(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042815
(43)【公開日】2022-03-15
(54)【発明の名称】冷却水系制御方法および冷却水系制御装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/00 20060101AFI20220308BHJP
C02F 5/00 20060101ALI20220308BHJP
C02F 1/50 20060101ALI20220308BHJP
C02F 5/10 20060101ALI20220308BHJP
C02F 5/14 20060101ALI20220308BHJP
F28F 19/00 20060101ALI20220308BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20220308BHJP
F28G 9/00 20060101ALI20220308BHJP
F28G 13/00 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
C02F1/00 K
C02F5/00 610G
C02F1/50 510C
C02F1/50 520K
C02F1/50 550L
C02F1/50 550C
C02F1/00 S
C02F5/10 610
C02F5/10 610A
C02F5/10 620A
C02F5/10 620E
C02F5/14
C02F1/50 531J
C02F1/50 531L
C02F1/50 531P
C02F1/50 532E
C02F1/50 532H
C02F1/50 532J
F28F19/00 501A
F25B1/00 399Y
F28G9/00 L
F28G13/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020148423
(22)【出願日】2020-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田熊 康秀
(72)【発明者】
【氏名】矢野 大作
(72)【発明者】
【氏名】川上 雅之
(72)【発明者】
【氏名】村田 浩陸
(57)【要約】
【課題】冷却塔と冷凍機を備える冷却水系において、循環冷却水への薬剤の注入量を制御するとともに、循環冷却水への補給水の供給を制御することができる冷却水系制御方法および冷却水系制御装置を提供する。
【解決手段】循環冷却水を用いて熱交換を行う冷却塔10と、循環冷却水と冷媒との熱交換を行うための凝縮器24を備える冷凍機12と、を備える冷却水系1を制御する冷却水系制御方法であって、凝縮器24における冷媒の出口温度と循環冷却水の出口温度とから[冷媒の出口温度-循環冷却水の出口温度]として算出したLTD値に基づいて、循環冷却水への薬剤の注入量を制御するとともに、循環冷却水の電気伝導率に基づいて冷却塔における補給水の供給および循環冷却水の排出を制御する、冷却水系制御方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環冷却水を用いて熱交換を行う冷却塔と、前記循環冷却水と冷媒との熱交換を行うための前記循環冷却水用の入口および出口と前記冷媒用の入口および出口とを有する凝縮器を備える冷凍機と、を備える冷却水系を制御する冷却水系制御方法であって、
前記凝縮器における前記冷媒の出口温度と前記循環冷却水の出口温度とから[冷媒の出口温度-循環冷却水の出口温度]として算出したLTD値に基づいて、前記循環冷却水への薬剤の注入量を制御するとともに、前記循環冷却水の電気伝導率に基づいて前記冷却塔における補給水の供給および前記循環冷却水の排出を制御することを特徴とする冷却水系制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の冷却水系制御方法であって、
前記冷却塔における前記循環冷却水の排出の際には、前記循環冷却水への薬剤の注入量を減少または薬剤の注入を停止することを特徴とする冷却水系制御方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の冷却水系制御方法であって、
前記循環冷却水への薬剤の注入量の制御は、予め決定しておいた、LTD値に対する前記薬剤の注入量の関係に基づいて行うことを特徴とする冷却水系制御方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の冷却水系制御方法であって、
前記循環冷却水への薬剤の注入量の制御は、前記LTD値の増減に対して比例的に前記薬剤の注入量を増減する、前記LTD値の増減に対して段階的に前記薬剤の注入量を増減する、および、前記LTD値の増減の傾きに対して段階的に前記薬剤の注入量を増減する、のうちの少なくとも1つにより行うことを特徴とする冷却水系制御方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の冷却水系制御方法であって、
前記循環冷却水への薬剤の注入量の制御は、所定量を所定の時間注入する、および、注入量を変化させる、のうちの少なくとも1つにより行うことを特徴とする冷却水系制御方法。
【請求項6】
循環冷却水を用いて熱交換を行う冷却塔と、前記循環冷却水と冷媒との熱交換を行うための前記循環冷却水用の入口および出口と前記冷媒用の入口および出口とを有する凝縮器を備える冷凍機と、を備える冷却水系を制御する冷却水系制御装置であって、
前記凝縮器における前記冷媒の出口温度と前記循環冷却水の出口温度とから[冷媒の出口温度-循環冷却水の出口温度]として算出したLTD値に基づいて、前記循環冷却水への薬剤の注入量を制御するとともに、前記循環冷却水の電気伝導率に基づいて前記冷却塔における補給水の供給および前記循環冷却水の排出を制御する制御手段を備えることを特徴とする冷却水系制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の冷却水系制御装置であって、
