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  • 特開-医療用金属細線 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042794
(43)【公開日】2022-03-15
(54)【発明の名称】医療用金属細線
(51)【国際特許分類】
   A61L 17/06 20060101AFI20220308BHJP
   A61L 31/02 20060101ALI20220308BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20220308BHJP
   A61B 17/06 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
A61L17/06
A61L31/02
A61L31/14 500
A61B17/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020148390
(22)【出願日】2020-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井出 啓太
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 亮
(72)【発明者】
【氏名】廣富 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】村田 知明
(72)【発明者】
【氏名】小林 佑輔
【テーマコード(参考)】
4C081
4C160
【Fターム(参考)】
4C081AC02
4C081AC03
4C081BA16
4C081BB07
4C081BB08
4C081BC02
4C081CG08
4C081DA04
4C081DB01
4C160BB30
(57)【要約】
【課題】生体吸収性の金属からなる細線でありながら、更に高い柔軟性と強度も有する医療用金属細線を提供する。
【解決手段】マグネシウムを含有するワイヤー2本以上から構成され、前記ワイヤーの直径が20μm以上、400μm以下であり、前記ワイヤーの直径のばらつきが±5%以内である医療用金属細線。
【選択図】 なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウムを含有するワイヤー2本以上から構成され、前記ワイヤーの直径が20μm以上、400μm以下であり、前記ワイヤーの直径のばらつきが±5%以内であることを特徴とする医療用金属細線。
【請求項2】
ワイヤー中のマグネシウムの含有量が90重量%以上であることを特徴とする請求項1記載の医療用金属細線。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体吸収性の金属からなる細線でありながら、更に高い柔軟性と強度も有する医療用金属細線に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用の金属細線は、手指の骨折の内固定や、開胸手術で離開させた胸骨の閉創時の内固定等に広く用いられているが、生体吸収性の材料からなる製品はなく、永久に体内に残存するか、取り出しのための再手術が必要である。
【0003】
また、近年の細胞工学技術の進展によって、ヒト細胞を含む数々の動物細胞の培養が可能となり、また、それらの細胞を用いてヒトの組織や器官を再構築しようとする、いわゆる再生医療の研究が急速に進んでいる。再生医療においては、細胞が増殖分化して三次元的な生体組織様の構造物を構築できるかがポイントであり、例えば、不織布からなる基材を患者の体内に移植し、周りの組織又は器官から細胞を基材中に侵入させ増殖分化させて組織又は器官を再生する方法が行われている。このような再生医療用の基材として、例えば、特許文献1に開示されるような生体吸収性材料からなる不織布を用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05-076586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような再生医療用の基材は、基材が患部から大きくずれないようにするために、糸または金属細線を介して位置を固定することがある。このような再生医療用の基材や器具を固定するために用いられる糸または金属細線は、取り出しの再手術を行わずに済むことから、器具や基材と同様に生体吸収性材料からなることが好ましい。しかしながら、ポリグリコリド等の従来の生体吸収性高分子からなる糸は塊状分解という分解メカニズム上、埋入後一定期間後に一度に多量の分解産物が生じ、しばしば遅発性の異物反応や炎症反応を引き起こすことがあった。
【0006】
一方、マグネシウム又はその合金は生体吸収性を有するため、生体吸収性の金属細線の材料として検討が進められている。マグネシウム(又は、その合金)の分解吸収のメカニズムは生体吸収性高分子材料とは異なり、腐食により漸次に分解が進行する。そのため、従来の生体吸収性高分子材料を用いた製品でみられた遅発性の不具合は生じず、生体吸収性高分子材料よりも優れた分解、吸収特性を有している。しかしながら、マグネシウム(又は、その合金)からなるワイヤーは、その金属の特性により柔軟性が低く脆いため、複雑な操作を伴う手術用途としては実用に耐えないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、生体吸収性の金属からなる細線でありながら、更に高い柔軟性と強度も有する医療用金属細線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、マグネシウムを含有するワイヤー2本以上から構成され、前記ワイヤーの直径が20μm以上、400μm以下であり、前記ワイヤーの直径のばらつきが±5%以内である医療用金属細線である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、極細のマグネシウムワイヤーを組み合わせた細線とすることで、生体吸収性の金属からなる細線でありながら柔軟性を有し、更に高い強度も有する医療用金属細線が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の医療用金属細線は、マグネシウムを含有するワイヤー2本以上から構成される。
