合い」は明度を表すL値で示す。すなわち、第1の値は、一方の面に画像を形成された状態の用紙9の他方の面におけるL値である。第2の値は、他方の面に画像が形成された状態の用紙9の一方の面におけるL値である。つまり、裏抜け度合いを示す値は、数値が大きいほど裏抜け度合いが小さい。
【0036】
本実施形態においては、各色と対応するL値とを関連付けたL値テーブルをメモリ82に記憶させておき、そのL値テーブルからL値を抽出する。すなわち、メモリ82に記憶されたL値テーブルから抽出された、用紙9の一方の面に形成される画像の色に対応するL値が第1の値である。また、メモリ82に記憶されたL値テーブルから抽出された、用紙9の他方の面に形成される画像の色に対応するL値が第2の値である。
【0037】
なお、L値テーブルは、外部から取得したものであってもよく、ユーザにより作成されたものであってもよい。L値テーブルの作成方法としては、例えば用紙の一方の面にテストパターンを形成し、発光素子及び受光素子を備えたセンサ(図示せず)により用紙9の他方の面の反射率を測定することでL値を求める。このようにして色毎にL値を求め、各色と対応するL値とを関連付けたテーブルを作成することができる。L値テーブルは、紙厚やインクの浸透度合が異なる用紙種類毎に設けられていてもよい。
【0038】
比較処理においては、第2の値が、第1の値に所定値を加算した第3の値よりも大きいか否かを判断する。上述のように、本実施形態においては、裏抜け度合いを示す第1の値及び第2の値は明度を表すL値であり、数値が大きいほど裏抜け度合いが小さい。したがって、比較処理において、第2の値が第3の値(=第1の値+所定値)よりも大きいと判断された場合、第2の値が第1の値よりも裏抜け度合が小さい。比較処理において、第2の値が第3の値(=第1の値+所定値)よりも大きいと判断された場合、吐出量変更処理において、用紙9の一方の面に画像を形成する際のインク吐出量を、片面印刷モードである場合のインク吐出量に比べて少なくする。
【0039】
所定値は、用紙9の他方の面に形成される画像の種類がグラフである場合、他方の面に形成される画像の種類が写真である場合に比べて小さい。また、所定値は、用紙9の他方の面に形成される画像の面積が大きいほど小さい。さらに、所定値は、用紙9の他方の面に形成される画像に黒が含まれていない場合、他方の面に形成される画像に黒が含まれている場合に比べて小さい。
【0040】
制御部8は、メモリ82に記憶されている画像データに基づいて、用紙9に形成される複数の画像に対応する複数の領域を認定する領域認定処理を実行する。ここで、図4(a)、(b)に用紙9の一方の面9a及び他方の面9bにそれぞれ形成する画像の一例を示す。図4(a)に示すように、用紙9の一方の面9aにおいては、左上の領域に写真、右上の領域に文字、下の領域にグラフが形成される。また、図4(b)に示すように、用紙9の他方の面9bにおいては、左上の領域に文字、右上の領域にグラフ、下方の領域に写真が形成される。
【0041】
図4(a)、(b)に示す例では、領域認定処理において、用紙9の一方の面9aには、写真の画像が形成される左上の第1領域、文字の画像が形成される右上の第2領域及びフラグの画像が形成される下方の第3領域の3つの領域があると認定される。また、用紙9の他方の面9bには、文字の画像が形成される左上の第4領域、グラフの画像が形成される右上の第5領域及び写真の画像が形成される下方の第6領域の3つの領域があると認定される。
【0042】
制御部8は、領域認定処理により、用紙9の一方の面9a及び他方の面9bに認定された複数の領域のうち、最も面積の大きな領域から順番に判断処理及び吐出量変更処理を実行する。すなわち、図4(a)、(b)に示す例では、領域認定処理により用紙9の一方の面9a及び他方の面9bに認定された第1領域~第6領域の6つの領域のうち、最も面積の大きな領域である第3領域から順番に判断処理及び吐出量変更処理が実行される。
【0043】