前記制御手段は、前記冷却塔における前記循環冷却水の排出の際には、前記循環冷却水への薬剤の注入量を減少または薬剤の注入を停止することを特徴とする冷却水系制御装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載の冷却水系制御装置であって、
前記制御手段は、前記循環冷却水への薬剤の注入量の制御を、予め決定しておいた、LTD値に対する前記薬剤の注入量の関係に基づいて行うことを特徴とする冷却水系制御装置。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか1項に記載の冷却水系制御装置であって、
前記制御手段は、前記循環冷却水への薬剤の注入量の制御を、前記LTD値の増減に対して比例的に前記薬剤の注入量を増減する、前記LTD値の増減に対して段階的に前記薬剤の注入量を増減する、および、前記LTD値の増減の傾きに対して段階的に前記薬剤の注入量を増減する、のうちの少なくとも1つにより行うことを特徴とする冷却水系制御装置。
【請求項10】
請求項6~9のいずれか1項に記載の冷却水系制御装置であって、
前記制御手段は、前記循環冷却水への薬剤の注入量の制御を、所定量を所定の時間注入する、および、注入量を変化させる、のうちの少なくとも1つにより行うことを特徴とする冷却水系制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却塔と冷凍機を備える冷却水系を制御する冷却水系制御方法および冷却水系制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の冷却塔と冷凍機を備える冷却水系では、冷却水の電気伝導率を監視することによる冷却水の濃縮に対する自動ブロー制御や、スライム抑制およびスケール抑制のために所定の濃度設定による冷却水への薬剤注入等が行われている。
【0003】
また、冷凍機の凝縮器の汚れの状態を推定するために、凝縮器における冷却水の出口温度と冷媒の凝縮後の温度とを測定し、[冷媒の凝縮後の温度-冷却水の出口温度]として求められるLTD(Leaving Temperature Difference)値が大きくなったら熱交換器に汚れが発生したと推定し、スライム抑制剤やスケール抑制剤等を含む薬剤を冷却水に注入することが行われている(例えば、特許文献1~3参照)。
【0004】
しかし、従来の冷却塔と冷凍機を備える冷却水系の制御では、循環冷却水への薬剤の注入量を制御するとともに、循環冷却水への補給水の供給を制御することができていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2677187号公報
【特許文献2】特許第5857430号公報
【特許文献3】特許第5962134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、冷却塔と冷凍機を備える冷却水系において、循環冷却水への薬剤の注入量を制御するとともに、循環冷却水への補給水の供給を制御することができる冷却水系制御方法および冷却水系制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、循環冷却水を用いて熱交換を行う冷却塔と、前記循環冷却水と冷媒との熱交換を行うための前記循環冷却水用の入口および出口と前記冷媒用の入口および出口とを有する凝縮器を備える冷凍機と、を備える冷却水系を制御する冷却水系制御方法であって、前記凝縮器における前記冷媒の出口温度と前記循環冷却水の出口温度とから[冷媒の出口温度-循環冷却水の出口温度]として算出したLTD値に基づいて、前記循環冷却水への薬剤の注入量を制御するとともに、前記循環冷却水の電気伝導率に基づいて前記冷却塔における補給水の供給および前記循環冷却水の排出を制御する、冷却水系制御方法である。
【0008】
前記冷却水系制御方法において、前記冷却塔における前記循環冷却水の排出の際には、前記循環冷却水への薬剤の注入量を減少または薬剤の注入を停止することが好ましい。
【0009】
前記冷却水系制御方法において、前記循環冷却水への薬剤の注入量の制御は、予め決定しておいた、LTD値に対する前記薬剤の注入量の関係に基づいて行うことが好ましい。
【0010】
前記冷却水系制御方法において、前記循環冷却水への薬剤の注入量の制御は、前記LTD値の増減に対して比例的に前記薬剤の注入量を増減する、前記LTD値の増減に対して段階的に前記薬剤の注入量を増減する、および、前記LTD値の増減の傾きに対して段階的に前記薬剤の注入量を増減する、のうちの少なくとも1つにより行うことが好ましい。
【0011】
前記冷却水系制御方法において、前記循環冷却水への薬剤の注入量の制御は、所定量を所定の時間注入する、および、注入量を変化させる、のうちの少なくとも1つにより行うことが好ましい。
【0012】
前記冷却水系制御方法において、前記算出したLTD値が所定時間、上限値を超えた場合、前記循環冷却水への薬剤の注入量を所定時間高くする薬剤強制注入を行うことが好ましい。
【0013】
本発明は、循環冷却水を用いて熱交換を行う冷却塔と、前記循環冷却水と冷媒との熱交換を行うための前記循環冷却水用の入口および出口と前記冷媒用の入口および出口とを有する凝縮器を備える冷凍機と、を備える冷却水系を制御する冷却水系制御装置であって、前記凝縮器における前記冷媒の出口温度と前記循環冷却水の出口温度とから[冷媒の出口温度-循環冷却水の出口温度]として算出したLTD値に基づいて、前記循環冷却水への薬剤の注入量を制御するとともに、前記循環冷却水の電気伝導率に基づいて前記冷却塔における補給水の供給および前記循環冷却水の排出を制御する制御手段を備える、冷却水系制御装置である。
【0014】
