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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042795
(43)【公開日】2022-03-15
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/08 20060101AFI20220308BHJP
【FI】
B23Q11/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020148391
(22)【出願日】2020-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】000150604
【氏名又は名称】株式会社ナガセインテグレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 幸泰
(72)【発明者】
【氏名】新藤 良太
(72)【発明者】
【氏名】植村 圭二
(57)【要約】
【課題】作業者の作業負担を軽減できる工作機械を提供すること。
【解決手段】工作機械において、ベッド11の上面における加工部10を覆うカバー15が設けられる。前記カバー15は、第1~第4カバー体21~24をテレスコピック状に組み合わせて、全体として伸縮することにより、加工部10の前面が開閉可能になっている。ベッド11上には、テーブル12が左右に往復動可能に設けられる。第2~第4カバー体22~24の開閉移動方向は、平面視において前後方向に対して傾斜されて、第4カバー体24の前壁部が他のカバー体21~23の前壁部より加工部10側に位置する。従って、第4カバー体24を支持する下部レール34も加工部10側の後方に位置する。このため、作業者が加工部10側に近づくことができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッドの上面における加工部の前面を覆うカバーをレールを介して前後方向と交差する方向に開閉可能に設けた工作機械において、
前記カバーの開閉方向を平面視において前記レールを前後方向に対して傾斜させて、前記レールの延長方向における前記加工部側の部分が他の部分より後方に位置するようにした工作機械。
【請求項2】
ベッドの上面における加工部を通るように移動するテーブルを往復動可能に設け、前記カバーは、そのテーブルの移動領域の少なくとも前面を覆う請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記カバーは、複数のカバー体をテレスコピック状に組み合わせて、全体として伸縮する請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
ベッドの上面における加工部の前面を覆うカバーを前後方向と交差する方向に開閉可能に設けた工作機械であって、
前記加工部と対応する位置において前記ベッドの前面に凹部を形成した工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工部の前面を開閉可能にしたカバーを有する工作機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
前記のような開閉可能なカバーを有する工作機械が、特許文献1に開示されている。すなわち、この特許文献1に開示された工作機械は、ワーク保持部に対応する開口を開閉可能にしたカバーを有する。そして、カバーの下側部分を機械後部側に傾斜させたものである。この構成によって、作業者が前かがみになることなくワークに容易に接近できて、作業者への負担を軽減できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-188797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1の工作機械においては、カバーの開閉方向に移動するテーブルは存在せず、全体として横幅が短い形状である。従って、特許文献1の工作機械におけるカバーは、横幅が短く、カバーを構成する複数枚の上下方向に長いカバー体が2枚設けられているのみである。これに対し、例えば、ワークを支持するテーブルが横方向に移動するようにした工作機械は、横幅を短くすることはできない。従って、このような工作機械においては、カバー体の枚数が増えたり、カバー全体の横幅が長くなったりことを避けることができない。
【0005】
カバー全体の横幅が長く、カバー体の枚数が多いカバーは、複数のカバー体がテレストピック状に構成されて、それらのカバー体が重なり合う収縮位置と横方向に連続する伸長位置とに配置される。従って、端部のカバー体は他のカバー体の収容を許容するために、前後寸法が大きくなって、作業者側にせり出す。そして、前後方向の大きな端部のカバー体は、作業者が作業する加工部側に位置することが普通である。このため、端部のカバー体を支持するために、ベッドの前部も作業者側にせり出すことになる。従って、作業者は、ワークの段取り替えなどの作業において、前かがみになったり、腕を伸ばしたりする無理な姿勢を強いられることになり、作業負担の面において好ましいものではなかった。
【0006】
本発明の目的は、作業者が無理な姿勢を強いられることなく、作業負担を軽減できる工作機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の目的を達成するために、本発明においては、ベッドの上面における加工部の前面を覆うカバーをレールを介して前後方向と交差する方向に開閉可能に設けた工作機械において、前記カバーの開閉方向を平面視において前記レールを前後方向に対して傾斜させて、前記レールの延長方向における前記加工部側の部分が他の部分より後方に位置するようにしたことを特徴とする。
【0008】