次に、プリンタ10において両面印刷モードで用紙9に画像を形成する際の処理動作の一例について、図5図8を参照しつつ説明する。まず、図5に示すように、制御部8は、メモリ82に記憶されている画像データに基づいて、用紙9の一方の面及び他方の面の両面に形成される複数の画像に対応する複数の領域を認定する領域認定処理を実行する(ステップS1)。図8(a)、(b)に示す例では、用紙9の一方の面9aに第1領域91a、第2領域91b、第3領域91cの3つの領域が認定され、用紙9の他方の面9bに第4領域92a、第5領域92bの2つの領域が認定される。
【0044】
制御部8は、用紙9の両面に形成される全ての画像についてインク吐出量を片面印刷モードで形成する際のインク吐出量とする(ステップS2)。すなわち、図8(a)、(b)に示す例では、用紙9の一方の面9aの第1領域91a、第2領域91b及び第3領域91cと、用紙9の他方の面9bの第4領域92a及び第5領域92bとの合計5つの領域に形成される画像のインク吐出量は、いずれも片面印刷モードで形成する際のインク吐出量とされる。
【0045】
次に、制御部8は、ステップS1において認定された複数の領域の中で、未だ選択されていない未選択領域のうち、最も面積が大きな領域を対象領域として選択する(ステップS3)。すなわち、図8(a)、(b)に示す例では、まずステップS1において認定された複数の領域のうち、最も面積が大きな領域である第1領域91aが対象領域として選択される。そして、制御部8は、ステップS3で選択した対象領域に形成される画像が文字であるか否かを判断する(ステップS4)。対象領域に形成される画像が文字であると判断した場合には(ステップS4:YES)、対象領域の裏面において対象領域と重なる全領域へのインク吐出量を減らす(ステップS5)。
【0046】
ここで、用紙9の一方の面9aの第1領域91a、第2領域91b及び第3領域91cと、用紙9の他方の面9bの第4領域92a及び第5領域92bとを重ね合わせ状態を図8(c)に示す。図8(c)に示すように、第1領域91aが対象領域であるとき、第1領域91aが配置される一方の面9aの裏面である他方の面9bにおいて第1領域91aと重なる領域は、第4領域92a及び第5領域92bである。よって、第1領域91aに形成される画像が文字であるときは、第4領域92a及び第5領域92b全体のインク吐出量を片面印刷モードで形成する際のインク吐出量よりも少なくする。
【0047】
その後、制御部8は、ステップS1で認定された全ての領域をステップS3において対象領域として選択したか否かを判断する(ステップS7)。未だ対象領域として選択していない領域があると判断した場合には(ステップS7:NO)、上述のステップS3に戻る。一方、全ての領域を対象領域として選択したと判断した場合には(ステップS7:YES)、処理を終了する。
【0048】
ここで、ステップS4において、対象領域に形成される画像が文字ではなく写真又はグラフであると判断した場合には(ステップS4:NO)、図6に示すように、対象領域の裏面において対象領域と重なる領域を抽出する(ステップS8)。図8(c)に示すように、第1領域91aが対象領域であるときは、第1領域91aが配置される一方の面9aの裏面である他方の面9bにおいて第1領域91aと重なる領域として、第4領域92a及び第5領域92bが抽出される。
【0049】
さらに、制御部8は、ステップS8で抽出された領域の中に、文字が形成される領域が含まれているか否かを判断する(ステップS9)。そして、文字が形成される領域が含まれていると判断した場合には(ステップS9:YES)、対象領域へのインク吐出量を減らし(ステップS10)、上述のステップS7に進む。
【0050】
すなわち、第1領域91aが対象領域であるとき、他方の面9bにおいて第1領域91aと重なる第4領域92a及び第5領域92bのうち少なくともいずれか一方に文字が形成される場合は、第1領域91aのインク吐出量を片面印刷モードで形成する際のインク吐出量よりも少なくする。
【0051】
一方、制御部8は、ステップS8で抽出された領域の中に、文字が形成される領域が含まれていないと判断した場合には(ステップS9:NO)、N=0と設定する(ステップS11)。その後、ステップS8で抽出された複数の抽出領域の中で、未だ第1選択領域として選択されていない抽出領域のうち、最も面積の大きな領域を第1選択領域として選択する(ステップS12)。ステップS8において、第4領域92a及び第5領域92bが抽出された場合には、まず面積が最も大きい第5領域92bが第1選択領域として選択される。