前記冷却水系制御装置において、前記制御手段は、前記冷却塔における前記循環冷却水の排出の際には、前記循環冷却水への薬剤の注入量を減少または薬剤の注入を停止することが好ましい。
【0015】
前記冷却水系制御装置において、前記制御手段は、前記循環冷却水への薬剤の注入量の制御を、予め決定しておいた、LTD値に対する前記薬剤の注入量の関係に基づいて行うことが好ましい。
【0016】
前記冷却水系制御装置において、前記制御手段は、前記循環冷却水への薬剤の注入量の制御を、前記LTD値の増減に対して比例的に前記薬剤の注入量を増減する、前記LTD値の増減に対して段階的に前記薬剤の注入量を増減する、および、前記LTD値の増減の傾きに対して段階的に前記薬剤の注入量を増減する、のうちの少なくとも1つにより行うことが好ましい。
【0017】
前記冷却水系制御装置において、前記制御手段は、前記循環冷却水への薬剤の注入量の制御を、所定量を所定の時間注入する、および、注入量を変化させる、のうちの少なくとも1つにより行うことが好ましい。
【0018】
前記冷却水系制御装置において、前記制御手段は、前記算出したLTD値が所定時間、上限値を超えた場合、前記循環冷却水への薬剤の注入量を所定時間高くする薬剤強制注入を行うことが好ましい。
【0019】
本発明は、循環冷却水を用いて熱交換を行う冷却塔と、前記循環冷却水と冷媒との熱交換を行うための前記循環冷却水用の入口および出口と前記冷媒用の入口および出口とを有する凝縮器を備える冷凍機と、前記凝縮器における前記冷媒の出口温度と前記循環冷却水の出口温度とから[冷媒の出口温度-循環冷却水の出口温度]として算出したLTD値に基づいて、前記循環冷却水への薬剤の注入量を制御するとともに、前記循環冷却水の電気伝導率に基づいて前記冷却塔における補給水の供給および前記循環冷却水の排出を制御する制御手段と、を備える、冷却水系である。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、冷却塔と冷凍機を備える冷却水系において、循環冷却水への薬剤の注入量を制御するとともに、循環冷却水への補給水の供給を制御することができる冷却水系制御方法および冷却水系制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る冷却水系の一例を示す概略構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る冷却水系制御方法および冷却水系制御装置で用いる補正表の一例を示すグラフである。
【
図3】本発明の実施形態に係る冷却水系制御方法および冷却水系制御装置で用いる補正表の他の例を示すグラフである。
【
図4】本発明の実施形態に係る冷却水系制御方法のタイミングチャートの一例を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る冷却水系制御方法のタイミングチャートの他の例を示す図である。
【
図6】比較例1および実施例1における運転日数(日)と冷凍機のLTD(℃)とを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0023】
本発明の実施形態に係る冷却水系の一例の概略を
図1に示し、その構成について説明する。冷却水系1は、循環冷却水を用いて熱交換を行う冷却塔10と、循環冷却水と冷媒との熱交換を行うための循環冷却水用の入口および出口と冷媒用の入口および出口とを有する凝縮器24を備える冷凍機12と、を備える。冷却水系1は、循環冷却水に薬剤を注入する薬剤注入手段として、薬剤貯槽14を備える。冷却水系1は、凝縮器24における冷媒の出口温度と循環冷却水の出口温度とから[冷媒の出口温度-循環冷却水の出口温度]として算出したLTD値に基づいて、循環冷却水への薬剤の注入量を制御するとともに、循環冷却水の電気伝導率に基づいて冷却塔10における補給水の供給および循環冷却水の排出を制御する制御手段として、制御装置20を備える。
【0024】
冷却塔10には、循環冷却水の電気伝導率を測定する電気伝導率測定手段として、電気伝導率測定電極38を有する電気伝導率測定装置16と、循環冷却水の薬剤濃度を測定する薬剤濃度測定手段として、薬剤濃度測定電極40を有する薬剤濃度測定装置18と、が設置されている。
【0025】
冷凍機12は、循環冷却水と冷媒との熱交換を行うための循環冷却水用の入口および出口と冷媒用の入口および出口とを有する凝縮器24と、冷水と冷媒との熱交換を行うための冷水用の入口および出口と冷媒用の入口および出口とを有する蒸発器22と、冷媒を圧縮する圧縮機26と、冷媒を減圧、膨張する膨張弁28と、を備える。凝縮器24の循環冷却水用の入口には、循環冷却水用の入口における循環冷却水の温度を測定する循環冷却水入口温度測定手段として、循環冷却水入口温度測定装置30と、循環冷却水用の出口には、循環冷却水用の出口における循環冷却水の温度を測定する循環冷却水出口温度測定手段として、循環冷却水出口温度測定装置32と、冷媒用の出口には、冷媒用の出口における冷媒の温度を測定する冷媒出口温度測定手段として、冷媒出口温度測定装置34と、が設置されている。
【0026】
薬剤貯槽14には、薬剤貯槽14における薬剤量を測定する薬剤量測定手段として、薬剤量測定装置50が設置されている。
【0027】
図1の冷却水系1において、冷却塔10の循環冷却水出口と冷凍機12の凝縮器24の循環冷却水用の入口とは、循環ポンプ36を介して配管53により接続されている。冷凍機12の凝縮器24の循環冷却水用の出口と冷却塔10の循環冷却水入口とは、配管54により接続されている。蒸発器22の冷水用の入口には、配管56が接続され、冷水用の出口には、配管58が接続されている。凝縮器24の冷媒用の出口と蒸発器22の冷媒用の入口とは、膨張弁28を介して配管60により接続され、蒸発器22の冷媒用の出口と凝縮器24の冷媒用の入口とは、圧縮機26を介して配管62により接続されている。