以上の構成においては、開閉可能にしたカバーのレールを工作機械の加工部に近づけることができる。このため、そのカバーを支持する部分においてベッドの前面のせり出しを回避することができて、作業者が前かがみなどの無理な姿勢を強いられることがなく、楽に作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明においては、工作機械の作業者の作業負担を軽くすることができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の工作機械を簡略的に示す斜視図。
図2】同じく簡略的に示す平面図。
図3】カバー部分の断面図。
図4】カバーの下側部分の断面図。
図5】カバーの上側部分の断面図。
図6】レールの配置を示す簡略図。
図7】(a)はカバーの閉鎖状態における各カバー体の関係を示す簡略図、(b)はカバーの開放状態における各カバー体の関係を示す簡略図。
図8】(a)は実施形態の配置例を示す簡略図、(b)従来例を示す簡略図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態)
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
図1図3に示すように、工作機械のベッド11の上面にはテーブル12が図2の左右方向(以下、ベッド11の横幅方向ともいう)において往復動可能に支持されている。このテーブル12の上面にはワークWが搭載されるようになっており、テーブル12の左右動にともなって、加工部10においてワークWの上面が図示しない工具によって加工される。
【0012】
前記ベッド11のテーブル12の左右方向に延びる移動領域の後端(図2の上側)には壁部13が立てられている。壁部13の上端のステー14とベッド11の前面上端部との間には、前記移動領域の上面及び前面を開閉可能に覆うカバー15が設けられている。このカバー15においては、図2の右側から順に第1~第5カバー体21~25が配置されて構成されている。そして、第1カバー体21がベッド11に固定されている。第2~第4カバー体22~24が左右方向にスライドして第1カバー体21に対してテレスコピック状に被せられる。従って、第1~第4カバー体21~24は第4カバー体24側のものほど上下及び前後の寸法が大きな体格を有している。第5カバー体25は天井部を有しない。従って、第5カバー体25の位置において、加工部10の上方は開放されている。第5カバー体25は、第4カバー体24の前壁部26の内面側に配置されて、前壁部26に対して出し入れされる。第4カバー体24の前壁部26及び第5カバー体25は窓枠状に構成されていて、その内部に透明板28が嵌められている。
【0013】
図3図4及び図6に示すように、ベッド11の上面の前端部には、それぞれ上向きの頂面を案内面とした3条の下部レール32,33,34が後ろ側から前側に向かって順に平行に配置されるように敷設されている。そして、下部レール32に第2カバー体22の下端部が、下部レール33に第3カバー体23の下端部が、下部レール34に第4カバー体24の下端部がそれぞれ複数の車輪35によって左右方向において移動可能に支持されている。図5に示すように、前記壁部13の上端部のステー14には、それぞれ横向きの頂面を案内面とした3条の上部レール42,43,44が下側から上側に向かって順に平行に配置されるように取り付けられている。そして、上部レール42に第2カバー体22の上端部が、上部レール43に第3カバー体23の上端部が、上部レール44に第4カバー体24の上端部がそれぞれ複数のスライダ45によって左右方向において移動可能に支持されている。図6に示すように、下部レール32,33,34及び上部レール42,43,44はベッド11の右端部の位置を起点として左方に延びて、下部レール34,33,32及び上部レール44,43,42の順で長くなっている。
【0014】
図3及び図4に示すように、第4カバー体24の内側面の上下位置には下部レール37及び上部レール47がそれぞれ敷設されている。そして、第5カバー体25がその下端の複数の車輪27及び上端の複数のスライダ36によって下部レール37及び上部レール47に支持されて、第4カバー体24の前壁部26の左端から出没可能になっている。よって、第5カバー体25はベッド11から浮き上がった状態で第4カバー体24に支持される。
【0015】
図7(a)及び同図(b)に示すように、第1カバー体21の左端縁及び第2~第4カバー体22~24の左右両端縁には折り曲げ部51が形成されている。そして、作業者が第4カバー体24を左右方向にスライドさせることにより、折り曲げ部51の係合によって第2,第3カバー体22,23が折り曲げ部51の当接を介して左右方向に移動されて、カバー15全体が伸縮される。第5カバー体25は第4カバー体24に対して単独で出し入れされる。ただし、第2~第4カバー体22~24と同様に端部に折り曲げ部51を形成して、その第2~第4カバー体22~24とともにテレスコピックを構成するようにしてもよい。
【0016】
図6に示すように、前記下部レール32~34及び上部レール42~44は、それらの案内面の右端側が前方に突出するように前後方向に対して、つまりテーブル12の移動方向である左右方向線Lに対して角度θだけ傾斜されている。前記下部レール32~34及び上部レール42~44は、その延長方向における前記加工部10側の部分が他の部分より後方に位置する。従って、第2~第4カバー体22~24の移動方向は、平面視において前記テーブル12の往復動方向に対して傾斜して、左方ほど加工部10側に後退する方向に開閉移動される。下部レール32~34及び上部レール42~44の傾斜角度θ、すなわち第2~第4カバー体22~24の移動方向の前記傾斜角度θは、1~5度の範囲内が好ましく、例えば2度である。下部レール32~34及び上部レール42~44は案内手段を構成している。
【0017】
次に、以上のように構成された工作機械の作用を説明する。
ワークWの加工においては、テーブル12が左右に往復動される。従って、テーブル12の上面に設置されたワークWの上面に対して加工部10において工具を用いて所要の加工を施すことができる。
【0018】