【0052】
続いて、1対の画素を選択する(ステップS13)。具体的には、用紙9の一方の面9a及び他方の面9bの対向する領域に位置する1対の画素であって、一方の面9aの対象領域における第1選択領域と重なる領域と、他方の面9bの第1選択領域とにそれぞれ位置する1対の画素を選択する。そして、1対の画素のうち一方の面9aに形成される画素の他方の面9bへの裏抜け度合いを示す値を第1の値とし、他方の面9bに形成される画素の一方の面9aへの裏抜け度合いを示す値を第2の値とする。さらに、第2の値が第1の値に所定値を加算した第3の値よりも大きいか否かを判断する比較処理を行う(ステップS14)。
【0053】
ステップS14において、第2の値が第3の値よりも大きいと判断した場合には(ステップS14:YES)、制御部8は、対象領域へのインク吐出量を減らす。すなわち例えば、第1領域91aが対象領域であるときは、第1領域91aのインク吐出量を片面印刷モードで形成する際のインク吐出量よりも少なくする。
【0054】
一方、ステップS14において、第2の値が第3の値以下であると判断した場合には(ステップS14:NO)、制御部8は、対象領域と重なる第1選択領域内の全ての画素についてステップS14の比較処理が完了したか否かを判断する(ステップS15)。比較処理が完了していない画素があると判断した場合には(ステップS15:NO)、上述のステップS13に戻って、第1選択領域内で未だ選択していない画素を選択する。
【0055】
全ての画素について比較処理が完了したと判断した場合には(ステップS15:YES)、N=1であるか否かを判断する(ステップS16)。N=1である場合には(ステップS16:YES)、後述するステップS17、ステップS18を省略してステップS19に進む。N=1でない場合には(ステップS16:NO)、N=1と設定する(ステップS17)。
【0056】
次に、制御部8は、対象領域以外に、第1選択領域の裏面において第1選択領域と重なる領域があるか否かを判断する(ステップS18)。すなわち、第1領域91aが対象領域であり、第5領域92bが第1選択領域である場合、第5領域92bは、一方の面9aにおいて第1領域91a以外に、第2領域91b及び第3領域91cと重なっている。
【0057】
ステップS18において、第1選択領域と重なる領域がないと判断した場合には(ステップS18:NO)、制御部8は、ステップS8において抽出した全ての抽出領域をステップS12で第1選択領域として選択したか否かを判断する(ステップS19)。未だ第1選択領域として選択していない抽出領域があると判断した場合には(ステップS19:NO)、上述のステップS11に戻る。一方、全ての抽出領域を第1選択領域として選択したと判断した場合には(ステップS19:YES)、図5のS7に戻る。
【0058】
また、ステップS18において、第1選択領域と重なる領域があると判断した場合には(ステップS18:YES)、図7に示すステップS20に進む。ステップS20においては、制御部8は、対象領域以外に、第1選択領域の裏面において第1選択領域と重なる領域を抽出する。すなわち、第1領域91aが対象領域であり、第5領域92bが第1選択領域である場合、第2領域91b及び第3領域91cが抽出される。
【0059】
続いて、制御部8は、ステップS20で抽出された領域の中に文字が形成される領域があるか否かを判断する(ステップS21)。ステップS20で抽出された領域の中に文字が形成される領域があると判断した場合には(ステップS21:YES)、制御部8は、第1選択領域へのインク吐出量を減らす(ステップS22)。すなわち、第1領域91aが対象領域であり、第5領域92bが第1選択領域である場合、第2領域91b及び第3領域91cの少なくとも一方に文字が形成される場合、第5領域92bへのインク吐出量を片面印刷モードで形成する際のインク吐出量よりも少なくする。その後、図6に示すステップS13に戻り、ステップS22でインク吐出量が変更された第1選択領域に基づいて再度比較処理を行う。
【0060】