【0028】
薬剤貯槽14の薬剤出口と冷却塔10の薬剤入口とは、薬注ポンプ52を介して配管64により接続されている。冷却塔10の冷却水排出口には、バルブ42、流量計44を介して配管66が接続され、また、冷却塔10内の循環冷却水をオーバーフローための配管69が配管66におけるバルブ42と流量計44との間に接続されている。冷却塔10の補給水入口には、バルブ46、流量計48を介して配管68が接続されている。
【0029】
制御装置20と、循環冷却水入口温度測定装置30、循環冷却水出口温度測定装置32、冷媒出口温度測定装置34、電気伝導率測定装置16、薬剤濃度測定装置18、流量計48、流量計44、バルブ42、バルブ46、薬剤量測定装置50、薬注ポンプ52のそれぞれとは、有線または無線の電気的接続等により通信可能に接続されている。
【0030】
本実施形態に係る冷却水系制御装置は、制御装置20と、循環冷却水出口温度測定装置32と、冷媒出口温度測定装置34と、電気伝導率測定装置16と、を備える。冷却水系制御装置は、薬剤濃度測定装置18を備えてもよい。
【0031】
本実施形態に係る冷却水系制御方法、冷却水系制御装置、冷却水系1の動作について説明する。
【0032】
冷却塔10は、例えば、循環冷却水と外気とを接触させて循環冷却水を冷却する開放循環式冷却水系の冷却塔である。冷却塔10において、冷却塔10内に貯留された循環冷却水は、循環冷却水出口から循環ポンプ36によって配管53を通して冷凍機12の凝縮器24に循環冷却水用の入口から送液され、凝縮器24において圧縮機26から送液されてきた高温、高圧の冷媒と熱交換され、水温が上昇した冷却水となり、循環冷却水用の出口から配管54を通して冷却塔10の上部から散水される。散水された循環冷却水は、ファン70により外部から取り込まれた空気と接触し、一部が蒸発し、蒸発潜熱を放出することによって水温が低下した冷却水となって、冷却塔10の下部に落下し、貯留された後、循環冷却水出口から循環ポンプ36によって配管53を通して冷凍機12の凝縮器24に送液され、循環冷却水が循環される。
【0033】
一方、冷凍機12において、循環冷却水と熱交換されて温度が低下した冷媒は、冷媒用の出口から配管60を通して膨張弁28に送液される。膨張弁28において、凝縮器24から送液されてきた高圧の冷媒が減圧されることによって、膨張して温度がさらに低下して低温、低圧の液体に変化する。膨張して温度がさらに低下した冷媒は、配管60を通して冷媒用の入口から蒸発器22に送液される。蒸発器22において、膨張弁28から送液されてきた冷媒は、空調機等から配管56を通して冷水用の入口から送液されてきた冷水と熱交換され、蒸発されて低温、低圧の気体に変化する。冷媒と熱交換されて温度が低下した冷水は、冷水用の出口から配管58を通して空調機等に送液される。冷水と熱交換された気体となった冷媒は、冷媒用の出口から配管62を通して圧縮機26に送液される。圧縮機26において、冷媒が圧縮されることによって、高温、高圧の気体に変化する。高温、高圧の冷媒は、配管62を通して冷媒用の入口から凝縮器24に送液され、凝縮→膨張→蒸発→圧縮の冷凍サイクルが繰り返される。
【0034】
このように循環冷却水が循環する間に水分が蒸発することによって、循環冷却水中のカルシウム塩やマグネシウム塩等の塩類やシリカ等のスケール成分が濃縮される。そして、これらの塩類等のスケール成分の濃度が高くなり、過飽和となり循環冷却水中で析出することによって、スケールが発生する場合がある。また、循環冷却水で増殖した微生物等によってスライムが発生する場合がある。そこで、水の濃縮やスライムの発生を抑制するために、冷却塔10において循環冷却水への補給水の供給および循環冷却水の排出を行い、新しい水と入れ替えて希釈する。また、スケールの発生やスライムの発生を抑制するために、スケール抑制剤およびスライム抑制剤のうちの少なくとも1つを含む薬剤が循環冷却水に注入される。また、上記の通り、冷却塔10内の循環冷却水の希釈が行われると、循環冷却水内の薬剤の量が減少するので、薬剤が循環冷却水に補給される。
【0035】
本実施形態では、循環冷却水の電気伝導率を測定して循環冷却水中の塩類等の濃度を検知して、測定した循環冷却水の電気伝導率に基づいて冷却塔10における補給水の供給および循環冷却水の排出を制御する。例えば、電気伝導率測定電極38を有する電気伝導率測定装置16によって冷却塔10内の循環冷却水の電気伝導率が測定される(電気伝導率測定工程)。制御装置20は、電気伝導率測定装置16によって測定された循環冷却水の電気伝導率が所定の上限値以上となった場合に、バルブ46を開状態とすることによって、配管68を通して補給水を冷却塔10内に供給する(補給水供給工程)。そして、冷却塔10内の循環冷却水の一部を、配管69および配管66を通して排出する(排出工程)。例えば、冷却塔10内の循環冷却水の電気伝導率が所定の上限値に達したらバルブ46を開状態にして冷却塔10内に補給水を供給するとともに、配管69および配管66を通じて循環冷却水をオーバーフロー排出し、所定の電気伝導率に達したらバルブ46を閉状態にする。または、バルブ42を開状態とすることによって、冷却塔10内の循環冷却水の一部を、配管66を通して排出する。バルブ42を開状態として循環冷却水の一部を排出するとともに、バルブ46を開状態とし、配管68を通して補給水を冷却塔10内に供給してもよい。すなわち、制御装置20による「補給水の供給および循環冷却水の排出の制御」には、バルブ46の開閉による冷却塔10内への補給水の供給の制御によって、オーバーフロー等によって必然的に循環冷却水の一部の排出が制御される場合と、バルブ46の開閉による冷却塔10内への補給水の供給の制御とともに、バルブ42の開閉による循環冷却水の一部の排出の制御が行われる場合とが含まれる。
【0036】