金属細線をマグネシウムを含有するワイヤーによって構成することで生体吸収性を付与できるため、内固定に用いた場合、金属細線でありながら取り出しのための再手術を行う必要がなくなる。また、マグネシウムはポリグリコリド等の生体吸収性高分子と分解機構が異なり、一度に大量の分解産物を生ずることがないため、体内での分解吸収過程において望ましくない生体反応が発生するリスクを低減することができる。更に、柔軟な極細の複数のワイヤーを組み合わせた金属細線とすることで、高い柔軟性と強度を両立することができる。
【0011】
上記マグネシウムは、マグネシウム金属単体であってもよく、他の元素とマグネシウムとの合金であってもよい。上記マグネシウム合金としては例えば、亜鉛、カルシウム、遷移元素、希土類元素等のうち、一種以上の元素との合金が挙げられる。
【0012】
上記ワイヤーがマグネシウム合金である場合、上記ワイヤー中のマグネシウムの含有量は90重量%以上であることが好ましい。
ワイヤー中のマグネシウムの含有量を上記範囲とすることで、強度をより高めることができるとともに、適度な生体吸収速度とすることができる。上記ワイヤー中のマグネシウムの含有量は95重量%以上であることがより好ましい。
【0013】
上記ワイヤーは直径が20μm以上、400μm以下である。
従来、マグネシウムを含有するワイヤーはその材料特性上、基材や器具の固定に必要な強度を得るためには直径を太くする必要があった。しかしながら、マグネシウムを含有するワイヤーを太くすると、稼働部位の体の動きや固定のための結紮に追従できるだけの柔軟性が不足する、というジレンマを抱えていた。本発明の医療用金属細線では、上記範囲の直径を有する細いワイヤーを用い、更にそれらを複数組み合わせた細線とすることで、生体吸収性の金属からなる細線でありながら、高い強度と柔軟性を両立することができる。強度と柔軟性のバランスを得る観点から、上記ワイヤーの直径は50μm以上であることが好ましく80μm以上であることがより好ましく、300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましい。
【0014】
上記ワイヤーは、直径のばらつきが±5%以内である。
上記ワイヤーの直径のばらつきが小さいことで、各ワイヤーが均等に体内へ吸収されることから、各ワイヤーにかかる負荷も均等になり、より長期間にわたって強度を維持することができる。上記ワイヤーのばらつきは±4%以内であることが好ましく、±3%以内であることがより好ましい。
【0015】
上記ワイヤーの製造方法としては、例えば、押出加工、引抜加工等が挙げられる。
【0016】
本発明の医療用金属細線を構成するワイヤーの数は2本以上であれば特に限定されないが、3本以上50本以下であることが好ましい。
細線を上記範囲の本数のワイヤーによって構成することで、柔軟性と強度をより高めることができる。本発明の医療用金属細線を構成するワイヤーの数は、6本以上30本以下であることがより好ましい。
【0017】
本発明の医療用金属細線の製造方法は特に限定されず、例えば、上記方法によって製造した、マグネシウムを含有する複数本のワイヤーを組紐、撚糸等によって一体化させることによって製造することができる。
【0018】
本発明の医療用金属細線は外科手術において体内へ器具や基材を移植する際にこれらを固定する、又は、体組織間の固定用途として用いられる。具体的には例えば、半月板再生基材を患部に固定するために周囲の骨と結び付ける用途や、開胸手術のために離開させた胸骨の固定、骨折および腱断裂の内固定、等が挙げられる。本発明の医療用金属細線は柔軟性と強度の持続性を有することから、移植した器具や基材が役割を果たす、又は、固定した組織が治癒または定着するまでこれらを確実に固定できるとともに、生体吸収性であることから最終的には体内へ吸収されるため、安全性が高い。さらに、漸次に分解するために、分解過程後期においても従来の生体吸収性高分子材料のように塊状分解による多量の分解物が生じず、遅発性の異物反応や炎症反応を引き起こさないためより安全である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、生体吸収性の金属からなる細線でありながら、更に高い柔軟性と強度も有する医療用金属細線を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】形状回復性の評価における両端接触後の医療用金属細線の様子を示した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0022】
(実施例1)
高純度マグネシウム材を押出加工、引抜加工することで、マグネシウムを99.9%含有する直径0.1mmのワイヤーを得た。得られたワイヤーの直径のばらつきを測定したところ±2μm以内であった。次いで、得られたマグネシウムを含有するワイヤー16本を編んで組紐として一体化させ、医療用金属細線を得た。
【0023】
(実施例2)
ワイヤーの直径を0.2mmとした以外は実施例1と同様にして、マグネシウムを99.9%含有する直径0.2mm、直径のばらつき±4μm以内のワイヤーを得た。次いで、実施例1と同様にして得られたワイヤー16本を編んで組紐として一体化させ、医療用金属細線を得た。
【0024】
(比較例1)
ワイヤーの直径を0.5mmとした以外は実施例1と同様にして、マグネシウムを99.9%含有する直径0.5mm、直径のばらつき±10μm以内のワイヤーを得た。次いで、実施例1と同様にして得られたワイヤー16本を編んで組紐として一体化させ、医療用金属細線を得た。
【0025】
(比較例2、3、4)
実施例1、2および比較例1で作製したマグネシウムを99.9%含有する直径0.1mm、0.2mm及び0.5mmのワイヤーをそのまま用いた。
【0026】
<評価>
実施例及び比較例で得られた組紐、ワイヤーについて、下記の項目について評価した。結果を表1及び図1に示した。
【0027】
(強度の評価)
力学試験機(AG-Xplus、島津製作所製)を用いて引張速度5mm毎分にて単純引張試験を行い、医療用金属細線の強度(引張強力)を測定した。
【0028】
(柔軟性の評価)
力学試験機(AGS-J、島津製作所製)を用いて、支点間距離10mm、押し込み速度100mm毎分にて曲げ試験を行い、医療用金属細線の柔軟性(曲げ強力)を測定した。
【0029】
(形状回復性の評価)
長さ50mmの医療用金属細線の両端を接触させ、その後静置した。医療用金属細線の形状を目視にて観察し、ほぼ両端接触前の形状に回復した場合を「〇」、折れ曲がりが残る場合を「×」として形状回復性を評価した。両端接触後の医療用金属細線の写真を図1に示した
【0030】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によれば、生体吸収性の金属からなる細線でありながら、更に高い柔軟性と強度も有する医療用金属細線を提供することができる。

図1