一方、ステップS20で抽出された領域の中に文字が形成される領域がないと判断した場合には(ステップS21:NO)、制御部8は、ステップS20で抽出された複数の抽出領域の中で、未だ第2選択領域として選択されていない抽出領域のうちの1つを第2選択領域として選択する(ステップS23)。
【0061】
続いて、1対の画素を選択する(ステップS24)。具体的には、用紙9の一方の面9a及び他方の面9bの対向する領域に形成される1対の画素であって、一方の面9aの第2選択領域における第1選択領域と重なる領域と、他方の面9bの第1選択領域とにそれぞれ形成される1対の画素を選択する。そして、1対の画素のうち他方の面9bに形成される画素の一方の面9aへの裏抜け度合いを示す値を第1の値とし、一方の面9aに形成される画素の他方の面9bへの裏抜け度合いを示す値を第2の値とする。さらに、第2の値が第1の値に所定値を加算した第3の値よりも大きいか否かを判断する比較処理を行う(ステップS25)。
【0062】
ステップS25において、第2の値が第3の値よりも大きいと判断した場合には(S25:YES)、制御部8は、第1選択領域へのインク吐出量を減らす。すなわち例えば、第5領域92bが第1選択領域であるときは、第5領域92bのインク吐出量を片面印刷モードで形成する際のインク吐出量よりも少なくする。
【0063】
一方、ステップS25において、第2の値が第3の値以下であると判断した場合には(S25:NO)、制御部8は、第2選択領域と重なる第1選択領域内の全ての画素についてステップS25の比較処理が完了したか否かを判断する(ステップS26)。比較処理が完了していない画素があると判断した場合には(ステップS26:NO)、上述のステップS24に戻って、第2選択領域内で未だ選択していない画素を選択する。
【0064】
そして、全ての画素について比較処理が完了したと判断した場合には(ステップS26:YES)、制御部8は、ステップS20において抽出した全ての抽出領域をステップS23で第2選択領域として選択したか否かを判断する(ステップS27)。未だ第2選択領域として選択していない抽出領域があると判断した場合には(ステップS27:NO)、上述のS23に戻る。一方、全ての抽出領域を第2選択領域として選択したと判断した場合には(ステップS27:YES)、図6のステップS19に戻る。
【0065】
以上のように、本実施形態のプリンタ10では、制御部8は、メモリ82に記憶されている画像データに基づいて、用紙9に形成される画像の種類を判断する判断処理と、判断処理で判断された画像の種類に基づいて、用紙9に画像を形成する際の記録ヘッド63からのインクの吐出量を変更する吐出量変更処理とを実行する。
【0066】
画像の種類によっては、裏抜けが画質に与える影響が少ない場合がある。したがって、上述の構成により、用紙9に画像を形成する際のインクの吐出量を決定する際に、画像の種類を考慮することで、必要以上に裏抜けを防ぐためにインクの吐出量を減らしてしまうことがない。よって、裏抜けによる画質の低下を抑制しつつ、形成画像の発色の低下を抑制することができる。
【0067】
また、上述の実施形態のプリンタ10では、制御部8は、判断処理において用紙9の他方の面に形成される画像の種類が文字であると判断した場合に、吐出量変更処理において、用紙9の一方の面に画像を形成する際の記録ヘッド63からのインク吐出量を用紙9の片面のみに画像を形成する場合のインク吐出量に比べて少なくする。用紙9の他方の面に形成される画像が文字である場合、用紙9の一方の面に形成された画像が裏抜けすると、用紙9の他方の面に形成される画像(文字)の画質が著しく低下する。したがって、用紙9の他方の面に形成される画像が文字である場合は、用紙9の一方の面に画像を形成する際のインク吐出量を少なくすることで、一方の面に吐出されたインクによる裏抜けするのを抑制し、他方の面に形成される画像(文字)の画質の低下を抑制することができる。
【0068】