一方、スケール抑制剤およびスライム抑制剤のうちの少なくとも1つを含む薬剤は、薬剤貯槽14から薬注ポンプ52により配管64を通して循環冷却水に所定量が注入される(薬剤注入工程)。循環冷却水の薬剤濃度は、例えば、薬剤濃度測定電極40を有する薬剤濃度測定装置18により測定される。本実施形態では、冷凍機12の凝縮器24における冷媒の出口温度T1と循環冷却水の出口温度T2とから[冷媒の出口温度T1-循環冷却水の出口温度T2]として算出したLTD値に基づいて、循環冷却水への薬剤の注入量を制御する。このLTD値は、凝縮器24の汚れの状態の指標となる。
【0037】
例えば、冷媒出口温度測定装置34によって冷媒用の出口における冷媒の温度(冷媒の出口温度T1)が測定され(冷媒出口温度測定工程)、循環冷却水出口温度測定装置32によって循環冷却水用の出口における循環冷却水の温度(循環冷却水の出口温度T2)が測定される(循環冷却水出口温度測定工程)。制御装置20は、冷媒出口温度測定装置34によって測定された冷媒の出口温度T1と、循環冷却水出口温度測定装置32によって測定された循環冷却水の出口温度T2とから、LTD値[冷媒の出口温度T1-循環冷却水の出口温度T2]を算出する。この算出したLTD値に基づいて、循環冷却水への薬剤の注入量を制御する。
【0038】
循環冷却水への薬注ポンプ52による薬剤の注入量の制御は、予め決定しておいた、LTD値に対する薬剤の注入量の関係に基づいて行うことが好ましい。例えば、薬剤の注入量は、薬剤の目標濃度として、このLTD値に基づいて以下の通りに定める。例えば、予め初期のLTD値を得るため、冷凍機12の凝縮器24の化学洗浄または物理洗浄を行う。洗浄後の冷凍機12を稼働した際の凝縮器24の冷媒の出口温度T1
0、循環冷却水の出口T2
0を測定し、[T1
0-T2
0]から初期LTD値を求める。また、例えば、適用する冷却水系の過去の循環冷却水の運転状況等から、初期循環冷却水薬剤目標濃度C
0を決定する。この初期LTD値を基準として、目標薬剤濃度の補正表を作成する。例えば、
図2(a)に示すように、LTD値増減に対して目標薬剤濃度を比例的に設定してもよいし(比例的補正表)、
図2(b)に示すように、LTD値増減に対して目標薬剤濃度を段階的に設定してもよいし(段階的補正表)、
図2(c)に示すように、LTD値の上昇傾きに対して目標薬剤濃度を段階的に設定してもよい(上昇傾向段階的補正表)。補正表は、冷却水系毎の特性等を考慮し、比例的(LTD値増減に対して比例設定)、段階的(LTD値増減に対して段階設定)、上昇傾向段階的(LTD値上昇傾きに対して段階設定)を選択すればよい。
【0039】
例えば、冷凍機12を連続稼働した際の冷媒の出口温度T1、循環冷却水の出口温度T2が測定され、制御装置20は、T1、T2の所定時間の移動平均値でLTD値[冷媒の出口温度T1-循環冷却水の出口温度T2]を算出する。一方、薬剤濃度測定装置18によって稼働中の循環冷却水中の薬剤濃度Cが測定される(薬剤濃度測定工程)。制御装置20は、算出したLTD値から「目標薬剤濃度補正表」に従い、目標薬剤濃度Crを決定し、目標薬剤濃度Crと循環冷却水の薬剤濃度Cとの差ΔC=Cr-Cを1分間隔で計算する。ΔCが0以下(すなわち、C≧Cr)の場合は、当該1分間は薬注ポンプ52を稼働させず、循環冷却水への薬剤の注入を行わない。ΔCが0を超える(すなわち、C<Cr)の場合は、当該1分間内の所定の期間tの間、薬注ポンプ52を稼働させ、薬剤濃度測定装置18により測定される薬剤濃度が目標薬剤濃度Crになるまで循環冷却水への薬剤の注入を行う。
【0040】
薬注ポンプ52を稼働させる所定時間tは、次のように決定する。例えば、冷却塔10内の保有水量V、薬剤の注入速度Fから必要な薬注ポンプ52の稼働時間T=V×ΔC/Fを算出し、その稼働時間Tにハンチング抑制のために設定する比例係数Pを乗じた時間t(=比例係数P×T)だけ、当該1分間内で薬注ポンプ52を稼働させる。P×Tが1分以上であれば、当該1分間は薬注ポンプ52を常時稼働させればよい。例えば、冷却塔10内の保有水量V=10m3、目標薬剤濃度Cr=200mg/L、現在の循環冷却水薬剤濃度C=180mg/L、薬剤の注入速度F=100mL/min、比例係数P=10%である場合、測定時間間隔1分の間に薬注ポンプ52を12秒間稼働させればよい。
T=10m3×(200-180mg/L)/100mL/min=2min
t=10%×2min=12sec
【0041】
薬剤濃度測定装置18を用いない場合は、薬剤の注入量を薬注ポンプ52の稼働時間によって制御してもよい。薬剤の注入量は、薬注ポンプ52の稼働時間として、このLTD値に基づいて以下の通りに定める。上記と同様にして、初期LTD値を基準として、ポンプ稼働時間の補正表を作成する。例えば、適用する冷却水系の過去の循環冷却水の運転状況等から、初期稼働時間T
0を決定する。例えば、
図3(a)に示すように、LTD値増減に対して稼働時間を比例的に設定してもよいし(比例的補正表)、
図3(b)に示すように、LTD値増減に対して稼働時間を段階的に設定してもよいし(段階的補正表)、
図3(c)に示すように、LTD値の上昇傾きに対して稼働時間を段階的に設定してもよい(上昇傾向段階的補正表)。補正表は、冷却水系毎の特性等を考慮し、比例的(LTD値増減に対して比例設定)、段階的(LTD値増減に対して段階設定)、上昇傾向段階的(LTD値上昇傾きに対して段階設定)を選択すればよい。
【0042】
例えば、冷凍機12を連続稼働した際の冷媒の出口温度T1、循環冷却水の出口温度T2が測定され、制御装置20は、LTD値[冷媒の出口温度T1-循環冷却水の出口温度T2]を算出する。制御装置20は、算出したLTD値から「稼働時間補正表」に従い、薬注ポンプ52の稼働時間Tを決定する。
【0043】
冷却塔10において配管66を通して循環冷却水が排出される際には、薬剤貯槽14からの薬注ポンプ52による循環冷却水への薬剤の注入量が減少または薬剤の注入が停止されることが好ましく、停止されることがより好ましい。また、冷却塔10の運転が停止される際には、薬剤貯槽14からの薬注ポンプ52による循環冷却水への薬剤の注入が停止されることが好ましい。これによって、薬剤の使用量を低減することができる。