この加工に際して、カバー15が伸長状態に配置された状態において、テーブル12の移動領域の前面及び上面と加工部10の前面とが覆われる。カバー15の第2~第4カバー体22~24は、開閉移動方向が加工部10側である左方ほど後方に位置するように傾斜する下部レール32~34及び上部レール42~44に支持されている。また、第5カバー体25が第4カバー体24の内側面から左方へ引き出される。このため、ベッド11において、加工部10と対向する作業者の位置であって、第4カバー体24及び第5カバー体25の下側部分を案内するとともに、下部レール34の位置、言い換えれば下部レール34を支持するベッド11の前側部分111の前方へ向かうせり出しが抑制される。
【0019】
作業者によって加工部10において段取り替えなどの作業が行われる場合は、第5カバー体25や第4カバー体24、あるいは第3カバー体23や第2カバー体22が右方に移動されて加工部10の前方及び上方が開放される。この場合、前記のように、第2~第4カバー体22~24が左方ほど後退傾斜する下部レール32~34及び上部レール42~44に支持されている。
【0020】
従って、本実施形態においては、以下の効果がある。
(1)図8(a)に示すように、作業者の位置である第4カバー体24及び第5カバー体25を支持する下部レール34は、加工部10側の位置が加工部10に近接している。従って、加工部10におけるベッド11の前側部分111の前方へのせり出しが抑制される。このため、作業者が加工部10に位置するテーブル12の上面位置などでワークWの段取り替えなどの作業をする場合に、作業位置に近づくことができる。よって、作業者が前かがみになったり、無理に手を伸ばしたりすることが不要になって、無理な姿勢を強いられることを回避できる。従って、工作機械の取り扱い作業の負担を少なくしてその作業を円滑に行うことができる。これに対し、図8(b)に示す本実施形態と同様な構成の従来例の工作機械においては、第4カバー体24及び第5カバー体25は、加工部10から前方に離れているため、レールも前方へ設ける必要があって、ベッドの前側部分が前方へせり出して、作業負担が大きい。
【0021】
(2)特許文献1のような工作機械とは異なり、カバー15はベッド11の上面位置を移動するものであるため、カバー15が作業者の下肢やつま先と干渉することはない。従って、前記と同様に作業者が前かがみになったり、無理に手を伸ばしたりすることが不要になって、無理な姿勢を強いられることを回避できる。
【0022】
(3)実施形態とは異なり、第4カバー体24の前後方向の寸法を小さくすれば、第4カバー体24の前壁部分を加工部10に近づけることができる。しかしながら、このように第4カバー体24の前後方向の寸法を小さくすれば、テレスコピック構成においては、第1カバー体21側のカバー体ほど前後方向の寸法が小さくなる。その結果、カバー15内の空間が右方へいくほど狭くなる。従って、テーブル12を小さくする必要が生じて、要求する大きさのワークWの加工に支障をきたすおそれがある。本実施形態においては、このようなおそれはなく、カバー15内に十分な広さの空間を確保できて、大きなテーブル12を搭載できる。
【0023】
(変更例)
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、以下のような態様で具体化することもできる。そして、実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0024】
・カバー15として、テレスコピック状ではない構成,例えば、前記実施形態と同様に傾斜したレール上に開閉移動可能に支持された全体がひとつのカバー体からなる構成とすること。このように構成しても、作業者が加工部10に近づくことができる。
【0025】
・テーブル12が移動しない構成、あるいはテーブル12を有しない構成の工作機械において本発明を具体化すること。
・下部レール32~34及び上部レール42~44の少なくとも一方を溝状に構成すること。このようにすれば、レールの内底面が案内面になる。
【0026】
・カバー15はテーブル12の移動領域の全体の上方を開放する構成とすること。
・テレスコピック状の第1~第4カバー体21~24の数を、2または3や、5以上に変更すること。
【0027】
・前記実施形態においては、第2~第4カバー体22~24が第1カバー体21の外周側にテレスコピック状に被せられるように構成した。これに対し、第1カバー体21の内周側に第2~第4カバー体22~24がテレスコピック状に入り込むように構成すること。この構成においては、第4カバー体24の前後寸法が小さくなって、その前壁部分が他のカバー体21~23よりも加工部10側に近づく。つまり、第4カバー体24を支持する下部レールが加工部10の近くに配置され、ベッド11の前側部分111の前方へのせり出しを抑制できる。従って、カバー15の開閉方向をテーブル12の移動方向に対して傾斜させなくても、作業者が加工部10に近づくことができる。
【0028】
図8(b)に2点鎖線で示すように、加工部10の前方であって、加工部10と対応するとともに、下部レールが存在しない位置において、ベッド11の前面に凹部112を形成すること。このように構成すれば、凹部112が設けられていない構成と比較して、作業者が加工部10に近づくことができて、作業負担を軽減できる。
【0029】
(他の技術的思想)
前記実施形態から把握される技術的思想は以下の通りである。
(A)前記案内レールは、その頂面または底面の案内面が平面視においてテーブルの移動方向に対して傾斜する請求項2に記載の工作機械。
【0030】
(B)前記案内面の傾斜角度は、1~5度の範囲内である前記技術的思想(A)項に記載の工作機械。
【符号の説明】
【0031】
10…加工部
11…ベッド
12…テーブル
15…カバー
21…第1カバー体
22…第2カバー体
23…第3カバー体
24…第4カバー体
25…第5カバー体
32…下部レール
33…下部レール
34…下部レール
42…上部レール
43…上部レール
44…上部レール
112…凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8