さらに、上述の実施形態のプリンタ10では、制御部8は、判断処理において用紙9の一方の面に形成される画像の種類が文字であると判断した場合に、吐出量変更処理において、一方の面に画像を形成する際の記録ヘッド63からのインク吐出量を用紙9の片面のみに画像を形成する場合のインク吐出量と同じにする。用紙9の一方の面に形成される画像が文字である場合、当該文字が裏抜けしたとしても、用紙9の他方の面に形成される画像の画質に与える影響が少ない。したがって、用紙9の一方の面に形成される画像が文字である場合は、当該一方の面に画像を形成する際のインク吐出量を用紙9の片面のみに画像を形成する場合のインク吐出量と同じにする(即ち、必要以上にインク吐出量を少なくしない)。これにより、形成画像の発色の低下を抑制することができる。
【0069】
加えて、上述の実施形態のプリンタ10では、制御部8は、判断処理において、用紙9の一方の面及び他方の面のいずれに形成される画像の種類も文字ではないと判断した場合に、一方の面に形成される画像の他方の面への裏抜け度合いを示す第1の値と、他方の面に形成される画像の一方の面への裏抜け度合いを示す第2の値との大小関係を比較する比較処理をさらに実行する。そして、比較処理において第2の値が第1の値よりも裏抜け度合いが小さいと判断された場合に、吐出量変更処理において、一方の面に画像を形成する際の記録ヘッド63からのインク吐出量を用紙9の片面のみに画像を形成する場合のインク吐出量に比べて少なくする。他方の面に形成される画像の一方の面への裏抜け度合いを示す第2の値が、一方の面に形成される画像の他方の面への裏抜け度合いを示す第1の値よりも、裏抜け度合いが小さいものである場合は、一方の面に形成される画像の他方の面への裏抜けにより、他方の面に形成される画像の画質が低下するおそれがある。したがって、上記の場合は、一方の面に画像を形成する際のインク吐出量を少なくすることで、一方の面に形成される画像の他方の面への裏抜けを防止し、他方の面に形成される画像の画質の低下を抑制できる。
【0070】
また、上述の実施形態のプリンタ10では、裏抜け度合いを示す値は明度を示すL値であり、数値が大きいほど裏抜け度合いが小さい。制御部8は、比較処理において、第2の値が、第1の値に所定値を加算した第3の値よりも大きいか否かを判断し、比較処理において第2の値が第3の値よりも大きいと判断された場合に、吐出量変更処理において、一方の面に画像を形成する際の記録ヘッド63からのインク吐出量を用紙9の片面のみに画像を形成する場合のインク吐出量に比べて少なくする。第2の値と第3の値とを比較することで、第2の値と第1の値とを比較する場合に比べて、一方の面に画像を形成する際のインク吐出量を少なくする制御が行われにくくなる。これにより、用紙9の一方の面に形成される画像の発色の低下を抑制することができる。
【0071】
加えて、上述の実施形態のプリンタ10では、画像の種類は、写真及びグラフを含んでおり、所定値は、他方の面に形成される画像の種類がグラフである場合、他方の面に形成される画像の種類が写真である場合に比べて小さい。用紙9の他方の面に形成される画像がグラフである場合には、他方の面に形成される画像が写真である場合に比べて、一方の面からの裏抜けによる画質の低下が大きい。したがって、他方の面に形成される画像がグラフの場合には写真の場合に比べて所定値を小さくて、一方の面に画像を形成する際のインク吐出量を少なくする制御が行われやすくすることが好ましい。これにより、他方の面に形成される画像(グラフ)の画質の低下をより確実に抑制できる。
【0072】
さらに、上述の実施形態のプリンタ10では、他方の面に形成される画像の面積が大きいほど、所定値が小さい。用紙9の他方の面に形成される画像の面積が大きいほど、一方の面からの裏抜けによる画質の低下が大きい。したがって、他方の面に形成される画像の面積が大きいほど所定値を小さくして、一方の面に画像を形成する際のインク吐出量を少なくする制御が行われやすくすることが好ましい。これにより、他方の面に形成される画像の画質の低下をより確実に抑制できる。
【0073】
また、上述の実施形態のプリンタ10では、所定値は、他方の面に形成される画像に黒が含まれていない場合、他方の面に形成される画像に黒が含まれている場合に比べて小さい。用紙9の他方の面に形成される画像に黒が含まれていない場合には、黒が含まれている場合に比べて、一方の面からの裏抜けによる画質の低下が大きい。したがって、他方の面に形成される画像に黒が含まれていない場合には黒が含まれている場合よりも所定値を小さくて、一方の面に画像を形成する際のインク吐出量を少なくする制御が行われやすくすることが好ましい。これにより、他方の面に形成される画像の画質の低下をより確実に抑制できる。