【0044】
冷却塔10の運転停止中は、補給水の供給および循環冷却水の排出が停止されることが好ましい。
【0045】
制御装置20は、電気伝導率測定装置16によって測定された循環冷却水の電気伝導率が所定の上限値以上となった場合に、警報を発してもよい。制御装置20は、薬剤濃度測定装置18により測定された循環冷却水の薬剤濃度が所定の上限値以上となった場合や所定の下限値以下となった場合に、警報を発してもよい。制御装置20は、冷媒出口温度測定装置34によって測定された冷媒の出口温度T1と循環冷却水出口温度測定装置32によって測定された循環冷却水の出口温度T2とから算出されたLTD値が所定の上限値以上となった場合に、警報を発してもよい。警報の方法としては、例えば、制御盤のタッチパネル上に表示する、インターネット通信を介して運転員に通知する、監視室等に通知する等が挙げられる。
【0046】
このように、本実施形態に係る冷却水系制御方法および冷却水系制御装置では、凝縮器24のLTD値を監視し、LTD値によって目標薬剤濃度を変更し、設定した目標薬剤濃度になるように薬注ポンプによる薬剤注入時間等を制御する。また、薬剤注入の制御とともに電気伝導率監視による自動ブロー制御の濃縮管理も行う。これによって、気温上昇等で繁殖するスライムの付着によるLTD上昇を抑制し、冷凍機効率を最適に保つことができる。
【0047】
本実施形態に係る冷却水系制御方法および冷却水系制御装置では、循環冷却水への薬剤の注入量の制御は、算出したLTD値が所定時間、上限値を超えた場合には、循環冷却水への薬剤の注入量を所定時間高くする薬剤強制注入モードにより行ってもよい。薬剤強制注入を行った場合、所定の時間、再度の薬剤強制注入の実行を禁止することが好ましい。算出したLTD値が所定時間、上限値を超えた場合、薬剤注入量を高濃度状態としてスライム洗浄を行う。これにより、効率的な薬剤注入を行うことができる。
【0048】
循環冷却水への薬剤の注入量を所定時間高くする薬剤強制注入を行い、LTD値が上限値未満に低下した場合は、通常の運転モードに戻ればよい。循環冷却水への薬剤の注入量を所定時間高くする薬剤強制注入を行い、LTD値が低下しない場合は、例えば、薬剤の添加を停止し、警報を出してもよい。薬剤がスライム抑制剤を含む薬剤、またはスケール抑制剤とスライム抑制剤とを含む薬剤であり、循環冷却水への薬剤の注入量を所定時間高くする薬剤強制注入を行ってもLTD値が低下しない場合は、LTD値の上昇がスケールの付着によるものと推定され、薬剤強制注入を停止し、別途、循環冷却水へスケール洗浄剤等を注入してもよい。薬剤強制注入を行う際には、冷却塔10における補給水の供給および循環冷却水の排出を停止することが好ましい。
【0049】
生成するスケールやスライムによって算出したLTD値の上昇の傾きが異なる場合がある。この場合、算出したLTD値の上昇の傾きによって、使用する薬剤の成分を変更してもよい。
【0050】
冷却塔10としては、循環冷却水の一部を蒸発させ、その蒸発潜熱により循環冷却水を冷却する開放循環式(直接冷却)や、循環水を銅管コイル等の中を通し、散布水により冷却する密閉循環式(間接冷却)等が挙げられる。
【0051】
冷凍機12としては、蒸発器22、凝縮器24、圧縮機26、膨張弁28を有するものであればよく、特に制限はない。
【0052】
蒸発器22、凝縮器24としては、循環冷却水と冷媒との間の熱交換、冷水と冷媒との間の熱交換を行うことができる熱交換器であればよく、特に制限はない。
【0053】
圧縮機26としては、冷媒を圧縮することができるものであればよく、特に制限はない。圧縮機26としては、例えば、容積式圧縮機、遠心式圧縮機等が挙げられる。
【0054】
膨張弁28としては、冷媒を減圧することができるものであればよく、特に制限はない。
【0055】
循環冷却水入口温度測定装置30、循環冷却水出口温度測定装置32、冷媒出口温度測定装置34としては、循環冷却水や冷媒の温度を測定することができるものであればよく、特に制限はない。循環冷却水入口温度測定装置30、循環冷却水出口温度測定装置32、冷媒出口温度測定装置34としては、例えば、温度計や、熱電対、サーミスタ、測温抵抗体等の温度センサ等が挙げられる。
【0056】
電気伝導率測定装置16としては、循環冷却水の電気伝導率を測定することができるものであればよく、特に制限はない。電気伝導率測定装置16としては、例えば、電気伝導率測定電極38を備える装置、2極式/4極式電気伝導率計付帯装置、誘電式電気伝導率計付帯装置等が挙げられる。
【0057】
薬剤濃度測定装置18としては、冷却塔10の循環冷却水中の薬剤の濃度を測定することができるものであればよく、特に制限はない。薬剤濃度測定装置18としては、例えば、薬剤とともにトレーサー物質としてのリチウム塩を循環冷却水中に添加し、リチウムイオン濃度をリチウムイオン感応物質を含む感応膜を組み込んだリチウムイオン電極である薬剤濃度測定電極40を用いて電気化学的に測定する装置が挙げられる。また別の例としては、例えば、薬剤とともにトレーサー物質としての色素または蛍光物質を循環冷却水中に添加し、色素または蛍光物質の濃度を特定の波長により光学的に測定する装置が挙げられる。色素としては、例えば、Kayacyl Blue HRL(C.I.Acid Blue 182)等が、蛍光物質しては、例えば、PTSA(1,3,6,8-pyrene tetra sulfonic acid tetra sodium salt)等が好適に用いられる。
【0058】
薬剤量測定装置50としては、薬剤貯槽14における薬剤量を測定することができるものであればよく、特に制限はないが、例えば、フロート式レベルスイッチ、電極式レベルスイッチ等が挙げられる。
【0059】