【0074】
また、上述の実施形態のプリンタ10では、制御部8は、メモリ82に記憶されている画像データに基づいて、用紙9に形成される複数の画像に対応する複数の領域を認定する領域認定処理をさらに実行し、領域認定処理で認定された複数の領域のうち最も面積の大きな領域から順番に、判断処理及び吐出量変更処理を実行する。したがって、裏抜けの影響度合いが大きい面積の大きな領域から順に処理することで、処理を効率よく行うことができる。
【0075】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0076】
上述の実施形態においては、画像の種類が、文字、写真及びグラフの3種類である場合について説明したが、これには限定されない。すなわち、例えば画像の種類は、表やイラストを含んでいてもよい。
【0077】
上述の実施形態においては、吐出量変更処理を実行する対象の面(一方の面)と対象の面の裏面(他方の面)とにそれぞれ形成される画像の種類の組み合わせと、吐出量変更処理の内容は、図3に示す表の通りであるが、画像の種類の組み合わせと吐出量変更処理の内容との関係は、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、対象の面の裏面に文字が形成される場合に、用紙9の両面のL値を比較して吐出量変更処理を行ってもよい。また、対象の面及び対象の面の裏面のいずれに形成される画像も文字ではない場合に、用紙9の両面のL値を比較することなく、インク吐出量を減らしてもよい。
【0078】
上述の実施形態においては、裏抜け度合いを示す値は明度を示すL値であり、数値が大きいほど裏抜け度合いが小さい場合について説明したが、これには限定されない。すなわち例えば、裏抜け度合いを示す値は、数値が大きいほど裏抜け度合いが大きくなるようなものであってもよい。
【0079】
また、上述の実施形態においては、比較処理において、第2の値が、第1の値に所定値を加算した第3の値よりも大きいか否かを判断する場合について説明したが、これには限定されない。すなわち例えば、所定値を加算することなく、第2の値が第1の値よりも大きいか否かを判断してもよい。また、比較処理においては、第2の値から所定値を減算した第3の値が第1の値よりも大きいか否かを判断してもよい。この場合、比較処理において第3の値が第1の値よりも大きいと判断された場合に、吐出量変更処理において、用紙9の一方の面に画像を形成する際のインク吐出量を、片面印刷モードである場合のインク吐出量に比べて少なくする。
【0080】
また、上述の実施形態においては、所定値が、他方の面(吐出量変更処理を実行する対象の面の裏面)に形成される画像の種類、大きさ、色によって変動する場合について説明したが、所定値は変動しなくてもよい。
【0081】
さらに、上述の実施形態においては、用紙9に形成される複数の画像に対応する複数の領域を認定する領域認定処理を実行し、認定された領域毎に画像の種類を判断する判断処理及びインク吐出量を決定する吐出量変更処理を行う場合について説明したが、これには限定されない。すなわち例えば、判断処理において、用紙9の一方の面及び他方の面のそれぞれについて1つの種類を判断し、吐出量変更処理において、判断処理で判断された1つの種類に基づいてインク吐出量を変更してもよい。これによると、用紙9の一方の面及び他方の面のそれぞれについて1つの種類が定められ、その種類に基づいて吐出量変更処理が行われるので、1頁内で色味を揃えることができる。
【0082】
本発明は、記録ヘッドを固定した状態で、搬送機構により搬送される用紙に画像を形成する、所謂ライン式のインクジェットプリンタにも適用され得る。また、インク以外の液体を吐出する液体吐出装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0083】
8 制御部
9 用紙(記録媒体)
10 プリンタ(液体吐出装置)
63 記録ヘッド(ヘッド)
82 メモリ(記憶部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8