制御装置20は、例えば、プログラムを演算するCPU等の演算手段、プログラムや演算結果を記憶するROMおよびRAM等の記憶手段等を含んで構成されるマイクロコンピュータと電子回路等で構成され、循環冷却水出口温度測定装置32、冷媒出口温度測定装置34により測定された循環冷却水出口温度および冷媒出口温度に基づきLTD値を算出し、算出したLTD値に基づいて薬注ポンプ52の流量等を調整して循環冷却水への薬剤の注入量を制御するとともに、電気伝導率測定装置16により測定された循環冷却水の電気伝導率に基づいてバルブ46の開閉度等を調整して循環冷却水への補給水の供給を制御する機能を有するものである。
【0060】
バルブ42,46は、例えば、手動または自動で開閉度を調節可能なバルブである。
【0061】
流量計44,48としては、排出する循環冷却水または供給する補給水の流量を測定することができるものであればよく、特に制限はない。
【0062】
循環ポンプ36、薬注ポンプ52は、例えば、入力された駆動周波数に応じた回転速度で駆動され、液体を吸入して吐出するポンプである。循環ポンプ36、薬注ポンプ52には、例えば、入力された指令信号に対応する駆動周波数をポンプに出力するインバーターが設置されてもよい。薬注ポンプ52による循環冷却水への薬剤の注入量の制御は、所定量を所定の時間注入するタイマー注入(分/時間)、および、ポンプのストロークにより注入量を変化させる連続注入(mg/L)、のうちの少なくとも1つにより行うことが好ましい。
【0063】
薬剤は、スケール抑制剤、スライム抑制剤等を含む。薬剤によりスケールを除去できない場合には、別途スケール洗浄剤を用いてもよい。
【0064】
スケール抑制剤としては、アクリル酸系重合体、マレイン酸系重合体、メタクリル酸系重合体、スルホン酸系重合体、リン酸系重合体、イタコン酸系重合体、イソブチレン系重合体、またはそれらの水溶性塩等が挙げられる。
【0065】
スライム抑制剤としては、アンモニウム系化合物、アミン系化合物、窒素硫黄系化合物、有機金属系化合物、次亜塩素酸等の塩素系酸化剤、次亜臭素酸等の臭素系酸化剤、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物、塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜塩素酸組成物等が挙げられる。
【0066】
スケール洗浄剤としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等のアミン系重合体、または、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸塩、ジエチレントリアミン五酸等のアミノカルボン酸系重合体、または、グルコン酸、クエン酸、しゅう酸、ギ酸、酒石酸、フィチン酸、コハク酸、乳酸等の有機カルボン酸系等が挙げられる。
【0067】
図1に示す冷却水系1を用いて、循環冷却水への薬剤の注入量の制御および電気伝導率監視によるブロー制御を行う場合のタイミングチャートの一例を
図4に示し、以下で説明する。
【0068】
1.薬剤濃度測定装置18で測定された薬剤濃度<目標薬剤濃度であるため、薬注ポンプ52をON
3.冷却塔10の運転信号がOFFとなったため、薬注ポンプ52をOFF(冷却塔10の運転停止中は、薬剤注入を停止)
4.冷却塔10の運転信号がONとなったため、薬注ポンプ52をON
6.電気伝導率測定装置16で測定された電気伝導率が所定値以上となったため、バルブ46を開状態として、補給水の供給および循環冷却水の一部の排出を開始するとともに、薬注ポンプ52をOFF(循環冷却水が排出される際には、薬剤注入を停止)
8.電気伝導率が上限以上となったため、警報ON
10.電気伝導率が上限未満となったため、警報OFF
11.冷却塔10の運転信号がOFFとなったため、バルブ46を閉状態とする(冷却塔10の運転停止中は、補給水の供給および循環冷却水の一部の排出を停止)
12.冷却塔10の運転信号がONとなったため、バルブ46を開状態とする
14.電気伝導率が所定の値未満となったため、バルブ46を閉状態として、補給水の供給および循環冷却水の一部の排出を停止するとともに、薬注ポンプ52をON(ただし、薬剤濃度<目標薬剤濃度の場合)
17.薬剤濃度≧目標薬剤濃度となったため、薬注ポンプ52をOFF
19.薬剤濃度≧所定の上限値となったため、警報ON
20.薬剤濃度<所定の上限値となったため、警報OFF
23.薬剤濃度<目標薬剤濃度となったため、薬注ポンプ52をON
25.薬剤濃度<所定の下限値となったため、警報ON
26.薬剤濃度≧所定の下限値となったため、警報OFF
29.冷媒出口温度測定装置34によって測定された冷媒の出口温度T1と循環冷却水出口温度測定装置32によって測定された循環冷却水の出口温度T2とから算出されたLTD値がMiddleとなったため、目標薬剤濃度変更(目標薬剤濃度は、常時LTD値を監視して決定している)
31.算出されたLTD値がHighとなったため、警報ON
32.薬剤濃度≧目標薬剤濃度となったため、薬注ポンプ52をOFF
35.薬剤強制注入モード起動(起動のタイミングおよび薬剤注入量は設定値に従う)
36.薬剤強制注入モード停止し、薬注ポンプ52をOFF
37.算出されたLTD値がMiddleとなったため、警報OFF
42.薬剤濃度<目標薬剤濃度となったため、薬注ポンプ52をON
45.算出されたLTD値がHighとなったため、警報ON、薬剤濃度<所定の下限値となったため、警報ON
47.電気伝導率が所定値以上となったため、バルブ46を開状態として、補給水の供給および循環冷却水の一部の排出を開始するとともに、薬注ポンプ52およびLTD値警報をOFF(循環冷却水が排出される際には、薬剤注入およびLTD値警報を停止)
49.電気伝導率が上限以上となったため、警報ON
51.電気伝導率が上限未満となったため、警報OFF
52.冷却塔10の運転信号がOFFとなったため、バルブ46を閉状態とする(冷却塔10の運転停止中は、補給水の供給および循環冷却水の一部の排出を停止)
53.冷却塔10の運転信号がONとなったため、バルブ46を開状態とする
55.電気伝導率が所定の値未満となったため、バルブ46を閉状態として、補給水の供給および循環冷却水の一部の排出を停止するとともに、薬注ポンプ52をON(ただし、薬剤濃度<目標薬剤濃度の場合)、算出されたLTD値がHighとなったため、警報ON、薬剤濃度<所定の下限値となったため、警報ON
56.薬剤強制注入モード起動、薬剤濃度≧所定の下限値となったため、警報OFF
57.薬剤強制注入モード停止
58.算出されたLTD値がMiddleとなったため、警報OFF
【0069】
図1に示す冷却水系1において薬剤濃度測定装置18を用いずに、循環冷却水への薬剤の注入量の制御および電気伝導率監視によるブロー制御を行う場合のタイミングチャートの一例を
図5に示し、以下で説明する。
【0070】
1.薬注ポンプ52をON
3.冷却塔10の運転信号がOFFとなったため、薬注ポンプ52をOFF(冷却塔10の運転停止中は、薬剤注入を停止)
4.冷却塔10の運転信号がONとなったため、薬注ポンプ52をON
6.電気伝導率測定装置16で測定された電気伝導率が所定値以上となったため、バルブ46を開状態として、補給水の供給および循環冷却水の一部の排出を開始するとともに、薬注ポンプ52をOFF(循環冷却水が排出される際には、薬剤注入を停止)
8.電気伝導率が上限以上となったため、警報ON
10.電気伝導率が上限未満となったため、警報OFF
11.冷却塔10の運転信号がOFFとなったため、バルブ46を閉状態とする(冷却塔10の運転停止中は、補給水の供給および循環冷却水の一部の排出を停止)
12.冷却塔10の運転信号がONとなったため、バルブ46を開状態とする
14.電気伝導率が所定の値未満となったため、バルブ46を閉状態として、補給水の供給および循環冷却水の一部の排出を停止するとともに、薬注ポンプ52をON(ただし、薬剤濃度<目標薬剤濃度の場合)
17.算出されたLTD値がMiddleとなったため、薬注ポンプ52のON時間を変更(薬注ポンプ52のON時間は、常時LTD値を監視して決定している)
19.算出されたLTD値がHighとなったため、警報ON
23.薬剤強制注入モード起動(起動のタイミングおよび薬剤注入量は設定値に従う)
24.薬剤強制注入モード停止
25.算出されたLTD値がMiddleとなったため、警報OFF
31.算出されたLTD値がHighとなったため、警報ON
33.電気伝導率が所定値以上となったため、バルブ46を開状態として、補給水の供給および循環冷却水の一部の排出を開始するとともに、薬注ポンプ52およびLTD値警報をOFF(循環冷却水が排出される際には、薬剤注入およびLTD値警報を停止)
35.電気伝導率が上限以上となったため、警報ON
37.電気伝導率が上限未満となったため、警報OFF
38.冷却塔10の運転信号がOFFとなったため、バルブ46を閉状態とする(冷却塔10の運転停止中は、補給水の供給および循環冷却水の一部の排出を停止)
39.冷却塔10の運転信号がONとなったため、バルブ46を開状態とする
41.電気伝導率が所定の値未満となったため、バルブ46を閉状態として、補給水の供給および循環冷却水の一部の排出を停止するとともに、薬注ポンプ52をON(ただし、薬剤濃度<目標薬剤濃度の場合)、およびLTD値の警報ON
42.薬剤強制注入モード起動
43.薬剤強制注入モード停止
45.算出されたLTD値がMiddleとなったため、警報OFF
【実施例0071】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0072】
<比較例1>
図1に示す冷却水系1を用い、LTD値による薬剤注入の制御を行わずに、一定薬剤濃度の条件で12日間運転を行った。薬剤濃度の制御は補給水の流量比例の方法で行った。冷凍機の凝縮器におけるLTD値(℃)の変動を
図6に示す。
【0073】
<実施例1>
比較例1の運転の後、
図1に示す冷却水系1を用い、
図4に示すタイミングチャートで運転を行った。LTD値を1.0℃以下に保つように循環冷却水中の薬剤濃度を制御した。具体的には、LTD値が0.7℃以上のときに、薬剤濃度の設定値を比例的に高くし、LTD値が0.5℃未満のときに、薬剤濃度の設定値を比例的に低くした。また、薬剤注入の制御とともに電気伝導率監視による自動ブロー制御の濃縮管理も行った。算出したLTD値が所定時間、上限値を超えた場合には、循環冷却水への薬剤の注入量を所定時間高くする薬剤強制注入モードを起動した。薬剤注入は、冷却水系自動コントロール装置(オルチェイサー、オルガノ株式会社製)を用い、電気伝導率測定による循環冷却水のブロー制御は、冷却水自動ブロー装置(電気伝導率計付き)(オルガノ株式会社製、SW-9200)を用いた。循環冷却水出口温度測定装置、冷媒出口温度測定装置は、配管接触型測温抵抗体を用いた。冷凍機の凝縮器におけるLTD値(℃)の変動を
図6に示す。
【0074】
実施例1の制御によって、冷却塔と冷凍機を備える冷却水系において、循環冷却水への薬剤の注入量を制御するとともに、循環冷却水への補給水の供給を制御することができた。また、実施例1の制御により、比較例1の制御に比べて使用薬剤量を低減することができた。
1 冷却水系、10 冷却塔、12 冷凍機、14 薬剤貯槽、16 電気伝導率測定装置、18 薬剤濃度測定装置、20 制御装置、22 蒸発器、24 凝縮器、26 圧縮機、28 膨張弁、30 循環冷却水入口温度測定装置、32 循環冷却水出口温度測定装置、34 冷媒出口温度測定装置、36 循環ポンプ、38 電気伝導率測定電極、40 薬剤濃度測定電極、42,46 バルブ、44,48 流量計、50 薬剤量測定装置、52 薬注ポンプ、53,54,56,58,60,62,64,66,68,69 配管、70 ファン。